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特許7491039色変化度合い推定システム、色変化度合い推定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】色変化度合い推定システム、色変化度合い推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/90 20170101AFI20240521BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G06T7/90 Z
G01N21/27 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020077315
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021174222
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】千葉 崇人
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 紘一
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴也
(72)【発明者】
【氏名】稲村 崇
(72)【発明者】
【氏名】天野 奈々絵
【審査官】山田 辰美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-128273(JP,A)
【文献】特開2007-142530(JP,A)
【文献】特開2019-207179(JP,A)
【文献】特開2019-029470(JP,A)
【文献】特開2013-258455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体が撮像された物体撮像画像から、当該物体撮像画像における所定の領域の画素値を取得する画素値取得部と、
前記領域の色の変化度合いに対応して、前記所定の領域毎に予め取得されている色特性情報である変化色特性情報に基づいて、前記所定の領域毎の参照画素値を前記変化色特性情報の各々に対応して算出する参照画素値算出部と、
前記参照画素値の各々と前記画素値とを比較して、当該画素値に対応する前記変化色特性情報を抽出し、抽出した当該変化色特性情報に対応する変化度合いを、前記物体の色の変化度合いとして推定する変化度合推定部と
を備えることを特徴とする色変化度合い推定システム。
【請求項2】
前記所定の領域が、前記色特性情報の変化特性が異なる少なくとも2個以上の対象領域として設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の色変化度合い推定システム。
【請求項3】
前記変化度合推定部が、
前記画素値と、前記2個以上の対象領域の各々の前記参照画素値とのそれぞれの比の組合せが最も近い前記参照画素値の算出に用いられた前記変化色特性情報を抽出する
ことを特徴とする請求項2に記載の色変化度合い推定システム。
【請求項4】
前記参照画素値算出部が、
前記変化色特性情報と、前記物体撮像画像を撮像した撮像装置の分光感度情報である撮像装置分光感度情報と、複数の光源の放射光の光源分光分布の各々とにより、前記参照画素値を算出し、
前記変化度合推定部が、前記参照画素値の各々と前記画素値との比較から、前記変化色特性情報とともに、前記物体撮像画像が撮像された環境の光源の前記光源分光分布を推定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の色変化度合い推定システム。
【請求項5】
前記変化色特性情報が、
前記変化度合いに対応した前記領域の分光反射率を示す情報である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の色変化度合い推定システム。
【請求項6】
品毎に、前記変化度合いと、当該変化度合いが示す劣化情報との対応を示す物品劣化情報データベースと、
前記変化度合いに対応した前記物品の前記劣化情報を、前記物品劣化情報データベースから抽出してとユーザに提供する劣化情報提供部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の色変化度合い推定システム。
【請求項7】
画素値取得部が、物体が撮像された物体撮像画像から、当該物体撮像画像における所定の領域の画素値を取得する画素値取得過程と、
参照画素値算出部が、前記領域の色の変化度合いに対応して、前記所定の領域毎に予め取得されている色特性情報である変化色特性情報に基づいて、前記所定の領域毎の参照画素値を前記変化色特性情報の各々に対応して算出する参照画素値算出過程と、
変化度合推定部が、前記参照画素値の各々と前記画素値とを比較して、当該画素値に対応する前記変化色特性情報を抽出し、抽出した当該変化色特性情報に対応する変化度合いを、前記物体の色の変化度合いとして推定する変化度合い推定過程と
を含むことを特徴とする色変化度合い推定方法。
【請求項8】
コンピュータを、
物体が撮像された物体撮像画像から、当該物体撮像画像における所定の領域の画素値を取得する画素値取得手段、
前記領域の色の変化度合いに対応して、前記所定の領域毎に予め取得されている色特性情報である変化色特性情報に基づいて、前記所定の領域毎の参照画素値を前記変化色特性情報の各々に対応して算出する参照画素値算出手段、
前記参照画素値の各々と前記画素値とを比較して、当該画素値に対応する前記変化色特性情報を抽出し、抽出した当該変化色特性情報に対応する変化度合いを、前記物体の色の変化度合いとして推定する変化度合い推定手段
として動作させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の色の変化の程度を推定する色変化度合い推定システム、色変化度合い推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の各々は、物体を構成するインキ、顔料、染料、基材、材料などに含まれる成分が温度や光などの環境によって化学変化を起こすことにより、物体の色が変化することが知られている。
また、物体の色の変化を観察することにより、物体の劣化、すなわち機能低下の程度の判定を行なうことができる。
しかし、色の変化は、経時的な退色として連続的に徐々に変化していくため、通常観察している場合、その変化を人間の目で検知することが困難である。
【0003】
この対応策としては、ユーザが、劣化していない状態の同一の物体(例えば、新品)と比較することにより、色が環境により初期状態に対して変化していることが認識できる。
また、経時的な色の変化の認識に関しては、時間変化による油絵具の分光反射率の変化に基づいて、油絵具の経年劣化における油絵の描画の状態を可視化させる技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-078598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術において、物体の色の変化を確認する際に、対象の物体(例えば、物品)の色の変化を検知する度に、対象物体と同一の色で配色され、かつ色が変化していない初期状態の物体を取得する必要がある。
しかしながら、物体の生産が終了するなどして、色が変化していない初期状態の同一の物体を取得できない場合、対象物体の色の変化の検知はできなくなる。
【0006】
さらに、新品との色の比較において、初期状態から色が変化したか否かの検知は行なえるが、色がどの程度変化したかの定量的な変化の度合い(以下、変化度合い)の検知を行なうことができない。
また、特許文献1に記載の技術では、油絵の経時変化を可視化させて、段階的に色の変化を認識させることはできるが、物体の色の変化度合いを定量的に検知する用途には用いることはできない。
【0007】
また、初期状態から色が変化したか否かの検知において、一般的なユーザが自身で微妙な色の変化を視認することは困難である。
このため、専門的な知識を有する業者に依頼して、物体の劣化の判定を行なう必要があり、ユーザに費用および手間が発生する。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、物体(例えば、物品)の環境による色の変化を定量的に検知し、物体の機能劣化の判定に用いる色変化の度合の推定を容易に、かつ安価に行なうことができる色変化度合い推定システム、色変化度合い推定方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の色変化度合い推定システムは、物体が撮像された物体撮像画像から、当該物体撮像画像における所定の領域の画素値を取得する画素値取得部と、前記領域の色の変化度合いに対応して、前記所定の領域毎に予め取得されている色特性情報である変化色特性情報に基づいて、前記所定の領域毎の参照画素値を前記変化色特性情報の各々に対応して算出する参照画素値算出部と、前記参照画素値の各々と前記画素値とを比較して、当該画素値に対応する前記変化色特性情報を抽出し、抽出した当該変化色特性情報に対応する変化度合いを、前記物体の色の変化度合いとして推定する変化度合推定部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の色変化度合い推定システムは、前記所定の領域が、前記色特性情報の変化特性が異なる少なくとも2個以上の対象領域として設定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の色変化度合い推定システムは、前記変化度合推定部が、前記画素値と、前記2個以上の対象領域の各々の前記参照画素値とのそれぞれの比の組合せが最も近い前記参照画素値の算出に用いられた前記変化色特性情報を抽出することを特徴とする。
【0012】
本発明の色変化度合い推定システムは、前記参照画素値算出部が、前記変化色特性情報と、前記物体撮像画像を撮像した撮像装置の分光感度情報である撮像装置分光感度情報と、複数の光源の放射光の光源分光分布の各々とにより、前記参照画素値を算出し、前記変化度合推定部が、前記参照画素値の各々と前記画素値との比較から、前記変化色特性情報とともに、前記物体撮像画像が撮像された環境の光源の前記光源分光分布を推定することを特徴とする。
【0013】
本発明の色変化度合い推定システムは、前記変化色特性情報が、前記変化度合いに対応した前記領域の分光反射率を示す情報であることを特徴とする。
【0014】
本発明の色変化度合い推定システムは、品毎に、前記変化度合いと、当該変化度合いが示す劣化情報との対応を示す物品劣化情報データベースと、前記変化度合いに対応した前記物品の前記劣化情報を、前記物品劣化情報データベースから抽出してとユーザに提供する劣化情報提供部をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の色変化度合い推定方法は、画素値取得部が、物体が撮像された物体撮像画像から、当該物体撮像画像における所定の領域の画素値を取得する画素値取得過程と、参照画素値算出部が、前記領域の色の変化度合いに対応して、前記所定の領域毎に予め取得されている色特性情報である変化色特性情報に基づいて、前記所定の領域毎の参照画素値を前記変化色特性情報の各々に対応して算出する参照画素値算出過程と、変化度合推定部が、前記参照画素値の各々と前記画素値とを比較して、当該画素値に対応する前記変化色特性情報を抽出し、抽出した当該変化色特性情報に対応する変化度合いを、前記物体の色の変化度合いとして推定する変化度合い推定過程とを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明のプログラムは、コンピュータを、物体が撮像された物体撮像画像から、当該物体撮像画像における所定の領域の画素値を取得する画素値取得手段、前記領域の色の変化度合いに対応して、前記所定の領域毎に予め取得されている色特性情報である変化色特性情報に基づいて、前記所定の領域毎の参照画素値を前記変化色特性情報の各々に対応して算出する参照画素値算出手段、前記参照画素値の各々と前記画素値とを比較して、当該画素値に対応する前記変化色特性情報を抽出し、抽出した当該変化色特性情報に対応する変化度合いを、前記物体の色の変化度合いとして推定する変化度合い推定手段として動作させるプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、物体(例えば、物品)の環境による色の変化を定量的に検知し、物体の機能劣化の判定に用いる色変化の度合の推定を容易に、かつ安価に行なうことができる色変化度合い推定システム、色変化度合い推定方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の一実施形態による色変化度合推定システムを用いた物品色変化情報提供システムの構成例を示すブロック図である。
図2】本実施形態における物品の各対象領域の変化度合い毎の分光反射率(以下、変化分光反射率)を示す変化色特性情報データベースの構成例を示す図である。
図3】本実施形態の物品における対象領域の各々の変化度合い毎の変化分光反射率の取得を説明する図である。
図4】本実施形態における撮像装置分光感度データベース109における撮像装置分光感度テーブルの構成例を示す図である。
図5】本実施形態における光源特性情報データベース110における光源分光分布テーブルの構成例を示す図である。
図6】本実施形態における変化度合推定部105による撮像画像における物品の対象領域の画素値から変化度合いを検出する処理を説明する概念図である。
図7】本実施形態における色変化度合い推定システムの変化度合いの推定の処理の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態においては、物品の色の変化度合い(後述する物体の分光反射率などの色特性情報の変化を定量的に示す数値)を推定する。
図1は、本実施形態の一実施形態による色変化度合推定システムを用いた物品色変化情報提供システムの構成例を示すブロック図である。
図1において、物品色変化情報提供システム1は、色変化度合推定システム100及びユーザ端末200の各々を備えている。
【0020】
また、色変化度合推定システム100及びユーザ端末200の各々は、インターネットなどを含むデータ通信網300により接続されている。
ユーザ端末200の各々には、色変化度合推定システム100との間において、色の変化度合いの検出に用いるデータの送受信を行なうためのアプリケーションのプログラムがインストールされている。
【0021】
図1において、色変化度合推定システム100は、データ入出力部101、画像領域認識部102、画素値取得部103、参照画素値算出部104、変化度合推定部105、劣化情報提供部106、記憶部107、物品劣化情報データベース108、撮像装置分光感度データベース109、光源特性情報データベース110を備えている。
データ入出力部101は、ユーザ端末200から撮像画像のデータが供給された場合、ユーザ識別情報とともに撮像画像を記憶部107に書き込んで記憶させる。
画像領域認識部102は、記憶部107から撮像画像のデータを読み出し、撮像画像における物品の劣化の推定を行なう評価対象の画像領域(以下、対象画像領域)を抽出する。
【0022】
画素値取得部103は、対象画像領域から、物品における対象画像領域の各々の対象画素値(例えば、色成分RGBの各々)を抽出し、上記ユーザ識別情報に対応させて記憶部107に書き込んで記憶させる。
参照画素値算出部104は、上記物品における各対象画像領域の参照画素値を、予め計測してある分光反射率(色特性情報の一種)と、撮像画像を撮像した撮像装置の分光感度(以下、撮像装置分光感度と示す)と、光源の分光分布(以下、光源分光分布と示す)とから算出する(後に詳述)。
【0023】
図2は、物品の各対象領域の変化度合い毎の分光反射率(以下、変化分光反射率)を示す物品劣化情報データベースの構成例を示す図である。
図2(a)は、物品テーブルの構成例を示している。物品テーブルは、レコード毎に、物品識別情報と変化度合いテーブルインデックスとの欄が備えられている。物品識別情報は、物品の各々を識別するための識別情報である。変化度合いテーブルインデックスは、物品識別情報の示す物品の変化度合いテーブルが記憶された領域を示すアドレスなどのインデックスである。
【0024】
図2(b)は、変化度合いテーブルの構成例を示している。変化度合いテーブルは、レコード毎に、変化度合い、対象領域毎の分光反射率(変化色特性情報)、変化度合いに対応した物品の機能低下状態の各々の欄が備えられている。変化度合いは、分光反射率の変化の過程における所定の変化状態を量子化して示す数値(所定の分光反射率範囲に含まれる分光反射率に対して付加される数値)である。
例えば、分光反射率のピークの初期値により、それぞれ経時的に変化した分光反射率を除算した計算値を変化度合いとする。
【0025】
また、物品に光を照射した状態で、物品の各対象領域の色を退色(変化)させ、所定の時間が経過するごとに分光反射率のピーク値の変化を計測し、分光反射率の変化曲線から曲線の微分値が所定以上の変化点を求め、変化点における上記計算値を変化度合いとしてもよい。
変化度合いに対応した物品の機能低下状態は、対象領域の色の変化度合いから推定できる物品の機能低下の状態、例えば建装材であれば防水性、撥水性、耐熱性、対候性、耐火性、酸化防止などの機能がどの程度低下した状態かを示す情報である。ここで、変化度合いの各々に対応させて、劣化の要因毎に、変化度合いに対応した物品の機能低下状態の欄を複数設けてもよい。
【0026】
図3は、物品における対象領域の各々の変化度合い毎の変化分光反射率の取得を説明する図である。ここで、物品の変化度合い(劣化度合い)毎に測定しているが、変化する対象としては物品に利用されているインキ、顔料、染料、基材、材料等の各々に含まれる成分である。
図3においては、物品500に光を照射して、対象画像領域501、対象画像領域502、対象画像領域503、対象画像領域504の分光反射率の変化度合いを試験によって求めている。これらの対象画像領域501、502、503及び504の各々は、予め劣化を推定し易い領域が実験結果に基づいて設定されている。
【0027】
また、図3においては、物品500の対象画像領域501、対象画像領域502、対象画像領域503及び対象画像領域504の各々における変化分光反射率501A、変化分光反射率502A、変化分光反射率503A、変化分光反射率504Aのそれぞれの変化率を、変化度合い1.0(初期状態)、変化度合い0.8、変化度合い0.6、変化度合い0.4毎の単位として取得する。
本実施形態においては、変化度合が小さくなるほど、物品の機能低下(特性の劣化)の程度が高くなるように示す構成としているが、変化度合が大きくなるほど、物品の機能低下(特性の劣化)の程度が高くなるように示す構成としてもよい。
【0028】
図4は、撮像装置分光感度データベース109における撮像装置分光感度テーブルの構成例を示す図である。
図4において、撮像装置分光感度テーブルは、レコード毎に、撮像装置識別情報及び分光感度情報の各々の欄が備えられている。
撮像装置識別情報は、撮像装置の各々(機種)を識別する識別情報である。分光感度情報は、撮像装置の分光感度である撮像装置分光感度のデータである。
【0029】
図5は、光源特性情報データベース110における光源分光分布テーブルの構成例を示す図である。
図5において、光源分光分布テーブルは、レコード毎に、光源識別情報及び分光分布情報(光源の放射分光分布のデータ)の各々の欄が備えられている。
光源識別情報は、光源の各々を識別する識別情報(例えば、製品番号や、蛍光灯、LED(light emitting diode)照明、白熱灯、太陽光などの光源を種別した情報)である。分光分布情報は、光源の放射光の分光分布のデータである。
【0030】
図1に戻り、参照画素値算出部104は、ユーザから供給される撮像装置識別情報により、撮像装置分光感度データベース109における撮像装置分光感度テーブルを参照し、撮像画像を撮像した撮像装置の撮像装置分光感度を読み出す。
参照画素値算出部104は、物品劣化情報データベース108の物品テーブルから、指定された物品識別情報に対応した変化度合いテーブルの変化度合いテーブルインデックスを読み込む。
参照画素値算出部104は、変化度合いテーブルインデックスに対応し、物品劣化情報データベース108における変化度合テーブルを参照する。
【0031】
また、参照画素値算出部104は、光源分光分布テーブルから分光分布のデータを読み出し、変化度合いテーブルから対象画像領域毎の変化分光反射率を読み出す。
そして、参照画素値算出部104は、撮像装置分光感度と、変化分光反射率と、分光分布とから、所定の対象画像領域毎における画素の画素値(色成分RGBの各々)を計算して参照画素値とする。
【0032】
変化度合推定部105は、記憶部107から対象画素値と、変化度合い毎の参照画素値の各々を読み出し、画素値取得部103の取得した対象画素値と、変化度合い毎の参照画素値のそれぞれとを比較し、対象画素値に最も近い変化度合いの参照画素値を検出する。
ここで、変化度合推定部105は、対象画像領域毎に、対象画素値及び参照画素値の各々における色成分であるR(Red)、G(Green)、B(Blue)それぞれの比を求める。
【0033】
図6は、変化度合推定部105による撮像画像における物品の対象領域の画素値から変化度合いを検出する処理を説明する概念図である。
ここで、変化度合推定部105は、記憶部107から物品600の対象画像領域601、対象画像領域602及び対象画像領域603の各々の対象画素値RGBを読み込む。
ここで、対象画像領域601においては、対象画素値RがR601であり、対象画素値GがG601であり、対象画素値BがB601である。
対象画像領域602においては、対象画素値RがR602であり、対象画素値GがG602であり、対象画素値BがB602である。
対象画像領域603においては、対象画素値RがR603であり、対象画素値GがG603であり、対象画素値BがB603である。
【0034】
また、変化度合推定部105は、変化度合い毎の変化分光反射率から求められた、対象画像領域601、対象画像領域602及び対象画像領域603の各々の参照画素値と、上記対象画素値との比較を行なう。
ここで、対象画像領域601に対応する参照画素値においては、参照画素値RがR601rであり、対象画素値GがG601rであり、対象画素値BがB601rである。
対象画像領域602に対応する参照画素値においては、対象画素値RがR602rであり、対象画素値GがG602rであり、対象画素値BがB602rである。
対象画像領域603に対応する参照画素値においては、対象画素値RがR603rであり、対象画素値GがG603rであり、対象画素値BがB603rである。
【0035】
そして、変化度合推定部105は、対象画像領域601において、RGB比率組合せS601(R601/R601r,G601/G601r,B601/B601r)を算出する。
また、変化度合推定部105は、対象画像領域602において、RGB比率組合せS602(R602/R602r,G602/G602r,B602/B602r)を算出する。
また、変化度合推定部105は、対象画像領域603において、RGB比率組合せS603(R603/R603r,G603/G603r,B603/B603r)を算出する。
【0036】
図1に戻り、変化度合推定部105は、RGB比率組合せS601、S602及びS603の各々の画素値R、B、Gのそれぞれの比率が最も近くなる参照画素値を算出した変化分光反射率の組合せの変化度合いを、撮像画像における対象画像領域の変化度合いとして検出する。
ここで、対象画像領域601、対象画像領域602及び対象画像領域603の各々は、分光反射率の変化特性が異なることが望ましい。
そして、変化度合推定部105は、対象画像領域の変化度合い及び光源識別情報(分光分布のデータ)の各々の組合せ毎に、算出した(推定した)RGB比率組合せを記憶部107に対して書き込んで記憶させる。
【0037】
このように、対象画素値RGB及び参照画素値RGBの各々の比率を用いることにより、照明の強度などの影響を除去することができる。
また、本実施形態においては、対象画像領域602及び対象画像領域603の3個の対象画像領域を用いているが、分光反射率の変化特性が各々異なる2個以上の対象画像領域を用いて変化度合いを検出してもよい。
【0038】
劣化情報提供部106は、光源識別情報及び変化度合いの組合せに対応した変化度合いを記憶部107から読み出す。
そして、劣化情報提供部106は、ユーザ識別情報及び物品識別情報の組合せに対応して、物品劣化情報データベース108における変化度合いテーブルを参照する。
劣化情報提供部106は、読み出した変化度合いに対応する、変化度合いに対応した物品の機能低下状態の記述を読み出し、ユーザ端末200に対して送信する。
【0039】
図7は、本実施形態における色変化度合い推定システムの変化度合いの推定の処理の動作例を示すフローチャートである。
ステップS201:
ユーザは、家を新たに建てる際、あるいはリフォームする際などに、物品(例えば、建装材など)を購入する。
【0040】
ステップS202:
ユーザは、例えば、物品を購入した会社から、購入した物品(例えば建装材)の変化度合いの確認時期との通知を受ける。
そして、ユーザは、所有する撮像装置により物品の指定された箇所(対象画像領域に対応した箇所)を撮像し、撮像した撮像画像(例えば、図10の撮像画像)と、撮像に用いた撮像装置の撮像装置識別情報とを、ユーザ端末200から色変化度合推定システム100に対して送信する。
このとき、ユーザ端末200は、アプリケーションを起動する際に用いるユーザIDをユーザ識別情報として、撮像画像及び撮像装置識別情報とともに、色変化度合推定システム100に対して送信する。
【0041】
ステップS203:
データ入出力部101は、ユーザ端末200から、所定の箇所の撮像画像、撮像装置識別情報及びユーザ識別情報が供給された場合、このユーザ識別情報に対応させて、所定の箇所の撮像画像及び撮像装置識別情報の各々を記憶部107に書き込んで記憶させる。
【0042】
ステップS204:
画像領域認識部102は、記憶部107から撮像画像のデータを読み出し、撮像画像における対象画像領域を抽出する。
そして、画素値取得部103は、画像領域認識部102が抽出した対象画像領域の各々における対象画素値R、G、Bそれぞれを抽出し、上記ユーザ識別情報に対応させて記憶部107に書き込んで記憶させる。
【0043】
ステップS205:
参照画素値算出部104は、ユーザ識別番号に対応する撮像装置識別情報を、記憶部107から読み込む。
そして、参照画素値算出部104は、撮像装置分光感度データベース109の撮像装置分光感度テーブルから、撮像装置識別情報に対応した分光感度情報(撮像装置分光感度)を読み出す。
【0044】
ステップS206:
参照画素値算出部104は、光源特性情報データベース110の光源分光分布テーブルにおける全ての光源識別情報に対応する分光分布情報を読み出したか否かの判定を行なう。
ここで、参照画素値算出部104は、例えば、光源分光分布テーブルの最上段から、下段に向かって分光分布情報を順次読み出すため、光源分光分布テーブルの最下段を読み込んだか否かにより、光源分光分布テーブルにおける全ての光源識別情報に対応する分光分布情報を読み出したか否かの判定を行なう。
【0045】
このとき、参照画素値算出部104は、光源分光分布テーブルにおける全ての光源識別情報に対応する分光分布情報を読み出していない場合、処理をステップS207へ進める。
一方、参照画素値算出部104は、光源分光分布テーブルにおける全ての光源識別情報に対応する分光分布情報を読み出した場合、処理をステップS211へ進める。
【0046】
ステップS207:
参照画素値算出部104は、光源特性情報データベース110の光源分光分布テーブルから、次の段(初回は最上段)の分光分布情報(光源情報)を読み出す。
ここで、参照画素値算出部104は、記憶部107からユーザ識別情報に対応した物品識別情報を読み出す。
参照画素値算出部104は、物品劣化情報データベース108の物品テーブルから、読み出した物品識別情報に対応する変化度合いテーブルを選択する(この処理は初回のみとする)。
また、参照画素値算出部104は、変化度合いテーブルにおける最上段から、変化分光反射率を読み出す操作を行なう。
【0047】
ステップS208:
そして、参照画素値算出部104は、物品劣化情報データベース108の変化度合いテーブルにおける全ての変化度合いに対応する対象画像領域毎の変化分光反射率を読み出したか否かの判定を行なう。
ここで、参照画素値算出部104は、例えば、変化度合いテーブルの最上段から、下段に向かって対象画像領域毎の変化分光反射率を順次読み出すため、変化度合いテーブルの最下段を読み込んだか否かにより、変化度合いテーブルにおける全ての変化度合いに対応する対象画像領域毎の変化分光反射率を読み出したか否かの判定を行なう。
【0048】
このとき、参照画素値算出部104は、変化度合いテーブルにおける全ての変化度合いに対応する対象画像領域毎の変化分光反射率を読み出していない場合、処理をステップS209へ進める。
一方、参照画素値算出部104は、光源分光分布テーブルにおける全ての変化度合いに対応する対象画像領域毎の変化分光反射率を読み出した場合、処理をステップS206へ進める。
【0049】
ステップS209:
参照画素値算出部104は、光源特性情報データベース110の変化度合いテーブルから、次の段(初回は最上段)の対象画像領域毎の変化分光反射率(変化色特性情報)を読み出す。
【0050】
ステップS210:
参照画素値算出部104は、分光分布情報、撮像装置分光感度及び対象画像領域毎の変化分光反射率により、対象画像領域の各々の参照画素値Rr、Gr、Brを算出する。
そして、参照画素値算出部104は、算出した対象画像領域の各々の参照画素値Rr、Gr、Brそれぞれを、光源識別情報及び変化度合いの各々の組合せに対応させて、記憶部107に書き込んで記憶させる。
また、参照画素値算出部104は、処理をステップS208へ進める。
【0051】
ステップS211:
変化度合推定部105は、光源識別情報及び変化度合いの各々の組合せに対応して、各対象画像領域に対応する参照画素値Rr、Gr、Brと、各対象画像領域の対象画素値R、G、Bを記憶部107から順次読み出す。
そして、変化度合推定部105は、読み出した対象画像領域の参照画素値Rr、Gr、Brの各々と、各対象画像領域の対象画素値R、G、Bそれぞれとの比を取り、図6で説明したRGB比率組合せ(R/Rr,G/Gr,B/Br)を対象画像領域毎に、光源識別情報及び変化度合いの各々の組合せの全てに対して算出する。
また、変化度合推定部105は、光源識別情報及び変化度合いの各々の組合せ毎に、計算した各対象画像領域のRGB比率組合せ(R/Rr,G/Gr,B/Br)を記憶部107に対して書き込んで記憶させる。
【0052】
ステップS212:
変化度合推定部105は、RGB比率組合せ(R/Rr,G/Gr,B/Br)が各対象画像領域間で最も同様な光源識別情報及び変化度合いの各々の組合せを抽出する。
そして、変化度合推定部105は、抽出した光源識別情報及び変化度合いの組合せにおける変化度合いを、撮像画像のチャート画像領域の物品の変化度合いの推定結果とする。
また、変化度合推定部105は、光源識別情報及び変化度合いの組合せにおける光源識別情報の示す分光分布を、撮像画像が撮像された光源環境の推定結果とする。
そして、変化度合推定部105は、ユーザ識別情報及び物品識別情報の組合せに対応させて、上記変化度合い及び分光分布のデータを、記憶部107に書き込んで記憶させる。
【0053】
ステップS213:
劣化情報提供部106は、光源識別情報及び変化度合いの組合せにおける変化度合いを記憶部107から読み出す。
そして、劣化情報提供部106は、ユーザ識別情報及び物品識別情報の組合せに対応して、物品劣化情報データベース108における変化度合いテーブルを参照する。
劣化情報提供部106は、読み出した変化度合いに対応する、変化度合いに対応した物品の機能低下状態の記述を読み出し、ユーザ端末200に対して送信する。
このとき、劣化情報提供部106は、物品毎に予め設定された変化度合いの使用不可閾値範囲から、物品識別情報の示す物品の変化度合いが外れた場合、物品の買い換えを示す情報を通知する。
【0054】
本実施形態によれば、上述した構成により、ユーザが撮像した撮像画像における物品の対象画像領域によって、ユーザが所有する物品の変化度合いを推定することができ、ユーザが物品の機能低下の調査を業者に依頼して行なう際、依頼した業者が物品を観察するためにユーザ宅に訪ねて来て、直接に物品を観察して機能低下の診断を行なって貰う必要がないため、ユーザが容易かつ安価に物品の変化度合いに対応した機能低下を認識することができる。
また、本実施形態によれば、対象画像領域の各々の対象画素値と、当該対象画像領域それぞれに対応して算出した参照画素値とを比較するため、業者でも視認することが不可能な精度で変化度合いが推定できるため、高い精度で物品の機能低下を推定することができる。
【0055】
上述した本実施形態においては、撮像装置識別情報をユーザから取得していたが、光源の分光分布とともに、参照画素値の算出を行う際、複数の撮像装置分光感度も変化させるパラメータとして、チャートの変化度合いとともに、撮像環境の光源の分光分布と、撮像装置の撮像装置分光感度を推定する構成としてもよい。
また、上述したアプリケーションがスマートフォン用であれば、ユーザ端末200がスマートフォンであることが明確であるため、代表的なスマートフォンで使用される撮像装置を用意することで、撮像装置分光分布の推定の絞り込みの範囲を狭めることができる。
【0056】
また、本実施形態においては、変化度合いテーブルにおける変化度合いを全て算出していたが、変化度合いの確認が初めてではない場合、直前の変化度合い以降の変化分光反射率を用いて、参照画素値を算出させ、変化度合いの推定の負荷を低減する構成としてもよい。
同様に、劣化程度を推定する対象の物品の購入日、製造日時及び使用環境の各々などから、推定処置を開始する変化度合いの検索範囲を狭める構成としてもよい。
【0057】
また、本実施形態においては、撮像環境の分光分布を推定していたが、チャートを撮像する際、ストロボを使用して撮像した撮像画像の各画素の画素値から、ストロボを使用せずに撮像した撮像画像の各画素の画素値を減算し、ストロボのみで撮像した撮像画像のデータを取得し、光源の分光分布の推定を省く構成としてもよい。
また、本実施形態においては、色特性情報(または変化色特性情報)を分光反射率(または変化分光反射率)として説明したが、変化度合いに対応した対象画像領域の分光反射率を示す情報であればよく、例えば、分光反射率の関数、分光反射率を示す関数曲線の基底関数の係数の数値、初期値の分光反射率からの変化率または差分、あるいは分光反射率の計測値(離散値)を用いる構成としてもよい。
【0058】
なお、本発明における色変化度合推定システム100の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより物品の色の変化度合いから劣化程度を推定する処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0059】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0060】
100…色変化度合推定システム
101…データ入出力部
102…画像領域認識部
103…画素値取得部
104…参照画素値算出部
105…変化度合推定部
106…劣化情報提供部
107…記憶部
108…物品劣化情報データベース
109…撮像装置分光感度データベース
110…光源特性情報データベース
200…ユーザ端末
300…データ通信網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7