(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/244 20210101AFI20240521BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240521BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20240521BHJP
【FI】
H01M50/244 A
H01G11/78
H01G11/10
(21)【出願番号】P 2020048202
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 駿
(72)【発明者】
【氏名】岩嶋 泰行
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-237381(JP,A)
【文献】特開平09-118139(JP,A)
【文献】特開平07-232564(JP,A)
【文献】特開2012-084239(JP,A)
【文献】特開2015-103450(JP,A)
【文献】特開2011-255705(JP,A)
【文献】特開2021-150141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01G 11/78
H01G 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子を収容する外装体を備える蓄電装置であって、
前記外装体の側面の下部には、側方に突出する被固定部であって、他の部材に固定される被固定部が設けられており、
前記被固定部
における少なくとも前記他の部材に上方から固定される部分の下方には補強部材が配置されている、
蓄電装置。
【請求項2】
前記補強部材は、上下方向において前記被固定部と当接した状態で配置されている、
請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記補強部材は、前記外装体の底壁の下方から前記被固定部の下方まで延在する、
請求項1または2記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記被固定部は、前記外装体の前記側面の下部端縁に沿って延在し、
前記補強部材は、前記被固定部の下方において前記被固定部に沿って延在する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記被固定部は、前記補強部材の、外周面の少なくとも一部を覆うカバー部を有し、
前記カバー部は、前記カバー部の下端が前記補強部材の下端よりも高い位置になるように配置されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子と蓄電素子を収容する外装体とを備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電素子と蓄電素子を収容する外装体とを備える蓄電装置が知られている。例えば、特許文献1には、複数の電池セル(蓄電素子)を有する電池モジュールと、筐体(外装体)とを備える電池パック(蓄電装置)が開示されている。この電池パックでは、比較的に大きな筐体に複数の電池モジュールが収容されており、各電池モジュールは、ブラケットを介して筐体の側壁部にボルトで固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の蓄電装置のような、複数の蓄電素子が収容された外装体を備える蓄電装置を、所定の位置に設置する場合、例えば外装体の下端部が、ブラケット等の固定用部材を用いて固定対象の他の部材(床面、棚板、ケースの底面等)に固定される。このとき、外装体をしっかりと固定するためには、固定用部材により、外装体の下端部を、他の部材向きの大きな力で押さえる必要がある。しかしながら、外装体は、電気的な絶縁機能または軽量化等の観点から樹脂で形成される場合があり、この場合、固定用部材から受ける押圧力による変形等の問題が生じやすい。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、外装体を備える蓄電装置であって、無理なくしっかりと固定できる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子を収容する外装体を備える蓄電装置であって、前記外装体の側面の下部には、側方に突出する被固定部であって、他の部材に固定される被固定部が設けられており、前記被固定部の下方には補強部材が配置されている。
【0007】
この構成によれば、例えば蓄電装置を所定の位置に固定する際に、外装体の下部に設けられた被固定部を上方から押さえる態様で固定することができる。この時、被固定部の下方には補強部材が配置されているため、比較的に大きい力で被固定部を固定することができ、この場合であっても被固定部を含む外装体の損傷が抑制される。つまり、本態様に係る蓄電装置は、無理なくしっかりと固定することができる蓄電装置である。
【0008】
前記補強部材は、上下方向において前記被固定部と当接した状態で配置されている、としてもよい。
【0009】
この構成によれば、上下方向において補強部材と被固定部との間に隙間がないため、被固定部が上方から大きい力で押された場合であっても、被固定部の変形が抑制され、これにより、被固定部の変形または損傷の可能性がより低減される。
【0010】
前記補強部材は、前記外装体の底壁の下方から前記被固定部の下方まで延在する、としてもよい。
【0011】
この構成によれば、例えば、補強部材は、外装体の底壁を補強する部材としても機能することができる。また、補強部材は、被固定部の下方だけでなく、底壁の下方まで広がっていることで、被固定部を補強するための部材としての強度も向上する。さらに、例えば、補強部材を、一枚の金属板等の入手しやすい素材で、容易に作製することができる。
【0012】
前記被固定部は、前記外装体の前記側面の下部端縁に沿って延在し、前記補強部材は、前記被固定部の下方において前記被固定部に沿って延在する、としてもよい。
【0013】
この構成によれば、外装体の側面の下部端縁に沿って延在する被固定部を利用して蓄電装置を固定できるため、蓄電装置をより強固に、または、より確実に固定することができる。従って、蓄電装置をより安定的に固定することができる。
【0014】
前記被固定部は、前記補強部材の、外周面の少なくとも一部を覆うカバー部を有し、前記カバー部は、前記カバー部の下端が前記補強部材の下端よりも高い位置になるように配置されているとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、例えば金属等の強度の高い材料で補強部材を形成した場合であっても、その端面(外周面)はカバー部で覆われるため、持ち運びなどの際に、補強部材と、他の部材または作業員等との干渉は抑制される。また、カバー部の下端は、補強部材の下端よりも高い位置にあるため、固定の際に、被固定部が上方から押圧された場合であっても、カバー部の下端が、固定面に当接する可能性が低減される。これにより、例えば、カバー部を含む被固定部を変形または損傷することなく、大きな力で被固定部を固定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明における蓄電装置によれば、無理なくしっかりと固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る蓄電装置の分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る蓄電ユニットの分解斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る外装体の内部構成の一部を示す切断図である。
【
図5】実施の形態に係る外装体を斜め下方から見た場合の斜視図である。
【
図6】実施の形態に係る蓄電装置の被固定部及びその周辺の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0019】
また、以下の説明及び図面中において、1つの蓄電素子における一対(正極側及び負極側)の電極端子の並び方向、蓄電素子の容器の短側面の対向方向、または、一対のサイドプレートの並び方向を、X軸方向と定義する。複数の蓄電素子の配列方向、蓄電素子の容器の長側面の対向方向、または、一対のエンドプレートの並び方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の外装体本体と蓋体との並び方向、蓄電素子の容器本体と蓋部との並び方向、蓄電素子とバスバーとの並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0020】
また、以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0021】
(実施の形態)
[1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、本実施の形態に係る蓄電装置10の全般的な説明を行う。
図1は、実施の形態に係る蓄電装置10の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電装置10の分解斜視図である。
図3は、実施の形態に係る蓄電ユニット200の分解斜視図である。
【0022】
蓄電装置10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。例えば、蓄電装置10は、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置10は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール及びリニアモーターカーが例示される。また、蓄電装置10は、家庭用または発電機用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0023】
図1に示すように、蓄電装置10は、外装体100を備えている。また、
図2及び
図3に示すように、外装体100の内方には、複数の蓄電素子210からなる蓄電素子列201を有する蓄電ユニット200が配置されている。なお、蓄電装置10は、上記の構成要素の他、バスバーが載置されるバスバーフレーム、蓄電素子210の充電状態及び放電状態を監視するための回路基板、ヒューズ、リレー及びコネクタ等の電気機器、並びに、蓄電素子210から排出されるガスを外装体100の外方へ排気するための排気部等を備えていてもよい。
【0024】
蓄電ユニット200は、複数の蓄電素子210が配列された蓄電素子列201と、複数のスペーサ300(301、302)、一対のエンドプレート400、及び、一対のサイドプレート500を有する。複数の蓄電素子210は、図示しない複数のバスバーにより例えば直列に接続されている。
【0025】
外装体100は、蓄電装置10の外装体を構成する箱形(略直方体形状)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体100は、蓄電ユニット200等を所定の位置で固定し、衝撃等から保護する。外装体100は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材、または、絶縁塗装をした金属等により形成されている。外装体100は、これにより、蓄電素子210等が外部の金属部材等に接触することを回避する。なお、蓄電素子210等の電気的絶縁性が保たれる構成であれば、外装体100は、金属等の導電部材で形成されていてもよい。
【0026】
外装体100は、外装体100の本体を構成する外装体本体110と、外装体100の蓋体を構成する外装体蓋体120と、を有している。外装体本体110は、開口が形成された有底矩形筒状のハウジング(筐体)であり、蓄電素子210等を収容する。外装体蓋体120は、外装体本体110の開口を閉塞する扁平な矩形状の部材である。外装体蓋体120は、接着剤、ヒートシールまたは超音波溶着等によって、外装体本体110と接合される。
【0027】
本実施の形態において、外装体100には、蓄電装置10が収容されるケースの底面またはラックの棚板等の他の部材に蓄電装置10を固定するための被固定部118が設けられている。被固定部118は、例えば「レッジ」と呼ばれる部位であり、
図1に示すように、外装体100(外装体本体110)の側面116の下部端縁に沿って延在している。被固定部118の一部には、ブラケット等の固定用部材に押さえられる固定凹部118aが設けられている。被固定部118及びその周辺の構造については、
図4~
図6を用いて後述する。
【0028】
外装体蓋体120には、正極外部端子121と負極外部端子122とが設けられている。正極外部端子121は、蓄電ユニット200の総プラス端子である電極端子220と電気的に接続される。負極外部端子122は、蓄電ユニット200の総マイナス端子である電極端子220と電気的に接続される。蓄電装置10は、この正極外部端子121と負極外部端子122とを介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。
【0029】
蓄電素子210は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子210は、扁平な直方体形状(角形)を有しており、本実施の形態では、4個の蓄電素子210がY軸方向に並んで配列されている。なお、蓄電素子210の大きさ、形状、及び、配列される蓄電素子210の個数は限定されず、例えば1つの蓄電素子210しか配置されていなくてもよい。また、蓄電素子210は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子210は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。また、蓄電素子210は、ラミネート型の蓄電素子であってもよい。
【0030】
本実施の形態に係る蓄電素子210は、容器211と、一対(正極側及び負極側)の電極端子220と、を備えている(
図3参照)。また、容器211の内方には、電極体、一対の集電体、及び、電解液(非水電解質)等が収容されており、容器211と電極端子220及び集電体との間にはガスケットが配置されているが、これらの図示は省略する。当該電解液としては、蓄電素子210の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。また、蓄電素子210は、上記構成の他、集電体の側方等に配置されるスペーサ、及び、容器211の外面を覆う絶縁シート等を備えていてもよい。
【0031】
容器211は、開口が形成された容器本体と、容器本体の開口を閉塞する蓋部とを有する直方体形状(角形)の容器であり、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板等の金属等で形成されている。本実施の形態では、容器211は、長側面がY軸方向に向き、短側面がX軸方向に向く姿勢、つまり、一対の長側面がY軸方向で対向し、一対の短側面がX軸方向で対向する姿勢で配置されている。また、容器211のZ軸プラス方向側の面(蓋部)には、容器211内方の圧力が上昇した場合に当該圧力を開放するガス排出弁230が設けられている(
図3参照)。
【0032】
電極端子220は、容器211のZ軸プラス方向側の面(蓋部)に配置される蓄電素子210の端子(正極端子または負極端子)であり、集電体を介して、電極体の正極板または負極板に電気的に接続されている。つまり、一対の電極端子220のそれぞれは、電極体に蓄えられている電気を蓄電素子210の外部空間に導出し、また、電極体に電気を蓄えるために蓄電素子210の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。電極端子220は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等で形成されている。
【0033】
電極体は、正極板と負極板とセパレータとが積層されて形成された蓄電要素(発電要素)である。正極板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属からなる集電箔である正極基材層上に正極活物質層が形成されたものである。負極板は、銅または銅合金等の金属からなる集電箔である負極基材層上に負極活物質層が形成されたものである。正極活物質層及び負極活物質層に用いられる活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能なものであれば、適宜公知の材料を使用できる。なお、電極体は、極板(正極板及び負極板)が巻回されて形成された巻回型の電極体、複数の平板状の極板が積層されて形成された積層型(スタック型)の電極体、または、極板を蛇腹状に折り畳んだ蛇腹型の電極体等、どのような形態の電極体でもよい。
【0034】
集電体は、電極端子220と電極体とに電気的に接続される導電性の部材(正極集電体または負極集電体)である。なお、正極集電体は、正極板の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成され、負極集電体は、負極板の負極基材層と同様、銅または銅合金等で形成されている。
【0035】
スペーサ300(スペーサ301、302)は、蓄電素子210の側方(Y軸プラス方向またはY軸マイナス方向)に配置され、蓄電素子210と他の部材とを電気的に絶縁する矩形状かつ板状の部材である。具体的には、スペーサ301は、隣り合う2つの蓄電素子210の間に配置され、当該2つの蓄電素子210の間を電気的に絶縁する部材であり、例えばセル間スペーサと呼ばれる部材である。スペーサ302は、端部の蓄電素子210とエンドプレート400との間に配置され、当該端部の蓄電素子210とエンドプレート400との間を電気的に絶縁する部材であり、例えばエンドスペーサと呼ばれる部材である。また、スペーサ301、302のそれぞれは、蓄電素子210のX軸方向両側も覆うように配置されて、蓄電素子210とサイドプレート500との間も電気的に絶縁する。
【0036】
本実施の形態では、4つの蓄電素子210に対応して、3つのスペーサ301と2つのスペーサ302とが配置されているが、蓄電素子210の個数が4つ以外の場合には、スペーサ301の個数も蓄電素子210の個数に応じて適宜変更される。スペーサ300は、例えば、上記の外装体100に使用可能ないずれかの電気的絶縁性の樹脂材料等で形成されている。
【0037】
エンドプレート400及びサイドプレート500は、複数の蓄電素子210からなる蓄電素子列201の並び方向(Y軸方向)において、蓄電素子列201を外方から圧迫(拘束)する拘束部材である。つまり、一対のエンドプレート400は、蓄電素子列201を当該並び方向の両側から挟み込み、かつ、一対のサイドプレート500は一対のエンドプレート400に拘束力を与える。これにより、蓄電素子列201に含まれるそれぞれの蓄電素子210は、当該並び方向の両側から圧迫(拘束)される。
【0038】
本実施の形態では、サイドプレート500は、Z軸方向に並ぶ複数のナット500aによって、エンドプレート400に接続(接合)されている(
図3参照)。具体的には、ナット500aは、サイドプレート500を貫通したエンドプレート400のネジ部と螺合されて当該ネジ部に締結される。エンドプレート400及びサイドプレート500は、鉄、ステンレス鋼、またはアルミニウム合金等の金属で形成されている。
【0039】
また、本実施の形態では、外装体100の外側に、補強部材40が配置されている。補強部材40は、鉄等の強度の高い材料で構成された部材であり、蓄電装置10の耐衝撃性等を高める機能に加え、蓄電装置10を他の部材に固定する際の固定力を向上させる機能を有している。本実施の形態では、
図2に示すように、外装体100の底壁115に沿って補強部材40が配置されており、4つのボルト80により、補強部材40が外装体100に固定されている。
【0040】
[2.被固定部及びその周辺の構造について]
次に、被固定部118とその周辺の構造について、
図4~
図6を参照しながら説明する。
図4は、実施形態に係る外装体100の内部構成の一部を示す切断図である。
図4では、
図2のIV-IV線に平行なYZ平面で外装体本体110の一部を切り取り、かつ、外装体本体110の底壁115から蓄電ユニット200を浮かせた状態の外装体本体110が図示されている。
図5は、実施の形態に係る外装体100を斜め下方から見た場合の斜視図である。
図5では、補強部材40が、外装体100から分離された状態で図示されている。
図6は実施の形態に係る蓄電装置10の被固定部118及びその周辺の構造を示す断面図である。
図6では、
図4のVI-VI線を通るYZ平面における蓄電装置10の断面の一部が図示されている。また、
図6では、被固定部118を押さえる固定用部材610は、おおよその外形が点線で表されている。
【0041】
本実施の形態では、
図4に示すように、外装体100の内部において、蓄電ユニット200は内底面113に載置される。内底面113は、外装体100(外装体本体110)の底壁115の内面(外装体100の内部側の面)である。内底面113は、具体的には、蓄電素子210が載置される載置面部113aと、ボルト80が貫通する貫通孔が形成された固定面部113bとを有する。蓄電素子210の底面211aは、例えば接着剤90(
図6参照)によって載置面部113aに固定される。
【0042】
ボルト80は、
図4及び
図5に示すように、外装体100の底壁115を貫通し、補強部材40のネジ孔41に螺合することで、補強部材40を、外装体100の底壁115に沿う姿勢で固定する。より詳細には、ボルト80と、底壁115におけるボルト80が貫通する貫通孔との間にはガスケットが配置されており、これにより、当該貫通孔における気密性または水密性が確保される。
【0043】
このように補強部材40が固定されている外装体100の下部には、被固定部118が設けられている。具体的には、
図4及び
図5に示すように、被固定部118は、外装体100の側面116の下部端縁に沿って延在して設けられている。被固定部118は、
図6に示すように、ブラケット等の固定用部材610に押さえられる部分であり、外装体100の側面116の下部端縁から外方に突出した形状に形成されている。このように、外装体100の被固定部118が、外装体100の側面116から外方に突出していることで、外装体100の外部に配置された固定用部材610は、ケースの底面またはラックの棚板等の固定対象物600(
図6参照)に蓄電装置10を固定することができる。より具体的には、固定用部材610は、
図6に示すように、被固定部118に設けられた固定凹部118aの位置において、被固定部118を固定対象物600に向けて押圧する。このような状態の固定箇所が、外装体100の4つの側面116の下部端縁に沿って延在する被固定部118に複数設けられることで、蓄電装置10が、固定対象物600に固定される。また、このような固定態様において、固定力を上げるためには、固定用部材610の被固定部118に対する押圧力を増加させる必要がある。しかしながら、本実施の形態では、外装体100は、上述のようにPC、PP、またはPE等の樹脂で形成されているため、固定用部材610の押圧力の増加は、被固定部118を含む外装体100の変形または破損等の要因となる。
【0044】
そこで、本実施の形態では、被固定部118の下方に補強部材40の一部が位置する状態で、補強部材40が外装体100に固定されている。より具体的には、
図6に示すように、補強部材40は、被固定部118に当接して配置されており、補強部材40の外周面40aの少なくとも一部は、被固定部118が有するカバー部119に覆われる。また、
図2及び
図5に示されるように、補強部材40は、被固定部118に沿うように延在している。これにより、補強部材40は、上面視(Z軸プラス方向から見た場合)において環状に延設された被固定部118における任意の位置において、被固定部118を下方から補強することができる。
【0045】
[3.効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電装置10は、蓄電素子210を収容する外装体100を備える。外装体100の側面116の下部には、側方に突出する被固定部118であって、他の部材である固定対象物600に固定される被固定部118が設けられており、被固定部118の下方には補強部材40が配置されている。
【0046】
この構成によれば、例えば蓄電装置10を所定の位置に固定する際に、外装体100の下部に設けられた被固定部118を上方から押さえる態様で固定することができる。この時、被固定部118の下方には補強部材40が配置されているため、比較的に大きい力で被固定部118を固定することができ、この場合であっても被固定部118を含む外装体100の損傷が抑制される。つまり、本実施の形態に係る蓄電装置10は、無理なくしっかりと固定することができる蓄電装置である。
【0047】
また、本実施の形態において、補強部材40は、上下方向において被固定部118と当接した状態で配置されている。
【0048】
この構成によれば、上下方向において補強部材40と被固定部118との間に隙間がないため、被固定部118が上方から大きい力で押された場合であっても、被固定部118の変形が抑制される。これにより、被固定部118の変形または損傷の可能性がより低減される。
【0049】
また、本実施の形態において、補強部材40は、外装体100の底壁115の下方から被固定部118の下方まで延在している。つまり、補強部材40は、外装体100の底壁115に沿って広がり、かつ、被固定部118に下方に至る大きさに形成されている。従って、補強部材40は、外装体100の底壁115を補強する部材としても機能することができる。また、補強部材40は、被固定部118の下方だけでなく、底壁115の下方まで広がっていることで、被固定部118を補強するための部材としての強度も向上する。さらに、例えば、補強部材40を、一枚の金属板等の入手しやすい素材で、容易に作製することができる。
【0050】
なお、本実施の形態では補強部材40はボルト80用の貫通孔を除いて、肉厚がほぼ一定の平板状であるが、補強部材40は部分によって肉厚が異なっていてもよく、また、少なくとも一部が波板状等の平板状でない形状に形成されていてもよい。また、補強部材40は金属製である必要はなく、例えば樹脂で形成されていてもよい。この場合、補強部材40の材料として、外装体100の材料よりも剛性の大きい樹脂が採用されることが好ましい。また、補強部材40は、単一の材料ではなく、複数の材料が組み合わされることで形成されてもよい。すなわち、補強部材40は、少なくとも被固定部118に下方に位置する形状及び大きさに形成されればよく、補強部材40を構成する材料の個数及び種類等に限定はない。
【0051】
また、本実施の形態において、被固定部118は、外装体100の側面116の下部端縁に沿って延在し、補強部材40は、被固定部118の下方において被固定部118に沿って延在している。
【0052】
この構成によれば、外装体100の側面116の下部端縁に沿って延在する被固定部118を利用して蓄電装置10を固定できるため、蓄電装置10をより強固に、または、より確実に固定することができる。具体的には、被固定部118に沿って補強部材40も延在するため、被固定部118の延在方向における複数の位置で、強い押圧力によって被固定部118を固定対象物600(
図6参照)に向けて押圧することができる。従って、複数箇所の固定位置のそれぞれで外装体100を強固に固定することが可能である。従って、蓄電装置10をより安定的に固定することができる。
【0053】
また、本実施の形態において、被固定部118は、
図6に示すように、補強部材40の外周面40aの少なくとも一部を覆うカバー部119を有する。カバー部119は、カバー部119の下端が補強部材40の下端よりも高い位置になるように配置されている。
【0054】
このように、本実施の形態において、少なくとも一部が被固定部118の下方に配置される補強部材40の外周面40aは、被固定部118が有するカバー部119で覆われる。そのため、金属等の強度の高い材料で補強部材40を形成した場合であっても、その端面(外周面40a)はカバー部119で覆われるため、持ち運びなどの際に、補強部材40と、他の部材または作業員等との干渉は抑制される。また、カバー部119の下端は、補強部材40の下端よりも高い位置にある。つまり、蓄電装置10を、平板な固定面を有する固定対象物600に載置した状態では、カバー部119の下端と当該固定面との間には隙間が存在する。そのため、蓄電装置10の固定の際に、被固定部118が上方から押圧された場合であっても、カバー部119の下端が、当該固定面に当接する可能性が低減される。これにより、例えば、カバー部119を含む被固定部118を変形または損傷させることなく、大きな力で被固定部118を固定することができる。
【0055】
[4.変形例の説明]
以上、本実施の形態に係る蓄電装置10について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。つまり、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0056】
例えば、上記実施の形態では、外装体100の被固定部118は、側面116の下部端縁に沿って延在するとしたが、被固定部118は、側面116の下部端縁の少なくとも一部から外向きに突出して設けられればよい。例えば、外装体100のY軸方向の一端が他の固定手段で固定される場合、外装体100のY軸方向の他端側の側面116の下部端縁のみに1つの被固定部118が設けられてもよい。この被固定部118は、その側面116の下部端縁の延在方向(X軸方向)の一部のみに配置されてもよい。つまり、外装体100を底壁115の側(Z軸マイナス方向側)から見た場合に、底壁115の外周部の一部のみに被固定部118が配置されてもよい。この場合であっても、その被固定部118の下方に、補強部材40の少なくとも一部が配置されていれば、その被固定部118を、固定対象物600に対して強い押圧力で固定することができ、このことは、蓄電装置10のしっかりとした固定状態に寄与する。
【0057】
また、被固定部118は、
図6に示すように固定対象物600に向けて押圧される状態で固定されるのであれば、固定の手法に特に限定はない。例えば、被固定部118及び補強部材40に互いに連通する貫通孔を設け、その貫通孔にボルトまたはリベットを挿入した状態で、ボルトまたはリベットによって被固定部118を固定対象物600に締結してもよい。この場合であっても、被固定部118と固定対象物600との間に補強部材40が存在するため、被固定部118の、締結力を受けることによる変形または損傷等が抑制される。
【0058】
また、補強部材40を外装体100に固定するボルト80の数は4には限定されず、4より多くてもよく、1以上3以下であってもよい。つまり、ボルト80の数及び配置位置は、例えば、補強部材40の大きさ、形状、または、重量等に応じて適宜決定されてもよい。
【0059】
また、蓄電ユニット200は、拘束部材(エンドプレート400及びサイドプレート500)を有しなくてもよい。例えば、外装体100によって、複数の蓄電素子210からなる蓄電素子列201を、その並び方向の両側から拘束できる場合、蓄電ユニット200は、拘束部材を有しなくてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の蓄電素子を備えた蓄電装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0062】
10 蓄電装置
40 補強部材
40a 外周面
100 外装体
110 外装体本体
115 底壁
116 側面
118 被固定部
118a 固定凹部
119 カバー部
210 蓄電素子
600 固定対象物
610 固定用部材