(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】移動無線システム
(51)【国際特許分類】
H04M 3/42 20060101AFI20240521BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20240521BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H04M3/42 101
H04W88/02 120
H04W88/02 110
G08B25/10
(21)【出願番号】P 2020051453
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】井部 丈士
【審査官】山中 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-265958(JP,A)
【文献】特開2015-149638(JP,A)
【文献】特開2005-235132(JP,A)
【文献】特開2017-084152(JP,A)
【文献】特開2015-211369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 3/42
H04W 88/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と移動局を一つのグループとし、前記基地局と前記移動局との間で情報の送受信を行う移動無線システムにおいて、
前記基地局と前記移動局は、自局が属するグループを示す
団体コードと、自局が事案対応中であるか否かを示す事案対応中情報を記憶する記憶部を備え、
前記基地局と前記移動局は、送信時には、情報と
団体コードを
含む同期バースト信号とを送信し、受信時には、前記記憶部に記憶された
団体コードと事案対応
中情報とを読出
す一方、受信した信号に前記同期バースト信号が含まれない場合、又は受信した前記同期バースト信号から前記団体コードを取得できない場合であっても、前記記憶部に記憶された事案対応
中情報が事案対応中であることを示す場合は、受信した情報に対して音声の出力を行う移動無線システム。
【請求項2】
請求項1記載の移動無線システムにおいて、
受信した全ての前記情報に対して音
声出力を行う全実行モードを更に備えたことを特徴とする移動無線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基地局と移動局との間で音声情報の通信を行う際には、音声情報と共に、送信先を特定する識別コードを送信する方法が知られている。音声情報を受信した局では、付加されている識別コードを参照し、識別コードが自局を特定する識別コードと一致するときには受信した音声情報を音声出力し、不一致のときには、他局宛の音声情報とみなして音声出力しないようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、消防デジタル無線システムにおいては、異なる基地局から送信された音声情報を同じ移動局が受信しないように、基地局毎に通信周波数が定められている。しかしながら、使用可能な周波数帯域が限られることから、止むを得ず複数の基地局で同一の通信周波数を使用する場合がある。このとき、移動局では異なる基地局からの音声情報を受信して出力してしまう。
そのため、消防デジタル無線システムにおいては、音声情報と共に、送信先を特定する識別コードである同期バースト信号(以下、SB0信号ともいう)に含まれる「団体コード」を利用して基地局とその基地局に属する移動局を関連付け、この移動局が自局と関連付けられていない基地局の音声情報を音声出力しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
消防車や救急車等に搭載された通信装置である移動局は、基地局と情報の送受信を行っており、基地局と移動局との間では、無線通信により音声情報と識別コードの送受信を行っている。このとき、移動局の存在位置によっては、ビル等が障害となり、移動局において、音声情報は受信できたものの、識別コードが受信できないといったことが生じる事がある。
このような場合、移動局では、識別コードを受信できないことから、受信した音声情報は、自局宛ての音声情報ではないとみなし、音声出力しない。そのため、実際には自局宛ての音声情報であったとしても、音声出力しない。従って、救急指令や消防指令等の対応中(以下、事案対応中という)に重要な音声情報を聞き逃す可能性がある。
そこで、この発明は、事案対応中の重要な音声情報の聞き逃しを防止することが可能な移動無線システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、基地局と移動局を一つのグループとし、前記基地局と前記移動局との間で情報の送受信を行う移動無線システムにおいて、前記基地局と前記移動局は、自局が属するグループを示す識別コードと、自局が事案対応中であるか否かを示す事案対応中情報を記憶する記憶部を備え、前記基地局と前記移動局は、送信時には、情報と識別コードを送信し、受信時には、前記記憶部に記憶された識別コードと事案対応情報とを読出し、受信した識別コードと前記記憶部に記憶された識別コードとが不一致で、かつ、前記記憶部に記憶された事案対応情報が事案対応中であることを示す場合は、受信した情報に対して音声の出力を行う移動無線システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、事案対応中の重要な音声情報の聞き逃しを防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る移動無線システムの一例を示す概略構成図である。
【
図5】移動局におけるタッチパネル画面の一例である。
【
図6】移動局制御部における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】移動無線システムの動作説明に供する説明図である。
【
図8】移動無線システムの動作説明に供する説明図である。
【
図9】移動無線システムの動作説明に供する説明図である。
【
図10】移動無線システムの動作説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかである。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴的な構成の組み合わせの全てを含むものである。
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一部分には同一符号を付している。
図1は、本発明の一実施形態に係る移動無線システムの一例を示す概略構成図である。
ここでは、消防システムに用いられる基地局と複数の移動局を有する移動無線システムについて説明するが、これに限るものではなく、SB0信号(同期バースト信号)に含まれる団体コードを使用して、特定の団体(グループ)に属する無線局間で音声情報の通信を行うようにしたシステムであっても適用することができる。
【0011】
移動無線システム1は、無線機を有し消防署に設置された指令局2と、無線機を有し指令局2と接続された基地局3と、無線機が搭載された消防車や救急車等の移動局4a~4cと、を備え、基地局3と、移動局4a~4cとが、指令局2が設置された消防署に属する無線局として指令局2により管理されている。以下の説明では指令局2と基地局3を分けているが、これらをまとめて基地局と呼ぶことがある。また、移動局は単数でも複数でもよい。
【0012】
また、移動無線システム1は、消防、救急等の車両の動態(活動状況)を、無線回線を利用して収集管理する装置、いわゆるAVMシステム(Automatic Vehicle Monitoring System)を採用している。
また、移動無線システム1では、指令局2は、基地局3と通信線L3により有線で接続され、指令局2は基地局3を介して複数の移動局(本実施形態では移動局4a~4c)との間で音声情報の通信を行う。なお、ここでは指令局2と基地局3との間は通信線L3を介して通信を行う場合について説明するが、指令局2と基地局3との間は無線で通信を行うようにしてもよい。
【0013】
指令局2、基地局3、移動局4a~4cは、これら局を一つの団体とし、同一団体に属する基地局3及び移動局4a~4c間で、同一の周波数を利用して無線回線L1による音声情報の通信を行う。
また、基地局3と移動局4a~4cとの間で音声情報の通信を行うときには、音声情報を送信する前にSB0信号(同期バースト信号)を送信し、SB0信号に続いて音声情報を送信する。SB0信号には、少なくとも「団体コード」が含まれている。この「団体コード」は、指令局2と基地局3と移動局4a~4cとが属する団体を特定する識別情報である。この様な団体は複数存在し、各々の団体は固有の団体コードを用いるときに全ての団体は同一の周波数を利用して無線回線L1による音声情報の通信を行う。
【0014】
また、指令局2は、AVMシステムで収集管理する各種情報を、携帯電話用の移動通信方式である無線回線L2(例えば、FOMA(登録商標)等)を介して移動局4a~4cとの間で送受信する。
指令局2は、
図2に示すように、指令局制御部2a、タッチパネル等を含む入力装置2b、表示装置2c、無線回線L1を介して移動局4a~4cとの間で音声情報の通信を行う第1無線通信部2dと、無線回線L2を介して移動局4a~4cとの間で無線通信を行う第2無線通信部2eと、例えば、マイク2fとスピーカ2gを含むヘッドセット及びマイク2fと館内放送用のスピーカ2gのうちの少なくともいずれか一方と、記憶部2hと、基地局3との間で通信を行う通信処理部2iとを備え、これら各部は指令局制御部2aにより制御される。
【0015】
指令局制御部2aは、使用者が発話した音声情報を、マイク2fで集音し、通信処理部2iにより基地局3に送信する。また、通信線L3により通信処理部2iが基地局3から受信した移動局4a~4cからの音声情報をスピーカ2gにより音声出力する。
また、指令局制御部2aは、AVMシステムを利用して、入力装置2b及び表示装置2cによる情報の入力及び表示を行い、救急車或いは消防車の出動を要求する通報があった場合に、まず消防署の担当者が事案情報の作成を行い、作成した事案情報に基づいて該当する消防署及び移動局に指令を通知する。ここで事案情報作成とは、119番通報によって判明した、災害地点、火災、救急、救助等の災害種別、建物、高層、林野、車両等の災害区分、災害規模等である。その後、作成された事案情報に基づいて、隊員と車両の編成を行い、無線回線L2を介して出動指令や地図情報を送信すると共に、無線回線L1を介して音声情報を送信し出動指令を行う。
【0016】
また、指令局制御部2aは、119番通報によって消防署の担当者が事案情報を入力した時点から、事案に対する消防活動が完了するまでの間、この事案を、事案対応中として管理する。指令局制御部2aは、事案情報の作成が完了したときに、対応中の事案として当該事案を特定する事案対応中情報を基地局3に通知する。また、事案対応中に対応する消防活動が完了したとき、そのことを基地局3に通知する。消防活動の完了については、例えば、移動局となる車両が消防活動等が完了し、消防署へ帰るときに
図5に示す帰署ボタンE1を押下する事で通知されればよい。記憶部2hには、指令局制御部2aで実行される出動指令や車両運用状況表示等に必要な情報が格納されると共に、出動指令や車両運用状況表示等を実行することで生成された事案等の情報が格納される。
【0017】
基地局3は、
図3に示すように、基地局端末3aと、事案対応中フラグを格納するための記憶部3bと、無線回線L1を介して移動局4a~4cとの間で無線通信を行う無線通信部3cと、通信線L3を介して指令局2との間で通信を行う通信処理部3dとを備える。
基地局端末3aは、指令局制御部2aから事案対応中の情報が通知されたときには、記憶部3bに格納された事案対応中フラグを「1」にする。基地局端末3aは、対応中の事案が完了したとき、例えば、移動局となる車両が消防活動等が完了し、消防署へ帰るときに
図5に示す帰署ボタンE1を押下された事が通知されたときには、記憶部3bに格納された事案対応中フラグを「0」にする。
また、基地局端末3aは、通信処理部3dから通信線L3を介して指令局2から音声情報を受信し、指令局2が属する団体を特定する団体コードを含むSB0信号を生成し、生成したSB0信号及び指令局2から受信した音声情報を、無線通信部3cを介して、無線回線L1経由で送信する。
【0018】
また、基地局端末3aは、無線回線L1経由で無線通信部3cを介して音声情報が入力され、SB0信号に含まれる団体コードと記憶部3bから自局の団体コードを読出して一致するときは、入力した音声情報を通信処理部3dを介して指令局2に送信し、団体コードが不一致(SB0信号が受信できない。また、SB0信号の一部しか受信できない場合を含む)のときには、受信した音声情報を指令局2に送信するか否かを判定する。その判定は、基地局3の記憶部3bに格納された事案対応中フラグにより行う。事案対応中フラグが「1」の場合は、移動局が事案対応中で例えば、救命処置内容等の重要な音声情報である可能性があることから、受信した音声情報を指令局2に送信する。事案対応中フラグが「0」の場合は、事案対応中ではないため、重要な音声情報ではないことが多いことから受信した音声情報を送信しない。
【0019】
移動局4a~4cは、同一構成を有するのでここでは、移動局4として説明する。
移動局4は、
図4に示すように、それぞれ、移動局制御部d1、タッチパネル等を含む入力装置d2及び表示装置d3、無線回線L1を介して基地局3との間で音声情報の通信を行う第1無線通信部d4と、無線回線L2を介して指令局2との間で無線通信を行う第2無線通信部d5と、例えば、マイクd6及びスピーカd7を含むヘッドセット或いは、マイクd6と車内放送用のスピーカd7とを備え、これら各部は移動局制御部d1により制御される。また、事案対応中情報を格納するための記憶部d8を備える。
【0020】
移動局制御部d1は、入力装置d2及び表示装置d3による情報の入力及び表示を行い、出動指令が通知された場合には、出動要求があったことを表示すると共に、指令局2から通知される災害種別や災害区分、災害規模、地図情報等の支援情報や、搬送先病院情報、傷病者情報等を表示する。また、位置情報を送信すると共に、使用者が入力操作を行うことにより動態情報として入力された、災害出動、現場到着、放水開始、放水停止、引揚可能、引揚不能、帰署等の情報を無線回線L2を介して第2無線通信部d5により送信する。使用者は、例えば、
図5に示すようにタッチパネルに表示された各項目を選択することによって、各項目を入力するようになっている。
【0021】
また、移動局制御部d1は、使用者によって、例えば出動を入力する操作が行われたとき、指令局2から出動指令が通知されたとき、携帯電話やAVMシステムを利用して出動指令が通知されたときに、自局が事案対応中として記憶部d8に格納された事案対応中フラグを「1」にする。逆に、事案対応中の状態で、使用者による入力操作、指令局2からの通知、携帯電話やAVMシステムによる通知等によって事案対応完了が通知されたときに、処置完了の情報として記憶部d8に格納された事案対応中フラグを「0」にする。
【0022】
移動局制御部d1は、使用者が発話した音声情報を、マイクd6で集音し、第1無線通信部d4により無線回線L1を介して送信する。また、移動局制御部d1は、第1無線通信部d4で受信した受信情報が入力され、SB0信号に含まれる団体コードと記憶部d8から自局の団体コードを読出して一致するときは、入力した音声情報をスピーカd7により音声出力し、団体コードが不一致(SB0信号が受信できない。また、SB0信号の一部しか受信できない場合を含む)のときには、入力した音声情報をスピーカd7により音声出力するか否かを判定する。その判定は、移動局4の記憶部d8に格納された事案対応中フラグにより行う。事案対応中フラグが「1」の場合は、事案対応中で重要な音声情報である可能性があることから、受信した音声情報をスピーカd7により音声出力する。事案対応中フラグが「0」の場合は、事案対応中ではないとみなして受信した音声情報をスピーカd7により音声出力しない。
【0023】
図6は、基地局3の基地局端末3aが無線通信部3cから受信情報を入力したときの処理及び移動局4の移動局制御部d1が第2無線通信部d5から受信情報を入力したときの処理の一例を示すフローチャートである。
基地局端末3aでの処理と移動局制御部d1での処理とは同一であるのでここでは、移動局制御部d1での処理として説明する。
移動局制御部d1は、第1無線通信部d4から受信情報が入力されると、まず、音声情報が含まれるか否かを判定する(ステップS1)。音声情報が含まれるときにはステップS2に移行し、受信情報にSB0信号が含まれるか否かを判定する。SB0信号が含まれていれば(S2-Y)、ステップS3に移行し、SB0信号から団体コードを取得することができるか否かを判定する。団体コードを取得することができれば(S3-Y)ステップS4に移行し、SB0信号に含まれる団体コードと自局が属する団体の団体コードと同一であるかを判定する。そして、団体コードが同一であれば(S4-Y)、ステップS5に移行して、受信した音声情報に対する所定の処理を行う。すなわち、移動局制御部d1では、音声情報をスピーカd7により音声出力させる。そして、ステップS1に戻る。ステップS4で団体コードが一致しないとき(S4-N)にはステップS6に移行し、受信した音声情報を出力しない。そしてステップS1に戻る。
【0024】
一方、ステップS2でSB0信号が含まれないとき(S2-N)、また、ステップS3で団体コードを取得することができないとき(S3-N)にはステップS7に移行し、記憶部d8を参照し、事案対応中であるか否かを判定する。そして、記憶部d8に事案対応中フラグ「1」が格納されているとき(S7-Y)にはステップS5に移行して受信した音声情報を音声出力する。一方、事案対応中フラグ「0」が格納されているとき(S7-N)にはステップS8に移行し、受信した音声情報を音声出力しない。そして、ステップS1に戻る。
なお、基地局端末3aの場合には、ステップS5の処理で、受信した音声情報に対する処理として、受信した音声情報を指令局2に送信する。
【0025】
次に、上記実施形態の動作を、
図7~
図10の各部の処理の流れを示す説明図を伴って説明する。
今、指令局2、基地局3及び移動局4aが同一の団体αに属し、移動局10は他の団体βに属しているものとする。また、移動局4aは事案対応中であり、移動局10は事案対応中ではないとする。
なお、移動局10の機能構成は、移動局4aの機能構成と同一である。
図7(a)に示すように、指令局2から音声情報J1を発話すると、基地局3では、指令局2、基地局3、移動局4a~4cが属する団体αの団体コードが設定されたSB0信号と音声情報J1とを、無線回線L1を介して送信する。
これを受信した移動局4aでは、SB0信号の団体コードを参照し、自局の団体コードと同一であることから、受信した音声情報J1をスピーカd7により音声出力する。
【0026】
このとき、指令局2とは異なる団体βに属する移動局10でも基地局3が無線回線L1を利用して送信した音声情報J1を受信したものとする。
移動局10では、SB0信号から団体コードを取得し、自局の団体コードと比較する。この場合、移動局10は、移動局4a~4cが属する団体αとは別の団体βに属することから、移動局10では、自局とは団体コードが異なると判断する。そのため、受信した音声情報は音声出力しない。つまり、移動局10には、自局とは異なる団体αに属する局間での音声情報J1が音声出力されない。したがって、自局に属する団体βに関係のない不要な音声情報J1が音声出力されることが回避される。
【0027】
一方、
図7(b)に示すように、基地局3から送信されたSB0信号及び音声情報J1のうち、障害物等によりSB0信号を移動局4aが受信できなかった場合、移動局4aでは、音声情報J1の送信元の局が自局と同一の団体αに属する局であるか否かを判定することができず、音声情報J1を自局で音声出力すべきかどうかを判定することができない。しかしながら、移動局4aは事案対応中であり、移動局4aの記憶部d8には事案対応中として事案対応中フラグ「1」が格納されていることから、移動局4aでは受信した音声情報J1を音声出力する。このため、SB0信号が受信できなかった場合に重要な音声情報J1が移動局4aに伝達されなくなることを回避することができる。
【0028】
一方、他の団体βに属する移動局10でも、SB0信号が受信できなかった場合には、音声情報J1の送信元の局が自局と同一の団体βに属する局であるか否かを判定することができないが、移動局10の記憶部d8に事案対応中ではないとして事案対応中フラグ「0」が格納されている場合には、受信した音声情報J1を音声出力しない。
ここで、移動局10では、音声情報J1が音声出力されないが、移動局10では事案対応中ではないことから、移動局10において音声情報J1が音声出力されなくても問題はなく、却って、自局に関係のない他の団体α内で送受される音声情報J1が音声出力されることが回避されるため、不要な音声出力がなされることを回避することができる。
【0029】
一方、
図8に示すように、移動局4aからSB0信号及び音声情報J2が送信されると、移動局4aからの送信情報を受信した基地局3では、SB0信号の団体コードを参照し、自局の団体コードと一致することから、受信した音声情報J2を指令局2に送信する。指令局2では、入力した音声情報J2を音声出力する。
また、基地局3では、移動局10から送信されたSB0信号及び音声情報J3を受信すると、SB0信号の団体コードを取得するが、受信したSB0信号の団体コードは団体βを示し、自局が属する団体αとは異なることから、受信した音声情報J3を指令局2に送信しない。そのため、指令局2において、自局が属する団体αとは別の団体β内における音声情報J3、つまり不要な音声情報が音声出力されることを回避することができる。
【0030】
一方、
図9に示すように、移動局4aから指令局2向けにSB0信号及び音声情報J2を送信したが、基地局3では、SB0信号を受信することができず音声情報J2のみを受信した場合には、基地局3では、SB0信号を受信していないため、団体コードを取得することができない。つまり、基地局3では、受信した音声情報が、自局が属する団体α内で送受されている音声情報であるか否かを判定することができない。
この場合、基地局3は、記憶部3bに、事案対応中として事案対応中フラグ「1」が格納されていることから、音声情報J2を指令局2に送信する。指令局2では音声情報J2を音声出力する。そのため、基地局3では、音声情報J2が、団体α内における音声情報であるか否か判定することができない場合でも、自局が属する団体α内で送受される音声情報J2が指令局2に伝達されないことを回避することができる。
【0031】
一方、基地局3が、団体βに属する移動局10が送信した情報を受信したが、基地局3では、SB0信号を受信することができず音声情報J3のみを受信したときには、基地局3ではSB0信号を受信していないため、団体コードを取得することができない。そのため、受信した音声情報J3が、自局が属する団体α内で送受される音声情報であるか否かを判定することができない。このとき、基地局3の記憶部3bに、事案対応中として事案対応中フラグ「1」が格納されている場合には、基地局3では、SB0信号を受信することはできないが、受信した音声情報J3を指令局2に送信する。指令局2では音声情報J3を音声出力する。つまり、自局が属する団体αには関係のない団体β内において送受される検出信号を指令局2に送信することになる。
【0032】
ここで、団体コードを取得できない場合には、基地局3の記憶部3bに事案対応中フラグ「1」が格納されている場合には基地局3から指令局2に音声情報J3を送信し、事案対応中フラグ「0」が格納されているときには音声情報を音声出力しないようにした場合、基地局3が事案対応中であれば、受信した音声情報は団体α内で送受される音声情報である可能性があるため、指令局2で必要とする可能性のある音声情報J3を指令局2に送信することができ、団体コードを取得することができないことによって重要な音声情報が出力されないことを回避することができる。
【0033】
また、
図10に示すように、移動局10からSB0信号及び音声情報J4が送信され基地局3が音声情報J4のみを受信した場合には、SB0信号を受信できないことから、記憶部3bを参照する。そして、記憶部3bに事案対応中フラグ「0」が格納されている場合、基地局3が事案対応中ではないため、受信した音声情報J4を指令局2に送信しない。したがって、指令局2では、不要な他の団体内における音声情報が頻繁に指令局2内で音声出力されることを回避することができる。
【0034】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る移動無線システム1においては、団体コードが自局が属する団体コードと同一のときには音声情報を音声出力させ、さらに、SB0信号から団体コードを取得することがでない場合でも、自局が事案対応中であるときには音声情報を音声出力させている。そのため障害物等によりSB0信号を受信することができないものの音声情報を受信したときには、音声情報が音声出力される。よって、障害物等によりSB0信号を受信できなかったことに起因して音声情報が音声出力されないことを回避することができ、重要な音声情報が音声出力されなくなることを抑制することができる。また、SB0信号を受信できなかった場合、自局が事案対応中であるときにのみ音声情報を音声出力し、自局が事案対応中でないときには音声出力しないため、明らかに自局に関係のない音声情報のみ音声出力されることを回避することができ、自局に関係のある可能性が高い音声情報は音声出力させることができる。
【0035】
また、AVMシステムでは、救急車或いは消防車の出動を要求する通報があった場合に事案情報作成を行うようにしており、指令局2では、AVMシステムで作成した事案情報を利用して、音声情報を音声出力するか否かを判定するようにしている。
なお、上記実施形態においては、受信したSB0信号に含まれる団体コードが自局が属する団体の団体コードが不一致のとき、また、団体コードを取得することができず且つ自局が事案対応中でないときには、受信した音声情報を音声出力しないようにした場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、基地局3及び移動局4a~4cが、団体コードを取得することができず且つ自局が事案対応中でないときには、受信した音声情報を音声出力しないモードをグループ内実行モードとし、受信した全ての音声情報について音声出力する(移動局4a~4cの場合)かまたは指令局2に送信する(基地局3の場合)モードを全実行モードとする。そして、基地局3及び移動局4a~4cにおいて、全実行モードとグループ内実行モードとのいずれかを選択する選択部を設け、各局にモードを選択するようにしてもよい。全実行モードが選択された場合には、他の消防署内における活動状況を把握することができるため、例えば、近くで災害等が生じた場合等には、各消防署の管轄を超えての連携等を容易に行うことが期待できる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 移動無線システム
2 指令局
2a 指令局制御部
2f マイク
3 基地局
3a 基地局端末
3b 記憶部
4、4a~4c 移動局
d1 移動局制御部
d6 マイク
d7 スピーカ
d8 記憶部
L1 無線回線
L2 無線回線
L3 通信線