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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】作業支援サーバおよび作業支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20240521BHJP
   G05D 1/222 20240101ALI20240521BHJP
   E02F 3/00 20060101ALI20240521BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G06Q50/08
G05D1/222
E02F3/00
H04N7/18 U
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019212619
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021086226
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 均
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 誠司
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋一郎
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/139102(WO,A1)
【文献】特開2019-029889(JP,A)
【文献】特開2019-148926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/08
G05D 1/00-1/87
E02F 3/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクライアントにおける作業現場に関する情報の共有を支援する作業支援システムであって、
撮像装置を通じて取得された作業現場の画像において対象物体画像領域を指定させ、指定された前記対象物体画像領域に存在する対象物体に関する対象物体関連情報を入力させるための入力インターフェースを備える第1クライアントと、
前記入力インターフェースを通じて指定された前記対象物体画像領域と前記撮像装置の実空間位置および実空間姿勢に基づいて推定された前記対象物体の延在態様および前記入力インターフェースにおいて入力された前記対象物体関連情報を示す作業環境画像を出力する出力インターフェースを備える第2クライアントと、により構成される
ことを特徴とする作業支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業支援システムにおいて、
前記対象物体関連情報は、前記対象物体の種類または性質を示す情報である
ことを特徴とする作業支援システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業支援システムにおいて、
前記1クライアントを構成する端末装置が備える撮像装置を通じて前記画像が取得される
ことを特徴とする作業支援システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の作業支援システムにおいて、
作業機械に搭載されている撮像装置を通じて前記画像が取得される
ことを特徴とする作業支援システム。
【請求項5】
請求項1~3のうちいずれか1項に記載の作業支援システムにおいて、
前記第1クライアントは、作業機械を遠隔操作するための遠隔操作装置である
ことを特徴とする作業支援システム。
【請求項6】
請求項1~3のうちいずれか1項に記載の作業支援システムにおいて、
前記第2クライアントは、作業機械を遠隔操作するための遠隔操作装置である
ことを特徴とする作業支援システム。
【請求項7】
複数のクライアントにおける作業現場に関する情報の共有を支援する作業支援サーバであって、
第1クライアントの入力インターフェースを通じて指定された撮像装置を通じて取得される作業現場の画像における対象物体画像領域および前記入力インターフェースを通じて入力された前記対象物体画像領域に存在する対象物体に関する対象物体関連情報を認識し、前記入力インターフェースを通じて指定された前記対象物体画像領域と前記撮像装置の実空間位置および実空間姿勢に基づいて推定される前記対象物体の延在態様および前記入力インターフェースを通じて入力された前記対象物体関連情報を示す作業環境画像を第2クライアントの出力インターフェースに出力させることを特徴とする作業支援サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 複数の作業員のそれぞれに対して割り当てられた複数のクライアントとの通信により、前記複数の作業員の間の作業現場に関する情報の共有を支援するための作業支援サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
プラント内を巡回点検中の作業従事者と、その作業現場外に待機している者との間で十分な精度で情報の共有化を図るための遠隔監視支援システム用端末装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この端末装置は、現場の映像データを入力する映像入力手段と、ペンあるいはマウスタイプの入力操作選択手段と、新規の映像取得の有無を検出する検出手段と、外部とのデータ送受信を無線で行う通信制御手段と、所定のデータを入力する入力画面を表示する入出力画面表示手段と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-242830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数の作業関係者が関与する作業エリアにおいて注意を要する物体に関する情報を、当該複数の作業関係者の間で共有できることが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は、作業エリアにおいて注意を要する物体に関する情報を、複数の作業関係者に共有させることができるサーバおよびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の作業員のそれぞれに対して割り当てられた複数のクライアントとの通信により、前記複数の作業員の間の作業現場に関する情報の共有を支援するための作業支援サーバに関する。
【0007】
本発明の作業支援サーバは、前記複数のクライアントのうちの第1クライアントとの通信に基づき、撮像装置を通じて取得された撮像画像の一部である対象物体画像領域における対象物体の存在および当該対象物体に関する対象物体関連情報と、前記撮像装置の実空間位置および実空間姿勢と、を認識し、前記撮像装置の実空間位置および実空間姿勢に基づき、前記対象物体の実空間における延在態様を推定する第1支援処理要素と、前記複数のクライアントのうちの前記第2クライアントとの通信に基づき、前記第1支援処理要素により推定された前記対象物体の延在態様および対象物体関連情報を示す作業環境画像を、前記第2クライアントの出力インターフェースに出力させる第2支援処理要素と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の作業支援システムは、本発明の作業支援サーバと、前記複数のクライアントと、により構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の作業支援サーバおよび作業支援システム(以下、適宜「作業支援サーバ等」という。)によれば、第1クライアントの撮像装置を通じて取得された撮像画像の一部である対象物体画像領域における対象物体の実空間における延在態様および対象物体関連情報を示す作業環境画像が、第2クライアントの出力インターフェースに出力される。このため、例えば、各作業員がその周囲に対象物体の存在を認識した際、クライアントを第1クライアントとして用いて当該対象物体の撮像画像を迅速に取得することができる。そして、他の作業員がクライアントを第2クライアントとして用いてその出力インターフェースに出力された作業環境画像を通じて当該対象物体の実空間における延在態様および対象物体関連情報を迅速に認識することができる。さらに、例えば、共通の現場にいる複数の作業員のそれぞれがクライアントを第1クライアントとして用いることにより、さまざまな対象物体に関する情報量の豊富なマップを当該複数の作業員の間で共有することができる。これにより、例えば、作業員が作業機械を用いて作業する際に、対象物体の延在態様を意識しながら作業を円滑に遂行することができる。
【0010】
本発明の作業支援サーバ等において、前記第1支援処理要素が、前記第1クライアントとの通信に基づき、前記第1クライアントの出力インターフェースに出力された撮像画像において、前記第1クライアントの入力インターフェースを通じて指定された対象物体画像領域における対象物体の延在態様および当該対象物体に関する対象物体関連情報を認識することが好ましい。
【0011】
当該構成の作業支援サーバ等によれば、例えば、前記のように、各作業員がその周囲に対象物体の存在を認識した際、クライアントを第1クライアントとして用いて当該対象物体の撮像画像を迅速に取得することができる。さらに、各作業員が第1クライアントの出力インターフェースに出力された当該対象物体の撮像画像のうち対象物体が存在する一部の画像領域を、入力インターフェースを通じて対象物体画像領域として指定し、かつ、対象物体関連情報を入力することができる。このため、各作業員が気付いた対象物体の存在および対象物体関連情報を、他の作業員により高精度で伝えることができる。
【0012】
本発明の作業支援サーバ等において、前記第1支援処理要素が、作業機械を遠隔操作するための、前記第1クライアントとしての遠隔操作装置との通信に基づき、前記作業機械に搭載されている撮像装置を通じて取得された撮像画像の一部である前記対象物体画像領域における前記対象物体の存在および当該対象物体に関する対象物体関連情報と、前記撮像装置の実空間位置および実空間姿勢と、を認識することが好ましい。
【0013】
当該構成の作業支援サーバ等によれば、作業機械に搭載されている撮像装置を通じて取得された撮像画像に基づき、当該作業機械の周辺における対象物体の延在態様および対象物体関連情報を複数の作業員で共有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態としての作業支援システムの構成に関する説明図。
図2】遠隔操作装置の構成に関する説明図。
図3】作業機械の構成に関する説明図。
図4】作業支援システムの第1機能に関する説明図。
図5】作業支援システムの第2機能に関する説明図。
図6】撮像画像および対象物体画像領域に関する説明図。
図7】第1環境画像に関する説明図。
図8】作業環境画像に関する説明図。
図9】第2環境画像に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(作業支援システムの構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての作業支援システムは、作業支援サーバ10と、作業機械40を遠隔操作するための遠隔操作装置20と、作業員端末60と、により構成されている。「複数のクライアント」は、一または複数の遠隔操作装置20および一または複数の作業員端末60により構成されていてもよく、複数の遠隔操作装置20または複数の作業員端末60により構成されていてもよい。作業支援サーバ10と、遠隔操作装置20と、作業機械40と、作業員端末60と、は相互にネットワーク通信可能に構成されている。
【0016】
(作業支援サーバの構成)
作業支援サーバ10は、データベース102と、第1支援処理要素121と、第2支援処理要素122と、を備えている。データベース102は、「撮像画像」、「撮像装置612の実空間位置および実空間姿勢」、「当該撮像画像における対象物体画像領域の延在態様」および「当該対象物体画像領域に存在する対象物体に関する対象物体関連情報」などを記憶保持する。データベース102は、作業支援サーバ10とは別個のデータベースサーバにより構成されていてもよい。各支援処理要素は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった後述の演算処理を実行する。
【0017】
(遠隔操作装置の構成)
一のクライアントを構成する遠隔操作装置20は、遠隔制御装置200と、遠隔入力インターフェース210と、遠隔出力インターフェース220と、を備えている。遠隔制御装置200は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。遠隔入力インターフェース210は、遠隔操作機構211を備えている。遠隔出力インターフェース220は、画像出力装置221と、遠隔無線通信機器222と、を備えている。
【0018】
遠隔操作装置20と連携するまたは相互通信機能を有する携帯端末により当該一のクライアントが構成されていてもよい。当該携帯端末は、後述する作業員端末60と同様の構成を有している。
【0019】
遠隔操作機構211には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置と、が含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、作業機械40の下部走行体410を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部または下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、作業機械40の旋回機構430を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、作業機械40のブームシリンダ442を動かすために操作される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)は作業機械40のアームシリンダ444を動かすために操作される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)は作業機械40のバケットシリンダ446を動かすために操作される。
【0020】
遠隔操作機構211を構成する各操作レバーは、例えば、図2に示されているように、オペレータが着座するためのシートStの周囲に配置されている。シートStは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、または、背もたれがないチェアのような形態など、遠隔オペレータOP2が着座できる任意の形態でもよい。
【0021】
シートStの前方に左右のクローラに応じた左右一対の走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一の操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、図3に示されているシートStの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。同様に、図2に示されているシートStの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
【0022】
画像出力装置221は、例えば図2に示されているように、シートStの右斜め前方、前方および左斜め前方のそれぞれに配置された右斜め前方画像出力装置2211、前方画像出力装置2212および左斜め前方画像出力装置2213により構成されている。当該画像出力装置2211~2213は、スピーカ(音声出力装置)をさらに備えていてもよい。
【0023】
(作業機械の構成)
作業機械40は、実機制御装置400と、実機入力インターフェース410と、実機出力インターフェース420と、作動機構440と、を備えている。実機制御装置400は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0024】
作業機械40は、例えばクローラショベル(建設機械)であり、図に示されているように、クローラ式の下部走行体410と、下部走行体410に旋回機構430を介して旋回可能に搭載されている上部旋回体420と、を備えている。上部旋回体420の前方左側部にはキャブ(運転室)424が設けられている。上部旋回体20の前方中央部には作業アタッチメント440が設けられている。
【0025】
実機入力インターフェース410は、実機操作機構411と、実機撮像装置412と、を備えている。実機操作機構411は、キャブ424の内部に配置されたシートの周囲に遠隔操作機構211と同様に配置された複数の操作レバーを備えている。遠隔操作レバーの操作態様に応じた信号を受信し、当該受信信号に基づいて実機操作レバーを動かす駆動機構またはロボットがキャブ424に設けられている。実機撮像装置412は、例えばキャブ424の内部に設置され、キャブ424のフロントウィンドウ越しに作動機構440の少なくとも一部を含む環境を撮像する。
【0026】
実機出力インターフェース420は、実機無線通信機器422を備えている。
【0027】
作動機構としての作業アタッチメント440は、上部旋回体420に起伏可能に装着されているブーム441と、ブーム441の先端に回動可能に連結されているアーム443と、アーム443の先端に回動可能に連結されているバケット445と、を備えている。作業アタッチメント440には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されているブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446が装着されている。
【0028】
ブームシリンダ442は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム441を起伏方向に回動させるように当該ブーム441と上部旋回体420との間に介在する。アームシリンダ444は、作動油の供給を受けることにより伸縮してアーム443をブーム441に対して水平軸回りに回動させるように当該アーム443と当該ブーム441との間に介在する。バケットシリンダ446は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット445をアーム443に対して水平軸回りに回動させるように当該バケット445と当該アーム443との間に介在する。
【0029】
(作業員端末の構成)
他のクライアントを構成する作業員端末60は、スマートホンまたはタブレット端末などの端末装置であり、制御装置600と、入力インターフェース610と、出力インターフェース620と、を備えている。制御装置600は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0030】
入力インターフェース610は、撮像装置612を備えている。入力インターフェース610は、タッチパネル方式のボタンおよびスイッチなどにより構成されている。出力インターフェース620は、画像出力装置621(および必要に応じて音声出力装置)と、無線通信機器622と、を備えている。
【0031】
(機能)
(第1機能(作業環境画像の出力))
前記構成の作業支援システムの機能について図4および図5に示されているフローチャートを用いて説明する。当該フローチャートにおいて「C●」というブロックは、記載の簡略のために用いられ、データの送信および/または受信を意味し、当該データの送信および/または受信を条件として分岐方向の処理が実行される条件分岐を意味している。図4には、作業員端末60が「第1クライアント」を構成し、遠隔操作装置20が「第2クライアント」を構成する場合のフローチャートが示されているが、これとは逆に、作業員端末60が「第2クライアント」を構成し、遠隔操作装置20が「第1クライアント」を構成していてもよい。
【0032】
遠隔操作装置20において、オペレータOPにより遠隔入力インターフェース210を通じた第1指定操作の有無が判定される(図4/STEP202)。第1指定操作は、例えば、遠隔入力インターフェース210における所定箇所のタップなどの操作である。当該判定結果が肯定的である場合(図/STEP202‥YES)、遠隔無線通信機器222を通じて、作業支援サーバ10に対して第1環境確認要求が送信される(図4/STEP204)。
【0033】
作業支援サーバ10において、第1環境確認要求が受信された場合(図4/C10)、第1支援処理要素121により、作業現場の大局的な様子を表わす第1環境画像データが当該遠隔操作装置20に対して送信される(図4/STEP102)。
【0034】
遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器222を通じて第1環境画像データが受信された場合(図4/C20)、第1環境画像データに応じた第1環境画像が画像出力装置221に出力される(図/STEP212)。これにより、例えば図7に示されているように、作業現場の大局的な様子を示す鳥瞰マップまたは鳥瞰撮像画像が遠隔出力インターフェース20を構成する画像出力装置221において出力される。鳥瞰マップにおける位置は緯度および経度により特定されうる。鳥瞰撮像画像には、第1の作業機械40の所在を示す画像またはアイコンQ1および第2の作業機械40の所在を示す画像またはアイコンQ2、ならびに、第1作業員の所在を示す画像OP1が含まれている。鳥瞰撮像画像は、例えば無人飛行機に搭載されている撮像装置または作業現場のポール等の構造物に設置されている撮像装置を通じて取得されてもよい。第1環境画像としての撮像画像の撮像箇所および画角のそれぞれは任意に変更されてもよい。鳥瞰マップは、鳥瞰撮像画像を基礎として生成されてもよい。
【0035】
作業員端末60において、第1作業員により入力インターフェース610を通じて、撮像操作があったことに応じて、撮像装置612を通じて撮像画像が取得される(図4/STEP602)。また、当該撮像画像が出力インターフェース620を構成する画像出力装置621に出力される(図4/STEP604)。これにより、例えば図6に示されているように、作業機械40が通過した跡が窪地になっている作業現場の様子を示す撮像画像が画像出力装置621に出力される。遠隔操作装置20が「第1クライアント」に該当する場合、作業機械40に搭載されている実機撮像装置412を通じて取得された、当該作業機械40の周囲の様子を示す撮像画像(第2環境画像)が、遠隔出力インターフェース220を構成する画像出力装置221において出力される(図9参照)。
【0036】
制御装置600により、撮像画像が取得された際の撮像装置612の実空間位置および実空間姿勢が測定される(図4/STEP606)。撮像装置612の実空間位置(緯度および経度)はGPSなどの測位センサの出力信号に基づいて測定される。撮像装置612の実空間姿勢は3軸方位センサまたは加速度センサの出力信号に基づいて測定される。
【0037】
制御装置600により、入力インターフェース610における操作を通じて、対象物体画像領域Rが指定されたか否かが判定される(図4/STEP60)。例えば、作業員端末60において、入力インターフェース610および出力インターフェース620の両方を構成するタッチパネルにおいて、第1作業員の指先またはペンの軌跡が認識されることにより、対象物体画像領域の延在態様または輪郭が認識されてもよい。これにより、例えば図6に示されているように、撮像画像において略台形状の対象物体画像領域Rが第1作業員により指定されうる。遠隔操作装置20が「第1クライアント」に該当する場合、出力インターフェース620において出力されている、作業機械40に搭載されている実機撮像装置412を通じて取得された撮像画像としての第2環境画像(図9参照)において、入力インターフェース610における操作を通じて対象物体画像領域Rの指定および対象物体関連情報の入力が可能である(図4/STEP606参照)。
【0038】
当該判定結果が肯定的である場合(図4/STEP60‥YES)、制御装置600により、入力インターフェース610における第1作業員の操作を通じて、対象物体関連情報が入力されたか否かが判定される(図4/STEP612)。例えば、入力インターフェース610および出力インターフェース620の両方を構成するタッチ式キーボードにおいて、第1作業員の指先またはペンの接触態様が認識されることにより、対象物体関連情報が認識されてもよい。これにより、例えば「砂利」、「瓦礫」、「資材」、「砂地」、「穴」、「窪地」、「水たまり」または「岩」など、対象物体の種類または性質などを示す情報が対象物体関連情報として認識されうる。
【0039】
当該判定結果が肯定的である場合(図4/STEP612‥YES)、「撮像画像」、「撮像装置612の実空間位置および実空間姿勢」、「当該撮像画像における対象物体画像領域Rの延在態様」および「当該対象物体画像領域に存在する対象物体に関する対象物体関連情報」のそれぞれを表わすデータが、出力インターフェース620を構成する無線通信機器622により、作業支援サーバ10に対して送信される(図4/STEP616)。遠隔操作装置20が「第1クライアント」に該当する場合、「撮像画像」、「実機撮像装置412の実空間位置および実空間姿勢」、「当該撮像画像における対象物体画像領域Rの延在態様」および「当該対象物体画像領域に存在する対象物体に関する対象物体関連情報」のそれぞれを表わすデータが、遠隔出力インターフェース220を構成する遠隔無線通信機器222により、作業支援サーバ10に対して送信される。
【0040】
作業支援サーバ10において、「撮像画像データ」、「撮像装置612の実空間位置および実空間姿勢」、「対象物体画像領域Rの延在態様」および「対象物体関連情報」のそれぞれを表わすデータが受信された場合(図4/C13)、第1支援処理要素121により、対象物体の実空間における延在態様が推定される(図4/STEP108)。例えば、作業員が接している地面を基準とした撮像装置612の高さは、当該地面に立っているまたは座っている人間の標準的な腰部位置から頭部位置までの範囲の所定の高さにあると仮定される。また、当該地面と同じ高さの水平面(2次元空間)に対象物体が存在していると仮定される。すなわち、撮像画像において指定された対象物体画像領域Rが、撮像装置612の画角に応じた広がりをもって当該水平面に投影されたエリアに対象物体が2次元的に延在していると仮定される。
【0041】
これらの仮定の上で、撮像画像座標系における対象物体画像領域Rの延在態様に加えて、撮像装置612の実空間位置および実空間姿勢、ならびに画角または焦点距離に基づき、対象物体の延在態様(緯度方向および経度方向のそれぞれへの広がり方)が推定される。対象物体が地面よりも高い位置にある構造物または地面よりも窪んでいる窪地などである場合、当該仮定に基づく推定精度は低くなるが、対象物体の実空間における大まかな延在態様は把握可能である。
【0042】
作業員端末60に搭載されている測距センサ(または撮像装置612としての測距センサ)により測定された対象物体までの距離が画素値として割り当てられた撮像画像(または撮像画像としての距離画像)が、当該作業員端末60から作業支援サーバ10に対して送信されてもよい。この場合、撮像装置612の実空間位置を基準とする対象物体またはその表面の実空間における延在態様がより高精度で推定されうる。
【0043】
続いて、第2支援処理要素122により、第1環境画像を基礎として、第1支援処理要素121による対象物体の実空間における延在態様の推定結果および対象物体関連情報を示す作業環境画像が生成される(図4/STEP110)。その上で、第2支援処理要素122により、作業環境画像データが遠隔操作装置20に対して送信される(図4/STEP112)。
【0044】
遠隔操作装置20において、遠隔出力インターフェース220を構成する遠隔無線通信機器222により作業環境画像データが受信された場合(図4/C21)、遠隔出力インターフェース620を構成する画像出力装置621において作業環境画像が出力される(図4/STEP208)。これにより、例えば図8に示されているように、第1作業環境画像(図7参照)において、対象物体の実空間における対象物体画像領域Rの延在態様を表わす画像および当該対象物体Rに関連する「窪地あり」という対象物体関連情報が遠隔出力インターフェース620を構成する画像出力装置に出力される。
【0045】
作業員端末60において、制御装置600により、入力インターフェース610における第1作業員の操作を通じて、対象物体関連情報が入力されていないと判定された場合(図4/STEP612‥NO)、「撮像画像」、「撮像装置612の実空間位置および実空間姿勢」および「当該撮像画像における対象物体画像領域Rの延在態様」のそれぞれを表わすデータが、出力インターフェース620を構成する無線通信機器622により、作業支援サーバ10に対して送信される(図4/STEP614)。
【0046】
作業支援サーバ10において、「撮像画像データ」、「撮像装置612の実空間位置および実空間姿勢」および「対象物体画像領域Rの延在態様」のそれぞれを表わすデータが受信された場合(図4/C12)、第1支援処理要素121により、対象物体関連情報が認識可能であるか否かが判定される(図4/STEP106)。例えば、対象物体画像領域Rのテクスチャ解析処理によって、当該対象物体画像領域Rに存在する物体の種類または性質が対象物体関連情報として認識されうる。当該判定結果が肯定的である場合(図4/STEP106‥YES)、前述の対象物体の実空間における延在態様の推定(図4/STEP108)以降の処理が実行される。当該判定結果が否定的である場合(図4/STEP106‥NO)、作業環境画像データが遠隔操作装置20に対して送信されることなく、ひいては作業環境画像(図8参照)が遠隔操作装置20において出力されることなく、図4に示された一連の処理が終了する。
【0047】
作業員端末60において、制御装置600により、入力インターフェース610における第1作業員の操作を通じて、対象物体画像領域Rが指定されていないと判定された場合(図4/STEP60‥NO)、「撮像画像」および「撮像装置612の実空間位置および実空間姿勢」のそれぞれを表わすデータが、出力インターフェース620を構成する無線通信機器622により、作業支援サーバ10に対して送信される(図4/STEP610)。
【0048】
作業支援サーバ10において、「撮像画像データ」および「撮像装置612の実空間位置および実空間姿勢」のそれぞれを表わすデータが受信された場合(図4/C11)、第1支援処理要素121により、対象物体画像領域が認識可能であるか否かが判定される(図4/STEP104)。例えば、撮像画像を対象とするパターンマッチング等の画像解析処理によって、当該撮像画像の一部が対象物体画像領域として認識されうる。当該判定結果が肯定的である場合(図4/STEP104‥YES)、前述の対象物体関連情報の認識可否判定(図4/STEP106)以降の処理が実行される。当該判定結果が否定的である場合(図4/STEP104‥NO)、作業環境画像データが遠隔操作装置20に対して送信されることなく、ひいては作業環境画像(図8参照)が遠隔操作装置20において出力されることなく、図4に示された一連の処理が終了する。
【0049】
遠隔操作装置20において、オペレータOPにより遠隔入力インターフェース210を通じた第2指定操作の有無が判定される(図5/STEP220)。「第2指定操作」は、例えば、作業環境画像(図7参照)において、作業員が遠隔操作を意図する作業機械40を指定するための遠隔入力インターフェース210における画像Q1またはQ2のタップなどの操作である。第2指定操作は第1指定操作と異なる態様の操作であってもよく、同一の態様の操作であってもよい。当該判定結果が否定的である場合(図5/STEP220‥NO)、一連の処理が終了する。その一方、当該判定結果が肯定的である場合(図5/STEP220‥YES)、遠隔無線通信機器222を通じて、作業支援サーバ10に対して第2環境確認要求が送信される(図/STEP222)。
【0050】
作業支援サーバ10において、第2環境確認要求が受信された場合、第1支援処理要素121により当該第2環境確認要求が該当する作業機械40に対して送信される(図5/C14)。
【0051】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて環境確認要求が受信された場合(図5/C41)、実機制御装置400が実機撮像装置412を通じて撮像画像を取得する(図5/STEP402)。実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて、当該撮像画像を表わす撮像画像データが作業支援サーバ10に対して送信される(図5/STEP404)。
【0052】
作業支援サーバ10において、撮像画像データが受信された場合(図5/C15)、撮像画像データに応じた第2環境画像データ(撮像画像そのものの全部または一部またはこれに基づいて生成された模擬的な環境画像を表わすデータ)が遠隔操作装置20に対して送信される(図5/STEP112)。
【0053】
遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器222を通じて第2環境画像データが受信された場合(図5/C2)、第2環境画像データに応じた第2環境画像が画像出力装置221に出力される(図5/STEP224)。これにより、例えば図9に示されているように、作動機構としての作業アタッチメント440の一部であるブーム441、アーム443、バケット445およびアームシリンダ444が含まれている環境画像が画像出力装置221および第2画像出力装置221のそれぞれに表示される。
【0054】
遠隔操作装置20において、遠隔制御装置200により遠隔操作機構211の操作態様が認識され(図5/STEP226)、かつ、遠隔無線通信機器222を通じて、当該操作態様に応じた遠隔操作指令が作業支援サーバ10に対して送信される(図5/STEP228)。
【0055】
作業支援サーバ10において、当該遠隔操作指令が受信された場合、第1支援処理要素121により、当該遠隔操作指令が作業機械40に対して送信される(図5/C16)。
【0056】
作業機械40において、実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて操作指令が受信された場合(図5/C42)、作業アタッチメント440等の動作が制御される(図5/STEP406)。例えば、バケット445により作業機械40の前方の土をすくい、上部旋回体40を旋回させたうえでバケット445から土を落とす作業が実行される。
【0057】
(効果)
当該構成の作業支援システムおよびこれを構成する作業支援サーバ10によれば、第1クライアント(例えば、作業員端末60)の撮像装置(例えば、撮像装置612)を通じて取得された撮像画像の一部である対象物体画像領域Rにおける対象物体の実空間における延在態様および対象物体関連情報を示す作業環境画像が、第2クライアント(例えば、遠隔操作装置20)の出力インターフェース(例えば、遠隔出力インターフェース220)に出力される(図4/STEP602‥YES→‥STEP610、STEP614、STEP616→‥→STEP112→STEP208、図8参照)。
【0058】
このため、例えば、各作業員がその周囲に対象物体の存在を認識した際、クライアントを第1クライアントとして用いて当該対象物体の撮像画像を迅速に取得することができる(図4/STEP602および図6参照)。そして、他の作業員がクライアントを第2クライアントとして用いてその出力インターフェースに出力された作業環境画像を通じて当該対象物体の実空間における延在態様および対象物体関連情報を迅速に認識することができる(図4/STEP208および図8参照)。さらに、例えば、共通の現場にいる複数の作業員のそれぞれがクライアントを第1クライアントとして用いることにより、さまざまな対象物体に関する情報量の豊富なマップを当該複数の作業員の間で共有することができる。これにより、例えば、作業員が作業機械を用いて作業する際に、対象物体の延在態様を意識しながら作業を円滑に遂行することができる。
【0059】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、作業支援サーバ10が、遠隔操作装置20、作業機械40および作業員端末60のそれぞれとは別個の一または複数のサーバにより構成されていたが(図1参照)、他の実施形態として、作業支援サーバ10が、遠隔操作装置20、作業機械40または作業員端末60の構成要素であってもよい。作業支援サーバ10の各構成要素110、121および122のそれぞれが、遠隔操作装置20、作業機械40および作業員端末60のうちの相互通信可能な2つ以上のそれぞれの構成要素であってもよい。
【0060】
前記実施形態では、第1クライアント(例えば、作業員端末60または遠隔操作装置20)において、対象物体画像領域Rの指定および対象物体関連情報の入力が可能とされていたが、他の実施形態として、第1クライアントにおいて、対象物体画像領域Rの指定および対象物体関連情報の入力がないことが前提とされ、撮像装置を通じて取得された撮像画像が当該撮像装置の実空間位置および実空間姿勢を表わすデータとともに作業支援サーバ10に対して送信されてもよい(図4/STEP610参照)。
【0061】
また、第1クライアントにおいて、対象物体関連情報の入力がないことが前提とされ、撮像装置を通じて取得された撮像画像が、対象物体画像領域Rならびに当該撮像装置の実空間位置および実空間姿勢を表わすデータとともに作業支援サーバ10に対して送信されてもよい(図4/STEP614参照)。さらに、第1クライアントにおいて、対象物体画像領域Rの指定がないことが前提とされ、撮像装置を通じて取得された撮像画像が、対象物体関連情報ならびに当該撮像装置の実空間位置および実空間姿勢を表わすデータとともに作業支援サーバ10に対して送信されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10‥作業支援サーバ、20‥遠隔操作装置、40‥作業機械、60‥作業員端末、102‥データベース、121‥第1支援処理要素、122‥第2支援処理要素、210‥遠隔入力インターフェース、220‥遠隔出力インターフェース、410‥実機入力インターフェース、412‥実機撮像装置、420‥実機出力インターフェース、440‥作業アタッチメント(作動機構)、610‥入力インターフェース、612‥撮像装置、620‥出力インターフェース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9