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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】照明システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/18 20200101AFI20240521BHJP
【FI】
H05B47/18
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020160990
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054029
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 和章
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-031580(JP,A)
【文献】特開2020-113830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタジオに設置される照明器具と;
操作入力に基づいて、前記照明器具の作動に関する指令を出力する照明操作器と;
前記スタジオの付帯設備として設けられ、IP通信を用いて前記照明操作器と通信するスタジオ側制御ユニットと;
を具備し、
前記スタジオ側制御ユニットは、
前記照明操作器から出力される前記指令に対するバックアップデータが設定されるバックアップ部と;
前記照明操作器と前記スタジオ側制御ユニットとの間の通信状態が適正である場合は、前記IP通信を用いて前記照明操作器から伝達された前記指令を前記バックアップ部から前記照明器具に出力させ、前記通信状態が適正でない場合は、前記バックアップデータから生成されたバックアップ指令を、前記照明操作器からの前記指令の代わりに前記バックアップ部から前記照明器具に出力させる中央制御部と;
備え、
前記中央制御部は、前記通信状態が適正でないことを示す通知信号を複数の信号パターンで前記バックアップ部に出力可能であるとともに、前記複数の信号パターンの中から前記スタジオの電源系統の状況に少なくとも対応する信号パターンで、前記通知信号を前記バックアップ部に出力し、
前記バックアップ部に設定される前記バックアップデータでは、前記バックアップ指令に関して互いに対して指令内容が異なる複数の指令パターンが設定され、
前記バックアップ部は、前記複数の指令パターンの中から前記中央制御部からの前記通知信号の前記信号パターンに対応した指令パターンで、前記バックアップ指令を前記照明器具に出力する、
照明システム。
【請求項2】
前記バックアップデータは、前記照明操作器及び前記照明操作器以外の操作器のいずれかによって、前記バックアップ部に設定可能である、請求項1の照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スタジオに照明器具が設置され、スタジオとは別室の操作室に照明操作器が設置される照明システムが、広く用いられている。このよう照明システムでは、操作室の照明操作器での操作入力に基づいて、照明器具の照明光の明るさに関する指令である調光信号を含む照明器具の作動に関する指令が、照明操作器から出力される。そして、照明操作器からの指令に基づいて、照明器具の照明光の明るさが調光される等して、スタジオの照明器具の作動が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-275410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、複数の操作室及び複数のスタジオの中から、使用状況等に対応させて、1つの操作室及び1つのスタジオを選択して使用する要望がある。このため、操作室の照明操作器とスタジオの付帯設備であるスタジオ側制御ユニットとの間でIP通信を用いて通信する照明システムが、用いられている。このような照明システムでは、照明操作器からの指令が、IP通信を用いてスタジオ側制御ユニットに伝達され、スタジオ側制御ユニットからスタジオの照明器具に指令が伝達される。また、前述のような照明システムでは、照明操作器からの指令がスタジオ側制御ユニットに適切に伝達されない場合等の、照明操作器とスタジオ側制御ユニットとの間での通信状態が適正でない場合でも、照明器具の照明光の調光等を含むスタジオの照明器具の作動が適切に制御されることが、求められている。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、照明操作器とスタジオ側との間でのIP通信を用いた通信状態が適正でない場合でも、スタジオの照明器具の作動が適切に制御される照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、照明システムは、照明器具、照明操作器及びスタジオ側制御ユニットを備える。照明器具は、スタジオに設置される。照明操作器は、操作入力に基づいて、照明器具の作動に関する指令を出力する。スタジオ側制御ユニットは、スタジオの付帯設備として設けられ、IP通信を用いて照明操作器と通信する。スタジオ側制御ユニットは、バックアップ部及び中央制御部を備える。バックアップ部には、照明操作器から出力される指令に対するバックアップデータが、設定される。中央制御部は、照明操作器とスタジオ側制御ユニットとの間の通信状態が適正である場合は、IP通信を用いて照明操作器から伝達された指令をバックアップ部から照明器具に出力させる。中央制御部は、通信状態が適正でない場合は、バックアップデータから生成されたバックアップ指令を、照明操作器からの指令の代わりにバックアップ部から照明器具に出力させる。中央制御部は、通信状態が適正でないことを示す通知信号を複数の信号パターンでバックアップ部に出力可能であるとともに、複数の信号パターンの中からスタジオの電源系統の状況に少なくとも対応する信号パターンで、通知信号をバックアップ部に出力する。バックアップ部に設定されるバックアップデータでは、バックアップ指令に関して互いに対して指令内容が異なる複数の指令パターンが設定される。バックアップ部は、複数の指令パターンの中から中央制御部からの通知信号の信号パターンに対応した指令パターンで、バックアップ指令を照明器具に出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、照明操作器とスタジオ側との間でのIP通信を用いた通信状態が適正でない場合でも、スタジオの照明器具の作動が適切に制御される照明システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る照明システムを示す概略図である。
図2図2は、実施形態に係る照明システムにおいて、スタジオの停電状態での、スタジオの電源系統の状況とバックアップ部への通知信号の信号パターンとの関係、及び、バックアップ部への通知信号の信号パターンと照明器具へのバックアップ指令の指令パターンとの関係の一例を示す概略図である。
図3図3は、実施形態に係る照明システムにおいて、スタジオの非停電状態での、スタジオの電源系統の状況とバックアップ部への通知信号の信号パターンとの関係、及び、バックアップ部への通知信号の信号パターンと照明器具へのバックアップ指令の指令パターンとの関係の一例を示す概略図である。
図4図4は、実施形態に係る照明システムにおいて、スタジオ側制御ユニットによって行われる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の照明システム(100)は、照明器具(101)、照明操作器(102)及びスタジオ側制御ユニット(103)を備える。照明器具(101)は、スタジオ(105)に設置される。照明操作器(102)は、操作入力に基づいて、照明器具(101)の作動に関する指令を出力する。スタジオ側制御ユニット(103)は、スタジオ(105)の付帯設備として設けられ、IP通信を用いて照明操作器(102)と通信する。スタジオ側制御ユニット(103)は、バックアップ部(111)及び中央制御部(112)を備える。バックアップ部(111)には、照明操作器(102)から出力される指令に対するバックアップデータが、設定される。中央制御部(112)は、照明操作器(102)とスタジオ側制御ユニット(103)との間の通信状態が適正である場合は、IP通信を用いて照明操作器(102)から伝達された指令をバックアップ部(111)から照明器具(101)に出力させる。中央制御部(112)は、通信状態が適正でない場合は、バックアップデータから生成されたバックアップ指令を、照明操作器(102)からの指令の代わりにバックアップ部(111)から照明器具(101)に出力させる。これにより、照明操作器(102)とスタジオ側との間でのIP通信を用いた通信状態が適正でない場合でも、スタジオ(105)の照明器具の作動を適切に制御できる。
【0010】
また、実施形態の照明システム(100)では、中央制御部(112)は、通信状態が適正でないことを示す通知信号を複数の信号パターンでバックアップ部(111)に出力可能であるとともに、複数の信号パターンの中からスタジオ(105)の電源系統の状況に少なくとも対応する信号パターンで、通知信号をバックアップ部(111)に出力する。バックアップ部(111)に設定されるバックアップデータでは、バックアップ指令に関して互いに対して指令内容が異なる複数の指令パターンが設定される。バックアップ部(111)は、複数の指令パターンの中から中央制御部(112)からの通知信号の信号パターンに対応した指令パターンで、バックアップ指令を照明器具(101)に出力する。これにより、照明操作器(102)とスタジオ側との間の通信状態が適正でない場合でも、スタジオ(105)の電源系統の状況、及び、スタジオ(105)の電源系統の状況変化に対応させて、スタジオ(105)の照明器具(101)の作動を適切に制御できる。
【0011】
また、実施形態の照明システム(100)では、バックアップデータは、照明操作器(102)及び照明操作器(102)以外の操作器のいずれかよって、バックアップ部(111)に設定可能である。したがって、バックアップ指令の指令内容を、スタジオ(105)での運用内容に対応した指示内容に予め設定することにより、スタジオ(105)の運用中に照明操作器(102)とスタジオ側との間で適正に通信が行われなくても、スタジオ(105)での運用内容に対応させて、スタジオ(105)の照明器具(101)の作動を適切に制御できる。
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係る照明システム100を示す。図1に示すように、照明システム100は、1つ以上の照明器具101、照明操作器102及びスタジオ側制御ユニット103を備える。図1の一例では、照明器具101は、複数設けられる。照明器具101のそれぞれは、LED等の発光素子を備え、照明器具101のそれぞれでは、発光素子で発光した光が、照明光として照射される。照明器具101は、スタジオ105に設置される。
【0014】
照明操作器102は、操作室106に設置される。照明操作器102では、操作者等によって、照明器具101の作動に関する操作を入力可能である。照明操作器102は、操作者等の操作入力に基づいて、照明器具101の作動に関する指令(操作指令)を出力する。照明器具101の作動に関する指令は、照明器具101の照明光の明るさに関する指令である調光信号を含む。そして、照明器具101の照明光の明るさに関する指令(調光信号)の指令内容としては、例えば、照明器具101の特定の1つにおいて調光率を50%にすること等が、挙げられる。なお、照明操作器102は、操作室106に設置される形態に限定されるものではない。詳細は後述するが、照明操作器102は、IP通信を用いて通信が可能であってもよく、この場合は、照明操作器102は、操作室106の外部のIP通信が可能な環境に配設される、又は、持ち込まれて使用されてもよい。そして、このIP通信が可能な環境とは、照明器具101が配設された建物の内部であってもよく、外部であってもよい。
【0015】
また、ある一例では、照明器具101の中の1つ以上において、照明光の光色が変化可能である。そして、照明器具101の作動に関する指令は、照明光の光色が変化可能な照明器具における照明光の光色に関する指令である調色信号を含む。また、別のある一例では、照明器具101の中の1つ以上において、姿勢を制御する等して、照明光の照射方向が変化可能である。そして、照明器具101の作動に関する指令は、照明光の照射方向が変化可能な照明器具における照明光の照射方向に関する指令を含む。照明操作器102は、操作入力に少なくとも対応した指令内容で、指令を出力する。
【0016】
スタジオ側制御ユニット103は、スタジオ105の付帯設備として設けられる。スタジオ側制御ユニット103は、1つ以上のコンピュータから構成され、プロセッサ及び記憶媒体を備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)、及び、DSP(Digital Signal processor)等のいずれかを含む。記憶媒体には、メモリ等の主記憶装置に加え、補助記憶装置が含まれ得る。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、及び、半導体メモリ等が挙げられる。スタジオ側制御ユニット103では、プロセッサ及び記憶媒体のそれぞれは、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。スタジオ側制御ユニット103では、プロセッサは、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。また、スタジオ側制御ユニット103では、プロセッサによって実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークを介して接続されたコンピュータ(サーバ)、又は、クラウド環境のサーバ等に格納されてもよい。この場合、プロセッサは、ネットワーク経由でプログラムをダウンロードする。
【0017】
スタジオ側制御ユニット103は、バックアップ部111及び中央制御部(制御部)112を備える。ある一例では、バックアップ部111及び中央制御部112は、1つのコンピュータ等に一体に形成される。別のある一例では、バックアップ部111及び中央制御部112は、互いに対して離れて配置され、互いに対して別のコンピュータ等から構成される。バックアップ部111及び中央制御部112のそれぞれは、スタジオ側制御ユニット103を構成する1つ以上のプロセッサ等によって行われる処理の一部を、実施する。また、スタジオ側制御ユニット103の記憶媒体等には、バックアップ部111及び中央制御部112の後述する処理に用いられるデータ等を、記憶可能である。
【0018】
スタジオ側制御ユニット103は、操作室106から離れた場所に設置される。図1等の一例では、スタジオ側制御ユニット103はスタジオ105の内部に、設置される。ただし、スタジオ側制御ユニット103は、操作室106から離れた場所にスタジオ105の付帯設備として設置されれば、スタジオ105の外部に設置されてもよい。ある一例では、スタジオ105に隣接する位置に、スタジオ側制御ユニット103が設置される。また、スタジオ側制御ユニット103の一部がスタジオ105の内部に設置され、スタジオ側制御ユニット103の残りの一部がスタジオ105の外部に設置されてもよい。ある一例では、バックアップ部111は、スタジオ105の内部に設置され、中央制御部112は、スタジオ105の外部に設置される。
【0019】
スタジオ側制御ユニット103では、バックアップ部111及び中央制御部112のそれぞれが、IP通信を用いて、操作室106の照明操作器102と通信する。バックアップ部111及び中央制御部112のそれぞれは、IPネットワークにおける集線装置であるネットワークスイッチ113を間に介して、照明操作器102と通信する。ある一例では、バックアップ部111及び中央制御部112のそれぞれは、例えば、Art-Net及びsACN等の照明用のイーサネット(登録商標)通信プロトコルに基づいて、照明操作器102との間でIP通信する。なお、IPネットワークにおける集線装置として、ネットワークスイッチ113の代わりに、ネットワークハブが設けられてもよい。
【0020】
また、照明操作器102から出力された照明器具101の作動に関する指令は、IP通信を用いて、すなわち、IPネットワークを経由して、バックアップ部111に伝達される。図1等の一例では、照明操作器102からの指令は、IP通信に対応したネットワーク信号として、出力される。ただし、照明操作器102は、IP通信に対応していなくてもよい。この場合、照明操作器102は、中継器を間に介して、IPネットワークに接続され、照明操作器102は、照明器具101の作動に関する指令を、DMX信号等として出力する。そして、中継器がDMX信号等をIP通信に対応したネットワーク信号に変換し、照明操作器102からの指令がIPネットワークを経由してバックアップ部111に伝達される。
【0021】
また、図1等の一例では、バックアップ部111及び中央制御部112のそれぞれが直接的にネットワークスイッチ113に接続されるが、これに限るものではない。ある一例では、スタジオ側制御ユニット103に、バックアップ部111及び中央制御部112で共用の送受信部が設けられる。そして、バックアップ部111及び中央制御部112は、共用の送受信部を間に介して、ネットワークスイッチ113に接続される。この場合、バックアップ部111及び中央制御部112は、共用の送受信部を通して、IP通信する。
【0022】
照明システム100は、スタジオ105の電源系統として、受電設備115、補助電源設備となるGC(Generator Current)設備116、及び、無停電電源装置であるUPS(Uninterruptible Power Supply)117を備える。受電設備115は、電力会社の電力網から電力を受電する。GC設備116は、例えば、自家発電設備である。GC設備116は、電力会社の電力網からの受電設備115の受電が停止されている停電状態において、受電設備115の代わりに、スタジオ105に関連する機器等に電力を供給する。
【0023】
なお、操作室106の電源系統は、スタジオ105の電源系統とは別系統になる。また、図1等の一例では、受電設備115及びGC設備116は、スタジオ105の外部に設置される。ある一例では、受電設備115及びGC設備116は、スタジオ105の電源系統となるとともに、スタジオ105と同一の建物内の別のスタジオの電源系統となる。
【0024】
また、照明システム100には、切替スイッチ118が設けられる。切替スイッチ118は、3つの電気接点E1~E3を有する。切替スイッチ118における電気的な接続状態の切替えは、スタジオ側制御ユニット103とは別の制御装置等によって行われ、切替スイッチ118における電気的な接続状態を切替える制御装置等は、例えば、スタジオ105の外部に設けられる。切替スイッチ118における電気的な接続状態は、電力会社の電力網からの受電設備115の受電状態に基づいて、制御される。
【0025】
電力会社の電力網から受電設備115が受電している非停電状態では、切替スイッチ118において、電気接点E1,E2が電気的に接続される。このため、非停電状態では、受電設備115が受電した電力が、照明器具101及びバックアップ部111等のスタジオ105に関連する機器に、切替スイッチ118を介して供給される。一方、電力会社の電力網からの受電設備115の受電が停止されている停電状態では、切替スイッチ118において、電気接点E1,E3が電気的に接続される。このため、停電状態では、GC設備116で発電された電力が、スタジオ105に関連する機器に、切替スイッチ118を介して供給される。なお、図1等の一例では、切替スイッチ118から照明器具101及びバックアップ部111等への電力の供給経路は、図示されない地点Aを通って、形成される。また、図1では、電力の供給経路は、太線で示される。
【0026】
UPS117は、中央制御部112へ電力を供給する電源として機能する。UPS117は、切替スイッチ118を間に介することなく、受電設備115に電気的に接続される。このため、非停電状態では、受電設備115が受電した電力が、切替スイッチ118を介することなくUPS117に供給され、UPS117は、受電設備115からの電力を蓄電する。非停電状態では、UPS117の蓄電量が基準蓄電量以上で維持される。このため、停電状態において、UPS117は、蓄電された電力を中央制御部112に基準時間以上継続して供給可能となる。したがって、停電状態になっても、中央制御部112は、UPS117からの電力によって、基準時間以上継続して起動され、中央制御部112等による後述の処理によって、照明器具101の作動の制御が基準時間以上継続して行われる。
【0027】
また、受電設備115での電力の受電が停止されている停電状態では、受電設備115は、停電状態であることを通知する停電信号を、中央制御部112へ出力する。また、GC設備116からスタジオ105に関連する機器に電力が供給されている状態では、GC設備116は、GC設備116から電力が出力されていることを示すGC信号を、中央制御部112へ出力する。GC信号には、GC設備116から電力が出力されていることを示す情報に加えて、GC設備116における電力の残容量に関する情報、及び、GC設備116からスタジオ105に関連する機器に供給可能な電力量に関する情報のいずれかが、含まれる。中央制御部112は、受信した停電信号及びGC信号等に基づいて、受電設備115及びGC設備116の状況等を含むスタジオ105の電源系統の状況を取得する。また、ある一例では、停電状態において、中央制御部112は、スタジオ105の電源系統の状況として、UPS117の蓄電量に関する情報を取得する。
【0028】
中央制御部112は、停電信号及びGC信号等を含むスタジオ105の電源系統の状況を示す情報を、IP通信を用いて、照明操作器102に送信可能である。この際、中央制御部112は、停電信号及びGC信号等をIP通信に対応したネットワーク信号に変換して、照明操作器102に送信する。照明操作器102は、中央制御部112からの停電信号及びGC信号等を、スタジオ105の電源系統の状況を示す情報として受信する。この場合、照明操作器102は、操作入力に加えてスタジオ105の電源系統の状況に対応した指令内容で、照明器具101の作動に関する指令を出力する。
【0029】
また、中央制御部112は、バックアップ部111及び中央制御部112のそれぞれと照明操作器102との間のIP通信を用いた通信状態、すなわち、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態について、監視及び判断する。ある一例では、中央制御部112は、レスポンスを要求するリクエスト信号を、IPネットワークを経由して、照明操作器102に送信する。そして、照明操作器102からのレスポンス信号を閾値時間以内に受信した場合は、中央制御部112は、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態が適正であると判断する。また、閾値時間経過しても照明操作器102からのレスポンス信号を受信しない場合は、中央制御部112は、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態が適正でないと判断する。
【0030】
中央制御部112は、例えば、所定のタイミングで定期的に、照明操作器102にリクエスト信号を送信する。また、停電状態では、中央制御部112は、停電信号及びGC信号等を照明操作器102に送信するタイミングで、リクエスト信号も一緒に照明操作器102に送信してもよい。また、別のある一例では、バックアップ部111が照明器具101の作動に関する指令を照明操作器102から所定の時間以上継続して受信していないことに基づいて、中央制御部112は、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態が適正でないと判断する。
【0031】
照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態が適正でないと判断した場合は、中央制御部112は、通信状態が適正でないことを示す通知信号を、バックアップ部111に出力する。バックアップ部111には、照明器具101から出力される前述の指令に対するバックアップデータが、設定され、バックアップ部111の記憶媒体等には、バックアップデータが格納及び保存される。バックアップ部111は、照明器具101の作動に関して、バックアップデータから生成されたバックアップ指令を、照明操作器102からの指令の代わりに、照明器具101へ出力可能である。バックアップデータには、バックアップ指令の指令内容に関する情報が含まれる。
【0032】
バックアップ指令は、照明操作器102から出力される指令と同様に、照明器具101の作動に関する指令であり、照明器具101の照明光の明るさに関する指令である調光信号を含む。また、バックアップ指令は、照明光の光色が変化可能な照明器具における照明光の光色に関する指令である調色信号、及び、照明光の照射方向が変化可能な照明器具における照明光の照射方向に関する指令のいずれかを含でもよい。
【0033】
中央制御部112は、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態に少なくとも基づいて、バックアップ部111から照明器具101へ出力される指令に関する制御を行う。通信状態が適正である場合は、中央制御部112は、通知信号をバックアップ部111へ出力しない。そして、バックアップ部111は、IP通信を用いて照明操作器102から伝達された指令を、照明器具101に出力する。一方、通信状態が適正でない場合は、中央制御部112は、通知信号をバックアップ部111へ出力する。そして、バックアップ部111は、バックアップデータから生成されたバックアップ指令を、照明操作器102からの指令の代わりに照明器具101に出力する。
【0034】
また、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信が適正な状態に復帰した場合は、中央制御部112は、バックアップ部111への通知信号の出力を停止する。バックアップ部111は、通知信号の出力が停止されたことに基づいて、バックアップデータから生成されたバックアップ指令を照明器具101に出力する状態から、照明操作器102からの指令を照明器具101に出力する状態に切替える。
【0035】
なお、照明器具101の中でIP通信に対応している照明器具へは、照明器具の作動に関する指令(バックアップ指令)は、IP通信に対応したネットワーク信号として、バックアップ部111から出力される。一方、照明器具101の中でIP通信に対応していない照明器具へのバックアップ部111からの指令(バックアップ指令)の出力では、照明操作器102からの指令は、バックアップ部111等において、IP通信に対応したネットワーク信号からDMX信号等に変換される。そして、明器具の作動に関する指令は、DXM信号等として、IP通信に対応していない照明器具へ伝達される。また、ある一例では、IP通信に対応していない照明器具とバックアップ部111との間に中継器が設けられ、中継器において、照明操作器102からの指令等が、IP通信に対応したネットワーク信号からDMX信号等に変換されてもよい。
【0036】
バックアップ部111では、照明操作器102から出力される照明器具101の作動に関する指令に対するバックアップデータは、例えば、バックアップ部111に設けられる記憶媒体等にバックアップデータを記憶する(書き込む)ことにより、設定される。バックアップデータには、前述のバックアップ指令の指令内容等が含まれる。バックアップ指令の指令内容等のバックアップデータは、操作室106の照明操作器102によって、バックアップ部111に設定可能である。この場合、バックアップデータは、IP通信を用いて、照明操作器102からバックアップ部111に伝達される。そして、伝達されたバックアップデータが、バックアップ部111において、記憶媒体等に記憶される。
【0037】
なお、照明器具101の作動に関する指令のバックアップデータは、照明操作器102以外の操作器によって、バックアップ部111に設定されてもよい。この場合、例えば、スタジオ105に持込んだ操作器を、IPネットワークを間に介することなく、バックアップ部111に接続する。そして、スタジオ105に持込んだ操作器によって、バックアップ指令の指令内容を含むバックアップデータが、バックアップ部111へ設定される。
【0038】
また、本実施形態では、中央制御部112は、前述の通信状態が適正でないことを示す通知信号を、複数の信号パターンでバックアップ部111に出力可能である。中央制御部112は、前述のように、受電設備115及びGC設備116の状況等を含むスタジオ105の電源系統の状況を取得する。照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態が適正でない場合は、中央制御部112は、スタジオ105の電源系統の状況に少なくとも基づいて、バックアップ部111への通知信号の信号パターンを選択する。
【0039】
中央制御部112の記憶媒体等には、スタジオ105の電源系統の状況と通知信号の信号パターンとの関係を示すデータ等が記憶される。中央制御部112は、スタジオ105の電源系統の状況と通知信号の信号パターンとの関係を示すデータ等を用いて、通知信号の信号パターンを選択する。そして、中央制御部112は、選択した信号パターンで、通知信号をバックアップ部111に出力する。これにより、複数の信号パターンの中からスタジオ105の電源系統の状況に少なくとも対応する信号パターンで、通知信号が中央制御部112からバックアップ部111へ出力される。
【0040】
ある一例では、受電設備115での受電が停止されている停電状態であるか否かを示す情報が、スタジオ105の電源系統の状況を示す情報として用いられ、通知信号の信号パターンを選択する基準となる。そして、停電状態である場合は、GC設備116における電力の残容量、GC設備116からスタジオ105に関連する機器に供給可能な電力量、及び、UPS117の蓄電量等のいずれかが、スタジオ105の電源系統の状況を示す情報として用いられ、通知信号の信号パターンを選択する基準となる。また、電力会社の電力網から受電設備115が受電している非停電状態である場合は、停電状態からの復帰直後であるか否かを示す情報、及び、停電復帰からの時間(経過時間)等のいずれかが、スタジオ105の電源系統の状況を示す情報として用いられ、通知信号の信号パターンを選択する基準となる。
【0041】
また、ある一例では、スタジオ105の電源系統の状況に加えて、スタジオ105に関連する電源系統以外の状況に基づいて、中央制御部112は、通知信号の信号パターンを選択する。この場合、通知信号の信号パターンは、スタジオ105の電源系統の状況に対応するとともに、スタジオ105に関連する電源系統以外の状況にも対応する。スタジオ105に関連する電源系統以外の状況としては、例えば、スタジオ105の大きさ、スタジオ105内の人数、スタジオ105内での人の位置、及び、スタジオ105で撮影される番組等の出演者の背景情報等が挙げられる。
【0042】
また、本実施形態では、バックアップ部111に設定されるバックアップデータおいて、前述のバックアップ指令に関して、複数の指令パターンが設定される。バックアップデータでは、複数の指令パターンは、互いに対して指令内容が異なる。例えば、照明器具101の特定の1つにおける照明光の調光率に関して、複数の指令パターンのある1つでは、50%にする指令内容であるのに対し、複数の指令パターンの別のある1つでは、30%にする指令内容となる。
【0043】
バックアップ部111は、通信状態が適正でないことを示す前述の通知信号を中央制御部112から受信すると、受信した通知信号の信号パターンを取得する。そして、バックアップ部111は、通知信号の信号パターンに基づいて、照明器具101へ出力するバックアップ指令の指令パターンを、複数の指令パターンから選択する。この際、バックアップ指令に関する複数の指令パターンの中から、通知信号の信号パターンに対応する指令パターンが選択される。
【0044】
バックアップ部111の記憶媒体等には、通知信号の信号パターンとバックアップ指令の指令パターンとの関係を示すデータ等が記憶される。バックアップ部111は、通知信号の信号パターンとバックアップ指令の指令パターンとの関係を示すデータ等を用いて、バックアップ指令の指令パターンを、複数の指令パターンから選択する。そして、バックアップ部111は、選択した指令パターンで、バックアップ指令を照明器具101に出力する。これにより、通知信号の信号パターンに対応する指令パターンで、照明器具101の作動に関するバックアップ指令が照明器具101へ出力される。
【0045】
本実施形態では、前述のように、バックアップ部111は、複数の指令パターンでバックアップ指令を照明器具101へ出力可能である。このため、照明器具101のそれぞれがバックアップ指令に基づいて作動されることにより、照明器具101によって複数の照明シーンを実現可能となる。また、バックアップ部111から出力されるバックアップ指令の指令パターンは、前述のように、中央制御部112からの通知信号の信号パターンに対応するものとなり、通知信号の信号パターンは、スタジオ105の電源設備の状況に少なくとも対応したものとなる。このため、照明器具101のそれぞれがバックアップ指令に基づいて作動されることにより、スタジオ105の電源設備の状況に少なくとも対応した照明シーンが照明器具101によって実現される。
【0046】
図2及び図3は、スタジオ105の電源系統の状況と通知信号の信号パターンとの関係、及び、通知信号の信号パターンとバックアップ指令の指令パターンとの関係の一例を示す。図2は、スタジオ105の停電状態における関係を示し、図3は、スタジオ105の非停電状態における関係を示す。
【0047】
図2及び図3の一例では、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態が適正でない場合において、中央制御部112は、スタジオ105が停電状態及び非停電状態のいずれであるかに基づいて、通知信号の信号パターンを選択する。そして、スタジオ105が停電状態の場合では、スタジオ105が非停電状態の場合に対して、中央制御部112からバックアップ部111への通知信号の信号パターンが異なる。このため、スタジオ105が停電状態の場合では、スタジオ105が非停電状態の場合に対して、バックアップ部111から照明器具101へ出力されるバックアップ指令の指令パターンが異なる。
【0048】
図2及び図3の一例では、スタジオ105が停電状態の場合、信号パターンX1~X3のいずれか1つで通知信号がバックアップ部111へ出力され、指令パターンY1~Y3のいずれか1つでバックアップ指令が照明器具101へ出力される。一方、スタジオ105が非停電状態の場合、信号パターンX4,X5のいずれか一方で通知信号がバックアップ部111へ出力され、指令パターンY4,Y5のいずれか一方でバックアップ指令が照明器具101へ出力される。
【0049】
図2及び図3の一例では、指令パターンY1~Y3のそれぞれでバックアップ指令が出力された場合、指令パターンY4,Y5のそれぞれでバックアップ指令が出力された場合に比べて、照明器具101において発光素子に流れる電流が小さく調整され、照明器具101の照明光が暗く調光される。したがって、停電状態において、非停電状態に比べて照明器具101の照明光を暗くする調光が行われる。
【0050】
また、図2の一例では、スタジオ105が停電状態の場合は、中央制御部112は、GC設備116における電力の残容量Qに少なくとも基づいて、通知信号の信号パターンを選択する。そして、残容量Qに関して、閾値Qth1、及び、閾値Qth1より大きい閾値Qth2が設定される。残容量Qが閾値Qth1より小さい場合、信号パターンX1で通知信号がバックアップ部111へ出力され、指令パターンY1でバックアップ指令が照明器具101へ出力される。また、残容量Qが閾値Qth1以上で、かつ、閾値Qth2より小さい場合、信号パターンX2で通知信号がバックアップ部111へ出力され、指令パターンY2でバックアップ指令が照明器具101へ出力される。そして、残容量Qが閾値Qth2以上の場合、信号パターンX3で通知信号がバックアップ部111へ出力され、指令パターンY3でバックアップ指令が照明器具101へ出力される。
【0051】
図2の一例では、指令パターンY1でバックアップ指令が出力された場合、指令パターンY2でバックアップ指令が出力された場合に比べて、照明器具101において発光素子に流れる電流が小さく調整され、照明器具101の照明光が暗く(調光率が低く)調光される。そして、指令パターンY2でバックアップ指令が出力された場合、指令パターンY3でバックアップ指令が出力された場合に比べて、照明器具101において発光素子に流れる電流が小さく調整され、照明器具101の照明光が暗く調光される。したがって、停電状態では、GC設備116における電力の残容量Qが小さいほど照明器具101の照明光を暗くする(調光率を低くする)調光が行われる。
【0052】
なお、ある一例では、スタジオ105が停電状態の場合において、中央制御部112は、GC設備116における電力の残容量Qの代わりに、又は、残容量Qに加えて、GC設備116からスタジオ105に関連する機器に供給可能な電力量、及び、UPS117の蓄電量等のいずれかに基づいて、通知信号の信号パターンを選択する。この場合も、バックアップ部111は、中央制御部112からの通知信号の信号パターンに基づいて、バックアップ指令の指令パターンを選択する。
【0053】
例えば、GC設備116からスタジオ105に関連する機器に供給可能な電力量に基づいて通知信号の信号パターンが選択される場合、バックアップ部111及び中央制御部112によって、供給可能な電力量が小さいほど照明器具101の照明光を暗くする調光が行われる。また、UPS117の蓄電量に基づいて通知信号の信号パターンが選択される場合、バックアップ部111及び中央制御部112によって、UPS117の蓄電量が小さいほど照明器具101の照明光を暗くする調光が行われる。
【0054】
また、図3の一例では、スタジオ105が非停電状態の場合は、中央制御部112は、停電状態から復帰した時点からの時間(経過時間)Tに少なくとも基づいて、通知信号の信号パターンを選択する。そして、時間Tに関して、閾値Tthが設定される。中央制御部112は、受電設備115からの停電信号等に基づいて、停電状態から復帰した時点を判断する。時間Tが閾値Tthより短い場合、信号パターンX4で通知信号がバックアップ部111へ出力され、指令パターンY4でバックアップ指令が照明器具101へ出力される。また、時間Tが閾値Tth以上の場合、信号パターンX5で通知信号がバックアップ部111へ出力され、指令パターンY5でバックアップ指令が照明器具101へ出力される。
【0055】
図3の一例では、指令パターンY4でバックアップ指令が出力された場合、指令パターンY5でバックアップ指令が出力された場合に比べて、照明器具101において発光素子に流れる電流が小さく調整され、照明器具101の照明光が暗く調光される。したがって、非停電状態では、停電状態からの復帰直後において、照明器具101の照明光を急激に明るくしない調光が行われ、照明器具101において発光素子に流れる電流を急激に大きくしない調整が行われる。
【0056】
図4は、照明システム100のスタジオ側制御ユニット103によって行われる処理を示す。図4に示す処理は、スタジオ105において番組の撮影が行われている状態等のスタジオ105が運用されている状態において、経時的に繰返し行われる。図4に示す処理では、中央制御部112は、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間のIP通信を用いた通信状態が適正であるか否かを判断する(S401)。通信状態が適正である場合は(S401-Yes)、中央制御部112は、前述した通知信号をバックアップ部111へ出力しない。このため、バックアップ部111は、照明器具101の作動に関して、IP通信を用いて照明操作器102から伝達された指令を照明器具101に出力する(S402)。
【0057】
一方、通信状態が適正でない場合は(S401-No)、中央制御部112は、受電設備115及びGC設備116の状況等を含むスタジオ105の電源系統の状況を取得する(S403)。そして、中央制御部112は、スタジオ105の電源系統の状況に少なくとも基づいて、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態が適正でないことを示す通知信号について、信号パターンを選択する(S404)。そして、中央制御部112は、選択した信号パターンで、通知信号をバックアップ部111に出力する(S405)。これにより、スタジオ105の電源系統の状況に少なくとも対応する信号パターンで、通知信号が中央制御部112からバックアップ部111へ出力される。
【0058】
バックアップ部111は、中央制御部112からの通知信号を受信すると、通知信号の信号パターンに基づいて、照明器具101へ出力するバックアップ指令の指令パターンを、複数の指令パターンから選択する(S406)。そして、バックアップ部111は、選択した指令パターンで、バックアップ指令を照明器具101に出力する(S407)。これにより、照明器具101の作動に関して、通知信号の信号パターンに対応する指令パターンで、バックアップ指令が照明器具101へ出力される。
【0059】
本実施形態では、照明器具101の作動に関して、照明操作器102からの指令に対するバックアップデータが、バックアップ部111に設定される。そして、照明操作器102からの指令がバックアップ部111に伝達されない状態等の通信状態が適正でない場合は、照明器具101の作動に関して、バックアップデータから生成されたバックアップ指令が、照明操作器102からの指令の代わりにバックアップ部111から照明器具101に出力される。このため、操作室106の照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間でのIP通信を用いた通信状態が適正でない場合でも、バックアップ部111からのバックアップ指令に基づいて、スタジオ105の照明器具101の作動が適切に制御される。これにより、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態が適正でない場合でも、スタジオ105における照明光が、適切に確保される。
【0060】
また、本実施形態では、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態が適正でない場合において、中央制御部112は、複数の信号パターンの中からスタジオ105の電源系統の状況に少なくとも対応する信号パターンで、通知信号をバックアップ部111に出力する。そして、バックアップ部111は、バックアップ指令に関して、複数の指令パターンの中から中央制御部112からの通知信号の信号パターンに対応した指令パターンを選択し、選択した指令パターンでバックアップ指令を照明器具101に出力する。このため、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間の通信状態が適正でない場合でも、スタジオ105の電源系統の状況、及び、スタジオ105の電源系統の状況変化に対応させて、スタジオ105の照明器具101の作動が適切に制御される。これにより、スタジオ105の電源系統の状況、及び、スタジオ105の電源系統の状況変化に対応させた照明シーンが、照明器具101によって実現される。
【0061】
例えば、スタジオ105の停電状態において照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間で適正に通信が行われなくても、GC設備116における電力の残容量、GC設備116からスタジオ105に関連する機器に供給可能な電力量、及び、UPS117の蓄電量等に対応させて、スタジオ105の照明器具101の作動が適切に制御される。また、スタジオ105の電源系統の状況等に対応させてスタジオ105の照明器具101の作動が適切に制御されるため、停電状態からの復帰直後等では、照明器具101において発光素子に流れる電流を急激に大きくならない状態に、照明器具101の作動が制御される。これにより、照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間で適正に通信が行われなくても、停電状態からの復帰直後等において、照明器具101の発光素子での過電流が有効に防止され、再び停電状態になることが有効に防止される。
【0062】
また、本実施形態では、照明操作器102からの指令に対するバックアップデータは、照明操作器102及び照明操作器102以外の操作器のいずれかによって、バックアップ部111に設定可能である。このため、スタジオ105の使用者等は、バックアップ指令の指令内容を、スタジオ105で撮影される番組内容等のスタジオ105での運用内容に対応した指令内容に、設定可能である。バックアップ指令の指令内容がスタジオ105での運用内容に対応した指示内容に予め設定されることにより、スタジオ105の運用中に照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間で適正に通信が行われなくても、スタジオ105での運用内容に対応させて、スタジオ105の照明器具101の作動が適切に制御される。例えば、スタジオ105の運用中に照明操作器102とスタジオ側制御ユニット103との間で適正に通信が行われなくても、スタジオ105での運用内容に対して適切な照明品質が、スタジオ105において確保される。
【0063】
これら少なくとも一つの実施形態又は実施例によれば、中央制御部は、照明操作器とスタジオ側制御ユニットとの間の通信状態が適正である場合は、IP通信を用いて照明操作器から伝達された指令を、バックアップ部から照明器具に出力させる。そして、中央制御部は、前述の通信状態が適正でない場合は、バックアップデータから生成されたバックアップ指令を、照明操作器からの指令の代わりにバックアップ部から照明器具に出力させる。これにより、照明操作器とスタジオ側との間でのIP通信を用いた通信状態が適正でない場合でも、スタジオの照明器具の作動が適切に制御される照明システムを提供することができる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、上述した実施形態では、スタジオに照明システム100を用いる実施形態を説明したが、本実施形態の照明システム100はスタジオ以外に用いられてもよい。例えば、舞台又は劇場等に用いられてもよく、その場合は、上述した説明に登場するスタジオは、舞台や劇場等の照明システム100を用いる場所に置き換えて解釈することが可能である。
以下、付記を記載する。
[1]スタジオに設置される照明器具と;
操作入力に基づいて、前記照明器具の作動に関する指令を出力する照明操作器と;
前記スタジオの付帯設備として設けられ、IP通信を用いて前記照明操作器と通信するスタジオ側制御ユニットと;
を具備し、
前記スタジオ側制御ユニットは、
前記照明操作器から出力される前記指令に対するバックアップデータが設定されるバックアップ部と;
前記照明操作器と前記スタジオ側制御ユニットとの間の通信状態が適正である場合は、前記IP通信を用いて前記照明操作器から伝達された前記指令を前記バックアップ部から前記照明器具に出力させ、前記通信状態が適正でない場合は、前記バックアップデータから生成されたバックアップ指令を、前記照明操作器からの前記指令の代わりに前記バックアップ部から前記照明器具に出力させる中央制御部と;
を備える、照明システム。
[2]前記中央制御部は、前記通信状態が適正でないことを示す通知信号を複数の信号パターンで前記バックアップ部に出力可能であるとともに、前記複数の信号パターンの中から前記スタジオの電源系統の状況に少なくとも対応する信号パターンで、前記通知信号を前記バックアップ部に出力し、
前記バックアップ部に設定される前記バックアップデータでは、前記バックアップ指令に関して互いに対して指令内容が異なる複数の指令パターンが設定され、
前記バックアップ部は、前記複数の指令パターンの中から前記中央制御部からの前記通知信号の前記信号パターンに対応した指令パターンで、前記バックアップ指令を前記照明器具に出力する、
[1]の照明システム。
[3]前記バックアップデータは、前記照明操作器及び前記照明操作器以外の操作器のいずれかによって、前記バックアップ部に設定可能である、[1]又は[2]の照明システム。
【符号の説明】
【0065】
100…照明システム、101…照明器具、102…照明操作器、103…スタジオ側制御ユニット、105…スタジオ、106…操作室、111…バックアップ部、112…中央制御部。
図1
図2
図3
図4