(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】モータおよび電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20240521BHJP
H02K 5/16 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H02K11/215
H02K5/16
(21)【出願番号】P 2020059118
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸子
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-009570(JP,A)
【文献】特開2009-290915(JP,A)
【文献】特開2013-090532(JP,A)
【文献】特開2000-297744(JP,A)
【文献】特開2000-220570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/215
H02K 5/16
H02K 7/14
F04B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータケースと
前記モータケースに収容され、回転軸と共に回転可能なロータと、
前記回転軸と共に回転可能なマグネットと、
前記マグネット側に配置された磁気センサを有するセンサ基板と、
前記センサ基板を収容する基板収容ケースと、
前記回転軸を回転可能に受ける軸受を保持する軸受保持部と、を備え、
前記モータケースは、軸方向に沿って延びた筒部を有するとともに、当該筒部の軸方向一方側に底部を有し、
前記基板収容ケースは、前記底部の軸方向一方側に配置され、
前記軸受保持部は、前記底部の軸方向他方側に配置され、
前記底部は第1貫通孔を有し、
前記基板収容ケースは、前記第1貫通孔越しに前記軸受保持部に固定される、モータ。
【請求項2】
前記軸受保持部は、軸受を受ける軸受受け面と、前記基板収容ケースが固定されるケース固定面とを有し、
前記ケース固定面は、金型または切削加工によって形成される、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記軸受保持部は、前記モータケースに直接固定される、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記軸受保持部は前記底部の軸方向他方側に固定され、
前記マグネットは、前記回転軸の軸方向一方側の端部に配置される、請求項
1に記載のモータ。
【請求項5】
前記底部は、軸方向に見て前記回転軸を囲んだ第2貫通孔を有し、
前記軸受保持部および
前記基板収容ケースの一方は嵌合穴を有し、当該一方に対する他方は、前記第2貫通孔を通って前記嵌合穴と嵌合する凸部を有する、請求項
1に記載のモータ。
【請求項6】
前記基板収容ケースは、前記モータケースの前記筒部の少なくとも一部を覆う延伸部を有する、請求項
1に記載のモータ。
【請求項7】
前記基板収容ケースは、前記モータケースに向かって開口する環状の溝を有し、
前記溝と前記モータケースとの間でシール部材を保持する、請求項1から
6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載のモータと、
前記モータによって駆動されるポンプ部と、を備える電動ポンプ。
【請求項9】
前記モータは、請求項
1に記載のモータであり、
前記ポンプ部は、前記モータケースの軸方向他方側に配置された請求項
8に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよび電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータの回転軸の一端側にセンサを配備し、回転軸に取り付けられた磁石の動きを検知することでロータの回転を検知する技術が知られる。
【0003】
例えば特許文献1には、略有底円筒状に形成されたモータケースの嵌合凹部に、センサユニットのセンサケースが嵌合され、モータケースに形成された軸受ハウジングに、ロータの回転軸の一端を回転自在に支持するための軸受が設けられ、センサケースにセンサ基板が締結固定されるモータが提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータの回転検知では、センサと磁石との位置精度(特に距離精度)に高い精度が求められる。モータケースは鋼板のプレス加工によって形成されるため、板厚や凹凸形状の寸法公差は、切削加工やモールド加工の寸法公差よりも精度が低い。特許文献1の構造では、モータケースにおける精度の低い寸法公差の影響で、センサと磁石との位置精度も低い。
そこで、本発明は、センサと磁石とが高い精度で位置決めされる新たな構造の提案を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るモータの一態様は、モータケースと、上記モータケース内に納められ、回転軸で回転可能であり、当該回転軸の一端側に磁石を有したロータと、上記磁石に対向した磁気センサを有するセンサ基板と、上記モータケースに対して上記一端側に配置され、上記センサ基板を内部に保持した電気ケースと、上記回転軸を軸受で保持し、上記モータケースとは別体で当該モータケースに対して上記一端側に配置され、上記電気ケースと接触して当該電気ケースを保持した保持部と、を備える。
また、本発明に係る電動ポンプの一態様は、上記モータと、上記モータによって駆動されるポンプ部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明のモータおよび電動ポンプによれば、センサと磁石とが高い精度で位置決めされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、オイルポンプの構造を示す模式図である。
【
図2】
図2は、モータ部とセンサ部との結合構造を示す図である。
【
図4】
図4は、センサマグネット周辺の拡大断面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す状態から基板ケースが取り除かれた状態を示す図である。
【
図6】
図6は、固定ねじの箇所での断面を示す断面図である。
【
図7】
図7は、モータケースの底部の外縁付近を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示のモータおよび電動ポンプの実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、先に説明した図に記載の要素については、後の図の説明において適宜に参照する場合がある。
図1は、オイルポンプの構造を示す模式図である。
オイルポンプ100は、本発明の電動ポンプの一実施形態に相当する。
オイルポンプ100は、モータ部110と、センサ部120と、ポンプ部130とを備える。
モータ部110は、電力の供給を受けて回転駆動力を生む。
センサ部120は、モータ部110の回転を検知する。
ポンプ部130は、モータ部110によって駆動され、オイルの吸入吐出を行う。
モータ部110とセンサ部120とを併せたものは、本発明のモータの一実施形態に相当し、ポンプ部130は、本発明にいうポンプ部の一例に相当する。
モータ部110は、モータケース111と、回転軸112と、ロータ113と、ステータ114と、軸受115と、軸受ホルダ116とを備える。
【0010】
モータケース111は、モータ部110およびオイルポンプ100の全体を支える構造体であり、例えば板金のプレス加工によって形成される。モータケース111は、本発明にいうモータケースの一例に相当する。
【0011】
回転軸112は、モータ部110の回転駆動力を伝達する部材である。以下の説明では、方向の基準として回転軸112を用い、回転軸112に沿う方向を軸方向と称する場合がある。また、以下の説明では、図示の方向に関わらず、
図1における上方側を軸方向一方側と称し、
図1における下方側を軸方向他方側と称する場合がある。
【0012】
ロータ113は、回転軸112に固定され、例えば永久磁石が組み込まれ、回転磁場の作用によって回転軸112と共に回転する。言い換えると、ロータ113は、モータケース111に収容され、回転軸112と共に回転可能である。
【0013】
ステータ114は、ロータ113に対向して回転磁場を発生する。なお、本実施形態ではインナーロータ型の構造が示されるが、本発明のモータは、アウターロータ型の構造を有してもよい。
軸受115は、例えばボール軸受であり、回転軸112を回転可能に受ける。軸受115はローラ軸受や滑り軸受などであってもよい。
【0014】
軸受ホルダ116は、ロータ113を挟んで軸方向一方側と軸方向他方側との双方に配置され、各軸受ホルダ116は各軸受115を保持する。具体的には、円柱状の外形を有した軸受115が軸受ホルダ116の有底穴にはめ込まれて保持される。ロータ113に対して軸方向一方側に配置された軸受ホルダ116は本発明にいう軸受保持部の一例に相当し、モータケース111の軸方向一方側に配置される。各軸受ホルダ116は、例えば金属の切削加工や溶融材料の金型への流し込みによって形成される。
センサ部120は、基板ケース121とセンサ基板122を備える。
【0015】
基板ケース121は、本発明にいう基板収容ケースの一例に相当し、例えば樹脂によって形成される。基板ケース121は、内部にセンサ基板122を収容して保持し、軸受ホルダ116に固定される。また、本実施形態では基板ケース121が、モータ部110に対する配線の引き出しスペースとしても用いられる。
センサ基板122は磁気センサを有し、例えば回転軸112の回転位置や回転速度を検出する。
ポンプ部130は、モータケース111の軸方向他方側に配置され、ポンプケース131と作動部132とを有する。
ポンプケース131は作動部132を収容してモータケース111に固定される。
作動部132は、回転軸112の駆動力によりポンプケース131内で回転することでオイルの吸入吐出を行う。
【0016】
図2は、モータ部110とセンサ部120との結合構造を示す図である。但し、
図2では、基板ケース121のカバーが取り除かれ、一部が断面で示されている。
【0017】
上述した様に、センサ部120の基板ケース121内にはセンサ基板122が収容されて固定される。また、回転軸112の回転を検出するためのセンサマグネット119が回転軸112の一端に設けられる。センサマグネット119が、本発明にいうマグネットの一例に相当する。なお、本発明にいうマグネットとしては、ロータ113に組み込まれた駆動用の永久磁石が用いられてもよい。
【0018】
センサ基板122には、センサマグネット119側に、例えばホールICや磁気抵抗素子などといった磁気センサ123が配置される。センサマグネット119と磁気センサ123との位置精度(特に距離精度)は、十分に高い精度であることが望まれる。
【0019】
センサ基板122を保持した基板ケース121は取り付けねじ124によって軸受ホルダ116に直接固定され、回転軸112を受けた軸受115は軸受ホルダ116に保持される。この結果、回転軸112とセンサ基板122が、モータケース111を介さずに位置決めされるので、回転軸112に固定されたセンサマグネット119とセンサ基板122に設けられた磁気センサ123は高い精度で相互に位置決めされる。
図3は、取り付けねじ124周辺の拡大図である。
【0020】
基板ケース121は、取り付けねじ124が締め付けられる箇所に金属製のインサートカラー125を有し、取り付けねじ124の締結力によるクリープが防がれている。
【0021】
モータケース111は、軸方向に沿って延びた筒部111aを有するとともに、当該筒部111aの軸方向一方側に底部111bを有する。底部111bを有することでモータケース111は強度が高い。
【0022】
基板ケース121と軸受ホルダ116は、モータケース111の底部111bを相互間に挟んで配置される。言い換えると、基板ケース121は、モータケース111の底部111bの軸方向一方側に配置され、軸受ホルダ116は、底部111bの軸方向他方側に配置される。そして、基板ケース121と軸受ホルダ116は、モータケース111の底部111bに設けられた第1貫通孔111cを介して互いに接触する。軸受ホルダ116は、基板ケース121が固定される固定面116bを有し、基板ケース121は固定面116bに接触して取り付けねじ124で固定される。つまり、基板ケース121は第1貫通孔111c越しに軸受ホルダ116に固定される。第1貫通孔111c越しの固定により、基板ケース121と軸受ホルダ116との間に底部111bを有したモータケース111の寸法精度に影響されずに、基板ケース121と軸受ホルダ116とが互いに位置精度良く固定される。
【0023】
軸受ホルダ116は、軸受115を受ける軸受受け面116aを有し、軸受115は軸受受け面116aに接触して軸受ホルダ11に保持される。軸受ホルダ116の軸受受け面116aおよび固定面116bは、金型または切削加工によって高精度に形成される。この結果、軸受ホルダ116を介した軸受115と基板ケース121との位置決めは位置精度がより向上し、延いては、センサマグネット119と磁気センサ123との位置精度も向上する。
図4は、センサマグネット119周辺の拡大断面図である。
【0024】
上述したように、軸受ホルダ116は、モータケース111の底部111bの軸方向他方側に固定され、センサマグネット119は、回転軸112の軸方向一方側の端部に設けられる。そして、磁気センサ123は、センサ基板122の表裏面のうち、センサマグネット119に対向した、軸方向他方側を向いた面に搭載される。センサマグネット119が回転軸112の端部に設けられることでセンサマグネット119と磁気センサ123とが近接は位置され、センサの精度が向上する。
【0025】
モータケース111の底部111bには、回転軸112を中心とした第2貫通孔111dが設けられる。言い換えると、底部111bは、軸方向に見て回転軸112を囲んだ第2貫通孔111dを有する。また、軸受ホルダ116および基板ケース121の一方(ここでは一例として基板ケース121)は嵌合穴121aを有し、当該一方に対する他方(ここでは一例として軸受ホルダ116)は、前記第2貫通孔111dを通って前記嵌合穴121aと嵌合する凸部116cを有する。
【0026】
軸受ホルダ116と基板ケース121が、嵌合穴121aと凸部116cによって互いに嵌合することにより、軸受ホルダ116と基板ケース121は、回転軸112に交わる方向についても相互に位置決めされるので、センサマグネット119と磁気センサ123との位置精度が更に向上する。
図5は、
図3に示す状態から基板ケース121が取り除かれた状態を示す図である。
【0027】
本実施形態では、回転軸112の軸方向一方側の端部が第2貫通孔111dを貫通しているので、センサマグネット119は磁気センサ123に十分近接して配置される。
軸受ホルダ116は、例えば固定ねじ117によってモータケース111に固定される。
図6は、固定ねじ117の箇所での断面を示す断面図である。
【0028】
固定ねじ117による固定で軸受ホルダ116はモータケース111に直接固定されるので、モータケース111に対して軸受ホルダ116の位置が定まり、センサマグネット119と磁気センサ123との位置精度が更に向上する。
図7は、モータケース111の底部111bの外縁付近を示す拡大断面図である。
【0029】
モータケース111の底部111bと基板ケース121との隙間はOリング126によってシールされる。基板ケース121には、底部111b側を向いて開口した溝121cが設けられ、溝121cは軸方向に見て円状に延びる。言い換えると、基板ケース121は、モータケース111に向かって開口する環状の溝121cを有し、 溝121cとモータケース111との間でOリング126を保持する。Oリング126は本発明にいうシール部材の一例に相当する。本発明にいうシール部材としては、パッキンや、塗布するシール剤などが用いられてもよい。なお、
図7ではOリング126の断面が円形に描かれるが、実際には、Oリング126は周囲の部品との接触により弾性変形し(潰され)、断面は非円形になる。
【0030】
モータケース111と基板ケース121との隙間からの流体や粉塵の侵入がOリング126で防がれるため、基板ケース121およびモータケース111内に水や油やその他の異物が入ることが防がれ、磁気センサ123のセンサ精度やオイルポンプ100の品質が保たれる。
【0031】
モータケース111の底部111bは外縁で筒部111aと繋がり、筒部111aの軸方向一方側の端部は、基板ケース121の延伸部121bで覆われる。言い換えると、基板ケース121は、モータケース111の筒部111aの少なくとも一部を覆う延伸部121bを有する。延伸部121bが筒部111aの端部を覆う構造により、上記異物がモータケース111と基板ケース121とのシール箇所まで入ることが抑制され、磁気センサ123のセンサ精度やオイルポンプ100の品質が更に保たれる。
【0032】
なお、ここでは、本発明のモータおよび電動ポンプにおける使用方法の一例としてオイルポンプが挙げられるが、本発明のモータおよび電動ポンプの使用方法は上記に限定されない。本発明の電動ポンプは、水や空気などを吸入吐出するポンプに使用可能であり、本発明のモータは、パワーステアリング装置やコンプレッサなど広範囲に使用可能である。
【0033】
上述した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
100 :オイルポンプ
110 :モータ部
111 :モータケース
111a :筒部
111b :底部
111c :第1貫通孔
111d :第2貫通孔
112 :回転軸
113 :ロータ
114 :ステータ
115 :軸受
116 :軸受ホルダ
116a :軸受受け面
116b :固定面
116c :凸部
117 :固定ねじ
119 :センサマグネット
120 :センサ部
121 :基板ケース
121a :嵌合穴
121b :延伸部
121c :溝
122 :センサ基板
123 :磁気センサ
124 :取り付けねじ
125 :インサートカラー
126 :Oリング
130 :ポンプ部
131 :ポンプケース
132 :作動部