(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造方法、及びガラス物品の製造装置
(51)【国際特許分類】
C03B 23/057 20060101AFI20240521BHJP
C03B 23/043 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C03B23/057
C03B23/043
(21)【出願番号】P 2019229454
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 隆則
(72)【発明者】
【氏名】米沢 武大
(72)【発明者】
【氏名】田中 太基
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-286045(JP,A)
【文献】米国特許第03212870(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0322565(US,A1)
【文献】特開2018-027864(JP,A)
【文献】特開平04-129168(JP,A)
【文献】特開平08-239223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00-40/04
C03C 1/00-29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管ガラスの管壁に貫通孔を有するガラス物品の製造方法であって、
管軸が水平方向に沿った姿勢で配置された
、両端に開口を有する管ガラスの上方から加熱することで前記貫通孔を形成する貫通孔形成工程を備
え、
前記貫通孔形成工程では、前記管ガラスの一方の開口から他方の開口に向けて、前記他方の開口を閉塞せずに、前記管ガラスの管内に送風しながら前記貫通孔を形成する、ガラス物品の製造方法。
【請求項2】
予熱装置の上方で前記管ガラスを回転させて前記管ガラスを予熱する予熱工程をさらに備え、前記予熱工程の後に前記貫通孔形成工程を行う、請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔形成工程の後、前記貫通孔を下方に向けた姿勢とした前記管ガラスを徐冷用加熱装置の上方に配置する徐冷工程をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項4】
前記貫通孔形成工程は、燃料噴射ノズルを備えるバーナーを用いて、前記燃料噴射ノズルから火炎を照射することで前記貫通孔を形成する工程であり、
前記貫通孔形成工程において、前記燃料噴射ノズルを前記管ガラスに火炎を照射する照射位置と、前記燃料噴射ノズルを前記照射位置よりも上方の退避位置とに上下動させる、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項5】
前記貫通孔形成工程では、加熱源の中心軸と、前記管ガラスの管軸とのなす角度が、30°以上、90°以下の範囲内となるように加熱する、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項6】
管ガラスの管壁に貫通孔を有するガラス物品の製造装置であって、
管軸が水平方向に沿った姿勢で
、両端に開口を有する管ガラスを支持する支持部材と、
前記支持部材に支持された前記管ガラスの上方から加熱する加熱装置と、
前記管ガラスの一方の開口から他方の開口に向けて、前記他方の開口を閉塞せずに、前記管ガラスの管内に送風する送風装置と、を備え、
前記管ガラスの管内に送風しながら、前記加熱により前記貫通孔を形成する、ガラス物品の製造装置。
【請求項7】
前記加熱装置は、燃料噴射ノズルを備えるバーナーであり、
前記燃料噴射ノズルは、前記管ガラスに火炎を照射する照射位置と、前記照射位置よりも上方の退避位置とに上下動可能に構成されている、請求項
6に記載のガラス物品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品の製造方法、及びガラス物品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、管ガラスの管壁に貫通孔を形成してなるガラス物品が知られている。このガラス物品の貫通孔は、バーナーの火炎を管ガラスに照射することで形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、
図10に示すように、管ガラスG10の下方からバーナーの火炎等の熱線HRにより加熱することで、管壁に貫通孔T10を形成している。この場合、熱線HRで加熱されることで軟化した管壁が自重により管壁の外周面から下方に突出するように変形することで、
図11に示すように、貫通孔T10の周囲には管壁の外周面から外方に突出する突起P10が形成され易い。このように管壁の外方に突出する突起P10を有するガラス物品G20では、例えば、ガラス物品G20の輸送時に、突起P10に加わる衝撃を要因として破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、管ガラスの管壁に貫通孔を有するガラス物品の製造において、破損の要因となり得る突起の形成を抑えることのできるガラス物品の製造方法、及びガラス物品の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するガラス物品の製造方法は、管ガラスの管壁に貫通孔を有するガラス物品の製造方法であって、管軸が水平方向に沿った姿勢で配置された前記管ガラスの上方から加熱することで前記貫通孔を形成する貫通孔形成工程を備える。
【0007】
この方法によれば、加熱されることで軟化した管壁は、自重により管壁の内周面から下方に向かって変形し易い。これにより、貫通孔の周囲には管壁の内周面から内方に突出する突起が形成され易い。すなわち、貫通孔形成工程では、管壁の外周面から外方に突出する突起については形成され難い。
【0008】
上記ガラス物品の製造方法は、予熱装置の上方で前記管ガラスを回転させて前記管ガラスを予熱する予熱工程をさらに備え、前記予熱工程の後に前記貫通孔形成工程を行うことが好ましい。
【0009】
この方法によれば、貫通孔形成工程において管ガラスを加熱した際の熱衝撃を緩和することができる。
上記ガラス物品の製造方法は、前記貫通孔形成工程の後、前記貫通孔を下方に向けた姿勢とした前記管ガラスを徐冷用加熱装置の上方に配置する徐冷工程をさらに備えることが好ましい。
【0010】
この方法によれば、貫通孔の周囲を効率よく徐冷することができる。
上記ガラス物品の製造方法において、前記貫通孔形成工程は、燃料噴射ノズルを備えるバーナーを用いて、前記燃料噴射ノズルから火炎を照射することで前記貫通孔を形成する工程であり、前記貫通孔形成工程において、前記燃料噴射ノズルを前記管ガラスに火炎を照射する照射位置と、前記燃料噴射ノズルを前記照射位置よりも上方の退避位置とに上下動させることが好ましい。
【0011】
この方法によれば、管ガラスに火炎を照射する時間を容易に制御することができる。また、バーナーの燃料噴射ノズルを退避位置に配置することで、バーナーの燃料噴射ノズルの下方において管ガラスを搬入及び搬出するスペースを十分に確保することができる。
【0012】
上記ガラス物品の製造方法において、前記管ガラスは、両端に開口を有し、前記貫通孔形成工程では、前記管ガラスの管内に送風しながら前記貫通孔を形成することが好ましい。
【0013】
この方法によれば、例えば、管ガラスの管内を送風により冷却することができるため、貫通孔を形成する管壁と対向する位置の管壁における温度上昇を抑えることができる。また、管ガラスの管内に送風することで、管ガラスの一方の端部の開口から異物を強制的に排出させることができる。
【0014】
上記ガラス物品の製造方法において、前記貫通孔形成工程では、加熱源の中心軸と、前記管ガラスの管軸とのなす角度が、30°以上、90°以下の範囲内となるように加熱することが好ましい。
【0015】
この方法によれば、管壁が効率的に加熱され易くなり、より短時間で貫通孔を形成することが可能となる。
ガラス物品の製造装置は、管ガラスの管壁に貫通孔を有するガラス物品の製造装置であって、管軸が水平方向に沿った姿勢で前記管ガラスを支持する支持部材と、前記支持部材に支持された前記管ガラスの上方から加熱する加熱装置と、を備え、前記加熱により前記貫通孔を形成する。
【0016】
上記ガラス物品の製造装置において、前記加熱装置は、燃料噴射ノズルを備えるバーナーであり、前記燃料噴射ノズルは、前記管ガラスに火炎を照射する照射位置と、前記照射位置よりも上方の退避位置とに上下動可能に構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、管ガラスの管壁に貫通孔を有するガラス物品の製造において、破損の要因となり得る突起の形成を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態におけるガラス物品の製造方法を示すフロー図である。
【
図3】ガラス物品の製造方法における予熱工程を説明する概略側面図である。
【
図5】ガラス物品の製造方法における貫通孔形成工程を説明する概略側面図である。
【
図6】貫通孔形成工程を説明する概略正面図である。
【
図7】ガラス物品の製造方法における徐冷工程を説明する概略正面図である。
【
図10】従来のガラス物品の製造方法を説明する概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ガラス物品の製造方法、及びガラス物品の製造装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0020】
ガラス物品の製造方法は、管ガラスG1を熱加工することで、
図2に示すような管壁に貫通孔T1を有するガラス物品G2を製造する方法である。
図1に示すように、本実施形態におけるガラス物品の製造方法は、予熱工程(ステップS1)と貫通孔形成工程(ステップS2)と徐冷工程(ステップS3)とを備えている。管ガラスG1としては、例えば、ダンナー法又はダウンドロー法(ベロー法)を用いて溶融ガラスから成形し、所定の長さに切断された直管状のものを用いることができる。
【0021】
図3及び
図4に示すように、ガラス物品の製造装置11は、回転機構12と予熱装置13とを備えている。ステップS1の予熱工程では、予熱装置13の上方で管ガラスG1を回転機構12により回転させて管ガラスG1を予熱する。このステップS1の予熱工程により、管ガラスG1の管軸方向の一部は、周方向にわたって予熱される。
【0022】
ステップS1の予熱工程に用いる回転機構12は、第1ローラー12a及び第2ローラー12bを備えている。第1ローラー12a及び第2ローラー12bの少なくとも一方のローラーは、図示を省略した回転駆動部により回転駆動される。第1ローラー12a及び第2ローラー12bに支持された管ガラスG1は、回転駆動されるローラーに従動することで回転される。ガラス物品の製造装置11は、複数本の管ガラスG1に対応して複数の回転機構12を備えている。
【0023】
本実施形態のステップS1の予熱工程では、予熱装置13としてバーナーを用いている。バーナーは、燃料ガスFGを噴出する燃料ガスノズルを有している。本実施形態のバーナーは、ラインバーナーである。すなわち、燃料ガスノズルは、複数の管ガラスG1を同時に加熱できるように、管ガラスG1の配列方向に沿った長手方向を有している。
【0024】
図5及び
図6に示すように、ステップS2の貫通孔形成工程では、管軸が水平方向に沿った姿勢で配置された管ガラスG1の上方から加熱することで貫通孔T1を形成する。ガラス物品の製造装置11は、ステップS2の貫通孔形成工程において管ガラスG1を支持する支持部材14と管ガラスG1を加熱する貫通孔形成用の加熱装置15とを備えている。
【0025】
支持部材14としては、例えば、上述した回転機構12の回転を停止させた第1ローラー12aと第2ローラー12bを用いることができる。なお、支持部材14は、回転機構12の第1ローラー12aと第2ローラー12bに限定されず、管ガラスG1を上記の姿勢で支持可能な構成であればよい。
【0026】
加熱装置15は、加熱源である熱線HRを管ガラスG1に照射する。ガラス物品の製造装置11は、複数の管ガラスG1に同時に貫通孔T1を形成できるように複数の加熱装置15を備えている。加熱装置15は、点状の加熱領域となるように管ガラスG1の管壁を加熱する。本実施形態のステップS2の貫通孔形成工程では、加熱装置15としてバーナーを用いている。例えば、バーナーの燃料噴射ノズルの内径(ノズル径)は、0.2mm以上、1.0mm以下の範囲内であることが好ましい。加熱装置15から照射される熱線HRの中心軸A2と、管ガラスG1の管軸A1とのなす角度θ1は、30°以上、90°以下の範囲内であることが好ましい。この場合、管壁が効率的に加熱され易くなり、より短時間で貫通孔T1を形成することが可能となる。本実施形態の熱線HRの中心軸A2は、燃料噴射ノズルの先端の中心軸である。なお、加熱装置15として、レーザー光照射装置を用いることもできる。この場合、熱線HRの中心軸A2は、レーザー光の光軸を示す。ステップS2の貫通孔形成工程では、熱線HRの中心軸A2が管ガラスG1の管軸A1と直交するように熱線HRを照射することが好ましい。すなわち、ステップS2の貫通孔形成工程では、上記角度θ1が90°となるように熱線HRを照射することがより好ましい。
【0027】
本実施形態のバーナーの燃料ガスノズルは、管ガラスG1に火炎を照射する照射位置と、照射位置よりも上方の退避位置とに上下動可能に構成されている。
図5及び
図6では、照射位置の燃料ガスノズルを実線で示し、退避位置の燃料ガスノズルを破線で示している。詳述すると、ガラス物品の製造装置11は、図示を省略した昇降装置を備え、昇降装置に燃料ガスノズルが連結されている。ガラス物品の製造装置11は、昇降装置を制御する制御部を備えている。ガラス物品の製造装置11の制御部により、燃料ガスノズルが照射位置に配置されている時間、すなわち管ガラスG1に火炎を照射する時間を制御することができる。管ガラスG1に火炎を照射する照射時間は、例えば、管ガラスG1の壁厚やガラス組成に応じて予め決定することができる。
【0028】
図5に示すように、本実施形態の管ガラスG1は両端に開口を有し、ステップS2の貫通孔形成工程では、管ガラスG1の第1端G1aと第2端G1bとのうち、第1端G1a側に貫通孔T1を形成している。ここで、ステップS2の貫通孔形成工程では、管ガラスG1の第2端G1bの開口から第1端G1aの開口に向けて管内に送風しながら貫通孔T1を形成することが好ましい。管ガラスG1の管内の送風には、ガラス物品の製造装置11の送風装置16を用いることができる。送風装置16は、送風用ガスVGを管ガラスG1の管内に向けて噴射する送風用ノズルを備えている。送風用ガスVGとしては、空気又は不活性ガスを好適に用いることができる。
【0029】
図7~
図9に示すように、ガラス物品の製造装置11は、徐冷用加熱装置17をさらに備えている。ステップS3の徐冷工程は、上述した回転機構12と徐冷用加熱装置17とを用いて行うことができる。ステップS3の徐冷工程では、貫通孔T1を下方に向けた姿勢とした管ガラスG1をガラス物品の製造装置11の徐冷用加熱装置17の上方に配置する。詳述すると、上述したステップS2の貫通孔形成工程後の管ガラスG1は、貫通孔T1を上方に向けた姿勢に配置されているため、
図7に示すように管ガラスG1を管軸回りに回転させる。これにより、
図8に示すように、ステップS2の貫通孔形成工程後の管ガラスG1を、貫通孔T1を下方に向けた姿勢にすることができる。
【0030】
本実施形態のステップS3の徐冷工程では、徐冷用加熱装置17としてバーナーを用いている。本実施形態のバーナーは、ラインバーナーである。すなわち、燃料ガスノズルは、複数の管ガラスG1を同時に加熱できるように、管ガラスG1の配列方向に沿った長手方向を有している。
【0031】
ステップS1の予熱工程、ステップS2の貫通孔形成工程及びステップS3の徐冷工程の各工程に用いるバーナーの燃焼形式としては、燃料ガスFGと空気とを予め混合して燃焼させる予混合型のバーナーであってもよいし、燃料ガスFGと空気とを拡散及び混合させながら燃焼させる拡散混合型(先混合型)のバーナーであってもよい。予混合型のバーナーは、予め混合する空気が理論空気量よりも多い完全予混合型のバーナーであってもよいし、予め混合する空気が理論空気量よりも少ない部分予混合型のバーナーであってもよい。燃料ガスFGとしては、可燃性ガスと助燃性ガスとの混合ガスが好適に用いられる。可燃性ガスとしては、例えば、水素、LPG(液化石油ガス)、及びLNG(液化天然ガス)が挙げられる。助燃性ガスとしては、例えば、酸素が挙げられる。
【0032】
なお、ガラス物品の製造装置11は、第1ローラー12a及び第2ローラー12bを移動させる移動機構を備え、この移動機構により、第1ローラー12a及び第2ローラー12bを移動させて各工程を順次行うように構成することができる。
【0033】
次に、ガラス物品の製造方法、及びガラス物品の製造装置11の主な作用について説明する。
ガラス物品の製造方法のステップS2の貫通孔形成工程では、管軸が水平方向に沿った姿勢で配置された管ガラスG1の上方から加熱することで貫通孔T1を形成している。この方法によれば、加熱されることで軟化した管壁は、自重により管壁の内周面から下方に向かって変形し易い。これにより、
図2に示すように、貫通孔T1の周囲には管壁の内周面から内方に突出する突起P1が形成され易い。すなわち、ステップS2の貫通孔形成工程では、
図11に示される管壁の外周面から外方に突出する突起P10については形成され難い。
【0034】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ガラス物品の製造方法の貫通孔形成工程(ステップS2)では、管軸が水平方向に沿った姿勢で配置された管ガラスG1の上方から加熱することで貫通孔T1を形成している。この方法によれば、上述したように管壁の外周面から外方に突出する突起P10が形成され難くなる。すなわち、管ガラスG1の管壁に貫通孔T1を有するガラス物品G2において、破損の要因となり得る突起P10の形成を抑えることができる。
【0035】
(2)ガラス物品の製造方法は、予熱装置13の上方で管ガラスG1を回転させて管ガラスG1を予熱する予熱工程(ステップS1)をさらに備え、ステップS1の予熱工程の後にステップS2の貫通孔形成工程を行っている。この場合、ステップS2の貫通孔形成工程において管ガラスG1を加熱した際の熱衝撃を緩和することができる。従って、ステップS2の貫通孔形成工程において管ガラスG1の破損が抑えられることで、ガラス物品G2の歩留まりを向上することが可能である。
【0036】
(3)ガラス物品の製造方法は、ステップS2の貫通孔形成工程の後、貫通孔T1を下方に向けた姿勢とした管ガラスG1を徐冷用加熱装置17の上方に配置するステップS3の徐冷工程をさらに備えている。この場合、貫通孔T1の周囲を効率よく徐冷することができる。
【0037】
(4)ステップS2の貫通孔形成工程において、バーナーの燃料噴射ノズルを管ガラスG1に火炎を照射する照射位置と、バーナーの燃料噴射ノズルを照射位置よりも上方の退避位置とに上下動させている。この場合、管ガラスG1に火炎を照射する時間を容易に制御することができる。また、バーナーの燃料噴射ノズルを退避位置に配置することで、バーナーの燃料噴射ノズルの下方において管ガラスG1を搬入及び搬出するスペースを十分に確保することができる。
【0038】
(5)管ガラスG1は、両端に開口を有し、ステップS2の貫通孔形成工程では、管ガラスG1の管内に送風しながら貫通孔T1を形成している。この場合、例えば、管ガラスG1の管内を送風により冷却することができるため、貫通孔T1を形成する管壁と対向する位置の管壁における温度上昇を抑えることができる。従って、貫通孔T1と対向する位置の管壁の変形を抑えることができる。
【0039】
また、管ガラスG1に貫通孔T1を形成する際には、例えば、フューム等の異物が発生することで、管ガラスG1の管内の清浄性が低下するおそれがある。上記のように管ガラスG1の管内に送風することで、管ガラスG1の一方の端部の開口から異物を強制的に排出させることができる。従って、管ガラスG1の管内の清浄性の低下を抑えることができる。
【0040】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0041】
・ステップS2の貫通孔形成工程は、管ガラスG1の管内に送風せずに行うこともできる。
・ステップS2の貫通孔形成工程において、送風用ノズルを管ガラスG1の外方に配置してもよいし、管ガラスG1の管内に挿入してもよい。
【0042】
・ステップS2の貫通孔形成工程で用いる燃料噴射ノズルは、管ガラスG1に火炎を照射する照射位置に固定されていてもよい。すなわち、燃料噴射ノズルを照射位置と退避位置とに上下動させずに、ステップS2の貫通孔形成工程を行うこともできる。
【0043】
・ステップS2の貫通孔形成工程で用いる燃料噴射ノズルを傾斜して配置し、燃料噴射ノズルを照射位置と退避位置とに上下動させる場合、燃料噴射ノズルを傾斜方向に沿って上下動させてもよい。
【0044】
・ステップS3の徐冷工程を省略することもできる。
・ステップS3の徐冷工程は、上述した方法に限定されず、例えば、貫通孔T1を上方に向けた姿勢とした管ガラスG1を徐冷炉内に配置して行うこともできる。
【0045】
・ステップS1の予熱工程を省略することもできる。
・ステップS1の予熱工程は、上述した方法に限定されず、例えば、管ガラスG1を回転させずに、予熱炉内に管ガラスG1を配置して行うこともできる。
【0046】
・ステップS1の予熱工程で用いる予熱装置13及びステップS3の徐冷工程で用いる徐冷用加熱装置17は、バーナーに限定されない。すなわち、予熱装置13又は徐冷用加熱装置17として、例えば、抵抗加熱で発熱する発熱体、レーザー照射装置等を用いることもできる。
【0047】
・ガラス物品の製造装置11は、複数本の管ガラスG1に貫通孔T1を形成するように構成されているが、ガラス物品の製造装置11を1本の管ガラスG1に貫通孔T1を形成するように構成することもできる。
【0048】
・ガラス物品の製造方法では、予熱装置13及び徐冷用加熱装置17のそれぞれに対応させて配置した回転機構12と、貫通孔形成用の加熱装置15に対応させて配置した支持部材14に管ガラスG1を搬送して各工程を順次行うように構成してもよい。
【0049】
・管ガラスG1において貫通孔T1を形成する位置は限定されない。また、1本の管ガラスG1に形成する貫通孔T1の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
・管ガラスG1は、両端に開口を有する管ガラスG1に限定されず、両端のうち少なくとも一端が封止されている管ガラスであってもよい。また、管ガラスG1の全体形状は、直管状に限定されず、例えば、曲部を有する曲管状であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
11…ガラス物品の製造装置、13…予熱装置、14…支持部材、15…加熱装置、17…徐冷用加熱装置、A1…管軸、A2…中心軸、G1…管ガラス、G2…ガラス物品、HR…熱線(加熱源)、T1…貫通孔、θ1…角度。