(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240521BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20240521BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/00
(21)【出願番号】P 2020104791
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 学
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037379(JP,A)
【文献】特開2021-062756(JP,A)
【文献】特開2009-010915(JP,A)
【文献】特開2019-098832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方を撮影した映像を表示する表示面を有する表示部と、
前記表示面とユーザとの間における前記表示面に表示される映像に基づく映像光の光路上に、前記表示面から離間して配置され、前記表示面で映像が表示される面積より小さい面積の開口部を有する視野絞り部と、
前記表示面に表示される映像に基づく映像光を反射させてユーザに虚像として提示するミラーを有する反射光学系機構と、
を備え
、
前記視野絞り部は、前記反射光学系機構の光路中における前記ミラーの反射面上に設けられる、
車両用表示装置。
【請求項2】
前記視野絞り部における前記開口部は、前記表示面で表示される映像の大きさに対して、少なくとも横方向に小さく形成されている、
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記視野絞り部における前記開口部は、前記表示面で表示される映像の大きさに対して、縦方向に小さくする割合に比べて横方向に小さくする割合が大きく形成されている、
請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後方の視界を反射して車両の乗員に視認させる従来の光学式のバックミラーに代わって、車両の後方を撮影する後方カメラからの映像を表示部に表示してユーザに視認させる電子ミラーに関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子ミラーは、従来の光学式のバックミラーと同様に車室の前方の中央上部に配置される。電子ミラーでは、ユーザが従来の光学式のバックミラーと同様に違和感なく車両の後方を視認できることが望まれる。電子ミラーの使用感を従来の光学式のバックミラーの使用感により近づけるため、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ユーザが違和感なく車両の後方を視認できる車両用表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両用表示装置は、車両の後方を撮影した映像を表示する表示面を有する表示部と、前記表示面とユーザとの間における前記表示面に表示される映像に基づく映像光の光路上に、前記表示面から離間して配置され、前記表示面で映像が表示される面積より小さい面積の開口部を有する視野絞り部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザが違和感なく車両の後方を視認できるという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両用表示装置を有する車両用表示システムの構成例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両用表示装置を有する車両用表示システムの構成例を側方から示す概略図である。
【
図3】
図3は、従来の光学式のバックミラーにおいて、運転者の頭部の位置と、視認できる車両の後方の範囲との関係を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、従来の車両用表示装置において、運転者の頭部の位置と、視認できる車両の後方の範囲との関係を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る車両用表示装置において、運転者の頭部の位置と、視認できる車両の後方の範囲との関係を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る車両用表示装置において、運転者の頭部の位置と、視野絞り部と、視認できる車両の後方の範囲との関係を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る車両用表示装置において、運転者の頭部の位置と、表示された映像と、視野絞り部との関係を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る車両用表示装置において、運転者の頭部が右側に位置するときに、運転者が虚像によって視認する車両の後方の範囲を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る車両用表示装置において、運転者の頭部が中央に位置するときに、運転者が虚像によって視認する車両の後方の範囲を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る車両用表示装置において、運転者の頭部が左側に位置するときに、運転者が虚像によって視認する車両の後方の範囲を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態の変形例1に係る車両用表示システムの構成例を側方から示す概略図である。
【
図12】
図12は、実施形態の変形例2に係る車両用表示システムの構成例を側方から示す概略図である。
【
図13】
図13は、実施形態の変形例3に係る車両用表示システムの構成例を側方から示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る車両用表示システム1の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
以下の説明においては、前後方向とは、車両直進時の進行方向であり、進行方向前方側を前後方向の「前」、後方側を前後方向の「後」とする。左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。前後方向「前」側へ向かって、左手側が「左」、右手側が「右」である。上下方向とは、前後方向及び左右方向に対して直交する方向である。前後方向、左右方向及び上下方向は、3次元で直交する。
【0011】
[実施形態]
<車両用表示システム1の構成>
車両用表示システム1は、車両に搭載され、車両後方を表示する。
図1は、実施形態に係る車両用表示装置4を有する車両用表示システム1の構成例を示す概略図である。
図2は、実施形態に係る車両用表示装置4を有する車両用表示システム1の構成例を側方から示す概略図である。
【0012】
図1及び
図2に示されるように、車両用表示システム1は、いわゆる電子ルームミラーである。本実施形態では、車両用表示システム1は、虚像として、車両の後方を視認させる。車両用表示システム1は、後方カメラ2と、制御装置3と、車両用表示装置4とを有する。本実施形態では、ユーザである車両の乗員を、運転者として説明する。
【0013】
後方カメラ2は、車室外である車両の後方に配置され、車両の後方を撮影する。後方カメラ2は、車両用表示装置4による確認範囲を含んだ最大範囲Vを撮影する。後方カメラ2は、水平方向の画角が例えば30°以上60°以下程度であり、上下方向の画角が例えば5°以上20°以下程度である。後方カメラ2は、撮影した撮影映像データを制御装置3の映像取得部3aに出力する。
【0014】
制御装置3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などで構成された演算処理装置である。制御装置3は、図示しない記憶部に記憶されているプログラムに含まれる命令を実行する。制御装置3は、映像取得部3aと、表示制御部3bと、を有する。
【0015】
映像取得部3aは、車両の後方を撮影した映像を取得する。映像取得部3aが取得する撮影映像データは、例えば、毎秒60フレームの画像が連続した映像データである。本実施形態では、映像取得部3aは、後方カメラ2が出力した撮影映像データを取得する。映像取得部3aは、撮影映像データから、車両用表示装置4に表示させる範囲を切出す。撮影映像データのどの範囲を切出すかは、あらかじめ記憶部に記憶されている。切出範囲は、従来の光学式のバックミラーで運転者が視認する範囲を含む。言い換えると、切出範囲は、乗員が頭を動かして異なる角度で車両用表示装置4の第二凹面鏡7を両眼視した際に見える範囲を含む。映像取得部3aは、切出した映像データを映像信号として表示制御部3bに出力する。
【0016】
表示制御部3bは、映像取得部3aから出力された映像信号を車両用表示装置4に表示させる。
【0017】
<車両用表示装置4の構成>
車両用表示装置4は、車両の後方を運転者に視認させる。本実施形態では、車両用表示装置4は、運転者に虚像表示(以下、「虚像Fという。)を視認させて電子ミラーとして使用する。本実施形態では、車両用表示装置4は、車室内の前方の中央上部に配置されている。車両用表示装置4は、ディスプレイ(表示器)5と、反射光学系機構11と、これらを収容する筐体10と、を有する。
【0018】
反射光学系機構11は、ディスプレイ5の表示面5aに表示される映像に基づく映像光を反射させて運転者に虚像Fとして提示する。反射光学系機構11は、第一凹面鏡(第一ミラー)6と、第二凹面鏡(第二ミラー)7と、ハーフミラー8と、を有する。
【0019】
車両用表示装置4は、運転者の視点Eから第二凹面鏡7によって結像された反射映像までの距離、言い換えると、運転者の視点Eから虚像Fまでの虚像距離が、運転者の視点Eからディスプレイ5の表示面51までの距離より長くなるように幾何光学的に延長している。
【0020】
虚像距離は、運転者が虚像Fを視認する際の眼の負担を軽減するための条件の1つである。虚像距離は、運転中に数10m前方を視認している運転者が、虚像Fを視認しやすい距離である。本実施形態では、車両用表示装置4は、虚像距離を例えば800mm程度以上とする。
【0021】
ディスプレイ5は、表示制御部3bから出力された映像信号に基づき、車両の後方の映像を表示する。ディスプレイ5は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイなどを含む。ディスプレイ5は、平面状の表示面5aを有する。
【0022】
ディスプレイ5の表示面5aは、後述する視野絞り部99に設置された開口部9の縦横サイズよりも大きな画面サイズを有する。表示面5aは、横長の矩形状に形成されている。本実施形態では、表示面5aは、有効エリアの左右方向である長辺方向の幅が、例えば、260mm、上下方向である短辺方向の幅が76mmである。表示面5aは、車両用表示装置4が車両に取り付けられた状態で、上方を向いて配置されている。表示面5aは、第一凹面鏡6の反射面6aと向かい合って配置されている。
【0023】
ディスプレイ5の光軸は、表示面5aの中央部から表示面5aと直交する方向に延びている。本実施形態では、映像が表示されたときのディスプレイ5の中心光線は、光軸に対して、
図2に示すYZ平面内で、所定の角度で射出して第一凹面鏡6へ入射する。言い換えると、本実施形態では、表示面5aは、第一凹面鏡6へ入射する中心光線に対して傾いて配置されている。
【0024】
ディスプレイ5は、表示面5aが第一凹面鏡6の焦点距離より内側の位置に配置されている。ディスプレイ5は、表示面5aが第二凹面鏡7の焦点距離より内側の位置に配置されている。ディスプレイ5は、表示面5aが第一凹面鏡6と第二凹面鏡7との合成焦点距離より内側の位置に配置されている。
【0025】
第一凹面鏡6は、ディスプレイ5に表示された映像に基づく映像光を反射する。より詳しくは、第一凹面鏡6は、ディスプレイ5から入射する光を第二凹面鏡7に向けて反射する。第一凹面鏡6は、映像光を反射する反射面6aが凹面状に形成されている。第一凹面鏡6は、前下方を向いて凹状に湾曲している。第一凹面鏡6は、ディスプレイ5に対して上方に配置されている。第一凹面鏡6の反射面6aは、ディスプレイ5の表示面5aと第二凹面鏡7の反射面7aと向かい合って配置されている。
【0026】
第二凹面鏡7は、ディスプレイ5に表示され、第一凹面鏡6で反射された光を反射する。より詳しくは、第二凹面鏡7は、第一凹面鏡6で反射された光をハーフミラー8に向けて反射する。第二凹面鏡7は、映像光を反射する反射面7aが凹面状に形成されている。第二凹面鏡7は、後上方を向いて凹状に湾曲している。第二凹面鏡7は、車両用表示装置4が車両に取り付けられた状態で、ハーフミラー8に対して前方に配置されている。第二凹面鏡7の反射面7aは、第一凹面鏡6の反射面6aとハーフミラー8と向かい合って配置されている。
【0027】
ハーフミラー8は、第一凹面鏡6と第二凹面鏡7とにおいて反射された映像光を透過し、第二凹面鏡7と反対側から入射する光を反射する。ハーフミラー8は、平面状に形成されている。ハーフミラー8は、入射光の透過率が50%である。言い換えると、ハーフミラー8は、入射光の50%を透過し、残りの50%を反射する。ハーフミラー8は、第二凹面鏡7の反射面7aと向かい合って配置されている。ハーフミラー8は、車両用表示装置4が車両に取り付けられた状態で、ディスプレイ5と第一凹面鏡6と第二凹面鏡7とより後方に配置されている。また、このようなハーフミラー8は、車両用表示装置4が車両に取り付けられた状態で、運転者と向かい合って配置されている。
【0028】
筐体10は、開口を有する箱型に形成されている。筐体10は、内部の空間に、ディスプレイ5と第一凹面鏡6と第二凹面鏡7とが組み付けられている。筐体10は、ハーフミラー8によって開口が覆われている。このように構成された筐体10は、車両に取り付けられる。実施形態において、筐体10は、運転者が見上げる位置に配置される。
【0029】
<視野絞り部99の構成>
反射光学系機構11の光路中には、視野絞り部99が設けられている。視野絞り部99は、運転者が視認可能な視野を絞ることによって、運転者が視認する虚像Fの範囲を狭くするために設けられている。視野絞り部99は、表示面5aと運転者との間における表示面5aに表示される映像に基づく映像光の光路上に、ディスプレイ5の表示面5aから離間して配置されている。本実施形態では、視野絞り部99は、第二凹面鏡7の反射面7a上に配置されている。視野絞り部99は、第二凹面鏡7の反射面7aに固定されている。視野絞り部99は、第二凹面鏡7の反射面7a上で外周側の縁部に貼り付けられている。
【0030】
視野絞り部99は、額縁形状に形成されている。視野絞り部99には、開口部9が形成されている。開口部9は、視野絞り部99の中央部に矩形に開口している。視野絞り部99が開口部9を有することによって、第二凹面鏡7の反射面7aの中央部が露出し、反射面7aの周縁部が遮蔽される。開口部9は、表示面5aで映像が表示される面積より小さい面積の開口である。開口部9は、表示面5aで表示される映像の大きさに対して、少なくとも横方向に小さく形成してもよい。開口部9は、表示面5aで表示される映像の大きさに対して、縦方向に小さくする割合に比べて横方向に小さくする割合が大きく形成されてもよい。縦方向に小さくする割合に比べて横方向に小さくする割合を大きくする理由は、運転者が頭部の位置を変更して視認する範囲を変える方向は、縦方向より横方向に対して、より広い範囲の視認が求められるためである。開口部9は、左右方向である長辺方向の幅が、例えば、240mm、上下方向である短辺方向の幅が70mmである。開口部9は、第二凹面鏡7の反射面7aにおいて反射した光の一部のみをハーフミラー8へ入射させる。
【0031】
<車両用表示装置4における虚像表示の表示方法>
次に、車両用表示システム1における車両用表示装置4における虚像表示の表示方法について説明する。まず、後方カメラ2は、撮影した車両後方の映像データを制御装置3の映像取得部3aに出力する。映像取得部3aは、後方カメラ2から映像データを取得し、表示制御部3bに出力する。表示制御部3bは、映像データを映像信号として車両用表示装置4のディスプレイ5に出力する。
【0032】
そして、ディスプレイ5は、映像信号に基づいて車両後方の映像を表示面5aで表示させる。映像が表示されたディスプレイ5は、光を発する。そして、発せられた光は、第一凹面鏡6に入射する。そして、第一凹面鏡6に入射した光は、第二凹面鏡7に向けて反射される。そして、第一凹面鏡6によって反射された光は、第二凹面鏡7に入射する。そして、第二凹面鏡7に入射した光は、ハーフミラー8に向けて反射される。そして、第二凹面鏡7によって反射された光は、開口部9を通過可能な光のみがハーフミラー8に入射する。このように、第二凹面鏡7とハーフミラー8との間の光路において、開口部9によって視野が絞られる。そして、ハーフミラー8に入射した光は、ハーフミラー8を透過して運転者に到達する。運転者は、ディスプレイ5から発せられた光に対して、視野が絞られた状態で虚像Fを視認する。
【0033】
図3、
図4及び
図5を参照して、運転者の頭部の位置と、運転者が視認できる車両の後方の範囲との関係について説明する。ここでは、ディスプレイ5の表示面5aに矩形状に車両の後方の映像を表示したものとして説明する。
【0034】
図3は、従来の光学式のバックミラー100において、運転者の頭部の位置と、視認できる車両の後方の範囲との関係を説明する説明図である。車両の後方には、物体Pが存在するものとする。従来の光学式のバックミラー100を使用している運転者は、例えば物体Pを確認するために、従来の光学式のバックミラー100に映る範囲を変えたい場合、頭部の位置を動かすことを無意識で行う。例えば
図3に示されるように、運転者が、頭部の位置を第一位置Daから右斜め前方の第二位置Dbへ移動する場合、従来の光学式のバックミラー100で運転者が視認できる範囲は、第一範囲Vaから第二範囲Vbに変化する。
【0035】
図4は、従来の電子ミラーである車両用表示装置110において、運転者の頭部の位置と、視認できる車両の後方の範囲との関係を説明する説明図である。従来の車両用表示装置110とは、本実施形態の車両用表示装置4において視野絞り部99を備えない構成の装置である。すなわち、従来の車両用表示装置110は、運転者の視野を絞る機構を有していない。これにより、従来の車両用表示装置110では、後方カメラ2が撮像した最大範囲Vに対応する虚像Fが視認される。例えば
図4に示されるように、運転者が、頭部の位置を第一位置Daから右斜め前方の第二位置Dbへ移動しても、運転者が虚像Fによって視認できる範囲が変化しない。
【0036】
図5は、実施形態に係る車両用表示装置4において、運転者の頭部の位置と、視認できる車両の後方の範囲との関係を説明する説明図である。車両用表示装置4は、視野絞り部99によって、運転者の視野が絞られる。これにより、車両用表示装置4では、運転者の頭部の位置に応じて、後方カメラ2が撮像した映像の最大範囲Vのうちの一部に対応する虚像Fが視認される。例えば
図5に示されるように、運転者が、頭部の位置を第一位置Daから右斜め前方の第二位置Dbへ移動する場合、車両用表示装置4で運転者が虚像Fによって視認できる範囲は、視野絞り部99が存在することで、ディスプレイ5の表示面5aが視認できる範囲が変化し、従来の光学式のバックミラー100で運転者が視認できる範囲と同様に、第一範囲Vaから第二範囲Vbに変化する。
【0037】
図6、
図7、
図8、
図9及び
図10を参照して、車両用表示装置4によって運転者が視認できる車両の後方の範囲について説明する。
図6は、実施形態に係る車両用表示装置において、運転者の頭部の位置と、視野絞り部と、視認できる車両の後方の範囲との関係を説明する説明図である。
図6に示されるように、車両用表示装置4は、運転者の視点位置が変化すると、ディスプレイ5の表示面5aと視野絞り部99の開口部9との相対的な位置関係が変化する。これにより、車両用表示装置4は、運転者の視点位置D1、視点位置D2、視点位置D3に応じて、ディスプレイ5の表示面5aに表示された映像から発せられた光の一部を視野絞り部99の開口部9によって遮蔽する。これにより、運転者の視点位置D1、視点位置D2、視点位置D3に応じて車両用表示装置4による確認範囲は、従来の光学式のバックミラー100で運転者が視認する範囲と同様に変化する。
【0038】
図7は、実施形態に係る車両用表示装置4において、運転者の頭部の位置と、表示された映像と、視野絞り部との関係を説明する説明図である。
図8は、実施形態に係る車両用表示装置4において、運転者の頭部が右側に位置するときに、運転者が虚像によって視認する車両の後方の範囲を示す図である。
図9は、実施形態に係る車両用表示装置4において、運転者の頭部が中央に位置するときに、運転者が虚像によって視認する車両の後方の範囲を示す図である。
図10は、実施形態に係る車両用表示装置4において、運転者の頭部が左側に位置するときに、運転者が虚像によって視認する車両の後方の範囲を示す図である。
【0039】
図7に示されるように、車両用表示装置4におけるディスプレイ5の表示面5aには、制御装置3が映像取得部3aによって取得した撮影映像データが表示される。ディスプレイ5の表示面5aに表示される撮影映像データは、記憶部に記憶された切出範囲で切り出された撮影映像データである。切出範囲は、従来の光学式のバックミラーで運転者が視認する範囲を含む最大範囲Vである。本実施形態では、最大範囲Vは、従来の車両用表示装置110、言い換えると、視野絞り部99を除いた構成の車両用表示装置4によって運転者が視認する虚像Fに対応する範囲である。
【0040】
車両用表示装置4は、ディスプレイ5の表示面5aに表示された映像の一部を運転者の視点位置D1、視点位置D2、視点位置D3に応じて、視野絞り部99によって遮蔽する。運転者の位置が視点位置D1、視点位置D2、視点位置D3のように変化することによって、運転者の視点と視野絞り部99の開口部9と表示面5aとの相対的な位置関係が変化する。そして、運転者の視点と視野絞り部99の開口部9と表示面5aとの相対的な位置が変化することによって、視野絞り部99によって遮蔽される範囲が変化し、運転者の確認範囲が変化する。視野絞り部99は、表示面5aに表示された映像から発せられて、第二凹面鏡7の反射面7aにおいて反射した光の外周側の一部を、運転者の視点位置D1、視点位置D2、視点位置D3に応じて遮蔽する。開口部9は、表示面5aに表示された映像から発せられて、第二凹面鏡7の反射面7aにおいて反射した光の中央部を、運転者の視点位置D1、視点位置D2、視点位置D3に応じて通過させる。これにより、車両用表示装置4は、従来の光学式のバックミラー100を使用する場合と同様に、運転者の頭部の位置の変化に応じて、運転者が視認できる車両の後方の範囲が変化する。
【0041】
図8に示されるように、運転者の視点位置D1における車両用表示装置4による確認範囲は、従来の光学式のバックミラー100において運転者の頭部が右側に位置する場合と同様に、車両の後方の左側が右側よりも多く含まれた範囲V1になる。
【0042】
図9に示されるように、運転者の視点位置D2における車両用表示装置4による確認範囲は、従来の光学式のバックミラー100において運転者の頭部が中央部に位置する場合と同様に、車両の後方の中央部を多く含んだ範囲V2になる。
【0043】
図10に示されるように、運転者の視点位置D3における車両用表示装置4による確認範囲は、従来の光学式のバックミラー100において運転者の頭部が左側に位置する場合と同様に、車両の後方の右側が左側よりも多く含まれた範囲V3になる。
【0044】
<効果>
上述したように、本実施形態は、車両の後方を撮影した映像を表示する表示面5aと運転者との間における表示面5aに表示される映像に基づく映像光の光路上に、表示面5aから離間して配置され、表示面5aで映像が表示される面積より小さい面積の開口部9を有する視野絞り部99を備える。本実施形態では、視野絞り部99が、表示面5aに表示された映像から発せられた光の外周側の一部を遮蔽する。本実施形態によれば、視野絞り部99によって、運転者の頭部の位置に応じて、運転者が視認可能な範囲を変えることができる。本実施形態によれば、運転者が従来の光学式のバックミラー100と同様に違和感なく車両の後方を視認できる。
【0045】
本実施形態は、表示面5aに表示される映像に基づく映像光を反射させて運転者に虚像Fとして提示する反射光学系機構11を備える。本実施形態では、視野絞り部99は、反射光学系機構11の光路中に設けられる。本実施形態は、反射光学系機構11の光路中において、表示面5aに表示された映像から発せられた光の一部が、視野絞り部99によって遮蔽される。本実施形態によれば、視野絞り部99によって、運転者の頭部の位置に応じて、運転者が虚像として視認する車両の後方の範囲を変えることができる。本実施形態によれば、虚像を視認することになるので、運転者の眼の負担を軽減できる。
【0046】
本実施形態では、視野絞り部99が第二凹面鏡7の反射面7a上に配置される。本実施形態では、視野絞り部99が、表示面5aに表示された映像から発せられて、第二凹面鏡7の反射面7aにおいて反射した映像光の外周側の一部を、運転者の視点位置に応じて遮蔽する。本実施形態によれば、視野絞り部99によって、運転者の頭部の位置に応じて、運転者が虚像として視認する車両の後方の範囲を変えることができる。
【0047】
本実施形態は、視野絞り部99における開口部9は、表示面5aで表示される映像の大きさに対して、少なくとも横方向に小さく形成されている。本実施形態によれば、運転者の頭部の左右方向の位置の変化に応じて、虚像Fとして視認できる範囲のうちの一部が視野絞り部99によって適切に遮蔽される。本実施形態によれば、運転者が従来の光学式のバックミラー100と同様に違和感なく車両の後方を視認できる。
【0048】
本実施形態は、視野絞り部99における開口部9は、表示面5aで表示される映像の大きさに対して、縦方向に小さくする割合に比べて横方向に小さくする割合が大きくなるように形成されている。本実施形態によれば、運転者の頭部の位置の左右方向の変化に応じて、虚像Fとして視認できる範囲のうちの一部が視野絞り部99によって適切に遮蔽される。本実施形態によれば、運転者が従来の光学式のバックミラー100と同様に違和感なく車両の後方を視認できる。
【0049】
[変形例1]
図11は、実施形態の変形例1に係る車両用表示システム1の構成例を側方から示す概略図である。視野絞り部99は、ハーフミラー8の透過面8a上に形成されている。変形例1においては、視野絞り部99の配置以外は、上記の実施形態と同様に構成されている。視野絞り部99は、上記の実施形態と同様に構成されている。ハーフミラー8の透過面8aは、筐体10の内側に向いている面である。開口部9は、表示面5aに表示された映像から発せられて、ハーフミラー8の透過面8aにおける視野絞り部99の中央部を透過する光を運転者に到達させる。視野絞り部99は、表示面5aに表示された映像から発せられて、ハーフミラー8の透過面8aを透過する光の外周側の一部を遮蔽する。また、視野絞り部99は、ハーフミラー8の運転者の視点E側の面上に形成されていても同様の効果を得る。
【0050】
この構成によれば、表示面5aに表示された映像から発せられて、ハーフミラー8の透過面8aにおける視野絞り部99の開口部9を透過する光が運転者に到達する。この構成においても、視野絞り部99によって、運転者の頭部の位置に応じて、運転者が虚像として視認する車両の後方の範囲を変えることができる。
【0051】
[変形例2]
図12は、実施形態の変形例2に係る車両用表示システム1の構成例を側方から示す概略図である。車両用表示装置4は、ディスプレイ5に表示された映像を、運転者が、虚像として視認する。車両用表示装置4は、ディスプレイ5と、拡大光学系機構12と、これらを収容する筐体10と、を有する。
【0052】
拡大光学系機構12は、ディスプレイ5の表示面5aに表示される映像を拡大させて視認させる。拡大光学系機構12は、表示面5aに表示された映像を拡大させるレンズ18を有する。
【0053】
拡大光学系機構12の光路中には、視野絞り部99が設けられている。視野絞り部99は、表示面5aと運転者との間における表示面5aに表示される映像に基づく映像光の光路上に、ディスプレイ5の表示面5aから離間して配置されている。具体的には、視野絞り部99は、表示面5aとレンズ18との間に設けられている。視野絞り部99は、レンズ18の湾曲面18a上に配置されている。なお、視野絞り部99は、レンズ18と運転者との間に設けられてもよい。開口部9は、表示面5aに表示された映像から発せられた光の一部を運転者に到達させる。視野絞り部99は、表示面5aに表示された映像から発せられた光の外周側の一部を遮蔽する。
【0054】
この構成によれば、表示面5aに表示された映像から発せられた光のうち、視野絞り部99の開口部9を透過する光が運転者に到達する。この構成においても、視野絞り部99によって、運転者が表示面5aを視認する際に、運転者の頭部の位置に応じて、表示面5aに表示された映像を視認できる範囲を変えることができる。
【0055】
[変形例3]
図13は、実施形態の変形例3に係る車両用表示システム1の構成例を側方から示す概略図である。車両用表示装置4は、ディスプレイ5に表示された映像を、運転者が、虚像としてではなく直接視認する。車両用表示装置4は、ディスプレイ5と、透過光学系機構13と、これらを収容する筐体10と、を有する。
【0056】
透過光学系機構13は、ディスプレイ5の表示面5aに表示される映像を透過させて視認させる。透過光学系機構13は、表示面5aに表示された映像を拡大させるレンズやミラーなどを有さない。透過光学系機構13の光路中には、視野絞り部99が設けられている。視野絞り部99は、表示面5aと運転者との間における表示面5aに表示される映像に基づく映像光の光路上に、ディスプレイ5の表示面5aから離間して配置されている。具体的には、視野絞り部99は、表示面5aとハーフミラー8との間に設けられている。開口部9は、表示面5aに表示された映像から発せられた光を運転者に到達させる。視野絞り部99は、表示面5aに表示された映像から発せられた光の外周側の一部を遮蔽する。また、視野絞り部99は、ハーフミラー8の運転者の視点E側の面上に形成されていても同様の効果を得る。
【0057】
この構成によれば、表示面5aに表示された映像から発せられた光のうち、視野絞り部99の開口部9を透過する光が運転者に到達する。この構成においても、視野絞り部99によって、運転者が表示面5aを直接視認する際に、運転者の頭部の位置に応じて、表示面5aに表示された映像を視認できる範囲を変えることができる。
【0058】
[その他]
上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるものや、実質的に同一のものを含む。さらに、上記に記載した構成は、適宜組み合わせ可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【0059】
上記では、視野絞り部99は、第二凹面鏡7の反射面7a上に配置されているものとして説明したが、これに限定されず、第一凹面鏡6の反射面6a上に配置されてもよい。視野絞り部99は、第一凹面鏡6、第二凹面鏡7の反射面6aまたは7aと運転者との間の光路上に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 車両用表示システム
2 後方カメラ
3 制御装置
3a 映像取得部
3b 表示制御部
4 車両用表示装置
5 ディスプレイ(表示器)
5a 表示面
6 第一凹面鏡(第一ミラー)
6a 反射面
7 第二凹面鏡(第二ミラー)
7a 反射面
8 ハーフミラー
8a 透過面
9 開口部
99 視野絞り部
10 筐体
11 反射光学系機構
12 拡大光学系機構
13 透過光学系機構
100 従来の光学式のバックミラー
110 従来の車両用表示装置