(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】放射線検出パネル及び放射線画像検出器
(51)【国際特許分類】
A61B 6/42 20240101AFI20240521BHJP
【FI】
A61B6/42 500Q
(21)【出願番号】P 2019225514
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 和弥
(72)【発明者】
【氏名】永田 康史
(72)【発明者】
【氏名】山本 宜人
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-078472(JP,A)
【文献】国際公開第2011/148700(WO,A1)
【文献】特開2005-214800(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0167604(US,A1)
【文献】国際公開第2017/169048(WO,A1)
【文献】特開2019-184262(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0068953(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
G01T 1/00-1/16、1/167-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に複数の光電変換素子が配列された素子基板と、
放射線を光に変換して前記光電変換素子に照射するシンチレーターと、
を備え、
前記光電変換素子と対向するよう、前記素子基板に前記シンチレーターが積層配置され、
前記シンチレーターの全側面と、前記素子基板の少なくとも一側面とを覆う防湿層を備え、
前記防湿層は、前記シンチレーター及び前記素子基板の側面のみに備えられることを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項2】
前記シンチレーター及び前記素子基板は、平面視において少なくとも一側端部が重なり、当該一側端部において前記素子基板が前記シンチレーターからはみ出る許容量は、前記素子基板の幅の2%以内であり、
前記防湿層は、前記一側端部の側面に備えられることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出パネル。
【請求項3】
前記シンチレーター及び前記素子基板は、平面視において少なくとも一側端部が重なり、当該一側端部の側面は面一であって、
前記防湿層は、前記一側端部の側面に備えられることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出パネル。
【請求項4】
前記シンチレーターの側面部には、保護層が備えられ、
前記防湿層は、前記保護層を介して前記シンチレーターの全側面に備えられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線検出パネル。
【請求項5】
前記保護層は、前記シンチレーターの側面のみに備えられることを特徴とする請求項4に記載の放射線検出パネル。
【請求項6】
一方の面に複数の光電変換素子が配列された素子基板と、
放射線を光に変換して前記光電変換素子に照射するシンチレーターと、
を備え、
前記光電変換素子と対向するよう、前記素子基板に前記シンチレーターが積層配置され、
前記シンチレーターの全側面と、前記素子基板の少なくとも一側面とを覆う防湿層を備え、
前記シンチレーターの側面部には、保護層が備えられ、
前記防湿層は、前記保護層を介して前記シンチレーターの全側面に備えられ、
前記保護層は、前記シンチレーターの側面のみに備えられることを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の放射線検出パネルを備えることを特徴とする放射線画像検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出パネル及び放射線画像検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入射した放射線をシンチレーターで可視光等の光に変換し、変換された光を、基板上に二次元状に配列されたフォトダイオード等の複数の光電変換素子で検出する放射線検出パネルを用いた放射線画像検出器(Flat Panel Detector(FPD)ともいう。)が開発されている。放射線画像検出器では、光電変換素子で入射した光を電荷に変換し、発生した電荷を取り出すことで、被写体を介して照射された放射線に担持された情報を電気信号として検出するように構成される。
放射線検出パネルとしては、
図10に示すように、光電変換素子101の配列された素子基板102と、シンチレーター103が形成されたシンチレーター基板104とが積層され、光電変換素子101とシンチレーター103との側面を囲むようにシール材105を配置した構成などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の放射線検出パネルは、シール材の配置により、放射線検出パネルの端部までシンチレーターを配置することができず、パネル端部での診断が難しいものとなっていた。
【0005】
本発明の課題は、放射線検出パネルの端部に診断領域を広げることの可能な放射線検出パネル及び放射線画像検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の放射線検出パネルは、
一方の面に複数の光電変換素子が配列された素子基板と、
放射線を光に変換して前記光電変換素子に照射するシンチレーターと、
を備え、
前記光電変換素子と対向するよう、前記素子基板に前記シンチレーターが積層配置され、
前記シンチレーターの全側面と、前記素子基板の少なくとも一側面とを覆う防湿層を備え、
前記防湿層は、前記シンチレーター及び前記素子基板の側面のみに備えられることを特徴とする。
また、本発明の放射線検出パネルは、
一方の面に複数の光電変換素子が配列された素子基板と、
放射線を光に変換して前記光電変換素子に照射するシンチレーターと、
を備え、
前記光電変換素子と対向するよう、前記素子基板に前記シンチレーターが積層配置され、
前記シンチレーターの全側面と、前記素子基板の少なくとも一側面とを覆う防湿層を備え、
前記シンチレーターの側面部には、保護層が備えられ、
前記防湿層は、前記保護層を介して前記シンチレーターの全側面に備えられ、
前記保護層は、前記シンチレーターの側面のみに備えられることを特徴とする。
また、本発明の放射線検出パネルは、
一方の面に複数の光電変換素子が配列された素子基板と、
放射線を光に変換して前記光電変換素子に照射するシンチレーターと、
を備え、
前記光電変換素子と対向するよう、前記素子基板に前記シンチレーターが積層配置され、
前記シンチレーターの全側面と、前記素子基板の少なくとも一側面とを覆う防湿層を備え、
前記シンチレーターの側面部には、保護層が備えられ、
前記防湿層は、前記保護層を介して前記シンチレーターの全側面に備えられ、
前記保護層は、金属酸化物、金属窒化物または金属酸窒化物のうち、一種類もしくは複数種を組み合わせたものであることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の放射線画像検出器は、
前記放射線検出パネルを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放射線検出パネルの端部に診断領域を広げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】放射線検出パネルが備える素子基板表面の構成を示す平面図である。
【
図4】
図3の素子基板上の小領域に形成された光電変換素子と薄膜トランジスタ等の構成を示す拡大図である。
【
図5】COFやPCB基板などが取り付けられた素子基板を説明する図である。
【
図6】蛍光体が柱状構造を有するシンチレーターの構成およびそのシンチレーター基板への貼付を説明する拡大模式図である。
【
図9】
図7の放射線検出パネルの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0011】
[放射線検出パネルおよび放射線画像検出器]
まず、本実施形態に係る放射線検出パネル3および放射線画像検出器1の構成について説明する。
【0012】
なお、以下では、
図1や
図2に示すように、放射線画像検出器1や放射線検出パネル3における各部材の相対的な位置関係、特に上下関係について、放射線画像検出器1の筐体2における放射線が入射する面X側を上側に向け、筐体2における放射線が入射する面Xとは反対側の面Y側を下側に向けて配置した場合の位置関係に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る放射線画像検出器1の外観斜視図であり、
図2は、
図1のA-A線に沿う断面図である。
放射線画像検出器1は、
図1や
図2に示すように、放射線検出パネル3が筐体2内に収納されて構成されている。
【0014】
筐体2は、カーボン板やプラスチックなどの材料で形成されている。なお、
図1や
図2では、筐体2がフレーム板51とバック板52とで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
また、筐体2の側面部分には、LED等で構成されたインジケータ53、蓋54、外部の装置と接続される端子55、電源スイッチ56等が配置されている。
【0015】
筐体2の内部には、
図2に示すように、素子基板4、シンチレーター基板5、シンチレーター6等を備えた放射線検出パネル3が配置されている。
また、放射線検出パネル3の下方には、図示しない鉛の薄板等を介して基台7が配置され、基台7には、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)などの各種の電子部品8等が配設されたPCB基板9、緩衝部材10等が取り付けられている。
【0016】
本実施形態では、素子基板4は、放射線や紫外線などの光を透過するガラス基板で構成されている。ただし、素子基板4は、この他にも、例えばPET(polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド等の樹脂板や樹脂フィルムなどで構成することも可能である。本発明はこれらに限定されない。
図3は、素子基板4表面の構成を示す平面図である。素子基板4の表面(すなわちシンチレーター6(
図2参照)に対向する側の面)4a上には、複数の走査線11と複数の信号線12とが互いに交差するように配設されている。また、複数のバイアス線13が、複数の信号線12と平行に配置されており、本実施形態では、各バイアス線13は、素子基板4上の一方側の端部で1本の結線14により結束されている。
【0017】
また、素子基板4の表面4a上で複数の走査線11と複数の信号線12により区画された各小領域Rには、光電変換素子15がそれぞれ設けられている。このように、本実施形態では、素子基板4は、その表面4aに複数の光電変換素子15が二次元状に配列されて形成されている。また、光電変換素子15はそれぞれバイアス線13に接続されており、本実施形態では、図示しないバイアス電源からバイアス線13を介して光電変換素子15にバイアス電圧が印加されるように構成されている。
【0018】
本実施形態では、光電変換素子15として、放射線の照射を受けたシンチレーター6から出力された光の照射を受けると光エネルギを吸収して内部に電子正孔対を発生させることで光エネルギを電荷に変換するフォトダイオードが用いられている。
また、
図4の拡大図に示すように、各小領域Rには、各光電変換素子15につき1つの薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下「TFT」という。)16が設けられており、TFT16のソース電極16sが光電変換素子15の1つの電極と、ドレイン電極16dが信号線12と、ゲート電極16gが走査線11とそれぞれ接続されている。
【0019】
本実施形態の放射線検出パネル3では、
図3に示すように、上記のように構成された素子基板4の表面4a上において、走査線11や信号線12、結線14の端部がそれぞれ入出力端子(パッドともいう)18に接続されている。
【0020】
また、
図5に示すように、各入出力端子18には、COF(Chip On Film)19が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)などの異方性導電性接着材料20を介して圧着されている。また、COF19は、素子基板4の裏面4b側に引き回されており、裏面4b側でPCB基板9とCOF19とが圧着されて接続されている。
【0021】
また、
図5に示すように、素子基板4の表面4aにおける複数の光電変換素子15等が形成された部分には、複数の光電変換素子15等による表面の凹凸を平坦化し、
図5では図示を省略するシンチレーター6が光電変換素子15に対向するように配置された際にその下地とするために、複数の光電変換素子15等を被覆するように透明な樹脂等が塗布されて平坦化層21が形成されている。
【0022】
本実施形態では、平坦化層21は、シンチレーター6の蛍光体6aから出力される光を透過する透明のアクリル系感光性樹脂で形成されている。なお、
図5では、シンチレーター6のほか、電子部品8等の図示が省略されている。
【0023】
シンチレーター6(
図2参照)は、入射した放射線を別の波長の光に変換するものであり、蛍光体を主たる成分とする。具体的には、本実施形態では、シンチレーター6として、X線等の放射線が入射すると、波長が300nm~800nmの電磁波、すなわち可視光を中心として紫外光から赤外光にわたる光を出力するものが用いられている。蛍光体としては、例えばCsI:Tl等の母体材料内に発光中心物質が付活されたものが好ましく用いられる。
【0024】
シンチレーター6は、
図6の拡大図に示すように、例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の各種高分子材料により形成された支持膜6bの上に、例えば気相成長法により蛍光体6aを成長させて形成されたものであり、蛍光体6aの柱状結晶からなっている。気相成長法としては、蒸着法やスパッタ法などが好ましく用いられる。
【0025】
いずれの手法においても、蛍光体6aを支持膜6b上に独立した細長い柱状結晶として気相成長させることができる。蛍光体6aの各柱状結晶は、支持膜6b付近では太く、先端(
図6中では下側の端部)Paに向かうに従って細くなっていき、先端Paは鋭角状の略円錐形状となるように成長して形成される。
【0026】
本実施形態では、このようにして蛍光体6aが柱状結晶として形成されたシンチレーター6は、蛍光体6aの柱状結晶の鋭角状の先端Paが下側、すなわち前述した素子基板4の複数の光電変換素子15側を向くように、その支持膜6bが表面5aに貼付されている。このようにして、シンチレーター6は、シンチレーター基板5で支持されている。
【0027】
なお、蛍光体6aの柱状結晶の全体がフィルム等で覆われた状態でシンチレーター6が形成される場合もあり、その場合には、フィルムの厚さは均一とされ、蛍光体6aの先端Paが平坦化層21の表面に当接する際には、蛍光体6aの先端Paがフィルムを介して平坦化層21の表面に当接する状態となる。
【0028】
本実施形態では、シンチレーター基板5はガラス基板で構成されている。ただし、シンチレーター基板5は、この他にも、例えばPET(polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド等の樹脂板や樹脂フィルムなどで構成することも可能である。本発明はこれらに限定されない。
【0029】
図7は、
図2における放射線検出パネル3の斜視図であり、
図8は、
図7のB-B線に沿う断面図である。なお、
図7においては、シンチレーター基板5は省略している。また、
図8において、放射線検出パネル3の各部材の相対的な大きさや厚さ、部材間の間隔等は、必ずしも実際の放射線検出パネル3の構造を反映していない。
【0030】
放射線検出パネル3は、上述したように、光電変換素子15とシンチレーター6とが対向する状態となるよう、素子基板4とシンチレーター基板5とが積層配置されて形成されている。具体的には、シンチレーター基板5が、シンチレーター6の蛍光体6aの鋭角状の先端Paが複数の光電変換素子15や平坦化層21に対向するように配置されて形成されている。
【0031】
また、
図7に示すように、シンチレーター基板5及びシンチレーター6の全側面(側面の全周)と、素子基板4の少なくとも一側面を覆うように防湿層22が配置されている。
具体的に、素子基板4、シンチレーター基板5及びシンチレーター6は矩形状であり、平面視における少なくとも一辺(一側端部)はその端部同士が重なって揃った状態となるように積層配置される。その揃った側端部の側面は面一であって、防湿層22は、この側面に備えられる。かかる構成は、例えば、所定の基準面に対して素子基板4及びシンチレーター基板5を突き当てて積層配置させることにより実現可能であり、製造が容易となるとともに、構成上耐久性を高めることができる。
図7は、四角形状の素子基板4、シンチレーター基板5及びシンチレーター6の二辺が重なって揃った状態を示した例である。
【0032】
なお、上述したように、素子基板4、シンチレーター基板5及びシンチレーター6は、平面視における少なくとも一辺(一側端部)の端部同士が重なって揃った状態(側面が面一の状態)となるように積層配置されることが最も好ましいが、平面視において少なくとも一側端部が重なった状態で、この一側端部において素子基板4がシンチレーター6からはみ出ていたとしても、そのはみ出る幅(許容量)が、素子基板4の幅の2%以内であれば、構成上の耐久性等を確保する観点から好ましい態様である。さらに、はみ出る幅が、素子基板4の幅の1%以内、0.5%以内、0.25%以内とするごとに、より耐久性等効果が高まる。
【0033】
また、防湿層22は、素子基板4、シンチレーター基板5及びシンチレーター6の側面のみに備えられることが好ましい。つまり、素子基板4やシンチレーター基板5の表面に、防湿層22が延出していない状態であることが好ましい。
これは、放射線検出パネル3を筐体2に収容した際、これらの表面に防湿層22があることで意図しない段差などが生じ、放射線画像にノイズ等の影響がでるのを防ぐためである。
【0034】
防湿層22は、膜状に設けられるものであって、防湿性の高い封止ができる等の観点から、エポキシ系樹脂を用いた接着剤や、シリコーン系樹脂を用いた接着剤などが好ましく用いられる。防湿膜22の厚さは、樹脂の種類にもよるが、例えばエポキシ系樹脂であれば0.1mm以上が好ましい。
ここで、防湿層22は、加熱することにより硬化する熱硬化型の接着剤であってもよいし、光を照射すると硬化する光硬化型の接着剤であってもよい。
熱硬化型の接着剤としては、例えば、熱硬化性樹脂を用いた接着剤やさらに硬化促進剤等が添加された接着剤などを用いることが可能である。
また、光硬化型の接着剤としては、光開始剤や光重合性化合物などを含む紫外線硬化型樹脂等を用いることが可能である。
【0035】
また、防湿層22の材質によっては硬化過程にシンチレーター6と接触することにより悪影響が発生する場合がある。
そこで、
図9に示すように、シンチレーター6の側面部に保護層23を備え、防湿層22は、保護層23を介してシンチレーター6の側面に設けられる構成とすることも好ましい。
保護層23は、SiO2、Al2O3、TiO2、SiN、AlN、TiNなどの金属酸化物、金属窒化物または金属酸窒化物のうち、一種類もしくは複数種を組み合わせたものが挙げられる。スパッタリングなどによりシンチレーター6の側面に成膜してから防湿層22を配置してもよいし、防湿層22上に前記保護層23を配置したものをシンチレーター側面に配置してもよい。保護層23の厚さは、配置する材料によるが、例えばスパッタリングで成膜したSiO2膜の場合は40nm以上が好ましい。また、保護層23に透湿性の高い材料を用いることで、防湿層22の厚さを薄くすることも可能となる。前述のスパッタリングで成膜した40nmのSiO2膜の場合、防湿層22の厚さは50μm以上が好ましい。
また、保護層23も、防湿層22と同様に放射線画像にノイズが生じるのを防ぐ観点から、シンチレーター6の側面のみに形成され、シンチレーター6の上面側や下面側に延出しないことが好ましい。
かかる保護層23を設けることにより、防湿層22の硬化過程にシンチレーター6に生じる悪影響が発生する場合、その悪影響を排除することができる。また、構成上、耐久性を高めることができる。
【0036】
[効果]
以上のように、本実施形態によれば、放射線検出パネル3は、一方の面(表面4a)に複数の光電変換素子15が配列された素子基板4と、放射線を光に変換して光電変換素子15に照射するシンチレーター6と、を備え、光電変換素子15と対向するよう、素子基板4にシンチレーター6が積層配置され、シンチレーター6の全側面と、素子基板4の少なくとも一側面とを覆う防湿層22を備える。
このため、放射線検出パネル3の端部に診断領域を広げることが可能となる。例えば、マンモグラフィーなどにおいて、有益に用いることができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、素子基板4とシンチレーター6は、平面視において少なくとも一側端部が揃った状態に積層配置され、一側端部の側面は面一であって、防湿層22は、一側端部の側面に備えられる。
このため、放射線検出パネル3の少なくとも一側端部に診断領域を広げることが可能となるのは勿論のこと、製造が容易であるとともに、構成上耐久性を高めることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、防湿層22は、シンチレーター6及び素子基板4の側面のみに備えられる。
このため、放射線検出パネル3を筐体2に収容した際に、意図しない段差などが生じ難く、放射線画像にノイズが生じるなどの不具合が発生するのを防止することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、シンチレーター6の側端部には、保護層23が備えられ、防湿層22は、保護層23を介してシンチレーター6の全側面に備えられる。この保護層23は、シンチレーター6の側面のみに備えられる。
このため、保護層23により防湿層22の硬化過程にシンチレーター6に生じる悪影響を排除することができる。また、構成上、耐久性を高めることができる。
【0040】
[その他]
なお、本発明が、上記の実施形態や変形例に限定されず、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0041】
例えば、上記実施形態では、四角形状の素子基板4及びシンチレーター6の二辺が重なって当該二辺が防湿層22により封止されている構成を例示しているが、本発明は、少なくとも一辺が防湿層22により封止されているものであればよい。すなわち、防湿層22は、四角形状の素子基板4及びシンチレーター6の一辺或いは三辺に配置されてもよいし、全周である四辺に配置することもできる。
【0042】
また、上記実施形態では、素子基板4とシンチレーター基板5の重なった辺が揃った構成、或いは、素子基板4とシンチレーター基板5が重なって素子基板4がシンチレーター6からはみ出る幅が素子基板4の幅の2%以内の構成を好ましい態様として例示したが、必ずしもこの条件で重なった辺を備えなくともよい。すなわち、素子基板4とシンチレーター基板5が重なった状態で、素子基板4がシンチレーター6からはみ出る幅が2%より大きかったとしても、防湿層22を設けることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 放射線画像検出器
2 筐体
3 放射線検出パネル
4 素子基板
4a 表面
5 シンチレーター基板
5a 表面
6 シンチレーター
15 光電変換素子
22 防湿層
23 保護層