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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】車両用開閉体駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/643 20150101AFI20240521BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20240521BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20240521BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20240521BHJP
   F16H 7/02 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
E05F15/643
E05F15/655
B60J5/04 C
B60J5/06 A
F16H7/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020038646
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021139189
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】礒野 大志
(72)【発明者】
【氏名】風間 真司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭紀
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-245666(JP,A)
【文献】特開2019-108740(JP,A)
【文献】特開平4-62284(JP,A)
【文献】特開2007-56580(JP,A)
【文献】特開2009-127291(JP,A)
【文献】実開昭54-46705(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0209720(US,A1)
【文献】特開2012-131456(JP,A)
【文献】特開2009-127290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B60J 5/00- 5/14
F16H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開閉体を開閉作動させる車両用開閉体駆動装置であって、
前記開閉体の移動方向に延びるベルトフレームと、
前記ベルトフレームの長手方向に間隔をあけて配置される複数の従動プーリと、
前記複数の従動プーリに巻き掛けられ、前記開閉体との連結具が固定されるベルトと、
前記複数の従動プーリと回転軸線が異なる方向を向く出力軸を有する駆動部と、
前記駆動部の前記出力軸に連結され、前記ベルトを駆動する駆動プーリと、を備え、
前記駆動プーリの回転軸線は、前記出力軸の回転軸線と同方向を向く一方で前記複数の従動プーリの回転軸線と異なる方向を向き、
前記駆動プーリには、当該駆動プーリの前記ベルトの周方向における両側に配置される前記従動プーリの間で捻れた前記ベルトが巻き掛けられており、
前記ベルトフレームには、当該ベルトフレームの長手方向に、前記ベルトを内側から付勢する複数の付勢部材が設けられ、
前記付勢部材は、前記ベルトの変位に追従して弾性変形可能に構成され
前記付勢部材は、前記ベルトフレームに固定される固定片と、前記ベルトを内側から押圧する押圧片と、を含み、
前記付勢部材において前記固定片を固定端としたとき、前記押圧片の前記固定片とは反対側の先端は前記ベルトフレームに固定されない自由端となっており、
前記ベルトは、前記押圧片により内側から押圧されている部分において当該ベルトの内面が前記ベルトフレームのガイド壁を向いており、
前記ベルトフレームの長手方向に隣り合う前記付勢部材において、一方の前記付勢部材と他方の前記付勢部材とは、それらの前記固定端が、前記ガイド壁に向かう前記ベルトの平面視において当該ベルトの幅方向反対側となっており、
前記付勢部材の前記押圧片は、前記固定片側の基端と前記ガイド壁との間隔が、前記自由端側の先端と前記ガイド壁との間隔よりも狭くなっている
車両用開閉体駆動装置。
【請求項2】
前記駆動プーリと回転軸線が同方向を向き、前記ベルトを前記駆動プーリに押し付ける押さえプーリを備える
請求項1に記載の車両用開閉体駆動装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記押さえプーリを支持する支持軸を有する
請求項に記載の車両用開閉体駆動装置。
【請求項4】
前記開閉体としてのスライドドアを開閉作動する
請求項1~請求項の何れか一項に記載の車両用開閉体駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、側部にドア開口部が設けられる車体と、ドア開口部を開閉するスライドドアと、スライドドアを開閉作動するスライドドア駆動装置と、を備える車両が記載されている。
【0003】
スライドドア駆動装置は、車両の前後方向に延びるベルトガイドと、ベルトガイドに回転可能に支持される駆動プーリ及びガイドプーリと、駆動プーリ及びガイドプーリに巻き掛けられるベルトと、駆動プーリを駆動するモータと、モータの動力を駆動プーリに伝達する伝達機構と、ベルトとスライドドアとを接続するベルト接続具と、を有する。そして、スライドドア駆動装置は、ベルト接続具が前方に移動するようにベルトを回転させたり、ベルト接続具が後方に移動するようにベルトを回転させたりすることにより、スライドドアを開閉作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-108740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなスライドドア駆動装置は、モータの出力軸の回転軸線及び駆動プーリの回転軸線が直交するため、回転軸の向きを変えつつモータの動力を駆動プーリに伝達する伝達機構が必要となる。なお、こうした実情は、スライドドアを除く車両の他の開閉体を開閉作動させる車両用開閉体駆動装置においても概ね共通する。
【0006】
本発明の目的は、簡易な構成で駆動部の動力を駆動プーリに伝達できる車両用開閉体駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両用開閉体駆動装置は、車両の開閉体を開閉作動させる車両用開閉体駆動装置であって、前記開閉体の移動方向に延びるベルトフレームと、前記ベルトフレームの長手方向に間隔をあけて配置される複数の従動プーリと、前記複数の従動プーリに巻き掛けられ、前記開閉体との連結具が固定されるベルトと、前記複数の従動プーリと回転軸線が異なる方向を向く出力軸を有する駆動部と、前記駆動部の前記出力軸に連結され、前記ベルトを駆動する駆動プーリと、を備え、前記駆動プーリの回転軸線は、前記出力軸の回転軸線と同方向を向く一方で前記複数の従動プーリの回転軸線と異なる方向を向き、前記駆動プーリには、当該駆動プーリの前記ベルトの周方向における両側に配置される前記従動プーリの間で捻れた前記ベルトが巻き掛けられる。
【0008】
上記構成の開閉体駆動装置において、駆動プーリの回転軸線及び従動プーリの回転軸線は交差し、駆動プーリにはベルトが捻れた状態で巻き掛けられる。このため、駆動部の出力軸の回転軸線及び駆動プーリの回転軸線を同方向としても、駆動部の出力軸の回転軸線の向きを変換する伝達機構が不要となる。こうして、開閉体駆動装置は、簡易な構成で駆動部の動力を駆動プーリに伝達できる。
【0009】
上記車両用開閉体駆動装置は、前記駆動プーリと回転軸線が同じ方向を向き、前記ベルトを前記駆動プーリに押し付ける押さえプーリを備えることが好ましい。
上記構成の車両用開閉体駆動装置は、駆動プーリの動力をベルトに伝達しやすくなる。
【0010】
上記車両用開閉体駆動装置において、前記駆動部は、前記押さえプーリを支持する支持軸を有することが好ましい。
上記構成の車両用開閉体駆動装置は、駆動部が出力軸及び支持軸の双方を有するため、出力軸及び支持軸の軸間距離を管理しやすくなる。言い換えれば、車両用開閉体駆動装置は、駆動プーリ及び押さえプーリの位置関係を管理しやすくなる。その結果、車両用開閉体駆動装置は、駆動プーリの動力をベルトにより伝達しやすくなる。
【0011】
上記車両用開閉体駆動装置は、前記開閉体としてのスライドドアを開閉作動することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
車両用開閉体駆動装置は、簡易な構成でモータの動力をタイミングプーリに伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るスライドドア駆動装置を備える車両の側面図。
図2】上記スライドドア駆動装置の斜視図。
図3】上記スライドドア駆動装置のベルトフレームの斜視図。
図4】上記スライドドア駆動装置の平面図。
図5】上記スライドドア駆動装置の側面図。
図6】上記スライドドア駆動装置の拡大斜視図。
図7】変更例に係るスライドドア駆動装置の拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、車両用開閉体駆動装置を備える車両の一実施形態について説明する。以降の説明では、車両幅方向を単に「幅方向」ともいい、車両前後方向を単に「前後方向」ともいい、車両上下方向を単に「上下方向」ともいう。また、幅方向に延びる軸をX軸で図示し、前後方向に延びる軸をY軸で図示し、上下方向に延びる軸をZ軸で図示する。
【0015】
図1に示すように、車両10は、ドア開口部21が側部に設けられた車体20と、ドア開口部21を開閉する「開閉体」の一例としてのスライドドア30と、スライドドア30を駆動する「車両用開閉体駆動装置」の一例としてのドア駆動装置40と、を備える。
【0016】
車体20は、ドア開口部21の上方に配置されるアッパレール22と、ドア開口部21の後方に配置されるセンターレール23と、スライドドア30の下方に配置されるロアレール24と、を有する。アッパレール22、センターレール23及びロアレール24は、車体20の側面に固定される。上下方向において、アッパレール22は、センターレール23及びロアレール24よりも上方に位置し、センターレール23は、アッパレール22及びロアレール24の間に位置する。
【0017】
図2に示すように、センターレール23は、前方に延びる第1レール241と、第1レール241の前端から前方に進むにつれて幅方向における内方に進む第2レール242と、を含む。つまり、第1レール241の長手方向及び第2レール242の長手方向は、交差している。第2レール242を第1レール241に対して湾曲させることにより、スライドドア30を車体20に干渉させることなく開閉作動させることが可能となる。図示を省略するが、アッパレール22及びロアレール24もセンターレール23と同様の形状をなしている。
【0018】
図1に示すように、スライドドア30は、ドア開口部21に応じた大きさをなすドア本体31と、ドア本体31の上部に配置されるアッパローラユニット32と、ドア本体31の後部に配置されるセンターローラユニット33と、ドア本体31の下部に配置されるロアローラユニット34と、を備える。
【0019】
アッパローラユニット32及びロアローラユニット34は、ドア本体31の前端付近に位置し、センターローラユニット33は、ドア本体31の後端付近に位置する。アッパローラユニット32、センターローラユニット33及びロアローラユニット34は、ドア本体31に対し、上下方向に延びる軸線周りに回動可能に連結される。
【0020】
図2に示すように、センターローラユニット33は、主に幅方向にスライドドア30が変位することを抑制する一対のガイドローラ331と、スライドドア30の自重を支えるロードローラ332と、を有する。一対のガイドローラ331の回転軸線は上下方向に延び、ロードローラ332の回転軸線は、ガイドローラ331の回転軸線及びセンターレール23の長手方向の両方向と直交する。一対のガイドローラ331及びロードローラ332がセンターレール23に接した状態で回転することにより、センターローラユニット33は、センターレール23の長手方向に移動可能となる。図示を省略するが、アッパローラユニット32及びロアローラユニット34もセンターローラユニット33と同様の構成である。
【0021】
そして、スライドドア30は、アッパローラユニット32、センターローラユニット33及びロアローラユニット34が、アッパレール22、センターレール23及びロアレール24に対してそれぞれ移動することにより、ドア開口部21を全閉する全閉位置及びドア開口部21を全開する全開位置の間で開閉作動する。本実施形態では、スライドドア30が後方に移動することで開作動し、スライドドア30が前方に移動することで閉作動する。
【0022】
次に、ドア駆動装置40について説明する。
図2及び図3に示すように、ドア駆動装置40は、センターレール23に沿って延びるベルトフレーム50と、スライドドア30の駆動源となる駆動部61と、ベルトフレーム50の後端寄りに配置される駆動プーリ62と、を備える。また、図4及び図5に示すように、ドア駆動装置40は、ベルトフレーム50の長手方向に間隔をあけて配置される複数の従動プーリ63~65を備える。また、図2に示すように、ドア駆動装置40は、駆動プーリ62の近くに配置される一対の押さえプーリ66と、駆動プーリ62、複数の従動プーリ63~65及び一対の押さえプーリ66に巻き掛けられるベルト67と、ベルト67を付勢する複数の付勢部材68と、スライドドア30とベルト67とを連結する連結具69と、を有する。
【0023】
図3に示すように、ベルトフレーム50は、ベルトフレーム50の長手方向に延びる上壁51、底壁52及びガイド壁53と、複数の従動プーリ63~65を回転可能にそれぞれ支持する複数のプーリ支持部54~56と、車体20に対して固定される複数の固定部57と、を有する。また、ベルトフレーム50は、複数の付勢部材68がそれぞれ挿入される複数の挿入孔58を有する。
【0024】
図2に示すように、ベルトフレーム50は、スライドドア30の移動方向に延び、センターレール23と略同一の形状をなしている。つまり、ベルトフレーム50は、前方に延びる部分と、前方に延びるにつれて幅方向における内方に延びる部分と、を含む。以降の説明では、前者の部分を「第1フレーム501」ともいい、後者の部分を「第2フレーム502」ともいう。第1フレーム501は、センターレール23の第1レール241に対応する方向に延びる部分であり、第2フレーム502は、センターレール23の第2レール242に対応する方向に延びる部分である。なお、ベルトフレーム50は、例えば、樹脂成形により構成される。
【0025】
上壁51、底壁52及びガイド壁53は、平板状をなしている。ガイド壁53は、上壁51及び底壁52を上下方向に接続する。このため、ベルトフレーム50は、長手方向と直交する断面形状が略I字状をなしている。図3に示すように、ガイド壁53は、上下方向における平面視において、幅方向における外方を向く面に円弧状に膨らむ膨出部531,532を有する。膨出部531は、第1フレーム501の長手方向における中間部に位置し、膨出部532は、第1フレーム501及び第2フレーム502の接続部位に跨って位置する。
【0026】
第1プーリ支持部54は、ベルトフレーム50の後端部に設けられ、第2プーリ支持部55は、ベルトフレーム50の膨出部532の付近に設けられ、第3プーリ支持部56は、ベルトフレーム50の前端部に設けられる。第1プーリ支持部54、第2プーリ支持部55及び第3プーリ支持部56は、上下方向を軸方向とする軸孔を有する。
【0027】
複数の固定部57は、上壁51から上方に突出する。固定部57には、ねじなどの締結部材が通る貫通孔が形成されることが好ましい。ベルトフレーム50は、複数の固定部57を介して、車両10の外側から車体20のボディパネルに組み付けられる。
【0028】
複数の挿入孔58は、第2フレーム502の後端寄りの位置にベルトフレーム50の長手方向に間隔をあけて設けられる。複数の挿入孔58のうち、第2フレーム502の前端寄りの挿入孔58は、ガイド壁53の下端付近に設けられ、第2フレーム502の後端寄りの挿入孔58は、ガイド壁53の上端付近に設けられる。
【0029】
図4及び図5に示すように、駆動部61は、略直方体状をなす筐体611と、筐体611から延びる出力軸612と、筐体611から延びる一対の支持軸613と、を有する。筐体611を構成する3辺のうち、最も長い辺を第1辺とし、次に長い辺を第2辺とし、最も短い辺を第3辺としたとき、筐体611は、第1辺が鉛直方向に延び、第2辺が前後方向に延び、第3辺が幅方向に延びる状態で、車体20に組み付けられる。このため、幅方向において、駆動部61が車室側にせり出しにくい。また、駆動部61は、ベルトフレーム50とは異なり、車両10の内側から車体20のボディパネルに組み付けられる。こうして、本実施形態では、ベルトフレーム50と駆動部61とがともに車体20に組み付けられることで、ベルトフレーム50と駆動部61との相対的な位置関係が決まる。
【0030】
なお、車体20のボディパネルには、出力軸612及び一対の支持軸613を通すための貫通孔を形成する必要があるが、本実施形態では、出力軸612及び一対の支持軸613のみを車両10の外側に通すことができれば良い点で、貫通孔の大きさを小さくできる。つまり、貫通孔と出力軸612及び一対の支持軸613との間のシールを取りやすい。
【0031】
筐体611の内部には、不図示のモータと、不図示の減速機と、が収容される。つまり、出力軸612から出力されるトルクは、モータの出力するトルクが減速機によって増大されたトルクである。出力軸612の回転軸線及び一対の支持軸613の回転軸線は平行である。出力軸612は、一対の支持軸613の間に位置する。
【0032】
駆動プーリ62は、歯部を有するタイミングプーリである。駆動プーリ62は、駆動部61の出力軸612に連結される。つまり、駆動プーリ62の回転軸線は、幅方向に延び、駆動部61の出力軸612の回転軸線と同方向に延びる。詳しくは、駆動プーリ62の回転軸線は、駆動部61の出力軸612の回転軸線と一致する。
【0033】
第1従動プーリ63及び第3従動プーリ65は、歯部を有するタイミングプーリであり、第2従動プーリ64は、歯部を有しないプーリである。第2従動プーリ64は、ベルト67の進行方向を変化させるベンドプーリということもできる。第1従動プーリ63、第2従動プーリ64及び第3従動プーリ65は、ベルトフレーム50の第1プーリ支持部54、第2プーリ支持部55及び第3プーリ支持部56にそれぞれ回転可能に支持される。
【0034】
その結果、第1従動プーリ63、第2従動プーリ64及び第3従動プーリ65の回転軸線、言い換えれば、第1従動プーリ63、第2従動プーリ64及び第3従動プーリ65の軸方向は、上下方向に延びる。つまり、第1従動プーリ63、第2従動プーリ64及び第3従動プーリ65の回転軸線は、駆動プーリ62の回転軸線、言い換えれば、出力軸612の回転軸線と交差する。したがって、第1従動プーリ63、第2従動プーリ64及び第3従動プーリ65の回転軸線は、駆動プーリ62の回転軸線と直交する。
【0035】
一対の押さえプーリ66は、歯部を有しないプーリであり、ベルト67を駆動プーリ62に押し付ける。一対の押さえプーリ66は、駆動プーリ62に対するベルト67の巻き付け角を増大させるスナブプーリということもできる。一対の押さえプーリ66は、筐体611の一対の支持軸613にそれぞれ回転可能に支持される。つまり、一対の押さえプーリ66の回転軸線は、幅方向に延び、駆動プーリ62の回転軸線と同方向に延びる。
【0036】
ベルト67は、図示を省略するが、内側に歯部を有する歯付ベルトである。ベルト67は、ベルトフレーム50のガイド壁53を囲った状態で、駆動プーリ62、複数の従動プーリ及び一対の押さえプーリ66に巻き掛けられる。ベルト67は、駆動プーリ62、複数の従動プーリ及び一対の押さえプーリ66に巻き掛けられた状態で、適度な弛みを有することが好ましい。
【0037】
ベルト67において、駆動プーリ62及び一対の押さえプーリ66に巻き掛けられる部分は、ベルト67の内面がベルトフレーム50のガイド壁53を向かず、複数の従動プーリ63~65に巻き掛けられる部分は、ベルト67の内面がベルトフレーム50のガイド壁53を向く。つまり、ベルト67において、駆動プーリ62及び一対の押さえプーリ66に巻き掛けられる部分は、複数の従動プーリ63~65に巻き掛けられる部分に対して、ベルト67の周方向に延びる軸線回りに略90度捻れている。
【0038】
以降の説明では、ベルト67において、「捻れが生じる部分」とは、ベルト67の内面がベルトフレーム50のガイド壁53を向かない状態をいい、「捻れが生じない部分」とは、ベルト67の内面がベルトフレーム50のガイド壁53を向いた状態をいう。つまり、ベルト67の周方向において、第1従動プーリ63及び第2従動プーリ64の間に位置する部分は捻れが生じ、ベルト67の周方向において、第2従動プーリ64及び第3従動プーリ65の間に位置する部分及び第3従動プーリ65及び第1従動プーリ63の間に位置する部分は捻れが生じない。
【0039】
図6に示すように、複数の付勢部材68は、ベルトフレーム50の第2フレーム502の後端寄りの位置に、ベルトフレーム50の長手方向に隣り合って配置される。本実施形態では、2つの付勢部材68が配置されるが、付勢部材68の数は任意に変更することができる。なお、付勢部材68は、金属板を折り曲げて形成される板ばねである。
【0040】
付勢部材68は、ベルトフレーム50に固定される固定片681と、ベルト67を内側から押す押圧片682と、を含む。固定片681は、ベルトフレーム50に設けられる挿入孔58に差し込まれることで、ベルトフレーム50に固定される。押圧片682は、付勢部材68がベルトフレーム50に固定される状態において、ベルトフレーム50の長手方向における両端部がガイド壁53に向けて湾曲する湾曲部683を含む。
【0041】
固定片681に対する押圧片682の屈曲角度は、90度よりも大きい。このため、付勢部材68をベルトフレーム50に固定した状態において、押圧片682は、基端から先端に向かうにつれて、ベルトフレーム50のガイド壁53から離れる。つまり、押圧片682の基端とガイド壁53との間隔は、押圧片682の先端とガイド壁53との間隔よりも狭い。その結果、押圧片682は、ベルト67を内側から押しやすくなる。
【0042】
また、本実施形態では、固定片681がベルトフレーム50に固定される点で固定端となり、押圧片682の先端がベルトフレーム50に固定されない点で自由端となる。詳しくは、2つの付勢部材68のうち、一方の付勢部材68は、固定端が下端となるとともに自由端が上端となり、他方の付勢部材68は、固定端が上端となるとともに自由端が下端となる。
【0043】
連結具69は、ベルト67を厚さ方向に挟む挟持部691と、センターローラユニット33に連結される連結部692と、を有する。挟持部691がベルト67を挟むことで、連結具69はベルト67に固定される。挟持部691と連結部692とは、ドア駆動装置40の動力をスライドドア30に伝達する部材であるため、金属材料などの弾性率の高い材料からなることが好ましい。一方、挟持部691において、ベルトフレーム50のガイド壁53を向く面は、ベルト67が駆動される際に付勢部材68と摺動する。このため、金属同士の接触を回避するために、挟持部691におけるガイド壁53を向く面は、樹脂などで皮膜されることが好ましい。
【0044】
本実施形態の作用について説明する。
ドア駆動装置40は、例えば、ユーザがリモコンキーに設けられるスイッチを操作する場合、車両10の後席に着座するユーザがスライドドア30のインサイドドアハンドルを操作する場合及びスライドドア30の側方に立つユーザがアウトサイドドアハンドルを操作する場合などに、スライドドア30を開閉作動する。詳しくは、ドア駆動装置40は、スライドドア30が全閉位置に位置する場合には、連結具69が後方に移動するようにベルト67を駆動し、スライドドア30が全開位置に位置する場合には、連結具69が前方に移動するようにベルト67を駆動する。連結具69が後方に移動すると、センターローラユニット33が後方に移動されることで、スライドドア30が開作動し、連結具69が前方に移動すると、センターローラユニット33が前方に移動されることで、スライドドア30が閉作動する。
【0045】
ここで、本実施形態では、ベルト67の一部がベルト67の周方向に延びる軸線回りに捻った状態で駆動プーリ62に巻き掛けられる。このため、ドア駆動装置40において、駆動部61及び駆動プーリ62が設置される部位に、回転軸線の向きを変更する伝達機構が不要となる。
【0046】
また、ベルト67が駆動される場合、言い換えれば、スライドドア30が開閉作動される場合には、ベルト67が付勢部材68と摺動する。このとき、付勢部材68の幅方向における両端部は、ベルトフレーム50のガイド壁53に向って湾曲するため、ベルト67に大きな力が作用しにくい。一方、ベルト67が駆動されない場合、言い換えれば、ドアが停止される場合には、付勢部材68がベルト67を付勢するため、ベルト67に緩みが生じにくい。
【0047】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ドア駆動装置40において、駆動プーリ62の回転軸線及び従動プーリの回転軸線は交差し、駆動プーリ62にはベルト67が捻れた状態で巻き掛けられる。このため、駆動部61の出力軸612の回転軸線及び駆動プーリ62の回転軸線を同方向としても、駆動部61の出力軸612の回転軸線の向きを変換する伝達機構が不要となる。こうして、ドア駆動装置40は、簡易な構成で駆動部61の動力を駆動プーリ62に伝達できる。
【0048】
(2)ドア駆動装置40は、ベルト67を駆動プーリ62に押し付ける一対の押さえプーリ66を備える。このため、ドア駆動装置40は、駆動プーリ62の動力をベルト67に伝達しやすくなる。
【0049】
(3)ドア駆動装置40は、駆動部61が出力軸612及び一対の支持軸613を有するため、出力軸612及び一対の支持軸613の軸間距離を管理しやすくなる。言い換えれば、ドア駆動装置40は、駆動プーリ62及び押さえプーリ66の位置関係を管理しやすくなる。その結果、ドア駆動装置40は、駆動プーリ62の動力をベルト67により伝達しやすくなる。
【0050】
(4)ドア駆動装置40は、ベルト67を内側から付勢する付勢部材68を備えるため、ベルト67が張った状態に維持されやすい。よって、ドア駆動装置40は、スライドドア30の位置に関わらず、ベルト67に緩みが生じることを抑制できる。その結果、ドア駆動装置40は、車両10が走行中の場合及びベルト67に風が吹き付ける場合などに、ベルト67が車体20に接触することによって発生する異音を抑制できる。
【0051】
(5)ドア駆動装置40は、付勢部材68が板ばねからなる点で、付勢部材68を簡易な構成で実現できる。
(6)ドア駆動装置40は、上端及び下端の一方を固定端とし、他方を自由端とする付勢部材68を備える。このため、付勢部材68の上端及び下端をともに固定端とする場合と比較して、付勢部材68の弾性変形量が大きくなる。つまり、ドア駆動装置40は、ベルト67の変位に追従して付勢部材68が弾性変形可能となる点で、付勢部材68でベルト67を付勢しやすくなる。
【0052】
(7)付勢部材68を第1フレーム501に配置する場合には、ドア駆動装置40を車両10に搭載したときに、ベルト67における付勢部材68に付勢される部分が幅方向における外方にせり出しやすい。この点、ドア駆動装置40は、付勢部材68を第2フレーム502に配置するため、車両10に搭載されたときに、ベルト67における付勢部材68に付勢される部分が幅方向における外方にせり出しにくい。
【0053】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・駆動部61の配置は、適宜に変更することができる。例えば、ベルト67の周方向において、駆動プーリ62が第2従動プーリ64及び第3従動プーリ65の間に位置するように、駆動部61を配置することもできる。
【0054】
・駆動部61の支持軸613は、ベルトフレーム50に設置してもよい。
図7に示すように、ドア駆動装置40のベルトフレーム50と付勢部材68とは、ドア駆動装置40Aのベルトフレーム50Aと付勢部材68Aとに置き換えることができる。ベルトフレーム50Aにおいて、ガイド壁53Aは、付勢部材68Aの端部を収容する収容孔58Aを有する。収容孔58Aの形成方向は、上下方向における平面視において、幅方向に沿う方向である。収容孔58Aの形成位置は、第2フレーム502の長手方向における中間部付近の位置である。収容孔58Aの形成位置は、付勢部材68の大きさに応じて適宜に変更することが好ましい。
【0055】
付勢部材68Aは、ベルトフレーム50Aの第2フレーム502の後端付近に配置される。本実施形態では、1つの付勢部材68Aが配置されるが、付勢部材68Aの数は任意に変更することができる。なお、付勢部材68Aは、金属板を折り曲げて形成される板ばねである。付勢部材68Aは、ベルトフレーム50Aに固定される固定片681Aと、ベルト67を内側から押す押圧片682Aと、を含む。固定片681Aは、ベルトフレーム50Aのガイド壁53Aにねじなどの締結部材で固定される。押圧片682Aは、ベルトフレーム50Aに固定される状態において、上下方向における平面視において円弧状をなすように湾曲している。このため、押圧片682Aは、ベルト67を内側から押しやすくなる。また、本実施形態では、固定片681Aがベルトフレーム50Aに固定される点で固定端となり、押圧片682Aの先端がベルトフレーム50Aに固定されない点で自由端となる。つまり、付勢部材68Aは、固定端が前端となるとともに自由端が後端となる。また、付勢部材68Aの押圧片682Aの先端は、ベルトフレーム50Aの収容孔58Aに収容される。
【0056】
ベルト67が駆動されることにより、付勢部材68Aが弾性変形する場合には、付勢部材68Aの押圧片682Aの先端が収容孔58Aに深く収容されたり浅く収容されたりする。こうして、付勢部材68Aは、ベルト67に追従変形しつつ、ベルト67を付勢できる。また、ドア駆動装置40Aは、付勢部材68Aの自由端が収容孔58Aに収容される点で、付勢部材68Aの自由端がベルトフレーム50Aのガイド壁53Aに干渉することを抑制できる。
【0057】
・ベルトフレーム50に対する付勢部材68の設置箇所は、適宜に変更することができる。例えば、付勢部材68は、ベルトフレーム50の第1フレーム501に設置してもよい。
【0058】
・付勢部材68は、ベルト67を付勢できる構成であれば、樹脂製のばねでもよい。また、付勢部材68は、ゴム及び樹脂などのエラストマーからなる弾性体としてもよい。
・センターレール23をスライドドア30の内部に設置するとともに、センターローラユニット33をドア開口部21の後端に設置してもよい。この場合、ドア駆動装置40は、センターレール23とともにスライドドア30の内部に設置することが好ましい。
【0059】
・ドア駆動装置40は、ドア開口部21の上方に設置してもよいし、ドア開口部21の下方に設置してもよい。つまり、ドア駆動装置40は、アッパローラユニット32を介してスライドドア30を駆動してもよいし、ロアローラユニット34を介してスライドドア30を駆動してもよい。
【0060】
・ドア駆動装置40は、スライドドア30以外の車両10の開閉体を駆動するのに用いてもよい。例えば、ドア駆動装置40は、「開閉体」としての窓ガラスを開閉作動させる「車両用開閉体駆動装置」としてのウィンドウレギュレータに適用可能である。また、ドア駆動装置40は、「開閉体」としての可動パネルを開閉作動させる「車両用開閉体駆動装置」としてのサンルーフ駆動装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…車両
20…車体
21…ドア開口部
23…センターレール(ガイドレールの一例)
241…第1レール
242…第2レール
30…スライドドア(開閉体の一例)
40,40A…ドア駆動装置(車両用開閉体駆動装置の一例)
50,50A…ベルトフレーム
501…第1フレーム
502…第2フレーム
58…挿入孔
58A…収容孔
61…駆動部
611…筐体
612…出力軸
613…支持軸
62…駆動プーリ
63~65…従動プーリ
66…押さえプーリ
67…ベルト
68,68A…付勢部材
69…連結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7