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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】反射型液晶表示素子及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1335 20060101AFI20240521BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240521BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240521BHJP
   G09F 9/35 20060101ALI20240521BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G02F1/1335
G02F1/13 505
G03B21/00 E
G09F9/35
G09F9/30 349Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020158594
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052295
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古屋 正人
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-174427(JP,A)
【文献】特開2007-090656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0255042(US,A1)
【文献】特開2011-215440(JP,A)
【文献】特開2006-201426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335
G02F 1/13
G03B 21/00
G09F 9/35
G09F 9/30
G02B 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光を反射する反射型液晶表示素子であって、
平板状の第1部材と、
積層方向で前記第1部材と対向して設けられ、前記第1部材と前記光の屈折率が異なる平板状の第2部材と、
前記積層方向で前記第1部材と前記第2部材との間に設けられて、第1中間部材と、前記第1中間部材よりも前記第2部材側で前記第1中間部材と接する第2中間部材と、を有する中間層と、
を備え、
前記第1中間部材は、前記積層方向と交差する平面方向における凹凸のピッチが前記光の波長以下であり、前記光の屈折率が前記第1部材と同じ部材で構成される第1微細構造を含み、
前記第2中間部材は、前記積層方向と交差する平面方向における凹凸のピッチが前記光の波長以下であり、前記光の屈折率が前記第2部材と同じ部材で構成される第2微細構造を含
前記第1部材と前記第1中間部材は異なる材料であり、前記第1中間部材は前記第1微細構造のみで構成されている、
反射型液晶表示素子。
【請求項2】
前記中間層は、前記積層方向に直交する方向に沿う断面において前記第1微細構造が占める面積が、前記第1部材側に向かうに従って大きくなり、前記積層方向に直交する方向に沿う断面において前記第2微細構造が占める面積が、前記第2部材側に向かうに従って大きく構成されている、請求項1に記載の反射型液晶表示素子。
【請求項3】
前記第1微細構造は、前記第2部材側に向かうに従う断面を先細に形成され、
前記第2微細構造は、前記第1部材側に向かうに従う断面を先細に形成され、
前記中間層は、前記第1微細構造と前記第2微細構造との隙間を互いに埋め合わせて形成されている、
請求項2に記載の反射型液晶表示素子。
【請求項4】
前記第2中間部材は、前記第2微細構造の前記第2部材側に形成されて前記第2部材と接し、前記光の屈折率が前記第2部材と同じ部材で構成される基台を有する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の反射型液晶表示素子。
【請求項5】
前記第1部材が透明電極であり、前記第2部材が配向膜である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の反射型液晶表示素子。
【請求項6】
前記中間層と異なる別の中間層が、前記透明電極と前記透明電極と対向するガラス基板との間に形成されている、請求項5に記載の反射型液晶表示素子。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の反射型液晶表示素子を備える、
液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型液晶表示素子及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透明基板の内側面上に、透明な電極層、配向層及び該透明な電極層より小さくかつ液晶層又は透明基板より大きい屈折率を有する1又は複数の透明な中間層からなる積層構造を備えた技術がある(例えば、特許文献1参照)。これにより、中間層によって、透明電極を透過する光の反射が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-174427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、中間層だけによる透明電極を透過する光の反射の抑制効果は不十分である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、透明電極を透過する光の反射が十分に抑制できる反射型液晶表示素子及び液晶表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る反射型液晶表示素子は、入射した光を反射する反射型液晶表示素子であって、平板状の第1部材と、積層方向で前記第1部材と対向して設けられ、前記第1部材と前記光の屈折率が異なる平板状の第2部材と、前記積層方向で前記第1部材と前記第2部材との間に設けられて、第1中間部材と、前記第1中間部材よりも前記第2部材側で前記第1中間部材と接する第2中間部材と、を有する中間層と、を備え、前記第1中間部材は、前記積層方向と交差する平面方向における凹凸のピッチが前記光の波長以下であり、前記光の屈折率が前記第1部材と同じ部材で構成される第1微細構造を含み、前記第2中間部材は、前記積層方向と交差する平面方向における凹凸のピッチが前記光の波長以下であり、前記光の屈折率が前記第2部材と同じ部材で構成される第2微細構造を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る液晶表示装置は、反射型液晶表示素子を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透明電極を透過する光の反射が十分に抑制できるという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る液晶表示装置を示す概略図である。
図2図2は、実施形態に係る反射型液晶表示素子を示す縦断面図である。
図3図3は、実施形態に係る第1微細構造を示す縦断面図である。
図4図4は、実施形態に係る第2微細構造を示す縦断面図である。
図5図5は、実施形態に係る中間層の厚みと反射率との相関関係を示すグラスである。
図6図6は、実施形態の変形例に係る反射型液晶表示素子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る反射型液晶表示装置の実施形態が詳細に説明されている。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
[実施形態]
<液晶表示装置の全体構成>
図1は、実施形態に係る液晶表示装置100を示す概略図である。図1に示すように、液晶表示装置100は、スクリーンSに、映像、より詳しくは動画像を投射する投射型の画像表示装置である。液晶表示装置100は、発光装置10と、照明光学系12と、反射型液晶表示素子を備える液晶パネル14b、14g、14rと、合成光学系16と、投射光学系18とを有する。
【0012】
発光装置10は、光を発生する光源を有し、光源から発生した光を、入射光L0として、照明光学系12に照射する。実施形態では、発光装置10は、図1の例では便宜的に1つの光源としているが、入射光L0を生成するための他の光学装置を有していてもよい。
【0013】
照明光学系12は、発光装置10からの入射光L0を、第1色光Lbと第2色光Lgと第3色光Lrとに分離する。実施形態における第1色光Lb、第2色光Lg、及び第3色光Lrは、それぞれ照明光を構成する三色の色光のうちの単色成分の光である。具体的には、第1色光Lbは、青色の光であり、第2色光Lgは、緑色の光であり、第3色光Lrは、赤色の光である。第1色光Lb、第2色光Lg、及び第3色光Lrを区別しない場合は、入射光L1と記載する。
【0014】
照明光学系12は、光学素子22、23、24を有する。光学素子22は、発光装置10からの入射光L0を、第1色光Lbと混色光Lgrとに分離する。光学素子22は、分離した第1色光Lbを、光学素子23に供給する。光学素子23は、光学素子22からの第1色光Lbを反射して、液晶パネル14bに供給する。ここで、混色光Lgrは、第2色光Lgと第3色光Lrとの色成分を含む色の光である。光学素子22は、分離した混色光Lgrを、光学素子24に供給する。光学素子24は、光学素子22からの混色光Lgrを、第2色光Lgと第3色光Lrとに分離する。光学素子24は、分離した第2色光Lgを、液晶パネル14gに供給し、分離した第3色光Lrを、液晶パネル14rに供給する。なお、図1に示す照明光学系12の構成は、一例である。照明光学系12は、第1色光Lb、第2色光Lg、及び第3色光Lrを、それぞれ液晶パネル14b、14g、14rに供給する構成であればよい。
【0015】
液晶パネル14bは、光学素子23からの第1色光Lbを液晶素子によって変調して、変調した第1色光Lbを、出射光Lb2として出力する液晶パネルである。液晶パネル14gは、光学素子24からの第2色光Lgを液晶素子によって変調して、変調した第2色光Lgを出射光Lg2として出力する液晶パネルである。液晶パネル14rは、光学素子24からの第3色光Lrを液晶素子によって変調して、変調した第3色光Lrを出射光Lr2として出力する液晶パネルである。以下、液晶パネル14b、14g、14rを区別しない場合は、液晶パネル14と記載する。また、出射光Lb2、Lg2、Lr2を区別しない場合は、出射光L2と記載する。
【0016】
液晶パネル14は、反射型の液晶パネルであり、さらに言えば、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)である。実施形態では、液晶パネル14b、14g、14rは、単色の出射光L2(出射光Lb2、出射光Lg2、及び出射光Lr2のいずれか)を出射する。ただし、液晶パネル14は、1つのパネルで、出射光Lb2、出射光Lg2、及び出射光Lr2の色成分が組み合わさった出射光を出射してもよい。これらの液晶パネル14は、反射型液晶表示素子1をそれぞれ備える。
【0017】
図1に戻り、合成光学系16は、液晶パネル14bからの出射光Lb2と、液晶パネル14gからの出射光Lg2と、液晶パネル14rからの出射光Lr2とを合成して合成光を生成する。実施形態において、合成光学系16は、クロスダイクロイックプリズムを含む。
【0018】
図1に示すように、投射光学系18は、合成光学系16で生成された合成光が入射され、その合成光を、映像として、スクリーンSに投射する。
【0019】
制御装置としての制御部20は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)を有する装置である。制御部20は、入射光L1の液晶パネル14への入射を制御する。実施形態では、制御部20は、発光装置10から照明光学系12への入射光L0を制御することで、液晶パネル14への入射光L1の入射のオンオフを切り替えている。ただし、制御部20は、発光装置10を直接制御せずに、例えば液晶パネル14への入射光L1の入射を遮断するシャッターなどを駆動して、液晶パネル14への入射光L1の入射を制御してもよい。
【0020】
<反射型液晶表示素子1の構造>
図2は、実施形態に係る反射型液晶表示素子1を示す縦断面図である。図2は、液晶パネル14bの構成を例示しているが、液晶パネル14g、14rも同様の構成である。以下の例では、液晶パネル14bに、入射光として第1色光Lbが入射し、出射光として出射光Lb2が出射される場合を説明しているが、液晶パネル14gの場合には、入射光を第2色光Lgとし、出射光を出射光Lg2として言い換えることができ、液晶パネル14bの場合には、入射光を第3色光Lrとし、出射光を出射光Lr2と言い換えることができる。図2に示すように、液晶パネル14bは、複数の反射型液晶表示素子1として、ガラス基板2と、第1部材としての透明電極3と、中間層4と、第2部材としての配向膜5と、液晶層6と、配向膜7と、反射電極8と、シリコンなどの半導体駆動基板9と、が、積層方向Zに沿って積層されている。
【0021】
ガラス基板2は、半導体駆動基板9に対向して設けられる。ガラス基板2は、半導体駆動基板9よりも入射光としての第1色光Lbの入射側に配置されている。ガラス基板2は、積層方向Zにおいて、光を透過する部材で形成されている。
【0022】
透明電極3は、反射電極8との間で電圧を印加される。透明電極3は、表裏面が平らな平板状に形成されている。透明電極3は、積層方向Zにおいて、ガラス基板2の、半導体駆動基板9側の表面に設けられている。透明電極3は、積層方向Zにおいて、複数の反射電極8と対向している。透明電極3は、例えばインジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)やインジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)などの、入射光L1を透過可能な導電性材料で形成されている。なお、本実施形態における「平板状」とは、例えば、表面の平面度が1μm以下を指し、以降でも同様である。
【0023】
反射電極8は、積層方向Zにおいて、半導体駆動基板9の、ガラス基板2側の表面に設けられている。反射電極8は、半導体駆動基板9の表面に複数設けられ、2次元マトリクス状に配列されている。反射電極8は、図示しない制御部の制御により、透明電極3との間に電圧が印加される電極である。すなわち、1つの反射電極8は、1つの画素を構成する。また、反射電極8は、画素電極としての機能の他に第1色光Lbを反射する反射電極を兼ねている。反射電極8は、例えばアルミニウム又は銀製の、光を反射可能な部材で構成されている。
【0024】
液晶層6は、積層方向Zにおいて、ガラス基板2と半導体駆動基板9との間に設けられるスペースであり、内部に図示しない液晶素子が封入されている。液晶素子は、反射電極8と透明電極3との間に電圧が印加されていない場合には、一方向に配向されている。ここでは、液晶素子は、反射電極8と透明電極3との間に電圧が印加されていない場合には、紙面縦方向のZ方向に配向される。Z方向は、ガラス基板2と半導体駆動基板9とが積層されている方向である。液晶素子は、反射電極8と透明電極3との間に電圧が印加されると、反射電極8と透明電極3とによって発生された電界により、配向方向が変化する。ここでは、印加される電圧は一定値である。したがって、液晶素子は、反射電極8と透明電極3との間に電圧が印加されると、Z方向に対し直交する方向である紙面横方向に配向される。ただし、液晶素子の配向方向は、これに限られない。
【0025】
液晶素子は、反射電極8と透明電極3との間に電圧が印加されていない場合には、入射してくる第1色光Lbの偏光状態が変化しないように配向される。この場合には、液晶パネル14bに第1色光Lbが入射されても、第1色光Lbが図示しない偏光分離手段によって遮断され、合成光学系16の方向に射出しない。したがって、液晶パネル14bは、反射電極8と透明電極3との間に電圧が印加されていない場合には、出射光Lb2を出射しない。全ての液晶パネル14b、14g、14rが出射光Lb2を出射しない場合には、画面が黒表示となる。
【0026】
一方、液晶素子は、反射電極8と透明電極3との間に電圧が印加された場合には、入射してくる第1色光Lbの偏光状態が変化するように配向される。液晶パネル14bに入射された第1色光Lbは、液晶層6を透過して、反射電極8に到達する。反射電極8に到達した第1色光Lbは、反射電極8で反射され、再度液晶層6を透過して、出射光Lb2として出射される。液晶パネル14bは、反射電極8と透明電極3との間に電圧が印加された場合に、出射光Lb2の偏光状態は電圧が印加された液晶によって偏光状態が変化しているため、図示しない偏光分離手段によって、合成光学系16の方向に出射され、画面が白表示となる。
【0027】
配向膜5は、積層方向Zにおいて、透明電極3と対向配置された板状部材である。配向膜5は、表裏面が平らな平板状に形成されている。配向膜5は、第1色光Lbの屈折率が、透明電極3とは異なる。配向膜5は、透明電極3と平行に配置されている。配向膜5は、所定面積にわたって液晶素子が一方向にそろって並んでいる状態が必要な場合に、液晶素子の配向を制御する。配向膜7は、配向膜5と同様な構成である。
【0028】
中間層4は、積層方向Zにおいて、透明電極3と配向膜5との間に配置されている。中間層4は、実施形態では絶縁体で構成されている。中間層4は、第1色光Lbを透過する。
【0029】
中間層4は、第1中間部材4aと、第2中間部材4bと、を備える。第1中間部材4aは、第1部材としての透明電極3に接触するように設けられる。第2中間部材4bは、積層方向Zにおいて第1中間部材4aよりも配向膜5側に配置されて、第2部材としての配向膜5に接触するように設けられる。第2中間部材4bは、第1中間部材4aとも接触するように設けられる。
【0030】
第1中間部材4aは、第1色光Lbの屈折率が、第1部材としての透明電極3と同じ部材で構成される。第1中間部材4aを構成する部材は、例えば、窒化シリコン(Si)などであってよい。実施形態において、第1色光Lbの屈折率が等しいとは、厳密に等しいことに限られず、例えば、屈折率の差分が0.2の範囲内であることも含まれ、さらに好ましくは屈折率の差分が0.1の範囲内であることも含まれ、以降でも同様である。
【0031】
第1中間部材4aは、第1微細構造41を含む。従って、第1微細構造41は、第1色光Lbの屈折率が第1部材としての透明電極3と同じ部材で構成されているといえる。
【0032】
図3は、実施形態に係る第1微細構造41を示す縦断面図である。図3に示すように、第1中間部材4aは、第1微細構造41を含む。第1微細構造41は、積層方向Zにおいて、配向膜5側に向かうに従って先細となる、複数の突起部41Aで構成されている。突起部41Aは、任意の形状であってよいが、例えば、四角錐形状、円錐形状、釣鐘型などであってよい。突起部41Aは、積層方向Zに交差する平面において、すなわち透明電極3の表面に沿った平面において、マトリクス状に複数設けられている。第1微細構造41の高さh1は、任意の高さであってよい。第1微細構造41の高さh1は、第1微細構造41の積層方向Zに沿った長さを指し、突起部41Aの積層方向Zに沿った長さであるともいえる。また、隣り合う突起部41A同士の積層方向と交差する平面方向における凹凸のピッチP1は、第1色光Lbの波長以下の長さとなっている。ピッチP1とは、隣り合う突起部41Aの中心線間の距離を指す。このような波長オーダ以下のピッチP1を有する微細構造41を適用することで、散乱や回折などによる光のロスを極力低減することができる。
【0033】
第2中間部材4bは、第1色光Lbの屈折率が第2部材としての配向膜5と同じ部材で構成される。第2中間部材4bを構成する部材は、例えば、配向膜5と同じ部材であることが好ましく、例えばSiOであってよい。
【0034】
図2に示すように、第2中間部材4bは、第2微細構造42と、基台43とを含む。従って、第2微細構造42及び基台43は、第1色光Lbの屈折率が第2部材としての配向膜5と同じ部材で構成されているといえる。基台43は、積層方向Zにおいて配向膜5側に形成されており、配向膜5と接触する。基台43は、例えば平板状であってよい。第2微細構造42は、基台43の、積層方向Zにおいて透明電極3側に設けられている。より詳しくは、第2微細構造42は、基台43の透明電極3側の表面に形成されている。すなわち、第2微細構造42は、基台43の透明電極3側の表面から、透明電極3側に向けて突出して形成されている。
【0035】
図4は、実施形態に係る第2微細構造42を示す縦断面図である。図4に示すように、第2微細構造42は、積層方向Zにおいて、透明電極3側に向かうに従って先細となる、複数の突起部42Aで構成されている。突起部42Aは、任意の形状であってよいが、例えば、四角錐形状、円錐形状、釣鐘型などであってよい。突起部42Aは、積層方向Zに交差する平面において、すなわち基台43の表面において、マトリクス状に複数設けられている。第2微細構造42の高さh2は、任意の高さであってよい。第2微細構造42の高さh2は、第2微細構造42の積層方向Zに沿った長さを指し、突起部42Aの積層方向Zに沿った長さであるともいえる。また、隣り合う突起部42A同士の積層方向と交差する平面方向における凹凸のピッチP2は、第1色光Lbの波長以下の長さとなっている。ピッチP2とは、隣り合う突起部42Aの中心線間の距離を指す。このような波長オーダ以下のピッチP2を有する微細構造42を適用することで、散乱や回折などによる光のロスを極力低減することができる。
【0036】
なお、図3の例では、第1微細構造41は、第2微細構造42のような基台43を含んでいないが、第1微細構造41も基台を含んでよい。この場合、第1微細構造41の基台も、第1色光Lbの屈折率が第1部材としての透明電極3と同じ部材で構成される。そして、第1微細構造41の基台は、積層方向Zにおいて透明電極3側に形成されており、透明電極3と接触する。基台は、例えば平板状であってよい。第1微細構造41は、基台の、積層方向Zにおいて配向膜5側に設けられている。より詳しくは、第1微細構造41は、基台の配向膜5側の表面に形成され、基台の配向膜5側の表面から、配向膜5側に向けて突出して形成されることとなる。
【0037】
図2に示すように、中間層4においては、第1微細構造41と第2微細構造42とが接触するように設けられている。具体的には、中間層4は、第1微細構造41の突起部41A同士の間の隙間を、第2微細構造42の突起部42Aが埋めるように構成されている。言い換えれば、中間層4は、第2微細構造42の突起部42A同士の間の隙間を、第1微細構造41の突起部41Aが埋めるように、構成されている。そのため、中間層4は、積層方向Zに直交する方向に沿う断面において第1微細構造41(突起部41A)が占める面積が、透明電極3側に向かうに従って大きくなり、配向膜5側に向かうに従って小さくなる。また、中間層4は、積層方向Zに直交する方向に沿う断面において第2微細構造42(突起部42A)が占める面積が、透明電極3側に向かうに従って小さくなり、配向膜5側に向かうに従って大きくなる。
【0038】
ここで、透明電極3と配向膜5とは、第1色光Lbの屈折率が異なる。そのため、透明電極3と配向膜5との界面では、第1色光Lbや出射光Lb2の反射が大きくなるおそれがある。さらに、液晶層の厚さの分布によって、出射光Lb2によって表示される画像に干渉縞が生じるおそれもある。それに対し、実施形態においては、第1色光Lbの屈折率が異なる2つの部材の間に、ここでは透明電極3と配向膜5との間に、反射防止膜としての中間層4を配置することで、反射を抑制しつつ、干渉縞の発生も抑制することができる。以下、中間層4の作用についてより具体的に説明する。
【0039】
図5は、実施形態に係る中間層4の積層方向Zにおける厚みと屈折率との相関関係を示すグラスである。図5の横軸が、第1色光Lbの屈折率で、縦軸が積層方向における中間層4の厚みを指す。図5においては、屈折率n1が、透明電極3における第1色光Lbの屈折率を指し、屈折率n2が、配向膜5における第1色光Lbの屈折率を指す。中間層4は、以上説明したように、透明電極3側から配向膜5側に向けて、透明電極3、第1微細構造41、第2微細構造42、配向膜5の順で並ぶ。そして、透明電極3と第1微細構造41とは、第1色光Lbの屈折率が等しく、第2微細構造42と配向膜5とは、第1色光Lbの屈折率が等しい。そして、第1微細構造41と第2微細構造42とは、透明電極3側に向かうに従って第1微細構造41の占める面積が大きくなり、配向膜5側に向かうに従って第2微細構造42の占める面積が大きくなる。そのため、第1色光Lbの屈折率は、中間層4において、積層方向Zにおいて急激に変化することなく、連続的に変化することとなる。これにより、反射を抑制しつつ、干渉縞の発生も抑制することができる。すなわち、中間層4は、透明電極3と配向膜5との間の界面の屈折率の不連続性を減らす作用を発揮できる。これにより、中間層4は、透過する光の波長や入射角依存性が小さい優れた反射防止効果を得られる。
【0040】
なお、実施形態では、このように、第1微細構造41と第2微細構造42とが複数の突起部41A、42Aを有し、それらが噛み合ういわゆるモスアイ構造であるが、第1微細構造41と第2微細構造42との形状は、複数の突起部が噛み合うものに限られない。第1微細構造41と第2微細構造42とは、例えば、中間層4の、積層方向Zに直交する方向に沿う断面において第1微細構造41(突起部41A)が占める面積が、透明電極3側に向かうに従って大きくなり、積層方向Zに直交する方向に沿う断面において第2微細構造42(突起部42A)が占める面積が、配向膜5側に向かうに従って大きくなる、任意の構成となっていてよい。
【0041】
また、以上の説明では、中間層4は、透明電極3と配向膜5との間に設けられたが、第1色光Lbの屈折率の異なる第1部材と第2部材との間であれば、任意の位置に配置してよい。すなわち、以上の説明では、透明電極3が第1部材であり、配向膜5が第2部材に相当したが、第1部材及び第2部材とは、透明電極3及び配向膜5であることに限られず、第1色光Lbの屈折率が異なる任意の部材であってよい。
【0042】
<変形例>
図6は、実施形態の変形例に係る反射型液晶表示素子1を示す縦断面図である。変形例では、上記実施形態と同様な事項を省略し、特徴部分だけを説明する。
【0043】
図6に示すように、変形例においては、ガラス基板2と透明電極3との間に中間層4Aが配置されている。
【0044】
中間層4Aの第1中間部材4aは、第1色光Lbの屈折率がガラス基板2と同じ部材で構成される。すなわち、中間層4Aの第1中間部材4aの第1微細構造41は、第1色光Lbの屈折率がガラス基板2と同じ部材で構成される。中間層4Aの第1中間部材4aは、この点以外は、上述の中間層4の第1中間部材4aと同じ構造であってよい。なお、中間層4Aの第1中間部材4aが基材を含む場合は、この基材も、第1色光Lbの屈折率がガラス基板2と同じ部材で構成される。
【0045】
中間層4Aの第2中間部材4bは、第1色光Lbの屈折率が透明電極3と同じ部材で構成される。すなわち、中間層4Aの第2中間部材4bの第2微細構造42及び基台43は、第1色光Lbの屈折率が透明電極3と同じ部材で構成される。中間層4Aの第2中間部材4bは、この点以外は、上述の中間層4の第2中間部材4bと同じ構造であってよい。
【0046】
<効果>
上述したように、実施形態によれば、反射型液晶表示素子1では、透明電極3及び配向膜5は、平板状に形成されている。第1中間部材4aは、積層方向と交差する平面方向における凹凸のピッチが前記光の波長以下であり、光の屈折率が透明電極3と同じ部材で構成される第1微細構造41を含む。第2中間部材4bは、積層方向と交差する平面方向における凹凸のピッチが前記光の波長以下であり、光の屈折率が配向膜5と同じ部材で構成される第2微細構造42を含む。この構成であると、第1中間部材4aと第2中間部材4bとによって、透明電極3及び配向膜5を透過する光の反射が抑制できる。すなわち、反射光が生じる部材同士の界面に、サブ波長オーダーの第1中間部材4aと第2中間部材4bとを有する中間層4が存在することになる。中間層4は、部材同士の界面の屈折率の不連続性を実質的になくす作用を発揮でき、透過する光の波長や入射角依存性が小さい優れた反射防止効果を得られる。これにより、レーザー光源に代表される干渉性の高い光源を用いた投射型の液晶表示装置100では、干渉縞による画質低下が大幅に改善できる。また、透明電極3及び配向膜5が平板状に形成され、透明電極3と配向膜5との間に中間層4が配置されている。これにより、透明電極3の板厚などの形状が変わらず、透明電極3に印加された電圧の変動が構造上誘発され難い。したがって、微細構造ではない構造によって透明電極3に印加された電圧を安定させつつ中間層4に用いる第1中間部材4aと第2中間部材4bとによって透過する光の反射が抑制できる。
【0047】
実施形態によれば、中間層4は、積層方向Zに直交する方向に沿う断面において第1微細構造41が占める面積が、透明電極3側に向かうに従って大きくなる。積層方向Zに直交する方向に沿う断面において第2微細構造42が占める面積が、配向膜5側に向かうに従って大きく構成されている。この構成であると、第1中間部材4a及び第2中間部材4bの屈折率が連続的に変化できる。
【0048】
実施形態によれば、第1微細構造41は、配向膜5側に向かうに従う断面を先細に形成されている。第2微細構造42は、透明電極3側に向かうに従う断面を先細に形成されている。中間層4は、第1微細構造41と第2微細構造42との隙間を互いに埋め合わせて形成されている。この構成であると、第1中間部材4a及び第2中間部材4bの屈折率が連続的に変化できる。
【0049】
実施形態によれば、第1微細構造41の凹凸のピッチP1と、第2微細構造42の凹凸のピッチP2とは、光の波長以下である。この構成であると、中間層4に用いる第1中間部材4aと第2中間部材4bとによって透過する光の反射が抑制できる。
【0050】
実施形態によれば、第1中間部材4aは、第2微細構造42の隙間を第1微細構造41で埋めて形成されている。この構成であると、第1中間部材4aが第1微細構造41を有する部分だけで構成でき、第1中間部材4aの屈折率が連続的に変化できる。これにより、第1中間部材4aには、無駄な部分が無く、中間層4を構成する際に設計寸法が最適化し易い。
【0051】
実施形態によれば、第2中間部材4bは、第2微細構造42の配向膜5側に形成されて配向膜5と接し、光の屈折率が配向膜5と同じ部材で構成される基台43を有する。この構成であると、第1中間部材4aが第2中間部材4bに埋め合わせられて第1微細構造41を有する部分だけで構成でき、第1中間部材4aの屈折率が連続的に変化できる。これにより、第1中間部材4aには、無駄な部分が無く、中間層4を構成する際に設計寸法が最適化し易い。
【0052】
実施形態によれば、液晶表示装置100は、反射型液晶表示素子1を備える。この構成であると、微細構造ではない構造によって透明電極3に印加された電圧を安定させつつ絶縁体で作った第1中間部材4aと第2中間部材4bとによって透過する光の反射が抑制できる。
【0053】
[その他]
上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるものや、実質的に同一のものを含む。さらに、上記に記載した構成は、適宜組み合わせ可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 反射型液晶表示素子
2 ガラス基板
3 透明電極
4、4A 中間層
4a 第1中間部材
4b 第2中間部材
5 配向膜
6 液晶層
7 配向膜
8 反射電極
9 半導体駆動基板
10 発光装置
12 照明光学系
14(14b、14g、14r) 液晶パネル
16 合成光学系
18 投射光学系
20 制御部
22 光学素子
23 光学素子
24 光学素子
41 第1微細構造
41A 突起部
42 第2微細構造
42A 突起部
43 基台
100 液晶表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6