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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】タービンおよび過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20240521BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F02B39/00 D
F01D25/24 E
F01D25/24 H
F01D25/24 T
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020150599
(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公開番号】P2022045100
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渉
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016123244(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0022830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
F02B 39/00
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼車を収容する収容部と、
前記タービン翼車に対して径方向外側に巻き回され、前記収容部と連通するタービンスクロール流路と、
前記タービンスクロール流路の下流端に面する位置に設けられ、前記タービンスクロール流路を区画し、前記タービン翼車に面する部分において、前記タービン翼車の回転軸方向の少なくとも一方の端部が前記回転軸方向の中央部に対して前記タービン翼車の径方向外側に窪んでいる舌部と、
を備え
前記舌部の前記タービン翼車に面する部分において、前記回転軸方向の中央部は、前記少なくとも一方の端部よりも前記タービン翼車に接近する、
タービン。
【請求項2】
前記舌部の前記タービン翼車に面する部分において、前記回転軸方向の両端部が前記回転軸方向の中央部に対して前記タービン翼車の径方向外側に窪んでおり、前記回転軸方向の中央部は、他の部分よりも前記タービン翼車に接近する、
請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタービンを備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンおよび過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機等に設けられるタービンとして、タービン翼車を収容する収容部と連通するタービンスクロール流路がタービン翼車に対して径方向外側に巻き回されるタービンがある。このようなタービンでは、タービンスクロール流路の下流端に面する位置に舌部が設けられる。例えば、特許文献1には、2つのタービンスクロール流路を備えるダブルスクロール式のタービンが開示されている。ダブルスクロール式のタービンでは、2つのタービンスクロール流路の間に、2つの舌部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-132996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
舌部とタービン翼車との距離(隙間)が大きいほど、排気ガスがタービン翼車に送られずにタービンスクロール流路へ漏れる流れが生じやすくなる。一方、舌部とタービン翼車との距離が小さいほど、タービン翼車に働く励振力が大きくなり、翼振動が増大しやすくなる。ゆえに、従来のタービンでは、タービン翼車の翼振動の低減と、排気ガスの漏れ流れの抑制とを両立させることが困難であった。
【0005】
本開示の目的は、タービン翼車の翼振動を低減しつつ、排気ガスの漏れ流れを抑制することが可能なタービンおよび過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のタービンは、タービン翼車を収容する収容部と、タービン翼車に対して径方向外側に巻き回され、収容部と連通するタービンスクロール流路と、タービンスクロール流路の下流端に面する位置に設けられ、タービンスクロール流路を区画し、タービン翼車に面する部分において、タービン翼車の回転軸方向の少なくとも一方の端部が回転軸方向の中央部に対してタービン翼車の径方向外側に窪んでいる舌部と、を備え、舌部のタービン翼車に面する部分において、回転軸方向の中央部は、少なくとも一方の端部よりもタービン翼車に接近する
【0007】
舌部のタービン翼車に面する部分において、回転軸方向の両端部が回転軸方向の中央部に対してタービン翼車の径方向外側に窪んでおり、回転軸方向の中央部は、他の部分よりもタービン翼車に接近してもよい。
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の過給機は、上記のタービンを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、タービン翼車の翼振動を低減しつつ、排気ガスの漏れ流れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施形態の過給機を示す概略断面図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、図2のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、本開示の実施形態の過給機TCを示す概略断面図である。以下では、図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。図1に示されるように、過給機TCは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング3と、タービンハウジング5と、コンプレッサハウジング7とを備える。タービンハウジング5は、ベアリングハウジング3の左側に締結ボルト9によって連結される。コンプレッサハウジング7は、ベアリングハウジング3の右側に締結ボルト11によって連結される。過給機TCは、タービンTおよび遠心圧縮機Cを備える。タービンTは、ベアリングハウジング3およびタービンハウジング5を含む。タービンTは、ダブルスクロール式のタービンである。遠心圧縮機Cは、ベアリングハウジング3およびコンプレッサハウジング7を含む。
【0013】
ベアリングハウジング3には、軸受孔3aが形成される。軸受孔3aは、過給機TCの左右方向に貫通する。軸受孔3aには、セミフローティング軸受13が配される。セミフローティング軸受13は、シャフト15を回転自在に軸支する。シャフト15の左端部には、タービン翼車17が設けられる。タービン翼車17は、タービンハウジング5に回転自在に収容されている。シャフト15の右端部には、コンプレッサインペラ19が設けられる。コンプレッサインペラ19は、コンプレッサハウジング7に回転自在に収容されている。シャフト15の軸方向が、過給機TCの軸方向(つまり、左右方向)である。以下、過給機TCの軸方向、径方向および周方向(つまり、タービン翼車17の軸方向、径方向および周方向)を、それぞれ単に軸方向、径方向および周方向と呼ぶ。
【0014】
コンプレッサハウジング7には、吸気口21が形成される。吸気口21は、過給機TCの右側に開口する。吸気口21は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング7の対向面によって、ディフューザ流路23が形成される。ディフューザ流路23は、空気を昇圧する。ディフューザ流路23は、環状に形成される。ディフューザ流路23は、径方向内側において、コンプレッサインペラ19を介して吸気口21に連通している。
【0015】
また、コンプレッサハウジング7には、コンプレッサスクロール流路25が形成される。コンプレッサスクロール流路25は、環状に形成される。コンプレッサスクロール流路25は、例えば、ディフューザ流路23よりも径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路25は、不図示のエンジンの吸気口と、ディフューザ流路23とに連通している。コンプレッサインペラ19が回転すると、吸気口21からコンプレッサハウジング7内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ19の翼間を流通する過程において加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路23およびコンプレッサスクロール流路25で昇圧される。昇圧された空気は、エンジンの吸気口に導かれる。
【0016】
タービンハウジング5には、排出流路27と、収容部29と、排気流路31とが形成される。排出流路27は、過給機TCの左側に開口する。排出流路27は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。排出流路27は、収容部29と連通する。排出流路27は、収容部29に対して、軸方向に連続する。収容部29は、タービン翼車17を収容する。収容部29の径方向外側には、排気流路31が形成される。排気流路31は、不図示のエンジンの排気マニホールドと連通する。不図示のエンジンの排気マニホールドから排出された排気ガスは、排気流路31および収容部29を介して排出流路27に導かれる。排出流路27に導かれる排気ガスは、流通過程においてタービン翼車17を回転させる。
【0017】
タービン翼車17の回転力は、シャフト15を介してコンプレッサインペラ19に伝達される。コンプレッサインペラ19が回転すると、上記のとおりに空気が昇圧される。こうして、空気がエンジンの吸気口に導かれる。
【0018】
図2は、図1のA-A断面図である。図2では、タービン翼車17について、外周のみを円で示す。図2に示すように、排気流路31は、排気導入口33と、排気導入路35と、タービンスクロール流路37と、スクロール出口39とを備える。
【0019】
排気導入口33は、タービンハウジング5の外部に開口する。排気導入口33には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導入される。
【0020】
排気導入路35は、排気導入口33とタービンスクロール流路37とを接続する。排気導入路35は、例えば、直線状に形成される。排気導入路35は、排気導入口33から導入された排気ガスをタービンスクロール流路37に導く。
【0021】
タービンスクロール流路37は、スクロール出口39を介して収容部29と連通する。タービンスクロール流路37は、排気導入路35から導入された排気ガスを、スクロール出口39を介して収容部29に導く。
【0022】
タービンハウジング5には、仕切板41が形成される。仕切板41は、排気流路31内(具体的には、排気導入口33、排気導入路35、および、タービンスクロール流路37内)に配される。仕切板41は、排気流路31をタービン翼車17の周方向に仕切る。仕切板41は、排気導入口33、排気導入路35、および、タービンスクロール流路37の内面に対して、軸方向に接続される。仕切板41は、排気流路31に沿って延在する。つまり、仕切板41は、排気ガスの流れ方向に沿って延在する。以下、排気ガスの流れ方向の上流側を単に上流側と呼び、排気ガスの流れ方向の下流側を単に下流側と呼ぶ。
【0023】
排気導入口33は、仕切板41により第1排気導入口33aと第2排気導入口33bとに分割される。本実施形態では、第1排気導入口33aは、第2排気導入口33bよりも径方向内側に位置する。
【0024】
排気導入路35は、仕切板41により第1排気導入路35aと、第2排気導入路35bとに分割される。本実施形態では、第1排気導入路35aは、第2排気導入路35bよりも径方向内側に位置する。第1排気導入路35aは、第1排気導入口33aと連通する。第2排気導入路35bは、第2排気導入口33bと連通する。
【0025】
タービンスクロール流路37は、仕切板41により第1タービンスクロール流路37aと、第2タービンスクロール流路37bとに分割される。本実施形態では、第1タービンスクロール流路37aは、第2タービンスクロール流路37bよりも径方向内側に位置する。第1タービンスクロール流路37aは、第1排気導入路35aと連通する。第2タービンスクロール流路37bは、第2排気導入路35bと連通する。第1タービンスクロール流路37aおよび第2タービンスクロール流路37bは、タービン翼車17に対して径方向外側に巻き回される。第1タービンスクロール流路37aおよび第2タービンスクロール流路37bは、タービン翼車17の回転方向RDに進むにつれてタービン翼車17に近づくように、巻き回される。各タービンスクロール流路37の径方向の幅は、上流側から下流側に向かうにつれて小さくなる。
【0026】
第1タービンスクロール流路37aおよび第2タービンスクロール流路37bは、タービン翼車17の周方向の互いに異なる位置で収容部29とそれぞれ連通する。第1タービンスクロール流路37aは、第1スクロール出口39aを介して収容部29と連通する。第2タービンスクロール流路37bは、第2スクロール出口39bを介して収容部29と連通する。
【0027】
第1スクロール出口39aおよび第2スクロール出口39bは、周方向に沿って形成される。具体的には、第1スクロール出口39aは、収容部29の一側の半周(具体的には、図2中の左側の半周)に亘って収容部29と連通される。第2スクロール出口39bは、収容部29の他側の半周(具体的には、図2中の右側の半周)に亘って収容部29と連通される。第1スクロール出口39aおよび第2スクロール出口39bは、タービン翼車17を挟んで径方向に対向している。
【0028】
タービンハウジング5には、第1舌部43aと、第2舌部43bとが形成される。なお、以下では、第1舌部43aおよび第2舌部43bを特に区別しない場合、単に舌部43とも呼ぶ。各舌部43は、第1タービンスクロール流路37aと第2タービンスクロール流路37bとを区画する。また、各舌部43は、第1スクロール出口39aと第2スクロール出口39bとを区画する。
【0029】
第1舌部43aは、第1タービンスクロール流路37aの下流端に面する位置に設けられる。第1舌部43aは、仕切板41の下流側の端部に形成される。第1舌部43aは、第1タービンスクロール流路37aと第2タービンスクロール流路37bとを区画する。また、第1舌部43aは、第1スクロール出口39aの下流端と第2スクロール出口39bの上流端とを区画する。
【0030】
第2舌部43bは、第2タービンスクロール流路37bの下流端に面する位置に設けられる。第2舌部43bは、第2タービンスクロール流路37bと第1タービンスクロール流路37aとを区画する。また、第2舌部43bは、第2スクロール出口39bの下流端と第1スクロール出口39aの上流端とを区画する。
【0031】
第1舌部43aと第2舌部43bとは、タービン翼車17の周方向に等間隔に配置されている。つまり、第1舌部43aの周方向位置は、第2舌部43bの周方向位置に対して、180°ずれている。ただし、第1舌部43aと第2舌部43bとは、タービン翼車17の周方向に不等間隔に配置されていてもよい。つまり、第1舌部43aの周方向位置は、第2舌部43bの周方向位置に対して、180°と異なる角度でずれていてもよい。
【0032】
不図示のエンジンの排気マニホールドは、2以上の複数の分割路を備える。複数の分割路のうちの一部の分割路は、第1排気導入口33aに接続される。複数の分割路のうちの他の分割路は、第2排気導入口33bに接続される。不図示のエンジンから排出される排気ガスは、分割路を流通し、第1排気導入口33aまたは第2排気導入口33bに導入される。一方の排気導入口33に排気ガスが導入されるタイミングでは、基本的に、他方の排気導入口33には排気ガスが導入されない。第1排気導入口33aへの排気ガスの導入と、第2排気導入口33bへの排気ガスの導入とが、交互に繰り返される。
【0033】
第1排気導入口33aへ導入された排気ガスは、第1排気導入路35aおよび第1タービンスクロール流路37aを通って、第1スクロール出口39aから収容部29に流れる。第2排気導入口33bへ導入された排気ガスは、第2排気導入路35bおよび第2タービンスクロール流路37bを通って、第2スクロール出口39bから収容部29に流れる。一方のタービンスクロール流路37に排気ガスが流れるタイミングでは、基本的に、他方のタービンスクロール流路37には排気ガスが流れない。ゆえに、第1タービンスクロール流路37aと第2タービンスクロール流路37bとの間で圧力差が生じ、2つのタービンスクロール流路37間での排気ガスの漏れ流れが生じる。上記の漏れ流れでは、排気ガスが、一方のタービンスクロール流路37から他方のタービンスクロール流路37へ、舌部43の近傍を通って漏れ流れる。排気ガスの漏れ流れは、タービンTの性能および過給機TCと接続されるエンジンの性能を低下させる要因となる。
【0034】
ここで、舌部43とタービン翼車17との距離(具体的には、後述するタービン翼車17の翼体17bが舌部43に最も接近したときの、舌部43と後述する翼体17bのリーディングエッジE1との距離)が大きいほど、排気ガスの漏れ流れが生じやすくなる。ゆえに、舌部43とタービン翼車17との距離を小さくすることによって、排気ガスの漏れ流れが抑制される。しかしながら、舌部43とタービン翼車17との距離が小さいほど、タービン翼車17に働く励振力が大きくなり、翼振動が増大しやすくなる。本実施形態のタービンTでは、舌部43のタービン翼車17に面する部分の形状を工夫することによって、タービン翼車17の翼振動の低減と、排気ガスの漏れ流れの抑制とが両立される。
【0035】
図3は、図2のB-B断面図(具体的には、第1舌部43aを通りタービン翼車17の回転軸を含む断面における断面図)である。図3には、第1舌部43aのタービン翼車17に面する部分の形状が示されている。なお、第2舌部43bのタービン翼車17に面する部分の形状については、第1舌部43aのタービン翼車17に面する部分の形状と同様であるので、図示を省略する。
【0036】
タービン翼車17は、ハブ17aと、複数の翼体17bとを有する。ハブ17aは、シャフト15の左端部と接続されている。ハブ17aの外径は、過給機TCの左側に向かうほど小さくなる。ハブ17aの外周面に複数の翼体17bが設けられる。複数の翼体17bは、周方向に間隔を空けて設けられる。各翼体17bは、ハブ17aの外周面から径方向外側に延びて形成される。翼体17bの外周縁は、リーディングエッジE1、トレーリングエッジE2および中間縁部E3を含む。
【0037】
リーディングエッジE1は、翼体17bにおける排気ガスの流れ方向の上流側の縁部である。リーディングエッジE1は、翼体17bにおける排気流路31側の縁部である。リーディングエッジE1には、排気流路31からの排気ガスが流入する。リーディングエッジE1は、翼体17bの右端側に形成される。リーディングエッジE1は、タービン翼車17の回転軸と平行に延びている。
【0038】
トレーリングエッジE2は、翼体17bにおける排気ガスの流れ方向の下流側の縁部である。トレーリングエッジE2は、翼体17bにおける排出流路27側の縁部である。トレーリングエッジE2から排出流路27に向けて排気ガスが流出する。トレーリングエッジE2は、翼体17bの左端側に形成される。トレーリングエッジE2は、周方向にねじれながら径方向に延びている。
【0039】
中間縁部E3は、リーディングエッジE1とトレーリングエッジE2の間に亘って形成される。中間縁部E3は、タービンハウジング5のうち収容部29を画成するシュラウド部29aに沿って延びている。
【0040】
舌部43は、タービン翼車17の翼体17bのリーディングエッジE1の径方向外側に配置されている。図3では、舌部43のタービン翼車17に面する部分(具体的には、リーディングエッジE1に面する部分)のうち、タービン翼車17の回転軸方向の中央部P1と、当該回転軸方向の両端部P2、P3との形状が示されている。なお、以下では、タービン翼車17の回転軸方向を単に回転軸方向とも呼ぶ。
【0041】
端部P2は、舌部43のタービン翼車17に面する部分のうち排出流路27側の端部(つまり、左端部)である。端部P2の軸方向位置は、リーディングエッジE1の左端部の軸方向位置と一致する。端部P3は、舌部43のタービン翼車17に面する部分のうち排出流路27側と逆側の端部(つまり、右端部)である。端部P3の軸方向位置は、リーディングエッジE1の右端部の軸方向位置と一致する。中央部P1は、舌部43のタービン翼車17に面する部分のうち端部P2と端部P3との間の部分である。中央部P1の軸方向位置は、リーディングエッジE1の中央部の軸方向位置と一致する。
【0042】
舌部43のタービン翼車17に面する部分において、回転軸方向の両端部P2、P3は、回転軸方向の中央部P1に対してタービン翼車17の径方向外側に窪んでいる。中央部P1は、タービン翼車17の回転軸と平行に延びている。翼体17bが舌部43に最も接近したときに、両端部P2、P3とリーディングエッジE1との距離(隙間)は、中央部P1とリーディングエッジE1との距離(隙間)よりも大きくなっている。つまり、舌部43は、中央部P1において、タービン翼車17と最も接近する。なお、図3の例では、各端部P2、P3と中央部P1との接続部分が湾曲している。ただし、各端部P2、P3と中央部P1との接続部分は屈曲していてもよい。
【0043】
ここで、タービンスクロール流路37内の排気ガスの流れでは、壁面近傍で境界層が生じ流速が小さくなる。タービンスクロール流路37のうち収容部29と接続される部分の内周側には、スクロール出口39が形成されるので壁面が存在しない。ゆえに、タービンスクロール流路37のうち収容部29と接続される部分では、排気ガスの流速の周方向の成分が、回転軸方向の端側と比べて回転軸方向の中央側で大きくなる。よって、舌部43とタービン翼車17との距離が仮に回転軸方向の位置によらず一定である場合には、舌部43の中央部P1の近傍で排気ガスの漏れ流れが生じやすくなる。
【0044】
上記のように、本実施形態では、舌部43の両端部P2、P3が、舌部43の中央部P1に対してタービン翼車17の径方向外側に窪んでいる。これにより、舌部43の中央部P1が、他の部分よりもタービン翼車17に接近する。ゆえに、タービンスクロール流路37内で排気ガスの流速の周方向の成分が大きくなる回転軸方向の中央側において、舌部43をタービン翼車17に極力接近させ、一方で、タービンスクロール流路37内で排気ガスの流速の周方向の成分が小さくなる回転軸方向の端側において、舌部43をタービン翼車17から離隔させることができる。よって、例えば、舌部43全体を回転軸方向の位置によらずに一律にタービン翼車17に接近させた場合と比べて、タービン翼車17の翼振動の低減と、排気ガスの漏れ流れの抑制とが両立される。
【0045】
ここで、舌部43の中央部P1の回転軸方向の長さL1が長いほど、排気ガスの漏れ流れを抑制する効果が高まる。一方、舌部43の端部P2の回転軸方向の長さL2、および、舌部43の端部P3の回転軸方向の長さL3の合計が長いほど、タービン翼車17の翼振動を低減する効果が高まる。ゆえに、長さL2および長さL3の合計よりも長さL1が長い場合、排気ガスの漏れ流れが効果的に抑制される。一方、長さL1よりも長さL2および長さL3の合計が長い場合、タービン翼車17の翼振動が効果的に抑制される。ただし、長さL1と、長さL2および長さL3の合計とは、略一致していてもよい。
【0046】
図3の例では、端部P2の回転軸方向の長さL2と、端部P3の回転軸方向の長さL3とが略一致しているが、長さL2と長さL3との大小関係は、この例に限定されない。
【0047】
例えば、長さL2は長さL3よりも長くてもよい。この場合、リーディングエッジE1のシュラウド側(シュラウド部29a側)において、リーディングエッジE1と舌部43との距離が大きい領域が広くなるので、リーディングエッジE1のうちシュラウド側の部分に働く励振力が小さくなる。そのため、この部分で振動変位が大きくなる振動モードに対して、振動応答を抑制できる。
【0048】
例えば、長さL3は長さL2よりも長くてもよい。ここで、リーディングエッジE1のハブ側(つまり、シュラウド側と逆側)の部分の付近で剥離渦が生じることがあるが、この剥離渦はリーディングエッジE1のシュラウド側の部分の付近での流れ場を変動させ、この部分で振動変位が大きくなる振動モードに対して励振源となることがある。長さL3が長さL2よりも長い場合、リーディングエッジE1のハブ側において、リーディングエッジE1と舌部43との距離が大きい領域が広くなるので、リーディングエッジE1のハブ側の部分での流れ場の変動が小さくなり、剥離渦の変動も小さくなる。そのため、リーディングエッジE1のシュラウド側の部分で振動変位が大きくなる振動モードに対して振動応答を抑制できる場合がある。
【0049】
上記では、舌部43において、両端部P2、P3が中央部P1に対して径方向外側に窪んでいる例を説明したが、端部P2、P3の少なくとも一方が中央部P1に対して径方向外側に窪んでいればよい。例えば、端部P2、P3のうち左側の端部P2のみが中央部P1に対して径方向外側に窪んでいてもよい。例えば、端部P2、P3のうち右側の端部P3のみが中央部P1に対して径方向外側に窪んでいてもよい。これらの場合にも、上記と同様の効果が奏される。ただし、タービン翼車17の翼振動の低減と、排気ガスの漏れ流れの抑制とを効果的に両立する観点では、両端部P2、P3が中央部P1に対して径方向外側に窪んでいることが好ましい。
【0050】
上記では、中央部P1のいずれの部分も両端部P2、P3に対して径方向内側に位置している。ただし、中央部P1の一部が端部P2または端部P3に対して径方向外側に位置していてもよい。
【0051】
上記では、タービン翼車17がラジアル式(つまり、リーディングエッジE1がタービン翼車17の回転軸と平行に延びているタイプ)である例を説明したが、リーディングエッジE1の形状は上記の例に限定されない。例えば、タービン翼車17は斜流式(つまり、リーディングエッジE1が排出流路27側に向かうにつれて径方向外側に傾斜するタイプ)であってもよい。また、タービン翼車17が斜流式である場合、舌部43の中央部P1は、リーディングエッジE1に沿って延びていてもよい。つまり、中央部P1は、排出流路27側に向かうにつれて径方向外側に傾斜してもよい。
【0052】
上記では、第1舌部43aと第2舌部43bとの間でタービン翼車17に面する部分の形状が共通である例を説明したが、第1舌部43aと第2舌部43bとの間でタービン翼車17に面する部分の形状が異なっていてもよい。例えば、第1舌部43aおよび第2舌部43bのうちの一方において、いずれの端部P2、P3も中央部P1に対して径方向外側に窪んでいなくてもよい。
【0053】
上記では、タービンTがダブルスクロール式である例を説明したが、タービンTのタイプは上記の例に限定されない。例えば、タービンTに設けられるタービンスクロール流路37の数は1つであってもよい。この場合、タービンTに設けられる舌部43の数は1つとなる。例えば、タービンTは、軸方向に並んで配置される2つのタービンスクロール流路37を備えるツインスクロール式であってもよい。ただし、タービンTがダブルスクロール式である場合、排気ガスの漏れ流れを抑制することが特に重要となる。ゆえに、舌部43のタービン翼車17に面する部分の形状を上記のように工夫することが特に有効となる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
上記では、タービンTが過給機TCに搭載される例を説明したが、タービンTは、過給機TC以外の装置(例えば、発電機等)に搭載されてもよい。
【0056】
上記では、第1排気導入口33a、第1排気導入路35aおよび第1タービンスクロール流路37aと、第2排気導入口33b、第2排気導入路35bおよび第2タービンスクロール流路37bとが径方向に並んで形成される例を説明したが、排気流路31における各構成要素間の位置関係は、この例に限定されない。例えば、第1排気導入口33a、第1排気導入路35aおよび第1タービンスクロール流路37aと、第2排気導入口33b、第2排気導入路35bおよび第2タービンスクロール流路37bとが、部分的に軸方向に並んで形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示は、タービンおよび過給機に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
17 タービン翼車
29 収容部
37 タービンスクロール流路
37a 第1タービンスクロール流路
37b 第2タービンスクロール流路
43 舌部
43a 第1舌部
43b 第2舌部
P1 中央部
P2 端部
P3 端部
R 矢印
T タービン
TC 過給機
図1
図2
図3