IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-車両の運転支援装置、プログラム 図1
  • 特許-車両の運転支援装置、プログラム 図2
  • 特許-車両の運転支援装置、プログラム 図3
  • 特許-車両の運転支援装置、プログラム 図4
  • 特許-車両の運転支援装置、プログラム 図5
  • 特許-車両の運転支援装置、プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】車両の運転支援装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20240521BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240521BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20240521BHJP
   B60H 1/00 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
G01C21/36
B60R16/02 640K
G08G1/0969
B60H1/00 101Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020074065
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021169987
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】東谷 光晴
(72)【発明者】
【氏名】池本 宣昭
(72)【発明者】
【氏名】伊東 悠太郎
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-128553(JP,A)
【文献】特開2014-035295(JP,A)
【文献】特開2012-236513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
B60R 16/00 - 17/02
G08G 1/00 - 99/00
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)の運転操作に関するアドバイス情報を報知部(60)から運転者に対して報知する運転支援装置(20)であって、
前記車両が走行する予測走行経路に応じた運転操作のアドバイス情報を計画する運転操作計画部(73)と、
前記車両の空調に関連する情報である空調関連情報を取得する情報取得部(71)と、
前記車両が前記予測走行経路を走行する際の予測走行時間又は予測走行距離を予測走行パラメータとして演算する走行パラメータ演算部(75)と、を備え、
前記情報取得部は、前記空調関連情報として、前記車両の空調装置が作動しているか否かの情報を取得するものであって、
前記運転操作計画部は、
前記空調関連情報に基づいて前記空調装置が作動していないと判断した場合、又は前記走行パラメータ演算部により演算される前記予測走行パラメータが所定の閾値以上である場合には、前記運転操作のアドバイス情報として、前記車両が前記予測走行経路を走行するのに必要な走行エネルギが最小化されるような第1アドバイス情報を計画し、
前記空調関連情報に基づいて前記空調装置が作動していると判断し、且つ前記走行パラメータ演算部により演算される前記予測走行パラメータが前記閾値未満である場合には、前記運転操作のアドバイス情報として、前記第1アドバイス情報よりも前記走行エネルギが大きくなるような第2アドバイス情報を計画する
車両の運転支援装置。
【請求項2】
前記運転操作のアドバイス情報には、前記車両のアクセル操作に関する情報、ステアリング操作に関する情報、ブレーキ操作に関する情報、シフト操作に関する情報、及びクラッチペダルの操作に関する情報のうちの少なくとも一つが含まれている
請求項1に記載の車両の運転支援装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記空調関連情報として、前記車両の外部の気温である外気温、及び前記空調装置に対して暖房運転が要求されているか否かを示す暖房要求情報を更に取得するものであって、
前記運転操作計画部は、前記情報取得部から前記暖房要求情報を取得するとともに、取得した前記暖房要求情報に基づいて前記空調装置に対して暖房運転が要求されていると判断した場合には、前記外気温と前記閾値との関係を示すマップを用いて、前記情報取得部により取得される前記外気温から前記閾値を演算し、
前記マップは、前記外気温と前記閾値とが負の相関関係を有するように設定されている
請求項1又は2に記載の車両の運転支援装置。
【請求項4】
前記情報取得部は、前記空調関連情報として、前記車両の外部の気温である外気温、及び前記空調装置に対して冷房運転が要求されているか否かを示す冷房要求情報を更に取得するものであって、
前記運転操作計画部は、前記情報取得部から前記冷房要求情報を取得するとともに、取得した前記冷房要求情報に基づいて前記空調装置に対して冷房運転が要求されていると判断した場合には、前記外気温と前記閾値との関係を示すマップを用いて、前記情報取得部により取得される前記外気温から前記閾値を演算し、
前記マップは、前記外気温と前記閾値とが正の相関関係を有するように設定されている
請求項1又は2に記載の車両の運転支援装置。
【請求項5】
前記運転操作計画部は、前記車両のナビゲーション装置に対して入力される入力情報、又は前記車両の過去の走行履歴の情報に基づいて前記予測走行経路を設定する
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項6】
車両(10)の運転操作に関するアドバイス情報を報知部(60)から運転者に対して報知する運転支援装置(20)のプログラムであって、
少なくとも一つの処理装置(70)に、
前記車両が走行する予測走行経路に応じた運転操作のアドバイス情報を計画させ、
前記車両の空調に関連する情報である空調関連情報を取得させ、
前記車両が前記予測走行経路を走行する際の予測走行時間又は予測走行距離を予測走行パラメータとして演算させ、
前記空調関連情報として、前記車両の空調装置が作動しているか否かの情報を取得させ、
前記空調関連情報に基づいて前記空調装置が作動していないと判断した場合、又は前記予測走行パラメータが所定の閾値以上である場合には、前記運転操作のアドバイス情報として、前記車両が前記予測走行経路を走行するのに必要な走行エネルギが最小化されるような第1アドバイス情報を計画させ、
前記空調関連情報に基づいて前記空調装置が作動していると判断し、且つ前記予測走行パラメータが前記閾値未満である場合には、前記運転操作のアドバイス情報として、前記第1アドバイス情報よりも前記走行エネルギが大きくなるような第2アドバイス情報を計画させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の運転支援装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の車両の運転支援装置がある。特許文献1に記載の運転支援装置は、通知ボタンと、運転状態検出センサと、電子制御ユニットと、情報提示ユニットとを備えている。通知ボタンは、運転者が自身のエコ運転に関する主観的なエコ感覚を入力する部分であって、入力されたエコ感覚に関する情報を電子制御ユニットに通知する。運転状態検出センサは、車両に生じる客観的な運転状態を取得する部分である。電子制御ユニットは、通知ボタンから運転者のエコ感覚が通知されると、その時点で運転状態検出センサにより取得される客観的な運転状態を用いて、運転者の主観的なエコ感覚と、客観的な運転状態に基づくエコ運転状態とを比較して、それらの差異を分析する。情報提示ユニットは、電子制御ユニットの分析結果に基づく運転操作のアドバイス情報を運転者に提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5761073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両には、車室内の空調を行う空調装置が搭載されている。空調装置は、直接的に又は間接的に車両の燃料及び電力の少なくとも一方を消費して駆動する。したがって、車両の消費エネルギには、車両の走行に用いられる走行エネルギだけでなく、空調装置の駆動に伴い消費される空調エネルギが存在する。この点、特許文献1に記載の運転支援装置は空調エネルギを考慮せずに運転操作のアドバイス情報を計画しているため、このアドバイス情報に基づいて運転者が運転しただけでは燃費や電費等の車両のエネルギ消費量を抑制することが難しい場合がある。具体的には以下の通りである。
【0005】
空調装置は、通常、その始動時に大きなエネルギを必要とする。そのため、目的地までの距離が短い場合には、走行エネルギが多少大きくなったとしても、短時間で目的地まで移動した方が空調エネルギを削減することが可能であるため、車両全体としてのエネルギ消費量を抑制することができる。
【0006】
一方、特許文献1に記載の運転支援装置のように走行エネルギのみを考慮して運転操作のアドバイス情報を計画した場合、車両が目的地に到達するまでの所要時間が長くなりやすい傾向がある。そのため、車両が近距離を移動するような場合、運転操作のアドバイス情報に基づいて運転者が車両を運転した結果、目的地に到達するまでの所要時間が長くなると、走行エネルギを小さくできる一方で、空調エネルギが大きくなる状況が想定される。このような状況では、車両全体としてのエネルギ消費量を抑制できない可能性がある。
【0007】
このように、空調装置の状態を全く考慮せずに運転操作のアドバイス情報を計画すると、運転者にとって適切な運転操作を報知できない可能性がある。
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、空調状態に応じた、より適切な運転操作のアドバイス情報を運転者に報知可能な車両の運転支援装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する車両の運転支援装置は、車両(10)の運転操作に関するアドバイス情報を報知部(60)から運転者に対して報知する運転支援装置(20)であって、車両が走行する予測走行経路に応じた運転操作のアドバイス情報を計画する運転操作計画部(73)と、車両の空調に関連する情報である空調関連情報を取得する情報取得部(71)と、車両が予測走行経路を走行する際の予測走行時間又は予測走行距離を予測走行パラメータとして演算する走行パラメータ演算部(75)と、を備える。情報取得部は、空調関連情報として、車両の空調装置が作動しているか否かの情報を取得する。運転操作計画部は、空調関連情報に基づいて空調装置が作動していないと判断した場合、又は走行パラメータ演算部により演算される予測走行パラメータが所定の閾値以上である場合には、運転操作のアドバイス情報として、車両が予測走行経路を走行する際に車両の走行に伴い消費される走行エネルギが最小化されるような第1アドバイス情報を計画し、空調関連情報に基づいて空調装置が作動していると判断し、且つ走行パラメータ演算部により演算される予測走行パラメータが閾値未満である場合には、運転操作のアドバイス情報として、第1アドバイス情報よりも走行エネルギが大きくなるような第2アドバイス情報を計画する
上記課題を解決するプログラムは、車両(10)の運転操作に関するアドバイス情報を報知部(60)から運転者に対して報知する運転支援装置(20)のプログラムであって、少なくとも一つの処理装置(70)に、車両が走行する予測走行経路に応じた運転操作のアドバイス情報を計画させ、車両の空調に関連する情報である空調関連情報を取得させ、車両が予測走行経路を走行する際の予測走行時間又は予測走行距離を予測走行パラメータとして演算させ、空調関連情報として、車両の空調装置が作動しているか否かの情報を取得させ、空調関連情報に基づいて空調装置が作動していないと判断した場合、又は予測走行パラメータが所定の閾値以上である場合には、運転操作のアドバイス情報として、車両が予測走行経路を走行する際に車両の走行に伴い消費される走行エネルギが最小化されるような第1アドバイス情報を計画させ、空調関連情報に基づいて空調装置が作動していると判断し、且つ予測走行パラメータが閾値未満である場合には、運転操作のアドバイス情報として、第1アドバイス情報よりも走行エネルギが大きくなるような第2アドバイス情報を計画させる。
【0009】
この構成によれば、空調関連情報に基づいて運転操作のアドバイス情報が変更されるため、空調状態に応じた、より適切な運転操作のアドバイス情報を運転者に報知することが可能となる。
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の車両の運転支援装置及びプログラムによれば、空調状態に応じた、より適切な運転操作のアドバイス情報を運転者に報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態の車両の概略構成を示すブロック図である。
図2図2(A)~(D)は、車両の走行距離D、走行エネルギPd、空調エネルギPa、及び車両全体の消費エネルギPcの推移を示すタイミングチャートである。
図3図3は、第1実施形態の運転支援装置の制御装置により用いられる、外気温Toutと空調エネルギPa(t)との関係を示すマップである。
図4図4は、第1実施形態の運転支援装置の制御装置により実行される処理の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態の運転支援装置の制御装置により実行される処理の手順を示すフローチャートである。
図6図6(A),(B)は、第2実施形態の運転支援装置の制御装置により暖房要求時及び冷房要求時にそれぞれ用いられる、外気温Toutと距離閾値Daとの関係を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、車両の運転支援装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、図1に示される第1実施形態の車両10の運転支援装置20について説明する。車両10は、エンジンを動力源とするエンジン車両や、モータジェネレータを動力源とする電動車両、エンジン及びモータジェネレータの両方を動力源とするハイブリッド車両等である。図1に示されるように、運転支援装置20は、ナビゲーション装置30と、車載センサ40と、通信装置50と、報知装置60と、制御装置70とを備えている。
【0013】
ナビゲーション装置30は、例えば運転者により目的地が設定された場合、車両10の現在地から目的地までの走行ルートを設定するとともに、その走行ルートを表示したり、音声で通知したりする装置である。ナビゲーション装置30には、車両が走行する道路に関する各種情報が予め記憶されている。ナビゲーション装置30に記憶されている道路情報には、路面の勾配や曲率、幅、通学路であるか否かの情報等が含まれている。
【0014】
車載センサ40は、車両10の各種状態量を検出するために車両10に搭載されている各種センサを総称したものである。車載センサ40には、例えば車両10の走行速度である車速を検出する車速センサや、車両10の加速度を検出する加速度センサ等が含まれている。
【0015】
通信装置50は、車両10とは別の外部機器と通信を行う装置である。外部機器には、周辺車両51やサーバ装置52、GPS(Global Positioning System)53等が含まれている。通信装置50は、V2V(Vehicle-to-Vehicle)通信やV2X(Vehicle-to-everything)通信を利用することにより、周辺車両51やサーバ装置52から各種情報を取得する。サーバ装置52から取得可能な情報には、道路上に設定される信号機の位置や交差点の位置等、公共の各種施設等のインフラストラクチャに関連する情報が含まれている。通信装置50は、GPS53との通信により車両10の現在地の情報等を取得することができる。
【0016】
報知装置60は車両10の運転者に対して各種報知を行う部分である。報知装置60には表示装置61やスピーカ装置62等が含まれている。表示装置61は各種画像を表示することで運転者に対して報知を行う。スピーカ装置62は音を発することで運転者に対して報知を行う。なお、表示装置61及びスピーカ装置62としてはナビゲーション装置30の表示機能や音声機能を流用してもよい。本実施形態では、報知装置60が報知部に相当する。
【0017】
制御装置70は、CPUやROM、RAM等を有するマイクロコンピュータを中心に構成されている。制御装置70は、ROMに予め記憶されたプログラムを実行することにより、運転者の運転を支援する運転支援制御を実行する。
具体的には、制御装置70は、ナビゲーション装置30、車載センサ40、及び通信装置50から各種情報を取得する。また、制御装置70は、車内ネットワークを介して空調制御装置80と通信可能に接続されており、空調制御装置80からも各種情報を取得する。空調制御装置80は車両10の空調装置81を制御する部分である。
【0018】
空調装置81は、車両10に設けられる空調ダクト内を流れる空調空気を暖気又は冷却して車室内に送風することにより車室内の暖房や冷房を行う装置である。
空調制御装置80は、CPUやROM、RAM等を有するマイクロコンピュータを中心に構成されている。空調制御装置80には、温度設定部82、空調スイッチ83、外気温センサ84、及び内気温センサ85のそれぞれの出力信号が取り込まれている。温度設定部82は、車両の乗員が車室内の温度を設定する部分であって、設定された温度の情報を空調制御装置80に送信する。空調スイッチ83は、空調装置81の作動及び停止を切り替える際に操作される部分であって、その操作情報に応じた信号を空調制御装置80に送信する。外気温センサ84は、車両の外部の温度である外気温Toutを検出する部分であって、検出された外気温Toutの情報を制御装置70及び空調制御装置80に送信する。内気温センサ85は、車両の内部の温度である内気温Tinを検出する部分であって、検出された内気温Tinの情報を制御装置70及び空調制御装置80に送信する。
【0019】
空調制御装置80は、温度設定部82、空調スイッチ83、外気温センサ84、及び内気温センサ85から送信される情報に基づいて空調装置81を制御する。詳しくは、空調制御装置80は、温度設定部82から送信される空調設定温度、外気温センサ84により検出される外気温Tout、及び内気温センサ85により検出される内気温Tin等に基づいて目標吹出温度を設定する。空調制御装置80は、車室内に吹き出される空調空気の実際の温度をセンサ等により検出するとともに、その空調空気の実際の吹出温度を目標吹出温度に追従させるように空調装置81を制御する。
【0020】
空調制御装置80は、制御装置70からの要求に応じて、空調に関する情報、例えば空調設定温度や空調スイッチ83のオン/オフ状態の情報を制御装置70に送信する。
制御装置70は、ナビゲーション装置30、車載センサ40、通信装置50、及び空調制御装置80から取得可能な情報に基づいて、運転者の運転を支援する運転支援制御を実行する。制御装置70は、運転支援制御の一つとして、車両10のエネルギ消費量を改善することが可能な運転操作を報知装置60から運転者に対して報知することで運転者の運転を支援する。
【0021】
次に、制御装置70により実行される運転支援制御について具体的に説明する。
図1に示されるように、制御装置70は、情報取得部71と、学習部72と、運転操作計画部73と、報知制御部74とを有している。
【0022】
情報取得部71は、ナビゲーション装置30や車載センサ40、通信装置50、空調制御装置80、外気温センサ84、内気温センサ85から各種情報を取得する。情報取得部71は、例えばGPS53から通信装置50を介して車両10の現在地の情報を取得したり、ナビゲーション装置30から車両10の目的地の情報を取得したりする。
【0023】
学習部72は、ナビゲーション装置30から車両10の走行経路の情報を取得することにより、車両10の過去の走行履歴の情報を蓄積している。学習部72は、車両10の走行履歴を学習することにより、車両10の将来の走行ルートや目的地等を予測する。例えば運転者が車両10を通勤に用いている場合には、所定の時間帯に車両10が特定の走行ルートを経て勤務先まで走行することとなるため、その通勤時の走行ルートが学習部72により学習される。この場合、学習部72は、車両10が所定の時間帯に出発することに基づいて、車両10の予測走行ルートが通勤時の走行ルートであると判断するとともに、車両10の予測目的地が通勤先であると判断する。
【0024】
運転操作計画部73は、情報取得部71により取得された情報や、学習部72により学習された車両10の予測走行ルート等の情報に基づいて、車両10のエネルギ消費量を改善することが可能な車両10の理想的な運転操作のアドバイス情報を計画する。運転操作のアドバイス情報の具体的な計画手順は以下の通りである。
【0025】
車両10が走行するためにタイヤ点で出力すべき力Fout(t)は、例えば以下の式f1により求めることができる。
Fout(t)=FRL(t)+m・g・sinθ(t)+m・a(t) (f1)
なお、式f1において、「t」は現在からの経過時間を示す。「FRL(t)」は車両10の走行抵抗を示す。「m」は車両10の重量を示す。「g」は重力加速度を示す。「θ(t)」は路面勾配を示す。路面勾配θ(t)は、上りの勾配を正の値で表し、下りの勾配を負の値で表す。「a(t)」は車両10の加速度を示す。
【0026】
ここで、走行抵抗FRL(t)は、一般的に、車速v(t)の二次関数で表すことができる。また、重量m及び重力加速度gは、例えば制御装置70のメモリに予め記憶されている既知の値を用いることができる。さらに、現在から所定時間経過後の路面勾配θ(t)は、ナビゲーション装置30に記憶されている道路情報から得ることができる。また、加速度a(t)は車速v(t)の微分値である。以上により、式f1の右辺は車速v(t)の関数に置き換えることができる。結果的に、Fout(t)は車速v(t)の関数として表すことが可能である。
【0027】
一方、現在地から目的地までの予測走行経路を車両10が走行するのに必要な走行エネルギPdは、上記の式f1で求められるFout(t)と車速v(t)とを用いて以下の式f2により求めることができる。
Pd=∫(Fout(t)・v(t))dt (f2)
ここで、上述の通り、Fout(t)は車速v(t)の関数で表すことができるため、式f2の右辺も車速v(t)の関数で表すことができる。
【0028】
また、現在地から目的地までの予測走行経路における車両10の走行距離Dと車速v(t)との間には以下の式f3が成立する。
D=∫v(t)dt (f3)
この式f3を満たし、且つ式f2の走行エネルギPdを最小化することが可能な車速v(t)を探索する処理を実行すれば、現在地から目的地までの時系列的な車速v(t)のデータを求めることができる。このようにして求められる時系列的な車速v(t)のデータが、車両10のエネルギ消費量を最小化することが可能な将来的な車速の推移を示す車速プロフィールとなる。
【0029】
ところで、車両10の消費エネルギには、走行エネルギPdだけでなく、空調装置81が消費する空調エネルギPaが存在する。そのため、車両10の走行エネルギPdのみに基づいて速度プロフィールv(t)を計画しただけでは、車両10の全体の消費エネルギを抑制することが難しい場合がある。
【0030】
具体的には、図2(A)に示されるように、車両10が現在地から目的地まで距離D10を走行する場合を考える。この場合、例えば図2(A)に実線C11で示されるように車両10が走行する場合には、図2(B)に実線Pd11で示されるように走行エネルギが推移する。一方、図2(A)に一点鎖線C12で示されるように車両10が走行する場合には、図2(B)に一点鎖線Pd12で示されるように走行エネルギが推移する。この場合、図2(B)に示される実線Pd11と一点鎖線Pd12とを比較して明らかなように、図2(A)に実線C11で示されるように車両10が走行するよりも、図2(A)に一点鎖線C12で示されるように車両10が走行した方が走行エネルギPdを小さくできる。このように、走行エネルギPdを小さくしようとすると、基本的には、目的地まで走行するのに要する時間が長くなる傾向がある。
【0031】
一方、図2(A)に実線C11で示されるように車両10が走行する場合、図2(C)に実線Pa11で示されるように空調エネルギPaが推移する。一方、図2(A)に一点鎖線C12で示されるように車両10が走行する場合には、図2(C)に一点鎖線Pa12に示されるように空調エネルギPaが推移する。このように、車両10の走行時間が長くなるほど、空調エネルギPaが大きくなる傾向がある。
【0032】
車両10の全体の消費エネルギPcは、図2(B)に示される走行エネルギと、図2(C)に示される空調エネルギとを加算したものとなる。したがって、図2(A)に実線C11で示されるように車両10が走行する場合には、図2(D)に実線Pc11で示されるように車両10の全体の消費エネルギが推移する。また、図2(A)に一点鎖線C12で示されるように車両10が走行する場合には、図2(D)に一点鎖線Pc12で示されるように車両10の全体の消費エネルギが推移する。図2(D)に示される消費エネルギPc11,Pc12を比較して明らかなように、車両10の全体の消費エネルギを小さくしようとすると、図2(A)に一点鎖線C12で示されるように車両10が走行するよりも、図2(A)に実線C11で示されるように車両10が走行した方が望ましい。
【0033】
このように、目的地に到達するまでの走行エネルギPdが多少増加したとしても、その分だけ車両10の走行時間を短くすることができれば空調エネルギPaを削減することができるため、結果として車両10の全体の消費エネルギPcを小さくできる状況が存在する。
【0034】
以上を考慮して、運転操作計画部73は、空調装置81が作動している場合、あるいは空調装置81の作動が予測される場合には、以下の式f4を用いて車速プロフィールv(t)を計画する。なお、式f4において、「Pc」は車両10の消費エネルギを示し、「Pa(t)」は空調エネルギを示す。
【0035】
Pc=∫(Fout(t)・v(t)+Pa(t))dt (f4)
なお、運転操作計画部73は、空調エネルギPa(t)として一定値を用いてもよいし、図3に示されるようなマップを用いて空調エネルギPa(t)を演算してもよい。図3に示されるマップは、外気温Toutと空調エネルギPa(t)との関係を示したものである。
【0036】
車両10の乗員は、一般的に、外気温Toutに基づいて空調装置81を駆動させるか否かを決定する。例えば外気温Toutが上側温度閾値Tb以上である場合には、車両10の乗員は車室内の温度を下げるべく空調装置81を冷房運転させることが多い。この場合、外気温Toutが高くなるほど空調装置81が車室内の冷房に要する空調エネルギが大きくなるため、外気温Toutに対して空調エネルギPa(t)は正の相関関係を有する。
【0037】
また、例えば外気温Toutが下側温度閾値Ta以下である場合には、車両10の乗員は車室内の温度を上げるべく空調装置81を暖房運転させることが多い。この場合、外気温Toutが低くなるほど空調装置81が車室内の暖房に要する空調エネルギが大きくなるため、外気温Toutに対して空調エネルギPa(t)は負の相関関係を有する。
【0038】
さらに、外気温Toutが「Ta<Tout<Tb」の関係を満たしている場合には、車両の乗員は空調装置81を作動させない可能性が高い。そのため、空調エネルギPa(t)は零となる。
本実施形態では、下側温度閾値Ta及び上側温度閾値Tbが予め実験等により求められている。運転操作計画部73は、図3に示されるマップを用いることにより、外気温Toutから空調エネルギPa(t)を演算する。
【0039】
また、運転操作計画部73は、V2VやV2Xにより他車両の空調エネルギを、通信装置50を介して取得した上で、取得した複数の空調エネルギの平均値を空調エネルギPa(t)として用いてもよい。更に、運転操作計画部73は、空調エネルギPa(t)に、自車両10の体格に基づく係数を乗じてもよい。この係数は、例えば通常の体格を有する車両では「1」に設定されるとともに、通常よりも大きい体格を有する車両では「1」よりも大きい値に設定される。
【0040】
運転操作計画部73は、空調装置81が作動している場合、あるいは空調装置81の作動が予測される場合には、上記の式f3を満たし、且つ式f4の左辺の消費エネルギPcを最小化することが可能な車速v(t)を探索する処理を実行することにより、現在地から目的地までの時系列的な車速v(t)のデータを求める。このようにして運転操作計画部73により求められる時系列的な車速v(t)のデータが、車両10のエネルギ消費量を最小化することが可能な将来的な車速の推移を示す車速プロフィールとなる。
【0041】
運転操作計画部73は、求められた車速プロフィールv(t)を実現可能な車両10の運転操作を計画する。運転操作計画部73により計画される運転操作の情報には、例えば所定時間経過後に車両のアクセルペダル及びブレーキペダルのいずれを操作すべきかを示す情報や、それぞれのペダルの踏み込み量を示す情報等が含まれている。以下、このようにして運転操作計画部73により計画される情報を「運転操作のアドバイス情報」と称する。
【0042】
図1に示される報知制御部74は、運転操作計画部73により計画された運転操作のアドバイス情報を運転者に対して報知すべく報知装置60を制御する。これにより、車速プロフィールv(t)に応じたアクセルペダルの操作方法及びブレーキペダルの操作方法が表示装置61に表示されたり、スピーカ装置62から音で発せられたりする。これらの表示装置61に表示される操作方法、及びスピーカ装置62から発せられる操作方法に基づいて運転者が車両10のアクセルペダルやブレーキペダルを操作することにより車両10が車速プロフィールv(t)に応じた車速で走行するようになるため、結果的に車両10のエネルギ消費量を改善することが可能となる。
【0043】
次に、図4を参照して、制御装置70により実行される運転支援制御の手順について総括する。なお、制御装置70は、図4に示される処理を所定の周期で繰り返し実行する。
図4に示されるように、情報取得部71は、ステップS10の処理として、車両10の目的地の情報を取得する。具体的には、情報取得部71は、運転者により設定された目的地の入力情報をナビゲーション装置30から取得する。あるいは、情報取得部71は学習部72から車両10の予測目的地の情報を取得する。
【0044】
運転操作計画部73は、ステップS10に続くステップS11の処理として、運転操作のアドバイス情報を計画する。具体的には、運転操作計画部73は、情報取得部71により取得されている車両10の現在地の情報と、ステップS10の処理で得られる車両10の目的地の情報とに基づいて、現在地から目的地までの予測走行経路における車両10の走行距離Dを演算する。
【0045】
また、情報取得部71は、空調制御装置80から空調スイッチ83のオン/オフ情報を取得している。本実施形態では、空調スイッチ83のオン/オフ情報が、車両10の空調に関連する情報に相当する。運転操作計画部73は、情報取得部71から空調スイッチ83のオン/オフ情報を取得した上で、空調スイッチ83がオン状態である場合には空調装置81が作動していると判断し、空調スイッチ83がオフ状態である場合には空調装置81が作動していないと判断する。運転操作計画部73は、空調装置81が作動していないと判断した場合には、上記の式f2及びf3を用いることにより、車両10の走行エネルギPdのみを最小化することが可能な第1車速プロフィールva(t)を求める。一方、運転操作計画部73は、空調装置81が作動していると判断した場合には、上記の式f3及び式f4を用いることにより、車両10の走行エネルギPd及び空調エネルギPaの両方を含む消費エネルギPcを最小化することが可能な第2車速プロフィールvb(t)を求める。
【0046】
なお、運転操作計画部73は、空調装置81の作動状態に関して、空調スイッチ83のオン/オフ情報を用いるという方法に代えて、空調装置81の動作の予測情報を用いて式f2及び式f4のいずれを用いるかを選択してもよい。例えば、情報取得部71により取得される空調装置81の作動状態を学習部72により学習した上で、その学習部72の学習情報に基づいて運転操作計画部73が空調装置81の動作を予測してもよい。また、空調装置81を作動させるか否かは、基本的には外気温Toutと相関があるため、運転操作計画部73は外気温Toutに基づいて空調装置81の動作を予測してもよい。この場合、情報取得部71が外気温センサ84から取得している外気温Toutの情報が、車両10の空調に関連する情報に相当する。
【0047】
運転操作計画部73は、このようにして求めた第1車速プロフィールva(t)又は第2車速プロフィールvb(t)に基づいて車両10の運転操作のアドバイス情報を計画する。
報知制御部74は、ステップS11に続くステップS12の処理として、運転操作計画部73により計画された運転操作のアドバイス情報を運転者に対して報知すべく報知装置60を制御する。
【0048】
以上説明した本実施形態の運転支援装置20によれば、以下の(1)~(4)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)運転支援装置20は情報取得部71と運転操作計画部73とを備える。運転操作計画部73は、車両10の現在地から目的地までの予測走行経路に応じた運転操作のアドバイス情報を計画する。情報取得部71は、車両10の空調に関連する情報として、空調スイッチ83のオン/オフ状態の情報を空調制御装置80から取得する。運転操作計画部73は、空調スイッチ83がオフ状態である場合には、上記の式f2に基づいて第1車速プロフィールva(t)を作成する。運転操作計画部73は、空調スイッチ83がオン状態である場合には、上記の式f4に基づいて第2車速プロフィールvb(t)を作成する。これにより、空調スイッチ83がオン状態である場合と、オフ状態である場合とで運転操作のアドバイス情報が変更される。この構成によれば、空調装置81の状態に基づいて運転操作のアドバイス情報が変更されるため、空調状態に応じた、より適切な運転操作のアドバイス情報を運転者に報知することができる。
【0049】
(2)運転操作のアドバイス情報には、車両10のアクセル操作に関する情報及びブレーキ操作に関する情報が含まれている。この構成によれば、車両のエネルギ消費量を改善可能な車両操作を運転者に容易に提供することができる。
(3)運転操作計画部73は、空調スイッチ83がオフ状態である場合には、車両10のエネルギ消費量の予測値として走行エネルギPdの予測値のみを用いた上で、その予測値が最小化されるように運転操作のアドバイス情報を計画する。本実施形態では、このアドバイス情報が第1アドバイス情報に相当する。また、運転操作計画部73は、空調スイッチ83がオン状態である場合には、車両10のエネルギ消費量の予測値として走行エネルギPd及び空調エネルギPaのそれぞれの予測値の合計値を用いた上で、その合計値が最小化されるように運転操作のアドバイス情報を計画する。本実施形態では、このアドバイス情報が第2アドバイス情報に相当する。この構成によれば、空調装置81が作動している場合、及び空調装置81が作動していない場合のそれぞれの場合において、より適切な運転操作のアドバイス情報を運転者に提供することができる。
【0050】
(4)運転操作計画部73は、車両10のナビゲーション装置30に対して入力される車両10の目的地の情報、又は学習部72により学習される車両10の過去の走行履歴の情報に基づいて、車両10の現在地から目的地までの予測走行経路を設定する。この構成によれば、車両10の予測走行経路を容易に設定することができる。
【0051】
(変形例)
次に、第1実施形態の運転支援装置20の変形例について説明する。
上記の式f2は、タイヤ点で出力すべき力Fout(t)に基づいて走行エネルギPdを求めた式となっている。しかしながら、車両10のパワートレインコンポーネントのエネルギがタイヤ点に力として伝達されるエネルギの伝達経路には損失が存在するため、これを考慮して走行エネルギPdを求めた方が、より正確な走行エネルギを求めることができる。
【0052】
例えば車両10が電動車両である場合には、バッテリの電力がインバータを介してモータジェネレータに供給されてモータジェネレータが駆動するとともに、そのモータジェネレータの出力が動力伝達系を介してタイヤに力として伝達される。この場合、パワートレインコンポーネントとはバッテリであり、パワートレインコンポーネントのエネルギとは、バッテリに蓄えられている電力である。このような電動車両では、バッテリからタイヤまでのエネルギ伝達経路に損失が存在する。また、バッテリの内部には内部損失が存在する。これらを考慮した場合、バッテリのエネルギがインバータ等を介してタイヤに伝達される際のエネルギ伝達効率を「η」とし、バッテリの内部損失を「LB」とするとき、走行エネルギPdaは、上記の式f2により求められるタイヤ点での必要エネルギPdを用いて例えば以下の式f5により求めることができる。
【0053】
Pda=Pd/η+LB (f5)
上記の式f2により演算される走行エネルギPdに代えて、この式f5により演算される走行エネルギPdaを用いて上記の第1車速プロフィールva(t)及び第2車速プロフィールvb(t)を作成すれば、より適切な車速プロフィールを演算することが可能となる。
【0054】
<第2実施形態>
次に、運転支援装置20の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態の運転支援装置20との相違点を中心に説明する。
例えば車両10が寒冷地を走行するような場合には、車両10の始動時から所定時間が経過するまでの期間に空調エネルギPaが特に大きくなり易い。したがって、現在地から目的地までが近距離である場合には、走行エネルギPdが多少増加したとしても、短時間で目的地まで走行した方が、車両10の全体の消費エネルギPcは結果的に小さくなる。この点に着目し、本実施形態の運転支援装置20は、現在地から目的地までの予測走行経路における車両10の予測走行距離が所定の距離閾値以上である場合には、式f2の走行エネルギPdを最小化することが可能な第1車速プロフィールva(t)を作成する。これに対し、本実施形態の運転支援装置20は、車両10の予測走行距離が所定の距離閾値未満である場合には、第1車速プロフィールv(t)よりも速い第2車速プロフィールvb(t)を作成する。これにより、車両10の予測走行距離が所定の距離閾値未満である場合には、第1車速プロフィールva(t)を用いる場合よりも早く車両10が目的地に到達できるため、空調エネルギPaを小さくすることができ、結果として車両10の全体の消費エネルギPcを小さくすることができる。以下、本実施形態の運転支援装置20の具体的な構成について説明する。
【0055】
図1に破線で示されるように、制御装置70は走行パラメータ演算部75を更に備えている。走行パラメータ演算部75は、情報取得部71がナビゲーション装置30から取得している車両10の目的地の情報、又は学習部72により学習されている車両10の過去の走行履歴の情報等に基づいて、現在地から目的地までの車両10の予測走行経路の走行距離Dを演算する。走行パラメータ演算部75は、車両10の予測走行経路の走行距離Dに代えて、現在地から目的地までの車両10の予測走行経路の走行時間を演算してもよい。本実施形態では、予測走行距離D又は予測走行時間が予測走行パラメータに相当する。
【0056】
次に、図5を参照して、制御装置70により実行される運転支援制御の手順について具体的に説明する。なお、制御装置70は、図5に示される処理を所定の周期で繰り返し実行する。また、図5において、図4に示される処理と同一の処理には同一の符号を付すことにより重複する説明は割愛する。
【0057】
図5に示されるように、運転操作計画部73は、ステップS10に続くステップS20の処理として、空調装置81が作動しているか否かを判断する。例えば、運転操作計画部73は、情報取得部71から空調スイッチ83のオン/オフ情報を取得するとともに、空調スイッチ83がオン状態である場合には、ステップS20で肯定的な判断を行う。この場合、運転操作計画部73は、ステップS21の処理として、走行パラメータ演算部75により演算される予測走行距離Dが所定の距離閾値Da未満であるか否かを判断する。なお、運転操作計画部73は、ステップS21の処理において、走行パラメータ演算部75により演算される予測走行時間が所定の時間閾値未満であるか否かを判断してもよい。本実施形態では、距離閾値Da又は時間閾値が所定の閾値に相当する。
【0058】
運転操作計画部73は、ステップS20の処理で否定的な判断を行った場合、すなわち空調装置81が作動していない場合には、ステップS23の処理を実行する。また、運転操作計画部73は、ステップS21の処理で否定的な判断を行った場合、すなわち車両10の走行距離Dが距離閾値Da以上である場合にも、同様にステップS23の処理を実行する。運転操作計画部73は、ステップS23の処理として、第1車速プロフィールva(t)を作成する。具体的には、運転操作計画部73は、上記の式f2及び式f3を用いて第1実施形態と同様の処理を実行することにより、第1車速プロフィールva(t)を作成する。
【0059】
また、運転操作計画部73は、ステップS20の処理及びステップS21の処理で共に肯定的な判断を行った場合には、すなわち空調装置81が作動しており、且つ車両10の予測走行距離Dが距離閾値Da未満である場合には、ステップS22の処理として、第2車速プロフィールvb(t)を作成する。第2車速プロフィールvb(t)は、例えば第1車速プロフィールva(t)の時系列的な車速データに対して、予め定められた「1」以上の値を乗算することにより求められる。
【0060】
運転操作計画部73は、このようにして求めた第1車速プロフィールva(t)又は第2車速プロフィールvb(t)を求めた上で、その第1車速プロフィールva(t)又は第2車速プロフィールvb(t)に基づいて車両10の運転操作のアドバイス情報を計画する。
【0061】
報知制御部74は、ステップS22の処理又はステップS23の処理に続くステップS12の処理として、運転操作計画部73により計画された運転操作のアドバイス情報を運転者に対して報知すべく報知装置60を制御する。
以上説明した本実施形態の運転支援装置20によれば、上記の(1),(2),(4)に示される作用及び効果に加え、以下の(5)に示される作用及び効果を得ることができる。
【0062】
(5)運転操作計画部73は、空調スイッチ83がオフ状態である場合、又は走行パラメータ演算部75により演算される予測走行距離Dが距離閾値Da以上である場合には、第1車速プロフィールva(t)を作成した上で、その第1車速プロフィールva(t)に基づいて運転操作のアドバイス情報を計画する。本実施形態では、このアドバイス情報が第1アドバイス情報に相当する。また、運転操作計画部73は、空調スイッチ83がオン状態であり、且つ走行パラメータ演算部75により演算される予測走行距離Dが距離閾値Da未満である場合には、第1アドバイス情報よりも走行エネルギPdが大きくなるような第2車速プロフィールvb(t)を作成した上で、その第2車速プロフィールvb(t)に基づいて運転操作のアドバイス情報を計画する。本実施形態では、このアドバイス情報が第2アドバイス情報に相当する。この構成によれば、上記のf4に示される車両10の消費エネルギPcを最小化することが可能な車速v(t)を探索するといった処理負担の大きい演算を行う必要がなくなるため、より容易に運転操作のアドバイス情報を計画することができる。
【0063】
(変形例)
次に、第2実施形態の運転支援装置20の変形例について説明する。
本変形例の運転操作計画部73は、距離閾値Daを、情報取得部71により取得されている車両10の空調に関連する情報に基づいて可変設定する。具体的には、運転操作計画部73は、空調関連情報として外気温Toutを用いる場合には、図6(A),(B)に示されるようなマップを用いて距離閾値Daを変化させる。
【0064】
図6(A)は、空調装置81に対して暖房運転が要求されている場合に用いられるマップである。図6(A)に示される下側温度閾値Taは、車両10の乗員が空調装置81を暖房運転させると予想される外気温Toutの上限値である。図6(A)に示されるマップでは、外気温Toutが低くなるほど、すなわち空調装置81の暖房運転に要する空調エネルギPaが大きくなるほど、距離閾値Daが大きくなるように設定される。よって、図6(A)に示されるマップでは、外気温Toutと距離閾値Daとが負の相関関係を有するように設定されている。
【0065】
図6(B)は、空調装置81に対して冷房運転が要求されている場合に用いられるマップである。図6(B)に示される上側温度閾値Tbは、車両10の乗員が空調装置81を冷房運転させると予想される外気温Toutの下限値である。図6(B)に示されるマップでは、外気温Toutが高くなるほど、すなわち空調装置81の冷房運転に要する空調エネルギPaが大きくなるほど、距離閾値Daが大きくなるように設定される。よって、図6(A)に示されるマップでは、外気温Toutと距離閾値Daとが正の相関関係を有するように設定されている。
【0066】
情報取得部71は、空調装置81に対して暖房運転が要求されているか否かを示す暖房要求情報、及び空調装置81に対して冷房運転が要求されているか否かを示す冷房要求情報を空調制御装置80から取得する。運転操作計画部73は、情報取得部71から暖房要求情報を取得するとともに、取得した暖房要求情報に基づいて空調装置81に対して暖房運転が要求されていると判断した場合には、図6(A)に示されるマップを用いて外気温Toutから距離閾値Daを演算する。また、運転操作計画部73は、情報取得部71から冷房要求情報を取得するとともに、取得した冷房要求情報に基づいて空調装置81に対して冷房運転が要求されていると判断した場合には、図6(B)に示されるマップを用いて外気温Toutから距離閾値Daを演算する。
【0067】
本変形例の構成によれば、外気温Toutの変化に応じて、換言すれば空調エネルギPaの変化に応じて距離閾値Daが変化するため、距離閾値Daが一定値である場合と比較すると、空調エネルギPaの大きさに応じた、より適切な距離閾値Daを設定することができる。結果的に、走行エネルギPdを最小化することが可能な第1車速プロフィールva(t)と、走行エネルギPd及び空調エネルギPaの合計値を最小化することが可能な第2車速プロフィールvb(t)のいずれを選択するかを空調エネルギPaの大きさに応じて、より適切に切り替えることができる。結果的に、車両10の全体の消費エネルギPcを、より的確に低減することが可能となる。
【0068】
<他の実施形態>
なお、各実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・第2実施形態の運転操作計画部73は、図5に示されるステップS22の処理において、上記の式f3及び式f4を用いて第1実施形態と同様の処理を実行することで、第2車速プロフィールvb(t)を作成してもよい。
【0069】
・報知装置60としては、表示装置61やスピーカ装置62に限らず、例えば図1に破線で示されるような振動装置63を用いることができる。振動装置63は、運転者に対して各種の振動を与えることが可能な装置である。要は、報知装置60は、運転者に対して何らかの手段で報知を行うことが可能な装置であればよい。
【0070】
・運転操作のアドバイス情報には、アクセル操作に関する情報やブレーキ操作に関する情報に限らず、ステアリング操作に関する情報、シフト操作に関する情報、及びクラッチペダルの操作に関する情報等が含まれていてもよい。
・本開示に記載の制御装置70及びその制御方法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置70及びその制御方法は、1つ又は複数の専用ハードウェア論理回路を含むプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置70及びその制御方法は、1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ又は複数のハードウェア論理回路を含むプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。専用ハードウェア論理回路及びハードウェア論理回路は、複数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路により実現されてもよい。
【0071】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0072】
10:車両
20:運転支援装置
60:報知装置(報知部)
71:情報取得部
73:運転操作計画部
75:走行パラメータ演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6