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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】配線基板および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240521BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H01L23/12 N
H01L23/12 F
H01L23/12 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020049008
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021150491
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 良馬
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-017746(JP,A)
【文献】特開2008-270346(JP,A)
【文献】特開2016-072320(JP,A)
【文献】特開2017-123408(JP,A)
【文献】特開2013-157402(JP,A)
【文献】特開2011-222948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0263168(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂に複数のビアが形成されたビア層と、
前記ビア層の上に、絶縁樹脂に複数のランドと複数の配線が形成されたトレンチ層とが、少なくとも1層以上交互に形成され、
前記ビア層のビアと前記トレンチ層のランドが接することにより、前記トレンチ層が電気的に層間接続されている多層配線基板であって、
前記ビア層のビアよりも前記トレンチ層のランドのテーパー角度が小さいことを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
絶縁樹脂に複数のビアが形成されたビア層と、
前記ビア層の上に、絶縁樹脂に複数のランドと複数の配線が形成されたトレンチ層とが、少なくとも1層以上交互に形成され、
前記ビア層のビアと前記トレンチ層のランドが接することにより、前記トレンチ層が電気的に層間接続されている多層配線基板であって、
前記トレンチ層のランドよりも前記トレンチ層の配線のテーパー角度が大きいことを特徴とする多層配線基板。
【請求項3】
前記ビア層のビアより前記トレンチ層の配線のテーパー角度が大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
前記絶縁樹脂が感光性樹脂であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の多層配線基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板および配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高速、高集積化が進む中で、FC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array)用配線基板に対しても、半導体素子との接続端子の狭ピッチ化、基板配線の微細化が求められている。一方、FC-BGA用配線基板とマザーボードとの接続は、従来とほぼ変わらないピッチの接続端子での接続が要求されている。
この半導体素子との接続端子の狭ピッチ化、基板配線の微細化のため、シリコン上に配線を形成して半導体素子接続用の基板(シリコンインターポーザ)として、FC-BGA用配線基板に接続する方式が知られている。
【0003】
シリコンインターポーザは、シリコンウェハを利用して、半導体前工程用の設備を用いて製作されている。シリコンウェハは形状、サイズに制限があり、1枚のウェハから製作できるインターポーザの数が少なく、製造設備も高価であるため、インターポーザも高価となる。また、シリコンウェハが半導体であることから、伝送特性も劣化するという問題がある。
【0004】
また、FC-BGA用配線基板の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)等で平坦化してから微細配線を形成する方式が特許文献1に開示されている。
【0005】
しかしながら、CMPなどでFC-BGA用配線基板の表面の平坦化を行い、その上に微細配線層を形成する方式においては、シリコンインターポーザに見られる伝送特性劣化は小さいが、FC-BGA用配線基板の製造不良と、難易度の高い微細配線形成時の不良との通算で同一基板面内収率が低下する問題や、実装時の熱反りにより、トレンチ層の樹脂とビア層の樹脂の界面でデラミ(剥離)が生じることがあった。さらに、微細配線層における電気特性および線間絶縁信頼性の確保が必要である。
【0006】
また、支持基板の上に微細配線層を形成し、FC-BGA用配線基板に搭載した後、支持基板を剥離することで狭ピッチな配線基板を形成する方式が特許文献2に開示されている。
【0007】
しかしながら、この技術においては、FC-BGA用配線基板に搭載された微細配線層における層間接続部の密着性が悪く、電気特性および線間絶縁信頼性が十分ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-225671号公報
【文献】国際公開第2018/047861号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、加熱時の層間接続部の密着性を向上させることによりビア接続信頼性が改善し、微細な多層配線層での電気特性および線間絶縁信頼性が確保出来る配線基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、
絶縁樹脂に複数のビアが形成されたビア層と、
前記ビア層の上に、絶縁樹脂に複数のランドと複数の配線が形成されたトレンチ層とが、少なくとも1層以上交互に形成され、
前記ビア層のビアと前記トレンチ層のランドが接することにより、前記トレンチ層が電気的に層間接続されている多層配線基板であって、
前記ビアとランドと配線のうち少なくとも一組の形成パターンのテーパー角度が異なることを特徴とする多層配線基板である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記ビア層のビアよりも前記トレンチ層のランドのテーパー角度が小さいことを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板である。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記トレンチ層のランドよりも前記トレンチ層の配線のテーパー角度が大きいことを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記トレンチ層のランドよりも前記トレンチ層の配線のテーパー角度が大きいことを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板である。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記絶縁樹脂が感光性樹脂であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の多層配線基板である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の配線基板によれば、多層配線層において、ビア層のビア部と、トレンチ層のランド部と配線部における、絶縁樹脂層の除去部に形成される斜面と、該絶縁樹脂層の下地と、がなす角度であるテーパー角度の大小関係が、(トレンチ層のランド部のテーパー角度)<(ビア層のビア部のテーパー角度)<(トレンチ層の配線部のテーパー角度)となっている。また、ビア/ランド部におけるランドと絶縁樹脂層が接する界面、ビア部とランドが接する界面、ビア部と絶縁樹脂層が接する界面、には絶縁樹脂層との密着増強層であるシード密着層が形成されている。その為、配線基板が加熱され、応力がかかっても、層間接続部の応力を緩和し、密着性を向上されていることにより、ビア接続信頼性が改善する。また、配線部の配線形状が矩形または矩形に近い形状である為、電気特性の制御が容易であり、且つ線間絶縁信頼性が確保出来る配線基板を提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】支持体上に剥離層を形成した状態を示す断面図である。
図2】感光性樹脂層を形成した状態を示す断面図である。
図3】シード密着層を形成した状態を示す断面図である。
図4】シード層を形成した状態を示す断面図である。
図5】導体層を形成した状態を示す断面図である。
図6】表面研磨により導体層およびシード層を研磨し、除去した状態を示す断面図である。
図7】表面研磨によりシード密着層および感光性樹脂層の表面層を研磨し、除去する事により、半導体素子との接合用電極を形成した状態を示す断面図である。
図8】ビア部の感光性樹脂層を形成した状態を示す断面図である。
図9】ランド部と配線部の感光性樹脂層を形成した状態を示す断面図である。
図10】シード密着層を形成した状態を示す断面図である。
図11】シード層を形成した状態を示す断面図である。
図12】導体層を形成した状態を示す断面図である。
図13】表面研磨によりビア部および配線部を形成した状態を示す断面図である。
図14図8図13を繰り返して多層配線を形成した状態を示す断面図である。
図15】感光性樹脂層を形成した状態を示す断面図である。
図16】シード密着層を形成した状態を示す断面図である。
図17】シード層を形成した状態を示す断面図である。
図18】レジストパターンを形成した状態を示す断面図である。
図19】導体層を形成した状態を示す断面図である。
図20】レジストパターンを除去した状態を示す断面図である。
図21】不要なシード密着層およびシード層をエッチング除去した状態を示す断面図である。
図22】ソルダーレジスト層を形成した状態を示す断面図である。
図23】表面処理層、半田接合部を形成し、支持体上の配線基板が完成した状態を示す断面図である。
図24】支持体上の配線基板とFC-BGA基板を接合しアンダーフィル層で封止した状態を示す断面図である。
図25】剥離層にレーザー光を照射する状態を示す断面図である。
図26】支持体を除去した状態を示す断面図である。
図27】半導体素子を実装した状態を示す断面図である。
図28】実施例におけるA-A′囲い部の配線部とビア/ランド部の拡大詳細断面図である。
図29】比較例におけるA-A′囲い部の配線部とビア/ランド部の拡大詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0018】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
図1図29を用いて、本発明の一実施形態に係る支持体を用いた配線基板の製造工程の一例を説明する。
【0020】
(支持体)
図1における支持体1は、支持体1を通じて剥離層2に光を照射させる場合もあるため、透明性を有することが好ましく、例えばガラスを用いることができる。ガラスは平坦性に優れており、また、剛性が高いため、支持体上の配線基板11の微細なパターン形成に向いている。また、ガラスはCTE(coefficient of thermal expansion、熱膨張率)が小さく歪みにくいことから、パターン配置精度および平坦性の確保に優れている。
支持体1としてガラスを用いる場合、ガラスの厚さは、製造プロセスにおける反りの発生を抑制する観点から厚い方が望ましく、例えば0.7mm以上、好ましくは1.1mm以上の厚みである。
また、ガラスのCTEは3(10-6/K)以上15(10-6/K)以下が好ましく
、FC-BGA用配線基板12、半導体素子15のCTEの観点から9(10-6/K)程度がより好ましい。
ガラスの種類としては、例えば石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、ソーダガラス、又は、サファイヤガラス等が用いられる。
また、剥離層2に熱によって発泡する樹脂を用いる等、支持体1を剥離する際に支持体1に光の透過性が必要でない場合は、支持体1には、歪みの少ない、例えばメタルやセラミックスなどを用いることができる。
本発明の一実施形態では、剥離層2としてUV光を吸収して剥離可能となる樹脂を用い、支持体1にはガラスを用いる。
【0021】
(剥離層の形成)
まず、図1に示すように、支持体1の一方の面に、後の工程で支持体1を剥離するために必要な剥離層2を形成する。
【0022】
剥離層2は、例えば、IR、UV光などの光を吸収して発熱、変質によって剥離可能となる樹脂や、熱によって発泡により剥離可能となる樹脂を好適に使用する事ができる。UV光などの光、例えばレーザー光の照射によって剥離可能となる樹脂を用いる場合、剥離層2を設けた側とは反対側の面から支持体1に光を照射する(図25参照)事によって、支持体上の配線基板11と、FC-BGA基板12との接合体(図24参照)から支持体1を取り去る事が可能となる(図26参照)。
【0023】
剥離層2の材料は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、および、アクリル樹脂などにIR、UV光などの光を吸収して、発熱変質して剥離可能となる材料(例えば、3Mウェハサポートシステム)を添加した樹脂を使用する事ができる。
【0024】
また、剥離層2は光分解促進剤や光吸収剤、増感剤、フィラー等の添加剤を含有してもよい。
【0025】
また、アモルファスシリコン、ガリウムナイトライド、金属酸化物層などの無機層から選ぶことが出来る。
【0026】
また、剥離層2は複数層で構成されていてもよく、例えば支持体1上に形成される多層配線層の保護を目的として、剥離層2上にさらに保護層を設けることや、支持体1との密着性を向上させる層を剥離層2の下層に設けてもよい。
【0027】
また、剥離層2と多層配線層との間にレーザー光反射層や金属層を設けてもよく、その構成は本実施形態により限定されない。
【0028】
(感光性樹脂層の形成)
次に、図2に示すように感光性樹脂層3を形成する。本発明の一実施形態では、感光性樹脂層3として例えば、感光性のエポキシ系樹脂をスピンコート法により形成する。感光性のエポキシ樹脂は比較的低温で硬化することができ、形成後の硬化による収縮が少ないため、その後の微細パターン形成に優れる。感光性樹脂層3の形成方法としては、液状の感光性樹脂を用いる場合は、スリットコート、カーテンコート、ダイコート、スプレーコート、静電塗布法、インクジェットコート、グラビアコート、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、スピンコート、ドクターコートより選定できる。フィルム状の感光性樹脂で用いる場合は、ラミネート、真空ラミネート、真空プレスなどが適用できる。
【0029】
感光性樹脂層3としては、感光性のエポキシ系樹脂の他に、例えば感光性ポリイミド樹
脂、感光性ベンゾシクロブテン樹脂、感光性エポキシ樹脂およびその変性物を絶縁樹脂として用いることが可能である。
次いで、フォトリソグラフィーにより、感光性樹脂層3に開口部を設ける。開口部に対して、現像時の残渣除去を目的として、プラズマ処理を行ってもよい。感光性樹脂層3の厚みは、開口部に形成する導体層の厚みに応じて設定され、本発明の一実施形態では、例えば7μmを形成する。また平面視の開口部の形状は、半導体素子の接合電極のピッチ、形状に応じて設定され、本発明の一実施形態では、例えば直径25μmの開口形状とし、ピッチは55μmで形成する。
【0030】
(シード密着層とシード層の形成)
次いで、図3図4に示すように、真空成膜法を用いて、シード密着層4およびシード層5を形成する。
【0031】
シード密着層4は、感光性樹脂層3へのシード層5の密着性を向上させる層であり、シード層5の剥離を防止する層である。シード密着層4は、感光性樹脂層3との高い密着性を備えていると同時にシード層5とも高い密着性を備えており、且つ金属並みの高い導電性を備えた層であれば良い。シード密着層4は、例えば、スパッタ法、または蒸着法などにより形成され、例えば、Ti、Ni、Cr、Mo、W、Ta、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO、IZO、AZO、ZnO、PZT、TiN、Cu、Cu合金や、これらを複数組み合わせたものを適用することができる。
【0032】
シード層5は、配線形成において、電解めっきの給電層として作用する層である。
【0033】
シード層5は、例えば、スパッタ法または蒸着法などにより形成され、例えば、Cu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO、IZO、AZO、ZnO、PZT、TiN、Cu、Cu合金や、これらを複数組み合わせたものを適用することができる。
【0034】
本発明の一実施形態では、電気特性、製造の容易性の観点およびコスト面を考慮して、シード密着層4にチタン層を形成し、同じ真空成膜装置で真空を破らずに、続けてシード層5として銅層をスパッタリング法で形成する。チタン層と銅層の合計の膜厚は、電解めっきの給電層として1μm以下とするのが好ましい。本発明の一実施形態では、Ti:50nm、Cu:300nmを形成する。
【0035】
(半導体素子との接合用の電極である導体層の形成)
次に、図5に示すように電解めっきにより導体層6を形成する。導体層6は半導体素子との接合用の電極となる。導体層6を形成するめっきの種類としては、電解ニッケルめっき、電解銅めっき、電解クロムめっき、電解Pdめっき、電解金めっき、電解ロジウムめっき、電解イリジウムめっき等が挙げられるが、電解銅めっきであることが、簡便で安価で、電気伝導性が良好であることから望ましい。電解銅めっきの厚みは、半導体素子と接合用の電極となる為、半田接合の観点から1μm以上、且つ、生産性の観点から30μm以下であることが望ましい。本発明の一実施形態では、感光性樹脂層3の開口部にはCu:9μmを形成し、感光性樹脂層3の上部にはCu:2μmを形成する。
【0036】
(導体層とシード層の除去)
次に図6に示すように、CMP(化学機械研磨)加工等によって銅めっき層を研磨し、導体層6およびシード層5を除去することで、シード密着層4と導体層6が表面となるように研磨加工を行う。本発明の一実施形態では、感光性樹脂層3の上にある導体層6のCu:2μmおよびシード層5のCu:300nmを除去する。
【0037】
(シード密着層と感光性樹脂層の除去)
次に図7に示すように、CMP加工等の研磨を再度行い、シード密着層4と、感光性樹脂層3の表面層を除去する。シード密着層4と、感光性樹脂層3の異種材料の研磨であるため、化学研磨による効能は少なく、研磨剤による物理的な研磨が支配的である。工程簡略化の目的で前述(図6)した研磨と同様の手法を用いてもよく、また研磨の効率化を目的としてシード密着層4と、感光性樹脂層3の材料種に応じて研磨手法を変えてもよい。そして、研磨を行った後に残った導体層6が、半導体素子と接合用の電極となる。
【0038】
(ビア部形成用の感光性樹脂層の形成)
次に図8に示すように、図2と同様に、導体層6と感光性樹脂層3の上面に感光性樹脂層3を形成する。感光性樹脂層3の厚みは、開口部に形成する導体層の厚みに応じて設定され、本発明の一実施形態では、例えば2μmを形成する。また平面視の開口部の形状は、導体層6との接続の観点から設定され、本発明の一実施形態では例えば直径10μmの開口部を形成する。この開口部は多層配線の上下層をつなぐビア部20である。ビア部20を備えた感光性樹脂層3をビア層18と呼ぶ事にする。
【0039】
(ランド部と配線部形成用の感光性樹脂層の形成)
さらに、図8のビア層18の上面に、図9に示すように、感光性樹脂層3を形成する。感光性樹脂層3の厚みは、開口部に形成する導体層の厚みに応じて設定され、本発明の一実施形態では、例えば2μmを形成する。また平面視の開口部の形状は、上側と下側の感光性樹脂層3からなる積層体の接続性の観点から設定され、下側の感光性樹脂層3(ビア層18)の開口部(ビア部20)の外側にビア部20より大きい開口部が上側の感光性樹脂層3に形成される。
【0040】
本発明の一実施形態では、例えば直径25μmの開口部を形成する。この開口部は多層配線の配線部22および上下層をつなぐランド部21の一部分の形状である。ランド部21および配線部22を形成する感光性樹脂層3をトレンチ層19と呼ぶ事にする。トレンチ層19を形成する際、トレンチ層19のランド部21のテーパー角度(下地の上に形成した感光性樹脂層3の開口部の斜面と、下地と、がなす角度)を、ビア層18のビア部20よりも小さくなる様に形成し、且つトレンチ層19の配線部22のテーパー角度よりも小さくなる様に形成する。
【0041】
トレンチ層19を形成する際、ビア層18のビア部20のテーパー角度よりも、トレンチ層19のランド部21のテーパー角度を小さく(水平に近く)なるように形成する方法として、感光性樹脂層3としてポジレジストを使用する場合、トレンチ層19の厚みをビア層18よりも厚くすることが挙げられる。この様にする事で厚み方向に光が届きにくくなり、テーパー角度が小さく(水平に近く)なりやすい。また、トレンチ層19とビア層18で感光性樹脂を変更する方法もある。
【0042】
また、トレンチ層19のランド部21よりもトレンチ層19の配線部22のテーパー角度が大きく(垂直に近く)なるように形成する方法として、ランド部21と配線部22で露光量を変える方法が挙げられる。感光性樹脂層3としてポジレジストを使用する場合、ランド部21における露光量をあげることで、上部と下部での露光量の差が大きくなり、ランド部21のテーパー角度が小さく(水平に近く)なる。また、ランド部21よりも配線部22の露光量を小さくすることで、トレンチ層19のランド部21よりもトレンチ層19の配線部22のテーパー角度を大きく(垂直に近く)する事ができる。
【0043】
(シード密着層とシード層の形成)
次いで、図10図11に示すように、図3図4と同様に真空成膜装置中で、シード
密着層4およびシード層5を形成する。本発明の一実施形態ではTi:50nm、Cu:300nmを形成する。
【0044】
(導体層の形成)
次に図12に示すように、電解めっきにより導体層6を形成する。導体層6はビア/ランド部23および配線部22となる。電解めっきとしては、電解ニッケルめっき、電解銅めっき、電解クロムめっき、電解Pdめっき、電解金めっき、電解ロジウムめっき、電解イリジウムめっき等が挙げられるが、電解銅めっきであることが簡便で安価で、電気伝導性が良好であることから望ましい。電解銅めっきの厚みは、配線部の電気抵抗の観点から0.5μm以上、生産性の観点から30μm以下であることが望ましい。本発明の一実施形態では、感光性樹脂層3の2重の開口部のうち、一番深い内側の開口部にはCu:6μmを形成し、一番深い内側の開口部の外側の開口部にはCu:4μmを形成し、感光性樹脂層3の上部にはCu:2μmを形成する。
【0045】
(導体層とシード層の除去およびシード密着層と感光性樹脂層の除去)
次に図13に示すように、CMP(化学機械研磨)加工等によって研磨し、導体層6およびシード層5を除去する。続けて、CMP(化学機械研磨)加工等によって研磨を再度行い、シード密着層4を除去し、感光性樹脂層3の表面層が除去される。そして、CMP加工等を行った後に残った導体層6が、ビア/ランド23部および配線部22となる。本発明の一実施形態では、感光性樹脂層3の上部の導体層6のCu:2μmおよびシード層5のCu:300nmを研磨により除去する。
【0046】
(導体層の形成)
次に図14に示すように、図8図13で説明した工程を繰り返す事により多層配線層を形成する。本発明の一実施形態では、配線層を2層形成する。
【0047】
次いで、FC-BGA基板12との接合電極を形成する工程を説明する。図15に示すように、図2と同様に、図14の多層配線層の上面に感光性樹脂層3を形成する。
【0048】
次いで、図16に示すようにシード密着層4を形成する。また、図17に示すようにシード層5を形成する。これらは、図3図4で説明したのと同様に、真空成膜装置を用いて、真空を破らずに成膜する。
【0049】
次いで、図18に示すように、レジストパターン7を、図13で形成したビア/ランド部23と接続可能な位置に形成されたビアを含む位置に開口部を備える様に形成する。
【0050】
その後、図19のように、電解銅めっきを用いたパターンめっきにより導体層6を形成する。この導体層6は、そのままFC-BGA基板12との接合用の電極となる。電解銅めっきの厚みは、半田接合の観点から1μm以上、且つ、生産性の観点から30μm以下であることが望ましい。本発明の一実施形態では、感光性樹脂層3の開口部にはCu:9μmを形成し、感光性樹脂層3の上部にはCu:7μmを形成する。
【0051】
その後、図20に示すように、レジストパターン7を除去する。
【0052】
その後、図21に示すように、不要なシード層5およびシード密着層4をエッチング除去する。この状態で表面に残った導体層6が、FC-BGA基板12との接合用の電極となる。
【0053】
次に、図22に示すように、ソルダーレジスト層8を形成する。ソルダーレジスト層8は、感光性樹脂層3を覆うように、露光、現像し、導体層6が露出するように開口部を備
えるように形成する。なお、ソルダーレジスト層8の材料としては、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、その他の絶縁性樹脂を使用して製造された耐熱性の高い絶縁性樹脂を用いることができる。本発明の実施形態では、ソルダーレジスト層8としてフィラーを含有した感光性のソルダーレジスト材を用いて形成する。
【0054】
次に、図23に示すように、導体層6の表面の酸化防止と半田バンプの濡れ性をよくするため、表面処理層9を設ける。本発明の一実施形態では、表面処理層9として無電解Ni/Pd/Auめっきを成膜する。なお、表面処理層9には、OSP(Organic
Soiderability Preservative、水溶性プレフラックス)膜を形成してもよい。また、無電解スズめっき、無電解Ni/Auめっきなどから適宜用途に応じて選択しても良い。
次いで、表面処理層9上に、微細な半田粉末をフラックスで混練したクリーム半田などの半田ペースト材料からなるパターンを、スクリーン印刷などにより導体層6上の表面処理層9の上に形成した後、一度、半田ペーストを溶融してから、冷却する事により、導体層6上、または導体層6上の表面処理層9の上に固着させることで、半田10の接合部を得る。これにより、支持体1上に形成された支持体上の配線基板11が完成する。
【0055】
次いで、図24に示すように、支持体上の配線基板11とFC-BGA基板12を、半田10の接合部を介して接合した後、支持体上の配線基板11とFC-BGA基板12の間に形成された隙間をアンダーフィル材で充填したアンダーフィル層24で封止する。アンダーフィル層24の材料(アンダーフィル材)としては、市販のアンダーフィル材を好適に使用する事ができる。例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、オキセタン樹脂、およびマレイミド樹脂の1種又はこれらの樹脂の2種類以上が混合された樹脂に、フィラーとしてのシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は酸化亜鉛等が加えられた材料となっている。アンダーフィル層24は、液状のアンダーフィル材を充填させることで形成される。
【0056】
次いで、図25に示すように、支持体1を剥離する為、支持体1の裏面側、からレーザー光13を照射して、剥離層2を剥離可能な状態とする。すなわち、支持体1のFC-BGA基板12とは逆側の面からレーザー光13を、支持体1との界面に形成された剥離層2に照射し、剥離可能な状態とすることで、支持体1を取り外すことが可能となる。
【0057】
次に、図26に示すように、支持体1を剥離した後、基板の表面に残留しているシード密着層4とシード層5を除去する事によって、配線基板14を得る。
【0058】
その後、図27に示すように、半導体素子15を実装して半導体装置16が完成する。この際、半導体素子15の実装に先立って、表面に露出した導体層6上に、酸化防止と半田バンプの濡れ性をよくするため、無電解Ni/Pd/Auめっき、OSP、無電解スズめっき、無電解Ni/Auめっきなどの表面処理を施してもよい。以上により半導体装置16が完成する。
【実施例
【0059】
次に、上述したような配線基板14の構成とその製造方法を用いた場合の作用効果について、実施例である図28および比較例である図29を参照して説明する。
【0060】
本実施形態では、支持体上の配線基板11の配線部22、ビア/ランド部23および半導体素子との接合電極パッド部は、CMP(化学機械研磨)加工等の研磨によって、導体層6をパターニングしている(いわゆるダマシン法)ため、図28のように、配線部22、ビア/ランド部23および半導体素子との接合電極であるパッド部25の側面において、導体層6と感光性樹脂3の間にもシード密着層4を配置することが可能である。また、図24図27のように、支持体上の配線基板11は上下反転させて半田10が形成された面をFC-BGA基板12と接合した後、支持体1を除去して配線基板14を得る。そのため、配線部22およびビア/ランド部23においては、上面および側面にシード密着層4を配置でき、半導体素子との接合電極であるパッド部25においては、側面にシード密着層4を配置することが可能である。
【0061】
上記のように、配線部22およびビア/ランド部23の導体層6においては、上面および側面にシード密着層4を配置でき、半導体素子との接合電極であるパッド部25の導体層6においては、側面にシード密着層4を配置しているため、感光性樹脂層3との密着性を向上でき、剥離を防止することが可能となる。
【0062】
また、本基板構成においては、ビア層18のビア部20と、トレンチ層19のランド部21と配線部22のテーパー角度の関係が、トレンチ層19のランド部21<ビア層のビア部20<トレンチ層19の配線部22(テーパー角度が大きいほど垂直に近い)になるように形成する。
【0063】
ビア層18のビア部20よりも、トレンチ層19のランド部21のテーパー角度を小さく(水平に近く)することで、トレンチ層19の樹脂とビア層18の樹脂の界面への応力の低減を可能とする事ができる。なぜなら、接地面積を大きくできるからである。
【0064】
また、トレンチ層19のランド部21よりも、トレンチ層19の配線部22のテーパー角度を大きく(垂直に近く)し、トレンチ層19の配線形状を矩形または矩形に近い形状とすることで、配線のトップとボトムの幅が揃い、線幅変更による電気特性の制御が容易となる。また、矩形にすることで、配線のトップ間での樹脂幅が、ボトム間よりも狭くなり過ぎないので、線間絶縁信頼性を確保する事が可能となる。
【0065】
トレンチ層19を形成する際、ビア層18のビア部20よりもトレンチ層19のランド部21のテーパー角度を小さく(水平に近く)なるように形成するため、ビア層18およびトレンチ層19は同一のポジ型の感光性レジストを使用し、トレンチ層19の厚みをビア層18よりも1.5μm厚くする事により実現した。また、トレンチ層19のランド部21よりもトレンチ層19の配線部22のテーパー角度が大きく(垂直に近く)なるように形成するため、配線部22の露光量をランド部21より小さくする事により実現した。具体的には、配線部22の露光量を250mJ/cm、ランド部21の露光量を400mJ/cmとした。
【0066】
テーパー角度は下記の様に規定した。尚、テーパー角度が0°~90°の範囲で大きいほど垂直に近くなる。
トレンチ層19の配線部22のテーパー角度 :80°以上90°以下
ビア層のビア部20のテーパー角度 :70°より大きく80°より小さい
トレンチ層19のランド部21のテーパー角度:70°以下
【0067】
上記の構成において、線間絶縁信頼性およびビア接続信頼性を評価した。線間の絶縁信頼性は、Line/Space=2/2μmの配線部22にて、ビア接続信頼性はビア部20を直径10μm、ランド部21を直径20μmにて、試験を行った。
【0068】
線間絶縁信頼性試験は、以下の条件にのっとって実施し、抵抗値が10Ω以上であることを合格の基準とした。
規格:JESD22-A110
温度:130℃
湿度:85%RH
電圧:3.3V
時間:192時間
【0069】
ビア接続信頼性は、以下の条件にのっとって実施し、抵抗値変化率±3%以内、クラックおよびデラミがないことを合格の基準とした。
規格 :JESD22-A106B(Condition D)
温度 :-65℃/5min⇒常温/1min→150℃/5min
サイクル:500サイクル
【比較例】
【0070】
比較例では、実施例に対し、ビア層18のビア部20とトレンチ層19のランド部21と配線部22のテーパー角度の関係が、どれもほぼ同じ大きさになる様に、即ち、トレンチ層19のランド部21≒ビア層18のビア部20≒トレンチ層19の配線部22となるように形成した。
具体的には、トレンチ層19とビア層18の厚さを同じ厚さ(3μm)とする事により実現した。配線部22の露光量とランド部21の露光量は同じとする事により実現した。具体的には、配線部22の露光量とランド部21の露光量を400mJ/cmとした。
【0071】
テーパー角度は下記の様に規定した。尚、テーパー角度が0°~90°の範囲で大きいほど垂直に近くなる。
トレンチ層19の配線部22 :70~80°
ビア層のビア部20 :70~80°
トレンチ層19のランド部21:70~80°
【0072】
<作用効果の確認>
上記実施例、比較例の線間絶縁信頼性およびビア接続信頼性試験の結果を表1に示す。
本発明に係るビア層18のビア部20と、トレンチ層19のランド部21と、配線部22のテーパー角度の関係を規定することにより、トレンチ層の樹脂/ビア層の樹脂界面への応力の低減および線間絶縁信頼性の確保ができることが確認できた。
【0073】
【表1】
【0074】
なお、上述の実施形態は一例であって、その他、具体的な細部構造などについては適宜に変更可能である。
【0075】
本発明は、主基板とICチップとの間に介在するインターポーザ等を備えた配線基板を有する半導体装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 支持体
2 剥離層
3 感光性樹脂層
4 シード密着層
5 シード層
6 導体層
7 レジストパターン
8 ソルダーレジスト層
9 表面処理層
10 半田
11 支持体上の配線基板
12 FC-BGA基板
13 レーザー光
14 配線基板
15 半導体素子
16 半導体装置
17 絶縁層
18 ビア層
19 トレンチ層
20 ビア部
21 ランド部
22 配線部
23 ビア/ランド部
24 アンダーフィル層
25 パッド部
図1
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図29