(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240521BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/01 307
(21)【出願番号】P 2020104700
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英一郎
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-015261(JP,A)
【文献】特開2016-049725(JP,A)
【文献】特開2017-140723(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208776(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0335493(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインヘッドを構成する液体噴射ヘッドであって、
液体を噴射する複数のノズルを有するノズル面と、
液体が通過するフィルターと、
液体を排出するための第1排出口および第2排出口を有し、前記フィルターに対して下流側に配置され、前記フィルターにより壁面の一部が構成される下流室と、
前記第1排出口を介して前記下流室に連通する第1流路と、
前記第2排出口を介して前記下流室に連通する第2流路と、
前記第1流路および前記第2流路に連通する共通流路と、を有し、
前記ノズル面に垂直な方向にみた平面視で、
前記第1排出口は、前記下流室の中心に対して第1方向
に配置され、
前記第2排出口は、前記下流室の中心に対して前記第1方向とは反対の第2方向
に配置され
、
前記第1方向は、前記ラインヘッドの長尺な方向と直交する、
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
ラインヘッドを構成する液体噴射ヘッドであって、
液体を噴射する複数のノズルを有するノズル面と、
液体が通過するフィルターと、
液体を排出するための第1排出口および第2排出口を有し、前記フィルターに対して下流側に配置され、前記フィルターにより壁面の一部が構成される下流室と、
前記第1排出口を介して前記下流室に連通する第1流路と、
前記第2排出口を介して前記下流室に連通する第2流路と、
前記第1流路および前記第2流路に連通する共通流路と、を有し、
前記ノズル面に垂直な方向にみた平面視で、
前記第1排出口は、前記下流室の中心に対して第1方向に偏って配置され、
前記第2排出口は、前記下流室の中心に対して前記第1方向とは反対の第2方向に偏って配置され、
前記平面視で、前記第1排出口および前記第2排出口は、前記下流室の中心を通り、かつ、前記下流室の中心から前記第1排出口に向かう方向に直交する方向に延在する仮想的な直線に対して互いに反対側に配置され、
前記ラインヘッドの長尺な方向は、前記第1方向に直交し、
前記下流室は、前記平面視で、
前記下流室の中心と前記第1排出口との間において、前記下流室の中心から前記第1排出口に向かって、前記下流室の幅が狭くなる部分と、
前記下流室の中心と前記第2排出口との間において、前記下流室の中心から前記第2排出口に向かって、前記下流室の幅が狭くなる部分と、を有する、
液体噴射ヘッド。
【請求項3】
ラインヘッドを構成する液体噴射ヘッドであって、
液体を噴射する複数のノズルを有するノズル面と、
液体が通過するフィルターと、
液体を排出するための第1排出口および第2排出口を有し、前記フィルターに対して下流側に配置され、前記フィルターにより壁面の一部が構成される下流室と、
前記第1排出口を介して前記下流室に連通する第1流路と、
前記第2排出口を介して前記下流室に連通する第2流路と、
前記第1流路および前記第2流路に連通する共通流路と、を有し、
前記ノズル面に垂直な方向にみた平面視で、
前記第1排出口は、前記下流室の中心に対して第1方向に偏って配置され、
前記第2排出口は、前記下流室の中心に対して前記第1方向とは反対の第2方向に偏って配置され、
前記ラインヘッドの長尺な方向は、前記第1方向に直交し、
前記平面視で、前記下流室の長手方向は、前記ラインヘッドの前記長尺な方向に直交する方向に沿う、
液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記平面視で、前記第1排出口および前記第2排出口は、前記下流室の中心を通り、かつ、前記下流室の中心から前記第1排出口に向かう方向に直交する方向に延在する仮想的な直線に対して互いに反対側に配置される、
請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記第1排出口は、前記下流室の中心に対して前記第1方向に配置され、
前記第2排出口は、前記下流室の中心に対して前記第2方向に配置される、
請求項2から4のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第1排出口の面積と、前記第2排出口の面積と、が互いに等しい、
請求項
1から5のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記下流室の中心から前記第1排出口までの距離と、前記下流室の中心から前記第2排出口までの距離と、が互いに等しい、
請求項
1から6のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記下流室は、前記平面視で、
前記下流室の中心と前記第1排出口との間において、前記下流室の中心から前記第1排出口に向かって、前記下流室の幅が狭くなる部分
と、
前記下流室の中心と前記第2排出口との間において、前記下流室の中心から前記第2排出口に向かって、前記下流室の幅が狭くなる部分と、を有する、
請求項
1または3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記フィルターとともに前記下流室を画定し、前記フィルターと対向する底壁を有し、
前記第1排出口は、前記底壁に設けられる、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記第1排出口と前記フィルターとの間の距離は、前記平面視での前記下流室の中心における前記底壁と前記フィルターとの間の距離よりも長い、
請求項
9に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記第1排出口は、前記下流室の前記第1方向での端部に配置され、
前記第2排出口は、前記下流室の前記第2方向での端部に配置される、
請求項1から
9のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
液体を導入するための導入口を有し、前記フィルターに対して上流側に配置され、前記フィルターにより壁面の一部が構成される上流室を有し、
前記導入口は、前記平面視で、前記第1排出口と前記第2排出口との間に配置される、
請求項1から
11のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
液体を噴射する複数のノズルを有するノズル面と、
液体が通過するフィルターと、
液体を排出するための第1排出口
、第2排出口および第3排出口を有し、前記フィルターに対して下流側に配置され、前記フィルターにより壁面の一部が構成される下流室と、
前記第1排出口を介して前記下流室に連通する第1流路と、
前記第2排出口を介して前記下流室に連通する第2流路と、
前記第3排出口を介して前記下流室に連通する第3流路と、
前記第1流路、前記第2流路および前記第3流路に連通する共通流路と、を有
し、
前記ノズル面に垂直な方向にみた平面視で、
前記第1排出口は、前記下流室の中心に対して第1方向に配置され、
前記第2排出口は、前記下流室の中心に対して前記第1方向とは反対の第2方向に配置され、
前記平面視で、前記下流室の中心を通り、かつ、前記第1方向に延びる仮想的な直線を第1直線とし、
前記平面視で、前記下流室の中心を通り、かつ、前記第1方向に直交する第3方向に延びる仮想的な直線を第2直線とするとき、
前記第1排出口および前記第2排出口は、前記平面視で前記第1直線上に配置され、
前記第3排出口は、前記平面視で、前記第1直線に重ならず、かつ、前記第2直線上に配置される、
液体噴射ヘッド。
【請求項14】
前記下流室と前記共通流路とを連通させる第4流路を有し、
前記下流室は、液体を前記第4流路に排出するための第4排出口を有し、
前記第3排出口および前記第4排出口は、前記平面視で前記
第1直線に対して互いに反対側の位置に配置され
、
前記第3排出口および前記第4排出口は、前記平面視で前記第2直線上に配置される、
請求項13に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項15】
前記フィルターは、前記ノズル面に対して平行である、
請求項1から14のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドを備え、
水平面と前記ノズル面の交線の延在方向は、前記ラインヘッドの前記長尺な方向であり、
前記第1排出口は、前記第2排出口よりも鉛直方向の上方又は下方に位置する、
液体噴射装置。
【請求項17】
請求項1から
15のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドと、
媒体を前記液体噴射ヘッドに対向する位置で前記第1方向または前記第2方向に搬送する搬送機構と、を有する、
液体噴射装置。
【請求項18】
前記液体噴射ヘッドによって構成され、前記第1方向または前記第2方向に交差する方向に長尺なラインヘッドを少なくとも1つ有する、
請求項17に記載の液体噴射装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのラインヘッドは、
第1ラインヘッドと、
前記第1ラインヘッドに対して前記媒体の搬送経路の上流または下流に配置された第2ラインヘッドと、を含む、
請求項18に記載の液体噴射装置。
【請求項20】
前記第1ラインヘッドは、前記ノズル面の前記第1方向での端部が前記第2方向での端部に対して鉛直方向での上方に位置するように、傾斜して配置され、
前記第2ラインヘッドは、前記ノズル面の前記第1方向での端部が前記第2方向での端部に対して鉛直方向での下方に位置するように、傾斜して配置される、
請求項19に記載の液体噴射装置。
【請求項21】
前記第1ラインヘッドにおける前記ノズル面の水平面に対する傾斜角度と、前記第2ラインヘッドの前記ノズル面の水平面に対する傾斜角度と、が互いに等しい、
請求項20に記載の液体噴射装置。
【請求項22】
液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを保持し、軸に沿って往復移動するキャリッジを有し、
前記液体噴射ヘッドは、
液体を噴射する複数のノズルを有するノズル面と、
液体が通過するフィルターと、
液体を排出するための第1排出口および第2排出口を有し、前記フィルターに対して下流側に配置され、前記フィルターにより壁面の一部が構成される下流室と、
前記第1排出口を介して前記下流室に連通する第1流路と、
前記第2排出口を介して前記下流室に連通する第2流路と、
前記第1流路および前記第2流路に連通する共通流路と、
を有し、
前記ノズル面に垂直な方向にみた平面視で、
前記第1排出口は、前記下流室の中心に対して第1方向に偏って配置され、
前記第2排出口は、前記下流室の中心に対して前記第1方向とは反対の第2方向に偏って配置され、
前記平面視で、前記第1排出口および前記第2排出口は、前記下流室の中心を通り、かつ、前記下流室の中心から前記第1排出口に向かう方向に直交する方向に延在する仮想的な直線に対して互いに反対側に配置され、
前記第1方向は、前記軸の延在方向に直交し、
前記第1排出口は、前記第2排出口よりも鉛直方向の上方又は下方に位置する、
液体噴射装置。
【請求項23】
前記第1排出口は、前記下流室の中心に対して前記第1方向に配置され、
前記第2排出口は、前記下流室の中心に対して前記第2方向に配置される、
請求項22に記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式のプリンターに代表されるように、インク等の液体を噴射する液体噴射ヘッドを有する液体噴射装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の液体噴射ヘッドは、液体を噴射するノズルに連通する液体流路に液体を導入する液体導入部材を有する。当該液体導入部材は、液体が導入される導入口が設けられるフィルター室と、当該導入口から導入された液体をろ過するフィルターと、フィルターを通過した液体を排出する開口が設けられるフィルター下流室と、を有する。
【0003】
特許文献2には、用紙を回転搬送するドラムの周囲に4本のインクジェットヘッドを配置した構成の装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の装置では、4本のインクジェットヘッドのそれぞれが水平面に対して傾斜した姿勢で設置される。ここで、例えば、特許文献1に記載の液体噴射ヘッドを特許文献2に記載される装置に適用する場合が想定される。しかし、特許文献1に記載の液体噴射ヘッドでは、液体を排出する開口がフィルター下流室の中央部に配置されるため、水平面に対して傾斜した状態で使用した場合、フィルター下流室の液体を排出する開口よりも上方の部分に気泡が滞留してしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する複数のノズルを有するノズル面と、液体が通過するフィルターと、液体を排出するための第1排出口および第2排出口を有し、前記フィルターに対して下流側に配置され、前記フィルターにより壁面の一部が構成される下流室と、前記第1排出口を介して前記下流室に連通する第1流路と、前記第2排出口を介して前記下流室に連通する第2流路と、
前記第1流路および前記第2流路に連通する共通流路と、を有し、前記ノズル面に垂直な方向にみた平面視で、前記第1排出口は、前記下流室の中心に対して第1方向に偏って配置され、前記第2排出口は、前記下流室の中心に対して前記第1方向とは反対の第2方向に偏って配置される。
【0008】
本発明の好適な他の態様に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する複数のノズルを有するノズル面と、液体が通過するフィルターと、液体を排出するための第1排出口および第2排出口を有し、前記フィルターに対して下流側に配置され、前記フィルターにより壁面の一部が構成される下流室と、前記第1排出口を介して前記下流室に連通する第1流路と、前記第2排出口を介して前記下流室に連通する第2流路と、前記第3排出口を介して前記下流室に連通する第3流路と、前記第1流路、前記第2流路および前記第3流路に連通する共通流路と、を有する。
【0009】
本発明の好適な態様に係る液体噴射装置は、前述のいずれかの態様の液体噴射ヘッドと、
媒体を搬送する搬送機構と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る液体噴射装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態の液体噴射ヘッドを有する液体噴射モジュールの斜視図である。
【
図3】
図2に示す液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
【
図4】液体噴射ヘッドのヘッド本体の平面図である。
【
図8】下流室、第1排出口および第2排出口を説明するための平面図である。
【
図9】第1排出口および第2排出口の作用を説明するための模式図である。
【
図10】従来の問題点を説明するための模式図である。
【
図11】第2実施形態に係る液体噴射装置の概略図である。
【
図12】第3実施形態に係る液体噴射装置の概略図である。
【
図13】第4実施形態に係る液体噴射ヘッドを有する液体噴射モジュールの斜視図である。
【
図15】
図13に示す液体噴射ヘッドにおけるノズルの配列を説明するための図である。
【
図16】第4実施形態における流路部材の構成例を示す図である。
【
図17】第4実施形態における流路部材の構成例を示す図である。
【
図18】変形例1における下流室および排出口を示す模式図である。
【
図19】変形例2における下流室および排出口を示す模式図である。
【
図20】変形例3における下流室および排出口を示す模式図である。
【
図21】変形例4における下流室および排出口を示す模式図である。
【
図22】変形例5における下流室および排出口を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0012】
以下の説明は、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向をX1方向といい、X1方向と反対の方向をX2方向という。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向をY1方向およびY2方向という。また、Z軸に沿って互いに反対の方向をZ1方向およびZ2方向という。Y2方向は、「第1方向」の一例である。Y1方向は、「第2方向」の一例である。X1方向またはX2方向は、「第3方向」の一例である。
【0013】
ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。ただし、Z軸は、鉛直な軸でなくともよく、鉛直な軸に対して傾斜してもよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0014】
1.第1実施形態
1-1.液体噴射装置100
【0015】
図1は、第1実施形態に係る液体噴射装置100の構成例を示す概略図である。液体噴射装置100は、液体の一例であるインクを液滴として媒体101に噴射するインクジェット方式の印刷装置である。本実施形態の液体噴射装置100は、インクを噴射する複数のノズルが媒体101の幅方向での全範囲にわたり分布する、いわゆるライン方式の印刷装置である。媒体101は、典型的には印刷用紙である。なお、媒体101は、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象でもよい。
【0016】
図1に示すように、液体噴射装置100には、インクを貯留する液体容器102が装着される。液体容器102の具体的な態様としては、例えば、液体噴射装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、および、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器102に貯留されるインクの種類は任意である。
【0017】
本実施形態の液体容器102は、図示しないが、第1液体容器と第2液体容器とを含む。第1液体容器には、第1インクが貯留される。第2液体容器には、第1インクと異なる種類の第2インクが貯留される。例えば、第1インクおよび第2インクは、互いに異なる色のインクである。なお、第1インクと第2インクとが同じ種類のインクであってもよい。
【0018】
液体噴射装置100は、制御ユニット20と搬送機構30と液体噴射モジュール40と循環機構50とを有する。制御ユニット20は、液体噴射装置100の各要素の動作を制御する。制御ユニット20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と、半導体メモリー等の記憶回路とを含む。当該記憶回路には、各種プログラムおよび各種データが記憶される。当該処理回路は、当該プログラムを実行するとともに当該データを適宜使用することにより各種制御を実現する。
【0019】
搬送機構30は、制御ユニット20による制御のもとで、媒体101を方向DMに搬送する。本実施形態の方向DMは、Y2方向である。
図1に示す例では、搬送機構30は、X軸に沿って長尺な搬送ローラーと、当該搬送ローラーを回転させるモーターと、を含む。なお、搬送機構30は、搬送ローラーを用いる構成に限定されず、例えば、媒体101を外周面に静電力等により吸着させた状態で搬送するドラムまたは無端ベルトを用いる構成でもよい。
【0020】
液体噴射モジュール40は、制御ユニット20による制御のもとで、液体容器102から循環機構50を介して供給されるインクを複数のノズルのそれぞれからZ2方向に媒体101に噴射する。液体噴射モジュール40は、X軸の方向における媒体101の全範囲にわたり複数のノズルが分布するように配置される複数の液体噴射ヘッド10を有するラインヘッドである。つまり、複数の液体噴射ヘッド10は、X軸の延びる方向に長尺なラインヘッドを構成する。複数の液体噴射ヘッド10からのインクの噴射が搬送機構30による媒体101の搬送に並行して行われることにより、媒体101の表面にインクによる画像が形成される。なお、液体噴射モジュール40は、X軸の延びる方向における媒体101の全範囲にわたり複数のノズルが分布するように配置される単体の液体噴射ヘッド10のみで構成されたX軸の延びる方向に長尺なラインヘッドであってもよい。
【0021】
図1に示す例では、液体容器102が循環機構50を介して液体噴射モジュール40に接続される。循環機構50は、液体噴射モジュール40にインクを供給するとともに、液体噴射モジュール40から排出されるインクを液体噴射モジュール40への再供給のために回収する機構である。循環機構50は、例えば、インクを貯留するサブタンクと、サブタンクから液体噴射モジュール40にインクを供給するための供給流路と、液体噴射モジュールからインクをサブタンクに回収するための回収流路と、インクを適宜に流動させるためのポンプと、を有する。これらは、前述の第1インクおよび第2インクのそれぞれについて設けられる。以上の循環機構50の動作により、インクの粘度上昇を抑えたり、インク内の気泡の滞留を低減したりすることができる。
【0022】
なお、液体噴射装置100は、液体噴射モジュール40の保守動作に利用される保守機構を有してもよい。保守動作は、例えばフラッシング動作とクリーニング動作とを含む。フラッシング動作は、画像の形成に直接的には寄与しないインクを複数のノズルから強制的に噴射する動作である。クリーニング動作は、液体噴射モジュール40の上流側からの加圧または下流側からの吸引により液体噴射モジュール40の内部のインクを複数のノズルから強制的に排出する動作である。保守機構は、フラッシング動作により各ノズルNから噴射されるインクを受容するフラッシングボックスと、クリーニング動作の実行時に複数のノズルNを封止するキャップとを有する。
【0023】
以上のように、液体噴射装置100は、液体噴射ヘッド10と、媒体101を搬送する搬送機構30と、を有する。搬送機構30は、媒体101を液体噴射ヘッド10に対向する位置でY2方向に搬送する。本実施形態の液体噴射装置100は、ラインヘッドの一例として液体噴射モジュール40を含む。液体噴射モジュール40は、液体噴射ヘッド10を含み、Y2方向に交差する方向に長尺である。本実施形態では、液体噴射モジュール40は、液体噴射ヘッド10を含み、Y2方向に直交する方向に長尺である。
【0024】
1-2.液体噴射モジュール40
【0025】
図2は、第1実施形態の液体噴射ヘッド10を有する液体噴射モジュール40の斜視図である。
図2に示すように、液体噴射モジュール40は、支持体41と複数の液体噴射ヘッド10とを有する。支持体41は、複数の液体噴射ヘッド10を支持する部材である。
図2に示す例では、支持体41は、金属等で構成される板状部材であり、複数の液体噴射ヘッド10を取り付けるための取付孔41aが設けられる。取付孔41aには、複数の液体噴射ヘッド10がX軸に沿う方向に並ぶ状態で挿入されており、各液体噴射ヘッド10は、支持体41に対してネジ止め等により固定される。
図2では、2個の液体噴射ヘッド10が代表的に図示される。なお、液体噴射モジュール40における液体噴射ヘッド10の数は、任意である。また、支持体41の形状等も、
図2に示す例に限定されず、任意である。
【0026】
1-3.液体噴射ヘッド10
図3は、
図2に示す液体噴射ヘッド10の分解斜視図である。
図3に示すように、液体噴射ヘッド10は、流路構造体11と配線基板12とホルダー13と複数のヘッド本体14_1、14_2、14_3、14_4、14_5および14_6と固定板15とベース16とを有する。これらは、Z2方向に向かって、ベース16、流路構造体11、配線基板12、ホルダー13、複数のヘッド本体14_1、14_2、14_3、14_4、14_5および14_6、固定板15の順に配置される。以下、液体噴射ヘッド10の各部を順次説明する。なお、以下では、ヘッド本体14_1、14_2、14_3、14_4、14_5および14_6のそれぞれをヘッド本体14という場合がある。
【0027】
流路構造体11は、循環機構50と複数のヘッド本体14との間でインクを流すための流路が内部に設けられる構造体である。流路構造体11は、
図3に示すように、流路部材1と接続管11a、11b、11cおよび11dとを有する。
図3では図示を省略するが、流路部材1には、第1インクを複数のヘッド本体14に供給するための供給流路と、第2インクを複数のヘッド本体14に供給するための供給流路と、複数のヘッド本体14から第1インクを排出するための排出流路と、複数のヘッド本体14から第2インクを排出するための排出流路とが設けられる。また、各供給流路の途中には、異物等を捕捉するためのフィルターが設置される。流路部材1の内部構成については、後に詳述する。
【0028】
流路部材1は、層21、22および23を有し、これらは、この順でZ2方向に積層される。これらの層に適宜に溝または孔等が設けられることにより、供給流路および排出流路等の流路が構成される。層21、22および23のそれぞれは、例えば、樹脂材料で構成されており、射出成形により形成される。層21、22および23は、例えば、接着剤により互いに接合される。なお、層21、22および23のZ軸に沿う厚さは、互いに同じでも異なってもよい。
【0029】
流路部材1は、Z軸に垂直な方向に拡がる板状をなす。
図3に示す例では、流路部材1には、後述のコネクター12cが挿入される孔1aが設けられる。以上の流路部材1のZ1方向を向く面には、接続管11a、11b、11cおよび11dが突出する。
【0030】
接続管11aは、流路部材1に第1インクを供給するための流路を構成する管体である。また、接続管11bは、流路部材1に第2インクを供給するための流路を構成する管体である。一方、接続管11cは、流路部材1から第1インクを排出するための流路を構成する管体である。また、接続管11dは、流路部材1から第2インクを排出するための流路を構成する管体である。
【0031】
配線基板12は、複数のヘッド本体14と後述の集合基板16bとを電気的に接続するための実装部品である。配線基板12は、例えば、リジッド配線基板である。配線基板12は、流路構造体11とホルダー13との間に配置されており、配線基板12における流路構造体11と対向する面には、コネクター12cが設置される。コネクター12cは、後述の集合基板16bに接続される接続部品である。また、配線基板12には、複数の孔12aおよび複数の開口部12bが設けられる。各孔12aは、流路構造体11とホルダー13との接続を許容するための孔である。各開口部12bは、ヘッド本体14と配線基板12とを接続する配線部材14aが通される孔である。当該配線部材14aは、配線基板12のZ1方向を向く面に接続される。配線部材14aは、後述する駆動素子EaまたはEbと電気的に接続される配線を含む部材であり、例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)やCOF(Chip On Film)等である。
【0032】
ホルダー13は、複数のヘッド本体14を収容および支持する構造体である。ホルダー13は、例えば、樹脂材料または金属材料等で構成される。ホルダー13は、Z軸に垂直な方向に拡がる板状をなす。ホルダー13には、複数のインク孔13aと複数の配線孔13bとが設けられる。各インク孔13aは、ヘッド本体14と流路構造体11との間でインクを流動させる流路における流路構造体11側の開口である。各配線孔13bは、ヘッド本体14と配線基板12とを接続する配線部材14aが通される孔である。ここで、ホルダー13の内部には、図示しないが、ヘッド本体14に第1インクを供給する供給流路と、ヘッド本体14に第2インクを供給する供給流路と、ヘッド本体14から流路構造体11の排出流路CMへ第1インクを流動させるための循環流路と、ヘッド本体14から流路構造体11の排出流路CMへ第2インクを流動させるための循環流路と、とを有する。また、図示しないが、ホルダー13の内部には、各インク孔13aと複数のヘッド本体14との間でインクを分配または集合させるための分岐流路が設けられる。また、図示しないが、ホルダー13のZ2方向を向く面には、複数のヘッド本体14を収容する複数の凹部が設けられる。
【0033】
各ヘッド本体14は、インクを噴射する。具体的には、
図3では図示を省略するが、各ヘッド本体14は、第1インクを噴射する複数のノズルと、第2インクを噴射する複数のノズルと、を有する。これらのノズルは、各ヘッド本体14のZ2方向を向く面であるノズル面FNに設けられる。ヘッド本体14の構成については、後述する。なお、ノズル面FNに垂直な方向にみた平面視を単に「平面視」ともいう。
【0034】
固定板15は、複数のヘッド本体14をホルダー13に対して固定するための板部材である。具体的には、固定板15は、ホルダー13との間に複数のヘッド本体14を挟む状態で配置され、ホルダー13に対して接着剤により固定される。固定板15は、例えば、金属材料等で構成される。固定板15には、当該複数のヘッド本体14のノズルを露出させるための複数の開口部15aが設けられる。
図3に示す例では、当該複数の開口部15aは、ヘッド本体14ごとに個別に設けられる。なお、開口部15aは、2以上のヘッド本体14で共用される態様でもよい。
【0035】
ベース16は、前述の支持体41に対して、流路構造体11、配線基板12、ホルダー13、複数のヘッド本体14、および固定板15を固定するための部材である。ベース16は、本体16aと集合基板16bとカバー16cとを有する。
【0036】
本体16aは、ホルダー13に対してネジ止め等により固定されることにより、ベース16とホルダー13との間に配置される流路構造体11および配線基板12を保持する。本体16aは、例えば、樹脂材料等で構成される。本体16aは、前述の流路部材1に対向する板状の部分を有しており、当該板状の部分には、前述の接続管11a、11b、11cおよび11dが挿入される複数の孔16dが設けられる。また、本体16aは、当該板状の部分からZ2方向に延びる部分を有しており、当該部分の先端には、前述の支持体41に固定するためのフランジ16eが設けられる。
【0037】
集合基板16bは、制御ユニット20と前述の配線基板12とを電気的に接続するための実装部品である。集合基板16bは、例えば、リジット配線基板である。カバー16cは、集合基板16bを保護するとともに集合基板16bを本体16aに対して固定するための板状部材である。カバー16cは、例えば、樹脂材料等で構成されており、ネジ止め等により本体16aに固定される。
【0038】
1-4.ヘッド本体14
図4は、液体噴射ヘッド10のヘッド本体14の平面図である。
図4には、Z1方向にみたヘッド本体14の内部の構造が模式的に図示される。
図4に示すように、ヘッド本体14は、液体噴射部Qaと液体噴射部Qbとを有する。液体噴射部Qaは、前述の循環機構50から供給される第1インクを噴射する複数のノズルNで構成されるノズル列Laを有する。液体噴射部Qbは、循環機構50から供給される第2インクを噴射する複数のノズルNで構成されるノズル列Lbを有する。ノズル列Laおよびノズル列Lbのそれぞれにおける複数のノズルNは、方向DNに配列される。
【0039】
液体噴射部Qaは、液体貯留室Raと複数の圧力室Caと複数の駆動素子Eaとを有する。液体貯留室Raは、ノズル列Laの複数のノズルNにわたり連続する共通液室である。圧力室Caおよび駆動素子Eaのそれぞれは、ノズル列LaのノズルNごとに設けられる。圧力室Caは、ノズルNに連通する空間である。複数の圧力室Caのそれぞれには、液体貯留室Raから供給される第1インクが充填される。駆動素子Eaは、圧力室Ca内の第1インクの圧力を変動させる。駆動素子Eaは、例えば、圧力室Caの壁面を変形させることで当該圧力室Caの容積を変化させる圧電素子、または、圧力室Ca内の第1インクの加熱により圧力室Ca内に気泡を発生させる発熱素子である。駆動素子Eaが圧力室Ca内の第1インクの圧力を変動させることで、当該圧力室Ca内の第1インクがノズルNから噴射される。
【0040】
液体噴射部Qbは、液体噴射部Qaと同様に、液体貯留室Rbと複数の圧力室Cbと複数の駆動素子Ebとを有する。液体貯留室Rbは、ノズル列Lbの複数のノズルNにわたり連続する共通液室である。圧力室Cbおよび駆動素子Ebのそれぞれは、ノズル列LbのノズルNごとに設けられる。複数の圧力室Cbのそれぞれには、液体貯留室Rbから供給される第2インクが充填される。駆動素子Ebは、例えば、前述の圧電素子または発熱素子である。駆動素子Ebが圧力室Cb内の第2インクの圧力を変動させることで、当該圧力室Cb内の第2インクがノズルNから噴射される。
【0041】
図4に示すように、ヘッド本体14には、導入口Ra_inと排出口Ra_outと導入口Rb_inと排出口Rb_outとが設けられる。導入口Ra_inおよび排出口Ra_outのそれぞれは、液体貯留室Raに連通する。導入口Rb_inおよび排出口Rb_outのそれぞれは、液体貯留室Rbに連通する。
【0042】
以上のヘッド本体14では、ノズル列Laの各ノズルNから噴射されずに液体貯留室Raに貯留される第1インクが排出口Ra_out、ホルダー13における第1インクのための循環流路、流路構造体11における第1インクのための排出流路、循環機構50における第1インクのためのサブタンク、流路構造体11における第1インクのための供給流路、ホルダー13における第1インクのための供給流路、導入口Ra_in、液体貯留室Raをこの順で経由して循環する。同様に、ノズル列Lbの各ノズルNから噴射されずに液体貯留室Rbに貯留される第2インクが排出口Rb_out、ホルダー13における第2インクのための循環流路、流路構造体11における第2インクのための排出流路、循環機構50における第2インクのためのサブタンク、流路構造体11における第2インクのための供給流路、ホルダー13における第2インクのための供給流路、導入口Rb_in、液体貯留室Rbをこの順で経由して循環する。
【0043】
図5は、ホルダー13の平面図である。
図5に示すように、ホルダー13には、6個のヘッド本体14_1~14_6が保持される。これらのヘッド本体は、ヘッド本体14_1、14_4、14_2、14_5、14_3、14_6の順に、X2方向に並ぶ。ここで、ヘッド本体14_1~14_3は、ヘッド本体14_4~14_6に対してY1方向にずれた位置に配置される。ただし、ヘッド本体14_1~14_6は、X1方向またはX2方向にみて互いに重なる部分を有する。また、ヘッド本体14_1~14_6は、ノズル列LaおよびLbの延びる方向DNが互いに平行となるように配置される。ただし、ヘッド本体14_1~14_6のそれぞれは、媒体101の搬送方向である方向DMに対して方向DNが傾斜するように配置される。
【0044】
1-5.流路部材1
図6は、流路構造体11の平面図である。
図6では、Z2方向にみた流路部材1内の構造の一例が破線で示される。
図6に示すように、流路部材1の内部には、2個の共通流路CCと2個の排出流路CMと2個のフィルター室RFとが設けられる。2個の共通流路CCのそれぞれは、共通流路の一例である。
【0045】
2個の共通流路CCのうち、一方の共通流路CCは、接続管11aから各ヘッド本体14の液体貯留室Raにインクを供給するための流路であり、他方の共通流路CCは、接続管11bから各ヘッド本体14の液体貯留室Rbにインクを供給するための流路である。各共通流路CCには、ヘッド本体14に向けてインクを排出する排出口CEが連通する。また、共通流路CCは、フィルター室RFを介して接続管11aまたは11bの内部空間に連通する。フィルター室RFは、後述のフィルター25が設置される空間であり、第1流路C1および第2流路C2を介して共通流路CCに連通する。
【0046】
2個の排出流路CMのうち、一方の排出流路CMは、各ヘッド本体14の液体貯留室Raから接続管11cにインクを排出するための流路であり、他方の排出流路CMは、各ヘッド本体14の液体貯留室Rbから接続管11dにインクを排出するための流路である。各排出流路CMには、ヘッド本体14からのインクが供給される導入口CIが連通する。
【0047】
図7は、
図6中のA-A線断面図である。
図8は、下流室R2、第1排出口24cおよび第2排出口24dを説明するための平面図である。なお、
図7では、流路部材1について、接続管11aに対応する構成が代表的に図示される。接続管11bに対応する構成は、接続管11aに対応する構成と同様である。
【0048】
図7に示すように、流路部材1では、層21、22および23がこの順でZ2方向に積層される。
【0049】
層21には、凹面21aと導入口21bと溝21cとが設けられる。凹面21aは、層21のZ2方向を向く面に設けられており、フィルター室RFの壁面の一部を構成する。
図7に示す例では、凹面21aは、導入口21bに向けて連続的に深くなる形状をなす。導入口21bは、凹面21aに開口するとともに接続管11aの内部空間に連通する貫通孔である。
図7に示す例では、接続管11aが層21と一体で構成される。したがって、接続管11aが層21と同様に樹脂材料で構成される。溝21cは、層21のZ2方向を向く面に凹面21aの外周に沿って設けられており、後述の固定部材24の一部を収容する空間を構成する。溝21cは、接着剤の逃げ部としても機能し得る。
【0050】
なお、接続管11aは、層21と別体で構成されてもよい。この場合、接続管11aは、接続管11aが金属材料等で構成されてもよく、層21に対して接着剤等により固定される。また、溝21cは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。また、接続管11aと同様に、接続管11b~11cは、層21と一体で構成されていてもよいし、層21と別体で構成されてもよい。
【0051】
層22には、凹部22aと溝22bと孔22cと孔22dとが設けられる。凹部22aは、層22のZ1方向を向く面に設けられており、後述の固定部材24の一部を収容する空間を構成する。溝22bは、層22のZ2方向を向く面に設けられており、共通流路CCの一部を構成する。
図6および7に示す例では、共通流路CCは、Y軸に沿って延びており、Y2方向に向けてX-Z平面における面積が狭くなる部分を有する形状をなす。このため、溝22bは、Y軸に沿って延びる形状をなす。孔22cおよび孔22dのそれぞれは、凹部22aおよび溝22bに開口しており、層22を貫通する孔である。
図7に示す例では、孔22cは、溝22bのY2方向での端に接続される。孔22dは、孔22cに対してY1方向の位置で溝22bに接続される。
【0052】
層23には、溝23aが設けられる。溝23aは、層23のZ1方向を向く面に設けられており、共通流路CCの一部を構成する。
図7に示す例では、溝23aは、Y軸に沿って延びる形状をなす。なお、
図7に示す例では、層22の溝22bと層23の溝23aとで共通流路CCが構成されるが、溝22bおよび溝23aのうちの一方で共通流路CCが構成されてもよい。
【0053】
また、
図7に示すように、流路部材1は、前述の層21、22および23のほか、層21と層22との間に介在する固定部材24およびフィルター25を有する。
【0054】
固定部材24は、フィルター25を層21および層22の少なくとも一方に固定するとともに、フィルター室RFの壁面の一部を構成する略板状の部材である。
図7に示す例では、固定部材24は、前述の凹部22aに設置される。固定部材24は、例えば、樹脂材料で構成されており、射出成形により形成される。ここで、フィルター25をインサート品とするインサート成形により固定部材24を形成することにより、フィルター25を固定部材24に対して固定することができる。また、固定部材24は、例えば、層21および層22の少なくとも一方に対して接着剤により固定される。
【0055】
このように、固定部材24を介してフィルター25を層21および層22の少なくとも一方に固定することにより、フィルター25を層21および層22の少なくとも一方に直接固定する構成に比べて、層21および層22の構成材料の選択の幅が広くなったり、接着剤がフィルター25に不本意に付着することを低減したりすることができる。なお、固定部材24の構成材料は、層21または層22の構成材料と同じでも異なってもよい。
【0056】
固定部材24には、底壁24aと枠部24bと第1排出口24cと第2排出口24dとが設けられる。
【0057】
底壁24aは、固定部材のZ1方向を向く面に設けられており、フィルター室RFの壁面の一部を構成する。
図7に示す例では、底壁24aは、第1排出口24cおよび第2排出口24dのそれぞれに向けて連続的に深くなる形状をなす。枠部24bは、底壁24aの外周縁に沿う環状の壁部であり、フィルター室RFの側壁を構成する。より具体的には枠部24bの内周面の一部は、下流室R2の側壁24iを構成する。
図7に示す例では、枠部24bの一部が前述の溝21cに挿入される。この挿入により、層21に対して固定部材24が位置決めされる。また、枠部24bの外周面と凹部22aとの間には、隙間が形成される。この隙間は、接着剤の逃げ部として機能し得る。第1排出口24cおよび第2排出口24dのそれぞれは、底壁24aに開口するとともに、固定部材24を貫通する孔である。また、第1排出口24cは、前述の孔22cに接続されており、孔22cとともに第1流路C1を構成する。第2排出口24dは、前述の孔22dに接続されており、孔22dとともに第2流路C2を構成する。
【0058】
また、
図8に示すように、固定部材24には、枠部24bから中心線LCから離れる方向に突出するフランジ24gが設けられる。フランジ24gには、層22に対する位置決めのための孔24hが設けられる。図示しないが、層22のZ1方向を向く面には、孔24hに挿入される突起が設けられる。なお、中心線LCは、中心PCを通り、かつ、Z軸に平行な直線である。中心PCは、平面視における下流室R2の幾何学的な中心である。フランジ24gは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。
【0059】
フィルター25は、インクの通過を許容しつつ、インクに混入する異物等を捕捉する板状またはシート状の部材である。フィルター25は、例えば、綾畳織または平畳織等の金属繊維で構成される。なお、フィルター25は、金属繊維を用いる構成に限定されず、例えば、不織布等の樹脂繊維で構成されてもよい。フィルター25は、典型的にはノズル面FNに対して平行となるように配置される。ただし、フィルター25は、ノズル面FNに対して0度以上45度以下の範囲で傾斜するように設けられていてもよい。
【0060】
フィルター25は、前述の固定部材24の枠部24bに固定されており、
図8中の二点鎖線で示すように、底壁24aの全域を包含する領域に設けられる。このため、
図7に示すように、フィルター室RFは、フィルター25により上流室R1と下流室R2とに区分される。上流室R1は、フィルター25よりもZ1方向に位置しており、凹面21aを壁面の一部とする空間である。下流室R2は、フィルター25よりもZ2方向に位置しており、側壁24iおよび底壁24aを壁面の一部とする空間である。
【0061】
以上のように、液体噴射ヘッド10は、ノズル面FNと、フィルター25と、下流室R2と、第1流路C1と、第2流路C2と、「共通流路」の一例である共通流路CCとを有する。ここで、前述のように、ノズル面FNは、液体の一例であるインクを噴射する複数のノズルNを有する。フィルター25には、インクが通過する。下流室R2は、インクを排出するための第1排出口24cおよび第2排出口24dを有し、フィルター25に対して下流側に配置され、フィルター25により壁面の一部が構成される。第1流路C1は、第1排出口24cを介して下流室R2に連通する。第2流路C2は、第2排出口24dを介して下流室R2に連通する。共通流路CCは、第1流路C1および第2流路C2に連通する。
【0062】
ここで、液体噴射モジュール40は、ラインヘッドである液体噴射モジュール40の長手方向に延びるX軸まわりに回転することノズル面FNが水平面SFに対して傾斜するように設置される場合がある。本実施形態では、
図8に示すように、ノズル面FNに垂直な方向にみた平面視で、第1排出口24cは下流室R2の中心PCに対してY2方向に偏って配置されるのに対し、第2排出口24dは下流室R2の中心PCに対してY1方向に偏って配置される。このため、X軸に平行な軸まわりにノズル面FNを水平面SFに対して傾斜させても、下流室R2で生じた気泡を第1排出口24cまたは第2排出口24dを介して排出することができる。
【0063】
図9は、第1排出口24cおよび第2排出口24dの作用を説明するための模式図である。例えば、
図9に示すように、第1排出口24cが第2排出口24dよりも鉛直方向での上方に位置する場合、下流室R2内に生じた気泡は浮力が働くことで下流室R2の鉛直方向での上方へ移動するが、当該気泡は鉛直方向での上方に位置する第1排出口24cを介して排出される。また、第1排出口24cが第2排出口24dよりも鉛直方向での下方に位置する場合でも同様に、下流室R2内に生じた気泡は浮力が働くことで下流室R2の鉛直方向での上方へ移動するが、当該気泡は鉛直方向での上方に位置する第2排出口24dを介して排出される。以上から、液体噴射ヘッド10の設置姿勢によらず、下流室R2における気泡の滞留を低減することができる。このため、気泡がフィルター25の目を塞ぐことによるインクの吐出異常の発生が防止される。
【0064】
図10は、従来の問題点を説明するための模式図である。
図10に示すように、下流室R2のインクを1つの排出口24Xから流路CX1およびCX2に排出させる構成では、水平面SFに対して下流室R2が傾斜すると、浮力によって上昇した気泡Bが下流室R2の上部に滞留してしまう。このような気泡Bは、フィルター25の目を塞いでしまい、この結果、インクの吐出異常を招く。ここで、排出口24Xを下流室R2の中心から上方にずれた位置に配置することも考えられる。しかし、この場合、設置姿勢が限定されてしまうので、使用形態ごとに排出口24Xの位置の異なるヘッドを製造しなければならず、コストの観点から望ましくない。
【0065】
ここで、第1排出口24cの面積と第2排出口24dの面積とが互いに等しいことが好ましい。この場合、第1排出口24cが第2排出口24dよりも鉛直方向での上方および下方のいずれに位置しても、気泡Bの排出しやすさを等しくすることができる。したがって、インクを循環させたり保守動作を行ったりすることにより気泡Bの排出を促進する構成では、下流室R2の設置姿勢ごとに、気泡の排出のための動作条件を変えなくて済む。この結果、装置の動作を簡単化することができる。なお、本明細書において、「等しい」とは、厳密に等しい場合のほか、製造誤差等に起因する5%以内の差を有する場合も含む。
【0066】
同様の観点から、下流室R2の中心PCから第1排出口24cまでの距離L1と、流室の中心PCから第2排出口24dまでの距離L2と、が互いに等しいことが好ましい。この場合、第1排出口24cが第2排出口24dよりも鉛直方向での上方および下方のいずれに位置しても、気泡Bの排出しやすさを等しくすることができる。
【0067】
また、下流室R2は、平面視で、下流室R2の中心PCから第1排出口24cに向かって、下流室R2のX軸の延在する方向における幅が狭くなる部分を有する。このため、当該部分を有しない構成に比べて、下流室R2の中心PCから第1排出口24cに向かって、インクおよび気泡を流れやすくすることができる。同様に、下流室R2は、平面視で、下流室R2の中心PCから第2排出口24dに向かって、下流室R2のX軸の延在する方向における幅が狭くなる部分を有する。このため、当該部分を有しない構成に比べて、下流室R2の中心PCから第2排出口24dに向かって、インクおよび気泡を流れやすくすることができる。
【0068】
本実施形態では、下流室R2の平面視での形状が略六角形をなしており、第1排出口24cが当該略六角形の1つの角近傍に配置される。また、
図8では、下流室R2の略六角形の各角はR形状を有するが、R形状を有さない構成であってもよい。このため、前述のように、平面視で下流室R2のX軸の延在する方向における幅が中心PCから第1排出口24cに向かって連続的に狭くなる部分を有する。ここで、平面視で略六角形をなす下流室R2の6個の角のうち第1排出口24cが配置される角の対角となる角近傍に第2排出口24dが配置される。このため、平面視で下流室R2のX軸の延在する方向における幅が中心PCから第2排出口24dに向かって連続的に狭くなる部分を有する。なお、下流室R2の平面視形状は、略六角形に限定されず、任意であるが、前述のように下流室R2の中心PCから第1排出口24cまたは第2排出口24dに向かってインクおよび気泡を流れやすくする部分を有することが好ましい。また、当該幅が狭くなる部分は、中心PCと第1排出口24cまたは第2排出口24dとの間における下流室R2の少なくとも一部に設けられていればよい。また、当該幅の狭くなる部分は、連続的に幅の狭くなる態様に限定されず、段階的に幅の狭くなる態様でもよい。
【0069】
液体噴射ヘッド10は、前述のように、フィルター25とともに下流室R2を画定し、フィルター25と対向する底壁24aを有する。ここで、底壁24aには、第1排出口24cが設けられる。このため、第1排出口24cが下流室R2の側壁に設けられる構成に比べて、第1排出口24cから気泡を排出させやすい。また、第1排出口24cが下流室R2の側壁に設けられる構成に比べて、第1流路C1の引き回しを簡単化することができ、この結果、液体噴射ヘッド10の小型化を図りやすいという利点もある。本実施形態では、底壁24aには、第1排出口24cのほか、第2排出口24dも設けられており、前述と同様の効果が得られる。なお、液体噴射ヘッド10に求められる条件等によっては、第1排出口24cおよび第2排出口24dのうちの少なくとも一方が下流室R2の側壁に設けられてもよい。
【0070】
同様に、第1排出口24cから気泡を排出させやすくする観点から、第1排出口24cとフィルター25との間の距離L3は、平面視での下流室R2の中心PCにおける底壁24aとフィルター25との間の距離L4よりも長い。距離L3は、第1排出口24cとフィルター25との間のZ軸の延在方向における距離であり、距離L4は、平面視で下流室R2の中心PCと重なる位置での底壁24aとフィルター25との間のZ軸の延在方向における距離である。本実施形態では、底壁24aの深さが第1排出口24cに向かって連続的に深くなる。このため、底壁24aに沿って第1排出口24cに向けてインクおよび気泡が流れやすい。また、本実施形態では、距離L3と同様、第2排出口24dとフィルター25との間の距離も、平面視での下流室R2の中心PCにおける底壁24aとフィルター25との間の距離L4よりも長い。このため、底壁24aに沿って第2排出口24dに向けてインクおよび気泡が流れやすい。
【0071】
また、第1排出口24cは、下流室R2のY2方向での端部に配置されるのに対し、第2排出口24dは、下流室R2のY1方向での端部に配置される。このため、第1排出口24cが第2排出口24dよりも鉛直方向での上方および下方のいずれに位置する場合でも、気泡Bを排出しやすくすることができる。ここで、「下流室R2のY2方向での端部」とは、下流室R2の中心線LCよりも下流室R2のY2方向での端に近い位置の部分である。また、第1排出口24cと下流室R2の側壁との間の距離が第1排出口24cの直径よりも小さい場合、第1排出口24cが下流室R2のY2方向での端部に配置されるといえる。同様に、「下流室R2のY1方向での端部」とは、下流室R2の中心線LCよりも下流室R2のY1方向での端に近い位置の部分である。また、第2排出口24dと下流室R2の側壁との間の距離が第2排出口24dの直径よりも小さい場合、第2排出口24dが下流室R2のY1方向での端部に配置されるといえる。
【0072】
液体噴射装置100は、上流室R1を有する。上流室R1は、インクを導入するための導入口21bを有し、フィルター25に対して上流側に配置され、フィルター25により壁面の一部が構成される。導入口21bは、平面視で、第1排出口24cと第2排出口24dとの間に配置される。このため、導入口21bが平面視で第1排出口24cと第2排出口24dとの間に配置されない構成に比べて、第1排出口24cが第2排出口24dよりも鉛直方向での上方および下方のいずれに位置する場合でも、気泡Bの排出しやすさを等しくすることができる。本実施形態では、導入口21bが平面視で第1排出口24cと第2排出口24dとの間における中央に位置する。このため、第1排出口24cが第2排出口24dよりも鉛直方向での上方および下方のいずれに位置する場合でも、気泡Bの排出しやすさを等しくしやすい。なお、本実施形態では、導入口21bが平面視で第1排出口24cと第2排出口24dとの間における中央は、下流室R2の中心線LC上に位置しており、上流室R1の中心位置とも一致する。
【0073】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0074】
図11は、第2実施形態に係る液体噴射装置100Aの概略図である。液体噴射装置100Aは、搬送機構30に代えて搬送機構30Aを有するとともに、複数の液体噴射モジュール40を有する以外は、前述の第1実施形態の液体噴射装置100と同様である。なお、
図11では、制御ユニット20および循環機構50等の図示が省略される。
【0075】
図11に示すように、搬送機構30Aは、媒体101を外周面に吸着させた状態で搬送するドラム31を有する。ドラム31は、X軸に平行な中心軸AXまわりに沿う外周面を有する円筒状または円柱状の部材である。ドラム31は、図示しないモーター等の駆動機構により中心軸AXまわりに回転駆動される。ドラム31の外周面は、図示しない帯電器により帯電される。この帯電による静電力を用いて、ドラム31の外周面に媒体101が静電吸着される。
【0076】
なお、搬送機構30Aの構成は、図に示す例に限定されず、例えば、ドラム31に代えてベルトを用いてもよいし、静電吸着に代えてエア吸着等を用いてもよい。また、搬送機構30Aは、前述の構成要素のほか、除電器等の構成要素を有してもよい。
【0077】
ドラム31の外周面には、液体噴射モジュール40_1、40_2、40_3および40_4のそれぞれが対向する。液体噴射モジュール40_1、40_2、40_3および404のそれぞれは、前述の第1実施形態の液体噴射モジュール40と同様に構成される。すなわち、液体噴射モジュール40_1~40_4のそれぞれにおいて、ノズル面FNに垂直な方向にみた平面視で、第1排出口24cは下流室R2の中心PCに対してY2方向に偏って配置されるのに対し、第2排出口24dは下流室R2の中心PCに対してY1方向に偏って配置される。
【0078】
ただし、液体噴射モジュール40_1、40_2、40_3および40_4では、X軸に平行な軸まわりの姿勢が互いに異なる。また、液体噴射モジュール40_1、40_2、40_3および40_4に用いるインクの種類をモジュールごとに異なってもよい。例えば、液体噴射モジュール40_1、40_2、40_3および40_4に用いるインクの色をモジュールごとに異ならせる場合、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが用いられる。
【0079】
具体的に説明すると、液体噴射モジュール40_1、40_2、40_3および40_4は、この順でドラム31の外周面に沿って方向DMに並ぶ。また、液体噴射モジュール40_1、40_2、40_3および40_4のそれぞれは、液体噴射モジュール40の長手方向であるX1方向に延在する回転軸を中心に回転させることで、ノズル面FNがドラム31の外周面における接平面に平行となるように配置される。
【0080】
ここで、液体噴射モジュール40_1のノズル面FNの水平面SFに対する傾斜角度θ1は、液体噴射モジュール40_4のノズル面FNの水平面SFに対する傾斜角度θ4に等しい。ただし、液体噴射モジュール40_1では、ドラム31上における媒体101の搬送方向での上流から下流に向けて、ノズル面FNが鉛直方向での上方に傾斜する。これに対し、液体噴射モジュール40_4では、ドラム31上における媒体101の搬送方向での上流から下流に向けて、ノズル面FNが鉛直方向での下方に傾斜する。
【0081】
同様に、液体噴射モジュール40_2のノズル面FNの水平面SFに対する傾斜角度θ2は、液体噴射モジュール40_3のノズル面FNの水平面SFに対する傾斜角度θ3に等しい。ただし、傾斜角度θ2およびθ3のそれぞれは、前述の傾斜角度θ1またはθ4よりも小さい。また、液体噴射モジュール40_2では、ドラム31上における媒体101の搬送方向での上流から下流に向けて、ノズル面FNが鉛直方向での上方に傾斜する。これに対し、液体噴射モジュール40_3では、ドラム31上における媒体101の搬送方向での上流から下流に向けて、ノズル面FNが鉛直方向での下方に傾斜する。
【0082】
以上の第2実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、気泡の滞留を低減することができる。本実施形態では、前述のように、液体噴射装置100Aは、ラインヘッドの一例である液体噴射モジュール40_1~40_4を有する。ここで、液体噴射モジュール40_1~40_4のうちの任意の1つが第1ラインヘッドに相当する。液体噴射モジュール40_1が第1ラインヘッドに相当する場合、液体噴射モジュール40_4が第2ラインヘッドに相当する。液体噴射モジュール40_2が第1ラインヘッドに相当する場合、液体噴射モジュール40_3が第2ラインヘッドに相当する。液体噴射モジュール40_3が第1ラインヘッドに相当する場合、液体噴射モジュール40_2が第2ラインヘッドに相当する。液体噴射モジュール40_4が第1ラインヘッドに相当する場合、液体噴射モジュール40_1が第2ラインヘッドに相当する。以上の第2ラインヘッドは、第1ラインヘッドに対して媒体101の搬送経路の上流または下流に配置される。
【0083】
例えば、液体噴射モジュール40_1が第1ラインヘッドに相当し、かつ、液体噴射モジュール40_4が第2ラインヘッドに相当する場合、液体噴射モジュール40_1は、ノズル面FNのY2方向での端部がY1方向での端部に対して鉛直方向での上方に位置するように、傾斜して配置される。一方、液体噴射モジュール40_4は、ノズル面FNのY2方向での端部がY1方向での端部に対して鉛直方向での下方に位置するように、傾斜して配置される。
【0084】
換言すれば、液体噴射装置100Aは、X1方向に見て、X軸を中心に左回りに回転することで水平面SFに対してノズル面FNが傾斜している液体噴射モジュール40_1と、X軸を中心に右回りに回転することで水平面SFに対してノズル面FNが傾斜している液体噴射モジュール40_4とを有する。このように、X軸を中心に右回り及び左回りに回転して傾斜された複数の液体噴射モジュール40_1~40_4を有する構成であっても、液体噴射モジュール40_1~40_4のそれぞれは、下流室R2の中心PCに対してX軸方向と直交するY1方向に偏って配置された第1排出口24cと、下流室R2の中心PCに対してX軸方向と直交するY2方向に偏って配置された第2排出口24dとを有するため、第1排出口24cおよび第2排出口24dのいずれか一方が下流室R2内の鉛直方向での上方に位置することになり、下流室R2内に気泡が滞留し続けることを低減することができる。また、液体噴射モジュール40_1~40_4を共通の構造としたとしても、液体噴射モジュール40が上述した第1排出口24cと第2排出口24dを有するため、下流室R2内に気泡が滞留することを低減することができる。
【0085】
ここで、液体噴射モジュール40_1におけるノズル面FNの水平面SFに対する傾斜角度θ1と、液体噴射モジュール40_4のノズル面FNの水平面SFに対する傾斜角度θ4と、が互いに等しい。このため、液体噴射モジュール40_1と液体噴射モジュール40_4とで、気泡の排出のための動作条件を変えなくて済む。この点、液体噴射モジュール40_2が第1ラインヘッドに相当し、かつ、液体噴射モジュール40_3が第2ラインヘッドに相当する場合も、液体噴射モジュール40_1が第1ラインヘッドに相当し、かつ、液体噴射モジュール40_4が第2ラインヘッドに相当する場合と同様である。
【0086】
3.第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0087】
図12は、第3実施形態に係る液体噴射装置100Bの概略図である。液体噴射装置100Bは、移動機構60を有するとともに、液体噴射モジュール40に代えて液体噴射モジュール40Bを有する以外は、前述の第1実施形態の液体噴射装置100と同様である。
【0088】
移動機構60は、制御ユニット20による制御のもとで、液体噴射モジュール40BをX1方向とX2方向とに往復させる。
図12に示す例では、移動機構60は、液体噴射モジュール40Bを収容する箱型のキャリッジ61と、キャリッジ61が固定される搬送ベルト62と、を有する。搬送ベルト62は、図示しない駆動源からの駆動力により、キャリッジ61をX1方向とX2方向とに往復させる。
【0089】
液体噴射モジュール40Bは、X軸の方向における媒体101の一部の範囲にわたり複数のノズルが分布する以外は、前述の第1実施形態の液体噴射モジュール40と同様に構成される。即ち、液体噴射モジュール40Bでは、ノズル面FNに垂直な方向にみた平面視で、第1排出口24cは下流室R2の中心PCに対してY2方向に偏って配置されるのに対し、第2排出口24dは下流室R2の中心PCに対してY1方向に偏って配置される。
【0090】
以上の液体噴射装置100Bでは、液体噴射モジュール40Bからのインクの噴射が、搬送機構30による媒体101の搬送と移動機構60による液体噴射モジュール40Bの往復移動とに並行して行われることにより、媒体101の表面にインクによる画像が形成される。
【0091】
以上の第3実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、気泡の滞留を低減することができる。本実施形態では、前述のように、液体噴射装置100Bは、キャリッジ61を有する。前述のように、液体噴射ヘッド10を保持するキャリッジ61は、Y2方向に交差する方向に延在するX軸に沿って往復移動する。このようなシリアル型の液体噴射装置100Bでは、液体噴射ヘッド10がキャリッジ61の往復移動する方向であるX軸の延在する方向に平行な軸まわりに水平面に対して傾斜して設置されることがあるため、第1排出口24cおよび第2排出口24dの何れかが下流室R2の鉛直方向の上方に位置することになり、前述のような気泡の排出を低減するという効果が好適に得られる。
【0092】
4.第4実施形態
以下、本発明の第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0093】
図13は、第4実施形態に係る液体噴射ヘッドを有する液体噴射モジュールの斜視図である。
図13に示すように、液体噴射モジュール40Cは、支持体41Cと複数の液体噴射ヘッド10Cとを有する。支持体41Cは、複数の液体噴射ヘッド10Cを支持する部材である。
図13に示す例では、支持体41Cは、金属等で構成される板状部材であり、複数の液体噴射ヘッド10Cを取り付けるための複数の取付孔41bが設けられる。各取付孔41bには、液体噴射ヘッド10Cが挿入されており、各液体噴射ヘッド10Cは、支持体41Cに対してネジ止め等により固定される。
図13では、複数の液体噴射ヘッド10CがX軸およびY軸に沿って行列状に配列する。なお、液体噴射モジュール40Cにおける液体噴射ヘッド10Cの数は、
図13に示す例に限定されず、任意である。また、支持体41Cの形状等も、
図13に示す例に限定されず、任意である。
【0094】
図14は、
図13に示す液体噴射ヘッド10Cの分解斜視図である。
図14に示すように、液体噴射ヘッド10Cは、流路構造体11Cと配線基板12Cとホルダー13Cとヘッド本体14_1、14_2、14_3および14_4と固定板15Cと補強板17とカバー18とを有する。これらは、Z2方向に向かって、カバー18、配線基板12C、流路構造体11C、ホルダー13C、ヘッド本体14_1、14_2、14_3および14_4、補強板17、固定板15Cの順に配置される。以下、液体噴射ヘッド10Cの各部を順次説明する。
【0095】
流路構造体11Cは、層Su1~Su5の積層により構成されるとともに形状が異なる以外は、前述の第1実施形態の流路構造体11と同様に構成される。したがって、流路構造体11Cは、流路構造体11と同様、気泡の滞留を低減する構成を有する。当該構成については、後に詳述する。
【0096】
配線基板12Cは、ヘッド本体14_1、14_2、14_3および14_4を制御ユニット20に電気的に接続するための実装部品である。配線基板12Cは、例えば、フレキシブル配線基板またはリジッド配線基板等で構成される。配線基板12Cは、流路構造体11Cとカバー18との間に配置されており、配線基板12Cにおける流路構造体11Cと対向する面とは反対側の面には、コネクター12cが設置される。コネクター12cは、制御ユニット20に電気的に接続するための接続部品である。また、配線基板12Cは、図示しない配線を介して、複数のヘッド本体14に電気的に接続される。当該配線は、例えば、フレキシブル配線基板およびリジッド配線基板の組み合わせで構成される。なお、当該配線は、配線基板12Cと一体で構成されてもよい。
【0097】
ホルダー13Cは、形状が異なる以外は、前述の第1実施形態のホルダー13Cと同様である。固定板15Cは、形状が異なる以外は、前述の第1実施形態の固定板15と同様である。ただし、ホルダー13Cと固定板15Cとの間には、補強板17が配置される。なお、
図14では、ホルダー13Cが分岐流路を有しない構成が示される。
【0098】
補強板17は、固定板15Cを補強する板状部材である。補強板17は、固定板15C上に重ねて配置され、固定板15Cに対して接着剤により固定される。補強板17には、当該複数のヘッド本体14が配置される複数の開口部17aが設けられる。補強板17は、例えば、金属材料等で構成される。
【0099】
カバー18は、流路構造体11Cの流路部材1Cと配線基板12Cとを収容する箱状の部材である。カバー18は、例えば、樹脂材料等で構成される。カバー18には、4個の貫通孔18aと開口部18bとが設けられる。当該4個の貫通孔18aは、流路構造体11Cの4個の接続管11aに対応しており、各貫通孔18aには、対応する接続管11a、11b、11cまたは11dが通される。開口部18bには、カバー18内から外部にコネクター12cが通される。
【0100】
図15は、
図13に示す液体噴射ヘッド10CにおけるノズルNの配列を説明するための図である。
図15に示すように、液体噴射ヘッド10Cは、第1部分U1と第2部分U2と第3部分U3とを有する。第1部分U1は、第2部分U2と第3部分U3との間に位置する。X軸に沿う第2部分U2および第3部分U3のそれぞれの幅は、X軸に沿う第1部分U1の幅よりも短い。
図15に示す例では、X軸に沿う第2部分U2および第3部分U3の幅が互いに等しい。また、第1部分U1におけるX1方向の端面は、第3部分U3におけるX1方向の端面と連続する平面である。一方、第1部分U1におけるX2方向の端面は、第2部分U2におけるX2方向の端面と連続する平面である。なお、これらの端面には、適宜に凹部または凸部が設けられてもよい。また、これらの端面の間に段差が設けられてもよい。
【0101】
図15に示すように、ホルダー13Cには、4個のヘッド本体14_1~14_4が保持される。ヘッド本体14_1は、ヘッド本体14_2に対してY1方向に位置し、前述の第1部分U1に配置される。ここで、ヘッド本体14_2の一部は、第3部分U3に配置され、ヘッド本体14_2の残部は、第1部分U1に配置される。同様に、ヘッド本体14_4は、ヘッド本体14_3に対してY2方向に位置し、第1部分U1に配置される。ここで、ヘッド本体14_3の一部は、第2部分U2に配置され、ヘッド本体14_3の残部は、第1部分U1に配置される。
【0102】
以上のようにヘッド本体14_1~14_4が配置される液体噴射ヘッド10Cでは、ヘッド本体14_2のノズル列LaのY1方向の側の端部とヘッド本体14_4のノズル列LaのY2方向側の端部とがX軸方向に見て重なる。更に、ヘッド本体14_4とヘッド本体14_1、ヘッド本体14_1とヘッド本体14_3についても同様の関係が成り立ち、ノズル列Lb同士でも同様の関係が成り立つので、ヘッド本体14_1~14_4の各ノズル列LaがY軸方向に連続し、ヘッド本体14_1~14_4の各ノズル列LbがY軸方向に連続するため、液体噴射ヘッド10CのY軸方向における有効印字幅を大きくすることができる
【0103】
図16および
図17のそれぞれは、第4実施形態における流路部材1Cの構成例を示す図である。
図16および
図17に示すように、流路部材1Cの内部には、供給流路Saと排出流路Daと供給流路Sbと排出流路Dbとが設けられる。供給流路Saは、「共通流路」の一例であり、接続管11aから各ヘッド本体14の液体貯留室Raに至る流路である。排出流路Daは、各ヘッド本体14の液体貯留室Raから接続管11bに至る流路である。供給流路Sbは、「共通流路」の一例であり、接続管11cから各ヘッド本体14の液体貯留室Rbに至る流路である。排出流路Dbは、各ヘッド本体14の液体貯留室Rbから接続管11bに至る流路である。これらの流路は、前述の層Su1~Su5に適宜に設けられる溝および貫通孔により構成される。
【0104】
図16および
図17に示すように、供給流路Saには、4個のフィルター部Fa_1~Fa_4は設けられる。同様に、供給流路Sbには、4個のフィルター部Fb_1~Fb_4は設けられる。フィルター部Fa_1~Fa_4およびFb_1~Fb_4のそれぞれは、前述の第1実施形態のフィルター25およびその周辺部と同様に構成される。
【0105】
前述の第3実施形態のようなX軸方向を主走査方向とするシリアルプリンターに液体噴射ヘッド10Cを用いる場合には、媒体101の搬送方向の有効印字幅を大きくすることにより、キャリッジ61が一往復する間に媒体101上の形成される画像の大きさを大きくすることができ、印刷動作を高速化することができる。
【0106】
したがって、液体噴射ヘッド10Cを前述の第3実施形態のようなシリアル型に適用する場合、複数のノズルNの配列する方向DNが、媒体101を搬送する方向DMに平行となるように、液体噴射ヘッド10Cが用いられる。このような場合には、第3実施形態と同様に、キャリッジ61の往復移動方向に沿う軸まわりにノズル面FNを傾斜させた状態で使用される可能性が生じる。このため、この場合、
図16に示す構成例のように、フィルター部Fa_1~Fa_4およびFb_1~Fb_4のそれぞれにおける第1排出口24cおよび第2排出口24dがY1方向またはY2方向に並ぶ構成が採用される。
【0107】
一方、前述の第1実施形態または第2実施形態のようなY軸に長尺なラインヘッドに液体噴射ヘッド10Cを用いる場合には、液体噴射ヘッド10Cの長手方向であるY軸方向を搬送方向DMと直交する方向とし、媒体101の幅方向の寸法よりも有効印字幅を大きくすることにより、ラインヘッドを構成することができる。
【0108】
したがって、液体噴射ヘッド10Cを前述の第1実施形態または第2実施形態のようなラインヘッドに適用する場合、複数のノズルNの配列する方向DNが、媒体101を搬送する方向DMに直交するように、液体噴射ヘッド10Cが用いられる。このような場合には、第1、2実施形態と同様に、ラインヘッドの長尺方向に沿う軸まわりにノズル面FNを傾斜させた状態で使用される可能性が生じる。このため、この場合、
図17に示す構成例のように、フィルター部Fa_1~Fa_4およびFb_1~Fb_4のそれぞれにおける第1排出口24cおよび第2排出口24dがX1方向またはX2方向に並ぶ構成が採用される。
【0109】
以上の第4実施形態によっても、前述の第1~3実施形態と同様、気泡の滞留を低減することができる。
【0110】
5.変形例
以上に例示した形態は多様に変形され得る。前述の形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0111】
5-1.変形例1
図18は、変形例1における下流室R2、第1排出口24c、第2排出口24d、第3排出口24eおよび第4排出口24fを示す模式図である。変形例1では、下流室R2に第1排出口24cおよび第2排出口24dのほか、第3排出口24eおよび第4排出口24fが開口する。
【0112】
ここで、第3排出口24eは、下流室R2と共通流路CCを連通させる第3流路C3にインクを排出させる。したがって、第3流路C3は、第3排出口24eを介して下流室R2に連通する。
図18に示す例では、第3排出口24eは、平面視で、第1排出口24cと第2排出口24dとを通る仮想的な直線LSに重ならない位置に配置される。このため、第1実施形態のようにX軸に平行な軸まわりに下流室R2が傾斜した場合だけでなく、Y軸に平行な軸まわりに下流室R2が傾斜しても、気泡を第3排出口24eから排出することができる。なお、
図18では、共通流路CCの形状が破線で示される。
図18に示す例では、共通流路CCの形状が分岐した形状であるが、共通流路CCの形状は、
図18に示す例に限定されない。この点、以下の
図19~22に示す共通流路CCの形状も同様、図示の形状に限定されない。
【0113】
また、第4排出口24fは、下流室R2と共通流路CCを連通させる第4流路C4にインクを排出させる。したがって、第4流路C4は、第4排出口24fを介して下流室R2に連通する。
図18に示す例では、第3排出口24eおよび第4排出口24fは、平面視で直線LSに対して互いに反対側の位置に配置される。このため、Y軸に平行な軸まわりにいずれの向きで下流室R2が傾斜しても、気泡を第3排出口24eまたは第4排出口24fから排出することができる。
【0114】
図18に示すように、第1排出口24cおよび第2排出口24dは、平面視で第1直線LS1上に配置される。第1直線LS1は、平面視で、下流室R2の中心PCを通り、かつ、Y2方向に延びる仮想的な直線である。また、第3排出口24eおよび第4排出口24fは、平面視で第2直線LS2上に配置される。第2直線LS2は、下流室R2の中心PCを通り、かつ、X1方向またはX2方向に延びる仮想的な直線である。このように、第1排出口24c、第2排出口24dのほか、第3排出口24eおよび第4排出口24fを配置することにより、下流室R2の傾斜の向きによらず、気泡をいずれかの排出口から好適に排出することができる。
【0115】
5-2.変形例2
図19は、変形例2における下流室R2、第1排出口24cおよび第2排出口24dを示す模式図である。変形例2では、下流室R2の平面視形状が変形例1に比べて四角形に近い形状である。また、下流室R2には、第1排出口24cおよび第2排出口24dのそれぞれが2個ずつ設けられる。これらの排出口は、下流室R2の4つの角付近に設けられる。以上の変形例2によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。なお、2個の第1排出口24cうちの一方を第3排出口または第4排出口として捉えることができる。同様に、2個の第2排出口24dうちの一方を第3排出口または第4排出口として捉えることができる。
【0116】
5-3.変形例3
図20は、変形例3における下流室R2、第1排出口24c、第2排出口24d、第3排出口24eおよび第4排出口24fを示す模式図である。変形例3は、下流室R2の平面視形状が変形例2と同様である以外は、変形例1と同様である。以上の変形例3によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0117】
5-4.変形例4
図21は、変形例4における下流室R2、第1排出口24cおよび第2排出口24dを示す模式図である。変形例4は、下流室R2の平面視形状が変形例2と同様である。また、下流室R2には、2個の第2排出口24dが設けられる。2個の第2排出口24dは、下流室R2の4つの角のうち第1排出口24cに遠いほうの2つの角付近に設けられる。以上の変形例4によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。なお、2個の第2排出口24dうちの一方を第3排出口として捉えることができる。
【0118】
5-5.変形例5
図22は、変形例5における下流室R2、第1排出口24c、第2排出口24d、第3排出口24eおよび第4排出口24fを示す模式図である。変形例5は、下流室R2の平面視形状が変形例3に比べて正方形に近い形状であり、かつ、これらの排出口が下流室R2の4つの角付近に設けられる。以上の変形例5によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。ここで、変形例5では、X軸まわりに傾斜する可能性がある場合と、Y軸まわりに傾斜する可能性がある場合と、のいずれの場合でも、第1排出口24c、第2排出口24d、第3排出口24eまたは第4排出口24fから気泡を好適に排出させることができる。また、変形例5では、平面視で四角形をなす側壁24iの各角近傍に第1排出口24c、第2排出口24d、第3排出口24eおよび第4排出口24fのいずれかが配置される。このため、変形例1~4のような平面視で側壁24iの辺の途中近傍に排出口が配置される構成に比べて、傾斜の態様によらず、気泡をいずれかの排出口に導きやすいので、気泡の滞留が好適に防止される。
【0119】
5-6.変形例6
前述の第2実施形態では、ドラム31の外周面に吸着される媒体101に対して液体噴射モジュール40からのインクが直接付与される構成が例示されるが、ドラム31を液体噴射モジュール40からのインクを媒体101に転写する転写体として用いる構成でもよい。この場合、ドラム31の外周面に媒体101を吸着させない状態で液体噴射モジュール40からのインクを付与した後に、そのインクをドラム31の外周面から媒体101に転写すればよい。
【0120】
5-7.変形例7
前述の各形態で例示する液体噴射装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体噴射装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0121】
10…液体噴射ヘッド、10C…液体噴射ヘッド、21b…導入口、24a…底壁、24c…第1排出口、24d…第2排出口、24e…第3排出口、24f…第4排出口、25…フィルター、30…搬送機構、30A…搬送機構、31…ドラム、40…液体噴射モジュール(ラインヘッド)、40B…液体噴射モジュール、40C…液体噴射モジュール、40_1…液体噴射モジュール(ラインヘッド)、40_2…液体噴射モジュール(ラインヘッド)、40_3…液体噴射モジュール(ラインヘッド)、40_4…液体噴射モジュール(ラインヘッド)、50…循環機構、60…移動機構、61…キャリッジ、100…液体噴射装置、100A…液体噴射装置、100B…液体噴射装置、101…媒体、AX…中心軸、B…気泡、C1…第1流路、C2…第2流路、C3…第3流路、C4…第4流路、CC…供給流路(共通流路)、CI…導入口、DM…方向、DN…方向、FN…ノズル面、L1…距離、L2…距離、L3…距離、L4…距離、LS1…第1直線、LS2…第2直線、La…ノズル列、Lb…ノズル列、N…ノズル、PC…中心、R1…上流室、R2…下流室、Ra_in…導入口、Rb_in…導入口、SF…水平面、Sa…供給流路(共通流路)、Sb…供給流路(共通流路)、θ1…傾斜角度、θ2…傾斜角度、θ3…傾斜角度、θ4…傾斜角度。