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特許7491118検査システム、検査方法、及び検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】検査システム、検査方法、及び検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020126310
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023390
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 政史
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-249547(JP,A)
【文献】特開2018-054437(JP,A)
【文献】特開2007-024697(JP,A)
【文献】特開2016-029568(JP,A)
【文献】特開2017-174236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G06T 1/00-G06T 7/90
G06N 3/00-G06N 99/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を測定して測定値を出力する測定器と、
前記測定値に基づく前記対象物の特徴を表す対象特徴量と、前記対象物の種別の判別に用いる判別パラメーターとを用いて前記対象物の判別を行う判別部と、
前記対象特徴量を用いて前記判別パラメーターを更新する判別パラメーター更新部と、
前記判別パラメーターの変化を監視する判別パラメーター監視部と、
前記判別パラメーターの変化が所定値よりも大きくなった場合にアラートを出力するアラート出力部と、
を備え
前記判別パラメーター更新部は、前記判別部によって良品と判定された前記対象物の特徴量と、良品であるか不良品であるかが予め確認されている対象物の特徴量と、に基づいて、前記判別パラメーターを更新する
ことを特徴とする検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の検査システムにおいて、
前記判別パラメーターは、前記対象物を判別すべき群毎の事前特徴量の共分散と、前記対象物を判別すべき前記各群の前記事前特徴量の平均であり、
前記判別部は、検査用の前記対象物の前記事前特徴量から前記各群の前記事前特徴量の前記平均までのマハラノビス距離に基づいて前記群を前記対象物が属する前記群と判別することを特徴とする検査システム。
【請求項3】
請求項に記載の検査システムにおいて、
特徴量算出部と、
前記対象特徴量を算出するのに用いる特徴量パラメーターを保存する特徴量パラメーター保存部と、
前記判別パラメーターを保存する判別パラメーター保存部と、
をさらに備え、
前記測定器は、前記対象物を判別すべき各群をそれぞれ構成する複数の学習用の事前対象物を測定して複数の学習用の前記事前対象物の測定値を出力し、検査用の前記対象物を測定して検査用の前記対象物の前記測定値を出力し、
前記特徴量算出部は、前記各群にそれぞれ属する前記学習用の前記各事前対象物の前記各測定値と、前記学習用の前記各事前対象物の前記各群に関する情報とを用いて、前記学習用の前記各事前特徴量と、前記事前対象物の前記測定値を前記事前特徴量に変換する前記特徴量パラメーターを算出し前記特徴量パラメーター保存部に保存し、前記検査用の前記対象物の前記測定値と、前記特徴量パラメーターを用いて前記検査用の前記対象物の前記特徴量を算出し、
前記判別部は、前記各群のそれぞれについて、前記学習用の前記各事前特徴量を用いて、前記事前特徴量の前記共分散と、前記事前特徴量の前記平均を算出して前記判別パラメーター保存部に保存し、前記検査用の前記対象物の前記対象特徴量と、前記対象特徴量の前記共分散と、前記対象特徴量の前記平均とを用いて前記検査用の前記対象物の判別を行う
ことを特徴とする検査システム。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の検査システムにおいて、
前記対象特徴量及び前記事前特徴量は、フィッシャー情報量であることを特徴とする検査システム。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の検査システムにおいて、
前記測定器は、前記対象物で反射された光に含まれる複数波長の光のそれぞれの光強度を測定する、分光測定装置であることを特徴とする検査システム。
【請求項6】
対象物を測定して測定値を出力する測定器により測定された前記対象物の前記測定値に基づいて、前記対象物を検査する検査方法であって、
前記測定値に基づく前記対象物の特徴を表す対象特徴量と、前記対象物の種別の判別に用いる判別パラメーターとを用いて前記対象物の判別を行う判別ステップと、
前記対象特徴量を用いて前記判別パラメーターを更新する判別パラメーター更新ステップと、
前記判別パラメーターの変化を監視する判別パラメーター監視ステップと、
前記判別パラメーターの変化が所定値よりも大きくなった場合にアラートを出力するアラート出力ステップと、を備え、
前記判別パラメーター更新ステップでは、前記判別ステップによって良品と判定された前記対象物の特徴量と、良品であるか不良品であるかが予め確認されている対象物の特徴量と、に基づいて、前記判別パラメーターを更新する
とを特徴とする検査方法。
【請求項7】
コンピューターにより読み取り実行可能な検査プログラムであって、
請求項に記載の検査方法を前記コンピューターに実施させる
ことを特徴とする検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の良否を判別する検査システム、検査方法、及び検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産工場の生産ラインでは、生産物の全数に対する検査あるいは抜き取り検査を行って良否の判別を行っている。従来、検査対象の工作物の個数を削減しつつ不良品の取りこぼしを防止する加工機械システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の加工機械システムは、加工機械と、数値制御装置と、内部情報取得部と、仮判定部と、最終判定部と、しきい値更新部とを備える。
加工機械は、少なくとも1つの電動機が軸を駆動して工作物を加工する。
数値制御装置は、加工プログラムに基づき加工機械の軸を駆動するための指令を生成する。
【0004】
内部情報取得部は、数値制御装置の内部情報を取得する。
仮判定部は、前記内部情報としきい値との比較結果に基づいて工作物の良否を判定する。
最終判定部は、生産された工作物を測定した測定結果に基づいて当該工作物の良否を判定する。
しきい値更新部は、仮判定部、及び最終判定部の判定結果に基づいて、仮判定部の判定に用いられるしきい値を更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-174236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の加工機械システムでは、仮判定部が判定に用いるしきい値を更新できるが、生産された工作物の測定結果に基づいて当該工作物の良否を判定する最終判別部が用いるしきい値を更新できない、との課題がある。
【0007】
生産工場では例えば、朝の始業時から日中へ時間が経過して測定環境(例えば、振動、気圧、温度、湿度など)が変動することにより、工作物の測定値が全体的に変動する場合がある。特許文献1の加工機械システムでは、時間経過により工作物の測定値が全体的に変動した場合でも、仮判定部が判定処理に用いる内部情報のしきい値を更新するだけであるので、不良品を良品と判定する誤判定が増加するおそれがある、との課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一態様に係る検査システムは、対象物を測定して測定値を出力する測定器と、前記測定値に基づく前記対象物の特徴を表す対象特徴量と、前記対象物の種別の判別に用いる判別パラメーターとを用いて前記対象物の判別を行う判別部と、前記対象特徴量を用いて前記判別パラメーターを更新する判別パラメーター更新部と、を備える。
【0009】
第二態様に係る検査方法は、対象物を測定して測定値を出力する測定器により測定された前記対象物の前記測定値に基づいて、前記対象物を検査する検査方法であって、前記測定値に基づく前記対象物の特徴を表す対象特徴量と、前記対象物の種別の判別に用いる判別パラメーターとを用いて前記対象物の判別を行う判別ステップと、前記対象特徴量を用いて前記判別パラメーターを更新する判別パラメーター更新ステップと、を備える。
【0010】
第三態様に係る検査プログラムは、コンピューターにより読み取り実行可能な検査プログラムであって、第二態様の検査方法を前記コンピューターに実施させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態の検査システムの構成、及び制御部の機能構成を示すブロック図。
図2】一実施形態の検査システムの検査方法の概略を示すフローチャート。
図3】一実施形態の対象物の検査に使用する特徴量パラメーター、及び判別パラメーターを学習するパラメーター学習処理の一例を示すフローチャート。
図4】一実施形態の対象物を検査する対象物検査処理の一例を示すフローチャート。
図5】フィッシャー特徴量の特徴を説明するための概念図。
図6】従来技術の課題の一つを説明するための概念図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。
[検査システム1の構成]
図1は、一実施形態の検査システム1の構成、及び制御部12の機能構成を示すブロック図である。
検査システム1は、図1に示すように、検査装置10と、測定器11と、を備える。検査装置10は、コンピューターであり、CPU(Central Processing Unit)等により構成された制御部12と、メモリーまたはハードディスク等の記録回路により構成された記憶部13とを備える。
【0013】
測定器11は、後述する特徴量パラメーター、及び判別パラメーターを学習する際に使用する対象物21と、実際に生産され、検査の対象である対象物22とをそれぞれ測定する。
測定器11は、対象物21及び22の特徴と相関を有する物理量を計測できるものであればよい。本実施形態では、測定器11は、対象物21及び22で反射された光に含まれる複数波長の光のそれぞれの光強度を測定する、分光測定装置である。測定器11は、具体的には、測色計、RGBカメラ、マルチバンド光量計またはマルチバンドカメラ等により構成されている。
【0014】
学習用の対象物21、検査用の対象物22を区別するため、学習用の対象物21を第一対象物(事前対象物)21と称する。また、検査用の対象物22を第二対象物22と称する。
本実施形態では、第二対象物22が良品であるか不良品であるかを判別することを目的とする。そのため、第一対象物21として、良品であると予め確認されている複数の第一対象物21からなる良品群と、不良品であると予め確認されている複数の第一対象物21からなる不良品群とを用意する。
【0015】
制御部12は、パラメーター学習処理と、対象物検査処理とを実行する。
制御部12は、パラメーター学習処理では、第二対象物22を検査する前に、当該検査に使用する特徴量パラメーター、及び判別パラメーターを学習し、特徴量パラメーターを特徴量パラメーター保存部41に保存するとともに、判別パラメーターを判別パラメーター保存部42に保存する。
【0016】
制御部12は、対象物検査処理では、第二対象物22の検査を行うとともに、第二対象物22の特性が変動した場合には判別パラメーターを逐次更新し、第二対象物22の特性の変動量が所定のしきい値を超えた場合はアラートを出力する。
【0017】
制御部12は、具体的には、記憶部13に記憶されたパラメーター学習処理プログラム、対象物検査処理プログラム等の各種プログラムを読み込み実行することにより、図1に示すように、特徴量算出部31と、判別部32と、判別結果出力部33と、判別パラメーター更新部34と、判別パラメーター監視部35と、アラート出力部36等として機能する。
【0018】
記憶部13は、特徴量パラメーター保存部41、及び判別パラメーター保存部42を有し、前記パラメーター学習処理プログラム、前記対象物検査処理プログラム等の各種プログラムが記憶されているとともに、前記各種プログラムが実行される際に使用される各種データが記憶される。
【0019】
特徴量算出部31は、前記パラメーター学習処理では、測定器11から供給される良品群、及び不良品群にそれぞれ属する複数の第一対象物21を測定した複数の測定値と、各第一対象物21が良品であるか否かを示す良否情報とを用いて、良品群と不良品群を判別するのに適した学習用の特徴量を算出する。特徴量算出部31は、学習用の特徴量を判別部32に供給するとともに、測定値を特徴量に変換する特徴ベクトル(式(9)参照)を特徴量パラメーターとして特徴量パラメーター保存部41に保存する。
【0020】
特徴量算出部31は、前記対象物検査処理では、測定器11から供給される第二対象物22を測定した測定値と、特徴量パラメーター保存部41から読み出した特徴量パラメーター(特徴ベクトル)とを用いて、検査用の特徴量を算出する。特徴量算出部31は、算出した検査用の特徴量を判別部32に供給する。
【0021】
第一対象物21を測定した測定値、第二対象物22を測定した測定値を区別するため、第一対象物21を測定した測定値を第一測定値と称する。また、第二対象物22を測定した測定値を第二測定値と称する。
また、学習用の特徴量、検査用の特徴量を区別するため、学習用の特徴量を第一特徴量(事前特徴量)と称する。また、検査用の特徴量を第二特徴量と称する。
【0022】
以下、本実施形態において採用する特徴量について図5及び図6を参照して説明する。
測定環境などが変動することにより、図6に示すように、工作物の特性が全体的に変動した場合、特許文献1の加工機械システムでは、仮判定部が判定処理に用いる内部情報のしきい値を、生産初期に用いられたもの(図6に示す1点鎖線の円)から、破線の円により示すものに更新するだけであるので、不良品を良品と判定する誤判定が増加するおそれがある。
【0023】
図6は、工作物の良否を判定するために測定する物理量1(例えば、寸法)と物理量2(例えば、重量)とからなる2次元空間を表している。
図6において、白丸は生産初期に得られる良品の物理量1の測定値と物理量2の測定値とからなる座標、黒丸は所定時間経過後に生産された良品の物理量1の測定値と物理量2の測定値とからなる座標、×印は生産初期から所定時間経過後までに生産された良品の物理量1の測定値と物理量2の測定値とからなる座標の平均を表している。
【0024】
測定環境が変動しない場合でも、工作機械の加工精度などが影響して、図5に示すように、工作物の測定値は良品群内、及び不良品群内である程度ばらつく。
図5は、工作物の良否を判別するために測定する物理量1(例えば、分光スペクトルの波長1)と物理量2(例えば、分光スペクトルの波長2)とからなる2次元空間を表している。
なお、工作物の良否を判別するために複数の物理量を測定するので、これらの物理量で形成される空間は多次元空間となる。
【0025】
図5において、白丸は生産初期に得られる良品の物理量1の測定値と物理量2の測定値とからなる座標、黒丸は所定時間経過後に生産された良品の物理量1の測定値と物理量2の測定値とからなる座標を表している。
また、実線の×印は生産初期に得られる良品の物理量1の測定値の平均と物理量2の測定値の平均とからなる座標、破線の×印は所定時間経過後に生産された良品の物理量1の測定値の平均と物理量2の測定値の平均とからなる座標を表している。
さらに、1点鎖線の楕円は生産初期に用いられる判別域、破線の楕円は所定時間経過後に用いられる判別域を表している。
【0026】
測定環境などが変化して工作物の特性が全体的に変動した場合でも良品と不良品とを高い判別率で判別するためには、工作物が良品であるか不良品であるかを特徴付ける特徴量は、良品と不良品との間では差が大きいことが好ましい。
【0027】
一方、工作機械の加工精度などが影響して、工作物の測定値が良品群内、及び不良品群内でばらつくことを考慮すると、工作物が良品であるか不良品であるかを特徴付ける特徴量は、良品群内、及び不良品群内において前記した測定値のばらつきの影響を受けないことが好ましい。
【0028】
以上のことから、工作物が良品であるか不良品であるかを特徴付ける特徴量は、良品と不良品との間では差が大きく、良品群内、及び不良品群内では差が小さくなる成分を特徴量とすることが好ましい。
【0029】
そこで、良品群内、及び不良品群内については、異なる2組の物理量の測定値の関係を示す共分散(以下「群内共分散」という。)を求める。一方、良品群と不良品群との間については、同一の物理量に関し、良品の各測定値と不良品の各測定値との関係を示す共分散(以下「群間共分散」という。)を求める。共分散は、各測定値の平均からの偏差を全て乗じたものを測定回数で除して得られる。
【0030】
そして群間共分散を群内共分散で除した群間共分散/群内共分散を最大化する成分を特徴量とする。このような群間共分散/群内共分散を最大化する性質を有する特徴量の1つとして、フィッシャー(Fisher)情報量がある。フィッシャー情報量は、測定環境などが変化して工作物の特性が全体的に変動した場合でも高い判別率を維持するために適した特徴量である。
したがって、本実施形態では、特徴量として、フィッシャー情報量を用いる。
【0031】
具体的には、特徴量算出部31は、以下に示す式(1)~式(9)に基づいて、測定値xから良品群と不良品群とを判別するのに適した特徴量(フィッシャー情報量)yを求め、測定値xを特徴量yに変換する特徴ベクトルUを特徴量パラメーターとする。
【0032】
式(1)において、xijは、群「i」における「j」番目の測定スペクトルであり、具体的には、L個の測定値から構成されるベクトルである。本実施形態では、測定値xijの添字iは良品群(例えば、i=1)と不良品群(例えば、i=2)を示す変数であり、添字jは同一の群内における順番を示す変数である。
式(1)において、「L」は測定される物理量の数(例えば、スペクトルの波長数)を表している。「L」が測定される物理量の数を表すことは後述する式(10)においても同様である。
式(1)において、「T」はベクトルまたは行列の転置を表している。「T」が転置を表すことは後述する式(4)、式(5)、式(9)、式(10)、式(12)、式(13)、式(14)、及び式(16)においても同様である。
【0033】
【数1】
【数2】
【数3】
【0034】
式(2)は、良品群毎及び不良品群毎の平均スペクトルを表し、測定値からなるベクトルxijを全てのjについて平均して得られるベクトルである。式(3)は測定値からなるベクトルxijを全てのi,jについて平均して得られる平均ベクトルである。式(2)、及び式(3)において、Nは良品群毎及び不良品群毎のベクトルxijの総数を表している。
【0035】
【数4】
【数5】
【0036】
式(4)は良品群、及び不良品群のそれぞれの内部において、全ての物理量の測定値の組み合わせについて求めた共分散を行列の形で表した群内共分散行列、式(5)は良品群と不良品群との間において、同一の物理量の測定値の全ての組み合わせについて求めた共分散を行列の形で表した群間共分散行列を表している。
【0037】
【数6】
【数7】
【0038】
【数8】
【数9】
【0039】
式(6)は、フィッシャー情報量に基づいて対象物の良品と不良品を判別するための式である。すなわち、式(5)を式(4)で除した群間共分散行列/群内共分散行列S -1が最大になるように、式(7)に示す特徴ベクトルU(1≦m≦K≦L)(またはその行列表現であるU)、及び式(8)に示す固有値λ(1≦m≦K≦L)(またはその行列表現であるΛ)を求めればよい。ここで、mは整数である。また、後述するように、Kは、主成分の数であり、L以下である。Lは、前記の通り、測定値から構成されるベクトルxijにおける要素数である。
【0040】
特徴ベクトルUはフィッシャー情報量スペクトルであり、これを特徴量パラメーターとする。
固有値Λはフィッシャー情報量スペクトルの寄与度である。
特徴ベクトルU、及び固有値Λはスペクトルの波長数Lと同数のL個がそれぞれ求まるが、このうち、上位K個が主成分である。
【0041】
式(6)において、「-1」は逆行列を表している。「-1」が逆行列を表すことは後述する式(13)においても同様である。
式(8)において、Iは単位行列を表している。
式(9)に示すように、特徴ベクトルUと測定値xijの内積をとることにより、対応する特徴量(フィッシャー情報量)yijを求めることができる。後述する対象物検査処理(図2のステップS2、及び図4参照)において第二測定値xから第二特徴量yを算出するために、特徴量算出部31は、特徴ベクトルUを特徴量パラメーターとして特徴量パラメーター保存部41に保存する。
【0042】
判別部32は、パラメーター学習処理では、特徴量算出部31から供給される第一特徴量yij(式(10)参照)を用いて、対象物検査処理において第二対象物22を良品群と不良品群とに判別するための判別パラメーターを求める。
判別パラメーターは、式(11)に示す平均特徴量と、式(12)に示す共分散行列とを含む。
判別部32は、パラメーター学習処理では、前記平均特徴量、及び前記共分散行列を含む判別パラメーターを判別パラメーター保存部42に保存する。
【0043】
【数10】
【数11】
【0044】
【数12】
【0045】
式(10)~式(12)において、添字iは良品群(例えば、i=1)と不良品群(例えば、i=2)を示す変数であり、添字jは同一の群内における順番を示す変数である。
式(11)、及び式(12)において、Nは良品群と不良品群それぞれの特徴量yの総数を表している。
【0046】
判別部32は、対象物検査処理では、第二対象物22の良否を判別するために、特徴量算出部31から供給される第二特徴量yと、判別パラメーター保存部42から読み出した判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)とを用いて、第二特徴量yから良品群、及び不良品群それぞれの平均特徴量までのマハラノビス距離(式(13)参照)を計算する。
判別部32は、計算したマハラノビス距離の中で最も小さくなる群を第二対象物22の判別結果とし、判別結果を判別結果出力部33に供給する。
【0047】
【数13】
【0048】
このように、測定値と平均値との偏差だけでなく、測定値のばらつき(分散)に対する偏差の比率も考慮することによって、第二対象物22の良否をより正確に判別することができる。マハラノビス距離とは、このように測定値のばらつきまでを考慮した上で、第二対象物22が良品群または不良品群のいずれに属すると判断できるかを示す指標である。ある群に属する可能性が高くなるほど、当該群に対するマハラノビス距離は小さくなる。
【0049】
判別結果出力部33は、判別部32から供給される判別結果を、例えば、図示しない表示装置に表示したり、図示しない関連装置へ制御信号として出力したりすることにより、外部へ出力する。
【0050】
判別パラメーター更新部34は、判別パラメーター保存部42に保存されている判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)を、特徴量算出部31が第二対象物22から算出した第二特徴量yを用いて更新する。
判別パラメーター監視部35は、判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)の変化を監視する。
アラート出力部36は、判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)の変化が大きくなった際にアラートを出力する。
【0051】
記憶部13において、特徴量パラメーター保存部41は、第二特徴量yを算出するために必要な特徴量パラメーター(特徴ベクトルU)を保存する。
判別パラメーター保存部42は、前記平均特徴量、及び前記共分散行列を含む判別パラメーターを保存する。
【0052】
[検査方法]
本実施形態の検査システム1は、生産工場で生産された生産物、すなわち、第二対象物22の良否を判別する。
図2は、本実施形態の検査方法の概略を示すフローチャートである。
本実施形態の検査方法は、パラメーター学習処理(ステップS1)と、対象物検査処理(ステップS2)とにより構成されている。
【0053】
パラメーター学習処理では、第二対象物22を検査する前に、当該検査に使用する特徴量パラメーター、及び判別パラメーターを学習し、特徴量パラメーターを特徴量パラメーター保存部41に保存するとともに、判別パラメーターを判別パラメーター保存部42に保存する(ステップS1)。
【0054】
対象物検査処理では、第二対象物22の検査を行うとともに、第二対象物22の特性が変動した場合には判別パラメーターを逐次更新し、第二対象物22の特性の変動量が所定のしきい値を超えた場合はアラートを出力する(ステップS2)。
【0055】
[パラメーター学習処理]
次に、パラメーター学習処理について説明する。
図3は、パラメーター学習処理の一例を示すフローチャートである。
まず、測定器11は、良品群、及び不良品群をそれぞれ構成する複数の第一対象物21の物理量を測定し、それぞれの測定結果を特徴量算出部31に順次供給する(ステップS11)。
【0056】
次に、特徴量算出部31は、測定器11から複数の測定結果が供給されると、良品群、及び不良品群をそれぞれ構成する複数の第一対象物21毎に良品であるか不良品であるかを示す良否情報を取得する(ステップS12)。この処理は、例えば、作業者が図示しない操作部を操作して、各測定結果に対応させて入力してもよい。
【0057】
次に、特徴量算出部31は、測定器11から供給される良品群、及び不良品群にそれぞれ属する複数の第一対象物21を測定した複数の第一測定値xij(式(1)参照)と、第一対象物21毎の良否情報とを用いて、特徴ベクトルU(式(7)参照)、及び第一特徴量yij(式(9)参照)を算出し、判別部32に供給する(ステップS13)。第一特徴量yijは、式(1)に合わせて式(10)で表すことができる。
【0058】
【数1】
【数7】
【数9】
【数10】
【0059】
判別部32は、特徴量算出部31から第一特徴量yij(式(10)参照)が供給されると、良品群、及び不良品群のそれぞれについて、当該第一特徴量yij(式(10)参照)を用いて、判別パラメーターを構成する平均特徴量(式(11)参照)、及び共分散行列(式(12)参照)を算出する(ステップS14)。
【0060】
【数11】
【0061】
【数12】
【0062】
次に、特徴量算出部31は、特徴ベクトルU(式(7)参照)を特徴量パラメーターとして特徴量パラメーター保存部41に保存する。判別部32は、良品群、及び不良品群のそれぞれに関する前記平均特徴量(式(11)参照)、及び前記共分散行列(式(12)参照)を各群の判別パラメーターとして判別パラメーター保存部42に保存する。その後、特徴量算出部31、及び判別部32は、図3に示すパラメーター学習処理を終了して、図2に示すメインの処理に復帰する(ステップS15)。
【0063】
[対象物検査処理]
次に、対象物検査処理について説明する。
図4は、対象物検査処理の一例を示すフローチャートである。
まず、測定器11は、生産ラインで実際に生産され、検査の対象である第二対象物22について、図3に示すステップS11の処理と同一の条件で測定し、測定結果である第二測定値xを特徴量算出部31に供給する(ステップS21)。
【0064】
特徴量算出部31は、測定器11から第二測定値xが供給されると、当該第二測定値xと、特徴量パラメーター保存部41から読み出した特徴量パラメーター(特徴ベクトルU)(式(7)参照)を用いて、第二特徴量y(式(14)参照)を算出し、判別部32に供給する(ステップS22)。
【0065】
【数7】
【数14】
【0066】
判別部32は、特徴量算出部31から第二特徴量yが供給されると、前記第二特徴量yに基づいて対応する第二対象物22の良否を判別するために、前記第二特徴量yと、判別パラメーター保存部42から読み出した良品群、及び不良品群のそれぞれに関する平均特徴量(式(11)参照)、及び共分散行列(式(12)参照)を用いて、第二特徴量yから良品群、及び不良品群それぞれの平均特徴量までのマハラノビス距離(式(13)参照)を計算する。
判別部32は、計算したマハラノビス距離の中で最もが小さくなる群を第二対象物22の判別結果とし、判別結果を判別結果出力部33に供給する(ステップS23;判別ステップ)。
【0067】
【数11】
【数12】
【数13】
【0068】
判別結果出力部33は、判別部32から判別結果が供給されると、当該判別結果を、例えば、図示しない表示装置に表示したり、図示しない関連装置へ制御信号として出力したりすることにより、外部へ出力した後、その旨を判別パラメーター更新部34に通知する(ステップS24)。
【0069】
判別パラメーター更新部34は、判別結果出力部33から判別結果を外部へ出力した旨の通知を受けると、ステップS23の処理において判別結果を求めた第二対象物22が、予め定めた判別パラメーターを更新する対象の群に属するか否かを判断する(ステップS25)。本実施形態では、第二対象物22の良否を判別するので、良品のみを判別パラメーターの更新対象とする。ステップS25の判断結果が「YES」の場合には、判別パラメーター更新部34は、ステップS26へ進む。
【0070】
ステップS26では、判別パラメーター更新部34は、判別パラメーター保存部42から読み出した判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)と、特徴量算出部31が第二対象物22の第二測定値xから算出した第二特徴量yとを式(15)、及び式(16)に代入して、新たな判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)を求める。
次に、判別パラメーター更新部34は、新たな判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)を判別パラメーター保存部42に保存して更新した後、その旨を判別パラメーター監視部35に通知する(判別パラメーター更新ステップ)。
このステップS26の処理は、図5の例では、パラメーター学習処理で求めた平均特徴量(実線の×印)を、新たな平均特徴量(破線の×印)に変更することに相当する。
なお、パラメーター学習処理において算出した判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)は、判別パラメーター保存部42に記憶しておく。
【0071】
判別パラメーター更新処理は、測定環境などが変化することにより工作物の特性が全体的に変動した場合を考慮したものである。
式(15)、及び式(16)において、αは工作物の特性変化への追従速度を制御するパラメーターである。
【0072】
【数15】
【数16】
【0073】
一方、ステップS25の判断結果が「NO」の場合、すなわち、ステップS23の処理において判別結果を求めた第二対象物22が、予め定めた判別パラメーターを更新する対象の群に属しない場合には、判別パラメーター更新部34は、その旨を特徴量算出部31に通知する。これにより、後述するステップS26~S29の処理は実行されず、特徴量算出部31は、ステップS30へ進む。
【0074】
判別パラメーター監視部35は、判別パラメーター更新部34から判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)を更新した旨の通知を受けると、パラメーター学習処理において算出した判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)と、ステップS26において判別パラメーター更新部34が更新した判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)との差分(変動量)を計算する(ステップS27)。
【0075】
次に、判別パラメーター監視部35は、ステップS27において計算した差分(変動量)が予め設定したしきい値より大きいか否かを判断する(ステップS28)。ステップS28の判断結果が「YES」の場合には、判別パラメーター監視部35は、その旨をアラート出力部36に通知する。
【0076】
アラート出力部36は、判別パラメーター監視部35から差分(変動量)が予め設定したしきい値より大きい旨の通知を受けると、判別パラメーター(平均特徴量、及び共分散行列)が更新された群に含まれる対象物の特性が明らかに変動したものと判断してアラートを出力した後、その旨を特徴量算出部31に通知する(ステップS29)。
これにより、作業者は、例えば、検査対象の生産ラインを停止させ、当該生産ラインにおいて4M変動が起こっていないかなどをチェックする。4M変動とは、人(man)、製造機械(machine)、材料(material)または製造方法(method)のいずれかが変化することを意味する。
つまり、この場合は、測定環境だけでなく、生産環境(例えば、電源電圧、加工機械の温度、切削工具の位置や切れ味など)にも何らかの変動が生じている可能性が高いのである。
前記しきい値は、このような変動を想定して予め設定しておくことが好ましい。
【0077】
一方、ステップS28の判断結果が「NO」の場合、すなわち、ステップS27において計算した差分(変動量)が予め設定したしきい値より大きくない場合には、判別パラメーター監視部35は、その旨を特徴量算出部31に通知する。これにより、前記したステップS29の処理は実行されず、特徴量算出部31は、ステップS30へ進む。
【0078】
特徴量算出部31は、判別パラメーター更新部34、判別パラメーター監視部35またはアラート出力部36から前記したそれぞれの通知を受けると、第二特徴量y(式(14)参照)を算出するために、第二測定値xが新たに供給されたか否か判断する(ステップS30)。ステップS30の判断結果が「YES」の場合には、特徴量算出部31は、ステップS21へ戻り、ステップS21以降の処理を繰り返す。
一方、ステップS30の判断結果が「NO」の場合、すなわち、第二特徴量y(式(14)参照)を算出するための第二測定値xが新たに供給されなかった場合には、特徴量算出部31は、図4に示す対象物検査処理を終了して、図2に示すメインの処理に復帰する。
【0079】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の検査システム1は、第一対象物21、及び第二対象物22を測定して測定値を出力する測定器11と、測定値に基づく第一対象物21、及び第二対象物22の特徴を表す特徴量と、対象物の種別の判別に用いる判別パラメーターとを用いて第一対象物21、及び第二対象物22の判別を行う判別部32と、特徴量を用いて判別パラメーターを更新する判別パラメーター更新部34と、を備える。
【0080】
これにより、検査用の第二対象物22の判別に用いる判別パラメーターを検査用の第二対象物22の特徴量を用いて更新しているので、測定環境が変動したことを検出するためのセンサーを設けることなく、安価な構成で、測定環境の変動(例えば、外光や温度の変動)等による第二対象物22の測定値の変動に追従した判別が行われ、よりロバストな検査が可能になる。
また、判別のためしきい値の更新ではないので、不良品を良品と誤判定するおそれが少ない。
【0081】
本実施形態の検査システム1は、判別パラメーターの変化を監視する判別パラメーター監視部35と、判別パラメーターの変化が所定値よりも大きくなった場合にアラートを出力するアラート出力部36と、をさらに備える。
したがって、測定環境だけでなく、生産や検査に影響を与えるような生産環境などに大きな変動があった場合にそれを確認することができる。
【0082】
本実施形態の検査システム1では、判別パラメーターは、第二対象物22を判別すべき群毎の特徴量の共分散と、第二対象物22を判別すべき群毎の特徴量の平均であり、判別部32は、第二対象物22の特徴量から各群の特徴量の平均までのマハラノビス距離に基づいて群を第二対象物22が属する群と判別している。
【0083】
また、本実施形態の検査システム1では、特徴量算出部31と、特徴量パラメーターを保存する特徴量パラメーター保存部41と、判別パラメーターを保存する判別パラメーター保存部42と、をさらに備えている。測定器11は、第二対象物22を判別すべき良品群及び不良品群をそれぞれ構成する複数の第一対象物21を測定して複数の第一測定値を出力する。
【0084】
特徴量算出部31は、良品群及び不良品群にそれぞれ属する複数の第一測定値と、複数の第一対象物21毎の良否情報とを用いて、各第一特徴量と、第一測定値を第一特徴量に変換する特徴ベクトルUを算出して特徴ベクトルUを特徴量パラメーターとして特徴量パラメーター保存部41に保存し、第二測定値と、特徴量パラメーター保存部41から読み出した特徴ベクトルUを用いて第二特徴量を算出している。
【0085】
判別部32は、良品群及び不良品群のそれぞれについて、各第一特徴量を用いて、特徴量の共分散行列と、平均特徴量を算出して判別パラメーター保存部42に保存し、第二特徴量と、判別パラメーター保存部42から読み出した特徴量の共分散行列と、平均特徴量とを用いて第二対象物22の判別を行っている。
【0086】
したがって、一律に測定環境が変動したものと判断する場合と比較して、良品を不良品と判定する誤判定が発生する可能性は低く、歩留まりが低下するおそれは少ない。また、測定環境の変動を受けた場合でも、他の場合と同様に良品または不良品の判別が行われるので、工数が増加することはない。
【0087】
[変形例]
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、及び改良等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0088】
(変形例1)
前記実施形態では、第一対象物21として、特性が変動することを前提とせず、良品であると予め確認されている複数の第一対象物21からなる良品群と、不良品であると予め確認されている複数の第一対象物21からなる不良品群とを用意する例を示したが、これに限定されない。良品群、及び不良品群を構成する複数の第一対象物21には、時間が経過して特性が全体的に変動することを想定したものを含めてもよい。
【0089】
(変形例2)
前記実施形態では、測定器11は、測色計、RGBカメラ、マルチバンド光量計またはマルチバンドカメラ等により構成されている例を示したが、これに限定されない。測定器11は、第一対象物21、及び第二対象物22の特徴と相関を有する物理量を計測できるものであれば、他のものでもよいが、複数のセンサーによって検出される複数の測定値(例えば、対象物の重量や厚みなど)の組み合わせの方が共分散を求めるためにはよい。
【0090】
(変形例3)
前記実施形態では、図3に示すステップS15において特徴量算出部31が特徴量パラメーターを特徴量パラメーター保存部41に保存し、判別部32が判別パラメーターを判別パラメーター保存部42に保存する例を示したが、これに限定されない。ステップS13において特徴量算出部31が特徴量パラメーターを特徴量パラメーター保存部41に保存し、ステップS14において判別部32が判別パラメーターを判別パラメーター保存部42に保存してもよい。
【0091】
(変形例4)
前記実施形態では、図4に示すステップS21において、第二対象物22の全数について物理量を測定する例を示したが、これに限定されない。第二対象物22の一定数毎に抜き取って各物理量を測定してもよい。
【0092】
(変形例5)
前記実施形態では、図4に示すステップS26において、判別パラメーターだけを更新する例を示したが、これに限定されず、特徴量パラメーターも更新してもよい。
【0093】
(変形例6)
前記実施形態では、図4に示すステップS26において、第二対象物22を測定する毎に、判別パラメーターを更新する例を示したが、これに限定されず、判別パラメーターは、一定量の第二対象物22を測定する毎に、あるいは、ロット毎に更新してもよい。
【0094】
(変形例7)
前記実施形態では、図4に示すステップS27及びS28において、第二対象物22を測定する毎に、判別パラメーターの変動量を確認し、当該変動量がしきい値を超えているか否か判断する例を示したが、これに限定されない。判別パラメーターの変動量確認、及び当該変動量がしきい値を超えているか否かの判断は、一定量の第二対象物22を測定する毎に、あるいは、ロット毎に実行してもよい。
【0095】
(変形例8)
前記実施形態では、特徴量として、フィッシャー情報量を用いる例を示したが、これに限定されず、特徴量として、測定値をそのまま用いたり、測定値の主成分や機械学習で求めた他の特徴量を用いたりしてもよい。
【0096】
(変形例9)
前記実施形態では、第二対象物22の良否の判別にマハラノビス距離を用いる例を示したが、これに限定されず、第二対象物22の良否の判別には、通常のユークリッド空間距離を用いたり、機械学習法による判別を用いたりしてもよい。
【0097】
(変形例10)
前記実施形態では、本発明を第二対象物22の良否を判別する場合に適用する例を示したが、これに限定されず、本発明は、第二対象物22の種類を判別する場合にも適用できる。
【0098】
(変形例11)
前記実施形態では、第二対象物22の測定値のばらつきを示す値として分散を用いる例を示したが、これに限定されず、例えば、測定値とその平均値との差の絶対値、測定値と平均値との差の高次乗の積の高次乗根の絶対値などでもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…検査システム、10…検査装置、11…測定器、12…制御部、13…記憶部、21,22…対象物、31…特徴量算出部、32…判別部、33…判別結果出力部、34…判別パラメーター更新部、35…判別パラメーター監視部、36…アラート出力部、41…特徴量パラメーター保存部、42…判別パラメーター保存部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6