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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/405 20071001AFI20240521BHJP
   B60K 6/00 20071001ALI20240521BHJP
   B60K 6/24 20071001ALI20240521BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20240521BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240521BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20240521BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20240521BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20240521BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20240521BHJP
   F02B 77/00 20060101ALI20240521BHJP
   F01M 5/00 20060101ALI20240521BHJP
   F01C 21/04 20060101ALI20240521BHJP
   F01C 19/12 20060101ALI20240521BHJP
   F02D 35/00 20060101ALI20240521BHJP
   F01M 11/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B60K6/405
B60K6/00
B60K6/24 ZHV
B60K6/26
B60K6/48
B60K6/54
B60W10/30 900
B60W20/00
H02K7/18 B
F02B77/00 L
F01M5/00 E
F01C21/04 B
F01C19/12 Z
F02D35/00 360B
F01M11/00 T
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020113718
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012126
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋
(72)【発明者】
【氏名】上野 聡士
(72)【発明者】
【氏名】木ノ下 浩
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109017262(CN,A)
【文献】実開昭52-041407(JP,U)
【文献】米国特許第06585066(US,B1)
【文献】特表2012-516807(JP,A)
【文献】特開2018-182796(JP,A)
【文献】特開2018-167755(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118900(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0045135(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/405
B60K 6/00
B60K 6/24
B60K 6/26
B60K 6/48
B60K 6/54
B60W 10/30
B60W 20/00
H02K 7/18
F02B 77/00
F01M 5/00
F01C 21/04
F01C 19/12
F02D 35/00
F01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接配置されたエンジンおよびモータを有した、車両走行用の駆動源である駆動ユニットを備える車両であって、
前記駆動ユニットは、
回転駆動力を出力する出力軸と、
筒形状のエンジンハウジングと、筒形状のモータハウジングと、を有し、前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとが、互いの筒端面同士を突き合わした状態で結合されているとともに、前記出力軸を収容するハウジングと、
前記ハウジング内に形成され、前記エンジンの潤滑・冷却のためのエンジンオイルが循環するエンジンオイル経路と、
前記ハウジング内に形成され、前記モータの潤滑・冷却のためのモータオイルが循環するモータオイル経路と、
前記出力軸に環装された、前記エンジンオイルが前記モータ側へ漏出するのを防ぐ第1シールと、
前記出力軸における前記第1シールに隣接する箇所に環装された、前記モータオイルが前記エンジン側へ漏出するのを防ぐ第2シールと、
を備え、
前記第1シールと前記第2シールとは、1つの大気開放経路に接続されており、
前記エンジンハウジングは、前記第1シールの外周面から前記第2シールの外周面に至るまでの領域を覆うように形成されたシール支持部を有し、
前記大気開放経路は、前記シール支持部を貫通する貫通孔と、前記エンジンハウジングの外壁に空けられた貫通孔と、当該貫通孔同士を気密に接続する管体と、で形成されているとともに、前記第1シールと前記第2シールとの間の間隙に気密に接続されている、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記モータオイル経路は、第1モータオイル経路と、前記第1モータオイル経路よりも前記モータオイルによる前記モータの冷却性能が高い第2モータオイル経路と、を有し、
前記エンジンを冷却するための冷却水の経路である冷却水経路と、
前記エンジンオイル経路を流れる前記エンジンオイルと前記第1モータオイル経路を流れる前記モータオイルとが熱交換する第1熱交換器と、
前記冷却水経路を流れる前記冷却水と前記第2モータオイル経路を流れる前記モータオイルとが熱交換する第2熱交換器と、
を更に備える、
車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両において、
前記モータは、ロータおよびステータを有し、
前記ロータは、前記出力軸に結合されているとともに、前記ステータとの間で回転磁場を形成する本体部と、前記エンジンのバランスウェイトとして機能するウェイト部と、を有し、
前記ウェイト部の一部は、前記出力軸の軸方向において、前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとの突き合わせ面よりも前記エンジンハウジング側に侵入した状態にあり、
前記管体は、前記ウェイト部と間隔を空けて当該ウェイト部の近傍に配置されている、
車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両において、
前記駆動ユニットは、複数の前記エンジンを含み、
前記複数のエンジンは、1つの前記エンジンハウジングを共有しており、
前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとは、締結手段により直に結合されている、
車両。
【請求項5】
互いに隣接配置されたエンジンおよびモータを有した、車両走行用の駆動源である駆動ユニットを備える車両であって、
前記駆動ユニットは、
回転駆動力を出力する出力軸と、
前記出力軸を収容するハウジングと、
前記ハウジング内に形成され、前記エンジンの潤滑・冷却のためのエンジンオイルが循環するエンジンオイル経路と、
前記ハウジング内に形成されたモータオイル経路であって、第1モータオイル経路と、前記第1モータオイル経路よりも前記モータオイルによる前記モータの冷却性能が高い第2モータオイル経路と、を有するとともに、前記モータの潤滑・冷却のためのモータオイルが循環する前記モータオイル経路と、
前記出力軸に環装された、前記エンジンオイルが前記モータ側へ漏出するのを防ぐ第1シールと、
前記出力軸における前記第1シールに隣接する箇所に環装された、前記モータオイルが前記エンジン側へ漏出するのを防ぐ第2シールと、
前記エンジンを冷却するための冷却水の経路である冷却水経路と、
前記エンジンオイル経路を流れる前記エンジンオイルと前記第1モータオイル経路を流れる前記モータオイルとが熱交換する第1熱交換器と、
前記冷却水経路を流れる前記冷却水と前記第2モータオイル経路を流れる前記モータオイルとが熱交換する第2熱交換器と、
を備え、
前記第1シールと前記第2シールとは、1つの大気開放経路に接続されている、
車両。
【請求項6】
請求項5に記載の車両において、
前記ハウジングは、筒形状のエンジンハウジングと、筒形状のモータハウジングと、を有し、前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとが、互いの筒端面同士を突き合わした状態で結合されており、
前記エンジンハウジングは、前記第1シールの外周面から前記第2シールの外周面に至るまでの領域を覆うように形成されたシール支持部を有し、
前記大気開放経路は、前記シール支持部を貫通し、前記第1シールと前記第2シールとの間の間隙に気密に接続されている、
車両。
【請求項7】
請求項6に記載の車両において、
前記大気開放経路は、前記シール支持部を貫通する貫通孔と、前記エンジンハウジングの外壁に空けられた貫通孔と、当該貫通孔同士を気密に接続する管体と、で形成されている、
車両。
【請求項8】
請求項7に記載の車両において、
前記モータは、ロータおよびステータを有し、
前記ロータは、前記出力軸に結合されているとともに、前記ステータとの間で回転磁場を形成する本体部と、前記エンジンのバランスウェイトとして機能するウェイト部と、を有し、
前記ウェイト部の一部は、前記出力軸の軸方向において、前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとの突き合わせ面よりも前記エンジンハウジング側に侵入した状態にあり、
前記管体は、前記ウェイト部と間隔を空けて当該ウェイト部の近傍に配置されている、
車両。
【請求項9】
請求項1,2,3,6,7,8の何れかに記載の車両において、
前記駆動ユニットは、複数の前記エンジンを含み、
前記複数のエンジンは、1つの前記エンジンハウジングを共有しており、
前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとは、締結手段により直に結合されている、
車両。
【請求項10】
請求項2から請求項8の何れかに記載の車両において、
前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、
前記第1モータオイル経路と前記第2モータオイル経路とを切り替える切替ユニットと、
前記エンジンの温度に基づき前記切替ユニットを制御する制御装置と、
を更に備える、
車両。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れかに記載の車両において、
前記出力軸は、前記モータの回転駆動力を出力するモータ出力軸と、前記モータ出力軸に直に結合された、前記エンジンの回転駆動力を出力するエンジン出力軸と、を有し、
前記第1シールおよび前記第2シールは、前記モータ出力軸または前記エンジン出力軸のうちの一方の出力軸における外周面に環装されている、
車両。
【請求項12】
請求項1から請求項11の何れかに記載の車両において、
前記エンジンは、ロータリーピストンを有するロータリーエンジンである、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに隣接配置されたエンジンとモータとを有する駆動ユニットにおけるオイルシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減などを目的として、車両走行用の駆動源としてエンジンに加えてモータを備えたハイブリッド型の車両が普及してきている。
【0003】
特許文献1には、走行用の駆動源としてエンジンおよびモータを備えた自動車が開示されている。特許文献1に開示の自動車では、走行用の駆動源として備えるエンジンおよびモータがともにフロントエリアに搭載されている。
【0004】
特許文献1に開示の自動車では、エンジンで走行するエンジン駆動モードと、モータで走行するモータ駆動モードとが切り替え可能となっている。運転者によりモータ駆動モードが選択された場合には、モータの駆動により自動車の走行がなされる。
【0005】
一方、運転者がエンジン駆動モードを選択した場合には、自動車の発進の際にはモータによる駆動アシストがなされ、所定車速以上でエンジンの駆動による自動車の走行がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-162964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のようなハイブリッド型の車両においても、車両運動性能の更なる向上が求められている。車両の運動性能を高めようとする場合には、エンジンおよびモータをユニット化してなる駆動ユニットを車両における中央に近い領域に配置することが有効である。このように駆動ユニットを配置することにより、車両が旋回し易くなり車両運動性能の向上を図ることができる。ただし、車両における中央に近い領域には、乗員スペースがあるので、駆動ユニットを搭載するためのスペースは限られる。よって、車両運動性能の向上を図るためには、駆動ユニットの小型化を図ることが必要である。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、エンジンおよびモータを有する駆動ユニットの小型化を図ることができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
先ず、本発明者等は、駆動ユニットの小型化を図るために、エンジンハウジングとモータハウジングとを、一体形成または直に結合してなる構造を採用することを考えた。
【0010】
しかし、車両走行用のエンジンには、冷却や潤滑のためのエンジンオイル経路が設けられ、同じく、モータにも、冷却や潤滑のためのモータオイル経路が設けられる。そして、エンジンおよびモータのそれぞれにおいては、エンジンオイル経路およびモータオイル経路からのオイルの漏出を防ぐために、それぞれのオイル経路に対してシールが設けられる。シールが環装される出力軸は、駆動に伴って回転するため、当該出力軸の外周面とシールの内周面との間には微細場間隙が存在する。このため、出力軸の外周面とシールの内周面との間の間隙を伝ってオイルが漏出しないように、当該間隙に対して大気圧を作用させるための大気開放経路を接続しておくことが必要となる。大気開放経路をシールに接続するためには、シールの周囲に所定以上の長さ(出力軸に沿う方向での長さ)の空間が必要となる。エンジンのシールとモータのシールのそれぞれに対して大気開放経路を設けようとすると、それぞれのシールに対して大気開放経路を接続するための空間を確保する必要があり、これが原因で駆動ユニットを十分に小型化することができない。
【0011】
そこで、本発明者等は、上記のような構造において、ハウジング内でエンジン用のシールとモータ用のシールとを出力軸が延びる方向に隣接配置し、それぞれのシールに接続する大気開放経路を共用した構造を採用することを想到し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
具体的には、本発明の一態様に係る車両は、互いに隣接配置されたエンジンおよびモータを有した、車両走行用の駆動源である駆動ユニットを備える車両であって、前記駆動ユニットは、回転駆動力を出力する出力軸と、筒形状のエンジンハウジングと、筒形状のモータハウジングと、を有し、前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとが、互いの筒端面同士を突き合わした状態で結合されているとともに、前記出力軸を収容するハウジングと、前記ハウジング内に形成され、前記エンジンの潤滑・冷却のためのエンジンオイルが循環するエンジンオイル経路と、前記ハウジング内に形成され、前記モータの潤滑・冷却のためのモータオイルが循環するモータオイル経路と、前記出力軸に環装された、前記エンジンオイルが前記モータ側へ漏出するのを防ぐ第1シールと、前記出力軸における前記第1シールに隣接する箇所に環装された、前記モータオイルが前記エンジン側へ漏出するのを防ぐ第2シールと、を備え、前記第1シールと前記第2シールとは、1つの大気開放経路に接続されており、前記エンジンハウジングは、前記第1シールの外周面から前記第2シールの外周面に至るまでの領域を覆うように形成されたシール支持部を有し、前記大気開放経路は、前記シール支持部を貫通する貫通孔と、前記エンジンハウジングの外壁に空けられた貫通孔と、当該貫通孔同士を気密に接続する管体と、で形成されているとともに、前記第1シールと前記第2シールとの間の間隙に気密に接続されている
【0013】
上記態様に係る車両では、エンジンとモータとがユニット化されてなる駆動ユニットを備えるので、エンジンとモータとがユニット化されていない場合に比べて駆動源の小型化が可能であり、当該駆動源(駆動ユニット)を車両の中央またはその近傍に配置することができる。よって、上記態様に係る車両では、車両運動性能の向上を図ることができる。
【0014】
また、上記態様に係る車両では、第1シールと第2シールとを備えるとともに、当該第1シールと第2シールとが1つの大気開放経路を共有する構成としているので、出力軸が回転した場合にもエンジンおよびモータの高いシール性が確保される。即ち、第1シールに大気開放経路が接続されることで、出力軸と第1シールとの当接部に対して大気圧が作用するので、エンジンオイルの漏出が防がれ、同様に、第2シールにも大気開放経路が接続されることで、出力軸と第2シールとの当接部に対しても大気圧が作用するので、モータオイルの漏出が防がれる。
【0015】
また、上記態様に係る車両では、第1シールと第2シールとのそれぞれに別々の大気開放経路を接続するのではなく、第1シールと第2シールとが1つの大気開放経路を共有する構成としているので、複数の大気開放経路を設ける場合に比べて、シールと大気開放経路とを接続する空間を小さくできるため、駆動ユニットの小型化を図ることができる。第1シールと第2シールとが隣接するように配置しているため、シールと大気開放経路との接続部の空間が小さくなり、駆動ユニットの小型化を図ることができる。例えば、大気開放経路のサイズ(開口径のサイズ)を“a”とし、大気開放経路と隣接する部材(他の大気開放経路やハウジングなど)との間に確保が必要な最小間隔を“b”とする。この場合に、2つの大気開放経路を隣接させて配設する場合には、当該2つの大気開放経路を設けるために、出力軸が延びる方向において“2×a+3×b”の領域が必要となる。
【0016】
これに対して、上記態様に係る車両のように、1つの大気開放経路を共有する構成する場合には、“a+2×b”の領域を確保すればよいことになる。よって、“(2×a+3×b)-(a+2×b)=(a+b)”だけシールと大気開放経路とを接続する空間を小さくできる。
また、上記態様に係る車両では、第1シールおよび第2シールの外周面がシール支持部で覆われた構成を採用するので、駆動ユニットの駆動に伴い出力軸が回転した場合にも、第1シールおよび第2シールの各内周面を出力軸の外周面に当接させることができ、高いシール性を確保するのに優位である。
さらに、上記態様に係る車両では、シール支持部の貫通孔と、エンジンハウジングの貫通孔と、これら貫通孔同士を気密に接続する管体と、によって大気開放経路を形成するので、簡易な構造で大気開放経路を形成することができる。仮に、エンジンハウジングやモータハウジングの部材内にトンネル状の孔を空けて、当該孔により大気開放経路を形成しようとする場合には、製造に煩雑な手間がかかるので、製造コストの上昇を招いてしまう。これに対して、上記のように、管体で貫通孔同士を接続するようにすれば、ハウジングの部材内に複雑な経路の孔を空ける必要がなく、製造の手間を低減することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
上記態様に係る車両において、前記モータオイル経路は、第1モータオイル経路と、前記第1モータオイル経路よりも前記モータオイルによる前記モータの冷却性能が高い第2モータオイル経路と、を有し、前記エンジンを冷却するための冷却水の経路である冷却水経路と、前記エンジンオイル経路を流れる前記エンジンオイルと前記第1モータオイル経路を流れる前記モータオイルとが熱交換する第1熱交換器と、前記冷却水経路を流れる前記冷却水と前記第2モータオイル経路を流れる前記モータオイルとが熱交換する第2熱交換器と、を更に備える、ことにしてもよい。
上記のように、モータオイルの循環経路として第1モータオイル経路と第2モータオイル経路とを備え、第2モータオイル経路をモータオイルが流れる場合には、第1モータオイル経路をモータオイルが流れる場合に比べて、高い冷却性能をもってモータを冷却することができるので、モータの使用状況によりモータの発熱量が変動しても、第1モータオイル経路と第2モータオイル経路とを切り替えることでモータを適温に維持することが可能となる。
また、上記のように、第1熱交換器でモータオイルとエンジンオイルとが熱交換可能であり、第2熱交換器でモータオイルとエンジンの冷却水とが熱交換可能であるので、エンジンとモータとで別々に冷却手段を設ける場合に比べて駆動ユニットおよびこれに付帯する冷却手段の全体としての小型化が可能である。
上記態様に係る車両において、前記モータは、ロータおよびステータと、を有し、前記ロータは、前記出力軸に結合されているとともに、前記ステータとの間で回転磁場を形成する本体部と、前記エンジンのバランスウェイトとして機能するウェイト部と、を有し、前記ウェイト部の一部は、前記出力軸の軸方向において、前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとの突き合わせ面よりも前記エンジン側に侵入した状態にあり、前記管体は、前記ウェイト部と間隔を空けて当該ウェイト部の近傍に配置されている、ことにしてもよい。
上記のように、モータにおけるロータが、エンジンのバランスウェイトとして機能するウェイト部を有する構成を採用する場合には、モータにおけるロータとは別にエンジンのバランスウェイトを設ける場合に比べて駆動ユニットのサイズ(出力軸の軸芯方向の寸法)を小さく抑えることができる。
そして、大気開放経路を構成する要素の一部である管体を、エンジン側に侵入したウェイト部と間隔を空けて配置しているので、ウェイト部がロータとともに開店した際にも、互いに干渉するのを避けることができる。
上記態様に係る車両において、前記駆動ユニットは、複数の前記エンジンを含み、前記複数のエンジンは、1つの前記エンジンハウジングを共有しており、前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとは、締結手段により直に結合されている、ことにしてもよい。
上記のように、複数のエンジンが1つのエンジンハウジングを共有し、且つ、エンジンハウジングとモータハウジングとを締結手段により直に結合してなる構成を採用する場合には、駆動ユニットの更なる小型化を図ることができる。このため、駆動ユニットをより車両の中央側に配置することができ、駆動輪と駆動ユニットの先端(駆動輪とは反対側の端部)との間の距離を短くすることが可能である。よって、上記構成を採用する場合には、駆動ユニットの上下振動をより小さく抑えることができる。
【0018】
本発明の別態様に係る車両は、互いに隣接配置されたエンジンおよびモータを有した、車両走行用の駆動源である駆動ユニットを備える車両であって、前記駆動ユニットは、回転駆動力を出力する出力軸と、前記出力軸を収容するハウジングと、前記ハウジング内に形成され、前記エンジンの潤滑・冷却のためのエンジンオイルが循環するエンジンオイル経路と、前記ハウジング内に形成されたモータオイル経路であって、第1モータオイル経路と、前記第1モータオイル経路よりも前記モータオイルによる前記モータの冷却性能が高い第2モータオイル経路と、を有するとともに、前記モータの潤滑・冷却のためのモータオイルが循環する前記モータオイル経路と、前記出力軸に環装された、前記エンジンオイルが前記モータ側へ漏出するのを防ぐ第1シールと、前記出力軸における前記第1シールに隣接する箇所に環装された、前記モータオイルが前記エンジン側へ漏出するのを防ぐ第2シールと、前記エンジンを冷却するための冷却水の経路である冷却水経路と、前記エンジンオイル経路を流れる前記エンジンオイルと前記第1モータオイル経路を流れる前記モータオイルとが熱交換する第1熱交換器と、前記冷却水経路を流れる前記冷却水と前記第2モータオイル経路を流れる前記モータオイルとが熱交換する第2熱交換器と、を備え、前記第1シールと前記第2シールとは、1つの大気開放経路に接続されている。
上記態様に係る車両では、エンジンとモータとがユニット化されてなる駆動ユニットを備えるので、エンジンとモータとがユニット化されていない場合に比べて駆動源の小型化が可能であり、当該駆動源(駆動ユニット)を車両の中央またはその近傍に配置することができる。よって、上記態様に係る車両では、車両運動性能の向上を図ることができる。
また、上記態様に係る車両では、第1シールと第2シールとを備えるとともに、当該第1シールと第2シールとが1つの大気開放経路を共有する構成としているので、出力軸が回転した場合にもエンジンおよびモータの高いシール性が確保される。即ち、第1シールに大気開放経路が接続されることで、出力軸と第1シールとの当接部に対して大気圧が作用するので、エンジンオイルの漏出が防がれ、同様に、第2シールにも大気開放経路が接続されることで、出力軸と第2シールとの当接部に対しても大気圧が作用するので、モータオイルの漏出が防がれる。
また、上記態様に係る車両では、第1シールと第2シールとのそれぞれに別々の大気開放経路を接続するのではなく、第1シールと第2シールとが1つの大気開放経路を共有する構成としているので、複数の大気開放経路を設ける場合に比べて、シールと大気開放経路とを接続する空間を小さくできるため、駆動ユニットの小型化を図ることができる。第1シールと第2シールとが隣接するように配置しているため、シールと大気開放経路との接続部の空間が小さくなり、駆動ユニットの小型化を図ることができる。例えば、大気開放経路のサイズ(開口径のサイズ)を“a”とし、大気開放経路と隣接する部材(他の大気開放経路やハウジングなど)との間に確保が必要な最小間隔を“b”とする。この場合に、2つの大気開放経路を隣接させて配設する場合には、当該2つの大気開放経路を設けるために、出力軸が延びる方向において“2×a+3×b”の領域が必要となる。
これに対して、上記態様に係る車両のように、1つの大気開放経路を共有する構成する場合には、“a+2×b”の領域を確保すればよいことになる。よって、“(2×a+3×b)-(a+2×b)=(a+b)”だけシールと大気開放経路とを接続する空間を小さくできる。
また、上記態様に係る車両では、モータオイルの循環経路として第1モータオイル経路と第2モータオイル経路とを備え、第2モータオイル経路をモータオイルが流れるので、第1モータオイル経路をモータオイルが流れる場合に比べて、高い冷却性能をもってモータを冷却することができるので、モータの使用状況によりモータの発熱量が変動しても、第1モータオイル経路と第2モータオイル経路とを切り替えることでモータを適温に維持することが可能となる。
さらに、上記態様に係る車両では、第1熱交換器でモータオイルとエンジンオイルとが熱交換可能であり、第2熱交換器でモータオイルとエンジンの冷却水とが熱交換可能であるので、エンジンとモータとで別々に冷却手段を設ける場合に比べて駆動ユニットおよびこれに付帯する冷却手段の全体としての小型化が可能である。
【0019】
上記態様に係る車両において、前記ハウジングは、筒形状のエンジンハウジングと、筒形状のモータハウジングと、を有し、前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとが、互いの筒端面同士を突き合わした状態で結合されており、前記エンジンハウジングは、前記第1シールの外周面から前記第2シールの外周面に至るまでの領域を覆うように形成されたシール支持部を有し、前記大気開放経路は、前記シール支持部を貫通し、前記第1シールと前記第2シールとの間の間隙に気密に接続されている、ことにしてもよい。
【0020】
上記のように、第1シールおよび第2シールの外周面がシール支持部で覆われた構成を採用する場合には、駆動ユニットの駆動に伴い出力軸が回転した場合にも、第1シールおよび第2シールの各内周面を出力軸の外周面に当接させることができ、高いシール性を確保するのに優位である。
【0021】
上記態様に係る車両において、前記大気開放経路は、前記シール支持部を貫通する貫通孔と、前記エンジンハウジングの外壁に空けられた貫通孔と、当該貫通孔同士を気密に接続する管体と、で形成されている、ことにしてもよい。
【0022】
上記のように、シール支持部の貫通孔と、エンジンハウジングの貫通孔と、これら貫通孔同士を気密に接続する管体と、によって大気開放経路を形成することとすれば、簡易な構造で大気開放経路を形成することができる。仮に、エンジンハウジングやモータハウジングの部材内にトンネル状の孔を空けて、当該孔により大気開放経路を形成しようとする場合には、製造に煩雑な手間がかかるので、製造コストの上昇を招いてしまう。これに対して、上記のように、管体で貫通孔同士を接続するようにすれば、ハウジングの部材内に複雑な経路の孔を空ける必要がなく、製造の手間を低減することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0023】
上記態様に係る車両において、前記モータは、ロータおよびステータと、を有し、前記ロータは、前記出力軸に結合されているとともに、前記ステータとの間で回転磁場を形成する本体部と、前記エンジンのバランスウェイトとして機能するウェイト部と、を有し、前記ウェイト部の一部は、前記出力軸の軸方向において、前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとの突き合わせ面よりも前記エンジン側に侵入した状態にあり、前記管体は、前記ウェイト部と間隔を空けて当該ウェイト部の近傍に配置されている、ことにしてもよい。
【0024】
上記のように、モータにおけるロータが、エンジンのバランスウェイトとして機能するウェイト部を有する構成を採用する場合には、モータにおけるロータとは別にエンジンのバランスウェイトを設ける場合に比べて駆動ユニットのサイズ(出力軸の軸芯方向の寸法)を小さく抑えることができる。
【0025】
そして、大気開放経路を構成する要素の一部である管体を、エンジン側に侵入したウェイト部と間隔を空けて配置しているので、ウェイト部がロータとともに開店した際にも、互いに干渉するのを避けることができる。
【0026】
上記態様に係る車両において、前記駆動ユニットは、複数の前記エンジンを含み、前記複数のエンジンは、1つの前記エンジンハウジングを共有しており、前記エンジンハウジングと前記モータハウジングとは、締結手段により直に結合されている、ことにしてもよい。
【0027】
上記のように、複数のエンジンが1つのエンジンハウジングを共有し、且つ、エンジンハウジングとモータハウジングとを締結手段により直に結合してなる構成を採用する場合には、駆動ユニットの更なる小型化を図ることができる。このため、駆動ユニットをより車両の中央側に配置することができ、駆動輪と駆動ユニットの先端(駆動輪とは反対側の端部)との間の距離を短くすることが可能である。よって、上記構成を採用する場合には、駆動ユニットの上下振動をより小さく抑えることができる。
【0031】
上記態様に係る車両において、前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、前記第1モータオイル経路と前記第2モータオイル経路とを切り替える切替ユニットと、前記エンジンの温度に基づき前記切替ユニットを制御する制御装置と、を更に備える、ことにしてもよい。
【0032】
上記のように、切替ユニットの切替制御をエンジンの温度に基づくこととすれば、エンジンの冷却手段とモータの冷却手段とを共用しながら、モータの冷却が最適になされる。例えば、エンジンの温度が所定の温度よりも低い場合には、モータの熱をエンジンオイルに伝達して冷却し、エンジンの温度が所定の温度以上となった場合には、モータの熱を冷却水に伝達してモータを冷却することができる。車両においては、冷却水を冷却するためのラジエータを有しており、ラジエータにはラジエータファンが備え付けられているので、エンジンの温度が高くなった場合にもモータを適温に維持することができる。
【0033】
また、エンジンの温度が所定の温度よりも低い場合には、モータの熱をエンジンオイルを介してエンジンに伝達することで、エンジンの温度を上昇させることができる。よって、エンジンでの車両走行(エンジン駆動モード)に移行した際のエンジンの効率の向上を図ることができる。
上記態様に係る車両において、前記出力軸は、前記モータの回転駆動力を出力するモータ出力軸と、前記モータ出力軸に直に結合された、前記エンジンの回転駆動力を出力するエンジン出力軸と、を有し、前記第1シールおよび前記第2シールは、前記モータ出力軸または前記エンジン出力軸のうちの一方の出力軸における外周面に環装されている、ことにしてもよい。
上記のように、第1シールと第2シールとを上記一方の出力軸の外周面に環装した構成とすることにより、第1シールと第2シールとをより接近した状態で隣接配置することができ、駆動ユニットの小型化を図るのに優位である。即ち、仮に第1シールをエンジン出力軸の外周面に環装し、第2シールをモータ出力軸の外周面に環装した構成を採用する場合には、エンジン出力軸とモータ出力軸との結合箇所が間に存在する分だけ第1シールと第2シールとが離間せざるを得なくなる。これに対して、上記のように、第1シールと第2シールをともに上記一方の出力軸の外周面に環装した構成を採用する場合には、互いの間の間隔をより狭くすることが可能である。
【0034】
上記態様に係る車両において、前記エンジンは、ロータリーピストンを有するロータリーエンジンである、ことにしてもよい。
【0035】
上記のように、エンジンとしてロータリーエンジンを採用する場合には、エンジンとしてレシプロエンジンを採用する場合に比べて、駆動ユニットの小型化を図ることができる。よって、上記構成を採用する場合には、駆動ユニットを車両の中央側に配置するのにより優位であり、車両運動性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0036】
上記の各態様に係る車両では、エンジンおよびモータを有する駆動ユニットの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
図2】車両における駆動ユニットの搭載位置を示す模式図である。
図3】駆動ユニットの構成を示す斜視図である。
図4】駆動ユニットの構成を示す斜視図である。
図5】沸騰冷却器の配置を示す斜視図である。
図6】モータの冷却に係る構成を示す模式図である。
図7】駆動ユニットを上方側から見た平面図である。
図8図7のB部の内部構成を示す断面図である。
図9図8のC部を拡大して示す断面図である。
図10図8のD部を拡大して示す断面図である。
図11】オイルシールのシール機能を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0039】
また、以下の説明で用いる図面において、「F」は車両前方、「R」は車両後方、「U」は車両上方、「L」は車両下方、「Le」は車両左方、「Ri」は車両右方をそれぞれ示す。
【0040】
[実施形態]
1.車両1の概略構成
本実施形態に係る車両1の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0041】
図1に示すように、車両1では、当該車両1を駆動するための駆動ユニット10が、フロントエリア1aにおける後方側部分に搭載されている。駆動ユニット10は、エンジン11~13とモータ14とを有する。駆動ユニット10の詳細な構造については、後述する。
【0042】
駆動ユニット10の出力軸には、プロペラシャフト15が接続されている。プロペラシャフト15は、車両1の車幅方向中央を後方側に向けて延びている。プロペラシャフト15の後端は、トランスミッション16に接続されている。
【0043】
トランスミッション16には、デファレンシャルギヤ17が接続されている。そして、デファレンシャルギヤ17の車幅方向左右には、ドライブシャフト18,19がそれぞれ連結されている。ドライブシャフト18,19は、それぞれ後輪20,21に接続されている。即ち、本実施形態に係る車両1では、フロントエリア1aに搭載された駆動ユニット10が発生する駆動力により後輪20,21が駆動して走行する。
【0044】
また、車両1においては、前輪22,23のそれぞれに対して、モータ24,25が接続されている。詳細な図示を省略しているが、モータ24,25は、所謂、インホイールモータである。モータ24,25は、車両1の発進時に動力を発生して前輪22,23に伝えるアシストモータとして機能する。また、モータ24,25は、車両1の減速時に発電する回生ブレーキとしても機能する。そして、車両1の減速時にモータ24,25で発生した電力は、キャパシタ28等に充電される。
【0045】
車両1には、バッテリ26およびインバータ27も搭載されている。バッテリ26は、駆動ユニット10のモータ14に対して電力を供給するための蓄電モジュールである。本実施形態に係るバッテリ26は、例えば、リチウムイオンバッテリである。バッテリ26からの電力は、インバータ27を介してモータ14に供給される。
【0046】
ここで、本実施形態に係る車両1では、駆動ユニット10の駆動モードとして、エンジン駆動モードとモータ駆動モードとを備える。エンジン駆動モードは、エンジン11~13から出力される駆動力で後輪20,21を駆動して走行するモードである。モータ駆動モードは、モータ14から出力される駆動力で後輪20,21を駆動して走行するモードである。
【0047】
なお、車両1では、エンジン駆動モードで駆動の際にはモータ14は駆動力を発生させず、モータ駆動モードで駆動の際にはエンジン11~13は駆動力を発生させないように構成している。
【0048】
車両1において、エンジン駆動モードとモータ駆動モードとの切替制御は、駆動モード制御部29が行う。駆動モード制御部29は、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロプロセッサを備えて構成されている。駆動モード制御部29は、運転者からの指示や、車両1の状況(車速、加減速度、バッテリ残容量)などを基に駆動モードの制御を実行する。
【0049】
2.駆動ユニット10の搭載位置
車両1における駆動ユニット10の搭載位置について、図2を用いて説明する。
【0050】
上述のように、車両1では、駆動ユニット10がフロントエリア1aの後方側部分に搭載されている。具体的には、駆動ユニット10の重心Ax10が、前輪22,23(図2では、前輪23のみを図示)の回転中心Ax23よりも後方側に位置するように駆動ユニット10が搭載されている。また、駆動ユニット10は、重心Ax10が前輪22,23の回転中心Ax23よりも下方側に位置するように搭載されている。
【0051】
即ち、車両1においては、重量物である駆動ユニット10をコンパクト化することによって、当該駆動ユニット10をフロントエリア1aの後方側部分であって、ボンネット30と間隔を空けた下方側部分に搭載されている。これにより、車両1の重心位置Ax1を車両1の長手方向の略中央の低い箇所とすることができる。
【0052】
3.駆動ユニット10およびその周辺の構成
駆動ユニット10の詳細構成およびその周辺の構成について、図3から図5を用いて説明する。
【0053】
図3および図4に示すように、駆動ユニット10が有するエンジン11~13は、一例としてロータリーピストンを有するロータリーエンジンである。車両1において、エンジン11~13としてロータリーエンジンを採用することにより、駆動ユニット10の小型化を図るのに優位である。
【0054】
図4に示すように、エンジン11~13の下方には、オイルパン38が配設されている。オイルパン38は、車両前後方向および車幅方向の寸法に対して、高さ方向の寸法が小さい扁平形状を有する。これにより、駆動ユニット10の高さを低く抑えるのに優位である。
【0055】
上記のように、本実施形態に係る車両1においては、オイルパン38が扁平形状を有するため、エンジンオイルの収容容量が少ない。このため、エンジン11~13を流通したエンジンオイルを集めることが主な機能である。よって、駆動ユニット10の側方には、オイルパン38で集められたエンジンオイルを貯留するためのオイルタンク35が設けられている。
【0056】
図3および図4に示すように、駆動ユニット10の前方には、ラジエータ31およびオイルクーラ32が配設されている。ラジエータ31は、エンジン11~13の熱により高温となった冷却水を冷却するためのデバイスであり、後方側にはラジエータファン31aを有する。
【0057】
オイルクーラ32は、ラジエータ31の後方に配置され、ラジエータ31に沿うように配設されている。オイルクーラ32の平面サイズは、ラジエータ31よりも小型である。
【0058】
エンジン11~13とラジエータ31との間は、配管36,37で接続されている。配管37とエンジン11~13との接続部分には、ウォーターポンプ34が設けられている。
【0059】
オイルクーラ32、エンジン11~13、オイルタンク35、およびオイルパン38の相互間は、配管39~41等で接続されている。配管41とエンジン11~13との接続部分には、オイルポンプ33が設けられている。
【0060】
駆動ユニット10におけるモータ14は、エンジン13の後方に隣接して配置されている。エンジン11~13とモータ14とは出力軸を共有する直結構造となっている。車両1の上下方向および車幅方向において、モータ14の外観サイズは、エンジン11~13よりも小さく形成されている。
【0061】
モータ14の側周部には、2つの熱交換器42,43が取り付けられている。熱交換器42,43は、モータ14の側周部に対してともに左側に配置されている。また、熱交換器43は、熱交換器42に対して上方に離間した状態で配置されている。
【0062】
また、熱交換器42,43は、車両1の前後方向において、モータ14の側周部に収まるように配置されている。熱交換器42および熱交換器43のそれぞれは、高さ方向の寸法が長さ方向の寸法および幅方向の寸法に比べて小さい扁平な外観形状を有する。このように扁平な外観形状を有する熱交換器42および熱交換器43を採用することにより、駆動ユニット10に対して熱交換器42,43が取り付けられてなるセット全体でのサイズを小型化するのに優位である。
【0063】
図3から図5に示すように、モータ14の後方には、トルクチューブ47が接合されている。図5に示すように、モータ14のモータハウジング141からトルクチューブ47の前方側部分までにかけての領域には、沸騰冷却器44が設けられている。
【0064】
沸騰冷却器44は、沸騰部44a、凝縮部44b、配管44c、および沸騰冷却器ファン44dを有する。沸騰冷却器44の配管44cには、モータ14を潤滑・冷却するためのモータオイルよりも沸点が低い沸騰冷却用冷媒が充填されている。
【0065】
沸騰部44aは、モータ14におけるハウジング141の側周部に取り付けられており、沸騰冷却用冷媒とモータ14のモータオイルとの間で熱交換する部分である。
【0066】
凝縮部44bは、モータ14の後方に接合されたトルクチューブ47の前方側部分に取り付けられている。凝縮部44bは、沸騰部44aでの熱交換により沸騰した(蒸発した)沸騰冷却用冷媒を凝縮させるための部分である。配管44cは、沸騰部44aと凝縮部44bとの間での沸騰冷却用冷媒の循環経路である。沸騰冷却器ファン44dは、凝縮部44bに送風することで沸騰冷却用冷媒の凝縮を促進するための部分である。
【0067】
4.モータ14の冷却構成
駆動ユニット10におけるモータ14の冷却構成について、図6を用いて説明する。
【0068】
図6に示すように、モータ14は、モータハウジング141と、ロータ・ステータ142と、オイルパン143とを有する。モータハウジング141の上部には、モータ冷却オイル経路(モータオイル経路)LN22,LN31,LN32が接続されている。
【0069】
モータ駆動モードの実行時において、モータオイルは、モータ冷却オイル経路LN22,LN31,LN32の何れかからロータ・ステータ142を冷却してオイルパン143に流れる。オイルパン143で受けられたモータオイルは、モータ冷却オイル経路(モータオイル経路)LN33を通りモータ14用のオイルポンプ50に送られる。なお、モータ冷却オイル経路LN33には、プレッシャーリリーフバルブ51も接続されている。
【0070】
モータオイルは、オイルポンプ50からモータ冷却オイル経路(モータオイル経路)LN34を通りオイルコントロールバルブ46に送られる。オイルコントロールバルブ46は、その一部がモータハウジング141内に収容されており、モータオイルの導出経路をモータ冷却オイル経路(モータオイル経路)LN21またはモータ冷却オイル経路LN22の何れか一方に切り替えるバルブである。
【0071】
モータ冷却オイル経路LN21は、オイルコントロールバルブ45に接続されている。オイルコントロールバルブ45は、その一部がモータハウジング141内に収容されており、モータオイルの導出経路をモータ冷却オイル経路(モータオイル経路)LN11またはモータ冷却オイル経路(モータオイル経路)LN12の何れか一方に切り替えるバルブである。
【0072】
モータ冷却オイル経路LN11は、熱交換器42を介してモータ冷却オイル経路LN31に接続されている。モータ冷却オイル経路LN12は、熱交換器43を介してモータ冷却オイル経路LN32に接続されている。
【0073】
エンジンオイルの循環経路(エンジンオイル経路)において、オイルポンプ33から導出されたエンジンオイルは、エンジン冷却オイル経路(エンジンオイル経路)LN41から熱交換器42を介してエンジン冷却オイル経路(エンジンオイル経路)LN42へと流れる。
【0074】
熱交換器42を経由してエンジン冷却オイル経路LN42へと流れたエンジンオイルは、エキセントリックシャフト(エンジン出力軸)へと送られる。そして、ロータを潤滑・冷却する。
【0075】
また、エンジン冷却オイル経路LN42に送られたエンジンオイルの一部は、エンジン11~13の燃焼室に噴射され、エンジンハウジング、アペックスシール、およびサイドシールを潤滑・冷却する。
【0076】
熱交換器42では、モータオイルとエンジンオイルとの間で熱交換可能となっている。即ち、モータ駆動モードの実行時においては、モータ14で発生した熱をエンジンオイルへと伝達して冷却するとともに、エンジンオイルを昇温することができるようになっている。よって、車両1では、モータ駆動モードの実行時において、エンジンオイルの循環経路を用いてモータ14の冷却ができるとともに、燃料が燃焼室に供給されていない状態でのエンジン11~13の暖気を行うこともできる。よって、駆動ユニット10の冷却系統の小型化を図ることができるとともに、エンジン駆動モードに移行した際のエンジン効率の向上を図ることができる。
【0077】
エンジン11~13の冷却水の循環経路において、エンジン11~13の高圧ウォータージャケットから導出された冷却水は、エンジン冷却水経路LN43から熱交換器43を介してエンジン冷却水経路LN44に送られる。熱交換器43を経由してエンジン冷却水経路LN44へと送られた冷却水は、エンジン11~13の低圧ウォータージャケットに導入される。
【0078】
熱交換器43では、モータオイルとエンジン冷却用の冷却水との間で熱交換可能となっている。これによっても、モータ駆動モードの実行時において、モータ14で発生した熱を冷却水へと伝達して冷却するとともに、冷却水を昇温することができるようになっている。よって、駆動ユニット10の冷却系統の小型化を図ることができるとともに、エンジン駆動モードに移行した際のエンジン効率の向上を図ることができる。なお、熱交換器43でモータオイルの熱を冷却水に伝達する冷却系統を用いる場合(第2モータオイル経路を用いた冷却)では、熱交換器42でモータオイルの熱をエンジンオイルに伝達する冷却系統を用いる場合(第1モータオイル経路を用いた冷却)よりも高い冷却性能を得ることができる。これは、冷却水の冷却のためのラジエータ31がオイルクーラ32よりも大型であることに加えて、ラジエータ31にはラジエータファン31aを有することによるものである。
【0079】
モータ14のオイルパン143には、沸騰冷却器44の沸騰部44aが配設されている。ここで、図5を用いて説明したように、沸騰部44aは、その外殻がモータ14のモータハウジング141における側周部に取り付けられているが、配管44cに充填された沸騰冷却用冷媒がオイルパン143内のモータオイルと熱交換可能となっている。
【0080】
また、車両1においては、バルブ制御部52およびエンジン水温センサ53も備える。エンジン水温センサ53は、「エンジン温度検出手段」に該当し、例えば、エンジン13とラジエータ31との間の配管36に設けられている。バルブ制御部52は、「制御装置」に該当し、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロプロセッサを備えて構成されている。バルブ制御部52は、エンジン水温センサ53と信号線SL1で接続され、オイルコントロールバルブ45,46のそれぞれと信号線SL2,SL3で接続され、沸騰冷却器44の沸騰冷却器ファン44dと信号線SL4で接続されている。
【0081】
5.バルブ制御部52が実行するモータ14の冷却制御方法
バルブ制御部52は、モータ駆動モードの実行時において(モータ14の駆動力により車両1が走行している場合において)、エンジン水温センサ53からのエンジン水温に関する情報を基に、オイルコントロールバルブ45,46の切替制御および沸騰冷却器ファン44dの駆動制御を実行する。具体的には、次のように制御を行う。
【0082】
(1)エンジン水温が第1閾値(例えば、40℃)未満の場合
エンジン水温が第1閾値未満の場合には、バルブ制御部52は、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN21とが接続されるようにオイルコントロールバルブ46を切替制御し、モータ冷却オイル経路LN21とモータ冷却オイル経路LN11とが接続されるようにオイルコントロールバルブ45を切替制御する。なお、沸騰冷却器ファン44dは停止した状態とする。
【0083】
(2)エンジン水温が第1閾値以上第2閾値(例えば、80℃)未満の場合
エンジン水温が第1閾値以上第2閾値未満の場合には、バルブ制御部52は、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN21とが接続されるようにオイルコントロールバルブ46を切替制御し、モータ冷却オイル経路LN21とモータ冷却オイル経路LN12とが接続されるようにオイルコントロールバルブ45を切替制御する。そして、バルブ制御部52は、沸騰冷却器ファン44dを駆動させる。
【0084】
(3)エンジン水温が第2閾値以上の場合
エンジン水温が第2閾値以上の場合には、バルブ制御部52は、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN22とが接続されるようにオイルコントロールバルブ46を切替制御する。そして、バルブ制御部52は、沸騰冷却器ファン44dの駆動状態を維持させる。
【0085】
6.駆動ユニット10におけるエンジン11~13とモータ14との結合構造
駆動ユニット10におけるエンジン11~13とモータ14との結合構造について、図7および図8を用いて説明する。
【0086】
図7に示すように、エンジン11~13は、外殻を構成するエンジンハウジング131を共有している。エンジンハウジング131は、筒形状の部材であって、内部にロータリーピストンやエンジン出力軸を収容している。
【0087】
また、モータ14は、外殻を構成するモータハウジング141を有する。モータハウジング141も、筒形状の部材であって、内部にロータおよびステータやモータ出力軸を収容している。
【0088】
エンジンハウジング131とモータハウジング141とは、車両1の前後方向において、エンジンハウジング131の後端面131aとモータハウジング141の前端面とが突き合わされ(突き合わせ面A-A)、複数のボルト43により直に結合されている。即ち、駆動ユニット10では、直に結合されたエンジンハウジング131とモータハウジング141とにより、駆動ユニット10のハウジングが構成されている。
【0089】
なお、本明細書において「直に結合」とは、エンジンハウジング131の後端面131aとモータハウジング141の前端面141aとが直接当接する状態で結合されている場合だけでなく、間にパッキンが介挿された状態でエンジンハウジング131とモータハウジング141とが結合されている場合も含む。
【0090】
図8に示すように、エンジンハウジング131の内部には、車両1の前後方向に延びるエンジン出力軸132が収容されている。また、モータハウジング141の内部には、同じく車両1の前後方向に延びるモータ出力軸144が収容されている。
【0091】
エンジン出力軸132とモータ出力軸144とは、エンジン出力軸132の軸芯Ax132とモータ出力軸141の軸芯Ax144とが同心で、且つ、同期して回転するように直に結合されている。エンジン出力軸132とモータ出力軸144との結合領域は、突き合わせ面A-Aおよびその前後の領域である。
【0092】
本実施形態では、直に結合されたエンジン出力軸132とモータ出力軸144とにより、駆動ユニット10の出力軸が構成されている。
【0093】
7.モータ14の内部構成とその周辺の構成
モータ14の内部構成とその周辺の構成について、図8を用いて説明する。
【0094】
上述のように、モータハウジング141の内部には、車両1の前後方向に延び、前方部分でエンジン出力軸132に直に結合されたモータ出力軸144が収容されている。モータ出力軸144の外周部には、ロータ145が結合されている。そして、モータハウジング141の内周部には、ステータ146が結合されている。モータ14においては、ロータ145とステータ146とにより、図6で示したロータ・ステータ142を構成する。
【0095】
ロータ145は、ステータ146の径方向内側に配設された本体部145aと、エンジン11~13のバランスウェイトとして機能するウェイト部145bとを有する。本体部145aは、ステータ146との間で回転磁場を形成する部分である。ウェイト部145bは、本体部145aよりもエンジン13側(前方側)に形成されており、当該ウェイト部145bの一部が、エンジンハウジング131とモータハウジング141との突き合わせ面A-Aよりもエンジンハウジング131側(前方側)に侵入した状態で形成されている。
【0096】
モータ出力軸144には、当該モータ出力軸144における前端部分(エンジン出力軸132が結合された部分)にオイルシール133,147が環装されている。オイルシール133は、「第1シール」に該当し、オイルシール147の前方側に隣接して配設されており、エンジンオイルがモータ14側へと漏出するのを防ぐためのシールである。
【0097】
一方、オイルシール147は、「第2シール」に該当し、オイルシール133の後方側に隣接して配設されており、モータオイルがエンジン11~13側へと漏出するのを防ぐためのシールである。
【0098】
なお、オイルシール133,147は、エンジンハウジング131側に支持されており、モータ出力軸144は、当該モータ出力軸144の外周面がオイルシール133,147の内周面と摺動状態で回転する。
【0099】
エンジンハウジング131には、当該エンジンハウジング131の外方と、オイルシール133とオイルシール147との間の間隙とを連結する連結管49が収容されている。連結管49は、ロータ145のウェイト部145bと間隔を空けて当該ウェイト部145bの前方側近傍に配設されている。連結管49の詳細な配設構成については、後述する。
【0100】
8.オイルシール133,147への大気開放経路の接続構造
オイルシール133,147への大気開放経路の接続構造について、図9から図11を用いて説明する。
【0101】
図9に示すように、エンジンハウジング131には、内外を貫通する貫通孔131bが設けられている。貫通孔131bは、エンジンハウジング131の後端面131aとモータハウジング141の前端面141aとの突き合わせ面A-Aよりも若干前方の位置に空けられている。
【0102】
貫通孔131bは、上方の開口部(上開口部)131dでエンジンハウジング131の外方に解放され、下方の開口部(下開口部)131cで連結管49の管内部49aに連通されている。なお、連結管49は、上開口部49bにおいて貫通孔131bに接続されるように、エンジンハウジング131の貫通孔131bに対して気密に接続されている。
【0103】
図10に示すように、オイルシール133およびオイルシール147は、モータ出力軸144の外周面144aに環装されているとともに、当該オイルシール133およびオイルシール147の外周面がエンジンハウジング131のシール支持部131eにより覆われている。
【0104】
シール支持部131eには、径方向の内外を貫通する貫通孔131fが空けられている。貫通孔131fは、下開口部131hにおいて、オイルシール133とオイルシール147との間の間隙G1に気密に接続されるように設けられている。
【0105】
シール支持部131eに空けられた貫通孔131fは、上開口部131gにおいて連結管49の管内部49aに連通されるように気密に接続されている。逆に言うと、連結管49は、下開口部49cにおいて貫通孔131fと連結するように、シール支持部131eに気密に接続されている。
【0106】
本実施形態に係る駆動ユニット10では、エンジンハウジング131に空けられた貫通孔131bと、連結管49の管内部49aと、シール支持部131eに空けられた貫通孔131fと、によってオイルシール133,147に接続された「大気開放経路」が形成されている。
【0107】
なお、図10では、オイルシール133とオイルシール147との間の間隙G1を分かりやすくするために広い状態で図示しているが、オイルシール133とオイルシール147との間の間隙G1は、図10で示す間隙よりも狭い。
【0108】
図11に示すように、オイルシール133とオイルシール147との間の間隙G1には、常時、大気圧Pが作用する。このため、モータ出力軸144の回転時において、仮にモータ出力軸144の外周面144aと、オイルシール133の内周面133aおよびオイルシール147の内周面147aとの間にそれぞれ間隙G2,G3が空いたとしても、大気圧Pの作用により、エンジンオイルがモータ14側に漏出すること、および、モータオイルがエンジン11~13側に漏出することが抑制される。
【0109】
本実施形態に係る駆動ユニット10では、オイルシール133とオイルシール147とのそれぞれに別々の大気開放経路を接続するのではなく、オイルシール133とオイルシール147とが1つの大気開放経路(貫通孔131b、連結管49の管内部49a、貫通孔131f)を共有する構成としているので、複数の大気開放経路を設ける場合に比べて小型化を図るのに優位である。
【0110】
例えば、貫通孔131fの下開口部131hの径を“a”とし、当該貫通孔131fの下開口部131hと隣接する部材との間に確保が必要な最小間隔を“b”とする。この場合に、2つの貫通孔(大気開放経路)を隣接させて配設すると仮定した場合には、当該2つの大気開放経路を設けるために、モータ出力軸144が延びる方向において“2×a+3×b”の領域が必要となる。
【0111】
これに対して、本実施形態に係る車両1のように、1つの大気開放経路を共有する構成する場合には、“a+2×b”の領域を確保すればよいことになる。よって、本実施形態に係る駆動ユニット10では、“(2×a+3×b)-(a+2×b)=(a+b)”だけオイルシール133,147と大気開放経路とを接続するために必要となる空間を小さくできる。
【0112】
[変形例]
上記実施形態では、貫通孔131bと、連結管49の管内部49aと、貫通孔131fとで大気開放経路を構成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、エンジンハウジングの部材内に設けられた孔だけで大気開放経路を構成することとしてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、大気開放経路を構成する連結管49が直管(直線状に延びる管)であることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、湾曲した管で構成したり、エンジンハウジングの内壁面に沿うように曲折加工された管で構成したりすることもできる。
【0114】
上記実施形態では、エンジンハウジング131とモータハウジング141とをそれぞれ別々に形成し、突き合わせ面A-Aで突き合わせて結合させることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。本発明では、エンジンハウジングとモータハウジングとを一体成型してなる構造、即ち、単一のハウジングの一部をエンジンハウジングとし、当該ハウジングの他の一部をモータハウジングとした構造にすることも可能である。
【0115】
また、上記実施形態では、エンジン出力軸132とモータ出力軸144とを別々に形成し、軸芯Ax132と軸芯Ax144とが同心で、且つ、同期して回転するように、互いを直に結合することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。本発明では、エンジン出力軸とモータ出力軸とを一体形成してなる構造、即ち、単一のシャフトの一部をエンジン出力軸とし、当該シャフトの他の一部をモータ出力軸とした構造にすることも可能である。
【0116】
さらに、カップリング部材を間に介してエンジン出力軸とモータ出力軸とを結合することとしてもよい。ただし、この構成を採用する場合には、エンジン出力軸とモータ出力軸との回転位相が同一となるようにする。
【0117】
上記実施形態では、エンジン11~13の一例としてロータリーエンジンを採用することとしたが、本発明は、レシプロエンジンを採用することも可能である。
【0118】
上記実施形態では、モータオイルとエンジンオイルまたは冷却水との間で熱交換し、エンジン11~13に付帯されたオイルクーラ32またはラジエータ31を共用してモータ14の冷却を行うこととしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。モータオイルを冷却するためのオイルクーラをエンジン11~13のオイルクーラ32とは別に設けることとしてもよい。
【0119】
上記実施形態では、モータ14におけるロータ145のウェイト部145bの一部が突き合わせ面A-Aを超えてエンジンハウジング131側に入り込んだ(侵入した)形態を採用したが、本発明は、ウェイト部の全てが突き合わせ面A-Aよりもモータハウジング141側に収まった形態とすることも可能である。
【0120】
上記実施形態では、車両1の一例としてFR車を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、リヤに駆動ユニットを搭載し、駆動力を後輪に伝達するRR車や、運転席の後部に駆動ユニットを搭載し、駆動力を後輪に伝達するMR車、さらにはフロントエリアの後方側部分に駆動ユニットを搭載し、駆動力を前輪に伝達するFF車を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0121】
1 車両
10 駆動ユニット
11~13 エンジン
14 モータ
48 ボルト(締結手段)
49 連結管
131 エンジンハウジング
132 エンジン出力軸
133 オイルシール(第1シール)
141 モータハウジング
144 モータ出力軸
147 オイルシール(第2シール)
LN11,LN12,LN21,LN22,LN31~LN34 モータ冷却オイル経路(モータオイル経路)
LN41,LN42 エンジン冷却オイル経路(エンジンオイル経路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11