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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240521BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240521BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240521BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20240521BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20240521BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652C
H01L29/78 658E
H01L29/78 658F
H01L29/58 G
H01L21/28 301B
H01L21/28 301D
H01L29/78 652N
H01L29/78 652K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020046992
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021150407
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】木下 明将
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/116684(WO,A1)
【文献】特開2009-021308(JP,A)
【文献】特開2003-258254(JP,A)
【文献】特開2016-213421(JP,A)
【文献】特開2000-223705(JP,A)
【文献】特開2018-117054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 29/423
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の炭化珪素半導体基板と、
前記炭化珪素半導体基板のおもて面側に設けられた、前記炭化珪素半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に選択的に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第2半導体層を貫通して、前記第1半導体層に達する第1トレンチと、
前記第1トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面に設けられた第1電極と、
前記炭化珪素半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
前記第2半導体層を貫通して、前記第1半導体層に達する第2トレンチと、
前記第2トレンチの内部に前記ゲート絶縁膜を介して設けられた多結晶シリコン層と、
前記多結晶シリコン層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられたシリサイド層と、
前記ゲート電極および前記シリサイド層上に設けられた層間絶縁膜と、
をオン時に主電流が流れる活性領域内に備え、
前記多結晶シリコン層および前記シリサイド層は、前記ゲート電極と電気的に接続され
前記シリサイド層と前記第1半導体領域との距離は、前記第2トレンチの深さ以上であることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第2トレンチの奥行き方向は、前記第1トレンチの奥行き方向と垂直に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第2トレンチの幅は、1μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第2トレンチの幅は、前記第1トレンチの幅と同じであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第2トレンチは、前記第1トレンチの奥行き方向に複数並列に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に代わる次世代の半導体材料として期待されている。炭化珪素を半導体材料に用いた半導体素子(以下、炭化珪素半導体装置とする)は、シリコンを半導体材料に用いた従来の半導体素子と比較して、オン状態における素子の抵抗を数百分の1に低減可能であることや、より高温(200℃以上)の環境下で使用可能なこと等、様々な利点がある。これは、炭化珪素のバンドギャップがシリコンに対して3倍程度大きく、シリコンよりも絶縁破壊電界強度が1桁近く大きいという材料自体の特長による。
【0003】
炭化珪素半導体装置としては、現在までに、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)、プレーナゲート構造やトレンチゲート構造の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)が製品化されている。
【0004】
トレンチゲート構造は、半導体基板(半導体チップ)のおもて面に形成したトレンチ内にMOSゲートを埋め込んだMOSゲート構造であり、トレンチの側壁に沿って半導体基板のおもて面と直交する方向にチャネル(反転層)が形成される。このため、半導体基板のおもて面に沿ってチャネルが形成されるプレーナゲート構造と比べて、単位面積当たりの単位セル(素子の構成単位)密度を増やすことができ、単位面積当たりの電流密度を増やすことができるため、コスト面で有利である。プレーナゲート構造は、半導体基板のおもて面上に平板状にMOSゲートを設けたMOSゲート構造である。
【0005】
従来の炭化珪素半導体装置の構造について、トレンチ型MOSFETを例に説明する。図13は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す上面図である。図13に示すように、主電流が流れる活性領域153の外周部に、活性領域153の周囲を囲んで耐圧を保持するエッジ終端領域154が設けられている。活性領域153には、ゲート電極と電気的に接続するゲート電極パッド120と、ソース電極と電気的に接続するソース電極パッド115とが設けられている。
【0006】
従来、パワーMOSFETでは、チップサイズが大きくなった場合に、ゲート電極とゲート電極パッド120との間のゲート抵抗のチップ内ばらつきを抑えるため、チップ表面にメタル構造のあるゲートランナー152を活性領域153内に横切るように設ける構成としている。
【0007】
図14は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す図13の断面図であり、(a)は図13のA-A’断面図、(b)は図13のB―B’断面図である。図14では、図13のトレンチ型MOSFET150の活性領域153のみを示している。トレンチ型MOSFET150では、MOS構造部151とゲートランナー152とを活性領域153内に備える。
【0008】
図14に示すように、n+型炭化珪素基板101のおもて面にn+型バッファ層116およびn型炭化珪素エピタキシャル層102が堆積される。n型炭化珪素エピタキシャル層102のn+型炭化珪素基板101側に対して反対側の表面側は、n型高濃度領域106が設けられている。また、n型高濃度領域106のn+型炭化珪素基板101側に対して反対側の表面層には、第1p+型ベース領域104が選択的に設けられている。n型高濃度領域106には、トレンチ118の底面全体を覆うように第2p+型ベース領域105が選択的に設けられている。
【0009】
また、MOS構造部151には、さらにp型炭化珪素エピタキシャル層103、n+型ソース領域107、p++型コンタクト領域108、ゲート絶縁膜109、ゲート電極110、層間絶縁膜111、ソース電極113、裏面電極114、トレンチ118、ソース電極パッド115およびドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。ソース電極113は、n+型ソース領域107、p++型コンタクト領域108上に設けられ、ソース電極113上にソース電極パッド115が設けられている。
【0010】
トレンチ型MOSFET150では、ゲート電極110はチップ面内に複雑に張り巡らされているため、外部から電圧を印加するためのゲート電極パッド120からの距離が遠くなる部分も生じる。一般に、パワーMOSFETではゲート電極110とゲート電極パッド120とを電気的に接続するゲート配線119を多結晶シリコン(Poly-Si)で形成している。多結晶シリコンは抵抗がそれほど低くないため、ゲート電極パッド120から離れた場所のゲート電極110は、ゲート電極パッド120より近い場所のゲート電極110に比べて、ゲート配線119の抵抗が高くなり、チップ面内での動作時間に差が生じるおそれがある。
【0011】
この問題を解決するため、大きなチップ、例えば1辺が3mm以上のチップでは、ゲート配線119の抵抗が面内で均一になるように、低抵抗の金属を重ねて配線する構造(ゲートランナー)がチップの外周や活性領域153に作られる。例えば、図13に示すように、表面にメタル構造のあるゲートランナー152を活性領域153内に横切る構成としている。
【0012】
図14に示すように、ゲートランナー152には、MOS構造部151と同様のn+型炭化珪素基板101、n+型バッファ層116、n型炭化珪素エピタキシャル層102、p型炭化珪素エピタキシャル層103、n+型ソース領域107およびp++型コンタクト領域108が設けられている。p型炭化珪素エピタキシャル層103、n+型ソース領域107およびp++型コンタクト領域108上にゲート絶縁膜109が設けられ、ゲート絶縁膜109上に多結晶シリコン層117および層間絶縁膜111が設けられる。層間絶縁膜111に設けられた開口部を通じて、多結晶シリコン層117と接続されるゲート配線119が設けられる。ここで、多結晶シリコン層117がMOS構造部151のゲート電極110と電気的に接続され、ゲート配線119を経由してゲート電極パッド120に接続される。
【0013】
また、高いアバランシェ耐量を得るため、複数のゲートフィンガートレンチと、複数のゲートフィンガートレンチを横切り、ゲート電極に電気的に接続されたゲートフィンガーとを含む、半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。
【0014】
また、複数のアクティブゲートトレンチが少なくとも1つのゲートランナートレンチに隣接するように、シリコン領域に画定されているトレンチゲート電界効果トランジスタ(FET)が公知である(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特許第6600475号公報
【文献】特開2009-522807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のようにチップが大きくなると、ゲートランナー152を活性領域153内にも配置する必要があるが、ゲート配線119は、層間絶縁膜111上に設けられているため、活性領域153の一部を犠牲にする必要がある。さらに、ゲートランナー152では、メタル構造のゲート配線119をチップ表面に形成しなければならないため、広い領域を必要とする。例えば、図14のゲートランナー152の幅Wt(ソース電極パッド115に設けられた開口部の幅)は、100μm程度必要である。
【0017】
さらに、ソース電極パッド115を分断して、ゲートランナー152が設けられ、ゲートランナー152上には、ソース電極パッド115と接続するワイヤーを設けることができない。このため、ワイヤーボンディングを行うときのボンディング位置やボンディング方向等に制約が発生する。
【0018】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、活性領域の縮小を抑えて、ワイヤーボンディングの領域に制約を加えない構造を実現できる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。炭化珪素半導体装置は、第1導電型の炭化珪素半導体基板のおもて面側に、前記炭化珪素半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に選択的に第2導電型の第2半導体層が設けられる。前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第2半導体層を貫通して、前記第1半導体層に達する第1トレンチが設けられる。前記第1トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面に第1電極が設けられる。前記炭化珪素半導体基板の裏面に第2電極が設けられる。前記第2半導体層を貫通して、前記第1半導体層に達する第2トレンチが設けられる。前記第2トレンチの内部に前記ゲート絶縁膜を介して多結晶シリコン層が設けられる。前記多結晶シリコン層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的にシリサイド層が設けられる。前記ゲート電極および前記シリサイド層上に層間絶縁膜が設けられる。これらをオン時に主電流が流れる活性領域内に備える。前記多結晶シリコン層および前記シリサイド層は、前記ゲート電極と電気的に接続される。前記シリサイド層と前記第1半導体領域との距離は、前記第2トレンチの深さ以上である。
【0020】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2トレンチの奥行き方向は、前記第1トレンチの奥行き方向と垂直に設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2トレンチの幅は、1μm以下であることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2トレンチの幅は、前記第1トレンチの幅と同じであることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2トレンチは、前記第1トレンチの奥行き方向に複数並列に設けられていることを特徴とする。
【0025】
上述した発明によれば、活性領域のゲートランナーはトレンチ構造であり、トレンチ内にシリサイド層と多結晶シリコン層が埋め込まれている。これにより、活性領域のゲートランナーの面積を少なくして、MOS構造として使用できる領域を増やすことができる。また、シリサイド層を設けることで、ゲート抵抗を低くすることができる。さらに、従来のようにゲート配線が表面に露出していないため、ワイヤーボンディングの位置の制約が無くなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置によれば、活性領域の縮小を抑えて、ワイヤーボンディングの領域に制約を加えない構造を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図であり、(a)は図2のA-A’断面図であり、(b)は図2のB-B’断面図である。
図2】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す図1の上面図である。
図3】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
図4】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
図5】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
図6】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
図7】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
図8】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その6)。
図9】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その7)。
図10】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その8)。
図11】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す断面図である。
図12】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す図11のB-B’上面図である。
図13】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す上面図である。
図14】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図で、(a)は図13のA-A’断面図、(b)は図13のB-B’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。+および-を含めたnやpの表記が同じ場合は近い濃度であることを示し濃度が同等とは限らない。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。
【0029】
(実施の形態)
実施の形態にかかる半導体装置は、シリコン(Si)よりもバンドギャップが広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体とする)を用いて構成される。この実施の形態にかかる半導体装置の構造について、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いた場合を例に説明する。図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図であり、(a)は後述する図2のA-A’断面図であり、(b)は図2のB-B’断面図である。
【0030】
実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置は、主電流が流れる活性領域の外周部に、活性領域の周囲を囲んで耐圧を保持するエッジ終端領域が設けられている。図1では、トレンチ型MOSFETの活性領域のみを示している。トレンチ型MOSFETの活性領域は、MOS構造部51とゲートランナー52とを備える。
【0031】
図1に示すように、トレンチ型MOSFET50のMOS構造部51は、半導体基板のおもて面(後述するp型炭化珪素エピタキシャル層3側の面)側にトレンチゲート構造のMOSゲートを備えている。炭化珪素半導体基体は、炭化珪素からなるn+型炭化珪素基板(第1導電型の半導体基板)1上にn型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)2およびp型炭化珪素エピタキシャル層(第2導電型の第2半導体層)3を順にエピタキシャル成長させてなる。n+型バッファ層16をn+型炭化珪素基板1上にエピタキシャル成長させてもよい。また、n型高濃度領域6をn型炭化珪素エピタキシャル層2上にエピタキシャル成長させてもよい。
【0032】
トレンチゲート構造のMOSゲートは、p型炭化珪素エピタキシャル層3、n+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)7、p++型コンタクト領域8、トレンチ(第1トレンチ)18、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10で構成される。
【0033】
具体的には、トレンチ18は、半導体基板のおもて面から深さ方向zにp型炭化珪素エピタキシャル層3を貫通して、n型高濃度領域6(n型高濃度領域6が設けられていない場合は、n型炭化珪素エピタキシャル層2、以下(2)と称する)に達する。深さ方向zとは、半導体基板のおもて面から裏面へ向かう方向である。トレンチ18は、例えば、ストライプ状に配置されている。
【0034】
トレンチ18の内部には、トレンチ18の内壁に沿ってゲート絶縁膜9が設けられ、ゲート絶縁膜9上にトレンチ18の内部に埋め込むようにゲート電極10が設けられている。1つのトレンチ18内のゲート電極10と、当該ゲート電極10を挟んで隣り合うメサ領域(隣り合うトレンチ18間の領域)と、でメイン半導体素子の1つの単位セルが構成される。図1(a)では、2つのトレンチMOS構造のみを図示しているが、さらに多くのトレンチ構造のMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)構造が並列に配置されていてもよい。
【0035】
+型炭化珪素基板1のおもて面側に、n+型バッファ層16が設けられていてもよい。n+型バッファ層16は、n+型炭化珪素基板1と同程度の不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされているバッファ層である。n+型バッファ層16内で電子-ホールの再結合を促進し、n+型炭化珪素基板1に注入されるホール密度を抑えることで、三角・帯状積層欠陥の発生を効果的に抑制することができる。
【0036】
n型炭化珪素エピタキシャル層2のソース側(後述するソース電極13側)の表面層に、p型炭化珪素エピタキシャル層3に接するようにn型領域(以下、n型高濃度領域とする)6が設けられていてもよい。n型高濃度領域6は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である。このn型高濃度領域6は、例えば、トレンチ18の内壁を覆うように、基板おもて面(半導体基板のおもて面)に平行な方向に一様に設けられている。
【0037】
n型高濃度領域6は、p型炭化珪素エピタキシャル層3との界面から、トレンチ18の底面よりもドレイン側(後述する裏面電極14側)に深い位置に達している。n型高濃度領域6の内部には、第1,2p+型ベース領域4、5がそれぞれ選択的に設けられていてもよい。第1p+型ベース領域4は、隣り合うトレンチ18間(メサ領域)に、第2p+型ベース領域5およびトレンチ18と離して設けられ、かつp型炭化珪素エピタキシャル層3に接する。第2p+型ベース領域5は、トレンチ18の底面および底面コーナー部のうち少なくとも底面を覆う。トレンチ18の底面コーナー部とは、トレンチ18の底面と側壁との境界である。
【0038】
第1,2p+型ベース領域4、5とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合は、トレンチ18の底面よりもドレイン側に深い位置に形成されている。n型高濃度領域6を設けずに、第1,2p+型ベース領域4、5がn型炭化珪素エピタキシャル層2の内部に設けられていてもよい。第1,2p+型ベース領域4、5のドレイン側端部の深さ位置は、第1,2p+型ベース領域4、5とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合がトレンチ18の底面よりもドレイン側に深い位置にあればよく、設計条件に合わせて種々変更可能である。第1,2p+型ベース領域4、5により、トレンチ18の底面に沿った部分でゲート絶縁膜9に高電界が印加されることを防止することができる。
【0039】
p型炭化珪素エピタキシャル層3の内部には、n+型ソース領域7が選択的に設けられている。n+型ソース領域7と接するようにp++型コンタクト領域8が選択的に設けられていてもよい。n+型ソース領域7は、トレンチ18の側壁のゲート絶縁膜9に接し、トレンチ18の側壁のゲート絶縁膜9を介してゲート電極10に対向する。
【0040】
層間絶縁膜11は、ゲート電極10を覆うように、半導体基板のおもて面全面に設けられている。層間絶縁膜11には、層間絶縁膜11を深さ方向zに貫通して基板おもて面に達するコンタクトホールが開口されている。
【0041】
ソース電極(第1電極)13は、コンタクトホール内において半導体基板(n+型ソース領域7)にオーミック接触し、かつ層間絶縁膜11によりゲート電極10と電気的に絶縁されている。ソース電極13上に、ソース電極パッド15が設けられている。p++型コンタクト領域8が設けられている場合、ソース電極13はp++型コンタクト領域8とオーミック接触する。p++型コンタクト領域8が設けられていない場合、ソース電極13はp型炭化珪素エピタキシャル層3とオーミック接触する。
【0042】
半導体基板の裏面に、ドレイン電極となる裏面電極(第2電極)14が設けられている。裏面電極14上には、ドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。
【0043】
また、図1(b)に示すように、ゲートランナー52は、MOS構造部51と同様のn+型炭化珪素基板1、n+型バッファ層16、n型炭化珪素エピタキシャル層2が、p型炭化珪素エピタキシャル層3、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8が設けられている。
【0044】
実施の形態では、活性領域内にゲート配線トレンチ(第2トレンチ)21を形成して、ゲート配線19をゲート配線トレンチ21内に設ける。具体的には、ゲート配線トレンチ21は、半導体基板のおもて面から深さ方向zにp型炭化珪素エピタキシャル層3を貫通して、n型高濃度領域6(2)に達する。ゲート配線トレンチ21は、例えば、ストライプ状に配置されている。ゲート配線トレンチ21では、p+型領域20がゲート配線トレンチ21の底部および側壁を覆い、MOSとして動作しないようになっている。
【0045】
ゲート配線トレンチ21の内部には、ゲート配線トレンチ21の内壁に沿ってゲート絶縁膜9が設けられ、ゲート絶縁膜9上にゲート配線トレンチ21内部に埋め込むように多結晶シリコン層17が設けられている。また、多結晶シリコン層17の一部または全部に多結晶シリコンよりも抵抗の低いシリサイド層22が設けられている。シリサイド層22の厚さは、多結晶シリコン層17を形成する際に堆積する多結晶シリコンの膜厚程度である。例えば、多結晶シリコンの膜厚が0.5μm程度である場合、シリサイド層22の厚さは0.5μm程度である。
【0046】
図1(b)では、多結晶シリコン層17の上部(層間絶縁膜11側)にシリサイド層22を設けた場合を示している。多結晶シリコン層17とシリサイド層22とをあわせてゲート配線19となる。ゲート配線19がMOS構造部51のゲート電極10と電気的に接続され、ゲート配線19を経由してゲート電極10とゲート電極パッドとが電気的に接続される。実施の形態では、シリサイド層22を設けることで、ゲート電極10とゲート電極パッドとの間のゲート抵抗を低くすることができる。
【0047】
ゲート配線トレンチ21の幅は、1μm以下であることが好ましい。ゲート配線トレンチ21に多結晶シリコン層17を埋め込む際の多結晶シリコンの膜厚は0.5μm程度である。このため、ゲート配線トレンチ21の幅が多結晶シリコンの膜厚の2倍より大きいと、ゲート配線トレンチ21内に多結晶シリコン層17を充填することができず、中に空洞ができる可能性があるためである。
【0048】
実施の形態のように、ゲートランナー52の構造としてトレンチ構造を利用すると、少ない面積でゲートランナー52を構成できる。例えば、ゲートランナー52は、MOS構造部51の1セル分で形成でき、トレンチ18とゲート配線トレンチ21を同じ(同じとは:製造ばらつきを考慮して±5%程度以内)の大きさにすれば、ゲートランナー52の幅W1は、0.5μm~1.0μm程度とすることができ、従来の100μm程度より狭くなっている。このため、活性領域53(図1参照)内でMOS構造部51として使用できる領域を増やすことができる。なお、p+型領域20の幅は5μm以下である。
【0049】
さらに、ゲートランナー52の表面にソース電極パッド15が設けられ、表面の構造は従来のMOS構造部51の構造と同様の構造をしている。従来のようにゲート配線19が表面に露出していないため、ワイヤーボンディングの位置や方向の制約が無くなる。さらに、ゲートランナー52の表面がMOS構造部51と同程度に平坦になる。具体的には、層間絶縁膜11の厚さが、ゲートランナー52とMOS構造部51とで同程度の厚さになるため、ソース電極パッド15は、ゲートランナー52とMOS構造部51とで同程度に平坦になっている。
【0050】
図2は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す図1のソース電極13より上を省いたおもて面の上面図である。図2に示すように、トレンチ18およびゲート配線トレンチ21は、ストライプ状の構造を有し、トレンチ18の奥行き方向とゲート配線トレンチ21の奥行き方向は直交している。MOSFETとして動作する部分Mの間にゲートランナーとして動作する部分Sが設けられている。また、ゲート配線トレンチ21のトレンチ18と接続する部分では、シリサイド層22が、トレンチ18の奥行き方向(x軸方向)に延在していてもよい。また、ゲートランナーとして動作する部分Sの幅W2は、5μm程度である。また、MOSFETとして動作する部分Mとシリサイド層22との間の距離W3、つまりn+型ソース領域7とシリサイド層22との間の距離は、ゲート配線トレンチ21の深さL(図1参照)以上とすることが好ましい。これにより、シリサイド層22がMOSFETの動作に影響を及ぼすことを軽減することができる。
【0051】
(実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。図3図10は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【0052】
まず、n型の炭化珪素でできたn+型炭化珪素基板1を用意する。そして、このn+型炭化珪素基板1の第1主面上に、n型の不純物、例えば窒素原子(N)をドーピングしながらn+型バッファ層16をエピタキシャル成長させてもよい。n+型バッファ層16の不純物濃度は、n+型炭化珪素基板1の不純物濃度と同程度にする。次に、n+型バッファ層16の表面上に、n型の不純物、例えば窒素原子をドーピングしながら炭化珪素でできた第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aを、例えば30μm程度の厚さまでエピタキシャル成長させる。ここまでの状態が図3に示されている。
【0053】
次に、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の下部第1p+型ベース領域4aおよび第2p+型ベース領域5を形成する。
【0054】
また、隣り合う下部第1p+型ベース領域4aと第2p+型ベース領域5との距離が1.5μm程度となるよう形成する。下部第1p+型ベース領域4aおよび第2p+型ベース領域5の不純物濃度を例えば5×1018/cm3程度に設定する。
【0055】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の下部n型高濃度領域6aを形成してもよい。下部n型高濃度領域6aの不純物濃度を例えば1×1017/cm3程度に設定する。ここまでの状態が図4に示されている。
【0056】
次に、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、窒素等のn型の不純物をドーピングした第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bを、0.5μm程度の厚さで形成する。第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bの不純物濃度が3×1015/cm3程度となるように設定する。以降、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aと第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bとを合わせてn型炭化珪素エピタキシャル層2となる。
【0057】
次に、第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bの表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の上部第1p+型ベース領域4bを、下部第1p+型ベース領域4aに重なるように形成する。下部第1p+型ベース領域4aと上部第1p+型ベース領域4bは連続した領域を形成し、第1p+型ベース領域4となる。上部第1p+型ベース領域4bの不純物濃度を例えば5×1018/cm3程度となるように設定する。
【0058】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bの表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の上部n型高濃度領域6bを形成してもよい。上部n型高濃度領域6bの不純物濃度を例えば1×1017/cm3程度に設定する。この上部n型高濃度領域6bと下部n型高濃度領域6aは少なくとも一部が接するように形成され、n型高濃度領域6を形成する。ただし、このn型高濃度領域6が基板全面に形成される場合と、形成されない場合がある。ここまでの状態が図5に示されている。
【0059】
次にn型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、エピタキシャル成長によりp型炭化珪素エピタキシャル層3を1.1μm程度の厚さで形成する。p型炭化珪素エピタキシャル層3の不純物濃度は4×1017/cm3程度に設定する。p型炭化珪素エピタキシャル層3をエピタキシャル成長により形成した後、p型炭化珪素エピタキシャル層3にさらにアルミニウム等のp型の不純物を、p型炭化珪素エピタキシャル層3のチャネル領域にイオン注入を行ってもよい。
【0060】
次に、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。この開口部に窒素(N)、リン(P)等のn型の不純物をイオン注入し、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面の一部にn+型ソース領域7を形成する。次に、n+型ソース領域7の形成に用いたイオン注入用マスクを除去し、同様の方法で、所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成し、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面の一部にリン等のp型の不純物をイオン注入し、p++型コンタクト領域8を形成してもよい。p++型コンタクト領域8の不純物濃度は、p型炭化珪素エピタキシャル層3の不純物濃度より高くなるように設定する。ここまでの状態が図6に示されている。
【0061】
ゲートランナー52でも同様に、n+型炭化珪素基板1の第1主面上に、n+型バッファ層16、n型炭化珪素エピタキシャル層2、n型高濃度領域6、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8が形成される。p+型領域20は、第1p+型ベース領域4と同様な方法で形成することができる。
【0062】
次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理(アニール)を行い、第1p+型ベース領域4、第2p+型ベース領域5、n+型ソース領域7、p++型コンタクト領域8およびp+型領域20の活性化処理を実施する。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。
【0063】
次に、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。次に、ドライエッチングによってp型炭化珪素エピタキシャル層3を貫通し、n型高濃度領域6(2)に達するトレンチ18およびゲート配線トレンチ21を形成する。トレンチ18の底部はn型高濃度領域6(2)に形成された第2p+型ベース領域5に達してもよい。ゲート配線トレンチ21は、p+型領域20に達するように形成する。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。ここまでの状態が図7に示されている。このように、実施の形態では、ゲート配線トレンチ21は、トレンチ18と同時に形成することが可能であるため、半導体装置製造のプロセスを変更する必要がない。
【0064】
次に、n+型ソース領域7の表面と、トレンチ18およびゲート配線トレンチ21の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜9を形成する。このゲート絶縁膜9は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜9は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。ゲートランナー52での、ここまでの状態が図9に示されている。
【0065】
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン膜を設ける。この多結晶シリコン膜はトレンチ18内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン膜をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ18内部に残すことによって、ゲート電極10を形成する。
【0066】
ゲートランナー52でも同様に、多結晶シリコン膜はゲート配線トレンチ21内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン膜をフォトリソグラフィによりパターニングし、ゲート配線トレンチ21内部に残すことによって、多結晶シリコン層17を形成する。次に、ゲートランナー52では、多結晶シリコン17上にニッケル膜23を形成する。ゲートランナー52での、ここまでの状態が図10に示されている。
【0067】
次に、ニッケル膜23をフォトリソグラフィによりパターニングし、ゲートランナーとして動作する部分Sに対応する領域のみに残す。次に、ゲート絶縁膜9に覆われた炭化珪素半導体層のシリコンとだけ反応する温度、例えば500℃程度の温度で、多結晶シリコン層17の一部または全部をシリサイド化してシリサイド層22を形成する。ここでは、ゲートランナー52のみをシリサイド化したが、MOS構造部51のゲート電極10もシリサイド化してもよい。なお、シリサイド層22を形成するための金属は、ニッケル以外にもクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)等の金属を利用してもよい。
【0068】
ゲート配線トレンチ21に埋め込まれた多結晶シリコンは、エッチバックにより、へこんだ形状をしているが、実施の形態のように、シリサイド層22を形成するとシリサイド層22が盛り上がり、バリアメタル等との密着性が向上する。トレンチ18にシリサイド層22を形成した場合も、同様にバリアメタル等との密着性が向上する。
【0069】
次に、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を形成する。層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9をフォトリソグラフィによりパターニングしn+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8を露出させたコンタクトホールを形成する。p++型コンタクト領域8を形成しない場合、n+型ソース領域7およびp型炭化珪素エピタキシャル層3を露出させたコンタクトホールを形成する。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜11を平坦化する。ここまでの状態が図8に示されている。また、層間絶縁膜11にコンタクトホールを形成した後に、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)またはチタンと窒化チタンの積層からなるバリアメタルを形成してもよい。この場合、バリアメタルにもn+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8を露出させるコンタクトホールが設けられる。
【0070】
次に、層間絶縁膜11に設けられたコンタクトホール内および層間絶縁膜11上にソース電極13となる導電性の膜を形成する。導電性の膜は、例えばニッケル(Ni)膜である。また、n+型炭化珪素基板1の第2主面上にも、同様にニッケル(Ni)膜を形成する。その後、例えば970℃程度の温度で熱処理を行って、コンタクトホール内部のニッケル膜をシリサイド化してソース電極13とする。同時に、第2主面に形成したニッケル膜は、n+型炭化珪素基板1とオーミック接合を形成する裏面電極14となる。その後、未反応のニッケル膜を選択的に除去して、例えばコンタクトホール内にのみソース電極13を残す。
【0071】
次に、コンタクトホールを埋め込むようにソース電極パッド15を形成する。ソース電極パッド15を形成するために堆積した金属層の一部をゲートパッドとしてもよい。n+型炭化珪素基板1の裏面には、裏面電極14のコンタクト部にスパッタ蒸着などを用いてニッケル(Ni)膜、チタン(Ti)膜などの金属膜を形成する。この金属膜は、Ni膜、Ti膜を複数組み合わせて積層してもよい。その後、金属膜がシリサイド化してオーミックコンタクトを形成するように、高速熱処理(RTA:Rapid Thermal Annealing)などのアニールを施す。その後、例えばTi膜、Ni膜、金(Au)を順に積層した積層膜などの厚い膜を電子ビーム(EB:Electron Beam)蒸着などで形成し、裏面電極14を形成する。
【0072】
上述したエピタキシャル成長およびイオン注入においては、n型不純物(n型ドーパント)として、例えば、炭化珪素に対してn型となる窒素(N)やリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などを用いればよい。p型不純物(p型ドーパント)として、例えば、炭化珪素に対してp型となるホウ素(B)やアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)などを用いればよい。このようにして、図1に示すトレンチ型MOSFET50が完成する。
【0073】
図11は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す断面図である。図12は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す図11のB-B’上面図である。図11および図12に示すように、ゲート配線トレンチ21は、ゲートランナーとして動作する部分Sの中に複数設けられてもよい。複数のゲート配線トレンチ21は、ゲート配線トレンチ21の奥行き方向(x軸方向)と垂直な方向(y軸方向)に並んでいる。
【0074】
多結晶シリコン層17に、p型の多結晶シリコンを用いるとn型に比べて抵抗が高くなる。このため、図11および図12のように、ゲート配線トレンチ21を複数設けることで、ゲート抵抗を低減することができる。ゲート配線トレンチ21の幅を広げると、多結晶シリコン層17の埋め込みが十分できず中に空洞ができる場合があるため、ゲート配線トレンチ21の幅を広くするよりも、複数設ける方が好ましい。
【0075】
以上、説明したように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置によれば、活性領域のゲートランナーはトレンチ構造であり、トレンチ内にシリサイド層と多結晶シリコン層が埋め込まれている。これにより、活性領域のゲートランナーの面積を少なくして、MOS構造として使用できる領域を増やすことができる。また、シリサイド層を設けることで、ゲート抵抗を低くすることができる。さらに、従来のようにゲート配線が表面に露出していないため、ワイヤーボンディングの位置の制約が無くなる。
【0076】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0078】
1、101 n+型炭化珪素基板
2、102 n型炭化珪素エピタキシャル層
2a 第1n型炭化珪素エピタキシャル層
2b 第2n型炭化珪素エピタキシャル層
3、103 p型炭化珪素エピタキシャル層
4、104 第1p+型ベース領域
4a 下部第1p+型ベース領域
4b 上部第1p+型ベース領域
5、105 第2p+型ベース領域
6、106 n型高濃度領域
6a 下部n型高濃度領域
6b 上部n型高濃度領域
7、107 n+型ソース領域
8、108 p++型コンタクト領域
9、109 ゲート絶縁膜
10、110 ゲート電極
11、111 層間絶縁膜
13、113 ソース電極
14、114 裏面電極
15、115 ソース電極パッド
16、116 n+型バッファ層
17、117 多結晶シリコン層
18、118 トレンチ
19、119 ゲート配線
20 p+型領域
21 ゲート配線トレンチ
22 シリサイド層
23 ニッケル膜
50、150 トレンチ型MOSFET
51、151 MOS構造部
52、152 ゲートランナー
53、153 活性領域
54、154 エッジ終端領域
120 ゲート電極パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14