(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240521BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A41D13/11 A
A62B18/02 C
A41D13/11 Z
(21)【出願番号】P 2020088103
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 伸一
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-024078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0007982(US,A1)
【文献】中国実用新案第207855072(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の鼻及び口を覆うマスクであって、
両端が開放され、前記着用者の少なくとも口全体を含む大きさの開口部を両端に有
し、着用時に前記開口部と前記着用者の口とが対向するように設けられた筒状の通気性部材と、
前記通気性部材の一方の前記開口部を塞ぐ透明部材と、
前記通気性部材の他方の前記開口部の縁に沿って設けられ、且つ着用時に
前記着用者の口を囲むと共に少なくとも鼻を覆うように設けられた伸縮性部材と、
前記伸縮性部材を、
前記着用者の顔に密接した状態で固定するための装着部材と、
を備えることを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記通気性部材は、円筒形状であることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記通気性部材は、不織布製であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記伸縮性部材は、ポリウレタン製であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物やウィルス、埃等、空中を浮遊する微小異物の鼻及び口への進入を防止する目的で、また花粉症への対策として、鼻及び口を覆うマスクが着用されている。
また、マスクとして、ガーゼ等の天然繊維の織布や不織布をフィルタとしたものが知られている。このようにガーゼ等で形成されたマスクは、着用者の顔を隠してしまい、表情を確認できない。特に聴覚障害者のコミュニケーション手段である手話は、手や体の動きだけではなく、表情や口形等をも利用して、コミュニケーションをとっているため、マスク着用者の表情を読み取ることができないと、コミュニケーションに支障が生じる。そのため、鼻及び口を覆う領域を透明な樹脂シートで形成すると共に、顎下に位置する底部を通気性フィルタで形成し、顔に接するように着用することで、微小異物の鼻及び口への進入を防止するようにしたマスク等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透明な樹脂シートはほとんど通気性が無いため、息苦しく感じると共に、吐息で曇りやすいという問題がある。
そこで、この発明は、従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、マスク着用者の表情を、話し相手が容易に認識できると共に、通気性を確保することの可能なマスクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するべく、本発明の一態様によれば、着用者の鼻及び口を覆うマスクであって、両端が開放され、着用者の少なくとも口全体を含む大きさの開口部を両端に有し、着用時に開口部と着用者の口とが対向するように設けられた筒状の通気性部材と、通気性部材の一方の開口部を塞ぐ透明部材と、通気性部材の他方の開口部の縁に沿って設けられ、且つ着用時に着用者の口を囲むと共に少なくとも鼻を覆うように設けられた伸縮性部材と、伸縮性部材を、着用者の顔に密接した状態で固定するための装着部材と、を備えるマスクが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、マスク着用者の表情を、話し相手が認識できると共に、通気性を確保することの可能なマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマスクの一例を示す構成図であって、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るマスクの着用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
〔マスクの構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係るマスク1の概略構成を示したものであって、(a)は正面図、(b)は底面図である。ここでは、
図1(a)における上側、つまり鼻を覆う部分側をマスク1の上とし、下側、つまり顎に近い側をマスク1の底としている。また、
図2は、マスク1を着用した状態をやや斜めから見た図である。
マスク1は、通気性部材2と、透明部材3と、伸縮性部材4と、装着部材5と、を備える。
通気性部材2は、両端が開放された円筒形状を有し、両端の開口部は、マスク1を着用した時に、少なくとも口全体を含む大きさを有する。通気性部材2は、例えば、不織布で形成される。なお、通気性部材2は、不織布に限るものではなく、薄い織布であってもよく、微生物やウィルス、埃等、対象としている物質の進入を阻止することの可能な大きさの通気孔を有する素材であれば適用することができる。
【0010】
透明部材3は、例えばアクリル板で形成され、通気性部材2の一方の開口部2aに、この開口部2aを塞ぐように設けられる。透明部材3は、アクリル板に限るものではなく、ポリカーボネート、ポリアミド、ABS、MS、ポリエステル、エポキシなどをはじめとする透明性を有する樹脂性の板を用いることができる。
伸縮性部材4は、通気性部材2の開口部2bの縁に沿って設けられ、通気性部材2の開口部2bを、着用者の口全体を含むように顔に接して配置したときに、伸縮性部材4が着用者の口全体を囲むと共に着用者の鼻を覆うように形成される。伸縮性部材4は、例えば、ポリウレタンで形成される。伸縮性部材4に用いられる素材としては、ポリウレタンに限るものではなく、ポリウレタン系弾性繊維や熱可塑性エラストマーを原料とする弾性繊維を含む弾性繊維不織布、ウレタンシート、ポリエステルとポリウレタンフィルムとの弾性ラミネートシート等の伸縮性(弾性)シート等を適用することも可能である。
【0011】
装着部材5は、例えばゴムひも等の収縮性を有する素材で形成され、その両端が輪を形成するように、
図1において伸縮性部材4の左右の端部それぞれに取り付けられている。装着部材5の輪の部分を着用者の耳にかけることにより、伸縮性部材4が着用者の顔に密接するように形成される。なお、装着部材5はゴムひもに限るものではなく、収縮性を有する素材で形成されればよく、また、伸縮性部材4と一体に形成されていてもよい。
【0012】
〔効果〕
本発明の一実施形態に係るマスク1は、着用者の口元と対向する部分が透明部材3で形成される。そのため、
図2に示すように、透明部材3を通して着用者の口元を見ることができる。そのため、着用者の話し相手は、着用者の表情を読み取ることができる。その結果、手話でコミュニケーションをとる場合であっても、着用者の表情を容易に読み取ることができるため、円滑にコミュニケーションをとることができる。
【0013】
また、マスク1は、装着部材5を耳にかけることにより、伸縮性部材4が着用者の顔に接するようになっている。そのため、伸縮性部材4を着用者の顔に密接した状態で固定させることができ、マスク1と着用者の顔との間に隙間ができにくくすることができるため、微小異物の進入をより確実に阻止することができる。
また、透明部材3と伸縮性部材4との間に通気性部材2を設けることにより、透明部材3は、通気性部材2の長さ(軸長)相当だけ着用者の口元から離れた場所に位置することになる。そのため、着用者の息で透明部材3が曇ることを抑制することができる。
【0014】
また、透明部材3と伸縮性部材4との間は、通気性部材2で形成されているため、通気性部材2を介して空気を移動させることができ、着用者に対して息苦しさ感を与えることを抑制することができる。
また、仮に透明部材3が着用者の顔に接する状態であると、透明部材3側から見たとき、着用者の口の動きを認識しにくい。これに対し、本発明の一実施形態に係るマスク1は、透明部材3が口元から離れた位置に設けられるため、着用者の口の動きをより認識しやすくすることができる。また、透明部材3と着用者の口元とが接すると、マスク1がずれ易くなるが、透明部材3と着用者の口元との間には通気性部材2を設けることにより隙間が確保されるため、着用者が話しをしている最中に、マスク1がずれることを抑制することができる。
【0015】
また、マスク1において、透明部材3と着用者の口元との間の距離が比較的短いときには、透明部材3側から見て、着用者の口元は見えやすく、複数の相手からも口元が見えやすい。逆に透明部材3と着用者の口元との間の距離が比較的長いときほど、複数の相手からは口元が見えにくいものの、着用者の正面にいる相手には口元が見えやすい。
したがって、例えば、マスク1を着用して複数の相手に対して話しをする場合には、通気性部材2の長さ(軸長)を2cm以上3cm未満程度に設定したものであれば、複数の相手は、着用者の口元が見えやすい。また、マスク1を着用して着用者の正面にいる相手と着用者との間で一対一で会話をする場合には、通気性部材2の長さを3cm以上5cm未満程度に設定したものであれば、着用者の正面にいる相手は、着用者の口元が見やすくなる。また、通気性部材2の長さが長い場合の方が、通気性部材2の長さが短い場合に比較して着用者は息をしやすくまた透明部材3が曇ることを抑制することができる。このように、用途に応じて通気性部材2の長さを変更することによって、着用者の口元の見えやすさと、着用者の息苦しさ感とを、最適化することができる。
【0016】
〔変形例〕
(変形例1)
上記実施形態において、筒状の通気性部材2の内側に、例えば
図3に示すような支持部材11を設け、支持部材11に透明部材3を固定することによって、着用者の口元と透明部材3との距離を一定に保つようにしてもよい。このようにすることによって、通気性部材2として、通気性のよりよい、比較的薄い不織布等であっても適用することができ、通気性を向上させることができる。
また、支持部材11の一端に伸縮性部材4を固定し、他端に透明部材3を固定するように構成することで、通気性部材2のみを交換可能に構成してもよい。このように通気性部材2を交換可能に構成することによって、繰り返し使用可能なマスク1を実現することができる。
【0017】
(変形例2)
通気性部材2は、円筒形状に限るものではなく、平面形状が楕円形状であってもよく、角筒形状であってもよい。例えば、
図4に示すように、底面が長方形の角筒形状であってもよく、筒形状であり口全体を覆うことができれば形状は制限されない。この場合、透明部材3の形状は、通気性部材2の開口部2aを塞ぐことの可能な形状にすればよい。
また、通気性部材2の、開口部2aと開口部2bとは同一形状でなくともよく、例えば、
図5の底面図及び
図6の着用状態を表す図に示すように、開口部2a側の円が開口部2b側の円よりも大きくてもよい。逆に、
図7の底面図及び
図8の着用状態を表す図に示すように、開口部2a側の円が開口部2b側の円より小さくてもよく、マスク1を着用した時に、着用者の話し相手が、透明部材3側から見て着用者の少なくとも口全体を見ることができれば開口部2a、2bの形状及び大きさは限定されない。
【0018】
(変形例3)
また、通気性部材2は、開口部2aと2bとが平行となるように形成されていなくともよい。例えば、
図9に示すように、マスク1を着用したときに、透明部材3側から見て透明部材3が略垂直となるように開口部2aと開口部2bとが傾きをもって対向するように形成してもよい。つまり、一般に話しをする場合、下顎を引いて話しをすることが多い。そのため、開口部2aと2bとが平行に形成されていると、開口部2aに固定された透明部材3は、下方寄りを向く傾向にあり、透明部材3側から見て、口元の見える範囲が狭められる可能性がある。そのため、マスク1を着用したときに、透明部材3側から見て透明部材3が略垂直となるように通気性部材2を形成することによって、口元の見える範囲が狭くなることを抑制することができる。
【0019】
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 マスク
2 通気性部材
2a、2b 開口部
3 透明部材
4 伸縮性部材
5 装着部材