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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】不整地走行用の二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/11 20060101AFI20240521BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240521BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240521BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B60C11/11 A
B60C11/00 F
B60C11/03 E
B60C5/00 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020053036
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151824
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】疋田 真浩
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0152088(US,A1)
【文献】特開昭50-132605(JP,A)
【文献】特開2015-077880(JP,A)
【文献】特開2020-019401(JP,A)
【文献】特開2020-026256(JP,A)
【文献】特開2019-034673(JP,A)
【文献】特開2019-199145(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00324825(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 11/00-11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する不整地走行用の二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤの回転方向が指定された方向性パターンを備え、
前記トレッド部は、ベース面と、前記ベース面からタイヤ半径方向外側に隆起した複数のブロックとを含み、
前記ブロックは、タイヤ赤道側のクラウンブロックと、トレッド端側のショルダーブロックとを含み、
前記ショルダーブロックの前記ベース面からの高さhsは、前記クラウンブロックの前記ベース面からの高さhcよりも大きく、
前記ショルダーブロックは、前記ベース面側に、前記ベース面に沿った横断面が局部的に増大した土台部が設けられており、
前記クラウンブロックの前記回転方向の先着側を向く側面は、前記回転方向の後着側に向かって凹んでいる、
不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記高さhsは、前記高さhcの105%~150%である、請求項1に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記ブロックは、前記クラウンブロックと前記ショルダーブロックとの間に配されたミドルブロックを含み、
前記トレッド部は、前記ベース面が隆起しかつ前記ショルダーブロック及び前記ミドルブロックを連結するショルダータイバーを含む、請求項1又は2に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記ショルダータイバーは、前記土台部に連なっている、請求項3に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記ショルダータイバーの高さは、前記土台部の高さよりも小さい、請求項3又は4に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記ショルダーブロックには、1つの前記ショルダータイバーのみが連なっている、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記土台部の高さは、前記ショルダーブロックの高さの5%~15%であり、
前記土台部の前記ショルダーブロックからの前記ベース面に沿った突出幅は、前記ショルダーブロックのタイヤ軸方向の幅の5%~15%である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記クラウンブロックは、ブロック本体と、前記ブロック本体よりも小さいタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に延びる3つのフィン部とを含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整地走行用の二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、クラウンブロック及びミドルブロックの配置を改善することにより、不整地でのトラクション性能及び旋回時の過渡特性を向上させた不整地走行用の自動二輪車用タイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-060347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、様々な路面で優れた性能を発揮し得る不整地走行用の二輪車用タイヤが求められている。とりわけ、車両直進時においてトレッド部のショルダーブロックまでもが接地する様な軟質な路面(以下、このような路面を「軟質路面」という。)において、トラクション性能及びコーナリング性能の向上が求められている。
【0005】
発明者らは、この点について種々検討を重ねた結果、クラウンブロック及びショルダーブロックを改善することにより、軟質路面におけるトラクション性能及びコーナリング性能を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、軟質路面において優れたトラクション性能及びコーナリング性能を発揮できる不整地走行用の二輪車用タイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部を有する不整地走行用の二輪車用タイヤであって、前記トレッド部は、ベース面と、前記ベース面からタイヤ半径方向外側に隆起した複数のブロックとを含み、前記ブロックは、タイヤ赤道側のクラウンブロックと、トレッド端側のショルダーブロックとを含み、前記ショルダーブロックの前記ベース面からの高さhsは、前記クラウンブロックの前記ベース面からの高さhcよりも大きく、前記ショルダーブロックは、前記ベース面側に、前記ベース面に沿った横断面が局部的に増大した土台部が設けられている。
【0008】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記高さhsは、前記高さhcの105%~150%であるのが望ましい。
【0009】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ブロックは、前記クラウンブロックと前記ショルダーブロックとの間に配されたミドルブロックを含み、前記トレッド部は、前記ベース面が隆起しかつ前記ショルダーブロック及び前記ミドルブロックを連結するショルダータイバーを含むのが望ましい。
【0010】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ショルダータイバーは、前記土台部に連なっているのが望ましい。
【0011】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ショルダータイバーの高さは、前記土台部の高さよりも小さいのが望ましい。
【0012】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ショルダーブロックには、1つの前記ショルダータイバーのみが連なっているのが望ましい。
【0013】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ブロックは、前記ショルダーブロックと前記クラウンブロックとの間に配されたミドルブロックを含み、前記ミドルブロックの前記ベース面からの高さhmは、前記高さhsよりも小さいのが望ましい。
【0014】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ブロックは、前記ショルダーブロックと前記クラウンブロックとの間に配されたミドルブロックを含み、前記トレッド部は、前記ベース面が隆起しかつ前記ショルダーブロック及び前記ミドルブロックを連結するショルダータイバーと、前記ベース面が隆起しかつ前記クラウンブロック及び前記ミドルブロックを連結するクラウンタイバーとを含むのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤは、上記の構成を採用したことによって、軟質路面において優れたトラクション性能及びコーナリング性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤの一実施形態を示す横断面図である。
図2図1のトレッド部のトレッドパターンを示す展開図である。
図3図2のショルダーブロックの拡大斜視図である。
図4図2のショルダーブロック、クラウンブロック及びミドルブロックの拡大平面図である。
図5図4のB-B線断面図である。
図6】比較例の不整地走行用の二輪車用タイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本発明の一実施形態を示す不整地走行用の二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態における横断面図が示されている。図2は、タイヤ1のトレッド部2のトレッドパターンを示す展開図である。図1は、図2のA-A線断面図であり、タイヤ回転軸を含む子午線断面図である。
【0018】
「正規状態」とは、各種の規格が定められたタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、タイヤの各部の寸法等ついて、測定位置によって微小な差が生じる場合は、特に断りのない限り、本明細書に示される各寸法は、その最小値と最大値との間の中央値を意味するものとする。また、本明細書で説明された各構成は、ゴム成形品に含まれる通常の誤差を許容するものとする。
【0019】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0020】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0021】
図1に示されるように、本発明のタイヤ1は、例えば、モトクロス競技用のタイヤとして好適に用いられる。本実施形態のタイヤは、例えば、モトクロス車両の後輪用のタイヤとして好適に用いられる。但し、このような態様に限定されるものではない。本実施形態のタイヤ1のトレッド部2は、横断面において、その外面がタイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲している。
【0022】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、カーカス6及びトレッド補強層7を具えている。これらには、公知の構成が適宜採用される。
【0023】
図2に示されるように、トレッド部2は、例えば、回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。回転方向Rは、例えば、サイドウォール部3(図1に示す)に、文字又は記号で表示される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。なお、本明細書の図のいくつかでは、矢印によって回転方向Rが示されている。
【0024】
トレッド部2は、例えば、クラウン領域Cr、ミドル領域Mi及びショルダー領域Shに区分されている。
【0025】
クラウン領域Crは、タイヤ赤道Cを中心とする、トレッド展開幅TWeの1/3の幅を有する領域である。ショルダー領域Shは、各トレッド端Teからタイヤ赤道C側にトレッド展開幅TWeの1/6の幅を有する領域である。ミドル領域Miは、クラウン領域Crとショルダー領域Shとの間の領域である。
【0026】
トレッド展開幅TWeは、トレッド部2を平面に展開したときのトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。トレッド端Teは、トレッド部2に配されたブロックの内、最もタイヤ軸方向外側に位置するブロック列に含まれるブロックのタイヤ軸方向外側の端縁を意味する。
【0027】
トレッド部2は、ベース面8と、ベース面8からタイヤ半径方向外側に隆起した複数のブロック10とを含む。本実施形態のブロック10は、タイヤ赤道C側の複数のクラウンブロック11と、トレッド端Te側の複数のショルダーブロック13と、これらの間に配された複数のミドルブロック12とを含む。クラウンブロック11は、踏面の図心がクラウン領域Cr内に位置している。望ましい態様では、クラウンブロック11は、タイヤ赤道C上に設けられている。ミドルブロック12は、踏面の図心がミドル領域Mi内に位置している。また、ミドルブロック12は、クラウンブロック11と隣り合っている。ショルダーブロック13は、踏面の図心がショルダー領域Shに位置している。また、ショルダーブロック13は、ミドルブロック12と隣り合っている。
【0028】
クラウンブロック11のタイヤ軸方向の幅は、例えば、トレッド展開幅TWeの20%~30%である。ミドルブロック12のタイヤ軸方向の幅は、例えば、トレッド展開幅TWeの10%~20%である。ショルダーブロック13のタイヤ軸方向の幅は、例えば、トレッド展開幅TWeの8%~15%である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0029】
図1に示されるように、ショルダーブロック13のベース面8からの高さhsは、クラウンブロック11のベース面8からの高さhcよりも大きい。前記高さhs及び前記高さhcは、高さ基準面17からブロック10の踏面の図心までの最小の距離に相当する。高さ基準面17は、ブロック10の高さを測定する場合の基準となる面であり、前記ベース面8及び前記ベース面8をブロック10の根元部分に延長した仮想面からなる。前記仮想面は、ブロック10とベース面8との境界縁で囲まれ、かつ、周囲のベース面8と滑らかに連続する仮想の面である。
【0030】
図3には、ショルダーブロック13の拡大斜視図が示されている。図3に示されるように、ショルダーブロック13は、ベース面8に、ベース面8に沿った横断面が局部的に増大した土台部20が設けられている。なお、土台部20を理解し易いように、本明細書のブロックを平面視した図において、土台部20が着色されている。
【0031】
本発明のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、軟質路面において優れたトラクション性能及びコーナリング性能を発揮することができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0032】
一般に、軟質路面においては、トレッド部2の全体が路面に埋まる傾向がある。このため、不整地走行用の二輪車用タイヤは、軟質路面での直進時において、クラウンブロック11だけでなく、ショルダーブロック13も路面と接触する。一方、本発明のタイヤ1は、ショルダーブロック13の前記高さhsがクラウンブロック11の前記高さhcよりも大きい。このため、ショルダーブロック13は、軟質路面の直進時においても土や泥を押し退けて反力を提供し、ひいては優れたトラクション性能を発揮する。
【0033】
また、本発明のショルダーブロック13は、上述の土台部20が設けられているため、ブロックの根元部分の剛性が高く、より大きな反力を発揮することができる。また、このようなショルダーブロック13は、タイヤ軸方向にも高い反力を発揮し、コーナリング性能を向上させるのにも役立つ。
【0034】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0035】
図1に示されるように、ショルダーブロック13の前記高さhsは、クラウンブロック11の前記高さhcの103%以上、より望ましくは105%以上であり、望ましくは150%以下、より望ましくは120%以下、さらに望ましくは110%以下である。このようなショルダーブロック13は、適度な剛性を有し、軟質路面でのトラクション性能及びコーナリング性能をバランス良く向上させる。
【0036】
図4には、ショルダーブロック13、クラウンブロック11及びミドルブロック12の拡大平面図が示されている。図4に示されるように、本実施形態のショルダーブロック13の踏面は、例えば、矩形状であり、望ましくは台形状である。本実施形態のショルダーブロック13の踏面は、タイヤ周方向に平行に延びる2本のエッジを含んでいる。ショルダーブロック13のタイヤ周方向の長さは、トレッド端Te側に向かって大きくなっている。このようなショルダーブロック13は、トレッド端Te側に向かってその剛性が大きくなるため、車体のキャンバー角を増加させるときの手応えをリニアにできる。
【0037】
本実施形態のショルダーブロック13は、トレッド端Te側の側面には土台部20が設けられておらず、これ以外の領域には土台部20が設けられている。このようなショルダーブロック13は、トレッド端Te側に適度に撓み易くなるため、最大キャンバー角付近でのコーナリング中における車体の挙動を運転者が把握し易くなる。
【0038】
図5には、図4のB-B線断面図が示されている。なお、図5は、土台部20のベース面8と直交する横断面を示す図である。図5に示されるように、土台部20は、前記横断面において階段状の輪郭を有する。土台部20の輪郭は、例えば、3段以下の階段状であるのが望ましく、本実施形態の土台部20の輪郭は、1段の階段状である。
【0039】
土台部20の隆起高さh1は、ショルダーブロック13の高さhsの5%~50%であり、望ましくは5%~15%である。このような土台部20は、ショルダーブロック13の路面への刺さり易さを維持しつつ、ショルダーブロック13の剛性を高めることができる。
【0040】
土台部20のショルダーブロック13からのベース面8に沿った突出幅W2は、例えば、ショルダーブロック13のタイヤ軸方向の幅W1(図4に示す)の5%~15%である。土台部20は、ショルダーブロック13の路面への突き刺さり量を過度に損ねずに、ショルダーブロック13の剛性を高めることができる。
【0041】
土台部20は、ベース面8に沿って延びる外側面20aを含む。ショルダーブロック13の側面と外側面20aとの間の交差角度θ1は、例えば、90~130°である。これにより、ショルダーブロック13が路面にささり易くなり、トラクション性能及びコーナリング性能が向上する。
【0042】
図4に示されるように、トレッド部2は、ベース面8が隆起しかつショルダーブロック13及び前記ミドルブロック12を連結するショルダータイバー21を含むのが望ましい。このような、ショルダータイバー21は、ショルダーブロック13及びミドルブロック12の根元付近の変形を抑制する。また、ショルダータイバー21は、泥を押し退ける効果も発揮するため、トラクション性能の向上にも役立つ。
【0043】
ショルダータイバー21は、土台部20に連なっているのが望ましい。また、ショルダータイバーの高さは、土台部20の高さよりも小さい。具体的には、ショルダータイバー21の高さは、土台部20の高さの50%~90%である。これにより、ショルダーブロック21周辺に泥が付着して保持されるのを抑制することができる。
【0044】
ショルダータイバー21は、例えば、ショルダーブロック13からミドルブロック12に向かってその幅が小さくなっている。このようなショルダータイバー21は、最大キャンバー角付近における倒し込みの手応えをリニアにするのに役立つ。
【0045】
ショルダーブロック13には、1つのショルダータイバー21のみが連なっているのが望ましい。これにより、1つのショルダータイバー21が押し退けた土や泥が容易に排出され易くなり、優れたトラクション性能及びコーナリング性能が持続して発揮される。
【0046】
本実施形態のクラウンブロック11は、例えば、タイヤ周方向の長さL2が、タイヤ軸方向の長さL1よりも小さい。具体的にはクラウンブロック11のタイヤ周方向の長さL2は、望ましくは前記長さL1の40%~90%である。このようなクラウンブロック11は、トラクション性能を高めるのに役立つ。
【0047】
クラウンブロック11は、回転方向Rの先着側(以下、単に「先着側」という場合がある。)を向く側面23が、回転方向Rの後着側(以下、単に「後着側」という場合がある。)に向かって凹んでいるのが望ましい。本実施形態の前記側面23は、例えば、タイヤ軸方向に対して互いに逆向きに向かって傾斜した2つの平面23aが稜線を介して連なって構成されている。前記平面23aのタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~25°である。このような前記側面23は、不整地走行時において泥や土を押し退けるときに大きな反力を発揮する。
【0048】
本実施形態のクラウンブロック11は、ブロック本体24と、前記ブロック本体よりも小さいタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に延びる少なくとも1つのフィン部25とを含む。フィン部25は、例えば、ブロック本体24の後着側に設けられている。このようなフィン部25は、ブロックが後着側に倒れ込むのを効果的に防ぎ、優れたトラクション性能を発揮する。
【0049】
本実施形態のクラウンブロック11は、例えば、3つのフィン部25を含んでいる。具体的には、クラウンブロック11は、タイヤ軸方向の一方側の第1フィン部26と、タイヤ軸方向の他方側の第2フィン部27と、これらの間に設けられた第3フィン部28とを含む。
【0050】
第1フィン部26は、ブロック本体24のタイヤ軸方向の一方側の側面と連なっている。第2フィン部27は、ブロック本体24のタイヤ軸方向の他方側の側面と連なっている。第1フィン部26及び第2フィン部27は、実質的に同じ形状で構成されている。
【0051】
第3フィン部28は、ブロック本体24のタイヤ軸方向の中央部に連なっている。本実施形態では、クラウンブロック11がタイヤ赤道Cに配されており、かつ、クラウンブロック11に含まれる第3フィン部28がタイヤ赤道C上に配されている。さらに望ましい態様では、このブロックの踏面の図心が、第3フィン部28を先着側に向かってタイヤ周方向に平行に延長した領域内に位置している。これにより、第3フィン部28がブロック本体24の倒れ込みを効果的に抑制し、優れたトラクション性能が発揮される。
【0052】
上述の効果を確実に発揮させるために、第3フィン部28のタイヤ周方向の長さは、例えば、第1フィン部26及び第2フィン部27のタイヤ周方向の長さよりも大きい。また、第3フィン部28は、第1フィン部26及び第2フィン部27よりも後着側に突出している。
【0053】
第3フィン部28のタイヤ軸方向の幅W4は、例えば、第1フィン部26及び第2フィン部27のタイヤ軸方向の幅よりも大きい。具体的には、第3フィン部28の幅W4は、例えば、第1フィン部26の幅W3の130%~200%である。これにより、第3フィン部28がブロック本体24の倒れ込みを抑制し、かつ、第1フィン部26及び第2フィン部27が適度に変形することでフィン付きブロック15周辺に泥や土が保持されるのを防ぐことができる。
【0054】
図1に示されるように、ミドルブロック12のベース面8からの高さhmは、ショルダーブロック13の前記高さhsよりも小さいのが望ましい。前記高さhmは、前記高さhsの90%~95%である。これにより、車体を倒し込むときの手応えがリニアになり、ひいてはコーナリング性能が向上する。
【0055】
図4に示されるように、本実施形態のミドルブロック12は、ブロック本体29と、ブロック本体29よりも小さいタイヤ軸方向の幅でタイヤ周方向に延びる少なくとも1つのフィン部30とを含む。フィン部30は、例えば、ブロック本体29の後着側に設けられている。このようなフィン部30は、ミドルブロック12が後着側に倒れ込むのを効果的に防ぎ、優れたトラクション性能を発揮するのに役立つ。
【0056】
ミドルブロック12は、例えば、タイヤ軸方向の一方側の第1フィン部31と、タイヤ軸方向の他方側の第2フィン部32とを含む。一方、ミドルブロック12は、クラウンブロック11のような第3フィン部を具えていない。このようなミドルブロック12は、クラウンブロック11よりも変形し易く、その周辺に泥や土が保持されるのを防ぐことができる。
【0057】
ミドルブロック12の第1フィン部31及び第2フィン部32のタイヤ周方向の長さは、クラウンブロック11の第3フィン部28のタイヤ周方向の長さよりも小さい。ミドルブロック12の第1フィン部31及び第2フィン部32のタイヤ周方向の長さは、クラウンブロック11の第1フィン部26及び第2フィン部27のタイヤ周方向の長さと同じである。これにより、直進時及び旋回時のトラクションの変化がリニアになる。
【0058】
ミドルブロック12の回転方向Rの先着側を向く側面は、例えば、タイヤ赤道C側からトレッド端Te側に向かって、先着側に傾斜している。また、ミドルブロック12の踏面の図心は、クラウンブロック11の踏面の図心よりも先着側に位置している。これにより、ミドルブロック12がタイヤ赤道C側に押し退けた泥や土をクラウンブロック11がさらに押し退けることができ、さらに優れたトラクション性能が得られる。
【0059】
ミドルブロック12のタイヤ軸方向の長さL3は、クラウンブロック11のタイヤ軸方向の長さL1よりも小さいのが望ましい。具体的には、ミドルブロック12の前記長さL3は、クラウンブロック11の前記長さL1の50%~80%である。
【0060】
本実施形態のトレッド部2は、例えば、上述のショルダータイバー21に加え、クラウンタイバー22を含んでいる。クラウンタイバー22は、ベース面8が隆起しかつクラウンブロック11及びミドルブロック12を連結している。このようなクラウンタイバー22は、土や泥を押し退ける効果を発揮し、トラクション性能を高めるのに役立つ。
【0061】
クラウンタイバー22は、例えば、クラウンブロック11とミドルブロック12との間を一定の幅で延びている。このようなクラウンタイバー22は、クラウンブロック11及びミドルブロック12の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
【0062】
以上、本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤの望ましい態様が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0063】
図2の基本パターンを有する不整地走行用の二輪車用の後輪タイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1及び2として、図7に示されるように、ショルダーブロックaに土台部が設けられていないタイヤが試作された。なお、比較例1のタイヤは、前記高さhsが前記高さhmと同じである。比較例2のタイヤは、前記高さhsが、前記高さhmよりも大きい。比較例1及び2のタイヤは、上述の事項を除き、図2で示されるものと実質的に同じトレッドパターンを有している。各テストタイヤのトラクション性能及びコーナリング性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
使用車両:排気量450cc モトクロス競技車両
タイヤサイズ:120/80-19
リムサイズ:2.15WM
内圧:80kPa
テスト方法は以下の通りである。
【0064】
<トラクション性能>
上記テスト車両で軟質路面を走行したときのトラクション性能が、テストライダーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点であり、数値が大きい程、トラクション性能が優れていることを示す。
【0065】
<コーナリング性能>
上記テスト車両で軟質路面を走行したときのコーナリング性能が、テストライダーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点であり、数値が大きい程、コーナリング性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0066】
【表1】
【0067】
表1から明らかなように、実施例のタイヤは、優れたトラクション性能及びコーナリング性能を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0068】
2 トレッド部
8 ベース面
10 ブロック
11 クラウンブロック
13 ショルダーブロック
20 土台部
hs ショルダーブロックの高さ
hc クラウンブロックの高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6