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特許7491108蓄電素子の管理装置、蓄電装置、及び、管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】蓄電素子の管理装置、蓄電装置、及び、管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20240521BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240521BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H02J7/10 H
H02J7/00 Q
H02J7/00 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020121164
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018218
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】龍見 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】白石 剛之
(72)【発明者】
【氏名】今中 佑樹
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181489(WO,A1)
【文献】特開2010-148252(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002529(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0148532(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
H02J 7/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子の管理装置であって、
前記蓄電素子と直列に接続されている電流センサと、
管理部と、
を備え、
前記管理部は、
前記電流センサによって計測された電流値を補正値に基づいて補正する補正処理と、
前記補正処理で補正された電流値に基づいて前記蓄電素子の状態を推定する推定処理と、
前記補正処理の実行に応じて所定値を積算する積算処理と、
前記積算処理で積算された積算値が第1の閾値に達すると、前記状態の推定値に蓄積された誤差を低減する低減処理と、
前記電流センサの特性変化に関係する物理量に応じて前記所定値及び前記第1の閾値の少なくとも一方を変更する変更処理と、
を実行する、管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の管理装置であって、
前記所定値は前記補正値であり、
前記管理部は、前記変更処理において、前記補正値を変更する、管理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の管理装置であって、
前記状態は前記蓄電素子の充電状態である、管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の管理装置であって、
前記蓄電素子は充電状態の変化に対する電圧の変化が小さいプラトー領域を有する、管理装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の管理装置であって、
前記低減処理は、前記蓄電素子を所定の充電状態まで充電し、前記推定処理で推定された前記充電状態の推定値を前記所定の充電状態の値に更新する処理である、管理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の管理装置であって、
前記物理量は前記電流センサによって計測された電流値であり、
前記管理部は、前記変更処理において、前記電流センサによって第2の閾値以上の電流値が計測されると前記所定値及び前記第1の閾値の少なくとも一方を変更する、管理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の管理装置であって、
前記物理量は前記電流センサによって計測された電流値であり、
前記管理部は、前記変更処理において、前記電流センサによって第3の閾値以上且つ第4の閾値未満の電流値が所定時間以上継続して計測されると前記所定値及び前記第1の閾値の少なくとも一方を変更する、管理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の管理装置であって、
前記蓄電素子の温度を計測する温度センサを備え、
前記物理量は前記温度センサによって計測された温度であり、
前記管理部は、前記変更処理において、前記温度センサによって第5の閾値以上の温度が計測されると前記所定値及び前記第1の閾値の少なくとも一方を変更する、管理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の管理装置であって、
前記電流センサは抵抗体を有し、前記抵抗体を用いて電流値を計測する、管理装置。
【請求項10】
蓄電素子と、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の管理装置と、
を備える蓄電装置。
【請求項11】
蓄電素子の管理方法であって、
前記蓄電素子と直列に接続されている電流センサによって計測された電流値を補正値に基づいて補正する補正ステップと、
前記補正ステップで補正された電流値に基づいて前記蓄電素子の状態を推定する推定ステップと、
前記補正ステップの実行に応じて所定値を積算する積算ステップと、
前記積算ステップで積算された積算値が第1の閾値に達すると、前記状態の推定値に蓄積された誤差を低減する低減ステップと、
前記電流センサの特性変化に関係する物理量に応じて前記所定値及び前記第1の閾値の少なくとも一方を変更する変更ステップと、
を含む、管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蓄電素子の管理装置、蓄電装置、及び、管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子を管理する管理装置において、蓄電素子の充放電電流を計測する電流センサを備え、電流センサによって計測された電流値を補正し、補正した電流値に基づいて蓄電素子の状態を推定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、特許文献1に記載の充電深度算出回路は、蓄電装置に流れる電流を検出する電流検出部と、蓄電装置の端子電圧を取得する電圧取得部とを備えている。充電深度算出回路は電流検出部によって検出された電流値を補正し、補正した電流値を積算することにより、蓄電装置の充電深度(蓄電素子の状態に相当)を算出する。充電深度算出回路は算出した充電深度から端子電圧を推定し、推定される端子電圧と電圧取得部によって取得される端子電圧との差を減少させるように、電流値を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特願2009-109269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電流センサの特性は使用に伴って変化することがある。電流センサの特性は電流が流れなくても経時的に変化することもある。便宜上、以降の説明では電流センサの特性が使用に伴って変化すること及び経時的に変化することを総称して電流センサの特性の経時的な変化という。電流センサの特性が経時的に変化すると蓄電素子の状態の推定精度が悪化する。前述した特許文献1に記載の発明ではこれについて検討されていなかった。
【0005】
本明細書では、電流センサの特性が経時的に変化した場合だけでなく、電流センサの特性が突発的に変化した場合にも蓄電素子の状態の推定精度が悪化することを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
蓄電素子の管理装置であって、前記蓄電素子と直列に接続されている電流センサと、管理部と、を備え、前記管理部は、前記電流センサによって計測された電流値を補正値に基づいて補正する補正処理と、前記補正処理で補正された電流値に基づいて前記蓄電素子の状態を推定する推定処理と、前記補正処理の実行に応じて所定値を積算する積算処理と、前記積算処理で積算された積算値が第1の閾値に達すると、前記状態の推定値に蓄積された誤差を低減する低減処理と、前記電流センサの特性変化に関係する物理量に応じて前記所定値及び前記第1の閾値の少なくとも一方を変更する変更処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
電流センサの特性が経時的に変化した場合だけでなく、電流センサの特性が突発的に変化した場合にも蓄電素子の状態の推定精度が悪化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る車両の模式図
図2】オルタネータ、電気負荷及び電源システムの模式図
図3】蓄電装置の分解斜視図
図4A】蓄電素子の平面図
図4B図4Aに示すA-A線の断面図
図5】蓄電装置の電気的構成を示すブロック図
図6】電流センサの構成を示す模式図
図7】補正値の積算値のグラフ
図8】蓄電装置の充電時の電圧値及び電流値のグラフ
図9】SOCの推定、SOCの満充電リセット及び補正値の変更のフローチャート
図10】実施形態2に係る補正値の積算値のグラフ
図11】プラトー領域を有する蓄電素子のSOCとOCVとの関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本実施形態の概要)
(1)本発明の一局面によれば、蓄電素子の管理装置は、前記蓄電素子と直列に接続されている電流センサと、管理部と、を備え、前記管理部は、前記電流センサによって計測された電流値を補正値に基づいて補正する補正処理と、前記補正処理で補正された電流値に基づいて前記蓄電素子の状態を推定する推定処理と、前記補正処理の実行に応じて所定値を積算する積算処理と、前記積算処理で積算された積算値が第1の閾値に達すると、前記状態の推定値に蓄積された誤差を低減する低減処理と、前記電流センサの特性変化に関係する物理量に応じて前記所定値及び前記第1の閾値の少なくとも一方を変更する変更処理と、を実行する。
【0010】
上記の管理装置によると、予め電流センサの経時的な特性変化の傾向を調べて補正値を設定しておき、その補正値に基づいて電流値を補正することにより、電流センサの特性が経時的に変化しても電流値をある程度精度よく補正できる。このため、電流センサの特性が経時的に変化しても蓄電素子の状態の推定精度が悪化することを抑制できる。
しかしながら、上述した補正値は過去の実験に基づいて決定されるものであり、必ずしも実際の特性変化を表すものではないため、蓄電素子の状態の推定値に誤差が蓄積される可能性がある。上記の管理装置によると、補正処理の実行に応じて所定値を積算し、所定値の積算値が第1の閾値に達すると、蓄電素子の状態の推定値に蓄積された誤差を低減する低減処理を実行するので、誤差の蓄積によって蓄電素子の状態の推定精度が悪化することを抑制できる。
【0011】
電流センサの特性は経時的に変化するだけでなく、大電流や温度上昇などによって突発的に変化することもある。突発的に変化するとは、経時的な変化に比べて単位時間当たりの特性の変化幅が大きいことをいう。大電流や温度上昇が発生する原因としては、外部短絡や、蓄電素子を充電する充電器の故障などが例示される。経時的な特性変化に基づいて設定される補正値は電流センサの特性が時間の経過に伴って緩やかに変化することを想定して設定されることから、突発的に特性変化が生じた場合は電流値を適切に補正できなくなる。このため、蓄電素子の状態の推定値に蓄積される誤差が大きくなる。
【0012】
しかしながら、前述したように上記の管理装置は所定値の積算値が第1の閾値に達すると低減処理を実行する。低減処理では突発的に生じた特性変化によって蓄積された誤差であっても低減されるので、突発的に特性変化が生じても時間が経過すれば低減処理によって誤差が低減される。しかしながら、低減処理が実行されるまでの間は推定精度が一時的に悪化した状態となる。
【0013】
管理装置によっては電流センサのキャリブレーション(校正)を行うための手段を備えているものもある。その場合は定期的にキャリブレーションを実施すれば、突発的に特性変化が生じても電流センサの計測誤差を抑制できる。しかしながら、7日に1回などのようにキャリブレーションが実施される間隔が長い場合、次回のキャリブレーションが実施されるまでは電流値の計測誤差が大きくなり、状態の推定誤差要因として無視できない。
【0014】
電流センサの突発的な特性変化が生じたか否かは電流センサの特性変化に関係する物理量から推測できる。上記の管理装置によると、電流センサの特性変化に関係する物理量に応じて所定値及び第1の閾値の少なくとも一方を変更する。このため、所定値の積算値が第1の閾値に達するまでの時間が短縮されるように所定値及び第1の閾値の少なくとも一方を変更することにより、低減処理が高頻度で実行されるようになる。これにより蓄電素子の状態の推定精度が一時的に悪化する期間を短縮できる。
このため上記の管理装置によると、電流センサの特性が経時的に変化した場合だけでなく、電流センサの特性が突発的に変化した場合にも蓄電素子の状態の推定精度が悪化することを抑制できる。
【0015】
上記の「前記補正処理の実行に応じて所定値を積算する積算処理」は、補正処理が実行された回数と所定値を積算した回数とが一致していれば、必ずしも補正処理が1回実行される毎に所定値を1回積算する処理に限定されない。例えば補正処理が2回実行される毎に所定値を2回積算してもよい。補正処理が実行された回数と所定値を積算した回数とはほぼ一致していればよく、必ずしも完全に一致しなくてもよい。
【0016】
「前記補正処理の実行に応じて所定値を積算する積算処理」は、所定値を加算することに限定されるものではなく、実質的に同じ意味を持つ他の方法も含む。例えば、補正処理の実行に応じてある初期値から所定値を減算(積算に相当)し、減算後の値(積算値に相当)が第1の閾値に達すると低減処理を実行してもよい。あるいは、減算は負の値を加算すると言い換えることもできる。
【0017】
(2)本発明の一局面によれば、前記所定値は前記補正値であり、前記管理部は、前記変更処理において、前記補正値を変更してもよい。
【0018】
変更処理では電流センサの特性変化に応じて所定値を変更してもよいし、第1の閾値を変更してもよいが、所定値が補正値である場合は、所定値を変更すると、第1の閾値を変更する場合に比べて次のような利点がある。
所定値が補正値である場合、所定値を変更することは補正値を変更することを意味する。補正値を変更すると補正処理においても変更後の補正値に基づいて電流値が補正されるので、第1の閾値を変更する場合に比べ、補正処理での補正の精度が向上する。このため、電流センサの経時的な特性変化によって蓄電素子の状態の推定精度が悪化することをより抑制できる。
【0019】
(3)本発明の一局面によれば、前記状態は前記蓄電素子の充電状態であってもよい。
【0020】
上記の管理装置によると、電流センサの特性が経時的に変化した場合だけでなく、電流センサの特性が突発的に変化した場合にも蓄電素子の充電状態(SOC:State Of Chareg)の推定精度が悪化することを抑制できる。
【0021】
(4)本発明の一局面によれば、前記蓄電素子は充電状態の変化に対する電圧の変化が小さいプラトー領域を有してもよい。
【0022】
図11に示すように、蓄電素子の中には充電状態(SOC)の変化に対する蓄電素子の開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の変化が小さいプラトー領域を有するものがある。プラトー領域は、具体的には例えばSOCの変化量に対するOCVの変化量が2[mV/%]以下の領域である。
プラトー領域を有していない蓄電素子の場合はOCVからSOCを精度よく推定できるので、OCVからSOCを推定することにより、電流センサの特性が変化してもSOCを精度よく推定できる。これに対し、プラトー領域を有する蓄電素子はOCVからSOCを精度よく推定することが難しいため、通常、電流値に基づいてSOCが推定されている。このような蓄電素子では電流センサの特性が変化するとSOCの推定精度が悪化するため、OCVからSOCを推定する方法以外で、電流センサの特性が変化した場合のSOCの推定精度の悪化を抑制する方法が望まれていた。
上記の管理装置によると、OCVからSOCを推定することが難しい蓄電素子であっても電流センサの特性変化によるSOCの推定精度の悪化を抑制できる。このため上記の管理装置はプラトー領域を有する蓄電素子の場合に特に有用である。
【0023】
(5)本発明の一局面によれば、前記低減処理は、前記蓄電素子を所定の充電状態まで充電し、前記推定処理で推定された前記充電状態の推定値を前記所定の充電状態の値に更新する処理であってもよい。
【0024】
上記の管理装置によると、蓄電素子を所定の充電状態まで充電し、推定処理で推定された充電状態の推定値を当該所定の充電状態の値で更新するので、充電状態の推定値に蓄積された誤差を低減できる。
【0025】
(6)本発明の一局面によれば、前記物理量は前記電流センサによって計測された電流値であり、前記管理部は、前記変更処理において、前記電流センサによって第2の閾値以上の電流値が計測されると前記所定値及び前記第1の閾値の少なくとも一方を変更してもよい。
【0026】
電流センサは大電流(電流値が第2の閾値以上の電流)が流れると特性が突発的に変化することがある。上記の管理装置によると、電流センサによって第2の閾値以上の電流値が計測されると所定値及び第1の閾値の少なくとも一方を変更するので、大電流が流れて電流センサの特性が突発的に変化した場合に、蓄電素子の状態の推定精度が悪化することを抑制できる。
【0027】
(7)本発明の一局面によれば、前記物理量は前記電流センサによって計測された電流値であり、前記管理部は、前記変更処理において、前記電流センサによって第3の閾値以上且つ第4の閾値未満の電流値が所定時間以上継続して計測されると前記所定値及び前記第1の閾値の少なくとも一方を変更してもよい。
【0028】
電流センサは異常な大電流が流れた場合だけでなく、正常な範囲の大電流(電流値が第3の閾値以上且つ第4の閾値未満の電流)が長時間流れることによって特性が突発的に変化することもある。上記の管理装置によると、電流センサによって第3の閾値以上且つ第4の閾値未満の電流値が所定時間以上継続して計測されると所定値及び第1の閾値の少なくとも一方を変更する。このため、正常な範囲の大電流が長時間流れることによって電流センサの特性が突発的に変化しても蓄電素子の状態の推定精度が悪化することを抑制できる。
【0029】
(8)本発明の一局面によれば、前記蓄電素子の温度を計測する温度センサを備え、前記物理量は前記温度センサによって計測された温度であり、前記管理部は、前記変更処理において、前記温度センサによって第5の閾値以上の温度が計測されると前記所定値及び前記第1の閾値の少なくとも一方を変更してもよい。
【0030】
大電流が流れた場合は蓄電素子の温度が上昇するので、蓄電素子の温度が異常(第5の閾値以上)に上昇した場合は電流センサの特性が大きく変化した可能性が高い。上記の管理装置によると、温度センサによって第5の閾値以上の温度が計測されると所定値及び第1の閾値の少なくとも一方を変更するので、大電流が流れて電流センサの特性が突発的に変化しても蓄電素子の状態の推定精度が悪化することを抑制できる。
【0031】
(9)本発明の一局面によれば、前記電流センサは抵抗体を有し、前記抵抗体を用いて電流値を計測してもよい。
【0032】
抵抗体を用いて電流値を計測する電流センサは大電流や温度上昇などによって抵抗体の抵抗値(電流センサの特性)が突発的に変化することがある。上記の管理装置によると、大電流や温度上昇などによって抵抗体の抵抗値が突発的に変化しても蓄電素子の状態の推定精度が悪化することを抑制できる。
【0033】
(10)本発明の一局面によれば、蓄電装置であって、蓄電素子と、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の管理装置と、を備える。
【0034】
上記の蓄電装置によると、電流センサの特性が経時的に変化した場合だけでなく、電流センサの特性が突発的に変化した場合にも蓄電素子の状態の推定精度が悪化することを抑制できる。
【0035】
(11)本発明の一局面によれば、蓄電素子の管理方法は、前記蓄電素子と直列に接続されている電流センサによって計測された電流値を補正値に基づいて補正する補正ステップと、前記補正ステップで補正された電流値に基づいて前記蓄電素子の状態を推定する推定ステップと、前記補正ステップの実行に応じて所定値を積算する積算ステップと、前記積算ステップで積算された積算値が第1の閾値に達すると、前記状態の推定値に蓄積された誤差を低減する低減ステップと、前記電流センサの特性変化に関係する物理量に応じて前記所定値及び前記第1の閾値の少なくとも一方を変更する変更ステップと、を含む。
【0036】
上記の管理方法によると、電流センサの特性が経時的に変化した場合だけでなく、電流センサの特性が突発的に変化した場合にも蓄電素子の状態の推定精度が悪化することを抑制できる。
【0037】
本明細書によって開示される発明は、装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0038】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図9によって説明する。以降の説明では同一の構成部材には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0039】
(1)車両の電源システム
図1に示す車両1はエンジン駆動車であり、車両発電機であるオルタネータ11、電気負荷12及び電源システム13が搭載されている。電気負荷12は定格12Vである。電気負荷12としてはセルモータ等のエンジン始動装置、補器類(エアコン、オーディオ、カーナビゲーション)などを例示できる。電源システム13はエンジン始動装置や補器類に電力を供給する。
【0040】
図2に示すように、電源システム13は車両ECU14(電子制御装置:Electronic Control Unit)と蓄電装置15とを含んで構成されている。車両ECU14はCPU14A、RAM14B、ROM14Cなどを備えており、蓄電装置15と通信可能に接続されている。
【0041】
(2)蓄電装置の構成
図3に示すように、蓄電装置15は収容体71を備える。収容体71は合成樹脂材料からなる本体73と蓋体74とを備えている。本体73は有底筒状である。本体73は底面部75と4つの側面部76とを備えている。4つの側面部76によって上端部分に上方開口部77が形成されている。
【0042】
収容体71は複数の電池セル30A(蓄電素子の一例)からなる組電池と回路基板ユニット72とを収容する。回路基板ユニット72は組電池の上部に配置されている。
蓋体74は本体73の上方開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部のうち一方の隅部に正極の外部端子80Pが固定され、他方の隅部に負極の外部端子80Nが固定されている。
【0043】
電池セル30Aは繰り返し充放電可能な二次電池であり、具体的にはリチウムイオン二次電池である。より具体的には、電池セル30AはSOCの変化に対するOCVの変化が相対的に小さいプラトー領域を有するリチウムイオン二次電池である。プラトー領域を有するリチウムイオン二次電池としては、正極活物質に鉄が含有された鉄系のリチウムイオン二次電池が例示される。鉄系のリチウムイオン二次電池としては、正極活物質にLiFePO4(リン酸鉄リチウム)、負極活物質にGr(グラファイト)が含有されたLFP/Gr系のリチウムイオン二次電池が例示される。
【0044】
図4A及び図4Bに示すように、電池セル30Aは直方体形状のケース82内に電極体83を非水電解質と共に収容したものである。ケース82はケース本体84とその上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
電極体83は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に負極活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に正極活物質を塗布した正極要素との間に多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状であり、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体84に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0045】
正極要素には正極集電体86を介して正極端子87が接続されており、負極要素には負極集電体88を介して負極端子89が接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は平板状の台座部90とこの台座部90から延びる脚部91とからなる。台座部90には貫通孔が形成されている。脚部91は正極要素又は負極要素に接続されている。正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。そのうち、正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、このガスケット94から外方へ露出されている。
【0046】
図4Aに示すように、蓋85は圧力開放弁95を有している。圧力開放弁95は正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95はケース82の内圧が制限値を超えた時に開放してケース82の内圧を下げる。
【0047】
(3)蓄電装置の電気的構成
図5に示すように、蓄電装置15は組電池30、BMU31(管理装置の一例)及び通信コネクタ32を備える。詳しくは後述するが、BMU31は電流センサ33を備えている。組電池30と電流センサ33とはパワーライン34P,34Nを介して直列に接続されている。パワーライン34Pは正極の外部端子80Pと組電池30の正極とを接続するパワーラインである。パワーライン34Nは負極の外部端子80Nと組電池30の負極とを接続するパワーラインである。
【0048】
組電池30は12個の電池セル30Aが3並列で4直列に接続されている。図3では並列に接続された3つの電池セル30Aを1つの電池記号で表している。
BMU31は電流センサ33、電圧検出回路35、温度センサ36及び管理部37を備えている。電圧検出回路35及び管理部37は回路基板ユニット72(図4参照)に実装されている。
【0049】
電流センサ33は組電池30の負極側に位置し、負極のパワーライン34Nに設けられている。電流センサ33は組電池30の充放電電流[A]を計測して管理部37に出力する。電流センサ33の構成については後述する。
電圧検出回路35は信号線によって各電池セル30Aの両端にそれぞれ接続されている。電圧検出回路35は各電池セル30Aの電池電圧[V]を計測して管理部37に出力する。組電池30の総電圧[V]は直列に接続された4つの電池セル30Aの合計電圧である。
温度センサ36は接触式あるいは非接触式であり、電池セル30Aの温度[℃]を計測して管理部37に出力する。図5では省略しているが、温度センサ36は2つ以上設けられている。各温度センサ36は互いに異なる電池セル30Aの温度を検出する。
【0050】
管理部37はCPUやRAMなどが1チップ化されたマイクロコンピュータ37A、記憶部37B及び通信部37Cを備える。記憶部37Bはデータを書き換え可能な記憶媒体であり、各種のプログラムや後述する補正値Pなどが記憶されている。マイクロコンピュータ37Aは記憶部37Bに記憶されているプログラムを実行することによって蓄電装置15を管理する。通信部37CはBMU31が車両ECU14と通信するための回路である。
通信コネクタ32はBMU31が車両ECU14と通信するための通信ケーブルが接続されるコネクタである。
【0051】
図6を参照して、電流センサ33の構成について説明する。電流センサ33は電池セル30Aと直列に接続されているシャント抵抗33A(抵抗体の一例)と、シャント抵抗33Aの両端の電位差を検出する検出回路33Bとを有している。検出回路33Bはシャント抵抗33Aの両端の電位差を検出し、シャント抵抗33Aの抵抗値と電位差とからオームの法則によって電流値を算出する。
【0052】
シャント抵抗33Aの抵抗値は経時的に変化する他、大電流や異常な温度上昇によって突発的に変化することもある。
例えば車両1のエンジン始動時には蓄電装置15からエンジン始動装置に大電流が流れる。そのときの大電流は600A~700A程度であり、正常な範囲の大電流である。正常な範囲の大電流の場合、短時間であればシャント抵抗33Aの抵抗値が突発的に変化する可能性は小さい。これに対し、蓄電装置15はオルタネータ11の故障や外部短絡などによって異常な大電流が流れる可能性がある。外部短絡によって流れる電流の電流値は例えば1500A以上であり、異常な大電流である。このような異常な大電流が流れると短時間であってもシャント抵抗33Aの抵抗値が突発的に変化することがある。
【0053】
正常な範囲の大電流であっても長時間に亘って流れることによって抵抗値が突発的に変化することもある。例えばエンジン始動装置が備えるスタータモータは故障によってロックした状態(回転不能な状態)になることがある。その場合、スタータモータを回転させるために蓄電装置15からエンジン始動装置に長時間に亘って大電流が流れることがある。このときの大電流は正常な範囲の大電流であるが、長時間に亘って流れることによってシャント抵抗33Aの抵抗値が突発的に変化することがある。
【0054】
異常な大電流が流れた場合や正常な範囲の大電流が長時間に亘って流れた場合は電池セル30Aの温度も異常に上昇する。このため、温度センサ36によって計測された温度が異常に高い場合や、異常に高い温度が長時間継続した場合は、シャント抵抗33Aの抵抗値が突発的に変化したと判断することもできる。
【0055】
(4)SOCの推定、SOCの満充電リセット及び補正値の変更
管理部37は電流積算法によって蓄電装置15のSOC(状態、充電状態の一例)を推定する(推定処理、推定ステップの一例)。電流積算法は、電流センサ33によって所定の時間間隔(10ミリ秒など)で電流値を計測し、計測した電流値を初期値に加減することによってSOCを推定する方法である。
【0056】
前述したようにシャント抵抗33Aの抵抗値は経時的に変化するため、抵抗値の経時的な変化(特性変化の傾向)を考慮しないとSOCの推定精度が低下する。このため、管理部37は電流センサ33によって計測した電流値に補正値Pを加算することによって電流値を補正し(補正処理、補正ステップの一例)、補正した電流値を用いてSOCを推定する(推定処理、推定ステップの一例)。補正値Pは予め実験によって取得されたシャント抵抗33Aの抵抗値の経時的な変化に基づいて決定されたものである。通常、シャント抵抗33Aの抵抗値は時間の経過に伴って緩やかに変化するので、補正値Pも抵抗値が時間の経過に伴って緩やかに変化することを想定して決定される。
【0057】
補正値Pは過去の実験に基づいて決定されたものであり、必ずしも実際の抵抗値の変化を表すものではないため、SOCの推定値に誤差が蓄積される可能性がある。このため、管理部37は補正処理の実行に応じて補正値P(所定値の一例)を積算し(積算処理、積算ステップの一例)、補正値Pの積算値が第1の閾値に達すると、SOCの推定値に蓄積された誤差を低減する低減処理を実行する。具体的には、実施形態1に係る管理部37は補正処理を実行する毎にカウンタCに補正値P(所定値の一例)を積算し、補正値Pの積算値が第1の閾値に達すると、後述する満充電リセット(低減処理、低減ステップの一例)を実行する。カウンタCは満充電リセットを行うと0に初期化される。
【0058】
図7を参照して、上述した第1の閾値について説明する。図7に示す例の場合、第1の閾値は現時点のSOCの5%に相当する値である。管理部37は補正値Pの積算値が現時点のSOCの5%に相当する値に達すると満充電リセットを実行する。第1の閾値は現時点のSOCの5%に限定されるものではなく、適宜に決定できる。例えば第1の閾値は蓄電装置15の全充電容量の5%に相当する値であってもよい。
【0059】
図8を参照して、満充電リセットについて説明する。図8において実線50は電流値、一点鎖線51は電圧値を示している。ここでいう満充電とは必ずしもSOCが100%であることを意味するのではなく、電池セル30Aが所定のSOC(例えば99.2%)、または、所定の電圧まで充電されたことを満充電という。
【0060】
管理部37は、補正値Pの積算値が第1の閾値に達すると、車両ECU14と協調して蓄電装置15を満充電する。蓄電装置15の満充電では、蓄電装置15の電圧が所定電圧(例えば3.5V)に達するまでは定電流充電(CC充電)が行われ、電圧が所定電圧に達すると定電圧充電(CV充電)に切り替えられる。定電圧充電では電流値が徐々に低下し、電流値が閾値I_thrまで低下すると満充電となる。図8に示す例の場合、電流値が閾値I_thrまで低下したときのSOCは99.2%(所定の充電状態の一例)である。このため、管理部37は、電流値が閾値I_thrまで低下すると、電流積算法によって推定されたSOCを99.2%に更新する。一般に満充電リセットは精度が高いため、電流積算法によって推定されたSOCに蓄積された誤差を低減できる。
【0061】
図7を参照して、補正値Pの変更について説明する。補正値Pはシャント抵抗33Aの抵抗値が時間の経過に伴って緩やかに変化することを想定して決定されることから、抵抗値が突発的に変化した場合は電流値を適切に補正できない。電流値を適切に補正できないと次回の満充電リセットが実行されるまでの間はSOCの推定精度が一時的に悪化する。このため、管理部37はシャント抵抗33Aの抵抗値が突発的に変化したか否かを電流値(電流センサ33の特性変化に関係する物理量の一例)から判断し、抵抗値が突発的に変化した場合は補正値Pの積算値が第1の閾値に達するまでの時間が短縮されるように補正値Pを変更する(変更処理、変更ステップの一例)。
【0062】
具体的には、時点T1で抵抗値が大きく変化したと仮定する。この場合、管理部37は時点T1で補正値Pを例えば2倍に変更する。図7において実線53は補正値Pを変更しなかった場合のグラフであり、一点鎖線54は補正値Pを2倍に変更した場合のグラフである。図7に示す例の場合、補正値Pを変更しなかった場合は時点T3で積算値が第1の閾値(SOC5%)に達するのに対し、補正値Pを2倍にした場合は時点T3より早い時点T2で第1の閾値に達する。このため、補正値Pを変更しない場合(実線53)に比べ、補正値Pの積算値が第1の閾値に達するまでの時間が短縮される。このため満充電リセットが高頻度で実行されるようになり、シャント抵抗33Aの抵抗値の突発的な変化によってSOCの推定精度が悪化することを抑制できる。
【0063】
図9を参照して、SOCの推定、SOCの満充電リセット及び補正値の変更のフローについて説明する。本処理は電流センサ33によって所定の時間間隔で電流値が計測される毎に開始される。
S101では、管理部37は電流センサ33によって計測された電流値に、記憶部37Bに記憶されている補正値Pを加算することによって電流値を補正する。
S102では、管理部37はS101で補正された電流値に基づいてSOCを推定する。この推定は電流積算法によって行われる。
【0064】
S103では、管理部37はシャント抵抗33Aの抵抗値が突発的に変化したか否かを、S101で補正した電流値(補正する前の電流値でもよい)から判断する。具体的には、管理部37は以下の(a)又は(b)が成立したか否かを判断する。
(a)異常な大電流:計測された電流値が1000A以上。1000Aは第2の閾値の一例である。
(b)正常な範囲の大電流が長時間継続:今回の計測を含めて直近の複数回の計測で連続して600A以上且つ1000A未満の電流値が計測された。600Aは第3の閾値の一例であり、1000Aは第4の閾値の一例である。
管理部37は(a)又は(b)が成立した場合は抵抗値が突発的に変化したと判断してS104に進み、いずれも成立していない場合は変化していないと判断してS105に進む。
【0065】
S104では、管理部37は記憶部37Bに記憶されている補正値Pを2倍の値に書き換える。記憶部37Bに記憶されている補正値Pを書き換えるので、次回以降の本処理の実行では2倍にされた補正値Pが用いられる。
S105では、管理部37は補正値Pを積算するカウンタCに補正値Pを加算する。S105はS103の前に実行されてもよい。
【0066】
S106では、管理部37はカウンタCの値が第1の閾値以上であるか否かを判定し、第1の閾値以上である場合はS107に進み、第1の閾値未満である場合は本処理を終了する。
S107では、管理部37は満充電リセットを行う。
S108では、管理部37はカウンタCを0に初期化する。
【0067】
(5)実施形態の効果
BMU31によると、シャント抵抗33Aの抵抗値が経時的に変化した場合だけでなく、抵抗値が突発的に変化した場合にも電池セル30AのSOCの推定精度が悪化することを抑制できる。
【0068】
BMU31によると、所定値は補正値Pであり、抵抗値の突発的な変化に応じて補正値Pを変更する。補正値Pを変更すると補正処理においても変更後の補正値Pに基づいて電流値が補正されるので、第1の閾値を変更する場合に比べ、補正処理での補正の精度が向上する。このため、シャント抵抗33Aの抵抗値の経時的な変化によって電池セル30AのSOCの推定精度が悪化することをより抑制できる。
【0069】
BMU31によると、電池セル30Aの状態はSOCである。BMU31によると、シャント抵抗33Aの抵抗値が経時的に変化した場合だけでなく、シャント抵抗33Aの抵抗値が突発的に変化した場合にもSOCの推定精度が悪化することを抑制できる。
【0070】
BMU31によると、プラトー領域を有する電池セル30A(OCVからSOCを推定することが難しい電池セル30A)であっても、シャント抵抗33Aの抵抗値の変化によるSOCの推定精度の悪化を抑制できる。このためBMU31はプラトー領域を有する電池セル30Aの場合に特に有用である。
【0071】
BMU31によると、補正値Pの積算値が第1の閾値に達すると満充電リセットを行うので、SOCの推定値に蓄積された誤差を低減できる。
【0072】
BMU31によると、電流センサ33によって1000A以上の大電流が計測されると補正値Pを変更するので、異常な大電流が流れてシャント抵抗33Aの抵抗値が突発的に変化してもSOCの推定精度の悪化を抑制できる。
【0073】
BMU31によると、電流センサ33によって600A以上且つ1000A未満の大電流が所定時間以上継続して計測されると補正値Pを変更するので、正常な範囲の大電流が長時間流れることによってシャント抵抗33Aの抵抗値が突発的に変化してもSOCの推定精度の悪化を抑制できる。
【0074】
BMU31によると、電流センサ33はシャント抵抗33Aを有し、シャント抵抗33Aを用いて電流値を計測する。シャント抵抗33Aを用いて電流値を計測する電流センサ33は大電流や異常な温度上昇などによってシャント抵抗33Aの抵抗値(電流センサ33の特性)が突発的に変化することがある。BMU31によると、大電流や異常な温度上昇などによってシャント抵抗33Aの抵抗値が突発的に変化してもSOCの推定精度の悪化を抑制できる。
【0075】
<実施形態2>
実施形態2を図10によって説明する。前述した実施形態1では、異常な大電流が検出されると補正値Pを2倍にする場合を例に説明した。これに対し、実施形態2では補正値Pを2倍にするのではなく、第1の閾値を小さくする。
【0076】
図10を参照して具体的に説明する。図10において時点T1は異常な大電流が検出された時点である。図10に示すように、BMU31は異常な大電流を検出すると第1の閾値を小さくする。具体的には例えば、BMU31は時点T1における積算値(カウンタCの値)と変更前の第1の閾値との中間値を変更後の第1の閾値とする。これにより、補正値Pを2倍にした場合と概ね同じタイミングで次回の満充電リセットが実行される。変更後の第1の閾値は適宜に選択可能であり、上述した中間値に限定されない。
【0077】
実施形態2に係るBMU31によると、電流センサ33の突発的な特性変化が生じたことが電流値から判断される場合は第1の閾値を小さくすることにより、補正値Pの積算値が第1の閾値に達するまでの時間を短縮できる。このため満充電リセットが高頻度で実行されるようになり、シャント抵抗33Aの抵抗値の突発的な変化によってSOCの推定精度が悪化することを抑制できる。
【0078】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
(1)上記実施形態では補正処理として電流値に補正値Pを加算する処理を例示したが、補正処理はこれに限られない。例えば補正処理は電流値に補正値を乗算する処理であってもよい。
【0080】
(2)上記実施形態では蓄電素子の状態としてSOCを例示したが、状態はSOCに限られない。例えば状態は健康状態、劣化状態を示すSOH(State Of Health)であってもよい。
【0081】
(3)上記実施形態1では異常な大電流が計測された場合や正常な範囲の大電流が長時間継続した場合に抵抗値が大きく変化したと判断する場合を例示した。これに対し、温度センサ36によって第5の閾値以上の温度(電流センサ33の特性変化に関係する物理量の一例)が計測されると抵抗値が大きく変化したと判断し、補正値Pを変更してもよい。このようにすると、大電流が流れて電流センサ33の特性が大きく変化してもSOCの推定精度の悪化を抑制できる。
【0082】
(4)上記実施形態では補正処理が実行される毎に所定値として補正値Pを積算する場合を例示したが、所定値は補正値に限られるものではなく、任意の値であってよい。例えば補正値Pを10回積算するとSOCの例えば5%に達するとした場合、所定値を1とし、積算値が10に達すると満充電リセットを実行してもよい。この場合の積算値は補正処理を実行した回数に相当する。
【0083】
(5)上記実施形態では電池セル30Aとしてリチウムイオン二次電池を例示したが、電池セル30Aはリチウムイオン二次電池に限定されない。例えば、電池セル30Aは電気化学反応を伴うキャパシタであってもよい。
上記実施形態ではリチウムイオン二次電池としてプラトー領域を有するリチウムイオン二次電池を例示したが、リチウムイオン二次電池はプラトー領域を有するものに限定されない。
上記実施形態ではプラトー領域を有するリチウムイオン二次電池として鉄系のリチウムイオン二次電池を例示したが、プラトー領域を有するリチウムイオン二次電池は鉄系のリチウムイオン二次電池に限定されない。
上記実施形態では鉄系のリチウムイオン二次電池としてLFP/Gr系のリチウムイオン二次電池を例示したが、鉄系のリチウムイオン二次電池はLFP/Gr系のリチウムイオン二次電池に限定されない。
【0084】
(6)上記実施形態ではシャント抵抗33Aを備える電流センサ33を例示したが、電流センサ33は例えばホールセンサであってもよい。
【0085】
(7)上記実施形態では車両1としてエンジン駆動車を例示したが、車両1はこれに限定されない。例えば車両1はハイブリッド自動車、電気自動車、電気モータで走行するフォークリフト、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)であってもよい。
上記実施形態では車両に搭載される蓄電装置15を例示したが、蓄電装置15は車両に搭載されるものに限定されない。例えば蓄電装置15は無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)に用いられる蓄電装置であってもよいし、太陽光発電によって発電された電力を蓄電する蓄電装置であってもよい。
【0086】
(8)上記実施形態ではS101(補正処理)が1回実行される毎にS105(積算処理)で所定値(補正値P)を1回積算する場合を例に説明した。しかしながら、積算処理は、補正処理が実行された回数と所定値を積算した回数とが一致していれば、必ずしも補正処理が1回実行される毎に所定値を1回積算する処理に限定されない。例えば補正処理が2回実行される毎に所定値を2回積算してもよい。補正処理が実行された回数と所定値を積算した回数とはほぼ一致していればよく、必ずしも完全に一致しなくてもよい。
【0087】
(9)上記実施形態では蓄電素子(電池セル30A)として車両1に搭載される電池セル30Aを例に説明したが、蓄電素子は車両に搭載されるものに限定されない。例えば、蓄電素子は小型電気製品に搭載されるものであってもよい。
【0088】
(10)上記実施形態では補正値Pに基づいて電流値を補正する毎にカウンタCに補正値Pを加算し、補正値Pの積算値が第1の閾値(現在のSOCの5%)に達すると満充電リセットを実行する場合を例に説明した。これに対し、補正値Pに基づいて電流値を補正する毎にある初期値(例えばある時点のSOCの5%)から補正値Pを減算(積算に相当)し、減算後の値(積算値に相当)が第1の閾値(例えば0%)に達すると満充電リセットを実行してもよい。
【符号の説明】
【0089】
15 蓄電装置
30A 電池セル(蓄電素子の一例)
31 BMU(管理装置の一例)
33 電流センサ
33A シャント抵抗(抵抗体の一例)
36 温度センサ
37 管理部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11