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  • 特許-押釦構造および電子機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】押釦構造および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/14 20060101AFI20240521BHJP
   H01H 13/705 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01H13/14 A
H01H13/705
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020085373
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021180131
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 亮
(72)【発明者】
【氏名】小河原 賢
(72)【発明者】
【氏名】下山 峻
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-129435(JP,U)
【文献】実開昭63-014324(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/14
H01H 13/705
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材と、
前記操作部材に設けられ、前記操作部材が押圧されることでスイッチ素子を作動させるための作動部材と、
前記操作部材から前記操作部材の押圧方向に延伸し、前記作動部材を囲んだ少なくとも3方向に配置されて前記操作部材を支持する係合部材と、
前記操作部材の端寄りにおいて対向する少なくとも2方の前記係合部材の外側に添って配置された少なくとも2つの弾性部材と、
を備える、押釦構造。
【請求項2】
操作部材と、
前記操作部材に設けられ、前記操作部材が押圧されることでスイッチ素子を作動させるための作動部材と、
前記操作部材から前記操作部材の押圧方向に延伸し、前記作動部材を囲んだ少なくとも3方向に配置されて前記操作部材を支持する係合部材と、
前記操作部材において対向する少なくとも2方の前記係合部材に添って配置された少なくとも2つの弾性部材と、
を備え、
前記作動部材は、前記弾性部材が添って配置されない前記係合部材寄りに偏って配置されている、押釦構造。
【請求項3】
前記係合部材と前記弾性部材とが、押圧側の位置を異ならせて配置されている、請求項1または2に記載の押釦構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦構造を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦構造および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている操作ボタンは、操作突起と、ストッパ部と、バネ部と、を備えている。操作突起は、操作ボタンの中央に設けられて基板に配置されたスイッチ素子に向けて延びている。ストッパ部は、スイッチ素子を間において対向して設けられ基板に形成された穴に挿入されて基板に引っ掛かる爪を有する。バネ部は、スイッチ素子を間においてストッパ部とは平面視で直交する位置でスイッチ素子を間において対向して設けられ基板の表面に当接して弾性変形可能に設けられている。この操作ボタンは、バネ部の弾性力に抗して押圧することで、ストッパ部と共に操作突起が移動し、操作突起でスイッチ素子を動作させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-249976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、操作ボタンは、操作突起を有する中央から外れた一側を押すと、スイッチ素子の作動の反力によりスイッチ素子が支点となって、操作突起を間にした反対側の他側が浮き上がる。このように、反対側の他側が浮き上がると、操作ボタンを押した力がスイッチ素子に対して十分に伝わらず押し感が悪い状態となる。
【0005】
本発明は、押し位置に関わらず押し感を良好にすることのできる押釦構造および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の押釦構造は、操作部材と、前記操作部材に設けられ、前記操作部材が押圧されることでスイッチ素子を作動させるための作動部材と、前記操作部材から前記操作部材の押圧方向に延伸し、前記作動部材を囲んだ少なくとも3方向に配置されて前記操作部材を支持する係合部材と、前記操作部材において少なくとも2方の前記係合部材に添って配置された少なくとも2つの弾性部材と、を備える。
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の電子機器は、上述した押釦構造を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、押し位置に関わらず押し感を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電子機器を示す前面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る押釦構造を示す外観斜視図である。
図3図3は、図1におけるA-A断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る押釦構造を示す押釦部の背面視斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る押釦構造を示す押釦部の上面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る押釦構造を示す保持部の前面視斜視図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る押釦構造の動作を示す断面図である。
図8図8は、図1におけるB-B断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る押釦構造の他の例を示す押釦部の背面視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器を示す前面図である。図2は、本実施形態に係る押釦構造を示す外観斜視図である。図3は、図1におけるA-A断面図である。
【0012】
以下の説明においては、車両用の電子機器1を車両の運転席の前方に搭載した状態で各方向を定義する。ここで、車両直進時の進行方向と平行な方向であって、運転席側に向く面を「前面」、車両前方のウインドシールド側に向く面を「背面(後面ともいう)」とする。前面と背面とが対向する方向を前後方向といいX軸方向とする。また、前後方向に対して水平に直交する方向であって、運転席側から見て左手に向く面を「左面」、右手に向く面を「右面」とする。左面と右面とが対向する方向を幅方向といいY軸方向とする。上下方向とは、前後方向および幅方向に対して直交する方向であって、上側に向く面を「上面」、下側に向く面を「下面」とする。上面と下面とが対向する方向を上下方向といいZ軸方向とする。したがって、前後方向、幅方向および上下方向は、3次元で直交する。
【0013】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る電子機器1は、車両の内部に搭載される、例えば、AV(Audio Visual)一体型のカーナビゲーション装置である。電子機器1は、表示パネル2と、前面パネル3と、押釦4と、を有する。
【0014】
表示パネル2は、矩形状に形成され、前面に表示面2Aを有している。前面とは、オペレータが視る面であって、カーナビゲーション装置の場合は車内前方に配置されるため、車内の後方に向く面となる。表示面2Aは、表示パネル2の矩形状よりも小さい矩形状をなしている。表示パネル2は、例えば、表示面2Aが感圧式のタッチパネルが適用できる。
【0015】
前面パネル3は、合成樹脂材により成形され、表示パネル2の周りを囲むように矩形状に形成されている。前面パネル3は、表示パネル2の周りを囲む矩形状の枠部3Aと、枠部3Aの内側において表示パネル2の表示面2Aを開放する矩形状の窓部3Aaと、を有している。
【0016】
押釦4は、図1に示すように、前面パネル3の枠部3Aであって本実施形態では図1において前面パネル3の右面側であり、前面パネル3の前面側に配置されている。押釦4は、本実施形態では、図1に示すように上下方向に複数(4個)並んで配置されている。押釦4は、図3に示すように、押釦部5と、保持部6と、回路基板7と、を有している。押釦部5は、前面パネル3の前面側に現れる部分であり、オペレータが押圧操作をする部分である。保持部6は、押圧操作による押釦部5の移動を許容しつつ押釦部5を保持する部分であり、前面パネル3に設けられている。回路基板7は、前面パネル3に固定されており、押圧操作による押釦部5の移動により動作するスイッチ素子7Aが実装されている。スイッチ素子7Aは、例えば、タクトスイッチであり、回路基板7に実装される本体部7Aaと、作動部7Abと、を有する。
【0017】
以下、押釦4の詳細について説明する。図4は、本実施形態に係る押釦構造を示す押釦部の背面視斜視図である。図5は、本実施形態に係る押釦構造を示す押釦部の上面図である。図6は、本実施形態に係る押釦構造を示す保持部の前面視斜視図である。図7は、本実施形態に係る押釦構造の動作を示す断面図である。図8は、図1におけるB-B断面図である。図9は、本実施形態に係る押釦構造の他の例を示す押釦部の背面視斜視図である。
【0018】
本実施形態の押釦構造において、押釦部5は、合成樹脂材により成形され、操作部材5Aと、係合部材5Bと、弾性部材5Cと、作動部材5Dと、案内溝5Eと、を有する。
【0019】
操作部材5Aは、オペレータが押圧操作をする部分である。つまり、操作部材5Aは、前面パネル3の前面側に現れる部分である。本実施形態において、操作部材5Aは、幅方向(Y軸方向)および上下方向(Z軸方向)がなす面に沿い、幅方向および上下方向でそれぞれ対向する端を有した矩形板状に形成されている。また、操作部材5Aは、幅方向の一側(右面側)の端が前面パネル3の一側(右面側)の端に位置しており、前面パネル3の一側の端の湾曲形状に沿って背面側に湾曲して形成されている。
【0020】
係合部材5Bは、操作部材5Aの背面5Aaから背面側に向けて延びて設けられている。言い換えると、係合部材5Bは、操作部材5Aのオペレータによる押圧操作の押圧側となる押圧方向に延伸して設けられている。係合部材5Bは、操作部材5Aを正面側から背面側へ視た状態、つまり押圧側へ視た状態で、上下方向および幅方向となる3方向以上の複数個所に配置されている。図4に示す実施形態では、係合部材5Bは、上下方向の2方向と、幅方向の1方向の計3方向に配置されている。係合部材5Bは、操作部材5Aの背面5Aaのほぼ中央に設けられた作動部材5Dに対し、この作動部材5Dを囲んで配置されている。図4に示す実施形態では、係合部材5Bは、作動部材5Dの上下方向の2方向と、幅方向(左面)の1方向の計3方向に配置されている。
【0021】
上下方向の2つの係合部材5Bは、図3および図4に示すように、操作部材5Aの左面側の端寄りにおいて、互いに対向する上下方向に板面をむけた板状に形成されている。また、上下方向の2つの係合部材5Bは、上下方向に貫通する穴5Baが設けられている。穴5Baは、前後方向に長い長穴として形成されている。この上下方向の2つの係合部材5Bは、操作部材5Aの背面5Aaから背面側に向けて同長さに延びて形成され、穴5Baが操作部材5Aの背面5Aaから同距離であって上下方向で対向して配置されている。
【0022】
幅方向の1つの係合部材5Bは、図4に示すように、幅方向の一側であって本実施形態では操作部材5Aの左面側の端寄りにおいて、幅方向に板面を向けた板状に形成されている。また、幅方向の1つの係合部材5Bは、幅方向に貫通する穴5Baが設けられている。穴5Baは、前後方向に長い長穴として形成されている。この幅方向の1つの係合部材5Bは、上下方向の2つの係合部材5Bと比較して、操作部材5Aの背面5Aaから背面側への長さが短く形成され、穴5Baが操作部材5Aの背面5Aa寄りに配置されている。
【0023】
弾性部材5Cは、操作部材5Aの背面5Aaから背面側に向けて延びて設けられている。言い換えると、弾性部材5Cは、操作部材5Aのオペレータによる押圧操作の押圧側に延びて設けられている。弾性部材5Cは、前後方向に弾性変形が可能に形成されている。本実施形態において、弾性部材5Cは、図4および図5に示すように、幅方向に延びて設けられた2つの棒材が、前後方向で並んで平行に配置され、幅方向の一端同士が連結され、一方の棒材の他端が操作部材5Aの背面5Aaに固定され、他方の棒材の他端が自由端として構成されていることで、前後方向に撓んで弾性変形が可能に形成されている。弾性部材5Cは、操作部材5Aを正面側から背面側へ視た状態、つまり押圧側へ視た状態で、操作部材5Aの上面側および下面側の端寄りにそれぞれ配置されている。そして、2つの弾性部材5Cは、上下方向の2つの係合部材5Bにそれぞれ添って配置されている。操作部材5Aの上面側の端において、弾性部材5Cは、係合部材5Bよりも上面側に配置されている。また、操作部材5Aの下面側の端において、弾性部材5Cは、係合部材5Bよりも下面側に配置されている。
【0024】
各係合部材5Bと弾性部材5Cとは、背面側(押圧側)の位置を異ならせて配置されている。本実施形態では、図3および図5に示すように、操作部材5Aの背面5Aaから背面側への位置において、弾性部材5Cの最も背面側の棒材は、各係合部材5Bの穴5Baよりも近くに配置されている。このように、係合部材5Bと弾性部材5Cとは、操作部材5Aの背面5Aaから背面側へ高さ違いで配置されている。
【0025】
作動部材5Dは、操作部材5Aの背面5Aaから背面側に向けて延びて設けられている。言い換えると、作動部材5Dは、操作部材5Aのオペレータによる押圧操作の押圧側に延びて設けられている。作動部材5Dは、各係合部材5Bが設けられた範囲の中であって、操作部材5Aの背面5Aaのほぼ中央に設けられ、前後方向に延びる棒体として形成されている。
【0026】
案内溝5Eは、操作部材5Aの背面5Aaから背面側に向けて延びて設けられている。言い換えると、案内溝5Eは、操作部材5Aのオペレータによる押圧操作の押圧側に延びて設けられている。案内溝5Eは、前後方向に延びて背面側に開口端を有する溝として形成されている。案内溝5Eは、幅方向の1つの係合部材5Bの上面側および下面側において、上面および下面に開放して設けられている。また、案内溝5Eは、前面から見て下面側係合部材5Bの右面側にあり、右面に開放して設けられている。
【0027】
本実施形態の押釦構造において、図3および図6に示すように、保持部6は、収容部6Aと、爪6Bと、受部6Cと、案内突起6Eと、を有する。
【0028】
収容部6Aは、上述した押釦部5において操作部材5Aの背面側に構成された、係合部材5Bと、弾性部材5Cと、作動部材5Dと、案内溝5Eと、を収容する空間を形成している。収容部6Aは、前面パネル3に一体に設けられ、上下方向および左右方向の4方向に壁面を有し前後方向に開放する矩形筒状に形成されている。収容部6Aは、背面側に回路基板7が設けられており、筒状内のほぼ中央にスイッチ素子7Aが配置される。
【0029】
爪6Bは、押釦部5における各係合部材5Bの穴5Baに挿入されるように、収容部6Aの壁面から内側に突出して設けられている。爪6Bは、係合部材5Bの穴5Baに挿入されることで、係合部材5Bの穴5Baと係合して押釦部5を前後方向に移動可能に支持する。
【0030】
受部6Cは、押釦部5における各弾性部材5Cが当接するように前面側に向く受面を有して構成されている。弾性部材5Cが受部6Cに当接することで、押釦部5は、収容部6Aの前面側に弾性力により押し出される。この時、爪6Bが係合部材5Bの穴5Baに挿入して相互に係合されることで、押釦部5は、収容部6Aから前面側に外れないように支持される。
【0031】
係合部材5Bの穴5Baに挿入される爪6Bと、受部6Cとは、背面側(押圧側)の位置を異ならせて配置されている。本実施形態では、図3に示すように、回路基板7から前面側への位置において、受部6Cは、爪6Bよりも遠くに配置されている。言い換えると、受部6Cは、収容部6Aの前側の開口から背面側への位置において、爪6Bよりも近くに配置されている。このように、係合部材5Bの穴5Baに挿入される爪6Bと、受部6Cとは、回路基板7から前面側へ高さ違いで配置されている。
【0032】
案内突起6Eは、押釦部5における各案内溝5Eに挿入されるように、収容部6Aの壁面から内側に突出して設けられている。案内突起6Eは、前後方向に延びて形成されている。案内溝5Eに案内突起6Eが挿入することで、押釦部5は、前後方向への移動を案内される。
【0033】
このように構成された本実施形態の押釦構造は、図3に示すように、オペレータにより操作部材5Aが背面側(押圧側)へ押圧操作される。すると、押圧操作の押圧力Pにより弾性部材5Cが受部6Cに押し付けられて背面側に弾性変形する。同時に、押圧操作の押圧力Pにより係合部材5Bが穴5Baに爪6Bが挿入された状態で背面側に移動する。これにより、図3に一点鎖線で示すように、押釦部5全体が背面側に移動する。このとき、押釦部5は、案内溝5Eおよび案内突起6Eにより背面側への移動を案内される。そして、押釦部5が背面側に移動することで、作動部材5Dが背面側へ移動し、スイッチ素子7Aの作動部7Abを押圧して作動させる。また、オペレータによる押圧力Pが解除されると、弾性部材5Cの弾性力により押釦部5全体が前面側に移動し、作動部材5Dがスイッチ素子7Aの作動部7Abから離れてスイッチ素子7Aの作動が解除される。
【0034】
図3で示した上記動作は、操作部材5Aの幅方向および上下方向がなす面の中央付近に押圧力Pが付与された場合である。ここで、図7に示すように、操作部材5Aの上下方向のいずれかの端付近に押圧力Pが付与された場合について説明する。図7では、操作部材5Aの下面側の端付近に押圧力Pが付与された場合を示している。図7に示す場合、押圧操作の押圧力Pにより下面側の弾性部材5Cが受部6Cに押し付けられて背面側に弾性変形する。同時に、押圧操作の押圧力Pにより下面側の係合部材5Bが穴5Baに爪6Bが挿入された状態で背面側に移動する。このとき、押圧力Pが付与された操作部材5Aの下面側の端付近は、図7に示すようにM1分移動する。一方、上面側の弾性部材5Cは、受部6Cとの当接により受部6Cから離れる方向(前面側)に弾性力を生じ、上面側の係合部材5Bが前面側に移動するが、穴5Baに爪6Bが引っ掛かった時点で移動が止まる。このため、押釦部5は、上面側の係合部材5Bの穴5Baに引っ掛かった爪6Bが支点となって背面側に移動し、作動部材5Dが背面側へ移動し、スイッチ素子7Aの作動部7Abを押圧して作動させる。
【0035】
このように本実施形態の押釦構造は、複数の係合部材5Bに添って弾性部材5Cが設けられているため、1つの係合部材5Bに近い位置で操作部材5Aに押圧力Pが付与された場合に、当該押圧力Pが付与された位置から遠い係合部材5Bは、これに添う弾性部材5Cの弾性力により矢印Bで示すように押圧力Pとは反対の前面側に移動することで、自身の係合が維持されて支点となる。このとき、押圧力Pが付与された位置から遠い操作部材5Aの上面側の端付近は、図7に示すように先のM1よりも小さいM2分移動する。このように、本実施形態の押釦構造は、押圧力Pが付与された位置から遠い操作部材5Aの部分が押圧力Pとは反対の前面側に浮き上がること抑制しつつ、作動部材5Dによりスイッチ素子7Aを確実に作動させることができ、押し位置に関わらず押し感を良好にできる。
【0036】
ところで、本実施形態の押釦構造は、係合部材5Bが、上下方向の2方向と、幅方向の1方向の計3方向に配置されており、幅方向の係合部材5Bには弾性部材5Cが添って配置されていない。そのため、図8に示すように、幅方向の係合部材5Bに近い位置で操作部材5Aに押圧力Pが付与された場合に、当該押圧力Pが付与された位置から遠い位置には係合部材5Bが設けられておらず、この押圧力Pが付与された位置から遠い操作部材5Aの部分が矢印Bで示すように押圧力Pとは反対の前面側に浮き上がることとなる。そこで、本実施形態の押釦構造では、図8に示すように、弾性部材5Cが添って配置されない係合部材5B寄りに作動部材5Dを偏って配置している。具体的には、操作部材5Aの幅方向の中央から係合部材5B寄りに作動部材5Dを偏って配置している。このように構成することで、押圧力Pが作動部材5Dに近づくこととなり、押圧力Pが付与された位置から遠い操作部材5Aの部分が押圧力Pとは反対の前面側に浮き上がること抑制しつつ、作動部材5Dによりスイッチ素子7Aを確実に作動させることができ、押し位置に関わらず押し感を良好にできる。なお、本実施形態の押釦構造は、上述したように、弾性部材5Cは、幅方向に延びて設けられた2つの棒材が、前後方向で並んで平行に配置され、幅方向の一端同士が連結され、一方の棒材の他端が操作部材5Aの背面5Aaに固定され、他方の棒材の他端が自由端として構成されている。このため、操作部材5Aの幅方向の端付近に押圧力Pが付与されても、弾性部材5Cの弾性力を作用させることができる。
【0037】
また、図9に示すように、係合部材5Bを、作動部材5Dを囲んだ上下方向の2方向と、幅方向の2方向の計4方向に配置してもよい。この押釦構造によれば、操作部材5Aの幅方向のいずれの端付近に押圧力Pが付与されても、押圧力Pが付与された反対の端付近に設けられた係合部材5Bが支点となる。そして、この結果、この押釦構造は、押圧力Pが付与された位置から遠い操作部材5Aの部分が押圧力Pとは反対の前面側に浮き上がること抑制しつつ、作動部材5Dによりスイッチ素子7Aを確実に作動させることができる。
【0038】
また、本実施形態の押釦構造は、係合部材5Bと弾性部材5Cとが、背面側(押圧側:押圧方向)の位置を異ならせて配置されている。上述したように、係合部材5Bは爪6Bが挿入される穴5Baが形成されており、この穴5Baの貫通方向に金型を抜く必要がある。ここで、穴5Baの貫通方向の位置に弾性部材5Cを設けると、金型を抜くことができなくなる。従って、本実施形態の押釦構造は、係合部材5Bの穴5Baの貫通方向において穴5Baの範囲内から弾性部材5Cを避けて配置しており、押釦構造を成形する金型構造を成立させることができる。
【0039】
また、本実施形態の電子機器1は、上述した押釦構造を備えることで、押圧力Pが付与された位置から遠い操作部材5Aの部分が押圧力Pとは反対の前面側に浮き上がること抑制しつつ、作動部材5Dによりスイッチ素子7Aを確実に作動させることができ、押し位置に関わらず押し感を良好にできる。
【符号の説明】
【0040】
1 電子機器
5A 操作部材
5B 係合部材
5C 弾性部材
5D 作動部材
7A スイッチ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9