(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20240521BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20240521BHJP
H03H 9/72 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/64 Z
H03H9/72
(21)【出願番号】P 2020110656
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2019223404
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友哉
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-136687(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043607(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/129662(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/220853(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/025055(WO,A1)
【文献】特開2017-085262(JP,A)
【文献】特開2017-118587(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097201(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通端子、第1個別端子、及び第2個別端子と、
前記共通端子と前記第1個別端子との間に接続された第1フィルタと、
前記共通端子と前記第2個別端子との間に接続され、前記第1フィルタの通過帯域より低い周波数域に通過帯域を持つ第2フィルタと
を備えており、
前記第1フィルタは複数の弾性表面波共振子を含み、前記複数の弾性表面波共振子の少なくとも1つは、相互に並列に接続された複数の分割共振子で構成されており、前記複数の分割共振子の各々はIDTを備えており、前記複数の分割共振子は、IDTのピッチが相互に異なる少なくとも2つの分割共振子を含
み、
前記複数の分割共振子のIDTの電極指の配列方向は相互に平行であり、
前記複数の分割共振子のIDTは、前記電極指の配列方向に対して直交する方向にずれて配置されており、
前記複数の分割共振子のそれぞれのIDTの前記電極指が配置された領域の、前記電極指の配列方向に関する位置が、前記複数の分割共振子の間で重ならないフィルタ装置。
【請求項2】
前記第1フィルタの通過帯域の低域遮断周波数の0.7倍以上であって、高域遮断周波数の0.85倍以下の周波数帯域の少なくとも一部が、前記第2フィルタの通過帯域の少なくとも一部と重なっている請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記第1フィルタは、前記共通端子と前記第1個別端子とを接続する直列腕から複数の並列腕が分岐するラダー型フィルタであり、
前記共通端子から前記第1個別端子に向かって1番目の分岐点と前記共通端子との間に前記複数の弾性表面波共振子のうち少なくとも1つの弾性表面波共振子が挿入されており、
前記共通端子から前記第1個別端子に向かって1番目の分岐点と前記共通端子との間、1番目の分岐点と2番目の分岐点との間、及び1番目の分岐点から分岐する並列腕の少なくとも1つに挿入された弾性表面波共振子が、前記複数の分割共振子で構成されている請求項1または2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記第1フィルタは、前記共通端子と前記第1個別端子とを接続する直列腕から複数の並列腕が分岐するラダー型フィルタであり、
前記共通端子から前記第1個別端子に向かって1番目の分岐点と前記共通端子との間には弾性表面波共振子が挿入されておらず、
前記共通端子から前記第1個別端子に向かって1番目の分岐点と2番目の分岐点との間、2番目の分岐点と3番目の分岐点との間、1番目の分岐点から分岐する並列腕、及び2番目の分岐点から分岐する並列腕の少なくとも1つに挿入された弾性表面波共振子が、前記複数の分割共振子で構成されている請求項1または2に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記複数の分割共振子のIDTのピッチの平均値をPaと表記し、前記複数の分割共振子のIDTのピッチの最大値及び最小値を、それぞれPmax及びPminと表記した時、(Pmax-Pmin)/Paが0.7%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
複数の弾性表面波共振子を有する弾性表面波フィルタであって、
前記複数の弾性表面波共振子の少なくとも1つは、相互に並列に接続された複数の分割共振子で構成されており、
前記複数の分割共振子は、相互にIDTのピッチが異なっており、
前記複数の分割共振子のIDTのピッチの平均値をPaと表記し、前記複数の分割共振
子のIDTのピッチの最大値及び最小値を、それぞれPmax及びPminと表記した時、(Pmax-Pmin)/Paが0.7%以下であ
り、
前記複数の分割共振子のIDTの電極指の配列方向は相互に平行であり、
前記複数の分割共振子のIDTは、前記電極指の配列方向に対して直交する方向にずれて配置されており、
前記複数の分割共振子のそれぞれのIDTの前記電極指が配置された領域の、前記電極指の配列方向に関する位置が、前記複数の分割共振子の間で重ならないフィルタ装置。
【請求項7】
前記複数の弾性表面波共振子はラダー型フィルタを構成しており、前記分割共振子は、ラダー型フィルタの直列腕及び並列腕の少なくとも一方に挿入されている請求項
6に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
圧電材料からなる基板と、
前記基板に設けられ、相互に接続された複数の弾性表面波共振子と
を有し、
前記複数の弾性表面波共振子の少なくとも1つは、相互に並列に接続された複数の分割共振子で構成されており、
前記複数の分割共振子は、相互にIDTのピッチが異なっており、
前記複数の分割共振子のIDTの電極指の配列方向は相互に平行であり、
前記複数の分割共振子のIDTは、前記電極指の配列方向に対して直交する方向にずれて配置されてお
り、
前記複数の分割共振子のそれぞれのIDTの前記電極指が配置された領域の、前記電極指の配列方向に関する位置が、前記複数の分割共振子の間で重ならないフィルタ装置。
【請求項9】
前記複数の弾性表面波共振子はラダー型フィルタを構成しており、前記分割共振子は、ラダー型フィルタの直列腕及び並列腕の少なくとも一方に挿入されている請求項
8に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯情報端末等の通信装置のバンドパスフィルタに、弾性表面波素子を用いたフィルタが用いられる。1つのアンテナで複数の周波数帯に対応するために、複数のデュプレクサを組み合わせたマルチプレクサが用いられる。マルチプレクサは、例えば複数のバンドパスフィルタで構成される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性表面波素子を用いたバンドパスフィルタは、所望の通過帯域を実現するために、複数の弾性表面波共振子(以下、SAW共振子という。)を接続することにより構成される。リーキー波またはSH波を主要波として利用するSAW共振子において、主要波による基本共振周波数よりも低い周波数でレイリー波等の不要波による共振が発生する場合がある。不要波による共振によって、バンドパスフィルタの阻止域の通過特性にリップルが発生する。このリップルは、バンドパスフィルタの阻止域における減衰特性に悪影響を与える場合がある。
【0005】
また、通過帯域の異なる複数のバンドパスフィルタを1つの共通端子に接続した場合に、1つのバンドパスフィルタで発生した不要波に起因するリップルが現れる周波数が、他のバンドパスフィルタの通過帯域に含まれる場合、他のバンドパスフィルタの通過帯域の通過特性に悪影響を与える場合がある。
【0006】
本発明の目的は、不要波に起因して発生するリップルを低減させることが可能なフィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
共通端子、第1個別端子、及び第2個別端子と、
前記共通端子と前記第1個別端子との間に接続された第1フィルタと、
前記共通端子と前記第2個別端子との間に接続され、前記第1フィルタの通過帯域より低い周波数域に通過帯域を持つ第2フィルタと
を備えており、
前記第1フィルタは複数の弾性表面波共振子を含み、前記複数の弾性表面波共振子の少なくとも1つは、相互に並列に接続された複数の分割共振子で構成されており、前記複数の分割共振子の各々はIDTを備えており、前記複数の分割共振子は、IDTのピッチが相互に異なる少なくとも2つの分割共振子を含み、
前記複数の分割共振子のIDTの電極指の配列方向は相互に平行であり、
前記複数の分割共振子のIDTは、前記電極指の配列方向に対して直交する方向にずれて配置されており、
前記複数の分割共振子のそれぞれのIDTの前記電極指が配置された領域の、前記電極指の配列方向に関する位置が、前記複数の分割共振子の間で重ならないフィルタ装置が提供される。
【0008】
本発明の他の観点によると、
複数の弾性表面波共振子を有する弾性表面波フィルタであって、
前記複数の弾性表面波共振子の少なくとも1つは、相互に並列に接続された複数の分割共振子で構成されており、
前記複数の分割共振子は、相互にIDTのピッチが異なっており、
前記複数の分割共振子のIDTのピッチの平均値をPaと表記し、前記複数の分割共振
子のIDTのピッチの最大値及び最小値を、それぞれPmax及びPminと表記した時、(Pmax-Pmin)/Paが0.7%以下であり、
前記複数の分割共振子のIDTの電極指の配列方向は相互に平行であり、
前記複数の分割共振子のIDTは、前記電極指の配列方向に対して直交する方向にずれて配置されており、
前記複数の分割共振子のそれぞれのIDTの前記電極指が配置された領域の、前記電極指の配列方向に関する位置が、前記複数の分割共振子の間で重ならないフィルタ装置が提供される。
【0009】
本発明のさらに他の観点によると、
圧電材料からなる基板と、
前記基板に設けられ、相互に接続された複数の弾性表面波共振子と
を有し、
前記複数の弾性表面波共振子の少なくとも1つは、相互に並列に接続された複数の分割共振子で構成されており、
前記複数の分割共振子は、相互にIDTのピッチが異なっており、
前記複数の分割共振子のIDTの電極指の配列方向は相互に平行であり、
前記複数の分割共振子のIDTは、前記電極指の配列方向に対して直交する方向にずれて配置されており、
前記複数の分割共振子のそれぞれのIDTの前記電極指が配置された領域の、前記電極指の配列方向に関する位置が、前記複数の分割共振子の間で重ならないフィルタ装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
弾性表面波共振子を、相互に並列に接続された複数の分割共振子で構成することにより、その弾性表面波共振子で発生する不要波に起因するリップルを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施例によるフィルタ装置の等価回路図である。
【
図2】
図2は、比較例によるフィルタ装置の等価回路図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、それぞれ第1実施例によるフィルタ装置(
図1)、及び比較例によるフィルタ装置(
図2)の通過特性を示す模式的なグラフである。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、相互に並列に接続された2つの分割共振子(
図1)のIDTの構成例を示す概略平面図である。
【
図5】
図5は、第2実施例によるフィルタ装置の等価回路図である。
【
図6】
図6は、第2実施例によるフィルタ装置に含まれるSAW共振子、縦結合型SAWフィルタ、配線、端子等の平面視における配置を示す図である。
【
図7】
図7は、比較例によるフィルタ装置の等価回路図である。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、実施例によるフィルタ装置(
図5)の共通端子から第2個別端子までの通過特性の実測結果を示すグラフであり、
図8C及び
図8Dは、比較例によるフィルタ装置(
図7)の共通端子から第2個別端子までの通過特性の実測結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例(
図5)及び比較例(
図7)によるフィルタ装置の共通端子から第1個別端子までの通過特性の実測結果を示すグラフである。
【
図10】
図10A及び
図10Bは、実施例(
図5)及び比較例(
図7)によるフィルタ装置の共通端子から第1個別端子までの通過特性の実測結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、第2実施例によるフィルタ装置(
図5)の2つの分割共振子の一方のIDTのピッチを、比較例によるフィルタ装置(
図7)のSAW共振子のIDTのピッチと同一に固定し、他方の分割共振子のIDTのピッチを変化させ、通過特性をシミュレーションによって求めた結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、第1バンドパスフィルタの通過帯域と第2バンドパスフィルタの通過帯域との周波数軸上の関係を示すグラフである。
【
図13】
図13Aは、第1バンドパスフィルタと類似の回路構成を有するラダー型フィルタ装置の回路構成を示す図であり、
図13Bは、他の回路構成を有するラダー型フィルタ装置の回路構成を示す図である。
【
図14】
図14は、第3実施例によるフィルタ装置の等価回路図である。
【
図15】
図15A及び
図15Bは、第3実施例によるフィルタ装置(
図14)の共通端子から第2個別端子までの通過特性の実測結果を示すグラフであり、
図15C及び
図15Dは、比較例によるフィルタ装置(
図7)の共通端子から第2個別端子までの通過特性の実測結果を示すグラフである。
【
図16】
図16は、第4実施例による通信装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施例]
図1から
図4Bまでの図面を参照して、第1実施例によるフィルタ装置について説明する。
【0013】
図1は第1実施例によるフィルタ装置20の等価回路図である。第1実施例によるフィルタ装置20は、複数のSAW共振子21を含むラダー型フィルタ装置である。第1端子25と第2端子26とを接続する直列腕の複数の分岐点27から、それぞれ並列腕が分岐している。並列腕の各々は、分岐点とは反対側において接地されている。ラダー型フィルタ装置とは、ラダー型回路の直列素子及び並列素子をそれぞれ共振子としたフィルタ装置を意味する。ラダー型回路は、1つの入力端子、1つの出力端子、及び入出力で共通のグランド電位が与えられるグランド端子を含む。直列素子とは、ラダー型回路の入力端子と出力端子との間に接続された素子を意味し、並列素子とは、直列素子とグランド電位との間に接続された素子を意味する。
【0014】
直列腕上で隣り合う2つの分岐点27の間に少なくとも1つのSAW共振子21が挿入されており、複数の並列腕にそれぞれ少なくとも1つのSAW共振子21が挿入されている。直列腕に挿入されたSAW共振子を直列腕共振子といい、並列腕に挿入されたSAW共振子を並列腕共振子という場合がある。第1端子25からみて1番目の分岐点と2番目の分岐点との間の直列腕共振子であるSAW共振子21が、相互に並列に接続された2つの分割共振子22で構成されている。分割共振子22は、それぞれ相互に噛み合った一対の櫛形電極からなるインターディジタルトランスデューサー(IDT)を含む。2つの分割共振子22は、IDTの複数の電極指のピッチ(以下、単にIDTのピッチという。)が相互に異なっている。SAW共振子21の各々は、リーキー波またはSH波を主要波として利用するように設計されている。
【0015】
SAW共振子を広義に解釈すると、分割共振子22の各々も1つのSAW共振子ということができるが、本明細書において、1つのSAW共振子が相互に並列に接続された複数の分割共振子で構成されている場合、複数の並割共振子で構成されるSAW共振子は、分割共振子の各々をも意味する広義のSAW共振子とは区別される。IDTのピッチは、製造プロセスのばらつきにより許容範囲内でばらついている場合がある。この場合は、例えば、IDTを構成する複数の電極指のうち両端の電極指の中心間距離をLと表記し、電極指の本数をNと表記したとき、IDTのピッチPをP=L/(N-1)と定義する。
【0016】
次に、
図2に示した比較例と比較しながら、第1実施例の優れた効果について説明する。
【0017】
図2は比較例によるフィルタ装置20の等価回路図である。比較例によるフィルタ装置20の回路構成は、
図1に示した第1実施例によるフィルタ装置20の回路構成と、以下の相違点を除いて同一である。第1実施例において2つの分割共振子22で構成されているSAW共振子21に対応する比較例のSAW共振子を21は、分割共振子に分割されておらず、単一のSAW共振子で構成されている。その他の複数のSAW共振子21については、第1実施例と比較例とで、同一の特性を有する。
【0018】
図3A及び
図3Bは、それぞれ第1実施例によるフィルタ装置20(
図1)、及び比較例によるフィルタ装置20(
図2)の通過特性を示す模式的なグラフである。
図3A及び
図3Bでは、特徴的な部分のみを示しており、他の部分については単純化して示している。
図3A及び
図3Bのグラフの横軸は周波数を表し、縦軸は挿入損失を表す。なお、縦軸の下向きに挿入損失が増加する。
【0019】
第1実施例及び比較例によるフィルタ装置20は、いずれも低域遮断周波数がfL、高域遮断周波数がfHのバンドパスフィルタである。第1実施例によるフィルタ装置20(
図1)においては、通過帯域よりも低周波側に、2つのリップル80が現れている。バンドパスフィルタの通過帯域とは、低域遮断周波数と高域遮断周波数との間の周波数帯域を意味し、低域遮断周波数及び高域遮断周波数として、通過電力が、その最大値から3dBダウンとなる周波数(言い換えると、挿入損失が、その最小値から3dB増加する周波数)を採用する。このリップル80は、2つの分割共振子22の各々の不要波、具体的にはレイリー波に起因する。レイリー波に起因して生じるリップルを、レイリーレスポンスという場合がある。2つの分割共振子22のIDTのピッチが相互に異なっているため、不要波に起因する共振周波数が相互にずれている。このため、2つの分割共振子22に対応して2つのリップル80が現れる。
【0020】
これに対して比較例によるフィルタ装置20(
図2)においては、第1実施例で2つの分割共振子22で構成されているSAW共振子21に対応するSAW共振子21が、単一のSAW共振子で構成されている。このため、
図3Bに示すように、不要波に起因するリップル81が1つのみ現れている。このリップル81が現れている周波数において、他の阻止域と比べて挿入損失が小さくなってしまい、所望のフィルタ特性が得られなくなってしまう。リップル81に対応する挿入損失の低下量を小さくすることによって、リップル81が現れている周波数における挿入損失を、他の阻止域の挿入損失に近付けることが好ましい。
【0021】
第1実施例では、不要波に起因するリップル80が2つに分離されることにより、その各々に対応する挿入損失の低下量が、比較例で現れている1つのリップル81に対応する挿入損失の低下量より小さくなる。このため、第1実施例では、比較例と比べて、通過帯域以外の周波数域における阻止性能の低下が抑制されるという優れた効果が得られる。
【0022】
また、2つの分割共振子22のIDTのピッチの差が僅かであり、2つの分割共振子22の合成容量が、比較例のフィルタ装置20の対応する単体のSAW共振子21の容量とほぼ等しい。この場合、比較例(
図2)の回路構成でフィルタ設計を行った後、1つのSAW共振子21を2つの分割共振子22に置き換えても、通過帯域及びその近傍のフィルタ特性はほとんど変化しない。従って、1つのSAW共振子21を2つの分割共振子22に置き換えた構成で、フィルタ設計をやりなおす必要はない。このため、第1実施例によるフィルタ装置20の設計の難易度が、比較例によるフィルタ装置20の難易度と比べて高くなることはない。
【0023】
2つの分割共振子22のIDTのピッチの差が小さすぎると、不要波に起因するリップル80の分離が不十分になり、リップル80に対応する挿入損失の低下量を低減させるという十分な効果が得られない。また、2つの分割共振子22のIDTのピッチの差が大きすぎると、通過帯域及びその近傍のフィルタ特性が大きく変化してしまう。従って、2つの分割共振子22のIDTのピッチの差は、リップル80が明確に2つに分離され、通過帯域及びその近傍のフィルタ特性に与える影響が過大にならないという条件を満たすように設定することが好ましい。一例として、2つの分割共振子22のIDTのピッチの差及び平均値を、それぞれPd及びPaと表記すると、Pd/Paが0.02%以上0.7%以下にすることが好ましい。この好ましい範囲の下限値及び上限値の根拠については、後に
図11を参照して説明する。
【0024】
次に、
図4A及び
図4Bを参照して、2つの分割共振子22(
図1)のIDTの配置について説明する。
【0025】
図4Aは、2つの分割共振子22(
図1)のIDTの一構成例を示す概略平面図である。
図4Aにおいて、IDTの電極指の本数は実際の本数より少なく表示されている。相互に噛み合った一対の櫛形電極221によって、IDT222が構成されている。2つの分割共振子22のIDT222のピッチを、それぞれP1、P2と表記する。2つの分割共振子22のIDT222の複数の電極指が、1本の直線に沿って配列している。2つのIDT222のそれぞれの両端に、対応するIDT222の共振波長の弾性表面波を反射する反射器223が配置されている。
【0026】
図4Bは、2つの分割共振子22(
図1)のIDTの他の構成例を示す概略平面図である。
図4Bに示した例では、2つの分割共振子22のIDT222の複数の電極指の配列方向は相互に平行であり、2つのIDT222は、電極指の配列方向に対して直交する方向にずれて配置されている。一方のIDT222の一端に配置された反射器223は、他方のIDT222の一端に配置された反射器223またはIDT222自体と、電極指の配列方向に関して部分的に重なった位置に配置されている。
【0027】
図4Aに示した例では、
図4Bに示した例と比べて、電極指の配列方向と直交する方向に関する2つの分割共振子22の合計の寸法を小さくすることができる。
図4Bに示した例では、
図4Aに示した例と比べて、電極指の配列方向と平行な方向に関する2つの分割共振子22の合計の寸法を小さくすることができる。他のSAW共振子21(
図1)の配置との関連で、
図4A及び
図4Bの構成のうち好ましい方を採用すればよい。
【0028】
次に、第1実施例の種々の変形例について説明する。
第1実施例(
図1)では、第1端子25から見て1番目の分岐点27と2番目の分岐点27との間の直列腕に挿入されたSAW共振子21を2つの分割共振子22で構成しているが、その他のSAW共振子21を2つの分割共振子22で構成してもよい。例えば、第1端子25から見て2番目の分岐点27より第2端子26側の直列腕に挿入されているSAW共振子21を2つの分割共振子22で構成してもよい。また、並列腕に挿入されているSAW共振子21を2つの分割共振子22で構成してもよい。
【0029】
第1実施例(
図1)では、1つのSAW共振子21を2つの分割共振子22で構成しているが、複数のSAW共振子21を、それぞれ相互に並列に接続された2つの分割共振子22で構成してもよい。また、1つまたは複数のSAW共振子21を、相互に並列に接続された3個以上の分割共振子22で構成してもよい。この場合、複数の
分割共振子22のIDTのピッチの最大値をPmax、最小値をPmin、平均値をPaと表記したとき、(Pmax-Pmin)/Paを0.02%以上0.7%以下とすることが好ましい。
【0030】
第1実施例(
図1)では、第1端子25に直列腕共振子と並列腕共振子との両方が接続され、第2端子26には並列腕共振子が接続されておらず、直列腕共振子のみが接続されている。その他に、第1端子25と第2端子26との両方に、直列腕共振子と並列腕共振子との両方を接続した回路構成を採用してもよい。または、第1端子25と第2端子26とのいずれにも並列腕共振子を接続しない回路構成を採用してもよい。
【0031】
第1実施例(
図1)では、直列腕共振子及び並列腕共振子のいずれも複数個配置しているが、直列腕共振子及び並列腕共振子の少なくとも一方を1個のみ配置したラダー型フィルタにおいて、少なくとも1つのSAW共振子を、相互に並列に接続された複数の分割共振子で構成してもよい。例えば、T型フィルタ、π型フィルタ、L型フィルタも、ラダー型フィルタに含まれる。また、第1実施例(
図1)によるフィルタ装置20はラダー型フィルタであるが、複数のSAW共振子を含むその他の回路構成のフィルタの少なくとも1つのSAW共振子を、相互に並列に接続された複数の分割共振子で構成してもよい。
【0032】
第1実施例(
図1)では、リーキー波またはSH波を主要波として利用し、不要波であるレイリー波に起因して通過特性の阻止域に現れるリップル80に対応する挿入損失の低下量を低減させている。その他に、他の弾性波を主要波として利用してもよい。この場合に第1実施例の構成を適用することにより、主要波による共振周波数よりも低周波側に現れる不要波に起因するリップル80に対応する挿入損失の低下量を低減させることができる。
【0033】
第1実施例では、2つの分割共振子22の各々のIDTのピッチを一定にしているが、1つの分割共振子内でIDTのピッチをステップ状に変化させてもよいし、連続的に変化させてIDTのピッチにグラデーションを設けてもよい。なお、分割共振子22以外の他のSAW共振子21において、IDTのピッチを変化させる構成を採用してもよい。1つのSAW共振子21内でIDTのピッチを変化させることにより、帯域内のリップルを低減させることができる。
【0034】
2つの分割共振子22の各々においてIDTのピッチを変化させる場合、一方の分割共振子22のIDTのピッチの平均値と、他方の分割共振子22のIDTのピッチの平均値とが、相互に異なるようにするとよい。一例として、一方の分割共振子22のIDTの平均ピッチをPa1と表記し、他方の分割共振子22のIDTの平均ピッチをPa2と表記したとき、2つの分割共振子22のIDTのピッチの差Pdとして、平均ピッチPa1と平均ピッチPa2との差を採用すればよい。2つの分割共振子22のIDTのピッチの平均値Paとして、平均ピッチPa1と平均ピッチPa2との平均値を採用すればよい。第1実施例の場合と同様に、Pd/Paが0.02%以上0.7%以下にすることが好ましい。
【0035】
[第2実施例]
次に、
図5から
図13Bまでの図面を参照して、第2実施例によるフィルタ装置について説明する。以下、第1実施例によるフィルタ装置20(
図1)と共通の構成については説明を省略する。
【0036】
図5は、第2実施例によるフィルタ装置20の等価回路図である。第2実施例によるフィルタ装置20は、第1バンドパスフィルタ30、第2バンドパスフィルタ40、第3バンドパスフィルタ50、共通端子60、第1個別端子31、第2個別端子41、及び第3個別端子51を備えている。第1バンドパスフィルタ30は、共通端子60と第1個別端子31との間に接続され、第2バンドパスフィルタ40は、共通端子60と第2個別端子41との間に接続され、第3バンドパスフィルタ50は、共通端子60と第3個別端子51との間に接続されている。
【0037】
共通端子60は、アンテナ68に接続される。共通端子60とグランドとの間に、インピーダンス整合用のインダクタ61が接続される。第1個別端子31、第2個別端子41、及び第3個別端子51が、それぞれスイッチ62を介してローノイズアンプ63に接続される。第1個別端子31、第2個別端子41、及び第3個別端子51と、グランドとの間に、それぞれインピーダンス整合用のインダクタ65、66、67が接続される。
【0038】
第2実施例によるフィルタ装置20は、アンテナ68で受信された高周波信号を、3つの周波数バンドの高周波信号に分波する受信側トリプレクサである。例えば、第1バンドパスフィルタ30、第2バンドパスフィルタ40、及び第3バンドパスフィルタ50の通過帯域は、それぞれ3GPPで標準化されたバンド41のダウンリンクの周波数帯域(2496MHz以上2690MHz以下)、バンド66のダウンリンクの周波数帯域(2110MHz以上2200MHz以下)、及びバンド3のダウンリンクの周波数帯域(1805MHz以上1880MHz以下)にほぼ等しい。すなわち、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域は、第1バンドパスフィルタ30の通過帯域より低く、第3バンドパスフィルタ50の通過帯域は、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域より低い。
【0039】
第1バンドパスフィルタ30、第2バンドパスフィルタ40、及び第3バンドパスフィルタ50の各々は、ラダー型SAWフィルタである。
【0040】
第1バンドパスフィルタ30は、SAW共振子32A、32B、32C、32D、及び1個の縦結合型SAWフィルタ33を含む。共通端子60から見て1番目の分岐点と2番目の分岐点との間の直列腕に、SAW共振子32Bが挿入されている。SAW共振子32Bは、第1実施例によるフィルタ装置20(
図1)の第1端子25から見て1番目の分岐点27と2番目の分岐点27との間の直列腕に挿入されたSAW共振子21と同様に、相互に並列に接続された2つの分割共振子34で構成されている。SAW共振子32Bと2番目の分岐点との間に、縦結合型SAWフィルタ33が挿入されている。
【0041】
共通端子60から見て1番目の分岐点と共通端子60との間には、SAW共振子が挿入されていない。2番目の分岐点と第1個別端子31との間にSAW共振子32Dが接続されている。共通端子60から見て1番目及び2番目の分岐点から分岐している並列腕に、それぞれSAW共振子32A、32Cが挿入されている。SAW共振子32A、32C、32Dの各々を、相互に直列に接続された複数の直列分割共振子で構成してもよい。
【0042】
第2バンドパスフィルタ40は、5個のSAW共振子42A、42B、42C、42D、42E、及び1個の縦結合型SAWフィルタ43を含む。共通端子60から見て1番目の分岐点と共通端子60との間にSAW共振子42Aが接続されている。1番目の分岐点と2番目の分岐点との間に、SAW共振子42Cと縦結合型SAWフィルタ43とが直列に接続されている。2番目の分岐点と第2個別端子41との間に、SAW共振子42Eが接続されている。1番目及び2番目の分岐点から分岐する並列腕に、それぞれSAW共振子42B、42Dが挿入されている。SAW共振子42A、42B、42C、42D、42Eの各々を、複数の直列分割共振子で構成してもよい。
【0043】
第3バンドパスフィルタ50は、4個のSAW共振子52A、52B、52C、52D、及び1個の縦結合型SAWフィルタ53を含む。共通端子60から見て1番目の分岐点と共通端子60との間にSAW共振子52Aが接続されている。1番目の分岐点と2番目の分岐点との間に、SAW共振子52Cと縦結合型SAWフィルタ53とが直列に接続されている。1番目及び2番目の分岐点から分岐する並列腕に、それぞれSAW共振子52B、52Dが挿入されている。SAW共振子52A、52B、52C、52Dの各々を、複数の直列分割共振子で構成してもよい。
【0044】
図6は、第2実施例によるフィルタ装置20に含まれるSAW共振子、縦結合型SAWフィルタ、配線、端子等の平面視における配置を示す図である。圧電材料からなる基板28の表面に、共通端子60、第1個別端子31、第2個別端子41、第3個別端子51、複数のグランド端子、複数のSAW共振子、複数の縦結合型SAWフィルタ、配線等が配置されている。基板28として、例えばLiTaO
3、LiNbO
3等の圧電材料からなる単結晶基板が用いられる。
【0045】
図6において、グランド配線に相対的に淡いハッチングを付し、直列腕の配線に相対的に濃いハッチングを付している。2本の配線が交差する箇所においては、両者の間に絶縁膜が配置されて両者の電気的絶縁が確保されている。また、SAW共振子、縦結合型SAWフィルタ、及び端子に、
図5の等価回路の対応するSAW共振子、縦結合型SAWフィルタ、及び端子に付された参照符号と同一の参照符号を付している。2つの分割共振子
34で構成されたSAW共振子32BのIDTの配置として、第1実施例の
図4Bに示した配置が採用されている。
【0046】
例えば、第2実施例によるフィルタ装置20の長辺、短辺、及び高さは、それぞれ1.8mm、1.4mm、0.6mmである。このフィルタ装置20が、フェイスダウンでパッケージ基板に実装される。
【0047】
次に、
図7に示した比較例によるフィルタ装置20と比較しながら、
図8Aから
図10Bまでの図面を参照して第2実施例の優れた効果について説明する。
【0048】
図7は、比較例によるフィルタ装置20の等価回路図である。比較例においては、第2実施例によるフィルタ装置20のSAW共振子32Bが単一のSAW共振子に置き換えられている。その他の構成は、第2実施例によるフィルタ装置20の構成と同一である。実施例によるフィルタ装置20(
図5)及び比較例によるフィルタ装置20(
図7)を実際に作製し、通過特性を実測した。
【0049】
まず、比較例によるフィルタ装置20の第1バンドパスフィルタ30、第2バンドパスフィルタ40、及び第3バンドパスフィルタ50の通過帯域が、それぞれバンド41、バンド66、及びバンド3のダウンリンクの周波数帯域とほぼ一致するように、各SAW共振子及び縦結合型SAWフィルタの特性を決定した。比較例によるSAW共振子32B(
図7)のIDTのピッチを決定した後、決定されたピッチに基づいて、実施例によるフィルタ装置20のSAW共振子32Bを構成する2つの分割共振子
34のIDTのピッチを決定した。具体的には、実施例によるフィルタ装置20の一方の分割共振子
34のIDTのピッチを、比較例によるフィルタ装置20のSAW共振子32BのIDTのピッチと同一にした。他方の分割共振子
34のIDTのピッチを、比較例によるフィルタ装置20のSAW共振子32BのIDTのピッチよりやや狭くし、2つの分割共振子
34のIDTのピッチの差を、2つの分割共振子
34のIDTのピッチの平均値の0.06%にした。
【0050】
図8A及び
図8Bは、第2実施例によるフィルタ装置20(
図5)の共通端子60から第2個別端子41までの通過特性の実測結果を示すグラフである。
図8C及び
図8Dは、比較例によるフィルタ装置20(
図7)の共通端子60から第2個別端子41までの通過特性の実測結果を示すグラフである。これらのグラフの横軸は周波数を単位「MHz」で表し、縦軸は挿入損失を単位「dB」で表す。
図8A及び
図8Cの右縦軸は、左縦軸のスケールを10倍に拡大したものである。縦軸の下向きに、挿入損失が大きくなっている。通過特性の測定には、一般的にネットワークアナライザが用いられる。
【0051】
図8B及び
図8Dは、それぞれ
図8A及び
図8Cの一部の周波数域を拡大したものである。グラフ中のマーカM1、M2が、それぞれ周波数2110MHz、2200MHzに対応する。マーカM1とM2との間の周波数帯域が、第2バンドパスフィルタ40が対象とするバンド66のダウンリンクの周波数帯域に等しい。
【0052】
比較例によるフィルタ装置20(
図7)においては、
図8C及び
図8Dに示すように、周波数約2145MHzの位置に1つの大きなリップル83が現れている。これに対して第2実施例によるフィルタ装置20(
図5)においては、
図8A及び
図8Bに示すように、周波数約2145MHz及び2146.2MHzの位置に、それぞれリップル82が現れている。2つのリップル82の各々に対応する挿入損失の増加量は、比較例によるフィルタ装置20の通過特性(
図8C、
図8D)に現れているリップル83に対応する挿入損失の増加量より小さい。
【0053】
図9、
図10A、
図10Bは、第2実施例(
図5)及び比較例(
図7)によるフィルタ装置20の共通端子から第1個別端子までの通過特性の実測結果を示すグラフである。横軸は周波数を単位「MHz」で表し、縦軸は挿入損失を単位「dB」で表す。縦軸の下向きに、挿入損失が大きくなっている。グラフ中の実線及び破線が、それぞれ第2実施例(
図5)及び比較例(
図7)によるフィルタ装置20の通過特性を示す。
【0054】
図10Aは、
図9の横軸の周波数範囲の一部分を拡大したものである。
図10Aの右縦軸は左縦軸のスケールを10倍に拡大したものである。
図10Bは、
図10Aの横軸の周波数範囲の一部分を拡大したものである。
【0055】
図9及び
図10Aに示したように、第1バンドパスフィルタ30の通過帯域において、第2実施例の場合と比較例の場合とで、挿入損失にほとんど差がない。
図10Bに示すように、第2実施例においては、周波数約2145MHzと2146.2MHzの位置にそれぞれリップル84が現れており、比較例の場合には、周波数約2145MHzの位置に1つの大きなリップル85が現れている。第2実施例で現れている2つのリップル84は、2つの分割共振子34(
図5)の不要波に起因するものである。比較例で現れている1つの大きなリップル85は、SAW共振子32B(
図7)の不要波に起因するものである。
【0056】
第2バンドパスフィルタ40の通過帯域内のリップル82、83(
図8A乃至
図8D)は、それぞれ第1バンドパスフィルタ30の通過帯域外に現れているリップル84、85(
図10A、
図10B)に起因して発生している。第1バンドパスフィルタ30のみに着目すると、比較例において通過帯域外に現れているリップル85は、第1バンドパスフィルタ30の通過特性に大きな影響を与えない。ところが、このリップル85が現れている周波数が、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域内である場合、
図8Dに示したように第2バンドパスフィルタ40の通過特性に大きな影響を与えてしまう。
【0057】
第2実施例においては、第1バンドパスフィルタ30の通過帯域外に現れているリップル84(
図10B)に対応する挿入損失の低下量が低いため、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域内に現れるリップル82(
図8B)に対応する挿入損失の増加量も小さくなる。これにより、第2バンドパスフィルタ40の通過特性に与える影響を軽減することができる。
【0058】
また、
図9、
図10Aに示すように、SAW共振子32B(
図5)を2つの分割共振子34で構成しても、比較例(
図7)のように単体のSAW共振子で構成した場合と比べて通過特性はほとんど変化しない。このため、比較例によるフィルタ装置20(
図7)のフィルタ設計の結果を、そのまま第2実施例によるフィルタ装置20(
図5)のフィルタ設計に利用することができる。
【0059】
次に、
図11を参照して、第2実施例によるフィルタ装置20に用いられている2つの分割共振子34(
図5)のIDTのピッチの差の好ましい範囲について説明する。第2実施例によるフィルタ装置20の2つの分割共振子34の一方のIDTのピッチを、比較例によるフィルタ装置20(
図7)のSAW共振子32BのIDTのピッチと同一に固定し、他方の分割共振子34のIDTのピッチを変化させ、通過特性をシミュレーションによって求めた。
【0060】
図11は、シミュレーション結果を示すグラフである。2つの分割共振子34のIDTのピッチの固定値をPfと表記し、他方の分割共振子34のIDTのピッチをPvと表記する。
図11の横軸は、(Pv-Pf)/((Pv+Pf)/2)を単位「%」で表す。すなわち、横軸は、IDTの平均ピッチに対するピッチ偏差の割合を表す。ここで、ピッチ偏差はPv>Pfのとき正、Pv<Pfのとき負と定義する。ピッチ偏差の絶対値をピッチ差ということとする。
【0061】
図11の左縦軸は、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域に現れるリップル82(
図8B)に対応する挿入損失の増加量(リップルの大きさという場合がある。)を単位「dB」で表す。右縦軸は、第1バンドパスフィルタ30の通過帯域における挿入損失の最大値を単位「dB」で表す。右縦軸の下向きに、挿入損失が大きくなる。
図11の三角記号が、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域に現れるリップル82の大きさを示し、丸記号が、第1バンドパスフィルタ30の通過帯域における挿入損失の最大値を示す。
【0062】
図11の横軸の原点は、比較例によるフィルタ装置20(
図7)に相当する。第2バンドパスフィルタ40の通過特性に現れるリップル82の大きさは、IDTの平均ピッチに対するピッチ差の割合がゼロのとき最大値を示す。これは、
図8Dに示したように、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域に1つの大きなリップル83が現れている状態に相当する。
【0063】
IDTの平均ピッチに対するピッチ差の割合が0.02%未満の範囲で大きくなると、リップル82の大きさが徐々に小さくなる。これは、
図8Bに示した2つのリップル82が部分的に重なっている状態に相当する。IDTの平均ピッチに対するピッチ差の割合が0.02%以上の範囲では、リップル82の大きさがほぼ一定である。これは、
図8Bに示した2つのリップル82が明確に分離されている状態に相当する。第2バンドパスフィルタ40の通過帯域に現れるリップル82の大きさを小さくする十分な効果を得るためには、IDTの平均ピッチに対するピッチ差の割合を0.02%以上にすることが好ましい。
【0064】
IDTの平均ピッチに対するピッチ差の割合がゼロから大きくなると、第1バンドパスフィルタ30の通過帯域における挿入損失が大きくなる。特に、IDTの平均ピッチに対するピッチ差の割合が約0.7%を超えると、挿入損失の増大の傾きが急峻になる。SAW共振子32B(
図5)を2つの分割共振子34で構成することによる通過帯域における挿入損失の増大を抑制するために、IDTの平均ピッチに対するピッチ差の割合を0.7%以下にすることが好ましい。
【0065】
次に、
図12を参照して、第1バンドパスフィルタ30の通過帯域と第2バンドパスフィルタ40の通過帯域との関係について説明する。
【0066】
図12は、第1バンドパスフィルタ30の通過帯域と第2バンドパスフィルタ40の通過帯域との周波数軸上の関係を示すグラフである。第1バンドパスフィルタ30の通過帯域PB1の低域遮断周波数及び高域遮断周波数を、それぞれfL
1、fH
1と表記する。第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2の低域遮断周波数及び高域遮断周波数を、それぞれfL
2、fH
2と表記する。第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2の高域遮断周波数fH
2は、第1バンドパスフィルタ30の通過帯域PB1の低域遮断周波数fL
1より低い。
【0067】
一般的に、SAW共振子のレイリーレスポンスは、その共振周波数の0.7倍以上0.85倍以下の周波数域に発生する。すなわち、第1バンドパスフィルタ30に含まれるSAW共振子の共振周波数の0.7倍以上0.85倍以下の周波数域が、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2と重なる場合に、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2内に、第1バンドパスフィルタ30に起因するレイリーレスポンスが発生しやすい。
【0068】
図12に示した例では、0.7fL
1以上0.85fH
1以下の周波数帯域に、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2が包含されている。第1バンドパスフィルタ30の通過帯域PB1と第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2とがこのような関係にある場合に、特に、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2にリップル82(
図8B)が発生する現象が顕在化しやすい。
【0069】
その他に、0.7fL
1以上0.85fH
1以下の周波数帯域が、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2に包含されている場合、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2が、0.7fL
1以上0.85fH
1以下の周波数帯域に包含されている場合、または、0.7fL
1以上0.85fH
1以下の周波数帯域の一部と、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2の一部とが重なっている場合にも、第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2にリップル82(
図8B)が発生する現象が顕在化しやすい。
【0070】
第1バンドパスフィルタ30の通過帯域PB1と第2バンドパスフィルタ40の通過帯域PB2とが、このような関係にある場合に、第2実施例によるフィルタ装置20の構成を採用することが、特に好ましい。
【0071】
次に、
図13A及び
図13Bを参照して、第1バンドパスフィルタ30の複数のSAW共振子のうち、どのSAW共振子を2つの分割共振子34で構成すれば大きな効果が得られるかという点について説明する。
【0072】
図13Aは、第1バンドパスフィルタ30と類似の回路構成を有するラダー型のバンドパスフィルタ70の回路構成を示す図である。共通端子60に、バンドパスフィルタ70と、他のバンドパスフィルタ75とが接続されている。
【0073】
共通端子60と、バンドパスフィルタ70の個別端子71とを直列腕が接続している。直列腕の複数の分岐点73とグランドとの間に、それぞれ並列腕が接続されている。共通端子60から見て1番目の分岐点73と共通端子60との間には、SAW共振子が接続されていない。すなわち、直列腕のSAW共振子72及び並列腕のSAW共振子72との両方が共通端子60に直接接続されている。
【0074】
一方のバンドパスフィルタ70のいずれかのSAW共振子72で不要波に起因する共振が発生すると、共通端子60を経由して他方のバンドパスフィルタ75にその影響が及ぶ。共通端子60から遠い位置に接続されているSAW共振子72で不要波に起因する共振が発生したとしても、不要な共振が発生したSAW共振子72から共通端子60を経由して他方のバンドパスフィルタ75に不要な共振の影響が及ぶまで、多くのSAW共振子72が介在する。このため、他方のバンドパスフィルタ75への影響が軽減される。共通端子60に近い位置に接続されたSAW共振子72で不要な共振が発生すると、その影響が他方のバンドパスフィルタ75に及びやすい。従って、共通端子60に近い位置に接続されているSAW共振子72を2つの分割共振子で構成すると、不要な共振に起因して発生するリップルを小さくする効果がより大きくなる。
【0075】
一例として、共通端子60から個別端子71に向かって1番目の分岐点73と2番目の分岐点73との間の直列腕90、2番目の分岐点73と3番目の分岐点73との間の直列腕91、1番目の分岐点73から分岐する並列腕92、及び2番目の分岐点73から分岐する並列腕93に挿入されているSAW共振子72(
図13Aにおいてハッチングを付しているSAW共振子72)の少なくとも1つを、相互に並列に接続された2つの分割共振子で構成するとよい。
【0076】
図13Bは、他の回路構成を有するラダー型のバンドパスフィルタ70の回路構成を示す図である。共通端子60から見て1番目の分岐点73と共通端子60との間にSAW共振子72が接続されている。この場合には、共通端子60から個別端子71に向かって1番目の分岐点73と共通端子60との間の直列腕95、1番目の分岐点73と2番目の分岐点73との間の直列腕96、及び1番目の分岐点から分岐する並列腕97に挿入されているSAW共振子72(
図13Bにおいてハッチングを付しているSAW共振子72)の少なくとも1つを、相互に並列に接続された2つの分割共振子で構成するとよい。
【0077】
[第3実施例]
次に、
図14から
図15Dまでの図面を参照して第3実施例によるフィルタ装置について説明する。以下、第2実施例によるフィルタ装置20(
図5、
図6)と共通の構成については説明を省略する。
【0078】
図14は、第3実施例によるフィルタ装置20の等価回路図である。第2実施例では、第1バンドパスフィルタ30のSAW共振子32Bが、2つの分割共振子34で構成されている。これに対して第3実施例では、第2バンドパスフィルタ40のSAW共振子42Cが2つの分割共振子34で構成されている。第1バンドパスフィルタ30のSAW共振子32Bは、単一のSAW共振子で構成されている。
【0079】
図15A及び
図15Bは、第3実施例によるフィルタ装置20(
図14)の共通端子60から第2個別端子41までの通過特性の実測結果を示すグラフである。
図15C及び
図15Dは、比較例によるフィルタ装置20(
図7)の共通端子60から第2個別端子41までの通過特性の実測結果を示すグラフである。
図15C及び
図15Dに示した比較例の通過特性は、
図8C及び
図8Dに示した通過特性と同一のものであるが、両者は、横軸の周波数の範囲が異なっている。
【0080】
図15Aから
図15Dまでのグラフの横軸は周波数を単位「MHz」で表し、縦軸は挿入損失を単位「dB」で表す。
図15A及び
図15Cの右縦軸は、左縦軸のスケールを10倍に拡大したものである。縦軸の下向きに、挿入損失が大きくなっている。
図15B及び
図15Dのグラフは、それぞれ
図15A及び
図15Cのグラフの一部の周波数帯域を拡大したものである。マーカM1、M2は、それぞれ周波数2110MHz、2200MHzの位置を示している。
【0081】
第3実施例によるフィルタ装置20の通過特性に2つのリップル86(
図15A、
図15B)が現れている。比較例においては、フィルタ装置20の通過特性に1つのリップル87(
図15C、
図15D)が現れている。これらのリップル86、87は、周波数約1677MHzの位置に現れており、第2バンドパスフィルタ40のSAW共振子42Cで発生する不要波に起因する。
【0082】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。
第3実施例において現れている2つのリップル86の各々に対応する挿入損失の低下量(以下、リップルの高さという。)の高さは、比較例において現れている1つのリップル87の高さより低い。リップル86の高さがリップル87の高さより低くなっているのは、第2バンドパスフィルタ40のSAW共振子42Cを2つの分割共振子34で構成しているためである。リップル86の高さが低くなることにより、不要波に起因するリップルが、共通端子60から第2個別端子41までの通過特性に与える影響を低減することができる。
【0083】
次に、第2実施例の変形例について説明する。第2実施例の第2バンドパスフィルタ40(
図5)代えて、ローパスフィルタまたはバンドエリミネーションフィルタを用いてもよい。この場合にも、第2実施例と同様の効果が得られる。すなわち、第1バンドパスフィルタ30に起因するリップルがローパスフィルタまたはバンドエリミネーションフィルタの通過帯域に現れることによる挿入損失の増大を抑制することができる。
【0084】
次に、第3実施例の変形例について説明する。
第3実施例では、第2バンドパスフィルタ40のSAW共振子42Cを、2つの分割共振子34で構成しているが、第2バンドパスフィルタ40の他のSAW共振子を2つの分割共振子で構成してもよい。また、第3バンドパスフィルタ50の少なくとも1つのSAW共振子を、2つの分割共振子で構成してもよい。
【0085】
[第4実施例]
次に、
図16を参照して第4実施例による通信装置について説明する。第4実施例による通信装置に、第2実施例によるフィルタ装置20が用いられている。以下、第2実施例によるフィルタ装置20(
図5、
図6)と共通の構成については説明を省略す。
【0086】
図16は、第4実施例による通信装置のブロック図である。第4実施例による通信装置は、高周波フロントエンド回路100、高周波信号処理回路140、ベースバンド信号処理回路141、及びアンテナ68を含む。高周波フロントエンド回路100は、クワッドプレクサ110、送信側スイッチ101、受信側スイッチ102、パワーアンプ103、及びローノイズアンプ104を含む。クワッドプレクサ110は、2つのデュプレクサ120、130を含む。一方のデュプレクサ120は、送信用バンドパスフィルタ121Tx及び受信用バンドパスフィルタ121Rxを含む。他方のデュプレクサ130は、送信用バンドパスフィルタ131Tx及び受信用バンドパスフィルタ131Rxを含む。
【0087】
例えば、一方のデュプレクサ120はバンド41の送受信用であり、他方のデュプレクサ130はバンド66の送受信用である。送信用バンドパスフィルタ121Txは、共通端子60と個別端子122との間に配置されている。受信用バンドパスフィルタ121Rxは、共通端子60と個別端子123との間に配置されている。送信用バンドパスフィルタ131Txは、共通端子60と個別端子132との間に配置されている。受信用バンドパスフィルタ131Rxは、共通端子60と個別端子133との間に配置されている。これらのバンドパスフィルタには、SAWフィルタが用いられる。共通端子60にアンテナ68が接続されている。
【0088】
パワーアンプ103から出力された高周波信号が、送信側スイッチ101を介して個別端子122及び132の一方に入力される。送信用バンドパスフィルタ121Txまたは131Txを通過した高周波信号がアンテナ68から送信される。アンテナ68で受信されて受信用バンドパスフィルタ121Rxまたは131Rxを通過した高周波信号が、受信側スイッチ102を介してローノイズアンプ104に入力される。
【0089】
高周波信号処理回路140は、ローノイズアンプ104から出力された高周波信号をダウンコンバートしてベースバンド信号処理回路141に出力する。さらに、高周波信号処理回路140は、ベースバンド信号処理回路141から入力された送信信号をアップコンバートしてパワーアンプ103に出力する。ベースバンド信号処理回路141は、ベースバンド信号の種々の信号処理を行う。
【0090】
次に、第4実施例の優れた効果について説明する。
受信用バンドパスフィルタ121Rx及び受信用バンドパスフィルタ131Rxが、それぞれ第2実施例によるフィルタ装置20(
図5)の第1バンドパスフィルタ30及び第2バンドパスフィルタ40に相当する。受信用バンドパスフィルタ121Rxとして、第2実施例による第1バンドパスフィルタ30の構成を採用することにより、受信用バンドパスフィルタ121Rx内での不要共振が受信用バンドパスフィルタ131Rxの通過特性に与える影響を軽減することができる。
【0091】
このような不要共振の影響は、2つの受信用バンドパスフィルタ121Rx、131Rxの間のみならず、1つのデュプレクサ120を構成する受信用バンドパスフィルタ121Rxと送信用バンドパスフィルタ121Txとの間でも生じ得る。1つの共通端子60に複数のバンドパスフィルタが接続されている場合、1つのバンドパスフィルタ内の不要共振の影響が他のバンドパスフィルタの通過特性に悪影響を及ぼす場合、原因となるバンドパスフィルタ内の少なくとも1つのSAW共振子を、複数の分割共振子で構成することにより、不要共振の影響を軽減することができる。
【0092】
[第5実施例]
次に、
図17Aを参照して第5実施例によるフィルタ装置について説明する。以下、第1実施例によるフィルタ装置20(
図1)及び第2実施例によるフィルタ装置(
図5)と共通の構成については説明を省略する。第1実施例によるフィルタ装置20(
図1)はバンドパスフィルタの機能を有するが、第5実施例によるフィルタ装置20はローパスフィルタの機能を有する。
【0093】
図17Aは、第5実施例によるフィルタ装置の等価回路図である。第5実施例によるフィルタ装置20はπ型回路構成を有する。第1端子25と第2端子26とを接続するSAW共振子21にインダクタ23が並列に接続されている。第1端子25とグランドとの間、及び第2端子26とグランドとの間に、それぞれSAW共振子21が接続されている。第1端子25とグランドとの間に接続されたSAW共振子21が、相互に並列に接続された2つの分割共振子22で構成されている。第1実施例の場合と同様に、2つの分割共振子22のIDTのピッチは異なっている。
【0094】
次に、第5実施例の優れた効果について説明する。
第5実施例においても第1実施例と同様に、不要波に起因するリップルに対応する挿入損失の低下量が小さくなる。第2実施例によるフィルタ装置20(
図5)の第1バンドパスフィルタ30に代えて、第5実施例によるローパスフィルタを用いてもよい。この場合、ローパスフィルタに起因するリップルが、他の第2バンドパスフィルタ40または第3バンドパスフィルタ50の通過特性に与える影響を軽減させることができる。
【0095】
次に、
図17Bを参照して第5実施例の変形例について説明する。
図17Bは、本変形例によるフィルタ装置20の等価回路図である。本変形例によるフィルタ装置20はハイパスフィルタの機能を有する。
【0096】
本変形例によるフィルタ装置20はT型回路構成を有する。第1端子25と第2端子26との間に、2つのSAW共振子21が直列に挿入されている。2つのSAW共振子21が相互に接続されている接続点とグランドとの間に、インダクタ23とSAW共振子21とが直列に挿入されている。第1端子25に接続されたSAW共振子21が、相互に並列に接続された2つの分割共振子22で構成されている。第1実施例の場合と同様に、2つの分割共振子22のIDTのピッチは異なっている。
【0097】
本変形例のように、ハイパスフィルタに含まれるSAW共振子21を、2つの分割共振子22で構成してもよい。本変形例においても第5実施例と同様に、他のバンドパスフィルタの通過特性に与える影響を軽減することができる。さらに、第1実施例の
図3Aに示した例と同様に、自己の阻止帯域に現れるリップルに起因する阻止特性の低下を抑制することができる。
【0098】
次に、第5実施例の他の変形例について説明する。
第5実施例(
図17A)では、第1端子25とグランドとの間に接続されたSAW共振子21を2つの分割共振子22で構成しているが、他のSAW共振子21を分割共振子22で構成してもよい。第5実施例の変形例(
図17B)では、第1端子25に接続されたSAW共振子21を分割共振子22で構成しているが、他のSAW共振子21を分割共振子22で構成してもよい。
【0099】
第5実施例及びその変形例では、第2実施例(
図5)において、第1バンドパスフィルタ30に代えて、ローパスフィルタやハイパスフィルタを用いる例を説明したが、第1バンドパスフィルタ30に代えて、バンドエリミネーションフィルタを用いてもよい。この場合、バンドエリミネーションフィルタに含まれる複数のSAW共振子のうち1つを複数の分割共振子で構成すればよい。
【0100】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0101】
20 フィルタ装置
21 弾性表面波共振子(SAW共振子)
22 分割共振子
23 インダクタ
25 第1端子
26 第2端子
27 分岐点
28 基板
30 第1バンドパスフィルタ
31 第1個別端子
32A、32B、32C、32D SAW共振子
33 縦結合型SAWフィルタ
34 分割共振子
40 第2バンドパスフィルタ
41 第2個別端子
42A、42B、42C、42D、42E SAW共振子
43 縦結合型SAWフィルタ
50 第3バンドパスフィルタ
51 第3個別端子
52A、52B、52C、52D SAW共振子
53 縦結合型SAWフィルタ
60 共通端子
61 インダクタ
62 スイッチ
63 ローノイズアンプ
65、66、67 インダクタ
68 アンテナ
70 バンドパスフィルタ
71 個別端子
72 SAW共振子
73 分岐点
75 バンドパスフィルタ
80、81、82、83、84、85、86、87 リップル
90、91 直列腕
92、93 並列腕
95、96 直列腕
97 並列腕
100 高周波フロントエンド回路
101 送信側スイッチ
102 受信側スイッチ
103 パワーアンプ
104 ローノイズアンプ
110 クワッドプレクサ
120 デュプレクサ
121Rx 受信用バンドパスフィルタ
121Tx 送信用バンドパスフィルタ
122、123 個別端子
130 デュプレクサ
131Rx 受信用バンドパスフィルタ
131Tx 送信用バンドパスフィルタ
132、133 個別端子
140 高周波信号処理回路
141 ベースバンド信号処理回路
221 櫛形電極
222 インターディジタルトランスデューサー(IDT)
223 反射器