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  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置 図1
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
G02B27/01
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020155196
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049138
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】河村 健
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-113172(JP,A)
【文献】特開2009-251004(JP,A)
【文献】特開昭64-038718(JP,A)
【文献】特開2016-012108(JP,A)
【文献】特開2011-197351(JP,A)
【文献】特開平07-084511(JP,A)
【文献】特開平11-271536(JP,A)
【文献】米国特許第09804482(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
G02B 5/18,5/32
B60K 35/00-37/06
B60R 11/02
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの前方正面に設置された虚像表示部に対して前記ユーザが知覚する虚像を投 影するヘッドアップディスプレイ装置であって、
表示光を出射する表示光出射部と、
前記表示光を反射して反射光を出射する表示光反射部と、を備え
前記表示光反射部は、凹面状の鏡部と、前記鏡部の表面に設けられた透過型体積ホ ログラム部と、を有し
前記透過型体積ホログラム部は、前記表示光出射部が出射する前記表示光の方向を 変える角度が、前記表示光を受ける領域ごとに設定されている、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記表示光反射部は、前記表示光出射部から前記透過型体積ホログラム部を介して 前記鏡部に入射する前記表示部の入射角が、前記透過型体積ホログラム部を介さない 場合に比べて小さくなるように設定されている
請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の移動体において、ウィンドシールドにユーザ向けの情報を表示するヘッドアップディスプレイ装置が普及しつつある。一般に、ヘッドアップディスプレイ装置は、映像光を凹面鏡により拡大および反射し、拡大及び反射された映像光をコンバイナまたはウィンドシールドに投影する。これにより、ヘッドアップディスプレイ装置は、運転者等のユーザの視覚に虚像を認識させる。
【0003】
ヘッドアップディスプレイ装置の表示範囲を大きくするための提案が行われている。例えば特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、発光表示手段からの情報を含む光が第1のホログラムにより拡大されて回折され、さらに第2のホログラムにより第2の回折像が拡大されて回折されて、コンバイナで運転者の観測位置に向けて反射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-285357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、反射部品が増加することに伴い、装置全体の体積が増加する。また装置の大型化を抑制するために凹面鏡の拡大率を大きくすると、それに伴いレンズ収差が増大する。これにより、ユーザが認識する虚像が歪んだり、虚像のフォーカスが合わなくなったりする虞がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、装置の大型化を抑制しつつ、好適な画像を表示するヘッドアップディスプレイ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるヘッドアップディスプレイ装置は、ユーザの前方正面に設置された虚像表示部に対してユーザが知覚する虚像を投影する。ヘッドアップディスプレイ装置は、表示光出射部と、表示光反射部とを有する。表示光出射部は、表示光を出射する。表示光反射部は、表示光を反射して反射光を出射する。表示光反射部は、凹面状の鏡部と、前記鏡部の表面に設けられた透過型体積ホログラム部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置の大型化を抑制しつつ、好適な画像を表示するヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置の構成を示した模式図である。
図2】ヘッドアップディスプレイ装置における表示光反射部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
<実施の形態>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置は、ユーザの前方正面に設置された虚像表示部に対してユーザが知覚する虚像を投影する装置である。より具体的には、本実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置は、自動車に搭載されるものであって、自動車のウィンドシールドを虚像表示部として、ウィンドシールドに所定の情報を含んだ虚像を投影する。これにより、ヘッドアップディスプレイ装置は、ユーザである運転者に対して情報を表示する。
【0012】
図1を参照しながら実施の形態1にかかるヘッドアップディスプレイ装置の構成について説明する。図1は、実施の形態1にかかるヘッドアップディスプレイ装置の構成を示した模式図である。図は、自動車900、自動車900のユーザUおよびヘッドアップディスプレイ装置10を自動車900の側面方向から模式的に示したものである。
【0013】
ヘッドアップディスプレイ装置10は、自動車900のダッシュボード内に格納されている。ヘッドアップディスプレイ装置10は主な構成として、表示光出射部110および表示光反射部120を有している。
【0014】
表示光出射部110は、表示光を生成し、生成した表示光を表示光反射部120に出射する。表示光出射部110は主な構成として、光源生成部111および表示光生成部112を有している。
【0015】
光源生成部111は、例えばLED(light-emitting diode)や半導体レーザなど所定の光を生成する光源である。光源生成部111は、生成した光を表示光生成部112に照射する。
【0016】
表示光生成部112は、例えば透過型液晶パネルを含む。表示光生成部112は、光源生成部111が生成した光を透過型液晶パネルに受けると、液晶パネルに表示した情報を含んだ表示光を生成する。すなわち表示光生成部112は、光源生成部111から受けた光を透過することにより表示光L10を生成し、生成した表示光L10を出射する。
【0017】
表示光反射部120は、表示光出射部110から表示光L10を受け、受けた表示光L10を予め設定された角度に反射して、反射光L11をウィンドシールドWSに出射する。表示光反射部120が出射した反射光L11は、自動車900のダッシュボードにおける透光板901を介してウィンドシールドWSに投影される。表示光反射部120は主な構成として、鏡部121および透過型体積ホログラム部122を有する。
【0018】
鏡部121は、凹面状に形成された凹面鏡である。鏡部121は、例えばガラス基板の表面に反射率の高い金属の蒸着が施されたものである。鏡部121は、非球面であってもよいし、球面であってもよい。鏡部121は、透過型体積ホログラム部122を介して表示光L10を受け、受けた表示光L10を反射する。
【0019】
透過型体積ホログラム部122は、鏡部121の表面に形成された体積ホログラムである。透過型体積ホログラム部122は、表示光L10を屈折または回折させるように設定されている。これにより、透過型体積ホログラム部122は、直進してきた表示光L10を予め設定された方向に変える。透過型体積ホログラム部122は、表示光L10を受けると、受けた表示光L10の方向を変えて、方向を変えた光を鏡部121に導く。
【0020】
透過型体積ホログラム部122は、鏡部121の表面にコーティング処理されるなどの方法により直接形成されてもよい。透過型体積ホログラム部122は、フィルム上に形成されたものであって、隙間なく鏡部121に接合されるものであってもよい。
【0021】
上述の構成により、表示光反射部120は、表示光出射部110から受けた表示光L10の方向を変えたうえで反射して、反射光L20をウィンドシールドWSに出射する。
【0022】
次に、図2を参照して、表示光反射部120の詳細について説明する。図2は、ヘッドアップディスプレイ装置における表示光反射部の拡大図である。図2は、図1に示した表示光反射部120の中央部から下部に亘る部分を拡大して示したものである。図2に示す表示光反射部120には、下部に第1領域120Aが示され、中央部に第2領域120Bが示されている。
【0023】
以下に、第1領域120Aについて説明する。第1領域120Aには、表示光L10を構成する光線L101Aが入射している。第1領域120Aにおいて光線L101Aの表示光反射部120に対する入射角は、角度A10である。角度A10は、第1領域120Aにおける鏡部121の垂線P1を基準として、垂線P1と光線L101Aとが成す角度である。
【0024】
光線L101Aは、入射角である角度A10の方向から、透過型体積ホログラム部122に入射する。透過型体積ホログラム部122は、光線L101Aを受けると、光線L101Aを回折させることにより、光線L101Aの方向を変えて、回折光である光線L101Bを生成する。回折光である光線L101Bと垂線P1とが成す角度(回折角)は、角度A10に比べて小さい角度A11である。
【0025】
そのため、第1領域120Aにおいて、鏡部121に対する光線L101Bの入射角は、表示光反射部120に対する光線L101Aの入射角である角度A10より小さい角度A11となる。そのため、鏡部121が光線L101Aを反射することにより生成する反射光線L111は、反射角が角度A11となる。
【0026】
表示光反射部120は、透過型体積ホログラム部122を介して鏡部121に入射する光線L101Aの入射角が、角度A11に設定されている。角度A11は、透過型体積ホログラム部122を介さないで鏡部121に入射する場合における光線L101Aの入射角である角度A10より小さい。
【0027】
このように、鏡部121の表面に透過型体積ホログラム部122を設けることにより、ヘッドアップディスプレイ装置10は、凹面鏡へ入射する光線の入射角を小さくすることができる。そのため、ヘッドアップディスプレイ装置10は、凹面鏡により生じる収差を抑えることができる。
【0028】
次に、第2領域120Bについて説明する。第2領域120Bには、表示光L10を構成する光線L102Aが入射している。第2領域120Bにおいて光線L102Aの表示光反射部120に対する入射角は、角度A20である。角度A20は、第2領域120Bにおける鏡部121の垂線P2を基準として、垂線P2と光線L102Aとが成す角度である。
【0029】
光線L102Aは、入射角である角度A20の方向から、透過型体積ホログラム部122に入射する。透過型体積ホログラム部122は、光線L102Aを受けると、光線L102Aを回折させることにより、光線L102Aの方向を変えて、回折光である光線L102Bを生成する。回折光である光線L102Bと垂線P2とが成す角度(回折角)は、角度A20に比べて小さい角度A21である。
【0030】
そのため、第2領域120Bにおいて、鏡部121に対する光線L102Bの入射角は、表示光反射部120に対する光線L102Aの入射角である角度A20より小さい角度A21となる。そのため、鏡部121が光線L102Aを反射することにより生成する反射光線L112は、反射角が角度A21となる。
【0031】
表示光反射部120は、透過型体積ホログラム部122を介して鏡部121に入射する光線L102Aの入射角が、角度A21に設定されている。角度A21は、透過型体積ホログラム部122を介さないで鏡部121に入射する光線L102Aの入射角である角度A20より小さい。
【0032】
以上、表示光反射部120の詳細について説明した。透過型体積ホログラム部122は、第1領域120Aにおいて、角度A10から入射する光線L101Aの方向を、角度A11に変えるように設定されている。透過型体積ホログラム部122は、第2領域120Bにおいて、角度A20から入射する光線L102Aの方向を、角度A21に変えるように設定されている。このように、表示光反射部120において、透過型体積ホログラム部122は、表示光の方向を変える角度が、表示光を受ける領域ごとに設定されている。また透過型体積ホログラム部122に設定する表示光の入射角度は、ヘッドアップディスプレイ装置10を搭載する場所の制約、表示光出射部100と表示光反射部120の位置関係によって、表示光を受ける領域ごとに決まる。
【0033】
上述のヘッドアップディスプレイ装置10は、透過型体積ホログラム部122と鏡部121との組み合わせにより、鏡部121の曲率を抑えることができる。そのため、鏡部121において生じる収差を制御できる。また、上述の構成により、ヘッドアップディスプレイ装置10は、表示する虚像の歪を抑えることができる。そのため、ヘッドアップディスプレイ装置10は、虚像面を大きくすることができる。
【0034】
以上、実施の形態について説明したが、実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置10は、上述の構成に限られない。ヘッドアップディスプレイ装置10における表示光出射部110は、赤、緑、青のそれぞれのレーザ光を光源として有していてもよい。また表示光出射部110は、表示光生成部112において、透過型液晶パネルに代えて、反射型の液晶パネル、LCOS(Liquid crystal on silicon)、または、走査型マイクロミラーを有してもよい。実施の形態によれば、装置の大型化を抑制しつつ、好適な画像を表示するヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば上述のヘッドアップディスプレイ装置は、自動車ではない移動体、例えば航空機や船舶にも適用することができる。また上述のヘッドアップディスプレイ装置は、移動体に限らず、自動車の運転模擬装置、飛行機のフライトシミュレータ、ゲーム機器等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 ヘッドアップディスプレイ装置
110 表示光出射部
111 光源生成部
112 表示光生成部
120 表示光反射部
121 鏡部
122 透過型体積ホログラム部
900 自動車
901 透光板
L10 表示光
L11 反射光
U ユーザ
V101 虚像
WS ウィンドシールド
図1
図2