(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】術式提案装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20240521BHJP
A61F 2/30 20060101ALI20240521BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240521BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240521BHJP
【FI】
A61B34/10
A61F2/30
G06T7/00 350C
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2020009568
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長束 澄也
(72)【発明者】
【氏名】林 直輝
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/245866(WO,A2)
【文献】特表2019-513520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/10
A61F 2/30
G06T 7/00
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の関節部が写った放射線画像を取得する取得手段と、
関節に手術を施す前の関節部が写った
動画である術前放射線画像
に写る関節部の動きから抽出される特徴、前記関節に行った手術の術式、及び前記手術を行った後の前記関節部の状態を入力とし、行うべき前記手術の術式を出力として機械学習させた学習済モデルと、
前記学習済モデルを用い、前記取得手段が取得した前記放射線画像に写った前記関節部に対して行うべき手術の術式を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記手術の術式を出力する出力手段と、を備
える術式提案装置。
【請求項2】
前記学習済モデルは、前記関節部の状態として、前記手術を行った後の関節部が写った術後放射線画像の画像診断結果を入力とし、前記手術の前後で前記関節部の動作の変化が少ない術式を出力として機械学習させたものである請求項1に記載の術式提案装置。
【請求項3】
前記学習済モデルは、前記関節部の状態として、前記手術を行った後の被撮影者の前記関節部についての自覚症状の訴えを入力とし、前記被撮影者による痛みの訴えが少ない術式を出力として機械学習させたものである請求項1又は請求項2に記載の術式提案装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記関節部の動きが写る動画を取得し、
前記選択手段は、前記取得手段が取得した前記動画に写った前記関節部に対して行うべき手術の術式を選択する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の術式提案装置。
【請求項5】
前記取得手段は、患者に関する情報を更に取得し、
前記学習済モデルは、前記患者に関する情報を更に入力として機械学習させたものであり、
前記選択手段は、前記取得手段が取得した前記患者に関する情報を更に入力として前記手術の術式を選択する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の術式提案装置。
【請求項6】
前記患者に関する情報には、患者の年齢、性別、前記手術を行う前の前記患者の前記関節部についての自覚症状の訴え、過去の手術歴、過去の検査結果及び医師による手術前の前記関節部の画像診断結果のうちの少なくともいずれかが含まれる請求項5に記載の術式提案装置。
【請求項7】
コンピューターに、
患者の関節が写る放射線画像を取得する取得処理と、
関節に手術を施す前の関節部が写った
動画である術前放射線画像
に写る関節部の動きから抽出される特徴、前記関節に行った手術の術式、及び前記手術を行った後の前記関節部の状態を入力とし、行うべき前記手術の術式を出力として機械学習させた学習済モデルを用い、前記取得処理において取得した前記放射線画像を入力として、前記患者の関節部に対して行うべき手術の術式を出力する出力処理と、を実行さ
せるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、術式提案装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
関節を人工関節に置換する手術を実施する際、医師は適切な人工関節を選択する必要がある。
しかし、同じ関節を置換するための人工関節一つをとってもその種類は複数ある。
また、同じ症状の複数の患者に、同じように手術を施しても、全ての患者の術後の経過が良好になるとは限らない(多くの患者にとって最適な人工関節であっても、一部の患者には合わない場合がある)。
このため、人工関節の選択は、医師にとっても容易なことではない。
そこで、医師による人工関節の選択を支援する各種技術が従来提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、対象となる患者情報及び移植されるべきインプラント部品の情報を取得し、患者情報とインプラント部品の情報とを用いて評価関数を生成し、評価関数に基づいて実際に外科手術に使用すべきインプラント部品を選択するインプラント部品の選択方法について記載されている。
また、特許文献2には、第1,第2の骨部を含む患部の3次元画像から、第1,第2の骨部に対応する第1,第2の骨オブジェクトが夫々分離、抽出された3次元オブジェクト画像を生成し、患部のX線画像における第1,第2の骨部の輪郭を抽出して術中X線輪郭画像を生成し、第1,第2の骨オブジェクトが、術中X線輪郭画像の第1,第2の骨部の夫々の輪郭に合致するように3次元オブジェクト画像を位置合わせした参照画像を生成し、X線画像と参照画像とを表示する術式提案装置について記載されている。
また、特許文献3には、一組の二次元解剖画像または三次元解剖画像の上で複数の標識点を識別し、標識点間の関係の少なくとも一部に基づいて二次元解剖画像の縮尺に一致するように親人工関節の三次元表現を拡大縮小し、拡大縮小された三次元親人工関節の二次元表現を二次元解剖画像の少なくとも一つに表示する手術計画の方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4507097号公報
【文献】特開2014-097220号公報
【文献】特開2010-088893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人工関節に置換する手術は、過去に数多く行われてきている。そうした過去の事例は、より適切な人工関節の選択を行う上で役に立つ。しかしながら、特許文献1~3に記載された技術は、これから手術しようとする患者の状態に基づいて使用すべき人工関節を選択するものとなっている。このため、人工関節の選択に、過去の同様の事例で得られた知見が反映されない。
一方、手術を受けた患者の中には、良好な状態をそのまま保ち続ける人もいれば、手術の直後の調子が良くても時間が経つにつれて再び悪化してきてしまう人や、手術直後から痛みを訴える人もいる。しかしながら、特許文献1~3に記載された技術は、手術前に得られた情報のみに基づいて使用すべき人工関節を選択するものとなっている。このため、患者に合わない、短期間のうちに不具合が生じる人工関節を提案してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、患者の関節部の手術を行おうとする医師に、従来よりも高い精度で術式を提案できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る術式提案装置は、
患者の関節部が写った放射線画像を取得する取得手段と、
関節に手術を施す前の関節部が写った動画である術前放射線画像に写る関節部の動きから抽出される特徴、前記関節に行った手術の術式、及び前記手術を行った後の前記関節部の状態を入力とし、行うべき前記手術の術式を出力として機械学習させた学習済モデルと、
前記学習済モデルを用い、前記取得手段が取得した前記放射線画像に写った前記関節部に対して行うべき手術の術式を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記手術の術式を出力する出力手段と、を備える。
【0008】
また、本発明に係るプログラムは、
コンピューターに、
患者の関節が写る放射線画像を取得する取得処理と、
関節に手術を施す前の関節部が写った動画である術前放射線画像に写る関節部の動きから抽出される特徴、前記関節に行った手術の術式、及び前記手術を行った後の前記関節部の状態を入力とし、行うべき前記手術の術式を出力として機械学習させた学習済モデルを用い、前記取得処理において取得した前記放射線画像を入力として、前記患者の関節部に対して行うべき手術の術式を出力する出力処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、患者の関節部の手術を行おうとする医師に、従来よりも高い精度で術式を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る手術支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の手術支援システムが備えるデータベースが蓄積する各種情報を示す表である。
【
図3】
図2のデータベースが蓄積する手術前の放射線画像と手術後の放射線画像である。
【
図4】
図1の手術支援システムが備える術式提案装置の具体的構成を示すブロック図である。
【
図5】患者又は被撮影者の関節の動作を示す図である。
【
図6】
図4の術式提案装置が実行する術式提案処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0012】
<1.手術支援システム>
初めに、本実施形態に係る手術支援システム100の構成について説明する。
図1は、手術支援システム100の概略構成を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態に係る手術支援システム100は、放射線撮影システム1と、サーバー2と、術式提案装置3と、を備えている。
これらは、通信ネットワークNを介して互いに通信可能となっている。
なお、手術支援システム100は、上位システム(例えば、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)や、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等)と接続されていてもよい。
【0014】
〔1-1.放射線撮影システム〕
本実施形態に係る放射線撮影システム1は、図示しない放射線発生装置と、図示しない放射線検出器と、図示しないコンソールと、を備えている。
放射線発生装置は、予め設定された撮影条件に応じた態様の放射線を発生させることが可能に構成されている。
放射線検出器は、受けた放射線の線量分布に応じた放射線画像を生成するように構成されている。
コンソールは、放射線発生装置及び放射線検出器の動作を設定することが可能に構成されている。
【0015】
また、本実施形態に係る放射線撮影システムは、放射線発生装置がパルス状の放射線を所定周期で繰り返し発生させ、放射線検出器が放射線画像(フレーム)を同周期で繰り返し生成することにより、複数のフレームからなる動画を撮影することが可能となっている。
すなわち、本実施形態に係る放射線撮影システムを用いて、曲げ伸ばしを行っている関節部を撮影することにより、関節部の動きが写る動画を得ることができる。
【0016】
〔1-2.サーバー〕
サーバー2は、データベースDを有している。
データベースDは、患者の関節部が写った放射線画像の画像データを蓄積している。
また、データベースDは、複数種類の人工関節の情報を蓄積している。
また、データベースDは、過去に関節を人工関節に置換する手術を受けた患者の各種情報を蓄積している。
このデータベースDの詳細については後述する。
【0017】
〔1-3.術式提案装置〕
術式提案装置3は、医師や、これから関節を人工関節に置換する手術を受ける患者に対し、手術の術式を提案するものである。
本実施形態に係る術式提案装置3は、主に、膝関節と股関節を対象としているが、肩や肘に適用することも可能である。
この術式提案装置の詳細については後述する。
【0018】
<2.データベース>
次に、上記手術支援システム100のサーバー2が有するデータベースDの詳細について説明する。
図2は、データベースDが蓄積する各種情報を示す表である。
【0019】
データベースDは、患者の関節部が写った放射線画像の画像データを蓄積している。
また、データベースDは、複数種類の人工関節の情報を蓄積している。
【0020】
また、データベースDは、
図2に示すような、過去に関節を人工関節に置換する手術を受けた患者の各種情報を蓄積している。
データベースDが蓄積する各種情報には、手術を受ける前の患者の情報である術前患者情報と、手術を受けた後の患者の情報である術後患者情報と、が含まれる。
本実施形態に係るデータベースDは、これらの情報を、実際に行った手術の術式(1,2,3・・)ごとにまとめて管理している。
【0021】
この「手術の術式」は、患者の関節部に行った手術の内容であり、人工関節に置換しない方式(高位脛骨骨切り術、関節温存術等)と、人工関節に置換する方式(人工膝関節置換術、人工股関節全置換術等)とに大別される。
また、これらの術式には、骨の切断位置・切断角度、人工関節の種類・形状、人工関節の可動範囲、人工関節の取り付け角度、人工関節の固定方法等が含まれる。
膝関節の場合の、人工関節の種類・形状には、CR型、PS型、半拘束型等の情報が含まれる。
一方、股関節の場合の人工関節の種類・形状には、カップ、ボール、シェル、ライナー、等の形状や大きさ、可動域の大きさ等が含まれる。
【0022】
「術前患者情報」には、患者の年齢、性別、患部(膝関節であるか股関節であるか)、手術を行う前の患者の関節部についての自覚症状の訴え、過去の手術歴、過去の検査結果及び手術前の関節部の画像診断結果が含まれる。
【0023】
「手術を行う前の患者の関節部についての自覚症状の訴え」は、主に痛みがあるか否かの情報である。
また、手術前の自覚症状の訴えには、どの程度痛むか(動かせない程ではない、動かすことが困難な程等)、どういうときに痛むか(運動時、歩くとき、走るとき、立ち上がる時等)の情報が含まれる。
【0024】
「過去の手術歴」は、過去に関節部の手術を受けたことがあるか否かの情報である。
なお、術前患者情報は、これらの情報をすべて含んでいる必要はなく、これらのうちの少なくともいずれかが含まれているだけでもよい。
【0025】
「過去の検査結果」は、骨を対象として行った検査(例えば骨密度の測定)の結果であり、本実施形態に係るデータベースDは、正常、低め等にランク分け蓄積している。なお、検査結果が数値の場合には、数値で管理するようになっていてもよい。
【0026】
「術後患者情報」は、手術を行った後の関節部の状態の情報である。
本実施形態に係る術後患者情報には、手術を行った後の被撮影者の関節部についての自覚症状の訴え、手術を行った後の関節部が写った術後放射線画像の画像診断結果及び医師の最終的な総合評価等が含まれる。
【0027】
「手術を行った後の患者の関節部についての自覚症状の訴え」は、出術前の訴えと同様、主に痛みがあるか否かの情報である。
また、手術後の自覚症状の訴えには、手術直後の訴え、手術から所定期間経過後の変化が含まれる。
また、手術直後の訴えには、安静時のもの、及び関節を動かした動作時のものが含まれる。
また、本実施形態においては、所定期間を複数(例えば一ヶ月後、半年後、一年後)設定している。
【0028】
「術後放射線画像の画像診断結果」は、主に手術前の関節部が写った放射線画像を見た結果に問題があるか否かの情報である。
また、画像診断結果には、どのような問題があるか(人工関節の取り付け位置や角度にずれがある、人工関節が劣化している等)の情報が含まれる。
また、画像診断結果には、手術直後の診断結果が含まれる。
手術直後の診断結果は、例えば、
図3(a)に示す手術前の放射線画像と
図3(b)に示す術後放射線画像とを比較し、骨と人工関節との間にずれが無いかどうか、荷重面が拡大したか否か、関節裂隙が拡大したか否か、内反変形が改善したか否か、下肢のアライメントが補正されたか、左右の脚長差が改善されたか否か、等を判断したものである。
また、画像診断結果には、手術から所定期間経過後の変化が含まれる。
また、本実施形態においては、所定期間を複数(例えば半年後、1年後)設定している。
手術から所定期間経過後の変化は、例えば、直近の術後放射線画像と1回前に撮影した術後放射線画像とを比較し、手術直後と同様の項目について判断したものである。
【0029】
「医師の総合判断」には、所定期間経過後の自覚症状の変化及び画像診断結果に基づくもので、行った手術に問題が無かったか否かの判断、問題があった場合にはどの術式を採用すべきであったかの判断等が含まれる。
【0030】
データベースDは、患者の検査や手術が行われるたびに、その際に得られた患者の各種情報を蓄積するようになっている。
【0031】
<3.術式提案装置の詳細>
次に、上記手術支援システム100が備える術式提案装置3の詳細について説明する。
図4は、術式提案装置3の具体的構成を示すブロック図である。
〔3-1.構成〕
術式提案装置3は、
図4に示すように、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、表示部34と、操作部35と、を備えている。
【0032】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。
そして、制御部31のCPUは、記憶部33に記憶されている各種プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、術式提案装置3各部の動作を集中制御するようになっている。
【0033】
通信部32は、有線通信モジュールや無線通信モジュール等で構成され、通信ネットワークN(LAN、WAN、インターネット等)を介して接続された他のシステム(放射線撮影システム1等)や他の装置(サーバー2等)との間で各種信号や各種データ(放射線画像のデータ等)を有線又は無線で送受信することが可能となっている。
【0034】
記憶部33は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部33は、制御部31が各種処理を実行するためのプログラムやプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
なお、この記憶部33で、放射線画像の画像データや患者の各種情報を管理するようになっていてもよい。その場合、手術支援システム100は、上記サーバー2を備えていなくてもよい。
【0035】
また、記憶部33は、学習済モデルMを記憶している。
学習済モデルMは、データベースDに蓄積された、関節に手術を施す前の関節部が写った術前放射線画像、関節に行った手術の術式、及び手術を行った後の関節部の状態を入力とし、行うべき手術の術式を出力として機械学習させたものとなっている。
【0036】
本実施形態に係る学習済モデルMは、入力とする放射線画像を動画としている。
具体的には、動画に写る関節部の動きから抽出される特徴が機械学習の入力に用いられている。
関節部の動きには、
図5(a)に示すような、伸展・屈曲の他、
図5(b)に示す内旋、
図5(c)に示す外旋、後十字靭帯の動き(膝関節の場合)等が含まれる。
なお、学習済モデルMは、入力とする放射線画像を静止画及び動画としていてもよい。
また、記憶部33は、上記学習済モデルMとは別に、静止画を入力として機械学習させた第二の学習済モデルを記憶していてもよい。
【0037】
また、本実施形態に係る学習済モデルMは、データベースDに蓄積された、患者に関する情報を更に入力として機械学習させたものとなっている。
本実施形態に係る患者に関する情報には、術前患者情報(患者の年齢、性別、手術を行う前の患者の関節部についての自覚症状の訴え、過去の手術歴、過去の検査結果及び関節部に対する医師の診断結果)、術後患者情報(手術を行った後の関節部の状態)が含まれる。
なお、患者に関する情報は、これらの情報をすべて含んでいる必要はなく、これらのうちの少なくともいずれかが含まれているだけでもよい。
【0038】
また、上述したように、術後患者情報には、放射線画像の画像診断結果と手術を行った後の患者の関節部についての自覚症状の訴えが含まれている。
このため、本実施形態に係る学習済モデルMは、術後放射線画像の画像診断結果及び手術を行った後の被撮影者の関節部についての自覚症状の訴えを更に入力とし、手術の前後で関節部の動作の変化が少なく、かつ被撮影者による痛みの訴えが少ない術式を出力として機械学習させたものとなっている。
【0039】
なお、学習済モデルMは、入力層、少なくとも一層の隠れ層及び出力層を有する多層ニューラルネットワークに深層学習(ディープラーニング)させたものであってもよい。
このようにすれば、放射線画像を入力するだけで、術式提案装置3が自動で特徴を抽出して学習を行うようになる。
【0040】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、各種画像や各種情報等を表示するようになっている。
【0041】
操作部35は、カーソルキーや、数字入力キー、各種機能キー等を備えたキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、表示部34の表面に積層されたタッチパネル等で、ユーザーが操作可能に構成されている。
そして、操作部35は、操作者によってなされた操作に基づく制御信号を制御部31に出力するようになっている。
【0042】
〔3-2.動作〕
このように構成された術式提案装置3の制御部31は、所定条件が成立した(例えば、放射線撮影が開始されたこと、操作部35に所定操作がなされたこと等)を契機として、
図6に示す術式提案処理を実行する。
【0043】
この術式提案処理で、制御部31は、まず、取得処理を実行する(ステップS1)。
この取得処理で、制御部31は、患者の関節部が写った放射線画像を取得する。
放射線画像の取得は、通信部32を介して他の装置(放射線検出器、コンソール、PACS等)から受信することにより行ってもよいし、メディアから読み取ることにより行ってもよい。
本実施形態に係る制御部31は、この取得処理において、関節部が写る静止画及び関節部の動きが写る動画のうちの少なくとも一方を取得する。
また、本実施形態に係る制御部31は、この取得処理において、患者に関する情報を更に取得する。
患者に関する情報は、医師等が操作部35を操作することにより入力したものを取得してもよいし、通信部32を介して上位システムから受信したものを取得してもよい。
制御部31は、この取得処理を実行することにより取得手段をなす。
【0044】
放射線画像を取得した後、制御部31は、選択処理を実行する(ステップS2)。
この選択処理で、制御部31は、学習済モデルMを用い、取得した放射線画像に写った関節部に対して行うべき手術の術式を選択する。
また、本実施形態に係る制御部31は、取得した患者に関する情報を更に入力として術式を選択する。
【0045】
本実施形態に係る患者に関する情報には、患者の年齢、性別、手術を行う前の患者の関節部についての自覚症状の訴え、過去の手術歴、過去の検査結果及び関節部に対する医師の診断結果が含まれる。
なお、患者に関する情報は、これらの情報をすべて含んでいる必要はなく、これらのうちの少なくともいずれかが含まれているだけでもよい。
【0046】
取得処理で取得した放射線画像が動画の場合、制御部31は、取得した動画を入力として術式を選択する。
具体的には、関節部の動きから特徴を抽出し、上記患者に関する情報と共に学習済モデルMに入力することで、学習済モデルMが選択した術式を出力する。
具体的には、放射線画像の関節部の手術に最適な術式(人工関節への置換の有無、骨の切断位置・切断角度、人工関節の種類・形状、人工関節の可動範囲、人工関節の取り付け角度、人工関節の固定方法等)であって、手術の前後で関節部の動作の変化が少なく、かつ被撮影者による痛みの訴えが少ない術式を出力する。
制御部31は、この選択処理を実行することにより選択手段をなす。
【0047】
術式を選択した後、本実施形態に係る制御部31は、出力処理を実行する(ステップS3)。
この出力処理で、制御部31は、選択した術式を出力する。
出力は、表示部34への表示でもよいし、他の装置(モニター等)への術式データの送信でもよい。
制御部31は、この出力処理を実行することにより出力手段をなす。
【0048】
<4.効果>
本実施形態に係る術式提案装置3は、関節に手術を施す前の関節部が写った術前放射線画像、関節に行った手術の術式、及び手術を行った後の関節部の状態を入力とし、行うべき手術の術式を出力として機械学習させた学習済モデルMを用いて、術式を選択、出力(提案)するようになっている。
すなわち、術式提案装置3の提案内容には、過去の同様の事例の知見が反映されるとともに、過去の事例の経過情報も反映される。
このため、術式提案装置3、及び手術支援システム100によれば、患者の関節部の手術を行おうとする医師に、従来よりも高い精度で術式を提案することができる。
その結果、医師の術式の選択ミスが低減され、手術後の患者の関節部は従来よりも高い確率で良好な状態を保ちつづけることになる。
また、医師及び患者の各種負担(医師が管理する人工関節の在庫や、患者が支払う医療費等)の低減にもつながる。
【0049】
なお、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0050】
例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0051】
その他、放射線画像解析システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
100 手術支援システム
1 放射線撮影システム
2 サーバー
D データベース
3 術式提案装置
31 制御部
32 通信部
33 記憶部
M 学習済モデル
34 表示部
35 操作部
N 通信ネットワーク