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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】管制装置、及び管制システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240521BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/04 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020063885
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163189
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武男
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮暢
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-021171(JP,A)
【文献】特開2018-180860(JP,A)
【文献】特開2017-126213(JP,A)
【文献】特開2013-201707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ通信を行う機能を有しない非コネクテッド移動体の画像を撮像した撮像センサの各画素における解像度の違いを反映した前記非コネクテッド移動体の状態を表す移動体情報を用いて、自律的に移動する自律移動体が前記非コネクテッド移動体と干渉しないように、前記自律移動体における移動に関する判断を制約する制約条件を生成する生成部と、
移動体の経路を点列で表した地図データと、
前記地図データの点列を構成する地点毎に、前記画像から検出した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度に対する誤差を表す信頼度を対応付けた信頼度データと、
前記非コネクテッド移動体の位置に対応した前記地図データの地点における前記信頼度が反映された前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体が移動する移動経路を予測する予測部と、
前記予測部で予測された前記非コネクテッド移動体の移動経路と、前記自律移動体の目的地から計画された前記自律移動体の移動経路が干渉する干渉領域を特定する特定部と、
を備え、
前記生成部は、前記特定部で特定された前記干渉領域の位置情報と、前記干渉領域での干渉時間における前記非コネクテッド移動体と前記自律移動体の通過優先順位に基づいて設定した前記干渉領域への進入禁止時間を、前記制約条件として生成する
管制装置。
【請求項2】
前記信頼度は、
推定された前記画像上における移動体の位置の検出誤差に、前記画像上の移動体の位置に対応した地点の解像度を乗じることによって得られる、前記画像上の移動体の位置に対応した地点における移動体の位置の検出誤差と、前記画像上の移動体の位置に対応した地点の解像度に、前記画像の撮像間隔の逆数によって表される前記画像上の移動体を表す画素の移動量の最大誤差を乗じることによって得られる、前記画像上の移動体の位置に対応した地点における移動体の速度の検出誤差と、から構成される
請求項1に記載の管制装置。
【請求項3】
前記画像上における移動体の位置の検出誤差は、前記画像から検出された前記画像上における移動体の位置と、前記画像上における移動体の位置に対応した前記画像上での移動体の実際の位置である正解位置との差分を用いて推定された誤差である
請求項2に記載の管制装置。
【請求項4】
前記画像上の移動体の位置に対応した地点の解像度は、
前記地図データの経路上における各地点の位置を前記画像内の位置に変換し、隣接する地点間の前記地図データ上の距離を、前記画像内における前記隣接する各々の地点に対応した画素間の距離で除すことによって算出された解像度である
請求項2または請求項3記載の管制装置。
【請求項5】
データ通信を行う機能を有しない非コネクテッド移動体が移動する経路に沿って設置され、前記非コネクテッド移動体の画像を撮像する撮像センサと、
前記撮像センサで撮像された前記画像から前記非コネクテッド移動体の位置を検出する検出部、前記検出部で検出された前記画像上における前記非コネクテッド移動体の位置を、移動体の経路を点列として表した地図上の地点に変換する変換部、及び、前記変換部で変換された前記非コネクテッド移動体が位置する地点を時系列に沿って追尾し、前記地図上における前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を含む移動体情報を出力する追尾部を備えた、前記非コネクテッド移動体が移動する経路に沿って設置される収集装置と、
データ通信を行う機能を有しない非コネクテッド移動体の画像を撮像した撮像センサの各画素における解像度の違いを反映した前記非コネクテッド移動体の状態を表す移動体情報を用いて、自律的に移動する自律移動体が前記非コネクテッド移動体と干渉しないように、前記自律移動体における移動に関する判断を制約する制約条件を生成する生成部、移動体の経路を点列で表した地図データ、前記地図データの点列を構成する地点毎に、前記画像から検出した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度に対する誤差を表す信頼度を対応付けた信頼度データ、前記非コネクテッド移動体の位置に対応した前記地図データの地点における前記信頼度が反映された前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体が移動する移動経路を予測する予測部、及び前記予測部で予測された前記非コネクテッド移動体の移動経路と、前記自律移動体の目的地から計画された前記自律移動体の移動経路が干渉する干渉領域を特定する特定部、を備え、前記生成部は、前記特定部で特定された前記干渉領域の位置情報と、前記干渉領域での干渉時間における前記非コネクテッド移動体と前記自律移動体の通過優先順位に基づいて設定した前記干渉領域への進入禁止時間を、前記制約条件として生成する管制装置と、
を含む管制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管制装置、及び管制システに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、路上など、車両以外に設置されたカメラで撮像された画像と、カメラの撮像パラメータを受信し、受信した撮像パラメータに基づき画像を幾何変換することで、車両以外の所定位置から見た場合の画像に変換して車両の運転手に表示する画像受信表示装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、検出した車両の位置と速度に基づいて車両の走行状態を判別し、車両が所定の地点に到達する到達時刻のように車両の走行状態から得られる情報を出力するタイミングを制御する車両検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-201707号公報
【文献】特開2001-175991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の交通を管制する管制装置は、車道を走行する車両の状態を収集し、収集した車両の状態に基づいて車両同士が干渉しないように生成した管制情報を無線で自動運転車両に送信することで、車両同士の干渉を回避させる交通管制を行うことがある。
【0006】
このように、自動運転車両は無線設備を備えているため、車両の状態も無線で管制装置に送信することができるが、車両の中には無線設備を備えていない車両も存在する。こうした車両の位置や速度といった車両の状態は、例えば車道に設置されたインフラセンサ、具体的にはカメラで撮像した画像から取得することがある。
【0007】
特許文献1に記載の画像受信表示装置は、魚眼レンズを通して撮像したカメラの画像を幾何変換し、画像の歪みを補正した上で、車両の上空から車両周辺を眺めた俯瞰画像を生成して車両の運転手に表示している。しかしながら、特許文献1に記載の画像受信表示装置は、車両の運転手が俯瞰画像を見て車両同士の干渉を回避する操作を手動で行うような使い方を想定しており、俯瞰画像を自動運転車両の走行制御に利用することまでは想定していない。
【0008】
また、特許文献2に記載の車両検出装置の場合、カメラで撮像した画像から車両の位置及び速度を計測しているが、計測した車両の位置及び速度の誤差を考慮していないため、車両が所定の地点に到達する到達時刻幅を精度よく推定することができない。したがって、特許文献2に記載の車両検出装置で推定した到達時刻に基づいて、車両同士が干渉しないように管制装置が自動運転車両の走行制御を行った場合、車両同士が干渉する恐れがある。
【0009】
本発明は、上記に示した問題点を鑑みてなされたものであり、画像から移動体の状態を計測する場合であっても、移動体同士の交通効率を低下させることなく干渉領域における干渉を回避させることができる管制装置、管制システム、信頼度生成装置、及び信頼度生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の管制装置は、データ通信を行う機能を有しない非コネクテッド移動体の画像を撮像した撮像センサの各画素における解像度の違いを反映した前記非コネクテッド移動体の状態を表す移動体情報を用いて、自律的に移動する自律移動体が前記非コネクテッド移動体と干渉しないように、前記自律移動体における移動に関する判断を制約する制約条件を生成する生成部と、移動体の経路を点列で表した地図データと、
前記地図データの点列を構成する地点毎に、前記画像から検出した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度に対する誤差を表す信頼度を対応付けた信頼度データと、前記非コネクテッド移動体の位置に対応した前記地図データの地点における前記信頼度が反映された前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体が移動する移動経路を予測する予測部と、前記予測部で予測された前記非コネクテッド移動体の移動経路と、前記自律移動体の目的地から計画された前記自律移動体の移動経路が干渉する干渉領域を特定する特定部と、を備え、前記生成部は、前記特定部で特定された前記干渉領域の位置情報と、前記干渉領域での干渉時間における前記非コネクテッド移動体と前記自律移動体の通過優先順位に基づいて設定した前記干渉領域への進入禁止時間を、前記制約条件として生成する。
【0011】
請求項2記載の発明では、前記信頼度は、推定された前記画像上における移動体の位置の検出誤差に、前記画像上の移動体の位置に対応した地点の解像度を乗じることによって得られる、前記画像上の移動体の位置に対応した地点における移動体の位置の検出誤差と、前記画像上の移動体の位置に対応した地点の解像度に、前記画像の撮像間隔の逆数によって表される前記画像上の移動体を表す画素の移動量の最大誤差を乗じることによって得られる、前記画像上の移動体の位置に対応した地点における移動体の速度の検出誤差と、から構成される。
【0012】
請求項3記載の発明では、前記画像上における移動体の位置の検出誤差は、前記画像から検出された前記画像上における移動体の位置と、前記画像上における移動体の位置に対応した前記画像上での移動体の実際の位置である正解位置との差分を用いて推定された誤差である。
請求項4記載の発明では、前記画像上の移動体の位置に対応した地点の解像度は、
前記地図データの経路上における各地点の位置を前記画像内の位置に変換し、隣接する地点間の前記地図データ上の距離を、前記画像内における前記隣接する各々の地点に対応した画素間の距離で除すことによって算出された解像度である。
【0013】
請求項に記載の管制システムは、データ通信を行う機能を有しない非コネクテッド移動体が移動する経路に沿って設置され、前記非コネクテッド移動体の画像を撮像する撮像センサと、前記撮像センサで撮像された前記画像から前記非コネクテッド移動体の位置を検出する検出部、前記検出部で検出された前記画像上における前記非コネクテッド移動体の位置を、移動体の経路を点列として表した地図上の地点に変換する変換部、及び、前記変換部で変換された前記非コネクテッド移動体が位置する地点を時系列に沿って追尾し、前記地図上における前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を含む移動体情報を出力する追尾部を備えた、前記非コネクテッド移動体が移動する経路に沿って設置される収集装置と、データ通信を行う機能を有しない非コネクテッド移動体の画像を撮像した撮像センサの各画素における解像度の違いを反映した前記非コネクテッド移動体の状態を表す移動体情報を用いて、自律的に移動する自律移動体が前記非コネクテッド移動体と干渉しないように、前記自律移動体における移動に関する判断を制約する制約条件を生成する生成部、移動体の経路を点列で表した地図データ、前記地図データの点列を構成する地点毎に、前記画像から検出した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度に対する誤差を表す信頼度を対応付けた信頼度データ、前記非コネクテッド移動体の位置に対応した前記地図データの地点における前記信頼度が反映された前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体が移動する移動経路を予測する予測部、及び前記予測部で予測された前記非コネクテッド移動体の移動経路と、前記自律移動体の目的地から計画された前記自律移動体の移動経路が干渉する干渉領域を特定する特定部、を備え、前記生成部は、前記特定部で特定された前記干渉領域の位置情報と、前記干渉領域での干渉時間における前記非コネクテッド移動体と前記自律移動体の通過優先順位に基づいて設定した前記干渉領域への進入禁止時間を、前記制約条件として生成する管制装置と、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、画像から移動体の状態を計測する場合であっても、移動体同士の交通効率を低下させることなく干渉領域における干渉を回避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】管制システムのシステム構成例を示す図である。
図2】遵守車両の制御装置における機能構成例を示す図である。
図3】遵守車両と非コネクテッド車両の運転機能の相違例を示す図である。
図4】収集装置及び管制装置の機能構成例を示す図である。
図5】管制走行ルート地図の内容例を示す図である。
図6】干渉地点の一例を示す図である。
図7】干渉地点情報の一例を示す図である。
図8】撮像センサによって撮像される画像の一例を示す図である。
図9】画像上の位置を管制走行ルート地図上の経由点に写像した一例を示す図である。
図10】大域経路の一例を示す図である。
図11】走行経路の一例を示す図である。
図12】レンズの歪みによる視野角の違いを説明する図である。
図13】収集装置と地面との位置関係による視野幅の違いを説明する図である。
図14】同じ視野角における視野幅の違いの一例を示す図である。
図15】収集装置で撮像した画像例を示す図である。
図16】信頼度生成装置の機能構成例を示す図である。
図17】車両の位置の検出誤差例を示す図である。
図18】座標の逆変換例を示した図である。
図19】画像から車両の速度を算出する例について説明した図である。
図20】管制装置及び信頼度生成装置における電気系統の要部構成例を示す図である。
図21】遵守車両の制御装置における電気系統の要部構成例を示す図である。
図22】信頼度生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図23】管制処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図24】干渉地点における車両の干渉時間の一例を示す図である。
図25】状態sx=0に設定された干渉地点での仮想交通ルールを模式化した模式図である。
図26】状態sx=1に設定された干渉地点での仮想交通ルールを模式化した模式図である。
図27】干渉地点の協調について説明する模式図である。
図28】走行制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図29】仮想交通ルールを満たす局所経路の選択例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び処理には全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略するものとする。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る管制システム1のシステム構成例を示す図である。管制システム1は、管制システム1による管制対象となる車両7、それぞれ経路6に沿って設置される複数の無線通信装置3及び収集装置9、並びに管制装置10を含み、各々の無線通信装置3及び収集装置9は、通信網5を通じて管制装置10と接続されている。
【0022】
車両7が備える運転に関する機能である運転機能の相違により、車両7は複数の種類に分類される。例えば車両7のうち、無線設備を備え、走行中に例えば最も近い場所に設置されている何れか1つの無線通信装置3に無線接続することで、通信網5を通じて管制装置10とデータ通信を行う車両7はコネクテッド車両に分類され、無線設備を備えておらず、管制装置10とデータ通信を行うことができない車両7は非コネクテッド車両に分類される。
【0023】
無線通信装置3は、コネクテッド車両と管制装置10の間のデータ中継装置としての役割を果たす。無線通信装置3は、コネクテッド車両との無線通信が可能な範囲内であればその設置場所に制約はないが、例えば車道と並行して設けられた歩道や車道の中央分離帯、及び信号設備のように、車道からできるだけ近い場所に設置されることが好ましい。また、無線通信装置3の設置台数に制約はない。
【0024】
通信網5は、無線通信装置3及び収集装置9で収集した車両7の各種情報を管制装置10に伝送すると共に、管制装置10で生成されたコネクテッド車両の管制情報を、管制装置10が指定した無線通信装置3に伝送する。管制情報は管制装置10からの指示によってすべての無線通信装置3に伝送され、各々のコネクテッド車両に通知されることもある。なお、通信網5は、有線回線であっても無線回線であってもよい。
【0025】
管制装置10は、車両7同士の交通効率を低下させることなく、車両7同士が接触する危険性が認められる予め定めた範囲(以降、「干渉範囲」という)まで接近するような箇所、すなわち、干渉地点Xで干渉を回避させる交通管制を行う装置である。ここで「干渉」とは、車両7同士が接触する状況を示すだけでなく、車両7同士が干渉範囲まで接近する状況をいう。
【0026】
管制装置10は、管制対象となる各々の車両7から、車両7の状態を表す移動体情報を受信し、各々の車両7が行う移動に関する判断を制約する制約条件(以降、「仮想交通ルール」という)を、車両7同士が干渉地点Xで干渉しないように制約条件の受信機能を有する車両7毎に生成して、制約条件の受信機能を有する各車両7に送信する。
【0027】
車両7の状態とは、車両7の動き、車両7に対して行われた制御内容、及び車両7に備わっている各機能の動作状況等、計測及び収集可能な車両7に関する項目を項目毎に表した情報の集合体である。
【0028】
なお、管制装置10が車両7に送信する仮想交通ルールは、車両7の管制情報の一例であり、詳細内容については後ほど説明する。
【0029】
管制装置10は、コネクテッド車両であれば無線通信装置3を通じて移動体情報を受信することができるが、非コネクテッド車両の場合には無線設備を備えていないため、無線通信装置3を通じて移動体情報を受信することができない。
【0030】
したがって、管制装置10は、収集装置9を通じて非コネクテッド車両の移動体情報を取得する。
【0031】
収集装置9は無線通信装置3と同様に、例えば車道と並行して設けられた歩道や車道の中央分離帯、及び信号設備のように非コネクテッド車両の移動体情報が得られる範囲に設置される。収集装置9は、例えば光学的に撮像を行う撮像センサを用いて、車線における非コネクテッド車両や非コネクテッド車両周辺の交通環境を撮像し、非コネクテッド車両に関する移動体情報を収集する装置である。本実施の形態における収集装置9の取り付け位置、撮像方向、及び撮像される画像の撮像範囲(視野角)は固定とする。
【0032】
コネクテッド車両は、運転機能の相違によって更に複数の種類の車両に分類されることがあるが、以降では、本実施の形態に係るコネクテッド車両は遵守車両であるものとする。
【0033】
遵守車両とは、管制装置10から仮想交通ルールを受信し、車両7に取り付けられたセンサ等から得られる交通環境情報を参照しながら、受信した仮想交通ルールを満たし、かつ、車両7同士の干渉を自律的に回避するように、車両7自らの判断によって車両7を制御しながら走行する自動運転機能を備えた車両7のことである。なお、本実施の形態に係る自動運転とは、運転手ではなく自動運転機能が走行に関する責任を負うレベル3以上の区分に分類される運転を指す。
【0034】
以降では、特に断りがない場合、管制装置10が交通管制を行う範囲内に遵守車両と非コネクテッド車両が走行している例について説明する。遵守車両及び非コネクテッド車両を区別して説明する必要がない場合には総称して「車両7」と表し、区別して説明する場合には、それぞれ遵守車両7Aと非コネクテッド車両7Dのように表す。また、車両7のうち注目する2台の車両を「車両P」及び「車両Q」ということがある。
【0035】
図2は、遵守車両7Aの制御装置における機能構成例を示す図である。
【0036】
図2に示すように、遵守車両7Aの制御装置は、位置推定部21、状態管理部22、無線通信部23、局所経路計画部24、及び制御部25の各機能部と、車両走行ルート地図26を含む。
【0037】
位置推定部21は遵守車両7Aの位置を推定する。具体的には、位置推定部21は、遵守車両7Aに取り付けられた例えばレーザレンジファインダやカメラのように、遵守車両7Aが走行する周辺環境の形状や、移動体である遵守車両7Aの移動路の一例である車線8上の状況を捉える外界センサから外形形状データを取得し、取得した外形形状データと、例えば予め用意している環境外形データ(自己位置推定用地図)をマッチングさせ、一致する地点を遵守車両7Aの現在位置として推定するマップマッチングを用いて遵守車両7Aの位置を推定する。位置推定部21における遵守車両7Aの位置の推定方法に制約はなく、例えばGPS(Global Positioning System)を用いた遵守車両7Aの位置の推定等、他の推定方法を用いてもよい。位置推定部21は、推定した遵守車両7Aの位置を位置情報として状態管理部22及び局所経路計画部24に通知する。
【0038】
状態管理部22は、例えばナンバー情報及び車体番号のように遵守車両7Aを一意に識別するために用いられる情報を含んだ車両固有情報を管理する。また、状態管理部22は、例えば位置情報によって表される遵守車両7Aの位置、並びに、姿勢、速度、及び制御内容等を計測するセンサ(「内界センサ」と呼ばれる)や外界センサで取得した周囲の交通環境に関するセンサ値を時系列に沿って収集し、遵守車両7Aの状態として管理する。
【0039】
状態管理部22は、車両固有情報と遵守車両7Aの状態を移動体情報として定期及び随時の少なくとも一方のタイミングで、無線通信部23及び局所経路計画部24に通知する。
【0040】
無線通信部23は、状態管理部22から受け付けた移動体情報を、無線通信装置3を通じて管制装置10に送信すると共に、無線通信装置3を通じて管制装置10から受信した管制情報を遅滞なく局所経路計画部24に通知する。
【0041】
局所経路計画部24は、位置推定部21から受け付けた位置情報、状態管理部22から受け付けた移動体情報、無線通信部23から受け付けた管制情報、及び車両走行ルート地図26を用いて局所経路を計画し、制御部25に通知する。
【0042】
局所経路計画部24は、遵守車両7Aが管制情報に含まれる仮想交通ルールを満たし、かつ、管制情報で指定された大域経路に沿って走行するという条件の下で、移動体情報に含まれる遵守車両7Aに取り付けられた外界センサの計測データから走行中の車道の状況を判断し、大域経路に対応した車道のどの位置を実際に走行しなければならないのかといった実経路を決定する。その上で、局所経路計画部24は、決定した実経路に沿って車両7を走行させるために従うべき各時刻における遵守車両7Aの速度や姿勢を設定する。
【0043】
このように、遵守車両7Aが仮想交通ルールを満たしながら、管制装置10によって指定された大域経路に沿って走行するという条件の下で決定した実経路を「局所経路」と呼び、局所経路には、局所経路に従って遵守車両7Aを走行させるための制御内容が付加される。なお、大域経路の詳細内容については後ほど説明する。
【0044】
車両走行ルート地図26は、遵守車両7Aが走行する車線を表す地図情報を含んでおり、局所経路の決定や、局所経路に沿って遵守車両7Aを走行させるための各時刻における遵守車両7Aの制御内容の設定に用いられる。
【0045】
制御部25は局所経路計画部24から局所経路を受け付けると、局所経路に含まれる制御内容に従って遵守車両7Aのハンドル、アクセル、ブレーキ等を制御し、局所経路に沿った遵守車両7Aの自律走行を実現する。
【0046】
制御部25が実施した制御に伴うハンドル、アクセル、ブレーキ等の操作量といった遵守車両7Aの制御内容は、各種制御量を計測するそれぞれの内界センサを通じて状態管理部22に通知され、遵守車両7Aの状態として状態管理部22で管理される。
【0047】
なお、遵守車両7Aは管制装置10から大域経路を受信しなくても、外界センサの計測データから走行中の車道の状況を判断し、仮想交通ルールを満たすような実経路を決定することができるが、ここでは一例として、遵守車両7Aは管制装置10から大域経路を受信して実経路、すなわち、局所経路を決定するものとする。
【0048】
一方、非コネクテッド車両7Dの場合、管制装置10とデータ通信を行う通信機能を備えていなければ、どのような機能構成であっても構わない。
【0049】
図3は、遵守車両7A及び非コネクテッド車両7Dが有する運転機能の相違をまとめた図である。
【0050】
図3において、“〇”は対応する機能を備えていることを表し、“×”は対応する機能を備えていないことを表す。“〇/×”は対応する機能を備えていても備えていなくてもどちらでもよいことを表し、“-”は原則不要な機能であることを表す。仮想交通ルール伝達機能とは、管制装置10から受信した仮想交通ルールを、視覚、聴覚、及び触覚の少なくとも1つを利用して車両7の運転手に伝達する機能である。
【0051】
非コネクテッド車両7Dは管制装置10との通信機能を備えていないため、通信機能の存在を前提とした仮想交通ルール受信、仮想交通ルール伝達機能、及び大域経路取得の各機能は備えていない。一方、非コネクテッド車両7Dは、例えば自動運転機能のように必ずしも通信機能の存在を前提としていない機能については、該当する機能を備えていても備えていなくてもどちらでもよい。
【0052】
以降では、説明の便宜上、移動体情報を区別して説明する必要がある場合、遵守車両7Aの移動体情報を「移動体情報A」、非コネクテッド車両7Dの移動体情報を「移動体情報D」ということにする。
【0053】
図4は、収集装置9及び管制装置10の機能構成例を示す図である。図4に示すように、収集装置9は撮像センサ9A、移動体検出部9B、座標変換部9C、及び移動体追尾部9Dを備える。
【0054】
撮像センサ9Aは、非コネクテッド車両7Dや非コネクテッド車両7D周辺の交通環境を撮像した画像を生成し、画像を移動体検出部9Bに通知する。撮像センサ9Aは複数の撮像素子で構成され、各々の撮像素子がそれぞれ画像の画素に対応した画素値を出力する。
【0055】
なお、撮像センサ9Aは、例えば予め定めた間隔(以降、「撮像間隔」という)毎に撮像を行うが、非コネクテッド車両7Dのような移動体を検出してから一定期間の間だけ撮像を行うようにしてもよい。ここでは一例として、撮像センサ9Aは、予め定めた撮像間隔で画像を常時撮像しているものとする。撮像間隔を短く設定していけば、撮像センサ9Aが撮像する画像は動画となる。
【0056】
移動体検出部9Bは、撮像センサ9Aで撮像された画像から公知の移動体検出手法、例えばディープラーニングを用いた機械学習やパターンマッチングを用いて移動体(本実施の形態の場合、非コネクテッド車両7D)を検出し、検出した非コネクテッド車両7Dの画像上における位置を座標変換部9Cに通知する。こうした移動体検出部9Bは、本実施の形態に係る収集装置9の検出部に相当する。
【0057】
座標変換部9Cは、移動体検出部9Bから受け付けた画像上における非コネクテッド車両7Dの位置が、後述する管制走行ルート地図上ではどの地点に対応するのかを表すために、画像上における非コネクテッド車両7Dの位置を、管制走行ルート地図上の地点に座標変換する。座標変換部9Cは、本実施の形態に係る収集装置9の変換部に相当する。
【0058】
こうした座標変換は、撮像間隔で撮像される各々の画像から検出された非コネクテッド車両7Dに対して行われるため、時系列に沿った管制走行ルート地図上での非コネクテッド車両7Dの位置が得られる。したがって、移動体追尾部9Dは公知のトラッキング処理を用いて、走行する非コネクテッド車両7Dを時系列に沿って追尾する。その上で、移動体追尾部9Dは、非コネクテッド車両7Dの位置や、非コネクテッド車両7Dの位置の変化から得られる非コネクテッド車両7Dの速度等を含んだ移動体情報を、通信網5を通じて管制装置10に出力する。
【0059】
非コネクテッド車両7Dの速度は、例えば時系列に沿って撮像された時間的に隣り合う画像から得られた非コネクテッド車両7Dの管制走行ルート地図上の位置の差分と撮像間隔から推定される。移動体追尾部9Dは、オプティカルフローを用いて非コネクテッド車両7Dの速度を推定してもよい。また、非コネクテッド車両7Dの速度や非コネクテッド車両7Dの走行軌跡を参照することで、非コネクテッド車両7Dの姿勢が推定される。移動体追尾部9Dは、本実施の形態に係る収集装置9の追尾部に相当する。
【0060】
このように、収集装置9は、位置、姿勢、及び速度といった非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dを収集する。
【0061】
収集装置9は、必ずしも撮像センサ9A、移動体検出部9B、座標変換部9C、及び移動体追尾部9Dを備える必要はなく、例えば撮像センサ9Aだけを備えてもよい。この場合、移動体検出部9B、座標変換部9C、及び移動体追尾部9Dを備えた図示しない状態検出装置を通信網5に接続し、図示しない状態検出装置でそれぞれの収集装置9から通知された画像を受け付けて、各収集装置9で撮像された画像に含まれるそれぞれの非コネクテッド車両7Dの移動体情報を取得すればよい。各々の収集装置9から移動体検出部9B、座標変換部9C、及び移動体追尾部9Dが不要となるため、収集装置9の小型化及び低コスト化が図られる。当然のことながら、収集装置9から撮像センサ9Aだけを分離し、撮像センサ9Aが取り除かれた収集装置9の移動体検出部9Bに撮像センサ9Aで撮像した画像を入力するようにしてもよい。
【0062】
次に、管制装置10の機能について説明する。
【0063】
図4に示すように、管制装置10は、目的地設定部11、通信部12、大域経路計画部13、走行経路予測部14、干渉地点特定部15、及び仮想交通ルール生成部16の各機能部と、信頼度付き管制走行ルート地図17を含む。
【0064】
通信部12は、遵守車両7Aから無線通信装置3を通じて移動体情報Aを受信すると共に、後述する仮想交通ルール生成部16で生成した仮想交通ルールを含む管制情報を、管制情報の送信先として指定された各々の遵守車両7Aに送信する。
【0065】
遵守車両7Aは、管制装置10によって指定された大域経路に沿って走行する車両7であるため、管制装置10が大域経路を計画する必要がある。
【0066】
そのため、目的地設定部11は、遵守車両7Aが向かおうとしている目的地と遵守車両7Aの車両固有情報を受け付け、遵守車両7Aの車両固有情報と目的地を対応付けて大域経路計画部13に通知する。
【0067】
遵守車両7Aの目的地及び車両固有情報は管制装置10の操作者が目的地設定部11に設定してもよいが、遵守車両7Aから目的地を含む移動体情報を受信し、目的地設定部11が、受信した移動体情報に含まれる車両固有情報と目的地を対応付けて大域経路計画部13に通知してもよい。
【0068】
大域経路計画部13は、目的地設定部11から受け付けた遵守車両7Aの目的地、通信部12から受け付けた遵守車両7Aの移動体情報A、及び信頼度付き管制走行ルート地図17を用いて大域経路を計画する。大域経路計画部13は計画した大域経路を干渉地点特定部15に通知する。
【0069】
信頼度付き管制走行ルート地図17とは、管制走行ルート地図上の地点毎に、その地点に存在する車両7の位置及び速度に対する誤差を表す信頼度を付加した地図である。まず、信頼度が付加される前の管制走行ルート地図について説明する。
【0070】
図5は、管制走行ルート地図の内容例を示す図である。管制走行ルート地図は、交通規則が変化しない区間を最小単位とした、各区間における経路情報の集合によって表現される道路構造データベースである。
【0071】
管制走行ルート地図を構成する区間(図5の例の場合、地点K1から地点K2までの区間、地点K2から地点K3までの区間、地点K3から地点K7までの区間、地点K2から地点K5までの区間、地点K4から地点K5までの区間、及び地点K5から地点K6までの区間の6区間)には、それぞれ区間における制限速度、車線数、幅員、及び区間における車線が優先車線であるのか、それとも非優先車線であるのかといった車線優先度等の交通規則情報が設定されている。
【0072】
更に、管制走行ルート地図を構成する各区間は、仮想的に設定された経由点4の集合である経由点列によって車両7の経路6を表している。経由点4とは、経路6上における車両7の位置を表す指標の1つであり、各々の経由点4には経由点IDが一意に設定されているため、経由点IDから経路6上における車両7の位置が特定される。この経由点4が、管制走行ルート地図における「地点」に相当する。管制走行ルート地図における経由点4の位置情報は、3次元空間を規定する地図座標系によって表される。
【0073】
なお、管制走行ルート地図には干渉地点Xを予め規定している干渉地点情報が含まれる。
【0074】
図6は、干渉地点Xの例を示す図である。干渉地点Xには例えば図6(A)に示すように、優先車線8Aと非優先車線8Bが交差する交差点や、一般道や高速道路でみられるような、図6(B)に示す優先車線8Aと非優先車線8Bが合流する合流点が含まれる。干渉地点Xとは、車両7同士が干渉範囲まで接近するような箇所のことであるため、干渉地点Xは必ずしも点で表されるわけではなく、一定の大きさを有する領域で表されることもある。すなわち、干渉地点Xは干渉領域の一例である。
【0075】
図7は、干渉地点情報の一例を示す図であり、干渉地点情報は、例えば干渉地点X毎に干渉地点Xを一意に識別するための干渉地点ID、干渉地点Xの位置、干渉地点Xに対応する経由点4を一意に識別するための経由点ID、並びに、干渉地点Xの1つ手前の経由点4の位置及び経由点IDを、同じ干渉地点Xを共有する優先車線8Aと非優先車線8Bのそれぞれについて規定した情報である。
【0076】
前述した遵守車両7Aにおける車両走行ルート地図26も管制走行ルート地図と同じ情報で構成されるが、車両走行ルート地図26は、車両7が実際に走行する上で必要になるような、管制走行ルート地図には含まれない情報を含んでもよい。
【0077】
なお、管制走行ルート地図に必ずしも干渉地点情報が含まれている必要はなく、この場合、管制装置10は、管制走行ルート地図に含まれる経由点列の情報から干渉地点情報を生成すればよい。また、管制走行ルート地図は必ずしも管制装置10に含まれる必要はなく、管制装置10は、通信部12を通じて管制装置10とは異なる外部装置から管制走行ルート地図を取得してもよい。このように車両7の経路6を点列で表した管制走行ルート地図は、本実施の形態に係る地図データに相当する。
【0078】
次に管制走行ルート地図に付加される信頼度について説明する。
【0079】
図8は、収集装置9の撮像センサ9Aによって撮像される画像50について説明する図である。図8のうち、図8(A)は車線8を走行する車両P及び車両Qを収集装置9で撮像している状況を示している図であり、図8(B)は、図8(A)に示した状況で撮像された画像50の一例を示している。
【0080】
撮像センサ9A上に被写体の像を結像させるため、収集装置9にはレンズが装着されているが、レンズに歪みがあると車両Pと車両Qの大きさが同じであっても、レンズを通して撮像された画像50内での車両Pと車両Qの大きさが異なる場合がある。また、収集装置9から車両P及び車両Qまでのそれぞれの距離が異なる場合にも、車両Pと車両Qの大きさが同じであっても画像50内での車両Pと車両Qの大きさが異なる場合がある。
【0081】
そのため、図8(B)の画像50の例では、実際には同じ大きさの車両Pと車両Qであっても、車両Qが車両Pより小さく表示されている。なお、枠55P及び枠55Qは、それぞれ収集装置9の移動体検出部9Bで画像50から検出した車両P及び車両Qの位置を表す枠線である。車両P及び車両Qの具体的な位置は、例えば枠55P及び枠55Qにそれぞれ存在する2本の対角線の交点の座標で表してもよい。画像50には座標軸X1及び座標軸Y1で表される画像座標系が適用されている。
【0082】
実際には同じ大きさの車両Pと車両Qであっても、車両Pに比べて車両Qが画像50内で小さく表示されているということは、撮像センサ9Aにおいて車両Qを撮像している画素1つあたりの撮像範囲の幅が、車両Pを撮像している画素1つあたりの撮像範囲の幅よりも長いことを表している。こうした撮像センサ9Aの各々の画素が撮像する撮像範囲の幅を「画素の解像度」という。画像50内の各々の画素に対応する撮像センサ9Aの画素の解像度は、画像50内のどの場所を撮像しているかによって画素毎に異なる。1つの画素の撮像範囲が狭いほど、予め定めた大きさの範囲をより多くの画素で撮像することになるため、画像50上では大きく撮像される(図8(B)の車両P)。一方、1つの画素の撮像範囲が広いほど、予め定めた大きさの範囲をより少ない画素で撮像することになるため、画像50上では小さく撮像される(図8(B)の車両Q)。
【0083】
すなわち、画像50において、車両Qよりも大きく表示された車両Pは、車両Qよりも高解像度で撮像されているため、画像50から検出した車両Pの位置と、車線8上における実際の車両Pの位置との誤差は、車両Qの位置の誤差よりも小さくなる。
【0084】
したがって、収集装置9の移動体検出部9Bで画像50から検出した車両P及び車両Qの位置を、収集装置9の座標変換部9Cで管制走行ルート地図上の地点に座標変換する場合、図8(B)の画像50内で車両Qに比べて大きく表示されている車両Pの座標変換後における管制走行ルート地図上での位置の誤差は、車両Qの座標変換後における管制走行ルート地図上での位置の誤差に比べて小さくなる傾向がある。
【0085】
図9は、図8(B)に示した画像50における車両P及び車両Qの位置を、それぞれ管制走行ルート地図上の最も近い経由点4に写像した例を示す図である。一例として、経由点4Aが座標変換後の車両Pの位置を表し、経由点4Bが座標変換後の車両Qの位置を表しているものとする。画像50から検出した車両Pの位置の誤差の関係から、実際の車両Pの位置は、車両Qの位置を表す経由点4Bを囲む領域Zqよりも狭い領域Zp内に含まれることになる。すなわち、地図座標系における車両Pの位置の誤差は、車両Qの位置の誤差よりも小さくなる。なお、地図座標系は座標X2、Y2、及びZ2を用いた三次元座標系として表されるが、説明の便宜上、図9では地面に沿った面であるX2-Y2平面上での経路6を表している。
【0086】
このように、管制走行ルート地図で表される経路6上の各経由点4において、各々の経由点4に対応した場所を撮像する撮像センサ9Aにおける画素の解像度の違いにより、画像50から得られる車両7の位置や速度といった移動体情報にどの程度の誤差が発生するかという誤差情報は、収集装置9を用いて車両7同士が干渉しないように交通管制を行う管制装置10が交通管制を行う上で考慮しなければならない情報である。こうした誤差情報は、管制走行ルート地図で表される経路6上の経由点4に位置する車両7の移動体情報の確からしさを表すことから、「信頼度」と呼ばれる。
【0087】
信頼度付き管制走行ルート地図17とは、管制走行ルート地図で表される経路6上の経由点4毎に、画像50から検出した各経由点4における車両7の位置及び速度に対する誤差を表す信頼度を対応付けた地図データである。
【0088】
図4における大域経路計画部13は、目的地設定部11から受け付けた遵守車両7Aの車両固有情報と目的地、移動体情報Aに含まれる遵守車両7Aの位置情報と車両固有情報、及び信頼度付き管制走行ルート地図17に基づいて、遵守車両7A毎に信頼度付き管制走行ルート地図17上で遵守車両7Aの現在位置から目的地までの経路6である大域経路を探索する。すなわち、大域経路は、信頼度付き管制走行ルート地図17を構成する各区間の経由点列をつないだ経路6として表される。
【0089】
図10は、共に遵守車両7Aである車両P及び車両Qの大域経路の一例を示す図である。複数の経路6の中から車両Pの現在位置と車両Pの目的地をつなぐ1つの経路6Pが車両Pの大域経路として選択され、車両Qの現在位置と車両Qの目的地をつなぐ1つの経路6Qが車両Qの大域経路として選択された状況を表している。
【0090】
なお、大域経路計画部13における遵守車両7Aの大域経路の探索に用いる探索方法はどのような方法であってもよく、例えばダイクストラ探索といった公知の探索方法が用いられる。
【0091】
遵守車両7Aであれば予め目的地が決められるため、管制装置10が主体となって大域経路計画部13で遵守車両7Aの大域経路を計画することができる。遵守車両7Aは大域経路に基づいて決定した局所経路を走行することから、管制装置10は自らが計画した大域経路によって、遵守車両7Aの経路6を知ることができる。
【0092】
一方、非コネクテッド車両7Dの場合、管制装置10とデータ通信を行うことができないため、管制装置10にはそもそも非コネクテッド車両7Dが向かおうとしている目的地を取得する手段がない。したがって、管制装置10は、走行経路予測部14で非コネクテッド車両7Dの走行経路を予測する。
【0093】
具体的には、走行経路予測部14は、非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dに含まれる位置情報と速度、及び信頼度付き管制走行ルート地図17を用いて、非コネクテッド車両7Dが位置する経由点4と対応付けられている信頼度を考慮しながら非コネクテッド車両7Dの走行経路を予測する。例えば走行経路予測部14は、誤差を考慮して得られた非コネクテッド車両7Dの現在位置から特定の距離(例えば100m)までを、移動体情報Dで示される速度に各経由点4での誤差を反映した速度で走行するものとし、特定の距離に対応する車線8の区間の経由点列をつないだ経路6を非コネクテッド車両7Dの走行経路として干渉地点特定部15に通知する。
【0094】
しかしながら、非コネクテッド車両7Dの目的地は不明であるため、走行経路予測部14は、車線8が分岐する場合には大域経路と異なり、車線8が分岐する毎に枝分かれするすべての経路6の組み合わせを非コネクテッド車両7Dの走行経路として取り扱う。
【0095】
図11は、車両Pが非コネクテッド車両7Dである場合の走行経路の一例を示す図である。図11に示すように車両Pの走行先が2つに分岐している場合、走行経路予測部14は、車両Pが分岐点で何れの方向に分岐するか不明であるため、経路6P-1及び経路6P-2を共に車両Pの走行経路とする。こうした走行経路予測部14は、本実施の形態に係る予測部に相当する。
【0096】
なお、既に説明したように、非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dは収集装置9を通じて取得される。収集装置9で撮像される画像50には非コネクテッド車両7Dだけでなく、例えば遵守車両7Aも含まれる場合がある。この場合、収集装置9から取得した車両7の移動体情報は遵守車両7Aの移動体情報Aであるのか、それとも非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dであるのか区別がつかないことがある。したがって、走行経路予測部14は、例えば通信部12を通じて取得した遵守車両7Aの移動体情報Aに含まれる位置情報と、収集装置9から取得した車両7の移動体情報に含まれる位置情報が一致していると認められる車両一致判定範囲以内まで接近している場合、収集装置9から通知された移動体情報によって表される車両7は、通信部12から取得した移動体情報Aによって表される遵守車両7Aであると判定し、非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dと区別すればよい。
【0097】
干渉地点特定部15は、大域経路計画部13から受け付けた遵守車両7Aの大域経路と、走行経路予測部14で予測した非コネクテッド車両7Dの走行経路に基づいて、大域経路と走行経路が干渉する干渉地点Xを特定する。干渉地点特定部15は、特定した干渉地点Xと遵守車両7Aの大域経路を仮想交通ルール生成部16に通知する。こうした干渉地点特定部15は、本実施の形態に係る特定部に相当する。
【0098】
仮想交通ルール生成部16は、通信部12から受け付けた遵守車両7Aの移動体情報、及び干渉地点特定部15から受け付けた遵守車両7Aの大域経路と大域経路における干渉地点Xの位置情報を用いて、遵守車両7Aに対する仮想交通ルールを生成する。仮想交通ルール生成部16は、本実施の形態に係る生成部に相当する。
【0099】
具体的には、仮想交通ルール生成部16は、遵守車両7Aの大域経路における干渉地点Xで干渉しあう遵守車両7Aと他の車両7について、各々の干渉地点Xにおける干渉時間tを推定し、各干渉地点Xにおいて、車両7同士の交通効率を低下させることなく干渉地点Xでの車両7同士の干渉が回避されるような通過優先順位を遵守車両7Aに対して規定する。
【0100】
仮想交通ルール生成部16は、遵守車両7Aに対して大域経路と仮想交通ルールを含んだ管制情報を生成し、通信部12に対して遵守車両7Aと対応付けられた管制情報の送信依頼を行う。これにより、無線通信装置3から遵守車両7Aと対応付けられた管制情報が送信されることになる。
【0101】
なお、信頼度付き管制走行ルート地図17は必ずしも管制装置10に含まれている必要はなく、通信網5を通じて外部装置から取得するようにしてもよい。また、仮想交通ルールについての詳細な生成方法については後ほど説明することにする。
【0102】
既に説明したように、実際には同じ大きさの車両7であっても、車両7が表示されている画像50内の位置によって画像50上における車両7の大きさが異なるのは、撮像センサ9Aでの画素の解像度に違いが生じているためであることを説明した。ここでは、撮像センサ9Aにおける画素の解像度に違いが生じる理由について詳細に説明する。
【0103】
図8(B)に示した画像50の例のように、実際には同じ大きさの車両7であっても、画像50内の位置によって車両7の大きさが異なる理由としては、収集装置9のレンズの歪みの影響による1画素分の視野角の違いと、収集装置9と地面との位置関係によって、同一視野角内に含まれる地面の範囲(視野幅)が異なることの2つの理由が考えられる。
【0104】
収集装置9の設置台数を抑制するため、収集装置9に用いられるレンズにはできるだけ広い範囲を撮像することができる、例えば魚眼レンズのような広角レンズが用いられる。広角レンズとは焦点距離が35mmフィルム換算で約35mm相当以下のレンズのことをいう。
【0105】
レンズには歪みがないことが理想であるが、実際には歪みが含まれる。したがって、図12に示すように、レンズの光軸方向を撮像する1画素分の視野角αに比べて、レンズの光軸方向と成す角度が大きくなる方向(周辺方向)を撮像する1画素分の視野角βは広くなる。こうした傾向は、収集装置9のレンズに焦点距離が35mmフィルム換算で50mm前後の標準レンズを用いた場合よりも広角レンズを用いた場合の方が顕著に表れる。したがって、レンズの光軸方向を撮像する画素の解像度は、レンズの周辺方向を撮像する画素の解像度に比べて高くなる。
【0106】
次に、収集装置9と地面との位置関係によって視野幅に違いが生じる理由について説明するが、説明の便宜上、収集装置9には歪みのない理想的なレンズが用いられているものとする。この場合、図13に示すように、同じ視野角αであっても、収集装置9で撮像される視野幅は、収集装置9の撮像方向と地面が成す角度、及び収集装置9から地面までの距離によって変化する。
【0107】
図14は、こうした状況を説明した図である。図14(A)に示すように、地面に対してレンズの光軸が垂直に交わるように、地面から光軸方向に沿って距離L1だけ離れた位置にある収集装置9を収集装置9の基準位置とする。また、基準位置に取り付けられた収集装置9の視野角αにおける視野幅をR1とする。
【0108】
これに対して、図14(B)に示すように、地面から光軸方向に沿った距離は距離L1のまま、地面とレンズの光軸が成す角度が90度よりも小さい角度γとなるように収集装置9を移動させて地面を撮像した場合、地面から光軸方向に沿った距離は同じ距離L1であっても、視野角αにおける視野幅R2は基準位置にある収集装置9の視野角αに対する視野幅R1よりも広くなる。
【0109】
また、図14(C)に示すように、地面に対してレンズの光軸が垂直に交わるようにしたまま、地面から光軸方向に沿った距離が距離L1よりも長い距離L2となるように収集装置9を移動させて地面を撮像した場合、地面とレンズの光軸が成す角度は基準位置にある収集装置9と同じであっても、視野角αにおける視野幅R3は基準位置にある収集装置9の視野角αに対する視野幅R1よりも広くなる。すなわち、撮像センサ9Aの各々の画素が担う撮像範囲の方向の違いによって、画素の視野角に対する視野幅が異なることになる。したがって、撮像センサ9Aにおける画素の解像度に違いが生じる。
【0110】
図15は、収集装置9で撮像した実際の画像50の例であるが、説明したように画像50内の位置によって、車両7の大きさが変化していることがわかる。具体的には画像50の端部よりも解像度が高い画像50の中央部では車両7が大きく表示され、画像50の中央部よりも解像度が低い画像50の端部では車両7が小さく表示されている。
【0111】
これまで説明してきたように、管制装置10では、既に経由点4毎に信頼度が付加された信頼度付き管制走行ルート地図17を用いて非コネクテッド車両7Dの走行経路を予測し、遵守車両7Aの大域経路と非コネクテッド車両7Dの走行経路から車両7同士が干渉する干渉地点Xや干渉時間tを推定する。以降では、管制走行ルート地図の経由点4に付加される信頼度の生成方法について説明する。
【0112】
図16は、管制走行ルート地図の経由点4に付加される信頼度を生成する信頼度生成装置60の機能構成例を示す図である。
【0113】
図16に示すように、信頼度生成装置60は、物体検出部62、誤差推定部64、解像度算出部65、座標逆変換部67、及び信頼度算出部68の各機能部と、撮像センサ9A、撮像画像DB61、正解座標DB63、管制走行ルート地図66、及び信頼度DB69を含む。
【0114】
このうち撮像センサ9A、撮像画像DB61、物体検出部62、正解座標DB63、管制走行ルート地図66、及び信頼度DB69は必ずしも信頼度生成装置60に含まれる必要はなく、外部の装置に備えられているものを利用してもよい。また「DB」はデータベース(Database)の略語である。撮像センサ9Aは、管制システム1で用いられる設置済みの収集装置9の撮像センサ9Aを用いることが好ましいが、収集装置9と異なる別の装置の撮像センサ9Aを用いてもよい。ここでは一例として、管制システム1で用いられる設置済みの収集装置9の撮像センサ9Aを用いるものとする。
【0115】
撮像センサ9Aで車線8を走行する1台の車両7を撮像した後、撮像センサ9Aで撮像された画像50が撮像画像DB61に記憶される。
【0116】
物体検出部62は撮像画像DB61から1つの画像50を取得し、収集装置9の移動体検出部9Bと同様に公知の移動体検出手法を用いて、取得した画像50から車両7を検出する。こうした物体検出部62は、本実施の形態に係る信頼度生成装置60の検出部に相当する。
【0117】
誤差推定部64は、物体検出部62で画像50から検出された車両7の位置情報と、画像50における車両7の正解位置情報を用いて、物体検出部62で検出された画像50上における車両7の位置の検出誤差を推定する。
【0118】
車両7を撮像した撮像センサ9Aにおける画素の解像度の違いにより、画像50から得られる車両7の見かけ上の位置と実際の位置に対応した画像50上の位置の間には誤差が生じる。したがって、誤差推定部64は、画像50から検出した位置に車両7がいる場合に、画素の解像度の違いがなければ実際には画像50上のどの位置に車両7が表示されるかといった車両7の実際の位置情報を用いて、物体検出部62で検出された画像50上における車両7の位置の検出誤差を推定する。車両7の位置に対応した画像50内での実際の位置情報が正解位置情報であり、正解位置情報は車両7の位置毎に予め作成されて正解座標DB63に記憶されている。
【0119】
図17は、車両7の位置の検出誤差例を示す図である。図17(A)は、画像50から検出した車両7の位置を枠55で表した図である。図17(B)は、画像50から検出した車両7の位置に対応した正解位置情報を示す図であり、枠55Aが図17(A)の画像50から検出した車両7の正解位置を示している。
【0120】
したがって、図17(C)に示すように、誤差推定部64は画像50から検出した車両7の位置と、正解位置情報で表される車両7の正解位置を比較し、その差分を画像50から検出した車両7の位置の検出誤差とする。画像50における車両7の位置の検出誤差は、画像50から検出した車両7の位置と正解位置との差分に対応した画素数によって表される。
【0121】
一方、解像度算出部65は、解像度を撮像センサ9Aの画素毎に算出する。そのため、まず解像度算出部65は、撮像センサ9Aの撮像範囲に含まれる経路6上の各経由点4における位置情報を管制走行ルート地図66から取得し、地図座標系で表される各経由点4の位置情報を座標逆変換部67に通知する。
【0122】
座標逆変換部67は、地図座標系で表された位置を画像座標系で表される位置に変換する機能部であり、これにより、管制走行ルート地図66から取得した経路6上の各経由点4の位置が、画像50内の位置に変換される。本実施の形態では、地図座標系で表された位置を画像座標系で表される位置に変換することを「逆変換」という。
【0123】
図18は座標の逆変換例を示した図である。図18(A)は、地図座標系で表される経路6上の経由点4の例を示す図である。図18(B)は、図18(A)における経路6上の経由点4が存在する範囲の画像50を収集装置9で撮像した場合に、経路6上の各経由点4が画像50内のどの位置に表示されるのかを表す画像50の例である。
【0124】
解像度算出部65は、座標逆変換部67から画像50上における経由点4の位置情報を受け付けると、経由点4の撮像を担う撮像センサ9Aの画素の解像度(以降、「経由点4の解像度」という)を経由点4毎に算出する。これにより、管制走行ルート地図66上の経路6に対応する画素の解像度が得られる。なお、画像50内における経由点4の解像度の算出方法については後ほど説明する。
【0125】
信頼度算出部68は、誤差推定部64で推定された、画像50から検出した車両7の位置の検出誤差と、解像度算出部65で算出された、画像50内における各経由点4の解像度を用いて、画像50から検出された車両7の位置に最も近い画像50上の経由点4、すなわち、画像50から検出された車両7の位置に対応した経由点4を特定する。信頼度算出部68は、画像50から検出した車両7の位置の検出誤差に、当該車両7の位置に対応した経由点4の解像度を乗じることで、経由点4における車両7の位置の検出誤差を具体的な距離で表す。
【0126】
一方で、時系列に沿って撮像センサ9Aで撮像された時間的に隣接する画像50に対して、例えばオプティカルフローを適用することで画像50から車両7の速度が算出される。
【0127】
図19はオプティカルフローを用いて画像50から車両7の速度を算出する例について説明した図である。
【0128】
時系列に沿って撮像された時間的に隣接する図19(A)に示す画像50と図19(B)に示す画像50が存在する場合、一方の画像50に表示されている同じ車両7が、他方の画像50ではどの位置に移動しているのかといった車両7の位置の対応付けを画素単位で行い、各々の画像50の間で画素毎の対応関係を求める(図19(C))。画素毎の対応関係から得られる車両7を表す画素の移動量の平均と画像50の撮像間隔から、車両7の速度を算出することができる。
【0129】
しかしながら、車両7に画素分解能未満の移動量があったとしても、画像50からこの移動量を検出することができないため、算出した車両7の速度には誤差が含まれる。具体的には、画像50の撮像間隔を“Tint”とした場合、車両7を表す画素の移動量の最大誤差は1/Tint[画素/秒]となる。
【0130】
したがって、信頼度算出部68は、画像50内における車両7の位置に対応した経由点4の解像度に画素の移動量の最大誤差を乗じることで、画像50から検出された車両7の位置に対応した経由点4における速度の検出誤差を算出する。
【0131】
信頼度算出部68は、車両7の位置に対応した経由点4に、信頼度算出部68で算出した車両7の位置の検出誤差と車両7の速度の検出誤差を含む信頼度を対応付けて信頼度DB69に記憶する。信頼度DB69に記憶された信頼度は、本実施の形態に係る信頼度データに相当し、信頼度付き管制走行ルート地図17の各経由点4には、信頼度DB69に記憶された各経由点4に対応する信頼度が付加される。
【0132】
ここでは一例として、管制走行ルート地図66上の1つの経由点4に信頼度を対応付ける方法について説明したが、走行する車両7を繰り返し撮像センサ9Aで撮像することで、車両7の位置が異なる複数の画像50が得られる。したがって、各々の画像50における車両7の位置に対応した経由点4に信頼度生成装置60で算出した信頼度を付加することで、1台の収集装置9で撮像された画像50に含まれる経路6上のすべての経由点4に信頼度が付加される。また、管制システム1に含まれるすべての収集装置9の撮像センサ9Aで撮像した画像50に対して信頼度生成装置60で経由点4の信頼度を算出すれば、管制走行ルート地図66に含まれるすべての経路6の経由点4に信頼度が付加される。
【0133】
次に、管制装置10、信頼度生成装置60、及び遵守車両7Aの制御装置における各々の電気系統の要部構成例について説明する。
【0134】
図20は、管制装置10における電気系統の要部構成例を示す図である。図20に示すように、管制装置10は例えばコンピュータ30を用いて構成される。
【0135】
コンピュータ30は、図4に示した管制装置10に係る各機能部の処理を担うプロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)31、コンピュータ30を管制装置10として機能させる管制プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)32、CPU31の一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)33、不揮発性メモリ34、及び入出力インターフェース(I/O)35を備える。そして、CPU31、ROM32、RAM33、不揮発性メモリ34、及びI/O35がバス36を介して各々接続されている。
【0136】
不揮発性メモリ34は、不揮発性メモリ34に供給される電力が遮断されても、記憶したデータが維持される記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるが、ハードディスクを用いてもよい。また、不揮発性メモリ34は、必ずしもコンピュータ30に内蔵されている必要はなく、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリやメモリカードのようにコンピュータ30に着脱可能な可搬型の記憶媒体を用いてもよい。
【0137】
I/O35には、例えば通信ユニット37、入力ユニット38、及び表示ユニット39が接続される。
【0138】
通信ユニット37は通信網5に接続され、無線通信装置3及び収集装置9や、通信網5と接続された外部装置との間でデータ通信を行う通信プロトコルを備える。
【0139】
入力ユニット38は、管制装置10の操作者からの指示を受け付けてCPU31に通知するユニットであり、例えばボタン、タッチパネル、キーボード、及びマウス等が用いられる。指示が音声で行われる場合には、入力ユニット38としてマイクが用いられることがある。
【0140】
表示ユニット39は、CPU31によって処理された情報を表示する装置であり、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、及びプロジェクタ等が用いられる。
【0141】
管制装置10が無人のデータセンター等に設置されている場合のように情報の表示を必要としない状況では、表示ユニット39がI/O35に接続されないこともある。また、必要に応じてプリンタユニットのような他のユニットがI/O35に接続されることがある。
【0142】
なお、信頼度生成装置60における電気系統の要部構成は、図20に示した管制装置10における電気系統の要部構成例と同じ構成を備える。すなわち、信頼度生成装置60は例えばコンピュータ70を用いて構成され、コンピュータ70は、図16に示した信頼度生成装置60に係る各機能部の処理を担うプロセッサの一例であるCPU71、コンピュータ70を信頼度生成装置60として機能させる信頼度生成プログラムを記憶するROM72、CPU71の一時的な作業領域として使用されるRAM73、不揮発性メモリ74、及びI/O75を備える。そして、CPU71、ROM72、RAM73、不揮発性メモリ74、及びI/O75がバス76を介して各々接続されている。
【0143】
また、I/O75には、例えば通信ユニット77、入力ユニット78、及び表示ユニット79が接続される。通信ユニット77、入力ユニット78、及び表示ユニット79の機能は、管制装置10における通信ユニット37、入力ユニット38、及び表示ユニット39と同じ機能を有する。
【0144】
一方、図21は、遵守車両7Aの制御装置における電気系統の要部構成例を示す図である。遵守車両7Aの制御装置も管制装置10や信頼度生成装置60と同様に、例えばコンピュータ40を用いて構成される。
【0145】
コンピュータ40は、図2に示した遵守車両7Aの制御装置に係る各機能部の処理を担うプロセッサの一例であるCPU41、コンピュータ40を遵守車両7Aの制御装置として機能させる制御プログラムを記憶するROM42、CPU41の一時的な作業領域として使用されるRAM43、不揮発性メモリ44、及びI/O45を備える。そして、CPU41、ROM42、RAM43、不揮発性メモリ44、及びI/O45がバス46を介して各々接続されている。
【0146】
I/O45には、例えば通信ユニット47、入力ユニット48、表示ユニット49、内界センサ51、外界センサ52、及び走行装置53が接続される。
【0147】
通信ユニット47は無線通信装置3との間でデータ通信を行う通信プロトコルを備える。
【0148】
入力ユニット48は、遵守車両7Aの運転手からの指示を受け付けてCPU41に通知するユニットであり、例えばボタン、タッチパネル、及びポインティングデバイス等が用いられる。指示が音声で行われる場合には、入力ユニット48としてマイクが用いられることがある。
【0149】
表示ユニット49は、CPU41によって処理された情報を表示する装置であり、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、及びプロジェクタ等が用いられる。
【0150】
走行装置53は、CPU41の指示に従い、例えばハンドル、アクセル、及びブレーキのように車両7の走行状態に影響を与える操作装置の操作量を調整する装置であると共に、操作装置の操作量を遵守車両7Aの状態としてCPU41に通知する。内界センサ51及び外界センサ52の機能については、既に説明した通りである。
【0151】
次に、信頼度生成装置60の動作について詳細に説明する。
【0152】
図22は、信頼度の生成依頼を受け付けた場合に、信頼度生成装置60のCPU71によって実行される信頼度生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0153】
信頼度生成処理を規定する信頼度生成プログラムは、例えば信頼度生成装置60のROM72に予め記憶されている。信頼度生成装置60のCPU71は、ROM72に記憶される信頼度生成プログラムを読み込み、信頼度生成処理を実行する。なお、撮像画像DB61には、管制システム1に含まれるすべての収集装置9の撮像センサ9Aで走行する車両7を繰り返し撮像した複数の画像50が予め記憶されており、正解座標DB63にも、撮像画像DB61に記憶されている各画像50内の車両7の位置に対応した実際の車両7の位置情報が予め記憶されているものとする。
【0154】
まず、ステップS200において、CPU71は、撮像画像DB61から1つの画像50を取得し、公知の移動体検出手法を用いて、取得した画像50から車両7を検出する。
【0155】
ステップS210において、CPU71は、ステップS200で検出した車両7の位置に対応した正解位置情報を正解座標DB63から取得し、取得した正解位置情報に対応する位置とステップS200で検出した車両7の位置の差分を、画像50上における車両7の位置の検出誤差として推定する。
【0156】
ステップS220において、CPU71は、画像50内において車両7が位置している経由点4の解像度を算出する。
【0157】
既に説明したように、経由点4の解像度を算出するためには地図座標系で表された管制走行ルート地図66上の位置と、画像座標系で表された画像50上の位置の写像関係を定義する必要がある。この写像関係は、撮像センサ9Aにおける内部パラメータと外部パラメータから計算することが可能である。また、収集装置9の撮像範囲内にマークを置いて収集装置9でマークを撮像し、実空間でのマークの位置、すなわち、地図座標系でのマークの位置と、画像50内でのマークの位置、すなわち、画像座標系でのマークの位置を記録し、この対応付けから地図座標系と画像座標系の写像関係を定義してもよい。
【0158】
CPU71は予め定義された地図座標系と画像座標系の写像関係を参照して、それぞれ地図座標系で表される車両7が位置する経由点4(特定経由点4)の位置と、経路6に沿って特定経由点4と隣接する隣接経由点4の位置を、画像座標系で表される画像50内の位置に逆変換する。その上でCPU71は、地図座標系における特定経由点4と隣接経由点4の経由点間距離を管制走行ルート地図66の情報を用いて算出し、経由点間距離を画像50内における特定経由点4と隣接経由点4に対応した各々の画素間の距離で除すことで特定経由点4の解像度を算出する。なお、画像50内の画素間の距離は、例えば各々の画素を結ぶ直線と接触する画素数で表される。
【0159】
車両7は経路6に沿って移動することから、経路6上における各経由点4の解像度を算出すれば十分であるが、画像50に含まれる各画素の解像度を算出することもできる。例えばCPU71は、解像度の算出対象である画素(特定画素)と、特定画素に隣接する隣接画素が表す画像座標系上の位置を、地図座標系と画像座標系の写像関係を参照してそれぞれ地図座標系上の地点に変換し、地図座標系における特定画素に対応した地点と隣接画素に対応した地点の距離を算出すれば、この距離が特定画素の解像度となる。したがって、CPU71は、画像50内の各々の画素について上記の演算を繰り返すことで、画像50内のすべての画素の解像度を算出することができる。
【0160】
ステップS230において、CPU71は、ステップS210で推定した、画像50から検出した車両7の位置の検出誤差に、ステップS220で算出した、画像50内の車両7の位置に対応した経由点4の解像度を乗じることで、当該経由点4における車両7の位置の検出誤差を算出する。
【0161】
また、CPU71は、画像50内の車両7の位置に対応した経由点4の解像度に、画像50の撮像間隔Tintの逆数で表される画素の移動量の最大誤差「1/Tint[画素/秒]」を乗じることで、当該経由点4における車両7の速度の検出誤差を算出する。
【0162】
その上でCPU71は、画像50内の車両7の位置に対応した経由点4に、それぞれ算出した車両7の位置の検出誤差と車両7の速度の検出誤差を当該経由点4の信頼度として対応付ける。なお、画像50に表示される車両7の速度は、図19で説明したオプティカルフローを用いて、時間的に隣接する画像50間における車両7を表す画素の移動量の平均と画像50の撮像間隔から算出される。
【0163】
CPU71が、管制走行ルート地図66に含まれる各々の経由点4を走行している車両7の画像50に対してステップS200~S230の処理を繰り返し実行することで、管制走行ルート地図66のすべての経路6上におけるすべての経由点4に信頼度が付加される。以上により、図22の信頼度生成処理を終了する。
【0164】
次に、信頼度生成装置60で信頼度が付加された信頼度付き管制走行ルート地図17を用いて、車両7の交通管制を行う管制装置10の動作について説明する。
【0165】
図23は、各車両7から移動体情報を受け付けた場合に、管制装置10のCPU31によって実行される管制処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0166】
管制処理を規定する管制プログラムは、例えば管制装置10のROM32に予め記憶されている。管制装置10のCPU31は、ROM32に記憶される管制プログラムを読み込み、管制処理を実行する。
【0167】
なお、以降では説明の便宜上、2台の車両7(車両P及び車両Q)に注目して管制装置10の動作について説明するが、管制対象となる車両7が3台以上の場合であっても、各々の車両7について同様の処理を行えばよい。また、車両P及び車両Qの少なくとも1台は遵守車両7Aであるものとする。
【0168】
ステップS10において、CPU31は、受け付けた移動体情報の内容に基づいて、車両P及び車両Qの種類を判定する。例えばCPU31は、無線通信装置3から受信した移動体情報に対応する車両7は遵守車両7Aであると判定すればよい。また、CPU31は、収集装置9から受信した移動体情報に含まれる位置情報が、遵守車両7Aと判定した車両7の移動体情報に含まれる位置情報から車両一致判定範囲より離れている場合、当該移動体情報に対応する車両7は非コネクテッド車両7Dであると判定すればよい。
【0169】
ステップS20において、CPU31は、遵守車両7Aから受信した移動体情報Aに含まれる車両7の位置情報と遵守車両7Aの目的地に基づいて、遵守車両7Aの大域経路を生成する。
【0170】
ステップS30において、CPU31は、ステップS10で判定した車両P及び車両Qの何れか一方の種類が遵守車両7A以外、すなわち、非コネクテッド車両7Dであるか否かを判定する。車両P及び車両Qの何れか一方の種類が非コネクテッド車両7Dである場合にはステップS40に移行する。
【0171】
ステップS40において、CPU31は、非コネクテッド車両7Dから受信した移動体情報Dに含まれる位置情報と非コネクテッド車両7Dの速度に基づいて、非コネクテッド車両7Dの走行経路を生成する。
【0172】
なお、分岐点の手前の地点で非コネクテッド車両7Dの速度が減速した場合、分岐点を直進するよりも折れ曲がる蓋然性が高いことから、CPU31は、折れ曲がる方向に進む経路6だけを非コネクテッド車両7Dの走行経路として生成してもよい。
【0173】
一方、ステップS30の判定処理において車両P及び車両Qの何れも非コネクテッド車両7Dではないと判定された場合、ステップS20で既に車両P及び車両Qの大域経路が生成されていることから、ステップS40の処理を実行することなくステップS50に移行する。
【0174】
ステップS50において、CPU31は、車両Pの経路6を示す経由点が、車両Qの経路6を示す経由点から干渉範囲以内まで接近するような地点、すなわち、車両Pと車両Qの干渉地点Xを特定する。具体的には、CPU31は、ステップS20またはステップS40で取得した車両Pの大域経路若しくは走行経路(単に「車両Pの経路6」という)と、ステップS20またはステップS40で取得した車両Qの大域経路若しくは走行経路(単に「車両Qの経路6」という)が交差または合流する地点の経由点4や、車両Pの経路6と車両Qの経路6が干渉範囲以内まで接近して並走するような領域の経由点4を、車両Pと車両Qの干渉地点Xとして特定する。
【0175】
なお、図7に示したような干渉地点情報を参照することができる場合、CPU31は、車両Pと車両Qの各々の経路6に、干渉地点情報で干渉地点Xとして設定されている同一の経由点が含まれていれば、当該経由点4によって表される地点を車両Pと車両Qの干渉地点Xとしてもよい。
【0176】
ステップS60において、CPU31は、ステップS50で特定した車両Pと車両Qの各干渉地点Xについて、車両Pと車両Qの各経路6における経由点4の信頼度を反映した移動体情報を用いて車両Pと車両Qの干渉時間tを算出する。
【0177】
干渉時間tは、車両P及び車両Qのそれぞれの現在位置から干渉地点Xまでの経路6に沿った距離(以降、「干渉地点Xまでの距離」という)と、車両P及び車両Qのそれぞれの速度から算出することができる。しかしながら、既に説明したように、収集装置9が画像50から算出した非コネクテッド車両7Dの位置及び速度には検出誤差が含まれる。また、遵守車両7Aであっても交通事情等により一定の速度で走行することはできないため、実際には車両P及び車両Qの速度は変動し、速度から推定される各時刻における予想位置も変動する。
【0178】
したがって、“v”を車両P及び車両Qにおけるそれぞれの速度、“l”を干渉地点Xまでの距離、“δ1”及び“δ2”を車両P及び車両Qの速度変化に対応する正数のマージン、“ε”を他の値よりも0に近い正定数とすれば、車両P及び車両Qの速度の変動量を考慮した干渉地点Xにおける干渉時間tは(1)式で算出される。
【0179】
【数1】
【0180】
なお、tbeginは車両P及び車両Qが最も早く干渉地点Xを通過する場合の時刻であり、tendは、車両P及び車両Qが最も遅く干渉地点Xを通過する場合の時刻である。このように、車両P及び車両Qの各干渉地点Xにおける干渉時間tは、tbegin以上tend未満の期間で表される。以降では、車両Pの干渉地点Xにおける干渉時間tを「干渉時間tp」と表し、車両Qの干渉地点Xにおける干渉時間tを「干渉時間tq」と表す。
【0181】
(1)式で干渉地点Xにおける非コネクテッド車両7Dの干渉時間tを算出する場合には、CPU31は信頼度付き管制走行ルート地図17を参照し、干渉地点Xまでの経路6上に存在する各経由点4に付加された信頼度を用いて“δ1”及び“δ2”を決定すればよい。具体的には、CPU31は、非コネクテッド車両7Dの現在位置から干渉地点Xまでの経路6上に存在する各経由点4に対応付けられた位置及び速度の誤差をそれぞれ加算することで、干渉地点Xまでの経路6の信頼度を算出する。その上で、CPU31は、干渉地点Xまでの経路6の信頼度から得られる非コネクテッド車両7Dの干渉地点Xまでの距離の誤差や速度の誤差に基づいて、干渉時間tの変動幅を調整するマージンδ1及びマージンδ2を決定すればよい。
【0182】
なお、CPU31が干渉地点Xまでの経路6上に存在する各経由点4に対応付けられた位置及び速度の誤差を毎回加算して干渉地点Xまでの経路6の信頼度を算出しないでも済むように、例えば信頼度付き管制走行ルート地図17を構成する区間毎に、予め区間内の経路6上に存在する各経由点4の信頼度を加算しておき、区間の信頼度として対応付けておいてもよい。
【0183】
図24は、特定の干渉地点Xに対する車両Pの干渉時間tpと、車両Qの干渉時間tqの一例を示す図である。
【0184】
このようにして、CPU31は各干渉地点Xについて、車両Pの干渉時間tp及び車両Qの干渉時間tqを算出する。
【0185】
ステップS70において、CPU31は、ステップS50で特定した車両Pと車両Qの各干渉地点Xにおける通過優先順位を設定する。
【0186】
通過優先順位が上、すなわち、通過優先順位が優先に設定された車両7は、干渉地点Xを優先的に通過することができ、通過優先順位が下、すなわち、通過優先順位が非優先に設定された車両7は、通過優先順位が優先に設定された車両7の干渉地点Xにおける干渉時間tの間は、当該干渉地点Xに進入しないようにする制約が設定される。
【0187】
このように、各干渉地点Xにおける通過優先順位と干渉時間tを対応付け、車両Pと車両Qが走行することができる時間と場所を制約することで、各干渉地点Xにおいて車両Pと車両Qの干渉が回避されることになる。
【0188】
各干渉地点Xにおける通過優先順位と、通過優先順位が優先に設定された車両7の干渉時間tの対応付け、すなわち、通過優先順位が非優先に設定された車両7にとっての干渉地点Xへの進入禁止時間が仮想交通ルールとなる。仮想交通ルールは、車両7が干渉地点Xで他の車両7と干渉しないように、干渉時間tと干渉地点Xの位置情報を用いて車両7が走行することができる時間と場所を制約することから時空間制約の一例である。
【0189】
以降では、干渉地点Xにおいて通過優先順位が優先に設定されているのか、それとも非優先に設定されているのかを表す状態を“sx”で表す。干渉地点Xにおける状態sxは“0”または“1”の値をとり、CPU31は、干渉地点Xにおいて車両Pが優先の場合には状態sx=0に設定し、車両Qが優先の場合には状態sx=1に設定する。
【0190】
図25は、状態sx=0に設定された干渉地点Xでの仮想交通ルールを模式化した模式図である。
【0191】
この場合、車両Pの干渉時間tpがtp begin以上tp end未満までの期間で表されるとすれば、車両Pは、干渉時間tpの間は干渉地点Xを車両Qに優先して通過することができる。しかしながら、車両Qは、干渉時間tpに干渉地点Xに進入すると車両Pと干渉する恐れがあるため、干渉時間tpの間は干渉地点Xへ進入しないようにする必要がある。
【0192】
一方、図26は、状態sx=1に設定された干渉地点Xでの仮想交通ルールを模式化した模式図である。
【0193】
この場合、車両Qの干渉時間tqがtq begin以上tq end未満までの期間で表されるとすれば、車両Qは、干渉時間tqの間は干渉地点Xを車両Pに優先して通過することができる。しかしながら、車両Pは、干渉時間tqに干渉地点Xに進入すると車両Qと干渉する恐れがあるため、干渉時間tqの間は干渉地点Xへ進入しないようにする必要がある。
【0194】
すなわち、干渉地点Xでの通過優先順位が非優先に設定された車両7は、同じ干渉地点Xにおいて通過優先順位が優先に設定された車両7の干渉時間tに当該干渉地点Xへ進入しないようにすれば、車両7同士の干渉を回避して目的地まで到達することができる。
【0195】
このように、仮想交通ルールは、干渉地点Xにおける状態sxと干渉地点Xにおける進入禁止時間(すなわち、干渉地点Xにおいて通過優先順位が優先に設定されている車両7の干渉時間t)の組み合わせを干渉地点X毎に設定した情報によって表される。
【0196】
各干渉地点Xにおいて、車両P及び車両Qの通過優先順位をどのように決定するかは、目的関数C(S)を評価することによって行われる。
【0197】
目的関数C(S)は干渉地点Xで干渉する車両7の種類の組み合わせ毎に予め用意されており、不揮発性メモリ34に記憶される。CPU31は、ステップS10で判定した車両P及び車両Qの種類の組み合わせに対応した目的関数C(S)を用いて、車両P及び車両Qの通過優先順位を決定する。目的関数C(S)は、車両7が移動することによって発生する交通コストを表す関数である。交通コストとは、個々の車両7に対するコストだけでなく、車両7が走行することで他の車両7の走行に与える影響も加味したコストであり、車両7の交通効率を表す。
【0198】
したがって、CPU31は、目的関数C(S)が最小となるような状態ベクトルSを設定する。目的関数C(S)が最小になれば交通コストも最小となるため、管制システム1が管制を行う範囲の交通効率が向上する。
【0199】
なお、目的関数C(S)における状態ベクトルSは、管制システム1が管理する範囲内に車両Pと車両Qの干渉地点XがN地点(Nは正の整数)ある場合において、各干渉地点Xにおける状態sxを要素としたベクトルである。すなわち、状態ベクトルSはS=(s1, s2,・・, si,・・,sN)で表される。
【0200】
以降では、干渉地点Xで干渉する車両7の種類の組み合わせと対応付けられたそれぞれの目的関数C(S)を用いて、車両P及び車両Qの通過優先順位を決定する決定方法について説明する。
【0201】
まず、車両P及び車両Qが共に遵守車両7Aである場合の干渉地点Xにおける通過優先順位の決定方法について説明する。
【0202】
この場合、CPU31は、例えば(2)式で表されるような目的関数C1(S)を用いる。
【0203】
【数2】
【0204】
ここで、Csingle(S)は、各干渉地点Xを通過する車両P及び車両Qに対する管制制御を特徴付けるコストである。Cconsistency(S)は、車両P及び車両Qに設定される通過優先順位の時間方向の一貫性に関するコストである。Cmulti(S)は、干渉地点X間の整合性や相互作用に関するコストである。ωc及びωmは、目的関数C1(S)に対してCconsistency(S)、及びCmulti(S)が与える影響度を調整するための重みである。
【0205】
(2)式において、Csingle(S)は、各干渉地点Xを通過する車両7(この場合、車両P及び車両Q)に対して定義され、(3)式及び(4)式で表される。
【0206】
【数3】
【0207】
すなわち、Csingle(S)は、干渉地点X毎に干渉地点Xにおける干渉時間tが早い車両7、すなわち、干渉地点Xの予想通過時間が早い車両7の通過優先順位を優先に設定した場合に低くなるような値をとる。
【0208】
CPU31は、車両7が走行する車線8の優先度、車両7が走行する車線8における車列の長さや交通密度、及び車両7がこれまでに待機した時間を考慮してCsingle(S)の重み付けを行ってもよい。例えば(4)式によれば、ある干渉地点Xiにおいて車両Pの通過優先順位が優先に設定されているにも関わらず、車両Pの干渉時間tpが車両Qの干渉時間tqより遅い場合、Csingle(si;tp,tq)は“1”に設定されるが、更に、車両Pが非優先道路を走行している場合には、Csingle(si;tp,tq)が1より大きい値となるように重み付けを行えばよい。
【0209】
すなわち、本来、優先通過順位を優先に設定した方がよいと考えられる状況において、優先通過順位を非優先にするような設定、及び優先通過順位を非優先に設定した方がよいと考えられる状況において、優先通過順位を優先にするような設定を行った場合、CPU31は、Csingle(S)が大きくなるように重み付けを行ってもよい。
【0210】
(2)式において、車両7に設定される通過優先順位の時間方向の一貫性に関するコストを表すCconsistency(S)は、(5)式及び(6)式で表される。
【0211】
【数4】
【0212】
状態sxは、予め定めた時間単位(例えば1秒)毎に、時系列に沿ってその時点の移動体情報等を参考にしながら最適な値が設定されるが、sx (T)は時刻Tの時点で設定した状態sxを表し、sx (T-1)は時刻Tよりも1単位前の時刻に設定した状態sxを表す。
【0213】
同じ車両7に関して通過優先順位を表す優先と非優先が頻繁に切り替わらない方が、車両7は車線8を効率よく走行することができる。したがって、Cconsistency(S)は、時系列に沿って繰り返し計算された時間的に隣り合う状態sxが同じ値であれば小さくなるように設定され、異なる値であれば大きくなるような値をとる。
【0214】
ここでは一例として、1単位前の時刻に設定した状態sx (T-1)との関係性から状態sx (T)を設定した場合の一貫性に関するコストを算出したが、CPU31は、例えばM単位前(Mは2以上の正の整数)までの各時刻における状態sxとの関係性から状態sx (T)を設定した場合の一貫性に関するコストを算出してもよい。具体的には、CPU31は、干渉地点X毎に現在時刻からM単位前までの期間で優先と非優先が切り替わった数を算出し、各干渉地点Xにおける優先と非優先の切り替わり回数が多くなるにつれてCconsistency(S)の値が大きくなるように、Cconsistency(S)を計算してもよい。
【0215】
(2)式において、干渉地点X間の整合性や相互作用に関するコストを表すCmulti(S)は、(7)式及び(8)式で表される。
【0216】
【数5】
【0217】
ここで、wi,jは2つの干渉地点Xi、Xjの協調度を表す値であり、wi,j≧0に設定される。干渉地点Xの協調度とは、一方の干渉地点Xの通過優先順位を他方の干渉地点Xの通過優先順位に連動させて同じ状態に設定した方がよいと考えられる度合いのことを表す。
【0218】
i,j=0は干渉地点Xi、Xjが協調する必要がないことを表し、wi,jが大きくなるにつれて2つの干渉地点Xi、Xjを協調して扱った方がよいことを表す。
【0219】
図27は、複数の干渉地点Xを協調させて取り扱った方がよい例を示す図である。図27に示すように、非優先車線8Bを走行する車両Pが、他の車両7が走行する片側1車線の優先車線8Aを横切って直進する場合、車両Pは、干渉地点XA及び干渉地点XBを通過する必要がある。
【0220】
こうした状況において、車両Pに対して干渉地点XAにおける状態s1を“0”に設定し、干渉地点XBにおける状態s2を“1”に設定すると、干渉地点XBで他の車両7と干渉してしまうことを回避するため、車両Pが優先車線8A上に停止してしまうことがある。この場合、車両Pは優先車線8Aを走行する車両7の流れを妨げてしまうことになる。
【0221】
したがって、車両7が通過し始めたら通過し終えるまで停止しない方がよい箇所に複数の干渉地点Xが存在する場合には、各々の干渉地点Xの状態sxを同じ値に設定して、干渉地点X同士を協調させた方がよい。
【0222】
各々の干渉地点Xの組み合わせに対するwi,jは予め計算され、例えば不揮発性メモリ34に記憶されている。CPU31は、不揮発性メモリ34に記憶されているwi,jを参照してCmulti(S)を計算すればよい。
【0223】
ここでは一例として、2つの干渉地点Xの協調度に基づくCmulti(S)の計算について説明したが、3つ以上の干渉地点Xの協調度を用いてCmulti(S)の計算を行ってもよい。
【0224】
次に、車両Pが遵守車両7Aで、車両Qが非コネクテッド車両7Dである場合の干渉地点Xにおける通過優先順位の決定方法について説明する。
【0225】
この場合、CPU31は、例えば(9)式で表されるような目的関数C2(S)を用いる。
【0226】
【数6】
【0227】
func1(S)は、車両Qが干渉地点Xに近い位置にいる場合において、車両Qの通過優先順位と干渉回避の妥当性を表したコストであり、(10)式及び(11)式で表される。
【0228】
【数7】
【0229】
すなわち、車両Qが干渉地点Xから離れている場合には、干渉地点Xにおける干渉時間tが早い車両7を優先的に通過させるとコストが低く設定される一方で、管制装置10によって交通管制を行うことができない車両Qが干渉地点Xに近づいている場合には、車両Qの通過を優先させるとコストが低く設定される。これは、車両Qが干渉地点Xに近づいている場合には、運転手が手動で運転している車両Qの通過を優先させた方が、遵守車両7Aである車両Pを優先させた場合よりも干渉を回避することができる可能性が高くなるためである。車両Qが干渉地点Xに近い位置にいるとは、干渉地点Xから車両Qまでの距離lqが、手動運転では干渉の回避に急な操作が必要になると考えられる予め定めた閾値D1以下になっている状況をいう。また、(9)式においてωf1は、目的関数C2(S)に対してCfunc1(S)が与える影響度を調整するための重みである。
【0230】
なお、非コネクテッド車両7Dの場合、移動体情報Dは収集装置9の撮像センサ9Aで撮像された画像50から推定され、撮像センサ9Aの画素には解像度の違いが発生している。したがって、移動体情報Dから算出した干渉地点Xにおける非コネクテッド車両7Dの干渉時間tは、移動体情報Aから算出した遵守車両7Aの干渉時間tよりも誤差が大きくなる傾向を示す。
【0231】
そこで、(9)式のCsingle(S)の代わりに、Csingle(S)を修正したC^ single(S)を用いてもよい。C^ single(S)は(12)式で表される。
【0232】
【数8】
【0233】
ここで、σは移動体情報Dを用いて算出した非コネクテッド車両7Dにおける干渉時間tの予測誤差であり正数で表される。すなわち、移動体情報Dを用いて非コネクテッド車両7Dが最も早く干渉地点Xを通過する時刻として算出した時刻tq beginよりも更に予測誤差σだけ早く干渉地点Xを通過しても、また、非コネクテッド車両7Dが最も遅く干渉地点Xを通過する時刻として算出したtq endよりも更に予測誤差σだけ遅く干渉地点Xを通過しても車両P及び車両Qが干渉しないように、当初算出した干渉時間tよりも更に幅を持たせた干渉時間tに基づいて、Csingle(S)を補正する。
【0234】
CPU31は、予測誤差σを非コネクテッド車両7Dの走行経路上における経由点4の信頼度を用いて設定すればよい。
【0235】
上述したように、目的関数C(S)は車両7に対する管制制御の内容、干渉地点Xにおける通過優先順位の時間方向の一貫性、干渉地点X間の整合性や相互作用を反映したコスト、車両7から干渉地点Xまでの距離に基づいて考慮した安全性、及び車線8の優先度等を組み合わせて構成されるが、CPU31が各車両7の干渉地点Xにおける通過優先順位を決定するために用いる目的関数C(S)は上述した目的関数C(S)に限られない。交通環境、安全性、交通効率を表す他の要素を反映した目的関数C(S)を用いてもよい。
【0236】
CPU31は、取り得るすべての状態ベクトルSを目的関数C(S)に代入して目的関数C(S)を最小にする状態ベクトルSを決定してもよいが、勾配法等の公知の最適化手法を用いて、目的関数C(S)を最小にする状態ベクトルSを決定してもよい。更には、Cmulti(S)が目的関数C(S)に与える影響が、Csingle(S)及びCconsistency(S)が目的関数C(S)に与える影響より少なければ、CPU31は、目的関数C(S)からCmulti(S)を削除した部分問題に分割して、目的関数C(S)を最小にする状態ベクトルSを決定してもよい。
【0237】
また、状態ベクトルSをS=(Sa,Sb)、ただしSa=(s1,・・・,si)、Sb=(si+1,・・・,sN)と分割したときに、Cmulti(S)=Cmulti(Sa)+Cmulti(Sb)であれば、CPU31は、目的関数C(S)を部分問題C(Sa)とC(Sb)に分割して、それぞれを最小にする状態ベクトルSa、Sbを決定してもよい。
【0238】
図23のステップS80において、CPU31は遵守車両7Aに対して、ステップS50で特定した車両Pと車両Qの各干渉地点X、ステップS60で算出した各干渉地点Xにおける干渉時間t、及びステップS70で設定した各干渉地点Xにおける状態sxを用いて仮想交通ルールを生成する。具体的には、CPU31は、各干渉地点Xの位置を表す位置情報(例えば干渉地点ID)と、各干渉地点Xにおける状態sxと、状態sx及び干渉時間tから得られる各干渉地点Xへの進入禁止時間を対応付けた仮想交通ルールを生成する。
【0239】
ステップS90において、CPU31は、大域経路及び仮想交通ルールを含む管制情報を生成し、生成した管制情報を、無線通信装置3を通じて遵守車両7Aに送信する制御を行う。
【0240】
この場合、CPU31は、最新の移動体情報Aから遵守車両7Aの位置を把握し、遵守車両7Aの現在位置に最も近い無線通信装置3から管制情報が送信されるように、管制情報を送信する無線通信装置3を指定する。無線通信装置3の位置情報は、例えば不揮発性メモリ34に予め記憶されている。以上により、図23に示した管制処理を終了する。
【0241】
一方、図28は、管制装置10から管制情報を受信した場合に、遵守車両7Aの制御装置におけるCPU41によって実行される走行制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0242】
遵守車両7Aの走行制御処理を規定する制御プログラムは、例えば遵守車両7Aの制御装置におけるROM42に予め記憶されている。遵守車両7Aの制御装置におけるCPU41は、ROM42に記憶される制御プログラムを読み込み、遵守車両7Aの走行制御処理を実行する。
【0243】
ステップS100において、CPU41は、自身の遵守車両7Aにおける最新の位置情報を取得する。
【0244】
ステップS110において、CPU41は、自身の遵守車両7Aにおける最新の移動体情報を取得する。
【0245】
ステップS120において、CPU41は、ステップS100で取得した遵守車両7Aの位置情報、ステップS110で取得した遵守車両7Aの移動体情報A、及び管制装置10から受信した管制情報を用いて局所経路を生成する。
【0246】
具体的には、CPU41は、移動体情報Aに含まれる車線8上の状況を表す外界センサのセンサ値や、遵守車両7Aの状態を表す内界センサのセンサ値から、他の車両7と干渉しないように走行することができる大域経路に沿った実経路、すなわち、局所経路を決定する。この際、CPU41は、管制情報に含まれる仮想交通ルールを参照して、非優先に設定されている干渉地点Xでは干渉地点Xと対応付けられている進入禁止時間に当該干渉地点Xへ進入しないような局所経路を遵守車両7Aが走行するように、目標位置、目標姿勢、及び目標速度といった遵守車両7Aの制御内容を決定する。
【0247】
CPU41は、遵守車両7Aの目標位置及び目標姿勢から局所経路を計算した上で、仮想交通ルールを満たすように遵守車両7Aが局所経路を走行するための目標速度を計算してもよい。また、CPU41は、遵守車両7Aの目標位置、目標姿勢、及び目標速度を一緒に計算してもよい。
【0248】
CPU41は、局所経路をパラメトリック曲線で表現し、パラメトリック曲線の曲率やパラメトリック曲線上を安全に走行することのできる速度等の制約条件を満たすようにパラメトリック曲線を最適化してもよい。
【0249】
図29は仮想交通ルールを満たす局所経路の選択例を示す図である。図29の縦軸は遵守車両7Aの現在位置からの距離を表し、横軸は経過時間を表す。
【0250】
CPU41は、遵守車両7Aの位置情報、移動体情報A、及び大域経路から計算した経路6Aが、仮想交通ルールで指定された干渉地点Xを進入禁止時間に通過するような経路6であった場合、進入禁止時間に干渉地点Xを通過しないような別の経路6Bを再計算し、車両7が経路6Bに沿って移動するために必要となる各時刻における遵守車両7Aの制御内容を決定する。
【0251】
ステップS130において、CPU41は、ステップS120で生成した局所経路に沿って遵守車両7Aを移動させるための制御内容に従って、例えばハンドル、アクセル、ブレーキといった遵守車両7Aの走行を制御する走行装置の操作量を制御し、計画した局所経路通りに遵守車両7Aを走行させる。
【0252】
以上により、図28に示す遵守車両7Aの走行制御処理を終了する。
【0253】
管制情報に含まれる仮想交通ルールは、干渉地点Xにおける通過優先順位の時間方向の一貫性に関するコストや干渉地点X同士の協調度といった、管制システム1が管理する範囲の交通効率に影響を与えるパラメータを考慮して設定されている。したがって、遵守車両7Aが仮想交通ルールを満たすように経路6を走行することで、仮想交通ルールを受信しない非コネクテッド車両7Dも車線8を円滑に走行することができるようになる。結果として、各々の車両7の判断のみに基づいて車線8を走行する場合と比較して、管制システム1が車両7の管制を行う範囲では交通効率が向上する。
【0254】
更に、管制装置10は、撮像センサ9Aの各画素における解像度の違いから生じる信頼度を反映した非コネクテッド車両7Dの位置や速度を用いて仮想交通ルールを生成するため、収集装置9で撮像された画像50から検出した非コネクテッド車両7Dの位置や速度の検出誤差を考慮せずに仮想交通ルールを生成する場合と比較して、干渉地点Xを安全に通過することができる仮想交通ルールを生成することができる。
【0255】
以上、実施の形態を用いて本発明について説明したが、本発明は実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で処理の順序を変更してもよい。
【0256】
実施の形態では、一例として管制装置10における管制処理、遵守車両7Aにおける走行制御処理、及び信頼度生成装置60における信頼度生成処理をソフトウェアで実現する形態について説明したが、図22図23、及び図28に示したフローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはPLD(Programmable Logic Device)に実装し、ハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、各々の処理をソフトウェアで実現した場合と比較して、処理の高速化が図られる。
【0257】
このように、管制装置10のCPU31、車両7の制御装置におけるCPU41、及び信頼度生成装置60のCPU71を例えばASIC、FPGA、PLD、GPU(Graphics Processing Unit)、及びFPU(Floating Point Unit)といった特定の処理に特化した専用のプロセッサに置き換えてもよい。
【0258】
また、実施の形態における管制装置10のCPU31、車両7の制御装置におけるCPU41、及び信頼度生成装置60のCPU71の動作は、それぞれ1つのCPU31、CPU41、及びCPU71によって実現される形態の他、複数のCPU31、CPU41、及びCPU71によって実現されてもよい。更に、実施の形態における管制装置10のCPU31、車両7の制御装置におけるCPU41、及び信頼度生成装置60のCPU71の動作は、それぞれ物理的に離れ、通信回線で接続されたCPUの協働によって実現されるものであってもよい。
【0259】
また、上述した実施の形態では、管制プログラム、制御プログラム、及び信頼度生成プログラムがそれぞれROM32、ROM42、及びROM72にインストールされている形態について説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る管制プログラム、制御プログラム、及び信頼度生成プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば管制プログラム、制御プログラム、及び信頼度生成プログラムをCD(Compact Disc)-ROM、またはDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、管制プログラム、制御プログラム、及び信頼度生成プログラムをUSBメモリやメモリカード等の可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。
【0260】
更に、管制装置10、車両7の制御装置、信頼度生成装置60は、通信網5に接続される外部装置からそれぞれ管制プログラム、制御プログラム、及び信頼度生成プログラムをダウンロードするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0261】
1 管制システム、3 無線通信装置、4(4A、4B) 経由点、5 通信網、6(6A、6B、6P、6Q) 経路、7(P、Q) 車両、7A 遵守車両、7D 非コネクテッド車両、8 車線、8A 優先車線、8B 非優先車線、9 収集装置、9A 撮像センサ、9B 移動体検出部、9C 座標変換部、9D 移動体追尾部、10 管制装置、11 目的地設定部、12 通信部、13 大域経路計画部、14 走行経路予測部、15 干渉地点特定部、16 仮想交通ルール生成部、17 信頼度付き管制走行ルート地図、21 位置推定部、22 状態管理部、23 無線通信部、24 局所経路計画部、25 制御部、26 車両走行ルート地図、30(40、70) コンピュータ、31(41、71) CPU、32(42、72) ROM、33(43、73) RAM、34(44、74) 不揮発性メモリ、35(45、75) I/O、36(46、76) バス、37(47、77) 通信ユニット、38(48、78) 入力ユニット、39(49、79) 表示ユニット、50 画像、51 内界センサ、52 外界センサ、53 走行装置、55(55A、55P、55Q) 枠、60 信頼度生成装置、61 撮像画像DB、62 物体検出部、63 正解座標DB、64 誤差推定部、65 解像度算出部、66 管制走行ルート地図、67 座標逆変換部、68 信頼度算出部、69 信頼度DB、α(β) 視野角、γ 角度、σ 予測誤差、C(S)(C1(S)、C2(S)) 目的関数、K1~K7 地点、R1(R2、R3) 視野幅、S 状態ベクトル、sx 状態、t 干渉時間
図1
図2
図3
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図6
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