(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】車両用駆動伝達装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20240521BHJP
B60K 6/387 20071001ALI20240521BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20240521BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20240521BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20240521BHJP
F16H 3/091 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B60K6/40 ZHV
B60K6/387
B60K6/445
B60K6/547
B60K17/04 G
F16H3/091
(21)【出願番号】P 2019180151
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】川本 全基
(72)【発明者】
【氏名】市岡 光広
(72)【発明者】
【氏名】山本 知香
(72)【発明者】
【氏名】井上 聡
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/217067(WO,A1)
【文献】特表2009-524550(JP,A)
【文献】特表2007-534553(JP,A)
【文献】特開2015-218774(JP,A)
【文献】国際公開第2019/177020(WO,A1)
【文献】特開2013-023036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/40
B60K 6/387
B60K 6/445
B60K 6/547
B60K 17/04
F16H 3/091
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転電機に駆動連結される第1入力部材と、
第2回転電機に駆動連結される第2入力部材と、
内燃機関に駆動連結される第3入力部材と、
差動入力ギヤを備え、前記差動入力ギヤの回転を、それぞれ車輪に駆動連結される一対の出力部材に分配する差動歯車装置と、
前記第1入力部材と前記第3入力部材とを駆動連結すると共に、第1カウンタギヤ機構を介して前記第3入力部材と前記差動入力ギヤとを駆動連結する第1ギヤ機構と、
第2カウンタギヤ機構を介して前記第2入力部材と前記差動入力ギヤとを駆動連結する第2ギヤ機構と、を備え、
前記第3入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達される第1伝動状態と、前記第3入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達されない第1非伝動状態と、を切り替える第1切替機構が、前記第1ギヤ機構に設けられ、
前記第2入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達される第2伝動状態と、前記第2入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達されない第2非伝動状態と、を切り替える第2切替機構が、前記第2ギヤ機構に設けられ、
前記第2切替機構は、駆動部により駆動される被駆動部材を、前記第2カウンタギヤ機構と同軸に備え、
前記第2入力部材、前記差動歯車装置、及び前記第2カウンタギヤ機構は、互いに平行な3つの軸に分かれて配置され、
前記第2カウンタギヤ機構の回転軸心と前記差動歯車装置の回転軸心とを含む仮想平面を第1平面とし、前記第1平面に平行な面であって前記差動歯車装置の外周に接する仮想平面を第2平面として、
前記駆動部の少なくとも一部が、軸方向に沿う軸方向視で、前記第1平面と前記第2平面との間であって、前記第2カウンタギヤ機構及び前記差動歯車装置のいずれとも重複しない位置に配置され、
パーキングロック機構により回転が規制されるパーキングギヤが、前記第2カウンタギヤ機構と同軸に配置され、
前記パーキングロック機構は、前記軸方向視で、前記第1平面に対して前記駆動部が配置される側とは反対側に配置されている、車両用駆動伝達装置。
【請求項2】
第1回転電機に駆動連結される第1入力部材と、
第2回転電機に駆動連結される第2入力部材と、
内燃機関に駆動連結される第3入力部材と、
差動入力ギヤを備え、前記差動入力ギヤの回転を、それぞれ車輪に駆動連結される一対の出力部材に分配する差動歯車装置と、
前記第1入力部材と前記第3入力部材とを駆動連結すると共に、第1カウンタギヤ機構を介して前記第3入力部材と前記差動入力ギヤとを駆動連結する第1ギヤ機構と、
第2カウンタギヤ機構を介して前記第2入力部材と前記差動入力ギヤとを駆動連結する第2ギヤ機構と、を備え、
前記第3入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達される第1伝動状態と、前記第3入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達されない第1非伝動状態と、を切り替える第1切替機構が、前記第1ギヤ機構に設けられ、
前記第2入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達される第2伝動状態と、前記第2入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達されない第2非伝動状態と、を切り替える第2切替機構が、前記第2ギヤ機構に設けられ、
前記第2切替機構は、駆動部により駆動される被駆動部材を、前記第2カウンタギヤ機構と同軸に備え、
前記第2入力部材、前記差動歯車装置、及び前記第2カウンタギヤ機構は、互いに平行な3つの軸に分かれて配置され、
前記第2カウンタギヤ機構の回転軸心と前記差動歯車装置の回転軸心とを含む仮想平面を第1平面とし、前記第1平面に平行な面であって前記差動歯車装置の外周に接する仮想平面を第2平面として、
前記駆動部の少なくとも一部が、軸方向に沿う軸方向視で、前記第1平面と前記第2平面との間であって、前記第2カウンタギヤ機構及び前記差動歯車装置のいずれとも重複しない位置に配置され、
前記差動歯車装置は、差動ギヤ機構と、前記差動ギヤ機構を収容する差動ケースと、を備え、
前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向における前記軸方向第1側とは反対側を軸方向第2側として、
前記差動入力ギヤは、前記第2切替機構に対して前記軸方向第1側に配置され、
前記第2切替機構は、前記差動入力ギヤに対して前記軸方向第2側に配置されて前記第2入力部材を支持する軸受と、前記軸方向の配置領域が重複するように配置されていると共に、前記差動入力ギヤに対して前記軸方向第2側に配置されて前記差動ケースを支持する軸受と、前記軸方向の配置領域が重複するように配置され
、
前記第1ギヤ機構は、前記第3入力部材とそれぞれ同軸に配置される第3ギヤ及び第4ギヤを備え、
前記第1カウンタギヤ機構は、第1カウンタ軸と、前記第3ギヤと噛み合う第5ギヤと、前記第4ギヤと噛み合う第6ギヤと、前記第1カウンタ軸と一体的に回転すると共に前記差動入力ギヤと噛み合う第7ギヤと、を備え、
前記第3ギヤと前記第5ギヤとのギヤ比は、前記第4ギヤと前記第6ギヤとのギヤ比と異なり、
前記第1切替機構は、前記第3入力部材と前記第1カウンタ軸との間で前記第3ギヤと前記第5ギヤとのギヤ対を介して駆動力が伝達される状態と、前記第3入力部材と前記第1カウンタ軸との間で前記第4ギヤと前記第6ギヤとのギヤ対を介して駆動力が伝達される状態と、前記第3入力部材と前記第1カウンタ軸との間で駆動力が伝達されない状態とを切り替えることで、2つの前記第1伝動状態と1つの前記第1非伝動状態とを切り替えるように構成され、
前記第7ギヤは、前記第5ギヤと前記第6ギヤとの前記軸方向の間に配置され、
前記第1切替機構は、前記差動入力ギヤと前記軸方向の配置領域が重複するように配置され、
前記第5ギヤは、前記差動入力ギヤに対して前記軸方向第1側に配置されて前記差動ケースを支持する軸受と、前記軸方向の配置領域が重複するように配置され、
前記第6ギヤは、前記差動ギヤ機構と前記軸方向の配置領域が重複するように配置されている、車両用駆動伝達装置。
【請求項3】
前記第2入力部材を支持する前記軸受は、
前記差動入力ギヤに対して前記軸方向第2側に配置されて前記差動ケースを支持する前記軸受と前記軸方向の配置領域が重複するように配置されている、請求項2に記載の車両用駆動伝達装置。
【請求項4】
前記駆動部の少なくとも一部が、前記軸方向視で、前記第1平面に直交し且つ前記第2カウンタギヤ機構の外周に接する2つの仮想平面の間であって、前記第2カウンタギヤ機構及び前記差動歯車装置のいずれとも重複しない位置に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動伝達装置。
【請求項5】
前記駆動部の少なくとも一部が、前記軸方向視で、前記差動歯車装置の外周と、前記第2カウンタギヤ機構の外周と、前記差動歯車装置の外周及び前記第2カウンタギヤ機構の外周の双方に接する仮想平面とに囲まれる空間に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動伝達装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記第2カウンタギヤ機構の回転軸心と平行な軸に配置された回転軸を回転させて、前記被駆動部材を駆動するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用駆動伝達装置。
【請求項7】
前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向における前記軸方向第1側とは反対側を軸方向第2側として、
前記差動入力ギヤは、前記差動歯車装置が備える差動ギヤ機構におけるピニオンシャフトに対して、前記軸方向第1側に配置され、
前記第2切替機構は、前記差動入力ギヤに対して前記軸方向第2側において、前記差動ギヤ機構を収容する差動ケースと前記軸方向に重複するように配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用駆動伝達装置。
【請求項8】
前記第2カウンタギヤ機構は、第2カウンタ軸と、前記第2入力部材と一体的に回転するギヤと噛み合う第1ギヤと、前記第2カウンタ軸と一体的に回転すると共に前記差動入力ギヤと噛み合う第2ギヤと、を備え、
前記第2切替機構は、前記第1ギヤが前記第2カウンタ軸に連結された状態と、前記第1ギヤが前記第2カウンタ軸から切り離された状態とを切り替えることで、前記第2伝動状態と前記第2非伝動状態とを切り替えるように構成され、
前記第1ギヤは、前記第2ギヤに対して前記軸方向第2側に配置され、
前記第2切替機構は、前記第1ギヤに対して前記軸方向第2側に配置されている、請求項7に記載の車両用駆動伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1回転電機に駆動連結される第1入力部材と、第2回転電機に駆動連結される第2入力部材と、内燃機関に駆動連結される第3入力部材と、差動入力ギヤの回転を一対の出力部材に分配する差動歯車装置と、を備えた車両用駆動伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動伝達装置の一例が、国際公開第2017/217067号(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。特許文献1のトランスアクスル(1)は、エンジン(2)に駆動連結される入力軸(11)と、モータ(3)に駆動連結されるモータ軸(13)と、ジェネレータ(4)に駆動連結されるジェネレータ軸(14)と、リングギヤ(18a)の回転を一対の出力軸(12)に分配するデフ(18)と、を備えている。そして、トランスアクスル(1)の内部には、入力軸(11)から出力軸(12)に至る動力伝達経路と、モータ軸(13)から出力軸(12)に至る動力伝達経路と、入力軸(11)からジェネレータ軸(14)に至る動力伝達経路との、3つの動力伝達経路が形成されている。これにより、このトランスアクスル(1)は、EVモード、シリーズモード、及びパラレルモードの3つの走行モードを実現可能に構成されている。
【0003】
そして、特許文献1のトランスアクスル(1)は、モータ軸(13)とリングギヤ(18a)との間で駆動力が伝達される伝動状態と、モータ軸(13)とリングギヤ(18a)との間で駆動力が伝達されない非伝動状態と、を切り替える断接機構(20)を備えている。これにより、パラレルモードにおいてモータ(3)を停止させる場合には、非伝動状態に切り替えることで、モータ(3)の連れ回りを回避することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1の車両用駆動伝達装置は、内燃機関に駆動連結される入力部材を介さずに差動入力ギヤに駆動連結される回転電機(特許文献1におけるモータ)を、差動入力ギヤから切り離すための切替機構(特許文献1における断接機構)を備えている。このような切替機構を備える場合、当該切替機構の駆動部の配置の仕方によっては、車両用駆動伝達装置の寸法が大きくなり、車両への搭載性が悪化する可能性がある。しかしながら、特許文献1には、車両への搭載性を考慮した切替機構の駆動部の配置構成について記載されていない。
【0006】
そこで、内燃機関に駆動連結される入力部材を介さずに差動入力ギヤに駆動連結される回転電機を、差動入力ギヤから切り離すための切替機構を備える場合において、装置全体の寸法の大型化を抑制しつつ当該切替機構の駆動部を配置することが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
車両用駆動伝達装置は、第1回転電機に駆動連結される第1入力部材と、第2回転電機に駆動連結される第2入力部材と、内燃機関に駆動連結される第3入力部材と、差動入力ギヤを備え、前記差動入力ギヤの回転を、それぞれ車輪に駆動連結される一対の出力部材に分配する差動歯車装置と、前記第1入力部材と前記第3入力部材とを駆動連結すると共に、第1カウンタギヤ機構を介して前記第3入力部材と前記差動入力ギヤとを駆動連結する第1ギヤ機構と、第2カウンタギヤ機構を介して前記第2入力部材と前記差動入力ギヤとを駆動連結する第2ギヤ機構と、を備え、前記第3入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達される第1伝動状態と、前記第3入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達されない第1非伝動状態と、を切り替える第1切替機構が、前記第1ギヤ機構に設けられ、前記第2入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達される第2伝動状態と、前記第2入力部材と前記差動入力ギヤとの間で駆動力が伝達されない第2非伝動状態と、を切り替える第2切替機構が、前記第2ギヤ機構に設けられ、前記第2切替機構は、駆動部により駆動される被駆動部材を、前記第2カウンタギヤ機構と同軸に備え、前記第2入力部材、前記差動歯車装置、及び前記第2カウンタギヤ機構は、互いに平行な3つの軸に分かれて配置され、前記第2カウンタギヤ機構の回転軸心と前記差動歯車装置の回転軸心とを含む仮想平面を第1平面とし、前記第1平面に平行な面であって前記差動歯車装置の外周に接する仮想平面を第2平面として、前記駆動部の少なくとも一部が、軸方向に沿う軸方向視で、前記第1平面と前記第2平面との間であって、前記第2カウンタギヤ機構及び前記差動歯車装置のいずれとも重複しない位置に配置されている。
【0008】
この構成によれば、第3入力部材と差動入力ギヤとの間の駆動力の伝達状態を、第1切替機構により第1非伝動状態に切り替え、第2入力部材と差動入力ギヤとの間の駆動力の伝達状態を、第2切替機構により第2伝動状態に切り替えることで、車両用駆動伝達装置において電動走行モード及びシリーズモードを実現することができる。また、第3入力部材と差動入力ギヤとの間の駆動力の伝達状態を、第1切替機構により第1伝動状態に切り替えることで、車両用駆動伝達装置においてパラレルモードを実現することができる。ここで、第2入力部材と差動入力ギヤとの間の駆動力の伝達状態を、第2切替機構により第2非伝動状態に切り替えることで、第3入力部材を介さずに差動入力ギヤに駆動連結される第2回転電機を、差動入力ギヤから切り離すことができる。そのため、パラレルモードにおいて第2回転電機を停止させる場合に、第2回転電機の連れ回りを回避することができる。
【0009】
そして、本構成では、第2切替機構を駆動する駆動部の少なくとも一部が、軸方向に沿う軸方向視で、第1平面と第2平面との間であって、第2カウンタギヤ機構及び差動歯車装置のいずれとも重複しない位置に配置されている。差動歯車装置は、通常、第2カウンタギヤ機構よりも大径に形成されるため、第2カウンタギヤ機構の外周と第2平面との間には、装置全体の軸方向視での寸法の大型化に大きな影響を与えることなく部材を配置することが可能な空間(以下、「特定空間」という)が形成される。本構成では、駆動部の少なくとも一部が上記のように第1平面と第2平面との間に配置されると共に、駆動部の駆動対象である被駆動部材が第2入力部材と同軸ではなく第2カウンタギヤ機構と同軸に配置される。そのため、上記の特定空間を、駆動部の配置空間として利用することができ、これにより、装置全体の寸法の大型化を抑制しつつ第2切替機構の駆動部を配置することが可能となっている。
【0010】
車両用駆動伝達装置の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る車両用駆動伝達装置のスケルトン図
【
図3】実施形態に係る車両用駆動伝達装置の各部品の軸方向視での配置関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
車両用駆動伝達装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動伝達装置に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
【0013】
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等)が含まれていてもよい。
【0014】
また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「軸方向の配置領域が重複する」とは、一方の部材の軸方向の配置領域内に、他方の部材の軸方向の配置領域の少なくとも一部が含まれることを意味する。
【0015】
図1に示すように、車両用駆動伝達装置100は、第1回転電機1に駆動連結される第1入力部材11と、第2回転電機2に駆動連結される第2入力部材12と、内燃機関3に駆動連結される第3入力部材13と、を備えている。内燃機関3は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。第1回転電機1及び第2回転電機2は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示せず)と電気的に接続されており、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、車両の慣性力や内燃機関3の駆動力等により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。第1回転電機1及び第2回転電機2は、共通の蓄電装置に電気的に接続されており、第1回転電機1が発電した電力によって第2回転電機2を力行させることが可能となっている。
【0016】
本実施形態では、第1入力部材11は、第1回転電機1(具体的には、第1回転電機1が備えるロータ、以下同様)と一体的に回転するように第1回転電機1に連結され、第2入力部材12は、第2回転電機2(具体的には、第2回転電機2が備えるロータ、以下同様)と一体的に回転するように第2回転電機2に連結される。また、本実施形態では、第3入力部材13は、トルクリミッタ8(
図2参照)を介して内燃機関3(具体的には、内燃機関3が備えるクランクシャフト等の出力部材、以下同様)に連結される。トルクリミッタ8は、第3入力部材13と内燃機関3との間で伝達されるトルクの大きさを制限して過大なトルクの伝達を遮断する。トルクリミッタ8付きのダンパ装置(ダンパ機構とトルクリミッタ8とを備えたダンパ装置)を用いる場合、第3入力部材13は、トルクリミッタ8及びダンパ機構を介して、内燃機関3に連結される。
【0017】
図2に示すように、車両用駆動伝達装置100は、ケース7を備えており、第1入力部材11、第2入力部材12、及び第3入力部材13のそれぞれは、ケース7に収容されている。ここで、「収容する」とは、収容対象物の少なくとも一部を収容することを意味する。第1入力部材11、第2入力部材12、及び第3入力部材13のそれぞれは、ケース7に対して回転可能にケース7に支持されている。ケース7には、後述する差動歯車装置6、第1カウンタギヤ機構31、及び第2カウンタギヤ機構32も収容されている。
【0018】
車両用駆動伝達装置100は、差動歯車装置6を備えている。
図1に示すように、差動歯車装置6は、差動入力ギヤGDを備え、差動入力ギヤGDの回転を、それぞれ車輪4に駆動連結される一対の出力部材5に分配する。一方の出力部材5が駆動連結される車輪4を第1車輪とし、他方の出力部材5が駆動連結される車輪4を第2車輪とすると、第1車輪及び第2車輪は、左右一対の車輪4(例えば、左右一対の前輪、又は左右一対の後輪)とされる。本実施形態では、出力部材5はドライブシャフトであり、出力部材5のそれぞれは、連結対象となる車輪4と同速で回転するように当該車輪4に連結される。出力部材5は、例えば等速ジョイント(図示せず)を介して、連結対象となる車輪4に連結される。出力部材5を介して伝達されるトルクによって車輪4が駆動されることで、車両(車両用駆動伝達装置100が搭載される車両、以下同様)が走行する。
【0019】
図2に示すように、本実施形態では、差動歯車装置6は、傘歯車式の差動ギヤ機構40と、差動ギヤ機構40を収容する差動ケース41と、を備えている。差動ケース41は、ケース7に対して回転可能にケース7に支持されている。差動入力ギヤGDは、差動ケース41と一体的に回転するように差動ケース41に連結されている。具体的には、差動入力ギヤGDは、差動ケース41から径方向(後述する第4軸A4を基準とする径方向)の外側に突出するように、差動ケース41に取り付けられている。
【0020】
差動ギヤ機構40は、ピニオンギヤ43と、ピニオンギヤ43にそれぞれ噛み合う一対のサイドギヤ44と、を備えている。ピニオンギヤ43(例えば、2つのピニオンギヤ43)は、差動ケース41に保持されたピニオンシャフト42に対して回転可能にピニオンシャフト42に支持されている。差動ギヤ機構40は、差動入力ギヤGDの回転を一対のサイドギヤ44に分配する。サイドギヤ44のそれぞれは、連結対象となる出力部材5と一体的に回転するように当該出力部材5に連結(ここでは、スプライン連結)される。
【0021】
本実施形態では、差動歯車装置6は傘歯車式の差動ギヤ機構40を備えるため、後述する軸方向Lにおけるピニオンシャフト42の配置位置が、差動ギヤ機構40における軸方向Lの中央部40aとなる。差動歯車装置6が遊星歯車式の差動ギヤ機構40を備える構成とすることもでき、この場合、差動ギヤ機構40の噛み合い部(ギヤ同士の噛み合い部)における軸方向Lの中心位置が、差動ギヤ機構40における軸方向Lの中央部40aとなる。
【0022】
図1及び
図2に示すように、第1入力部材11は、第1軸A1上に配置され、第2入力部材12は、第2軸A2上に配置され、第3入力部材13は、第3軸A3上に配置され、差動歯車装置6は、第4軸A4上に配置され、後述する第1カウンタギヤ機構31は、第5軸A5上に配置され、後述する第2カウンタギヤ機構32は、第6軸A6上に配置されている。これらの第1軸A1、第2軸A2、第3軸A3、第4軸A4、第5軸A5、及び第6軸A6は、互いに異なる軸(仮想軸)であり、互いに平行に配置される。これらの各軸(A1~A6)に平行な方向(すなわち、各軸の間で共通する軸方向)を軸方向Lとする。また、軸方向Lの一方側を軸方向第1側L1とし、軸方向Lの他方側(軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側)を軸方向第2側L2とする。
【0023】
図1に示すように、第3入力部材13は、内燃機関3とは軸方向Lの異なる位置に配置される。具体的には、第3入力部材13は、内燃機関3に対して軸方向第1側L1に配置される。
図2に示すように、ケース7における軸方向第2側L2の端部に、ケース7を内燃機関3に固定するための固定部7aが形成されている。固定部7aは、締結ボルト等の締結部材(図示せず)を用いて、軸方向第1側L1から内燃機関3に接合される。また、
図1に示すように、第1入力部材11は、第1回転電機1とは軸方向Lの異なる位置に配置され、第2入力部材12は、第2回転電機2とは軸方向Lの異なる位置に配置される。具体的には、第1入力部材11は、第1回転電機1に対して軸方向第2側L2に配置され、第2入力部材12は、第2回転電機2に対して軸方向第2側L2に配置される。
【0024】
図1に示すように、車両用駆動伝達装置100は、第1入力部材11と第3入力部材13とを駆動連結すると共に、第1カウンタギヤ機構31を介して第3入力部材13と差動入力ギヤGDとを駆動連結する第1ギヤ機構21を備えている。すなわち、第1ギヤ機構21は、第1カウンタギヤ機構31を備えている。第1ギヤ機構21は、第3入力部材13を介して第1入力部材11と差動入力ギヤGDとを駆動連結する。第1入力部材11と第3入力部材13との間の動力伝達経路である第1動力伝達経路と、第3入力部材13と差動入力ギヤGDとの間の動力伝達経路である第3動力伝達経路とを、第1ギヤ機構21を用いて接続することができる。また、車両用駆動伝達装置100は、第2カウンタギヤ機構32を介して第2入力部材12と差動入力ギヤGDとを駆動連結する第2ギヤ機構22を備えている。すなわち、第2ギヤ機構22は、第2カウンタギヤ機構32を備えている。第2入力部材12と差動入力ギヤGDとの間の動力伝達経路である第2動力伝達経路を、第2ギヤ機構22を用いて接続することができる。
【0025】
第3入力部材13と差動入力ギヤGDとの間で駆動力が伝達される第1伝動状態と、第3入力部材13と差動入力ギヤGDとの間で駆動力が伝達されない第1非伝動状態と、を切り替える第1切替機構51が、第1ギヤ機構21に設けられている。よって、第3動力伝達経路は、第1切替機構51によって選択的に接続される(すなわち、接続又は遮断される)。一方、本実施形態では、第1動力伝達経路は常時接続される。また、第2入力部材12と差動入力ギヤGDとの間で駆動力が伝達される第2伝動状態と、第2入力部材12と差動入力ギヤGDとの間で駆動力が伝達されない第2非伝動状態と、を切り替える第2切替機構52が、第2ギヤ機構22に設けられている。よって、第2動力伝達経路は、第2切替機構52によって選択的に接続される。
【0026】
第3入力部材13と差動入力ギヤGDとの間の駆動力の伝達状態を、第1切替機構51により第1非伝動状態に切り替え、第2入力部材12と差動入力ギヤGDとの間の駆動力の伝達状態を、第2切替機構52により第2伝動状態に切り替えることで、車両用駆動伝達装置100において電動走行モード及びシリーズモードを実現することができる。電動走行モードは、第2回転電機2の駆動力により出力部材5を駆動して車両を走行させる走行モードである。シリーズモードは、内燃機関3の駆動力により第1回転電機1に発電させると共に第2回転電機2の駆動力により出力部材5を駆動して車両を走行させる走行モードである。電動走行モード及びシリーズモードでは、第1切替機構51により第1非伝動状態に切り替えられて第3動力伝達経路は遮断され、第1回転電機1及び内燃機関3は出力部材5から分離される。
【0027】
また、第3入力部材13と差動入力ギヤGDとの間の駆動力の伝達状態を、第1切替機構51により第1伝動状態に切り替えることで、車両用駆動伝達装置100においてパラレルモードを実現することができる。パラレルモードは、少なくとも内燃機関3の駆動力により出力部材5を駆動して車両を走行させる走行モードである。パラレルモードでは、必要に応じて第2回転電機2の駆動力を出力部材5に伝達させて、内燃機関3の駆動力を補助する。パラレルモードにおいて第2回転電機2を停止させる場合(例えば、車両の高速走行時)には、第2切替機構52により第2非伝動状態に切り替えて第2動力伝達経路を遮断することで、第3入力部材13を介さずに差動入力ギヤGDに駆動連結される第2回転電機2を、差動入力ギヤGDから切り離すことができる。よって、パラレルモードにおいて第2回転電機2を停止させる場合に、第2回転電機2の連れ回りを回避することができ、この結果、第2回転電機2の引き摺りによるエネルギ損失の発生を抑制することができる。なお、パラレルモードにおいて、第2回転電機2の駆動力に加えて或いは第2回転電機2の駆動力に代えて、第1回転電機1の駆動力を出力部材5に伝達させて、内燃機関3の駆動力を補助してもよい。
【0028】
図1に示すように、第1ギヤ機構21は、第1入力部材11と同軸に配置される第9ギヤG9と、第3入力部材13と同軸に配置されると共に第9ギヤG9と噛み合う第10ギヤG10と、を備えている。本実施形態では、第9ギヤG9は、第1入力部材11と一体的に回転するように第1入力部材11に連結され、第10ギヤG10は、第3入力部材13と一体的に回転するように第3入力部材13に連結されている。すなわち、本実施形態では、第1入力部材11と第3入力部材13とは、第9ギヤG9と第10ギヤG10とのギヤ対を介して常時連結されるため、第1入力部材11と第3入力部材13との間の第1動力伝達経路は、常時接続される。
図1~
図3に示すように、本実施形態では、第9ギヤG9は、第10ギヤG10よりも小径に形成されている。すなわち、第9ギヤG9と第10ギヤG10とのギヤ比は、第1入力部材11の回転が減速して第3入力部材13に伝達されるように(言い換えれば、第3入力部材13の回転が増速して第1入力部材11に伝達されるように)設定されている。なお、
図3では、各ギヤの基準ピッチ円を破線で示している。
図3では、後述する第3ギヤG3及び第5ギヤG5の図示を省略している。
【0029】
第1ギヤ機構21は、更に、第3入力部材13とそれぞれ同軸に配置される第3ギヤG3及び第4ギヤG4を備えている。第3ギヤG3は、第4ギヤG4に対して軸方向第1側L1に配置されている。また、第1カウンタギヤ機構31は、第1カウンタ軸31aと、第3ギヤG3と噛み合う第5ギヤG5と、第4ギヤG4と噛み合う第6ギヤG6と、第1カウンタ軸31aと一体的に回転すると共に差動入力ギヤGDと噛み合う第7ギヤG7と、を備えている。第5ギヤG5は、第6ギヤG6に対して軸方向第1側L1に配置されている。そして、第7ギヤG7は、第5ギヤG5と第6ギヤG6との軸方向Lの間に配置されている。
【0030】
図1~
図3に示すように、本実施形態では、第7ギヤG7は、差動入力ギヤGDよりも小径に形成されている。すなわち、第7ギヤG7と差動入力ギヤGDとのギヤ比は、第1カウンタ軸31aの回転が減速して差動歯車装置6(具体的には、差動入力ギヤGD)に伝達されるように設定されている。
【0031】
第1切替機構51は、第3入力部材13と第1カウンタ軸31aとの間で第3ギヤG3と第5ギヤG5とのギヤ対を介して駆動力が伝達される状態と、第3入力部材13と第1カウンタ軸31aとの間で第4ギヤG4と第6ギヤG6とのギヤ対を介して駆動力が伝達される状態と、第3入力部材13と第1カウンタ軸31aとの間で駆動力が伝達されない状態とを切り替えることで、2つの第1伝動状態と1つの第1非伝動状態とを切り替えるように構成されている。本実施形態では、第5ギヤG5及び第6ギヤG6は、第1カウンタ軸31aと一体的に回転するように第1カウンタ軸31aに連結されている。そして、第1切替機構51は、第3ギヤG3及び第4ギヤG4のうちの第3ギヤG3のみが第3入力部材13に連結された状態(以下、「第1連結状態」という)と、第3ギヤG3及び第4ギヤG4のうちの第4ギヤG4のみが第3入力部材13に連結された状態(以下、「第2連結状態」という)と、第3ギヤG3及び第4ギヤG4の双方が第3入力部材13から切り離された状態(以下、「非連結状態」という)と、を切り替えるように構成されている。すなわち、第3ギヤG3及び第4ギヤG4は、第1切替機構51によって選択的に第3入力部材13に連結される。
【0032】
第1連結状態では、第3入力部材13と第1カウンタ軸31aとの間で第3ギヤG3と第5ギヤG5とのギヤ対を介して駆動力が伝達される状態となって、第1伝動状態が実現される。また、第2連結状態では、第3入力部材13と第1カウンタ軸31aとの間で第4ギヤG4と第6ギヤG6とのギヤ対を介して駆動力が伝達される状態となって、別の第1伝動状態が実現される。また、非連結状態では、第3入力部材13と第1カウンタ軸31aとの間で駆動力が伝達されない状態となって、第1非伝動状態が実現される。なお、第1連結状態では、第4ギヤG4は、第3入力部材13に対して相対回転可能に第3入力部材13に支持され、第2連結状態では、第3ギヤG3は、第3入力部材13に対して相対回転可能に第3入力部材13に支持され、非連結状態では、第3ギヤG3及び第4ギヤG4が、第3入力部材13に対して相対回転可能に第3入力部材13に支持される。
【0033】
第3入力部材13と第1カウンタ軸31aとの回転速度比は、第1連結状態では第3ギヤG3と第5ギヤG5とのギヤ比に応じて定まり、第2連結状態では、第4ギヤG4と第6ギヤG6とのギヤ比に応じて定まる。そして、第3ギヤG3と第5ギヤG5とのギヤ比は、第4ギヤG4と第6ギヤG6とのギヤ比と異なるように設定されている。よって、第1連結状態と第2連結状態とを第1切替機構51を用いて切り替えることで、第3入力部材13と第1カウンタ軸31aとの回転速度比が異なる値に切り替えられる。
【0034】
差動入力ギヤGDの回転速度に対する第3入力部材13の回転速度の比を変速比として、本実施形態では、第1連結状態での変速比が第2連結状態での変速比よりも大きくなるように、第3ギヤG3と第5ギヤG5とのギヤ比、及び第4ギヤG4と第6ギヤG6とのギヤ比が設定されている。よって、第1連結状態では、低速段が形成され、第2連結状態では、高速段が形成される。第3ギヤG3と第5ギヤG5とのギヤ比、及び第4ギヤG4と第6ギヤG6とのギヤ比がこのように設定されるため、本実施形態では、第3ギヤG3は、第4ギヤG4よりも小径に形成され、第5ギヤG5は、第6ギヤG6よりも大径に形成されている。
【0035】
本実施形態では、第3ギヤG3は、第5ギヤG5よりも小径に形成されている。すなわち、第3ギヤG3と第5ギヤG5とのギヤ比は、第3入力部材13の回転が減速して第1カウンタ軸31aに伝達されるように設定されている。また、本実施形態では、第4ギヤG4は、第6ギヤG6よりも大径に形成されている。すなわち、第4ギヤG4と第6ギヤG6とのギヤ比は、第3入力部材13の回転が増速して第1カウンタ軸31aに伝達されるように設定されている。
【0036】
本実施形態では、第1切替機構51は、噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)を用いて構成されている。具体的には、第1切替機構51は、軸方向Lに移動可能な第1スリーブ部材51aと、第3入力部材13と一体的に回転する第1係合部E1と、第3ギヤG3と一体的に回転する第2係合部E2と、第4ギヤG4と一体的に回転する第3係合部E3と、を備えている。第1スリーブ部材51a、第1係合部E1、第2係合部E2、及び第3係合部E3は、第3軸A3上に配置されている。すなわち、第1切替機構51(具体的には、少なくとも、第1スリーブ部材51a、第1係合部E1、第2係合部E2、及び第3係合部E3)は、第3入力部材13と同軸に配置されている。
【0037】
第1スリーブ部材51aの軸方向Lの位置は、軸方向Lに移動可能にケース7に支持された第1シフトフォーク51b(
図2及び
図3参照)によって切り替えられる。第1シフトフォーク51bは、第1スリーブ部材51aの回転(第3軸A3回りの回転)を許容する状態で第1スリーブ部材51aと一体的に軸方向Lに移動するように、第1スリーブ部材51a(具体的には、第1スリーブ部材51aの外周面に形成された溝部)に係合している。第1シフトフォーク51bは、電動アクチュエータや油圧アクチュエータ等のアクチュエータの駆動力によって軸方向Lに移動される。
【0038】
本実施形態では、第1スリーブ部材51aの内周面には、内歯が形成されており、第1係合部E1、第2係合部E2、及び第3係合部E3のそれぞれの外周面には、外歯が形成されている。第1スリーブ部材51aは、第1係合部E1に外嵌するように配置された状態で、第1係合部E1に対して相対回転不能に且つ第1係合部E1に対して軸方向Lに相対移動可能に、第1係合部E1に連結されている。第1係合部E1(具体的には、第1係合部E1に形成された外歯)は、第1スリーブ部材51aの軸方向Lの位置によらずに、第1スリーブ部材51a(具体的には、第1スリーブ部材51aに形成された内歯)に係合する。一方、第2係合部E2(具体的には、第2係合部E2に形成された外歯)及び第3係合部E3(具体的には、第3係合部E3に形成された外歯)は、第1スリーブ部材51aの軸方向Lの位置に応じて、第1スリーブ部材51a(具体的には、第1スリーブ部材51aに形成された内歯)に選択的に係合する。
【0039】
第1切替機構51は、第1スリーブ部材51aの軸方向Lの位置に応じて、第1連結状態と、第2連結状態と、非連結状態と、を切り替えるように構成されている。具体的には、第1スリーブ部材51aが、第1係合部E1に係合し且つ第2係合部E2及び第3係合部E3に係合しない軸方向Lの位置に移動した状態で(
図1、
図2参照)、非連結状態が実現される。また、第1スリーブ部材51aが、第1係合部E1及び第2係合部E2に係合し且つ第3係合部E3に係合しない軸方向Lの位置(
図1及び
図2に示す第1スリーブ部材51aの位置よりも軸方向第1側L1の位置)に移動した状態で、第1連結状態が実現される。また、第1スリーブ部材51aが、第1係合部E1及び第3係合部E3に係合し且つ第2係合部E2に係合しない軸方向Lの位置(
図1及び
図2に示す第1スリーブ部材51aの位置よりも軸方向第2側L2の位置)に移動した状態で、第2連結状態が実現される。
【0040】
図1及び
図2に示すように、第2係合部E2は、第3ギヤG3に対して軸方向第2側L2に配置され、第3係合部E3は、第2係合部E2に対して軸方向第2側L2に、且つ、第4ギヤG4に対して軸方向第1側L1に配置されている。そして、第1係合部E1は、第2係合部E2と第3係合部E3との軸方向Lの間に配置されている。よって、第1係合部E1、第2係合部E2、及び第3係合部E3は、第3ギヤG3と第4ギヤG4との軸方向Lの間に配置されている。また、第1スリーブ部材51aも、第3ギヤG3と第4ギヤG4との軸方向Lの間に配置されている。
【0041】
このように、第1切替機構51は、第3ギヤG3と第4ギヤG4との軸方向Lの間に配置されている。具体的には、第3入力部材13と同軸に(すなわち、第3軸A3上に)配置されて第1切替機構51を構成する部材(ここでは、第1スリーブ部材51a、第1係合部E1、第2係合部E2、及び第3係合部E3)が、第3ギヤG3と第4ギヤG4との軸方向Lの間に配置されている。本実施形態では、第1係合部E1、第2係合部E2、及び第3係合部E3は、第3ギヤG3及び第4ギヤG4のうちの小径に形成された方(本実施形態では、第3ギヤG3)よりも小径に形成されている。ここでは、第1係合部E1、第2係合部E2、及び第3係合部E3は、互いに同径に形成されている。
【0042】
このように、この車両用駆動伝達装置100では、第1切替機構51が、第3ギヤG3と第4ギヤG4との軸方向Lの間に配置されている。そして、上述したように、この車両用駆動伝達装置100では、第7ギヤG7が、第3ギヤG3と噛み合う第5ギヤG5と、第4ギヤG4と噛み合う第6ギヤG6との軸方向Lの間に配置されている。これにより、
図1及び
図2に示すように、第1切替機構51を、第7ギヤG7と軸方向Lの配置領域が重複するように配置することが可能となっている。すなわち、第7ギヤG7に対して径方向外側(第5軸A5を基準とする径方向の外側)に形成される空間を有効に利用して、第1切替機構51を配置することが可能となっている。そして、差動入力ギヤGDと噛み合う第7ギヤG7が、第5ギヤG5と第6ギヤG6との軸方向Lの間に配置されるため、第7ギヤG7が、第5ギヤG5及び第6ギヤG6に対して軸方向Lの一方側(例えば、軸方向第2側L2)に配置される場合に比べて、第1切替機構51と軸方向Lの配置領域が重複する割合が高くなるように差動歯車装置6を配置しやすくなっており、装置全体の軸方向Lの寸法の小型化を図ることが可能となっている。
【0043】
図2に示すように、本実施形態では、第3入力部材13は、第1軸受B1と、第1軸受B1に対して軸方向第2側L2に配置された第2軸受B2とにより、軸方向Lの2ヶ所でケース7に支持されている。第10ギヤG10、第3ギヤG3、及び第4ギヤG4は、第1軸受B1と第2軸受B2との軸方向Lの間に配置されている。また、本実施形態では、第1カウンタ軸31aは、第3軸受B3と、第3軸受B3に対して軸方向第2側L2に配置された第4軸受B4とにより、軸方向Lの2ヶ所でケース7に支持されている。第5ギヤG5、第6ギヤG6、及び第7ギヤG7は、第3軸受B3と第4軸受B4との軸方向Lの間に配置されている。そして、本実施形態では、第3軸受B3は、第1軸受B1と軸方向Lの配置領域が重複するように配置され、第4軸受B4は、第2軸受B2と軸方向Lの配置領域が重複するように配置されている。
【0044】
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、第7ギヤG7は、第5ギヤG5よりも小径且つ第6ギヤG6よりも小径に形成されている。よって、第7ギヤG7に対して径方向外側(第5軸A5を基準とする径方向の外側)に、第5ギヤG5と第6ギヤG6とにより軸方向Lの両側を区画され且つ径方向外側に向かって開口する空間が形成されており、第1切替機構51又はその駆動機構(例えば、第1シフトフォーク51b)を、この空間或いはその径方向外側に隣接する空間を利用して配置することが可能となっている。例えば、第1シフトフォーク51bが、軸方向Lに沿う軸方向視で第5ギヤG5及び第6ギヤG6のうちの大径に形成される方(本実施形態では、第5ギヤG5)と重複するように配置される構成とし、或いは、第1シフトフォーク51bが、軸方向Lに沿う軸方向視で第5ギヤG5及び第6ギヤG6と重複するように配置される構成とすることができる。
【0045】
また、本実施形態では、第10ギヤG10が、第3ギヤG3及び第4ギヤG4に対して軸方向第1側L1(すなわち、軸方向Lにおける内燃機関3が配置される側とは反対側)に配置されている。これにより、第10ギヤG10が、第3ギヤG3及び第4ギヤG4に対して軸方向第2側L2に配置される場合に比べて、第3ギヤG3及び第4ギヤG4を軸方向第2側L2に寄せて配置しやすくなり、これに応じて、第7ギヤG7及びそれと噛み合う差動入力ギヤGDを軸方向第2側L2に寄せて配置しやすくなっている。
図2に示すように、本実施形態では、差動歯車装置6(具体的には、差動ケース41)における軸方向第2側L2の部分が、トルクリミッタ8と軸方向Lの配置領域が重複するように配置される。そのため、差動入力ギヤGDを軸方向第2側L2に寄せて配置することで、差動歯車装置6とトルクリミッタ8とのそれぞれの軸方向Lの配置領域が重複する割合を高めることが容易となっており、これにより、車両用駆動伝達装置100の全体、或いは車両用駆動伝達装置100及びトルクリミッタ8を含むユニット全体の、軸方向Lの寸法の小型化を図りやすくなっている。
【0046】
また、本実施形態では、差動入力ギヤGDは、ピニオンシャフト42に対して軸方向第1側L1に配置されている。言い換えれば、差動入力ギヤGDは、差動ギヤ機構40における軸方向Lの中央部40aに対して、軸方向第1側L1に配置されている。本実施形態では、差動ケース41における上記中央部40aに配置される部分は、差動ケース41における差動入力ギヤGDよりも軸方向第1側L1の部分よりも、径方向(第4軸A4を基準とする径方向)の寸法が大きく形成されている。そして、第6ギヤG6よりも大径に形成される第5ギヤG5が、第7ギヤG7に対して軸方向第1側L1に(すなわち、差動入力ギヤGDに対して軸方向第1側L1に)配置されている。このように差動入力ギヤGD及び第5ギヤG5を配置することで、第5ギヤG5を、差動歯車装置6における径方向寸法が大きくなりやすい中央部40aから軸方向Lに離れた位置に配置しやすくなっており、この結果、第5ギヤG5及び第6ギヤG6と差動歯車装置6との干渉を避けつつ、第1カウンタギヤ機構31が配置される第5軸A5と差動歯車装置6が配置される第4軸A4とを軸方向Lに沿う軸方向視で近づけて配置しやすくなっている。
【0047】
本実施形態の車両用駆動伝達装置100では、第3入力部材13の回転速度が第3ギヤG3の回転速度に合うように(すなわち、同期するように)制御された状態で、非連結状態から第1連結状態への切り替えが行われ、第3入力部材13の回転速度が第4ギヤG4の回転速度に合うように制御された状態で、非連結状態から第2連結状態への切り替えが行われる。そのため、本実施形態では、第1切替機構51にはシンクロ機構は設けられていない。
【0048】
図1に示すように、第2ギヤ機構22は、第2入力部材12と一体的に回転する第8ギヤG8を備えている。また、第2カウンタギヤ機構32は、第2カウンタ軸32aと、第8ギヤG8と噛み合う第1ギヤG1と、第2カウンタ軸32aと一体的に回転すると共に差動入力ギヤGDと噛み合う第2ギヤG2と、を備えている。本実施形態では、第8ギヤG8は、第1ギヤG1よりも小径に形成されている。すなわち、第1ギヤG1と第8ギヤG8とのギヤ比は、第2入力部材12の回転が減速して第2カウンタ軸32aに伝達されるように設定されている。また、本実施形態では、第2ギヤG2は、差動入力ギヤGDよりも小径に形成されている。すなわち、第2ギヤG2と差動入力ギヤGDとのギヤ比は、第2カウンタ軸32aの回転が減速して差動歯車装置6(具体的には、差動入力ギヤGD)に伝達されるように設定されている。本実施形態では、第1ギヤG1は、第2ギヤG2よりも大径に形成されている。本実施形態では、第8ギヤG8が、「第2入力部材と一体的に回転するギヤ」に相当する。
【0049】
第2切替機構52は、第1ギヤG1が第2カウンタ軸32aに連結された状態と、第1ギヤG1が第2カウンタ軸32aから切り離された状態とを切り替えることで、第2伝動状態と第2非伝動状態とを切り替えるように構成されている。第1ギヤG1が第2カウンタ軸32aに連結された状態では、第2入力部材12と第2カウンタ軸32aとの間で第1ギヤG1と第8ギヤG8とのギヤ対を介して駆動力が伝達される状態となって、第2伝動状態が実現される。また、第1ギヤG1が第2カウンタ軸32aから切り離された状態では、第2入力部材12と第2カウンタ軸32aとの間で駆動力が伝達されない状態となって、第2非伝動状態が実現される。なお、第1ギヤG1が第2カウンタ軸32aから切り離された状態では、第1ギヤG1は、第2カウンタ軸32aに対して相対回転可能に第2カウンタ軸32aに支持される。
【0050】
本実施形態では、第2切替機構52は、噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)を用いて構成されている。具体的には、第2切替機構52は、軸方向Lに移動可能な第2スリーブ部材52aと、第2カウンタ軸32aと一体的に回転する第4係合部E4と、第1ギヤG1と一体的に回転する第5係合部E5と、を備えている。第2スリーブ部材52a、第4係合部E4、及び第5係合部E5は、第6軸A6上に配置されている。すなわち、第2切替機構52(具体的には、少なくとも、第2スリーブ部材52a、第4係合部E4、及び第5係合部E5)は、第2カウンタギヤ機構32と同軸に配置されている。
【0051】
第2スリーブ部材52aの軸方向Lの位置は、軸方向Lに移動可能にケース7に支持された第2シフトフォーク52b(
図2及び
図3参照)によって切り替えられる。第2シフトフォーク52bは、第2スリーブ部材52aの回転(第6軸A6回りの回転)を許容する状態で第2スリーブ部材52aと一体的に軸方向Lに移動するように、第2スリーブ部材52a(具体的には、第2スリーブ部材52aの外周面に形成された溝部)に係合している。第2シフトフォーク52bは、電動アクチュエータや油圧アクチュエータ等のアクチュエータの駆動力によって軸方向Lに移動される。
【0052】
本実施形態では、第2スリーブ部材52aの内周面には、内歯が形成されており、第4係合部E4及び第5係合部E5のそれぞれの外周面には、外歯が形成されている。第2スリーブ部材52aは、第4係合部E4に外嵌するように配置された状態で、第4係合部E4に対して相対回転不能に且つ第4係合部E4に対して軸方向Lに相対移動可能に、第4係合部E4に連結されている。第4係合部E4(具体的には、第4係合部E4に形成された外歯)は、第2スリーブ部材52aの軸方向Lの位置によらずに、第2スリーブ部材52a(具体的には、第2スリーブ部材52aに形成された内歯)に係合する。一方、第5係合部E5(具体的には、第5係合部E5に形成された外歯)は、第2スリーブ部材52aの軸方向Lの位置に応じて、第2スリーブ部材52a(具体的には、第2スリーブ部材52aに形成された内歯)に選択的に係合する。
【0053】
第2切替機構52は、第2スリーブ部材52aの軸方向Lの位置に応じて、第1ギヤG1が第2カウンタ軸32aに連結された状態と、第1ギヤG1が第2カウンタ軸32aから切り離された状態と、を切り替えるように構成されている。具体的には、第2スリーブ部材52aが、第4係合部E4に係合し且つ第5係合部E5に係合しない軸方向Lの位置に移動した状態で(
図1、
図2参照)、第1ギヤG1が第2カウンタ軸32aから切り離された状態が実現される。また、第2スリーブ部材52aが、第4係合部E4及び第5係合部E5に係合する軸方向Lの位置(
図1及び
図2に示す第2スリーブ部材52aの位置よりも軸方向第1側L1の位置)に移動した状態で、第1ギヤG1が第2カウンタ軸32aに連結された状態が実現される。
【0054】
図2に示すように、本実施形態では、第2切替機構52は、差動入力ギヤGDに対して軸方向第2側L2において、差動ケース41と軸方向Lの配置領域が重複するように(言い換えれば、差動ケース41と軸方向Lに重複するように)配置されている。具体的には、第2スリーブ部材52a、第4係合部E4、及び第5係合部E5が、差動入力ギヤGDに対して軸方向第2側L2において、差動ケース41と軸方向Lの配置領域が重複するように配置されている。ここでは、第2切替機構52(具体的には、第2スリーブ部材52a、第4係合部E4、及び第5係合部E5)は、差動ギヤ機構40における軸方向Lの中央部40aに対して軸方向第2側L2において(言い換えれば、ピニオンシャフト42に対して軸方向第2側L2において)、差動ケース41と軸方向Lの配置領域が重複するように配置されている。
【0055】
本実施形態では、第1ギヤG1は、第2ギヤG2に対して軸方向第2側L2に(すなわち、差動入力ギヤGDに対して軸方向第2側L2に)配置されている。ここでは、第1ギヤG1は、差動ギヤ機構40における軸方向Lの中央部40aに対して軸方向第2側L2に(言い換えれば、ピニオンシャフト42に対して軸方向第2側L2に)配置されている。そして、第2切替機構52は、第1ギヤG1に対して軸方向第2側L2に配置されている。具体的には、第5係合部E5が、第1ギヤG1(具体的には、第1ギヤG1における外周部に歯部が形成された本体部)に対して軸方向第2側L2に配置され、第4係合部E4が、第5係合部E5に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0056】
図2に示すように、本実施形態では、第2入力部材12は、第5軸受B5と、第5軸受B5に対して軸方向第2側L2に配置された第6軸受B6とにより、軸方向Lの2ヶ所でケース7に支持されている。第8ギヤG8は、第5軸受B5と第6軸受B6との軸方向Lの間に配置されている。そして、本実施形態では、第2切替機構52は、第6軸受B6と軸方向Lの配置領域が重複するように配置されている。ここでは、第2スリーブ部材52a及び第4係合部E4が、第6軸受B6と軸方向Lの配置領域が重複するように配置されている。本実施形態では、第6軸受B6が、「第2入力部材12を支持する軸受」に相当する。
【0057】
本実施形態では、第2切替機構52を駆動する駆動部70(
図3参照)は、上述した第2シフトフォーク52bを用いて構成されている。そして、第2切替機構52は、駆動部70により駆動される第2スリーブ部材52a(
図1及び
図2参照)を、第2カウンタギヤ機構32と同軸に備えている。第2スリーブ部材52aは、軸方向Lに移動して第2伝動状態と第2非伝動状態とを切り替える。以下に述べるような駆動部70の配置構成を採用することで、この車両用駆動伝達装置100では、装置全体の寸法の大型化を抑制しつつ駆動部70を配置することが可能となっている。本実施形態では、第2スリーブ部材52aが「被駆動部材」に相当する。
【0058】
図1及び
図2に示すように、第2入力部材12、差動歯車装置6、及び第2カウンタギヤ機構32は、互いに平行な3つの軸(具体的には、第2軸A2、第4軸A4、及び第6軸A6)に分かれて配置されている。ここで、
図3に示すように、第4軸A4と第6軸A6とを含む仮想平面を第1平面P1とし、第1平面P1に平行な面であって差動歯車装置6の外周に接する仮想平面を第2平面P2とする。また、第1平面P1に直交し且つ第2カウンタギヤ機構32の外周に接する2つの仮想平面を、第3平面P3及び第4平面P4とする。また、差動歯車装置6の外周及び第2カウンタギヤ機構32の外周の双方に接する仮想平面を、第5平面P5とする。本実施形態では、第4軸A4が、「差動歯車装置の回転軸心」に相当し、第6軸A6が、「第2カウンタギヤ機構の回転軸心」に相当する。
【0059】
第2平面P2及び第5平面P5は、差動歯車装置6における外径(第4軸A4を基準とする径方向の寸法)が最も大きい部分の外周に接するように定義することができる。本実施形態では、差動入力ギヤGDが、差動歯車装置6における外径が最も大きい部分であり、
図3に示すように、第2平面P2及び第5平面P5を、差動入力ギヤGDの外周に接するように(具体的には、軸方向Lに沿う軸方向視で差動入力ギヤGDの基準ピッチ円に接するように)定義している。なお、第2平面P2及び第5平面P5を、軸方向視で差動入力ギヤGDの基準ピッチ円以外の円(歯先円、歯底円等)に接するように定義してもよい。
【0060】
また、第3平面P3、第4平面P4、及び第5平面P5は、第2カウンタギヤ機構32における外径(第6軸A6を基準とする径方向の寸法)が最も大きい部分の外周に接するように定義することができる。本実施形態では、第1ギヤG1が、第2カウンタギヤ機構32における外径が最も大きい部分であり、
図3に示すように、第3平面P3、第4平面P4、及び第5平面P5を、第1ギヤG1の外周に接するように(具体的には、軸方向視で第1ギヤG1の基準ピッチ円に接するように)定義している。なお、第3平面P3、第4平面P4、及び第5平面P5を、軸方向視で第1ギヤG1の基準ピッチ円以外の円(歯先円、歯底円等)に接するように定義してもよい。
【0061】
軸方向Lに沿う軸方向視で第1平面P1に平行な方向を第1方向D1とし、軸方向視で第1方向D1に直交する方向を第2方向D2として、第1平面P1に平行な面であって差動歯車装置6の外周に接する仮想平面(すなわち、第2平面P2となり得る面)は、第1平面P1に対して第2方向D2の両側に存在する。
図3に示すように、本実施形態では、第1軸A1、第2軸A2、第3軸A3、及び第5軸A5が、第1平面P1に対して同じ側(第2方向D2の同じ側)に配置されており、第1平面P1に対してこれらの各軸(A1,A2,A3,A5)が配置される側とは反対側(第2方向D2の反対側)に配置されるように、第2平面P2を定義している。すなわち、これらの各軸と第2平面P2とが第1平面P1に対して第2方向D2の両側に分かれて配置されるように、第2平面P2を定義している。なお、第1軸A1、第2軸A2、第3軸A3、及び第5軸A5のうちの少なくともいずれかの軸(例えば、第2軸A2)が、第1平面P1に対して第2平面P2と同じ側(第2方向D2の同じ側)に配置される構成とすることもできる。
【0062】
また、差動歯車装置6の外周及び第2カウンタギヤ機構32の外周の双方に接する仮想平面(すなわち、第5平面P5となり得る面)は、2つ存在する。
図3に示すように、軸方向視で、差動歯車装置6の外周(ここでは、差動入力ギヤGDの外周)と、第2カウンタギヤ機構32の外周(ここでは、第1ギヤG1の外周)と、第5平面P5とに囲まれる空間を対象空間Sとして、本実施形態では、対象空間Sと第2平面P2とが、第1平面P1に対して同じ側(第2方向D2の同じ側)に配置されるように、第5平面P5を定義している。また、本実施形態では、第1平面P1に直交し且つ第2カウンタギヤ機構32の外周に接する2つの仮想平面のうちの、第4軸A4からの距離(第1方向D1に沿った距離)が長い方を第3平面P3としている。
【0063】
本実施形態では、差動歯車装置6は、第2カウンタギヤ機構32よりも大径に形成されている。具体的には、差動入力ギヤGDが、第1ギヤG1及び第2ギヤG2のうちの大径に形成される方(本実施形態では、第1ギヤG1)よりも大径に形成されている。そのため、
図3に示すように、第2カウンタギヤ機構32の外周(ここでは、第1ギヤG1の外周)と第2平面P2との間には、装置全体の軸方向視での寸法の大型化に大きな影響を与えることなく部材を配置することが可能な空間(以下、「特定空間」という)が形成されている。具体的には、軸方向視で、第2カウンタギヤ機構32の外周(ここでは、第1ギヤG1の外周)と、差動歯車装置6の外周(ここでは、差動入力ギヤGDの外周)と、第2平面P2と、第3平面P3とに囲まれる空間が、特定空間となっている。この車両用駆動伝達装置100では、第2スリーブ部材52aが、第2入力部材12と同軸ではなく第2カウンタギヤ機構32と同軸に配置されるため、この特定空間を駆動部70の配置空間として利用しやすくなっている。
【0064】
なお、本実施形態では、
図2に示すように、パーキングギヤGPが、第2カウンタギヤ機構32と同軸に配置されている。具体的には、パーキングギヤGPが、第2カウンタ軸32aと一体的に回転するように設けられている。そして、本実施形態では、
図3に示すように、パーキングギヤGPの回転を規制するパーキングロック機構(図示せず)が、第1平面P1に対して駆動部70が配置される側とは反対側(第2方向D2の反対側)に配置されている。すなわち、パーキングロック機構は、
図3における空間Tに配置されている。第1平面P1に対してパーキングロック機構が配置される側では、駆動部70の配置空間を確保するのが容易ではなく、この点に鑑みて、本実施形態では、第1平面P1に対してパーキングロック機構が配置される側とは反対側に、駆動部70の配置空間を確保している。
【0065】
図3に示すように、駆動部70の少なくとも一部が、軸方向視で、第1平面P1と第2平面P2との間であって、第2カウンタギヤ機構32及び差動歯車装置6のいずれとも重複しない位置(ここでは、第1ギヤG1及び差動入力ギヤGDのいずれとも重複しない位置、以下同様)に配置されている。
図3に示す例では、駆動部70における第2シフトフォーク52bを除く部分の全体或いは大部分が、軸方向視で、第1平面P1と第2平面P2との間であって、第2カウンタギヤ機構32及び差動歯車装置6のいずれとも重複しない位置に配置されている。また、駆動部70の少なくとも一部が、軸方向視で、第3平面P3及び第4平面P4の間であって、第2カウンタギヤ機構32及び差動歯車装置6のいずれとも重複しない位置に配置されている。
図3に示す例では、駆動部70の全体或いは大部分が、軸方向視で、第3平面P3及び第4平面P4の間であって、第2カウンタギヤ機構32及び差動歯車装置6のいずれとも重複しない位置に配置されている。
【0066】
本実施形態では、更に、駆動部70の少なくとも一部が、軸方向視で、対象空間S(上述したように、軸方向視で差動歯車装置6の外周と第2カウンタギヤ機構32の外周と第5平面P5とに囲まれる空間)に配置されている。本実施形態では、駆動部70が、電動モータ71、回転軸72、ナット73、連結部材74、及びフォークシャフト75を備えており、
図3に示す例では、電動モータ71の一部、ナット73の一部、及び連結部材74の一部が、軸方向視で対象空間Sに配置されている。
【0067】
本実施形態では、第2シフトフォーク52bは、第7軸A7上に配置されたフォークシャフト75に、連結されている。第7軸A7は、第6軸A6とは異なる軸(仮想軸)であり、第6軸A6と平行に配置されている。フォークシャフト75は、軸方向Lに移動可能にケース7に支持されている。そして、駆動部70は、駆動力源(ここでは、電動モータ71)の駆動力によってフォークシャフト75を軸方向Lに移動させることで、フォークシャフト75に連結された第2シフトフォーク52bを軸方向Lに移動させるように構成されている。本実施形態では、第2シフトフォーク52bは、フォークシャフト75と一体的に軸方向Lに移動するように、フォークシャフト75に連結されている。
図3に示す例では、第7軸A7は、軸方向視で、第1平面P1と第2平面P2との間で且つ第3平面P3と第4平面P4との間であって、第2カウンタギヤ機構32及び差動歯車装置6のいずれとも重複しない位置に配置されている。
【0068】
本実施形態では、電動モータ71及び電動モータ71によって回転される回転軸72が、第7軸A7とは異なる軸(仮想軸)である第8軸A8上に配置されている。
図3に示す例では、第8軸A8は、第7軸A7と平行に配置されている。また、
図3に示す例では、第8軸A8は、軸方向視で、第1平面P1と第2平面P2との間で且つ第3平面P3と第4平面P4との間であって、第2カウンタギヤ機構32及び差動歯車装置6のいずれとも重複しない位置に配置されている。そして、駆動部70は、回転軸72の第8軸A8回りの回転運動をフォークシャフト75の軸方向Lに沿った直線運動に変換することで、フォークシャフト75を軸方向Lに移動させるように構成されている。すなわち、駆動部70は、第8軸A8上に配置された回転軸72を回転させて、第2スリーブ部材52aを駆動するように(具体的には、軸方向Lに駆動するように)構成されている。本実施形態では、第8軸A8が、「第2カウンタギヤ機構の回転軸心と平行な軸」に相当する。
【0069】
図3に示す例では、回転軸72は、外周にねじが形成されたねじ軸であり、ナット73が、回転軸72に螺合されている。よって、回転軸72の第8軸A8回りの回転運動は、ナット73の第8軸A8に沿った直線運動(ここでは、軸方向Lに沿った直線運動)に変換される。本例では、これらの回転軸72及びナット73はボールねじ機構を構成しており、回転軸72とナット73との間にはボール(図示せず)が介在している。そして、ナット73の直線駆動力(直線運動力)が、ナット73とフォークシャフト75とを連結する連結部材74を介してフォークシャフト75に伝達されることで、フォークシャフト75が軸方向Lに沿って移動する。詳細は省略するが、連結部材74は、ナット73と一体的に第8軸A8に沿って移動するように、ナット73に連結されている。そして、連結部材74は、付勢部材(図示せず)を介してフォークシャフト75に連結されており、ナット73と一体的に移動する連結部材74の直線駆動力が、当該付勢部材を介してフォークシャフト75に伝達されるように構成されている。このように、本実施形態では、駆動部70は、軸方向Lに沿って移動部材を往復移動させる移動駆動部と、移動部材の軸方向Lに沿う往復移動に伴い第2スリーブ部材52aが軸方向Lに沿って往復移動するように、移動部材と第2スリーブ部材52aとを連結する連結部と、を備えている。そして、
図3に示す例では、移動部材は、ナット73であり、移動駆動部は、電動モータ71及び回転軸72を備え、連結部は、連結部材74、フォークシャフト75、及び第2シフトフォーク52bを備えている。なお、
図3に示す運動変換機構(回転軸72の第8軸A8回りの回転運動をフォークシャフト75の軸方向Lに沿った直線運動に変換する機構)は一例であり、運動変換機構として種々の構成を採用することができる。
【0070】
本実施形態の車両用駆動伝達装置100では、第1ギヤG1の回転速度が第2カウンタ軸32aの回転速度に合うように(すなわち、同期するように)制御された状態で、第1ギヤG1が第2カウンタ軸32aから切り離された状態から、第1ギヤG1が第2カウンタ軸32aに連結された状態への切り替えが行われる。そのため、本実施形態では、第2切替機構52にはシンクロ機構は設けられていない。
【0071】
〔その他の実施形態〕
次に、車両用駆動伝達装置のその他の実施形態について説明する。
【0072】
(1)上記の実施形態では、駆動部70の少なくとも一部が、軸方向視で対象空間Sに配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、駆動部70の全体が、軸方向視で対象空間Sの外側に配置される構成とすることもできる。
【0073】
(2)上記の実施形態では、駆動部70の駆動力源(具体的には、電動モータ71)が、フォークシャフト75とは別軸に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、駆動部70の駆動力源が、フォークシャフト75と同軸に配置される構成とすることもできる。この場合、例えば、駆動部70の駆動力源としてリニアモータを用いることができる。また、駆動部70として、電動アクチュエータとは異なる種類のアクチュエータ(例えば、油圧アクチュエータ、ソレノイドアクチュエータ等)を用いてもよい。
【0074】
(3)上記の実施形態では、第2切替機構52が、第6軸受B6と軸方向Lの配置領域が重複するように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2切替機構52の軸方向Lの配置領域が、第6軸受B6の軸方向Lの配置領域と重複しない構成とすることもできる。
【0075】
(4)上記の実施形態では、第1ギヤG1が、第2ギヤG2に対して軸方向第2側L2に配置され、第2切替機構52が、第1ギヤG1に対して軸方向第2側L2に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2切替機構52が第2ギヤG2に対して軸方向第2側L2に配置され、第1ギヤG1が第2切替機構52に対して軸方向第2側L2に配置される構成とすることもできる。
【0076】
(5)上記の実施形態では、第2切替機構52が、差動入力ギヤGDに対して軸方向第2側L2において、差動ケース41と軸方向Lの配置領域が重複するように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2切替機構52が、差動入力ギヤGDに対して軸方向第2側L2において、差動ケース41と軸方向Lの配置領域が重複しないように配置される構成とすることもできる。また、第2切替機構52が、差動入力ギヤGDに対して軸方向第1側L1において、差動ケース41と軸方向Lの配置領域が重複するように配置される構成とし、或いは、第2切替機構52が、差動入力ギヤGDに対して軸方向第1側L1において、差動ケース41と軸方向Lの配置領域が重複しないように配置される構成とすることもできる。このように、第2切替機構52が、差動入力ギヤGDに対して軸方向第1側L1に配置される場合、第1ギヤG1が、第2ギヤG2に対して軸方向第1側L1に配置され、第2切替機構52が、第1ギヤG1に対して軸方向第1側L1に配置される構成とし、或いは、第2切替機構52が第2ギヤG2に対して軸方向第1側L1に配置され、第1ギヤG1が第2切替機構52に対して軸方向第1側L1に配置される構成とすることができる。
【0077】
(6)上記の実施形態では、差動入力ギヤGDが、差動ギヤ機構40におけるピニオンシャフト42に対して軸方向第1側L1に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、差動入力ギヤGDが、差動ギヤ機構40におけるピニオンシャフト42と軸方向Lの同じ位置に配置される構成や、差動入力ギヤGDが、差動ギヤ機構40におけるピニオンシャフト42に対して軸方向第2側L2に配置される構成とすることもできる。
【0078】
(7)上記の実施形態では、第5ギヤG5及び第6ギヤG6が、第1カウンタ軸31aと一体的に回転するように第1カウンタ軸31aに連結され、第3ギヤG3及び第4ギヤG4が、第1切替機構51によって選択的に第3入力部材13に連結される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、第3ギヤG3及び第4ギヤG4が、第3入力部材13と一体的に回転するように第3入力部材13に連結され、第5ギヤG5及び第6ギヤG6が、第1切替機構51によって選択的に第1カウンタ軸31aに連結される構成とすることもできる。この場合、第1切替機構51は、第3入力部材13と同軸ではなく、第1カウンタギヤ機構31と同軸に配置される。
【0079】
また、第5ギヤG5が第1カウンタ軸31aと一体的に回転するように第1カウンタ軸31aに連結されると共に、第4ギヤG4が第3入力部材13と一体的に回転するように第3入力部材13に連結され、第6ギヤG6が、第1切替機構51によって選択的に第1カウンタ軸31aに連結されると共に、第3ギヤG3が、第1切替機構51によって選択的に第3入力部材13に連結される構成とすることもできる。或いは、第6ギヤG6が第1カウンタ軸31aと一体的に回転するように第1カウンタ軸31aに連結されると共に、第3ギヤG3が第3入力部材13と一体的に回転するように第3入力部材13に連結され、第5ギヤG5が、第1切替機構51によって選択的に第1カウンタ軸31aに連結されると共に、第4ギヤG4が、第1切替機構51によって選択的に第3入力部材13に連結される構成とすることもできる。これらの場合、第1切替機構51は、第3入力部材13と同軸に配置される切替機構と、第1カウンタギヤ機構31と同軸に配置される切替機構とを組み合わせて構成される。
【0080】
(8)上記の実施形態では、第1切替機構51が、2つの第1伝動状態と1つの第1非伝動状態とを切り替える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1切替機構51が、1つの第1伝動状態と1つの第1非伝動状態とを切り替える構成とすることもできる。具体的には、第3ギヤG3と第5ギヤG5とのギヤ対と、第4ギヤG4と第6ギヤG6とのギヤ対とのうちの、一方のギヤ対のみが設けられ、第1切替機構51が、第3入力部材13と第1カウンタ軸31aとの間で当該一方のギヤ対を介して駆動力が伝達される状態と、第3入力部材13と第1カウンタ軸31aとの間で駆動力が伝達されない状態とを切り替える構成とすることができる。
【0081】
(9)上記の実施形態では、第1切替機構51が、噛み合い式係合装置を用いて構成される場合を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1切替機構51を、摩擦係合装置を用いて構成してもよい。また、上記の実施形態では、第2切替機構52が、噛み合い式係合装置を用いて構成される場合を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2切替機構52を、摩擦係合装置を用いて構成してもよい。この場合、例えば、摩擦板を押圧する押圧部材(ピストン、プレッシャプレート等)が、駆動部70により駆動される被駆動部材となる。
【0082】
(10)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0083】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動伝達装置の概要について説明する。
【0084】
車両用駆動伝達装置(100)は、第1回転電機(1)に駆動連結される第1入力部材(11)と、第2回転電機(2)に駆動連結される第2入力部材(12)と、内燃機関(3)に駆動連結される第3入力部材(13)と、差動入力ギヤ(GD)を備え、前記差動入力ギヤ(GD)の回転を、それぞれ車輪(4)に駆動連結される一対の出力部材(5)に分配する差動歯車装置(6)と、前記第1入力部材(11)と前記第3入力部材(13)とを駆動連結すると共に、第1カウンタギヤ機構(31)を介して前記第3入力部材(13)と前記差動入力ギヤ(GD)とを駆動連結する第1ギヤ機構(21)と、第2カウンタギヤ機構(32)を介して前記第2入力部材(12)と前記差動入力ギヤ(GD)とを駆動連結する第2ギヤ機構(22)と、を備え、前記第3入力部材(13)と前記差動入力ギヤ(GD)との間で駆動力が伝達される第1伝動状態と、前記第3入力部材(13)と前記差動入力ギヤ(GD)との間で駆動力が伝達されない第1非伝動状態と、を切り替える第1切替機構(51)が、前記第1ギヤ機構(21)に設けられ、前記第2入力部材(12)と前記差動入力ギヤ(GD)との間で駆動力が伝達される第2伝動状態と、前記第2入力部材(12)と前記差動入力ギヤ(GD)との間で駆動力が伝達されない第2非伝動状態と、を切り替える第2切替機構(52)が、前記第2ギヤ機構(22)に設けられ、前記第2切替機構(52)は、駆動部(70)により駆動される被駆動部材(52a)を、前記第2カウンタギヤ機構(32)と同軸に備え、前記第2入力部材(12)、前記差動歯車装置(6)、及び前記第2カウンタギヤ機構(32)は、互いに平行な3つの軸(A2,A4,A6)に分かれて配置され、前記第2カウンタギヤ機構(32)の回転軸心(A6)と前記差動歯車装置(6)の回転軸心(A4)とを含む仮想平面を第1平面(P1)とし、前記第1平面(P1)に平行な面であって前記差動歯車装置(6)の外周に接する仮想平面を第2平面(P2)として、前記駆動部(70)の少なくとも一部が、軸方向(L)に沿う軸方向視で、前記第1平面(P1)と前記第2平面(P2)との間であって、前記第2カウンタギヤ機構(32)及び前記差動歯車装置(6)のいずれとも重複しない位置に配置されている。
【0085】
この構成によれば、第3入力部材(13)と差動入力ギヤ(GD)との間の駆動力の伝達状態を、第1切替機構(51)により第1非伝動状態に切り替え、第2入力部材(12)と差動入力ギヤ(GD)との間の駆動力の伝達状態を、第2切替機構(52)により第2伝動状態に切り替えることで、車両用駆動伝達装置(100)において電動走行モード及びシリーズモードを実現することができる。また、第3入力部材(13)と差動入力ギヤ(GD)との間の駆動力の伝達状態を、第1切替機構(51)により第1伝動状態に切り替えることで、車両用駆動伝達装置(100)においてパラレルモードを実現することができる。ここで、第2入力部材(12)と差動入力ギヤ(GD)との間の駆動力の伝達状態を、第2切替機構(52)により第2非伝動状態に切り替えることで、第3入力部材(13)を介さずに差動入力ギヤ(GD)に駆動連結される第2回転電機(2)を、差動入力ギヤ(GD)から切り離すことができる。そのため、パラレルモードにおいて第2回転電機(2)を停止させる場合に、第2回転電機(2)の連れ回りを回避することができる。
【0086】
そして、本構成では、第2切替機構(52)を駆動する駆動部(70)の少なくとも一部が、軸方向(L)に沿う軸方向視で、第1平面(P1)と第2平面(P2)との間であって、第2カウンタギヤ機構(32)及び差動歯車装置(6)のいずれとも重複しない位置に配置されている。差動歯車装置(6)は、通常、第2カウンタギヤ機構(32)よりも大径に形成されるため、第2カウンタギヤ機構(32)の外周と第2平面(P2)との間には、装置全体の軸方向視での寸法の大型化に大きな影響を与えることなく部材を配置することが可能な空間(以下、「特定空間」という)が形成される。本構成では、駆動部(70)の少なくとも一部が上記のように第1平面(P1)と第2平面(P2)との間に配置されると共に、駆動部(70)の駆動対象である被駆動部材(52a)が第2入力部材(12)と同軸ではなく第2カウンタギヤ機構(32)と同軸に配置される。そのため、上記の特定空間を、駆動部(70)の配置空間として利用することができ、これにより、装置全体の寸法の大型化を抑制しつつ第2切替機構(52)の駆動部(70)を配置することが可能となっている。
【0087】
ここで、前記駆動部(70)の少なくとも一部が、前記軸方向視で、前記第1平面(P1)に直交し且つ前記第2カウンタギヤ機構(32)の外周に接する2つの仮想平面(P3,P4)の間であって、前記第2カウンタギヤ機構(32)及び前記差動歯車装置(6)のいずれとも重複しない位置に配置されていると好適である。
【0088】
この構成によれば、軸方向視で第1平面(P1)に沿う方向(D1)における装置全体の寸法の大型化を抑制しつつ駆動部(70)を配置することが容易となる。
【0089】
また、前記駆動部(70)の少なくとも一部が、前記軸方向視で、前記差動歯車装置(6)の外周と、前記第2カウンタギヤ機構(32)の外周と、前記差動歯車装置(6)の外周及び前記第2カウンタギヤ機構(32)の外周の双方に接する仮想平面(P5)とに囲まれる空間(S)に配置されていると好適である。
【0090】
この構成によれば、装置全体の軸方向視での寸法の大型化を抑制しつつ駆動部(70)を配置することが更に容易となる。
【0091】
また、前記駆動部(70)は、前記第2カウンタギヤ機構(32)の回転軸心(A6)と平行な軸(A8)に配置された回転軸(72)を回転させて、前記被駆動部材(52a)を駆動するように構成されていると好適である。
【0092】
この構成によれば、駆動部(70)が、軸方向(L)に交差する軸に配置された回転軸を回転させて被駆動部材(52a)を駆動するように構成される場合に比べて、駆動部(70)の軸方向視での配置領域を小さく抑えることができる。よって、装置全体の軸方向視での寸法の大型化を抑制しつつ駆動部(70)を配置することができる。
【0093】
また、前記軸方向(L)の一方側を軸方向第1側(L1)とし、前記軸方向(L)における前記軸方向第1側(L1)とは反対側を軸方向第2側(L2)として、前記差動入力ギヤ(GD)は、前記差動歯車装置(6)が備える差動ギヤ機構(40)におけるピニオンシャフト(42)に対して、前記軸方向第1側(L1)に配置され、前記第2切替機構(52)は、前記差動入力ギヤ(GD)に対して前記軸方向第2側(L2)において、前記差動ギヤ機構(40)を収容する差動ケース(41)と前記軸方向(L)に重複するように配置されていると好適である。
【0094】
この構成によれば、第2切替機構(52)の軸方向(L)の配置領域が、差動ケース(41)の軸方向(L)の配置領域と重複しない場合に比べて、装置全体の軸方向(L)の寸法の小型化を図ることができる。なお、本構成では、差動入力ギヤ(GD)に対してピニオンシャフト(42)と第2切替機構(52)とが軸方向(L)の同じ側に配置される。ピニオンシャフト(42)は、一般に、差動ギヤ機構(40)における軸方向(L)の中央部(40a)又はその近傍に配置されやすいため、このようにピニオンシャフト(42)と第2切替機構(52)とを差動入力ギヤ(GD)に対して軸方向(L)の同じ側に配置することで、差動ケース(41)と軸方向(L)の配置領域が重複する割合が高くなるように第2切替機構(52)を配置しやすくなっており、この結果、装置全体の軸方向(L)の寸法の小型化を図ることが容易となっている。
【0095】
上記のように、前記第2切替機構(52)が、前記差動入力ギヤ(GD)に対して前記軸方向第2側(L2)において、前記差動ケース(41)と前記軸方向(L)の配置領域が重複するように配置される構成において、前記第2カウンタギヤ機構(32)は、第2カウンタ軸(32a)と、前記第2入力部材(12)と一体的に回転するギヤ(G8)と噛み合う第1ギヤ(G1)と、前記第2カウンタ軸(32a)と一体的に回転すると共に前記差動入力ギヤ(GD)と噛み合う第2ギヤ(G2)と、を備え、前記第2切替機構(52)は、前記第1ギヤ(G1)が前記第2カウンタ軸(32a)に連結された状態と、前記第1ギヤ(G1)が前記第2カウンタ軸(32a)から切り離された状態とを切り替えることで、前記第2伝動状態と前記第2非伝動状態とを切り替えるように構成され、前記第1ギヤ(G1)は、前記第2ギヤ(G2)に対して前記軸方向第2側(L2)に配置され、前記第2切替機構(52)は、前記第1ギヤ(G1)に対して前記軸方向第2側(L2)に配置されていると好適である。
【0096】
この構成によれば、第2切替機構(52)が第2ギヤ(G2)に対して軸方向第2側(L2)に配置され、第1ギヤ(G1)が第2切替機構(52)に対して軸方向第2側(L2)に配置される場合に比べて、第2入力部材(12)と一体的に回転すると共に第1ギヤ(G1)と噛み合うギヤ(G8)を、軸方向第1側(L1)に寄せて配置することができる。よって、第2回転電機(2)が第2入力部材(12)に対して軸方向第1側(L1)に配置される場合等において、第2入力部材(12)の軸方向(L)の長さを短く抑えやすくなり、この結果、装置全体の軸方向(L)の寸法の小型化を図りやすくなる。
【0097】
上記の各構成の車両用駆動伝達装置(100)において、前記第2切替機構(52)は、前記第2入力部材(12)を支持する軸受(B6)と前記軸方向(L)の配置領域が重複するように配置されていると好適である。
【0098】
この構成によれば、第2入力部材(12)を支持する軸受(B6)に対して径方向外側に形成される空間を利用して、第2切替機構(52)を配置することができ、装置全体の軸方向(L)の寸法の小型化を図ることができる。
【0099】
また、前記第1ギヤ機構(21)は、前記第3入力部材(13)とそれぞれ同軸に配置される第3ギヤ(G3)及び第4ギヤ(G4)を備え、前記第1カウンタギヤ機構(31)は、第1カウンタ軸(31a)と、前記第3ギヤ(G3)と噛み合う第5ギヤ(G5)と、前記第4ギヤ(G4)と噛み合う第6ギヤ(G6)と、前記第1カウンタ軸(31a)と一体的に回転すると共に前記差動入力ギヤ(GD)と噛み合う第7ギヤ(G7)と、を備え、前記第3ギヤ(G3)と前記第5ギヤ(G5)とのギヤ比は、前記第4ギヤ(G4)と前記第6ギヤ(G6)とのギヤ比と異なり、前記第1切替機構(51)は、前記第3入力部材(13)と前記第1カウンタ軸(31a)との間で前記第3ギヤ(G3)と前記第5ギヤ(G5)とのギヤ対を介して駆動力が伝達される状態と、前記第3入力部材(13)と前記第1カウンタ軸(31a)との間で前記第4ギヤ(G4)と前記第6ギヤ(G6)とのギヤ対を介して駆動力が伝達される状態と、前記第3入力部材(13)と前記第1カウンタ軸(31a)との間で駆動力が伝達されない状態とを切り替えることで、2つの前記第1伝動状態と1つの前記第1非伝動状態とを切り替えるように構成されていると好適である。
【0100】
この構成によれば、第3入力部材(13)と差動入力ギヤ(GD)との間の駆動力の伝達状態を、第1切替機構(51)により2つの第1伝動状態の間で切り替えることで、第3入力部材(13)と出力部材(5)との間の変速比を切り替えることができる。よって、第3入力部材(13)と出力部材(5)との間の変速比が固定される場合に比べて、燃料消費率の観点から有利な回転速度で内燃機関(3)を運転しやすくなり、エネルギ効率の向上を図ることができる。
【0101】
本開示に係る車両用駆動伝達装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0102】
1:第1回転電機
2:第2回転電機
3:内燃機関
4:車輪
5:出力部材
6:差動歯車装置
11:第1入力部材
12:第2入力部材
13:第3入力部材
21:第1ギヤ機構
22:第2ギヤ機構
31:第1カウンタギヤ機構
31a:第1カウンタ軸
32:第2カウンタギヤ機構
32a:第2カウンタ軸
40:差動ギヤ機構
41:差動ケース
42:ピニオンシャフト
51:第1切替機構
52:第2切替機構
52a:第2スリーブ部材(被駆動部材)
70:駆動部
72:回転軸
100:車両用駆動伝達装置
A4:第4軸(差動歯車装置の回転軸心)
A6:第6軸(第2カウンタギヤ機構の回転軸心)
A8:第8軸(第2カウンタギヤ機構の回転軸心と平行な軸)
B6:第6軸受(第2入力部材を支持する軸受)
GD:差動入力ギヤ
G1:第1ギヤ
G2:第2ギヤ
G3:第3ギヤ
G4:第4ギヤ
G5:第5ギヤ
G6:第6ギヤ
G7:第7ギヤ
G8:第8ギヤ(第2入力部材と一体的に回転するギヤ)
L:軸方向
L1:軸方向第1側
L2:軸方向第2側
P1:第1平面
P2:第2平面
P3:第3平面(第1平面に直交し且つ第2カウンタギヤ機構の外周に接する仮想平面)
P4:第4平面(第1平面に直交し且つ第2カウンタギヤ機構の外周に接する仮想平面)
P5:第5平面(差動歯車装置の外周及び第2カウンタギヤ機構の外周の双方に接する仮想平面)
S:対象空間(差動歯車装置の外周と第2カウンタギヤ機構の外周と第5平面とに囲まれる空間)