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特許7491096眼科情報解析装置および眼科情報解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】眼科情報解析装置および眼科情報解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020115836
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013341
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】柴 涼介
(72)【発明者】
【氏名】加納 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083268(JP,A)
【文献】特開2013-027442(JP,A)
【文献】特開2018-147387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0184845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉断層計にて測定光を被検眼上で走査することにより撮影されたOCTデータを解析するための眼科情報解析装置であって、
前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ第1走査範囲で走査することにより得られた、前記被検眼の解析領域を含む第1OCTデータにおいて、前記解析領域が解析処理された第1解析データを取得する第1取得手段と、
前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ前記第1走査範囲とは異なる第2走査範囲で走査することにより得られた、少なくとも前記解析領域を含む第2OCTデータであって、前記第1OCTデータとは異なる日に撮影された第2OCTデータを取得する第2取得手段と、
前記第1走査範囲と前記第2走査範囲との違いにかかわらず、前記第2OCTデータから前記第1解析データに対応する前記解析領域を特定し、前記第2OCTデータにおける前記解析領域を解析処理した第2解析データを取得する解析手段と、
前記第1解析データと前記第2解析データとを表示手段へ比較可能に表示する表示制御手段と、
を備え、
前記第1OCTデータは、前記第1走査範囲が互いに異なる、前記解析領域として、黄斑部を含むOCTデータと、乳頭部を含むOCTデータと、の別々のOCTデータからなる前記第1OCTデータであって、
前記第1取得手段は、前記黄斑部および前記乳頭部が解析処理された前記第1解析データを取得し、
前記第2取得手段は、前記解析領域として、前記黄斑部と前記乳頭部とをいずれも含む前記第2OCTデータを取得し、
前記解析手段は、前記第2OCTデータから、前記第1解析データに対応する前記黄斑部と前記乳頭部を特定し、前記第2OCTデータにおける前記黄斑部と前記乳頭部を解析処理した前記第2解析データを取得することを特徴とする眼科情報解析装置。
【請求項2】
請求項1の眼科情報解析装置において、
前記被検眼上で、前記測定光を前記第2走査範囲で走査することにより得られた、前記解析領域を含む第3OCTデータであって、前記第1OCTデータおよび前記第2OCTデータとは異なる日に撮影された第3OCTデータを取得する第3取得手段を備え、
前記解析手段は、前記第3OCTデータから前記第1解析データまたは前記第2解析データに対応する前記解析領域を特定し、前記第3OCTデータにおける前記解析領域を解析処理した第3解析データを取得し、
前記表示制御手段は、前記第1解析データおよび前記第2解析データの少なくともいずれかと、前記第3解析データと、を前記表示手段へ比較可能に表示することを特徴とする眼科情報解析装置。
【請求項3】
光干渉断層計にて測定光を被検眼上で走査することにより撮影されたOCTデータを解析するための眼科情報解析装置において実行される眼科情報解析プログラムであって、
前記眼科情報解析装置のプロセッサによって実行されることで、
前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ第1走査範囲で走査することにより得られた、前記被検眼の解析領域を含む第1OCTデータであって、前記第1走査範囲が互いに異なる、前記解析領域として、黄斑部を含むOCTデータと、乳頭部を含むOCTデータと、の別々のOCTデータからなる前記第1OCTデータにおいて、前記黄斑部および前記乳頭部が解析処理された第1解析データを取得する第1取得ステップと、
前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ前記第1走査範囲とは異なる第2走査範囲で走査することにより得られた、少なくとも前記解析領域として、前記第1黄斑部と前記乳頭部とをいずれも含む第2OCTデータであって、前記第1OCTデータとは異なる日に撮影された第2OCTデータを取得する第2取得ステップと、
前記第1走査範囲と前記第2走査範囲との違いにかかわらず、前記第2OCTデータから前記第1解析データに対応する前記黄斑部と前記乳頭部を特定し、前記第2OCTデータにおける前記黄斑部と前記乳頭部を解析処理した第2解析データを取得する解析ステップと、
前記第1解析データと前記第2解析データとを表示手段へ比較可能に表示する表示制御ステップと、
を前記眼科情報解析装置に実行させることを特徴とする眼科情報解析プログラム
【請求項4】
光干渉断層計にて測定光を被検眼上で走査することにより撮影されたOCTデータを解析するための眼科情報解析装置であって、
前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ第1走査範囲で走査することにより得られた、前記被検眼の解析領域を含む第1OCTデータを取得する第1取得手段と、
前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ前記第1走査範囲とは異なる第2走査範囲で走査することにより得られた、少なくとも前記解析領域を含む第2OCTデータであって、前記第1OCTデータとは異なる日に撮影された第2OCTデータを取得する第2取得手段と、
前記第1走査範囲と前記第2走査範囲との違いにかかわらず、前記第1OCTデータおよび前記第2OCTデータに共通する前記解析領域を特定する解析手段と、
前記第1OCTデータおよび前記第2OCTデータに共通する前記解析領域を表示手段へ比較可能に表示する表示制御手段と、
を備え、
前記第1取得手段は、前記第1OCTデータとして、前記第1走査範囲が互いに異なる、前記解析領域として、黄斑部を含むOCTデータと、乳頭部を含むOCTデータと、の別々のOCTデータからなる前記第1OCTデータを取得し、
前記第2取得手段は、前記解析領域として、前記黄斑部と前記乳頭部とをいずれも含む前記第2OCTデータを取得し、
前記解析手段は、前記第1OCTデータおよび前記第2OCTデータに共通する前記黄斑部と前記乳頭部を特定することを特徴とする眼科情報解析装置。
【請求項5】
光干渉断層計にて測定光を被検眼上で走査することにより撮影されたOCTデータを解析するための眼科情報解析装置において実行される眼科情報解析プログラムであって、
前記眼科情報解析装置のプロセッサによって実行されることで、
前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ第1走査範囲で走査することにより得られた、前記被検眼の解析領域を含む第1OCTデータであって、前記第1OCTデータとして、前記第1走査範囲が互いに異なる、前記解析領域として、黄斑部を含むOCTデータと、乳頭部を含むOCTデータと、の別々のOCTデータからなる前記第1OCTデータを取得する第1取得ステップと、
前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ前記第1走査範囲とは異なる第2走査範囲で走査することにより得られた、少なくとも前記解析領域として、前記第1黄斑部と前記乳頭部とをいずれも含む第2OCTデータであって、前記第1OCTデータとは異なる日に撮影された第2OCTデータを取得する第2取得ステップと、
前記第1走査範囲と前記第2走査範囲との違いにかかわらず、前記第1OCTデータおよび前記第2OCTデータに共通する前記解析領域として、前記黄斑部と前記乳頭部を特定する解析ステップと、
前記第1OCTデータおよび前記第2OCTデータに共通する前記解析領域を表示手段へ比較可能に表示する表示制御ステップと、
を前記眼科情報解析装置に実行させることを特徴とする眼科情報解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を解析する眼科情報解析装置および眼科情報解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科用光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)によって、被検眼の同一部位における画像を異なる検査日に取得し、経過を観察することがある。例えば、眼底用OCTであれば、眼底の断層画像を複数回にわたって取得し、その断層画像の変化から、病変部の経過を観察することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-246904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、光干渉断層計では測定光の走査範囲の違いが想定されておらず、被検眼の経過を観察するフォローアップ撮影においては、初回の撮影で設定した走査範囲を、被検眼の次回以降の撮影でも適用するようになっていた。すなわち、撮影時の走査範囲を統一しなければならなかった。
【0005】
また、最近では、光干渉断層計における測定光の走査範囲が広角化しており、過去に撮影した狭い走査範囲での撮影結果と、現在に撮影した広い走査範囲での撮影結果と、を比較することができなかった。
【0006】
本開示は、上記従来技術に鑑み、被検眼の経過観察を走査範囲の違いにかかわらず効率的に行うことができる眼科情報解析装置および眼科情報解析プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1)本開示の第1態様に係る眼科情報解析装置は、光干渉断層計にて測定光を被検眼上で走査することにより撮影されたOCTデータを解析するための眼科情報解析装置であって、前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ第1走査範囲で走査することにより得られた、前記被検眼の解析領域を含む第1OCTデータにおいて、前記解析領域が解析処理された第1解析データを取得する第1取得手段と、前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ前記第1走査範囲とは異なる第2走査範囲で走査することにより得られた、少なくとも前記解析領域を含む第2OCTデータであって、前記第1OCTデータとは異なる日に撮影された第2OCTデータを取得する第2取得手段と、前記第1走査範囲と前記第2走査範囲との違いにかかわらず、前記第2OCTデータから前記第1解析データに対応する前記解析領域を特定し、前記第2OCTデータにおける前記解析領域を解析処理した第2解析データを取得する解析手段と、前記第1解析データと前記第2解析データとを表示手段へ比較可能に表示する表示制御手段と、を備え、前記第1OCTデータは、前記第1走査範囲が互いに異なる、前記解析領域として、黄斑部を含むOCTデータと、乳頭部を含むOCTデータと、の別々のOCTデータからなる前記第1OCTデータであって、前記第1取得手段は、前記黄斑部および前記乳頭部が解析処理された前記第1解析データを取得し、前記第2取得手段は、前記解析領域として、前記黄斑部と前記乳頭部とをいずれも含む前記第2OCTデータを取得し、前記解析手段は、前記第2OCTデータから、前記第1解析データに対応する前記黄斑部と前記乳頭部を特定し、前記第2OCTデータにおける前記黄斑部と前記乳頭部を解析処理した前記第2解析データを取得することを特徴とする。
【0009】
(2)本開示の第2態様に係る眼科情報解析プログラムは、光干渉断層計にて測定光を被検眼上で走査することにより撮影されたOCTデータを解析するための眼科情報解析装置において実行される眼科情報解析プログラムであって、前記眼科情報解析装置のプロセッサによって実行されることで、前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ第1走査範囲で走査することにより得られた、前記被検眼の解析領域を含む第1OCTデータであって、前記第1走査範囲が互いに異なる、前記解析領域として、黄斑部を含むOCTデータと、乳頭部を含むOCTデータと、の別々のOCTデータからなる前記第1OCTデータにおいて、前記黄斑部および前記乳頭部が解析処理された第1解析データを取得する第1取得ステップと、前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ前記第1走査範囲とは異なる第2走査範囲で走査することにより得られた、少なくとも前記解析領域として、前記第1黄斑部と前記乳頭部とをいずれも含む第2OCTデータであって、前記第1OCTデータとは異なる日に撮影された第2OCTデータを取得する第2取得ステップと、前記第1走査範囲と前記第2走査範囲との違いにかかわらず、前記第2OCTデータから前記第1解析データに対応する前記黄斑部と前記乳頭部を特定し、前記第2OCTデータにおける前記黄斑部と前記乳頭部を解析処理した第2解析データを取得する解析ステップと、前記第1解析データと前記第2解析データとを表示手段へ比較可能に表示する表示制御ステップと、を前記眼科情報解析装置に実行させることを特徴とする。
【0010】
(3)本開示の第3態様に係る眼科情報解析装置は、光干渉断層計にて測定光を被検眼上で走査することにより撮影されたOCTデータを解析するための眼科情報解析装置であって、前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ第1走査範囲で走査することにより得られた、前記被検眼の解析領域を含む第1OCTデータを取得する第1取得手段と、前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ前記第1走査範囲とは異なる第2走査範囲で走査することにより得られた、少なくとも前記解析領域を含む第2OCTデータであって、前記第1OCTデータとは異なる日に撮影された第2OCTデータを取得する第2取得手段と、前記第1走査範囲と前記第2走査範囲との違いにかかわらず、前記第1OCTデータおよび前記第2OCTデータに共通する前記解析領域を特定する解析手段と、前記第1OCTデータおよび前記第2OCTデータに共通する前記解析領域を表示手段へ比較可能に表示する表示制御手段と、を備え前記第1取得手段は、前記第1OCTデータとして、前記第1走査範囲が互いに異なる、前記解析領域として、黄斑部を含むOCTデータと、乳頭部を含むOCTデータと、の別々のOCTデータからなる前記第1OCTデータを取得し、前記第2取得手段は、前記解析領域として、前記黄斑部と前記乳頭部とをいずれも含む前記第2OCTデータを取得し、前記解析手段は、前記第1OCTデータおよび前記第2OCTデータに共通する前記黄斑部と前記乳頭部を特定することを特徴とする。
(4)本開示の第4態様に係る眼科情報解析プログラムは、光干渉断層計にて測定光を被検眼上で走査することにより撮影されたOCTデータを解析するための眼科情報解析装置において実行される眼科情報解析プログラムであって、前記眼科情報解析装置のプロセッサによって実行されることで、前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ第1走査範囲で走査することにより得られた、前記被検眼の解析領域を含む第1OCTデータであって、前記第1OCTデータとして、前記第1走査範囲が互いに異なる、前記解析領域として、黄斑部を含むOCTデータと、乳頭部を含むOCTデータと、の別々のOCTデータからなる前記第1OCTデータを取得する第1取得ステップと、前記被検眼上で、前記測定光を横断方向へ前記第1走査範囲とは異なる第2走査範囲で走査することにより得られた、少なくとも前記解析領域として、前記第1黄斑部と前記乳頭部とをいずれも含む第2OCTデータであって、前記第1OCTデータとは異なる日に撮影された第2OCTデータを取得する第2取得ステップと、前記第1走査範囲と前記第2走査範囲との違いにかかわらず、前記第1OCTデータおよび前記第2OCTデータに共通する前記解析領域として、前記黄斑部と前記乳頭部を特定する解析ステップと、前記第1OCTデータおよび前記第2OCTデータに共通する前記解析領域を表示手段へ比較可能に表示する表示制御ステップと、を前記眼科情報解析装置に実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】眼科情報解析装置の構成図である。
図2】CPUの制御動作の一例を示すフローチャートである
図3】第1解析データの一例である。
図4】第2解析データの一例である。
図5】表示部の画面の一例である。
図6】黄斑部に関する表示画面の一例である。
図7】乳頭部に関する表示画面の一例である。
図8】黄斑部および乳頭部に関する表示画面の一例である。
図9】網膜マップ画像を得た場合における表示画面の一例である。
図10】設定画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<概要>
本開示に係る眼科情報解析装置の実施形態を説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0013】
本実施形態の眼科情報解析装置は、光干渉断層計(例えば、光干渉断層計2)にて測定光を被検眼上で走査することにより撮影されたOCTデータを解析する。例えば、光干渉断層計によって異なる日時に取得された、測定光の走査範囲が異なるOCTデータを解析する。一例として、同一の光干渉断層計を用いて異なる日時に取得された、測定光の走査範囲が異なるOCTデータの解析が含まれる。また、一例として、異なる光干渉断層計を用いて異なる日時に取得された、測定光の走査範囲が異なるOCTデータの解析が含まれる。測定光の走査範囲は、走査部(例えば、光スキャナ)の制御によって互いに異なる範囲とされてもよいし、光学部材の挿抜等によって互いに異なる範囲とされてもよい。
【0014】
なお、OCTデータは、信号データであってもよいし、信号データから生成される画像データであってもよい。例えば、OCTデータは、被検眼の反射強度特性を示す断層画像であってもよい。また、例えば、OCTデータは、被検眼のモーションコントラスト画像であってもよい。また、OCTデータは、測定光の走査範囲に加えて、測定光のその他の走査条件、測定光を検出する検出条件、等が異なるOCTデータであってもよい。例えば、走査条件は、走査パターン、走査位置、走査部位、走査画角(測定光が直交する方向の2次元的なスキャン幅)、等の少なくともいずれかが挙げられる。例えば、検出条件は、露光時間、・・・、等の少なくともいずれかが挙げられる。
【0015】
<第1取得手段>
本実施形態の眼科情報解析装置は、第1取得手段(例えば、CPU13)を備えてもよい。第1取得手段は、被検眼の解析領域が解析処理された第1解析データを取得する。例えば、被検眼の解析領域は眼底の任意の部位でもよく、黄斑、乳頭、等が挙げられる。
【0016】
第1取得手段は、光干渉断層計にて撮影された第1OCTデータを受信し、第1OCTデータを解析処理することによって、第1解析データを取得してもよい。また、第1取得手段は、光干渉断層計にて撮影された第1OCTデータが、光干渉断層計にて解析処理されることで得られた第1解析データを受信することによって、第1解析データを取得してもよい。なお、第1OCTデータを取得した日時と、第1解析データを取得した日時と、は同一の日時であってもよいし、異なる日時であってもよい。例えば、このような第1OCTデータは、被検眼上で測定光を横断方向(被検眼の深さ方向に直交する方向)へ第1走査範囲で走査することにより得られたデータであってもよい。
【0017】
第1OCTデータは、測定光の第1走査範囲が互いに異なる複数のOCTデータであってもよい。言い換えると、第1OCTデータは、被検眼の深さ方向に直交する方向に関して、第1走査範囲が互いに異なる複数のOCTデータであってもよい。例えば、第1解析領域を含むOCTデータと、第1解析領域とは異なる第2解析領域を含むOCTデータと、による複数のOCTデータであってもよい。この場合、第1取得手段は、第1解析領域および第2解析領域がそれぞれに解析処理された第1解析データを取得してもよい。
【0018】
なお、第1OCTデータが断層画像である場合、第1解析データは、被検眼の厚みに関する情報、2次元解析マップ画像、2次元解析チャート、解析値、病変計測情報、等の少なくともいずれかであってもよい。例えば、被検眼の厚みに関する情報は、網膜の各々の層、脈絡膜、等の少なくとも1層の厚みに関する情報であってもよい。例えば、2次元解析マップ画像は、被検眼の厚みに基づいて生成される画像であってもよい。一例としては、黄斑マップ画像、乳頭マップ画像、網膜マップ画像、等が挙げられる。例えば、2次元解析チャートは、被検眼の厚みに基づいて生成されるチャートであってもよい。一例として、解析領域が黄斑であれば、GCHART、S/Iチャート、ETDRSチャート、等が挙げられる。また、一例として、解析領域が乳頭であれば、全体チャート、上下チャート、TSNITチャート、ClockHourチャート、等が挙げられる。例えば、解析値は、被検眼の厚みの数値、乳頭のC/D比、等であってもよい。なお、解析値は、段階的に区分した評価値(一例として、A~Fの6段階評価、等)で表されてもよい。例えば、病変計測情報は、病変のサイズ、面積、体積、等の少なくともいずれかであってもよい。
【0019】
また、第1OCTデータがモーションコントラスト画像である場合、第1解析データは、被検眼の血管に関する情報、2次元解析マップ画像、等の少なくともいずれかであってもよい。例えば、被検眼の血管に関する情報は、血管密度、血管面積、血管体積、血管径、血管蛇行度、等に関する情報であってもよい。
例えば、2次元解析マップ画像は、密度マップ画像であってもよい。
【0020】
<第2取得手段>
本実施形態の眼科情報解析装置は、第2取得手段(例えば、CPU13)を備えてもよい。第2取得手段は、光干渉断層計にて、第1OCTデータとは異なる日時に撮影された第2OCTデータを取得する。例えば、第2OCTデータは、被検眼上で測定光を横断方向へ第1走査範囲とは異なる第2走査範囲で走査することにより得られたデータであってもよい。
【0021】
第2OCTデータは、第1OCTデータと同一の解析領域を少なくとも含むデータであってもよい。言い換えると、第2OCTデータは、被検眼の深さ方向に直交する方向に関して、第1OCTデータと同一の解析領域を含むデータであってもよい。例えば、第1OCTデータが第1解析領域を含むOCTデータであれば、第2OCTデータは第1解析領域を少なくとも含むデータであればよい。また、例えば、第1OCTデータが第2解析領域を含むOCTデータであれば、第2OCTデータは第2解析領域を少なくとも含むデータであればよい。もちろん、例えば、第2OCTデータは、第1解析領域と第2解析領域とをいずれも含むデータであってもよい。
【0022】
<第3取得手段>
本実施形態の眼科情報解析装置は、第3取得手段(例えば、CPU13)を備えてもよい。第3取得手段は、光干渉断層計にて、第1OCTデータおよび第2OCTデータとは異なる日時に撮影された第3OCTデータを取得する。例えば、第3OCTデータは、被検眼上で測定光を横断方向へ第2走査範囲で走査することにより得られたデータであってもよい。つまり、第3OCTデータは、第2OCTデータと同一の走査範囲で撮影されたデータであってもよい。
【0023】
なお、このために、第3OCTデータは、第2OCTデータと同一の解析領域を含むデータとなる。例えば、第2OCTデータが第1解析領域を少なくとも含むOCTデータであれば、第3OCTデータは第1解析領域を少なくとも含むデータである。また、例えば、第2OCTデータが第2解析領域を少なくとも含むOCTデータであれば、第3OCTデータは第2解析領域を少なくとも含むデータである。また、例えば、第2OCTデータが第1解析領域と第2解析領域とをいずれも含むOCTデータであれば、第3OCTデータは第1解析領域と第2解析領域とをいずれも含むデータである。
【0024】
<設定手段>
本実施形態の眼科情報解析装置は、設定手段(例えば、CPU13)を備えてもよい。設定手段は、解析手段に解析させる解析領域を設定する。例えば、設定手段は、解析手段に解析させる解析領域を、第1解析領域と第2解析領域との一方か、あるいは双方か、に設定してもよい。
【0025】
例えば、設定手段は、操作者が操作手段(例えば、入力部11)を操作することによって入力される操作信号に基づいて、解析領域を設定してもよい。この場合、第1解析領域と第2解析領域とは、切り換え可能に設定されてもよいし、任意のいずれかを選択可能に設定されてもよい。また、例えば、設定手段は、各データとの間において重複する解析領域の全体を、解析領域として自動で設定してもよい。
【0026】
<解析手段>
本実施形態の眼科情報解析装置は、解析手段(例えば、CPU13)を備える。解析手段は、第1OCTデータの解析領域が解析された第1解析データに対応する、第2OCTデータにおける解析領域を特定する。また、解析手段は、第2OCTデータにおいて、特定した解析領域を解析処理した第2解析データを取得する。
【0027】
解析手段は、種々の画像処理の手法(特徴点抽出方法、相関関数を用いる方法、フーリエ変換を用いる方法、等)を利用して、第2OCTデータの解析領域を特定してもよい。例えば、この場合には、第1OCTデータに含まれる解析領域の画素と、第2OCTデータに含まれる解析領域の画素と、の位置関係を対応付けることによって、第2OCTデータの解析領域を特定してもよい。また、解析手段は、第1OCTデータおよび第2OCTデータを得た際の測定光の走査条件に基づいて、第2OCTデータの解析領域を特定してもよい。例えば、この場合には、測定光の第1走査範囲と、測定光の第2走査範囲と、の位置関係を対応付けることによって、第2OCTデータにおける解析領域を特定してもよい。
【0028】
解析手段は、第2解析データとして、前述した、被検眼の厚みに関する情報、被検眼の血管に関する情報、2次元解析マップ画像、2次元解析チャート、解析値、病変計測情報、等の少なくともいずれかを取得してもよい。
【0029】
なお、解析手段は、第1OCTデータおよび第2OCTデータを撮影した、各々の走査範囲(すなわち、第1走査範囲と第2走査範囲)の違いにかかわらず、第2OCTデータにおいて前述の特定および解析処理を行い、第2解析データを得ることができる。このため、光干渉断層計における測定光の走査範囲が広角化する等して、同一の被検眼に対して走査範囲が異なる解析結果が得られた場合でも、経過観察が効率よく行われる。
【0030】
なお、第1取得手段によって、複数のOCTデータにそれぞれ含まれる第1解析領域および第2解析領域を解析処理した第1解析データが取得された場合、解析手段は、第2OCTデータから、第1解析データに対応する第1解析領域と第2解析領域との少なくともいずれかを特定してもよい。また、第2OCTデータにおいて、第1解析領域と第2解析領域との少なくともいずれかを解析処理した第2解析データを取得してもよい。すなわち、第2解析データは、第1解析領域のみが解析処理された解析データでもよいし、第2解析領域のみが解析処理された解析データでもよい。また、第2解析データは、第1解析領域が解析処理された解析データと、第2解析領域が解析処理された解析データと、による複数の解析データであってもよい。
【0031】
また、第3取得手段によって、第2OCTデータと同じ第2走査範囲を撮影した第3OCTデータが得られた場合、解析手段は、第3OCTデータから、第1解析データまたは第2解析データに対応する解析領域を特定してもよい。また、第3OCTデータにおいて、解析領域を解析処理した第3解析データを取得してもよい。
【0032】
第3OCTデータは、第1解析領域を含むデータとして得られてもよい。この場合、解析手段は、第3OCTデータから第1解析データまたは第2解析データに対応する第1解析領域を特定してもよい。また、第3OCTデータにおいて、第1解析領域を解析処理したデータを、第3解析データとして取得してもよい。
【0033】
第3OCTデータは、第1解析領域および第2解析領域を含むデータとして得られてもよい。この場合、解析手段は、上記と同様に、第3OCTデータから第1解析領域を特定し、第1解析領域を解析処理した第3解析データを取得してもよい。また、この場合、解析手段は、第3OCTデータから第2解析データに対応する第2解析領域を特定し、第3OCTデータにおいて、第2解析領域を解析処理したデータを、第3解析データとして取得してもよい。もちろん、この場合、解析手段は、第1解析領域および第2解析領域をそれぞれに解析処理した複数の解析データを、第3解析データとして得てもよい。
【0034】
解析手段は、設定手段により設定された解析領域に基づき、被検眼の解析領域を選択的に解析処理することで、解析データを取得してもよい。例えば、第1解析領域と第2解析領域をともに含む第2OCTデータおよび第3OCTデータが得られた場合、解析手段は第1解析領域と第2解析領域とを選択的に解析処理し、第1解析領域に対する第2解析データおよび第3解析データと、第2解析領域に対する第2解析データおよび第3解析データと、の少なくともいずれかを取得する。これによって、複数の解析領域を含むOCTデータが取得された際に、所望の解析領域における解析データを取得し、その経時的な変化を容易に観察することができる。
【0035】
本実施形態において、解析手段は、被検眼のOCTデータと対応付けられた、OCTデータとは異なるデータを利用して、各々の解析領域が対応する領域を特定する構成としてもよい。一例としては、OCTデータを解析することで生成されるOCT正面画像を利用することができる。また、一例としては、眼底カメラ光学系により撮影される赤外正面画像を利用することができる。また、一例としては、走査型共焦点光学系により撮影されるSLO正面画像を利用することができる。
【0036】
なお、各々のOCTデータは、必ずしも同一の光学系による正面画像に対応付けられている必要はなく、少なくともいずれかの正面画像の種類が異なっていてもよい。一例として、第1OCTデータはOCT正面画像に対応付けられ、第2OCTデータおよび第3OCTデータは赤外正面画像に対応付けられてもよい。
【0037】
また、本実施形態において、解析手段は、さらに、被検眼における解析領域の経過を観察するための経過観察データを取得してもよい。例えば、経過観察データを確認することで、解析領域の経時的変化にともなう傾向を把握しやすくなり、被検眼の経過観察が効率よく行われる。
【0038】
経過観察データは、解析データから生成される統計情報、等でもよい。例えば、統計情報は、数値や図表であってもよい。また、例えば、統計情報は、解析値の分布を時系列にまとめた情報であって、時系列の特性を把握することができるように表現されてもよい。一例として、統計情報は、時系列グラフ(トレンドグラフ)であってもよい。もちろん、時系列グラフとは異なる情報でもよい。
【0039】
例えば、時系列グラフは、時系列毎の解析データを回帰分析することにより得られる回帰直線を示したグラフでもよい。例えば、時系列グラフには、回帰直線の傾き、統計学的な有意差の有無(p値)、等が含まれてもよい。
【0040】
<表示制御手段>
本実施形態の眼科情報解析装置は、表示制御手段(例えば、CPU13)を備えてもよい。表示制御手段は、第1OCTデータに基づく第1解析データと、第2OCTデータに基づく第2解析データと、を表示手段(例えば、表示部12)へ比較可能に表示する。例えば、表示制御手段は、第1解析データと第2解析データとを並べて表示してもよいし、切り換え可能に表示してもよい。また、例えば、表示制御手段は、第1解析データと第2解析データとを経時的に表示させてもよい。
【0041】
もちろん、第3取得手段によって第3OCTデータが得られた場合、表示制御手段は、第1解析データ、第2解析データ、および第3解析データのうち、少なくとも2つの解析データを表示してもよい。例えば、第1解析データおよび第2解析データの少なくともいずれかと、第3解析データと、を表示してもよい。また、例えば、第1解析データと、第2解析データと、第3解析データと、をすべて表示してもよい。
【0042】
表示制御手段は、解析手段によって取得された経過観察データを表示手段へ表示してもよい。例えば、第1解析データ、第2解析データ、および第3解析データのうち、少なくとも2つの解析データに対応する経過観察データを表示してもよいし、すべての解析データに対応する経過観察データを表示してもよい。例えば、経過観察データの表示により、解析領域の経時的変化にともなう傾向を把握しやすくなり、被検眼の経過観察が効率よく行われる。
【0043】
表示制御手段は、被検眼における解析領域の少なくとも一部が重複する解析データを対象として、その解析データを表示手段へ比較可能に表示させてもよい。例えば、これによって、測定光の走査範囲は異なるが、同一の解析領域を含む解析データ同士を、容易に比較することができる。
【0044】
本実施形態の眼科情報解析装置においては、測定光を横断方向へ第1走査範囲で走査することにより得られた、解析領域を含む第1OCTデータを取得するとともに、測定光を横断方向へ第2走査範囲で走査することにより得られた、少なくとも解析領域を含む第2OCTデータであって、第1OCTデータとは異なる日時に撮影された第2OCTデータを取得してもよい。また、第1走査範囲と第2走査範囲との違いにかかわらず、第1OCTデータおよび第2OCTデータに共通する解析領域を特定して、第1OCTデータおよび第2OCTデータに共通する解析領域を表示手段へ比較可能に表示してもよい。例えば、これによって、光干渉断層計における測定光の走査範囲が広角化する等して、同一の被検眼に対して走査範囲が異なるOCTデータが得られた場合でも、経過観察を効率よく行うことができる。
【0045】
なお、本開示は、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体等を介してシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
【0046】
<実施例>
本実施形態における眼科情報解析装置1の一実施例について説明する。
【0047】
図1は、眼科情報解析装置1の構成図である。眼科情報解析装置1は、入力部11、表示部12、CPU(Central Processing Unit)13、記憶部14、等を備える。各部は、バス等を介して電気的に接続される。
【0048】
また、眼科情報解析装置1は、光干渉断層計(OCT)2と、信号の送受信が可能な状態で接続される。眼科情報解析装置1は、光干渉断層計2として、第1の光干渉断層計A(以下、第1装置21)と第2の光干渉断層計B(以下、第2装置22)とを含む、複数の光干渉断層計と接続されてもよい。なお、眼科情報解析装置1は、第1装置21および第2装置22と同時に接続する必要はなく、長期的な経過観察において、光干渉断層計を第1装置21から第2装置22に変更する場合も含み得る。
【0049】
入力部11は、眼科情報解析装置1の操作者が、各種の情報を入力するための構成である。例えば、入力部11は、タッチパネル、キーボード、マウス、等でもよい。表示部12は、光干渉断層計2にて得られるOCTデータ、OCTデータの解析結果、OCTデータの解析結果から得られる経過観察データ、等を画面に表示する。例えば、OCTデータは、OCT断層画像でもよい。例えば、OCTデータの解析結果は、網膜厚情報、網膜厚情報に基づいて生成される網膜厚マップ画像、網膜厚情報に基づいて算出される解析チャート、等でもよい。例えば、経過観察データは、時系列グラフ(トレンドグラフ)等でもよい。CPU13は、眼科情報解析装置1における全体の演算処理を行うプロセッサである。また、CPU13は、眼科情報解析装置1が取得した各種画像の画像処理を行う画像処理機能を備える。
【0050】
記憶部14は、眼科情報解析プログラムを記憶する。また、記憶部14は、OCTデータ、OCTデータの解析結果、経過観察データ、等を記憶する。例えば、光干渉断層計2にて異なる日に得られたOCTデータの解析結果と経過観察データとを記憶する。これには、被検者毎の、検査日毎の解析結果および経過観察データが含まれる。さらに、記憶部14は、OCTデータ取得時の撮影条件(例えば、検査日、走査条件、検出条件、等)を記憶する。例えば、走査条件は、走査パターン、走査範囲、走査密度、走査位置、走査部位(一例としては、黄斑部、乳頭部、等)、等でもよい。例えば、検出条件は、検出器の露光時間、等でもよい。例えば、記憶部14は、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等でもよい。
【0051】
なお、眼科情報解析装置1の入力部11、表示部12、CPU13、および記憶部14として、市販のPC(パーソナルコンピュータ)がもつ入力部、表示部、演算処理部、および記憶部を用い、市販のPCに眼科情報解析プログラムをインストールするようにしてもよい。もちろん、眼科情報解析装置1の入力部11、表示部12、CPU13、および記憶部14として、光干渉断層計2がもつ入力部、表示部、演算処理部、および記憶部を用いてもよい。
【0052】
本実施例における眼科情報解析装置1は、例えば、コンピュータであり、CPU13は、RAM上に前述の眼科情報解析プログラムを読み出した後、各種の演算処理を行うことにより、プログラムを実行する。例えば、CPU13は、眼科情報解析プログラムに従って、表示部12の表示画面を制御する。
【0053】
光干渉断層計2は、被検眼の眼底のOCTデータを取得する装置である。光干渉断層計2は、フーリエドメインOCT(例えば、スペクトルドメインOCT、波長掃引式OCT、等)であってよい。また、光干渉断層計2は、タイムドメインOCTであってもよい。光干渉断層計2を用いて得たOCTデータは、光干渉断層計2を制御する制御部によって解析されてもよいし、他の制御部によって解析されてもよい。これにより、被検眼の眼底に関する解析結果(例えば、網膜厚情報)が取得される。
【0054】
光干渉断層計2は、被検眼に照射された測定光と参照光による干渉信号を検出するOCT光学系を有し、干渉信号を処理することで、被検眼のOCTデータを取得する。OCT光学系は、低コヒーレント光を発する光源、光源から出射した光を測定光及び参照光に分割する光分割器、被検眼へ測定光を導く測定光学系、被検眼の眼底上で測定光を横断方向に走査させる走査部、参照光を生成する参照光学系、測定光と参照光の合成による干渉信号を検出する検出器、等を備えた構成であってもよい。もちろん、OCT光学系は、これらとは異なる構成を備えてもよい。
【0055】
光干渉断層計2は、測定光と参照光による干渉信号に基づき、被検眼の眼底のOCTデータとして、OCT断層画像を得ることができる。また、光干渉断層計2は、測定光と参照光による干渉信号に基づき、被検眼の眼底のOCTデータとして、3次元OCT断層画像(3次元OCTデータ)を得ることができる。また、光干渉断層計2は、被検眼の眼底のOCTデータとして、3次元OCT断層画像からOCT正面画像(OCT正面データ)を得ることができる。例えば、この場合は、XY方向の各点について干渉信号のスペクトル強度が積算された積算画像を、OCT正面画像として得てもよい。
【0056】
光干渉断層計2は、3次元OCT断層画像を画像処理し、眼底の網膜厚情報を取得してもよい。例えば、網膜厚情報としては、網膜の各層の厚み(具体的には、視神経線維層の厚み、神経線維層~網膜色素上皮層までの厚み、等)が取得される。また、光干渉断層計2は、網膜厚情報に基づき、2次元的な網膜厚マップ画像を取得してもよい。もちろん、3次元OCT断層画像を画像処理して眼底の脈絡膜情報を取得してもよく、脈絡膜情報に基づいて2次元的な脈絡膜厚マップ画像を取得してもよい。
【0057】
さらに、光干渉断層計2は、正面観察光学系を有し、被検眼の眼底の正面画像を得てもよい。例えば、正面観察光学系として走査型共焦点光学系(SLO光学系)を有し、被検眼のSLO正面画像を得てもよい。また、例えば、正面観察光学系として眼底カメラ光学系を有し、被検眼の赤外正面画像、カラー正面画像、蛍光正面画像、等を得てもよい。
【0058】
本実施例において、第1装置21と第2装置22とは、被検眼上で、測定光を横断方向へ互いに異なる走査範囲で走査する。例えば、第1装置21では、被検眼の眼底上において、測定光を横断方向に第1走査範囲で走査させることにより、被検眼の眼底を撮影した第1の3次元OCT断層画像(以下、第1OCT断層画像)が得られる。また、例えば、第2装置22では、被検眼の眼底上において、測定光を横断方向に第2走査範囲で走査させることにより、被検眼の眼底を撮影した第2の3次元OCT断層画像(以下、第2OCT断層画像)が得られる。
【0059】
なお、第1OCT断層画像と第2OCT断層画像とは、少なくともその一部がXY方向に重複してもよい。例えば、第1OCT断層画像と第2OCT断層画像とは、いずれも、眼底の第1解析領域を撮影したOCT断層画像であってもよい。また、例えば、第1OCT断層画像は眼底の第1解析領域を撮影したOCT断層画像であり、第2OCT断層画像は眼底の第1解析領域および第2解析領域を撮影したOCT断層画像であってもよい。
【0060】
眼科情報解析装置1を用いたOCTデータの解析と表示について、詳細に説明する。
【0061】
図2は、CPU13の制御動作の一例を示すフローチャートである。本実施例では、過去に、第1装置21を用いて眼底の第1解析領域を撮影した第1OCT断層画像を取得しており、その後日に、第2装置22を用いて眼底の第1解析領域および第2解析領域を撮影した第2OCT断層画像を取得する場合を例に挙げる。なお、ここでは、眼底の第1解析領域を黄斑部とし、眼底の第2解析領域を乳頭部として例示する。
【0062】
<第1OCT断層画像の取得(S1)>
検者は、過去のある時点において、被検眼の眼底を第1装置21で撮影する。例えば、被検眼のSLO正面画像(第1SLO正面画像)をSLO光学系によって撮影するとともに、被検眼の第1OCT断層画像をOCT光学系によって撮影する。例えば、OCT光学系の測定光は、所定の走査パターン(一例として、ラスタースキャン)、所定の走査密度(一例として、縦256ポイント×横256ポイント)、および所定の第1走査範囲(例えば、縦6mm×横6mm領域)で、黄斑部を走査するように走査条件が設定される。これによって、被検眼の第1SLO正面画像および第1OCT断層画像が得られる。
【0063】
第1装置21を制御する制御部は、被検者情報(例えば、被検者毎に付与されたID等)に、第1SLO正面画像、第1OCT断層画像、第1OCT断層画像の撮影条件、等を対応付けて、眼科情報解析装置1のCPU13へと送信する。CPU13は、これらを受信して記憶部14に記憶させる。
【0064】
<第1解析データの取得(S2)>
CPU13は、第1OCT断層画像を解析し、第1解析データを取得する。ここでは、第1OCT断層画像に基づいて作成される黄斑マップ画像と、第1OCT断層画像に基づいて算出される黄斑解析チャートと、を第1解析データとして取得する。なお、CPU13は、黄斑マップ画像と黄斑解析チャートとの少なくともいずれかを、第1解析データとして取得してもよい。
【0065】
図3は、第1解析データの一例である。図3(a)は黄斑マップ画像Am1を示し、図3(b)は黄斑解析チャートAm2を示している。例えば、黄斑マップ画像Am1は、黄斑部における網膜層の厚みの2次元的な分布を示すカラーマップ画像である。また、黄斑解析チャートAm2は、黄斑部における網膜厚の2次元的な分布を領域毎に平均したチャートである。
【0066】
CPU13は、第1OCTデータに基づいて網膜の各層の厚みを算出し、その厚みを2次元的に色分けすることによって、黄斑マップ画像Am1を取得する。CPU13は、黄斑マップ画像Am1と第1SLO正面画像との位置関係を対応付けて、記憶部14に記憶させる。
【0067】
また、CPU13は、黄斑マップ画像Am1から黄斑部mを抽出し、黄斑解析チャートAm2を得る領域を示すターゲットTm1を、黄斑部mに設定する。CPU13は、ターゲットTm1によって分割されたセクション毎に、網膜厚の解析値を算出する。例えば、解析値は、セクション毎の基本統計量を求めた値でもよい。例えば、基本統計量は、代表値(平均値、中央値、最頻値、最大値、最小値、等)、散布度(分散、標準偏差、変動係数、等)等でもよい。これによって、CPU13は、黄斑解析チャートAm2を取得し、黄斑解析チャートAm2を記憶部14に記憶させる。
【0068】
なお、被検眼の眼底を第1装置21で撮影した過去のある時点において、黄斑マップ画像Am1および黄斑解析チャートAm2は、その少なくともいずれかが表示部12の画面に表示されてもよい。
【0069】
<第2OCT断層画像の取得(S3)>
検者は、被検眼の眼底を第1装置21で撮影してから月日が経過した後に、被検眼の眼底を第2装置22で撮影する。例えば、被検眼のSLO正面画像(第2SLO正面画像)をSLO光学系によって撮影するとともに、被検眼の第2OCT断層画像をOCT光学系によって撮影する。例えば、OCT光学系の測定光は、所定の走査パターン(一例として、ラスタースキャン)、所定の走査密度(一例として、縦256ポイント×横256ポイント)、および所定の第2走査範囲(例えば、縦9mm×横12mm領域)で、黄斑部および乳頭部を走査するように、第2走査条件が設定される。これによって、被検眼の第2SLO正面画像および第2OCT断層画像が得られる。
【0070】
第2装置22を制御する制御部は、被検者情報に、第2SLO正面画像、第2OCT断層画像、第2OCT断層画像の撮影条件、等を対応付けて、眼科情報解析装置1のCPU13へと送信する。CPU13は、これらを受信して記憶部14に記憶させる。
【0071】
<第2解析データの取得(S4)>
CPU13は、第2OCT断層画像を解析し、第2解析データを取得する。ここでは、第2OCT断層画像に基づいて作成される網膜マップ画像と、第2OCT断層画像に基づいて算出される黄斑解析チャートと、を第2解析データとして取得する。なお、CPU13は、網膜マップ画像と黄斑解析チャートとの少なくともいずれかを、第2解析データとして取得してもよい。
【0072】
図4は、第2解析データの一例である。図4(a)は網膜マップ画像B1を示し、図4(b)は黄斑解析チャートBm2を示している。例えば、網膜マップ画像B1は、黄斑部および乳頭部における網膜層の厚みの2次元的な分布を示すカラーマップ画像である。黄斑解析チャートBm2については後述する。
【0073】
CPU13は、第2OCTデータに基づいて網膜の各層の厚みを算出し、その厚みを2次元的に色分けすることによって、網膜マップ画像B1を取得する。CPU13は、網膜マップ画像B1と第2SLO正面画像との位置関係を対応付けて、記憶部14に記憶させる。
【0074】
本実施例において、CPU13は、過去に取得した黄斑マップ画像Am1に対して黄斑解析チャートAm2を設定した部位と同一の部位に、現在に取得した網膜マップ画像B1に対する黄斑解析チャートBm2を設定する。つまり、CPU13は、網膜マップ画像B1における黄斑部に、黄斑解析チャートBm2を設定する。
【0075】
まず、CPU13は、黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1との位置合わせを行う。これには、黄斑マップ画像Am1に対応付けられた第1SLO正面画像と、網膜マップ画像B1に対応付けられた第2SLO正面画像と、が利用されてもよい。例えば、CPU13は、第1SLO正面画像および第2SLO正面画像から特徴点(一例として、黄斑、乳頭、血管、等)を抽出し、各々のSLO正面画像における特徴点間の位置ずれ方向と位置ずれ量を算出する。また、例えば、CPU13は、第1SLO正面画像と第2SLO正面画像との相対的な位置を、位置ずれ方向および位置ずれ量に基づいて、自動で調整する。なお、第1SLO正面画像と第2SLO正面画像との位置の調整は、手動を含むセミオートにて実行されてもよい。第1SLO正面画像と第2SLO正面画像との位置関係の変化にともない、黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1との位置関係も変化するため、これによって黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1との相対的な位置が合わせられる。
【0076】
次に、CPU13は、黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1とが互いに重複する重複領域Rmを検出する。CPU13は、黄斑マップ画像Am1および網膜マップ画像B1の各々の画素に対する輝度値を求め、その差分に基づいて2つの画像の類似度を算出する。例えば、CPU13は、黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1との輝度値を1画素毎に比較し、その除算値や減算値を差分として検出する。なお、除算値や減算値は二値化されてもよい。さらに、例えば、CPU13は、差分の平均値を類似度として算出する。CPU13は、黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1とを重畳させる位置を1画素ずつずらし(いわゆるテンプレートマッチングを行い)、すべての画素の組み合わせについて、同様に類似度を算出する。
【0077】
黄斑マップ画像A1と網膜マップ画像とを重畳して類似度がゼロになる位置は、黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1とが同一画像であることを表す。例えば、CPU13は、類似度が予め設定された閾値未満となる黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1との組み合わせが存在した場合、各々の画像が重複すると検出する。このとき、類似度がゼロ(または、ゼロにもっとも近い値)となる各々の画像の組み合わせについて、黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1とが互いに重複する重複領域Rmが特定される。すなわち、黄斑マップ画像Am1の黄斑部mの位置に対応する、網膜マップ画像B1の黄斑部mの位置が特定される。なお、例えば、CPU13は、経時変化にともないマップ画像に病変が現れた場合でも、病変部以外の部分に対応する輝度値の差分を求めて類似度を算出することにより、黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1とで同一の黄斑部m(重複領域Rm)を特定できる。また、例えば、CPU13は、類似度が予め設定された閾値以上となる黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1との組み合わせしか存在しない場合、各々の画像が重複しないと検出してもよい。
【0078】
なお、上記の類似度の算出は、輝度値の差分を用いた方法に限定されない。例えば、輝度値の変化量、血管の走行、等に基づいて算出されてもよい。
【0079】
CPU13は、黄斑マップAm1と対応する黄斑部mであって、網膜マップ画像B1にて特定した黄斑部mに、黄斑解析チャートBm2を得る領域を示すターゲットTm2を設定する。なお、黄斑マップ画像Am1に対して設定したターゲットTm1と、網膜マップ画像B1に対して設定するターゲットTm2と、は同一サイズに設定される。また、CPU13は、ターゲットTm2のセクション毎に解析値を算出する。これによって、CPU13は、黄斑解析チャートBm2を取得し、黄斑解析チャートBm2を記憶部14に記憶させる。
【0080】
<各解析データと経過観察データの表示(S5)>
図5は、表示部12の画面の一例である。表示部12には、第1解析データと第2解析データと、を比較可能に表示するための表示画面40が形成される。表示画面40には、左から右へ時系列に各々の結果が並べられ、検査日情報41、ベースライン情報42、第1解析データ(黄斑マップ画像Am1および黄斑解析チャートAm2)、第2解析データ(網膜マップ画像B1および黄斑解析チャートBm2)、後述の経過観察データ(時系列グラフ)、等が表示される。
【0081】
例えば、検査日情報41は、検査日および検査日における被検者の年齢を示す情報である。例えば、ベースライン情報42は、各々の解析データの時間的関係を示す情報である。一例として、表示部12に表示させた各々の解析データにおける、もっとも古い解析データが、経過観察のベースラインに設定される。なお、その他の解析データに対しては、ベースラインを起算日とした経過時間(例えば、年と月単位)が算出および表示される。
【0082】
図6は、黄斑部mに関する表示画面40の一例である。CPU13は、第1解析データと第2解析データとを並べて表示する。例えば、CPU13は、過去に取得された黄斑マップ画像Am1と、現在に取得した網膜マップ画像B1と、を並べて表示する。黄斑マップ画像Am1は、これに対応する第1SLO正面画像F1に重ねられてもよく、網膜マップ画像B1は、これに対応する第2SLO正面画像F2に重ねられてもよい。また、網膜マップ画像B1においては、黄斑マップ画像Am1との重複領域Rmが把握できるように、重複領域Rmを強調するような表示がなされてもよい。一例として、重複領域Rmを枠で囲んでもよい。もちろん、重複領域Rmと異なる領域について、輝度やコントラストを調整したり、非表示にしたりする処理が行われてもよい。また、例えば、CPU13は、過去に取得された黄斑解析チャートAm2と、現在に取得した黄斑解析チャートBm2と、を並べて表示する。
【0083】
なお、第1解析データと第2解析データにおいては、各々のマップ画像のみが表示されてもよいし、各々の解析チャートのみが表示されてもよい。本実施例のように、各々のマップ画像と各々の解析チャートとをいずれも表示する場合は、各々のマップ画像に、設定したターゲットの位置を重ねてもよい。すなわち、黄斑マップ画像Am1にターゲットTm1を重ねて表示し、網膜マップ画像B1にターゲットTm2を重ねて表示してもよい。
【0084】
さらに、表示画面40には、第1解析データと第2解析データとに基づく、同一領域に対する経過観察データが表示されてもよい。ここでは、経過観察データとして、検査日毎の網膜厚情報を時系列に並べた時系列グラフが表示される。時系列グラフは、検査日毎の網膜厚情報の経時変化の傾向を示すトレンドグラフとしての特性をもつ。時系列グラフは、折れ線グラフ、プロットグラフ、等でもよい。なお、経過観察データは、時系列グラフとは異なるデータであってもよく、例えば、差分情報を示すデータ(一例として、差分マップ)であってもよい。
【0085】
CPU13は、検査日毎に黄斑部mの網膜厚をプロットした時系列グラフGmを表示する。例えば、時系列グラフGmは、縦軸を網膜厚、横軸を時間として表される。なお、縦軸は、網膜層を示す数値としての、厚み値(例えば、μm)、体積値(例えば、mm)、等でもよい。横軸は、被検者の年齢、ベースラインである経過観察の起算日からの経過期間、等でもよい。もちろん、縦軸と横軸との関係は逆でもよい。CPU13は、各々の検査日での網膜厚の傾向を解析し、各々の検査日での網膜厚情報による時系列の回帰線Tを表示してもよい。また、CPU13は、回帰線Tの傾きTgを算出して、これを表示してもよい。
【0086】
以上、説明したように、例えば、本実施例における眼科情報解析装置は、光干渉断層計にて被検眼を撮影した際の測定光の走査範囲の違いにかかわらず、第2OCTデータから第1解析データに対応する解析領域を特定して、第2OCTデータにおける解析領域を解析処理した第2解析データを取得し、第1解析データと第2解析データとを比較可能に表示する。これにより、各々のOCTデータに含まれる解析領域を対応付け(一致させ)、同一の解析領域における解析データを抽出して容易に比較することができる。例えば、光干渉断層計を新しいものに買い替える等して、以前の装置と新しい装置とで撮影可能な走査範囲が変化しても、互いの解析データを容易に比較することができる。従って、被検眼の経過観察が効率よく行われる。
【0087】
また、例えば、本実施例における眼科情報解析装置は、被検眼における解析領域の経過を観察するための経過観察データを取得し、経過観察データを表示する。例えば、各々の解析データに基づいた経過観察データを確認することで、解析領域の経時的変化にともなう傾向を把握しやすくなり、被検眼の経過観察が効率よく行われる。
【0088】
<変容例>
なお、本実施例では、第1装置21を用いることで、黄斑マップ画像Am1を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、第1装置21を用いることで、乳頭部tの第1OCT断層画像を得て、乳頭部tの乳頭マップ画像At1を取得する構成としてもよい。また、本実施例では、第1装置21を用いることで、黄斑部mと乳頭部tのそれぞれの第1OCT断層画像を得て、黄斑部mの黄斑マップ画像Am1と、乳頭部tの乳頭マップ画像At1と、を取得する構成としてもよい。
【0089】
まず、第1装置21を用いて乳頭マップ画像At1を得た場合について説明する。第2装置22では、網膜マップ画像B1が同様に取得される。
【0090】
図7は、乳頭部tに関する表示画面40の一例である。例えば、CPU13は、過去に得られた乳頭マップ画像At1から乳頭部tを抽出し、乳頭部tにターゲットTt1を設定して、乳頭解析チャートAt2を取得する。また、例えば、CPU13は、過去に得られた乳頭マップ画像At1と、現在に得た網膜マップ画像B1と、の重複領域Rtを検出することで網膜マップ画像B1の乳頭部tを特定すると、その乳頭部tにターゲットTt2を設定して、乳頭解析チャートBt2を取得する。CPU13は、乳頭マップ画像At1と網膜マップ画像B1とを並べて表示する。また、CPU13は乳頭解析チャートAt2と乳頭解析チャートBt2とを並べて表示する。もちろん、CPU13は、検査日毎に乳頭部tの網膜厚をプロットした時系列グラフGtを表示してもよい。
【0091】
次に、第1装置21を用いて黄斑マップ画像Am1および乳頭マップ画像At1を得た場合について説明する。第2装置22では、網膜マップ画像B1が同様に取得される。
【0092】
図8は、黄斑部mおよび乳頭部tに関する表示画面40の一例である。例えば、CPU13は、黄斑部mに対する解析データ(黄斑解析チャートAm2と黄斑解析チャートBm2)と、乳頭部tに対する解析データ(乳頭解析チャートAt2と乳頭解析チャートBt2)と、を前述のようにして取得することができる。CPU13は、過去に得られた黄斑マップ画像Am1と乳頭マップ画像At1、および、現在に得た網膜マップ画像B1を、並べて表示する。例えば、黄斑マップ画像Am1と乳頭マップ画像At1は、ともに第1SLO正面画像F1に重ねられることにより、同時に表示されてもよい。例えば、網膜マップ画像B1では、黄斑部mの重複領域Rmと乳頭部tの重複領域Rtとが、同時に表示されてもよい。また、CPU13は、黄斑解析チャートAm2と黄斑解析チャートBm2とを並べて表示するとともに、乳頭解析チャートAt2と乳頭解析チャートBt2とを並べて表示する。
【0093】
なお、CPU13は、被検眼の解析領域の経過を観察するための経過観察データを取得して、これを表示部12に表示させてもよい。ここでは、黄斑部mと乳頭部tのそれぞれの第1OCT断層画像に基づき、黄斑部mと乳頭部tのそれぞれに対する第1解析データが得られている。また、黄斑部mと乳頭部tをいずれも含む第2OCT断層画像に基づき、黄斑部mと乳頭部tのそれぞれに対する第2解析データが得られている。このため、CPU13は、第1解析データと第2解析データとに基づき、同一領域に対する経過観察データを表示させてもよい。つまり、黄斑部mに対する時系列グラフGmと、乳頭部tに対する時系列グラフGtと、を表示してもよい。例えば、これによって、解析領域の経時的変化にともなう傾向を把握しやすくなり、被検眼の経過観察が効率よく行われる。
【0094】
また、CPU13は、複数の解析領域に対する各々の第1OCT断層画像を得た場合、複数の解析領域をいずれも解析処理して、解析データを表示させてもよい。また、CPU13は、複数の解析領域に対する各々の第1OCT断層画像を得た場合、設定された解析領域に基づき、第1解析領域または第2解析領域のいずれかを選択的に解析処理してもよい。ここでは、黄斑部mと乳頭部tのそれぞれの第1OCT断層画像を得たことにより、黄斑部mまたは乳頭部tのいずれかを選択的に解析処理してもよい。
【0095】
例えば、入力部11または表示画面40には、対象とする解析領域を設定する設定ボタンが設けられてもよい。例えば、検者が設定ボタンを操作することで、黄斑部mに対する解析データの取得と、乳頭部tに対する解析データの取得と、の設定が切り換えられてもよい。CPU13は、検者によって入力された操作信号に基づき、検者が所望する解析領域を解析処理し、その解析データを表示部12に表示させる。例えば、これによって、所望の解析領域の経時的な変化を容易に確認することができるようになる。
【0096】
例えば、眼科情報解析装置は、このように、複数の第1OCTデータに基づき、第1解析領域(黄斑部)と第2解析領域(乳頭部)とが各々に解析処理された第1解析データを取得してもよい。また、第1解析データに対応する第1解析領域と第2解析領域との少なくともいずれかを特定し、第2OCTデータにおける第1解析領域と第2解析領域との少なくともいずれかを解析処理した第2解析データを取得してもよい。これにより、例えば、測定光の走査範囲が互いに異なる複数のOCTデータが存在した場合でも、各々の解析領域における解析データを容易に比較することができる。
【0097】
なお、本実施例では、第2装置22を用いて、第2走査範囲で撮影した網膜マップ画像B1を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、第2装置22を用いてからさらに月日が経過した後に、第2装置22を用いて、同一の第2走査範囲で撮影した網膜マップ画像C1を取得する構成としてもよい。
【0098】
図9は、網膜マップ画像C1を得た場合における表示画面40の一例である。CPU13は、第1装置21を用いて取得され、ベースラインに設定されている黄斑マップ画像Am1と、第2装置22を用いて現在に取得した網膜マップ画像C1と、の位置合わせを行う。例えば、これには、黄斑マップ画像Am1に対応付けられた第1SLO正面画像F1と、網膜マップ画像C1に対応付けられた第3SLO正面画像F3と、が利用される。また、CPU13は、黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像C1とが互いに重複する重複領域Rmを検出し、黄斑マップ画像Am1の黄斑部mと対応する、網膜マップ画像C1の黄斑部mを特定する。また、CPU13は、黄斑マップ画像Am1に設定したターゲットTm1と同一サイズのターゲットTm3を、網膜マップ画像C1に設定する。これによって、黄斑解析チャートBm3が取得される。
【0099】
ここで、ベースラインに設定されている黄斑マップ画像Am1と、第2装置22を用いて取得した網膜マップ画像B1と、は過去の時点において位置合わせされているため、CPU13は、網膜マップ画像B1と網膜マップ画像C1との位置合わせを行うこともできる。この場合には、網膜マップ画像B1の黄斑部mと対応する網膜マップ画像C1の黄斑部mが特定され、網膜マップ画像B1の乳頭部tと対応する網膜マップ画像C1の乳頭部tが特定される。CPU13は、網膜マップ画像B1に設定したターゲットTt2と同一サイズのターゲットTt3を網膜マップ画像C1に設定し、これによって、乳頭解析チャートBt3を取得してもよい。言い換えると、乳頭部tに対しては、網膜マップ画像B1をベースラインに設定することで、乳頭解析チャートBt3を取得してもよい。
【0100】
CPU13は、このようにして得られた各々のマップ画像と各々の解析チャートとを並べて表示する。もちろん、図9では図示を省略しているが、経過観察データとして、黄斑部mの時系列グラフGmと、乳頭部tの時系列グラフGtと、が表示されてもよい。なお、黄斑マップ画像Am1には乳頭部tが含まれないため、乳頭解析チャートAt2に該当するデータについては、存在しないことを報知する表示がなされてもよい。
【0101】
上記では、黄斑部mおよび乳頭部tをいずれも解析する場合を例示したが、これらは選択可能とされてもよい。このとき、CPU13は、選択された部位を含むもっとも古い解析データを経過観察のベースラインとして設定し、時系列に各々の結果を並べて表示する。例えば、黄斑部mが選択された場合は、黄斑部mに対する結果のみが得られてもよい。CPU13は、黄斑マップ画像Am1および黄斑解析チャートAm2をベースラインとして、網膜マップ画像B1と黄斑解析チャートBm2、および、網膜マップ画像C1と黄斑解析チャートCm2、を表示してもよい。例えば、乳頭部tが選択された場合は、乳頭部tに対する結果のみが得られてもよい。CPU13は、網膜マップ画像B1および乳頭解析チャートBt2をベースラインとして、網膜マップ画像C1および乳頭解析チャートCt2を表示してもよい。
【0102】
例えば、眼科情報解析装置は、このように、第1OCTデータおよび第2OCTデータを撮影した日とは異なる日に、第2OCTデータと同一の走査範囲で撮影された第3OCTデータを取得してもよい。また、第3OCTデータから、第1解析データまたは第2解析データに対応する解析領域を特定して解析処理した第3解析データを取得してもよい。例えば、第1解析データおよび第2解析データの少なくともいずれかと、このような第3解析データと、において、同一の解析領域(つまり、第1解析領域、第2解析領域、等)を比較可能に表示することで、解析領域の経時的な変化を容易に確認することができるようになる。
【0103】
なお、本実施例では、ベースラインに設定されたマップ画像を基準として、各々のマップ画像のすべてが時系列で並べられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、各々のマップ画像が選択的に時系列で並べられる構成としてもよい。この場合、表示部12には、所望の解析データを選択するための設定画面が表示されてもよい。
【0104】
図10は、設定画面50の一例である。設定画面50には、各々の解析データが一覧で表示される。例えば、設定画面には、検査日情報51、走査条件情報(例えば、走査部位情報52、網膜マップ画像情報53、走査範囲情報54、走査密度情報55、等)、等が表示される。
【0105】
検査日情報51は、検査日を示す情報である。検査日情報51には、検査日の他、検査日における被検者の年齢が含まれてもよい。走査部位情報52は、被検眼の撮影時に測定光を走査した部位(例えば、黄斑部、乳頭部、等)である。網膜マップ画像情報53は、網膜マップ画像を得たか否かを示す情報である。走査範囲情報54は、被検眼の撮影時に測定光を走査した走査範囲の大きさ(例えば、縦6mm×横6mm、等)である。走査密度情報55は、被検眼の撮影時に測定光を走査した密度(例えば、縦256ポイント×横256ポイント、等)である。例えば、これらの情報を表示することによって、各々の解析データが同一の走査条件にて得られたものか、異なる走査条件にて得られたものか、を容易に確認することができる。
【0106】
また、設定画面50には、選択ボックス56が表示される。選択ボックス56は、表示画面40に表示させる解析データを選択するためのボックスである。例えば、検者は、所望の解析データを選択する(例えば、選択ボックス56へのクリック操作)。CPU13は、選択ボックス56の選択によって発せられる操作信号に基づき、対応する解析データを表示部12に表示させる。例えば、このように、検査日毎の解析データを選択可能とすることで、被検眼の経過観察を適切に行うことができる。一例として、ある検査日における画質の低いデータ等を除外して表示させることができる。また、一例として、黄斑部m(あるいは、乳頭部t)に対する解析データが存在するものみを表示させることができる。
【0107】
なお、各々の解析データは、一覧の形式に限定されず、種々の形式で表示されてもよい。例えば、ツリーの形式で表示されてもよい。この場合、走査部位情報52、走査範囲情報54、走査密度情報55、等がツリーの項目として示されてもよい。また、各々の解析データは、重複領域が存在するデータ同士が予め選択された状態で(つまり、予め該当の選択ボックス56が選択された状態で)、表示されてもよい。
【0108】
なお、本実施例では、OCTデータに基づく黄斑マップ画像Am1と網膜マップ画像B1との重複領域Rmの検出に、テンプレートマッチングを利用する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、OCTデータに対応付けられた走査条件に基づいて、重複領域Rmを検出してもよい。一例として、この場合、CPU13は、測定光を走査した走査位置や走査範囲を、各々のOCTデータに対応付けて、記憶部14に記憶させてもよい。また、CPU13は、測定光の走査位置や走査範囲を各々のOCTデータ間で比較し、その比較結果に基づいて、重複領域Rmが存在するか否かを判定してもよい。
【0109】
なお、本実施例では、第1装置21の制御部が眼科情報解析装置1のCPU13へ第1OCT断層画像を送信する構成を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、第1装置21の制御部は、第1OCT断層画像に基づいて黄斑マップ画像A1や第1解析チャートA2を取得し、CPU13へこれらを送信する構成としてもよい。
【0110】
なお、本実施例では、第1SLO正面画像および第2SLO正面画像を利用して、黄斑マップ画像A1と網膜マップ画像B1との位置を合わせる構成を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、第1OCT断層画像および第2OCT断層画像を利用して、黄斑マップ画像A1と網膜マップ画像B1との位置を合わせる構成としてもよい。この場合には、第1OCT断層画像と第2OCT断層画像とを積算して各々のOCT正面画像を取得し、これらの画像に基づいて、特徴点の抽出と、特徴点間の位置ずれ方向および位置ずれ量に基づく位置の調整と、を同様に行うことで、黄斑マップ画像A1と網膜マップ画像B1との位置を合わせることができる。
【0111】
しかしながら、第1OCT断層画像および第2OCT断層画像の少なくともいずれかを、小さな領域(例えば、縦3mm×横3mm領域、等)の走査により得た場合、各々のOCT正面画像からは特徴点を抽出しづらく、特徴点を用いた位置の調整が難しい。このため、CPU13は、該当する画像を位置合わせの対象から除外したり、該当する画像が位置合わせに適さない旨を表示部12に表示したりしてもよい。また、CPU13は、各々のOCT正面画像を用いた位置合わせから、各々のSLO正面画像を用いた位置合わせに切り換えてもよい。
【0112】
なお、本実施例では、第1OCT断層画像と第2OCT断層画像とにおいて、少なくともその一部がXY方向に重複する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、これらの断層画像は、少なくともその一部がZ方向に重複する構成とされてもよい。例えば、第1OCT断層画像は網膜を撮影した断層画像であり、第2OCT断層画像は網膜~脈絡膜を撮影した断層画像でもよい。眼科情報解析装置1は、このような場合であっても、同様に各々のOCT断層画像を解析した解析データを得て、比較可能に表示してもよい。
【0113】
このとき、第1OCT断層画像と第2OCT断層画像において、Z方向(深さ方向)の表示位置が揃えられてもよい。例えば、CPU13は、網膜の各々の層を検出し、所定の層を断層画像の中央に配置するように、表示位置を揃えてもよい。また、このとき、第1OCT断層画像と第2OCT断層画像において、被検者の顔がOCT光学系に対して傾斜すること等により生じる、網膜層の傾きが揃えられてもよい。例えば、CPU13は、網膜の所定の層の傾きを算出し、これに基づいて各々の断層画像の少なくともいずれかを回転させることによって、網膜層の傾きを揃えてもよい。また、このとき、第1OCT断層画像と第2OCT断層画像において、重複する領域の表示サイズが揃えられてもよい。例えば、CPU13は、各々の断層画像間で重複する領域を特定し、各々の断層画像の少なくともいずれかを拡大または縮小することによって、表示サイズを揃えてもよい。
【0114】
なお、第1装置21と第2装置22では、OCT光学系において、測定光の走査範囲とともに、測定光の走査パターンが異なるOCT断層画像が取得されてもよい。例えば、第1装置21ではラインスキャンが設定され、第2装置22ではマルチスキャン(一例としては、縦方向および横方向にそれぞれ5ライン、等)が設定されることで、各々のOCT断層画像が取得されてもよい。例えば、この場合、CPU13は、第2OCT断層画像においてマルチスキャンを構成したスキャンラインのうち、第2OCT断層画像においてラインスキャンを構成したスキャンラインにもっとも位置が近いラインを特定し、その解析データを表示部12に表示させてもよい。
【0115】
なお、第1装置21と第2装置22では、OCT光学系を構成する光学部材の違いにより、第1OCT断層画像と第2OCT断層画像(第3OCT断層画像)に、ずれや歪みが生じることがある。このため、CPU13は、各々の断層画像間のずれや歪を補正した状態で、解析データを取得してもよい。例えば、この場合、CPU13は、第1装置21および第2装置22のずれや歪みに関する情報を予め取得し、これに基づいて断層画像を補正してもよい。また、例えば、この場合、CPU13は、測定光の走査条件に基づいて断層画像を補正してもよい。
【0116】
さらに、第1装置21と第2装置22では、OCT光学系における測定光の波長、検出器の解像度、等の違いにより、第1OCT断層画像と第2OCT断層画像(第3OCT断層画像)とで画素密度が異なる場合がある。このため、CPU13は、解像度を考慮して各々の断層画像を補正した状態で、解析データを取得してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 眼科情報解析装置
11 入力部
12 表示部
13 CPU
14 記憶部
40 表示画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10