(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20240521BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240521BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240521BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20240521BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20240521BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20240521BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/106
B33Y30/00
B29C64/321
B29C64/386
B29C64/295
(21)【出願番号】P 2020164847
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古屋 周作
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-209995(JP,A)
【文献】特開2019-025760(JP,A)
【文献】特表2017-528340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0097307(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーターを有し、貫通孔が設けられた加熱ブロックと、
ノズル開口を有するノズル流路が設けられ、前記加熱ブロックの前記貫通孔に着脱可能に取り付けられるノズルチップと、
前記加熱ブロックに取り付けられた前記ノズルチップである造形用ノズルチップの前記ノズル流路に向けて材料を搬送する材料搬送機構と、
前記造形用ノズルチップの前記ノズル開口から、前記加熱ブロックの熱によって可塑化した前記材料が吐出されて積層されるステージと、
前記造形用ノズルチップを前記ステージに対して移動させ、前記造形用ノズルチップから前記ステージに向けて前記材料を吐出させることによって、三次元造形物を造形する制御部と、を備え、
前記ノズルチップは、前記加熱ブロックの熱が前記ステージに積層された前記材料へ伝熱することを抑制するシールドを有し、
前記制御部は、前記造形用ノズルチップから吐出された前記材料の累積吐出量を決定する、三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記材料を収容する材料収容部を有し、
前記材料搬送機構は、前記材料収容部に収容された前記材料を前記造形用ノズルチップの前記ノズル流路に向けて搬送し、
前記制御部は、前記材料収容部に収容された前記材料の量に基づいて前記累積吐出量を決定する、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記材料搬送機構によって搬送された前記材料の搬送量に基づいて前記累積吐出量を決定する、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記造形用ノズルチップから前記ステージに向けて吐出された前記材料の量に基づいて前記累積吐出量を決定する、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記造形用ノズルチップから吐出する前記材料の量に関する吐出量情報を含む造形データに従って前記三次元造形物を造形し、
前記制御部は、前記造形データに基づいて前記累積吐出量を決定する、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
造形空間を有するチャンバーと、
前記造形空間を加熱するチャンバー加熱部と、
報知部と、を備え、
前記造形空間に、前記加熱ブロック、前記造形用ノズルチップ、及び、前記ステージが配置され、
前記制御部は、前記ヒーターを制御して、前記造形用ノズルチップの温度をチップ温度T
t[℃]に調整し、かつ、前記チャンバー加熱部を制御して、前記造形空間の温度をチャンバー温度T
c[℃]に調整して、前記三次元造形物を造形し、
前記制御部は、前記三次元造形物の造形に先立って、下記式(1)を満たす場合に、前記報知部を制御して、前記造形用ノズルチップの寿命に関する情報を報知する、三次元造形装置。
(S/S
L)×(T
t/T
c)>0.92 …(1)
(Sは前記累積吐出量を表し、S
Lは前記造形用ノズルチップが吐出可能な前記材料の最大量を表す。)
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
造形空間を有するチャンバーと、
前記造形空間を加熱するチャンバー加熱部と、
報知部と、を備え、
前記造形空間に、前記加熱ブロック、前記造形用ノズルチップ、及び、前記ステージが配置され、
前記制御部は、前記ヒーターを制御して、前記造形用ノズルチップの温度をチップ温度T
t[℃]に調整し、かつ、前記チャンバー加熱部を制御して、前記造形空間の温度をチャンバー温度T
c[℃]に調整して、前記三次元造形物を造形し、
前記制御部は、前記三次元造形物の造形に先立って、下記式(2)を満たす場合に、前記報知部を制御して、前記造形用ノズルチップの寿命に関する情報を報知する、三次元造形装置。
(S/S
L)×(T
t/T
c)×(t
v/t
w)>0.39 …(2)
(Sは前記累積吐出量を表し、S
Lは前記造形用ノズルチップが吐出可能な前記材料の最大量を表し、t
vは前記三次元造形装置の起動状態において前記造形用ノズルチップが前記材料を吐出した時間である吐出時間を表し、t
wは前記起動状態において前記造形用ノズルチップが前記材料を吐出せず待機した時間を表す。)
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記造形用ノズルチップと、決定された前記累積吐出量とを関連付けて記録する、三次元造形装置。
【請求項9】
請求項8に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、
前記造形用ノズルチップと関連付けられた前記累積吐出量を取得し、
取得した前記累積吐出量に、前記造形用ノズルチップが吐出した前記材料の吐出量を加算して新たな前記累積吐出量を算出して決定し、
新たな前記累積吐出量と前記造形用ノズルチップとを関連付けて記録する、三次元造形装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の三次元造形装置であって、
前記ノズルチップは、前記ノズルチップを識別する情報に関するノズル情報を記憶するノズル情報記憶部を有する、三次元造形装置。
【請求項11】
請求項10に記載の三次元造形装置であって、
前記ノズル情報記憶部は、前記ノズル流路に沿った方向において、前記ノズル開口と前記シールドとの間に位置する、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形装置に関し、例えば、特許文献1には、溶融した熱可塑性の材料を、予め設定された形状データにしたがって走査するノズルから基台上に押し出し、その基台上で硬化した材料の上に更に溶融した材料を積層して三次元造形物を造形する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、材料を溶融するためのヒーターの熱が、基台上の三次元造形物へと伝達され、三次元造形物が変形する可能性があった。また、経年使用によって、ノズル流路の壁面に材料が堆積し、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、ヒーターを有し、貫通孔が設けられた加熱ブロックと、ノズル開口を有するノズル流路が設けられ、前記加熱ブロックの前記貫通孔に着脱可能に取り付けられるノズルチップと、前記加熱ブロックに取り付けられた前記ノズルチップである造形用ノズルチップの前記ノズル流路に向けて材料を搬送する材料搬送機構と、前記造形用ノズルチップの前記ノズル開口から、前記加熱ブロックの熱によって可塑化した前記材料が吐出されて積層されるステージと、前記造形用ノズルチップを前記ステージに対して移動させ、前記造形用ノズルチップから前記ステージに向けて前記材料を吐出させることによって、三次元造形物を造形する制御部と、を備える。前記ノズルチップは、前記加熱ブロックの熱が前記ステージに積層された前記材料へ伝熱することを抑制するシールドを有し、前記制御部は、前記造形用ノズルチップから吐出された前記材料の累積吐出量を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す図。
【
図2】第1実施形態の材料収容部および吐出部の概略構成を示す図。
【
図3】スクリューの溝形成面側の構成を示す概略斜視図。
【
図4】バレルのスクリュー対向面側の構成を示す上面図。
【
図5】貫通孔へのノズルチップの着脱を説明する図。
【
図6】第1実施形態における三次元造形処理を示す工程図。
【
図7】第1実施形態における寿命到達判定を示す工程図。
【
図10】第1実施形態における累積吐出量決定処理を示す工程図。
【
図11】寿命判定値Bおよび寿命判定値Cを示す図。
【
図12】第2実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す図。
【
図13】第3実施形態における寿命到達判定処理を示す工程図。
【
図14】第4実施形態における寿命到達判定処理を示す工程図。
【
図15】第5実施形態における寿命到達判定処理を示す工程図。
【
図16】第6実施形態における寿命到達判定処理を示す工程図。
【
図17】第7実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す図。
【
図18】第7実施形態の吐出部の概略構成を説明する図。
【
図19】第8実施形態としての三次元造形システムの構成を示す概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置5の概略構成を示す図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向とを、両方含む。X軸及びY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。
図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。
【0008】
本実施形態の三次元造形装置5は、第1吐出部100aと、第2吐出部100bと、第1材料収容部20aと、第2材料収容部20bと、チャンバー110と、移動機構部210と、ステージ220と、制御部300と、報知部400とを備える。なお、以下では、第1吐出部100aと第2吐出部100bとを特に区別することなく説明する場合、単に、吐出部100と呼ぶこともある。同様に、第1材料収容部20aと第2材料収容部20bとを特に区別することなく説明する場合、単に、材料収容部20と呼ぶこともある。
【0009】
チャンバー110は、内部に造形空間111を有し、三次元造形装置5の一部を収容する筐体である。本実施形態では、造形空間111には、材料収容部20と、吐出部100と、移動機構部210と、ステージ220とが収容されている。チャンバー110には、例えば、造形空間と外部とを連通させる開口部や、開口部を開閉する扉等が設けられていてもよい。この場合、ユーザーは、扉を開いて開口部を開状態とすることで、チャンバー110内の造形物を開口部から取り出すことができる。
【0010】
チャンバー加熱部115は、チャンバー110内に設けられている。チャンバー加熱部115はチャンバー110内の造形空間111を加熱する。チャンバー加熱部115は、例えば、チャンバー110内を加熱するヒーターによって構成されていてもよいし、加熱された空気をチャンバー110外から取り入れつつチャンバー110内外で空気を循環させる循環装置によって構成されていてもよい。本実施形態のチャンバー加熱部115は、制御部300によって制御される。制御部300は、例えば、図示しない温度センサーによって取得された温度を参照しつつ、チャンバー加熱部115の出力を調整することによって、チャンバー110内の温度を調整する。
【0011】
移動機構部210は、吐出部100とステージ220との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構部210は、第1吐出部100aおよび第2吐出部100bに対して、ステージ220を移動させる。なお、ステージ220に対する第1吐出部100aや第2吐出部100bの相対的な位置の変化を、単に、第1吐出部100aや第2吐出部100bの移動と呼ぶこともある。本実施形態における移動機構部210は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ220をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。各モーターは、制御部300の制御下にて駆動する。なお、他の実施形態では、移動機構部210は、ステージ220を移動させる構成ではなく、例えば、ステージ220を移動させずに吐出部100を移動させる構成であってもよい。また、移動機構部210は、ステージ220と吐出部100との両方を移動させる構成であってもよい。
【0012】
制御部300は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部300は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、三次元造形物を造形するための三次元造形処理を実行する機能等、種々の機能を発揮する。なお、制御部300は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0013】
図2は、本実施形態の材料収容部20および吐出部100の概略構成を示す図である。なお、
図2には、第1材料収容部20aおよび第1吐出部100aの構成が示されている。第2材料収容部20bおよび第2吐出部100bの構成は、特に説明しない限り、それぞれ、第1材料収容部20aおよび第1吐出部100aの構成と同じである。以下では、第1吐出部100aに係る構成要素と第2吐出部100bに係る構成要素とを区別して説明する場合には、第1吐出部100aに係る構成要素には、符号の末尾に「a」を付し、第2吐出部100bに係る構成要素には、符号の末尾に「b」を付す。第1吐出部100aの構成要素と第2吐出部100bの構成要素とを特に区別せずに説明する場合には、符号の末尾に「a」や「b」を付さずに説明する。
【0014】
上述したように、吐出部100は、可塑化部30と、ノズルチップ60とを備えている。可塑化部30は、材料搬送機構40と、加熱ブロック90とを有している。吐出部100には、材料収容部20に収容されている材料が供給される。より具体的には、第1吐出部100aには、第1材料収容部20aに収容されている第1材料が供給され、第2吐出部100bには第2材料収容部20bに収容されている第2材料が供給される。吐出部100は、制御部300の制御下で、材料収容部20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化部30によって可塑化して可塑化材料を生成し、生成した可塑化材料をノズルチップ60からステージ220上に吐出して積層させる。なお、ステージ220に積層された材料のことを、積層材料と呼ぶこともある。また、材料をノズルから吐出し、吐出した材料を積層させることによって三次元造形物を造形する三次元造形の方式を、材料押出法(ME:Material Extrusion)と呼ぶこともある。
【0015】
また、「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0016】
本実施形態の材料収容部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。本実施形態において、材料収容部20に収容されている材料は、ペレット状の樹脂である。本実施形態の材料収容部20は、ホッパーによって構成されている。材料収容部20に収容された材料は、材料収容部20と吐出部100とを接続するように材料収容部20の下方に設けられた供給路22を介して、吐出部100の可塑化部30の材料搬送機構40に供給される。本実施形態では、第1材料収容部20aには第1材料が収容されており、第1材料は、第1吐出部100aの第1材料搬送機構40aに供給される。第2材料収容部20bには第2材料が収容されており、第2材料は、第2吐出部100bの第2材料搬送機構40bに供給される。
【0017】
なお、材料のうち、意図した形状を有する三次元造形物を造形するために用いられる材料のことを、造形材料と呼ぶこともある。また、材料のうち、三次元造形物の造形において、造形材料を支持することによって、造形途中の造形物の形状を保持するために用いられる材料のことを、サポート材料と呼ぶこともある。ユーザーは、三次元造形物の完成後、三次元造形物からサポート材料を除去することによって、意図した形状の三次元造形物を得ることができる。サポート材料は、例えば、三次元造形物の造形材料によって造形された部分から物理的に剥離されることによって除去される。なお、水等の液体に可溶なサポート材料を、特に、可溶性サポート材料と呼ぶこともある。
【0018】
加熱ブロック90は、ヒーター58を有している。また、加熱ブロック90には、貫通孔80が設けられている。貫通孔80は、ノズルチップ60を着脱可能に構成されている。材料搬送機構40は、加熱ブロック90の貫通孔80に取り付けられたノズルチップ60のノズル流路61に向けて、材料を搬送する。なお、加熱ブロック90に取り付けられたノズルチップ60のことを、造形用ノズルチップと呼ぶこともある。また、ノズルチップ60が加熱ブロック90に取り付けられた状態のことを、装着状態と呼ぶこともある。可塑化部30は、材料収容部20から材料搬送機構40に供給された材料を、材料搬送機構40によって造形用ノズルチップのノズル流路61に向かって搬送し、加熱ブロック90の熱によって加熱して可塑化する。
【0019】
本実施形態の材料搬送機構40は、スクリューケース31と、スクリューケース31内に収容されたスクリュー41と、スクリュー41を駆動させる駆動モーター32とを備えている。本実施形態の加熱ブロック90は、開口部94を有するケース部91と、ケース部91内に配置されたバレル50とを備えている。バレル50には連通孔56が設けられている。本実施形態の貫通孔80は、開口部94と連通孔56とが連通することによって形成されている。また、上述したヒーター58は、具体的には、バレル50に内蔵されている。なお、本実施形態のスクリュー41は、いわゆるフラットスクリューであり、「スクロール」と呼ばれることもある。
【0020】
スクリュー41は、その中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。スクリュー41は、バレル50に対向する面に、スクリュー溝45が形成された溝形成面42を有している。溝形成面42は、具体的には、後述するバレル50のスクリュー対向面52と対向する。なお、本実施形態の中心軸RXは、スクリュー41の回転軸と一致する。また、スクリュー41の溝形成面42側の構成の詳細については後述する。
【0021】
駆動モーター32は、スクリュー41の溝形成面42とは反対側の面に接続されている。駆動モーター32は、制御部300の制御下で駆動される。スクリュー41は、駆動モーター32の回転で生じるトルクによって、中心軸RXを中心に回転する。なお、駆動モーター32は、直接、スクリュー41と接続されていなくてもよく、例えば、減速機を介して接続されていてもよい。
【0022】
バレル50は、スクリュー41の溝形成面42に対向するスクリュー対向面52を有している。ケース部91は、バレル50のスクリュー対向面52と反対側の面、すなわち、バレル50の下面を覆うように配置されている。上述した連通孔56および開口部94は、スクリュー41の中心軸RXと重なる位置に設けられている。すなわち、貫通孔80は、中心軸RXと重なる位置に位置している。
【0023】
ノズルチップ60は、上述したように、加熱ブロック90の貫通孔80に着脱可能に取り付けられる。ノズルチップ60には、上述したノズル流路61が設けられている。ノズル流路61は、ノズルチップ60の先端にノズル開口63を有し、ノズルチップ60の後端に流入口65を有している。なお、本実施形態では、ノズル開口63は、流入口65の-Z方向の位置に位置している。本実施形態のノズルチップ60は、貫通孔80と流入口65とを介してノズル流路61に流入した材料を、ノズル開口63から、ステージ220に向けて吐出する。
【0024】
本実施形態では、第1ノズルチップ60aは、第1吐出部100aの第1加熱ブロック90aに取り付けられ、第1材料収容部20aから供給された第1材料を吐出する。第2ノズルチップ60bは、第2吐出部100bの第2加熱ブロック90bに取り付けられ、第2材料収容部20bから供給された第2材料を吐出する。
【0025】
ノズルチップ60のうち、意図した形状を形成するために材料を吐出するノズルチップ60のことを、メインチップと呼ぶこともある。また、造形途中の造形物の形状を保持するために材料を吐出するノズルチップ60のことを、サポート用チップと呼ぶこともある。可溶性サポート材料を吐出するノズルチップ60のことを、特に、可溶性サポート用チップと呼ぶこともある。なお、サポート用チップから吐出される材料はサポート材料でなくてもよく、例えば、第1材料と第2材料とが同じ造形材料であっても、第1ノズルチップ60aをメインチップとして用い、第2ノズルチップ60bをサポート用チップとして用いることができる。
【0026】
図3は、スクリュー41の溝形成面42側の構成を示す概略斜視図である。
図3には、スクリュー41の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。上述したように、溝形成面42には、スクリュー溝45が設けられている。スクリュー41の溝形成面42の中央部であるスクリュー中央部47は、スクリュー溝45の一端が接続されている窪みとして構成されている。スクリュー中央部47は、
図1に示されているバレル50の連通孔56に対向する。スクリュー中央部47は、中心軸RXと交差する。
【0027】
スクリュー41のスクリュー溝45は、いわゆるスクロール溝を構成する。スクリュー溝45は、スクリュー中央部47から、スクリュー41の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。スクリュー溝45は、インボリュート曲線状や、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面42には、スクリュー溝45の側壁部を構成し、各スクリュー溝45に沿って延びている凸条部46が設けられている。スクリュー溝45は、スクリュー41の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、材料収容部20の供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0028】
図3には、3つのスクリュー溝45と、3つの凸条部46と、を有するスクリュー41の例が示されている。スクリュー41に設けられるスクリュー溝45や凸条部46の数は、3つには限定されず、1つのスクリュー溝45のみが設けられていてもよいし、2以上の複数のスクリュー溝45が設けられていてもよい。また、
図3には、材料導入口44が3箇所に形成されているスクリュー41の例が図示されている。スクリュー41に設けられる材料導入口44の数は、3箇所に限定されず、1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0029】
図4は、バレル50のスクリュー対向面52側の構成を示す上面図である。上述したとおり、スクリュー対向面52の中央には、連通孔56が形成されている。スクリュー対向面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、一端が連通孔56に接続され、連通孔56からスクリュー対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、案内溝54の一端は連通孔56に接続されていなくてもよい。また、バレル50には案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0030】
図5は、貫通孔80へのノズルチップ60の着脱を説明する図である。
図5には、貫通孔80から取り外された状態におけるノズルチップ60が示されている。本実施形態では、ノズルチップ60の貫通孔80と接続される部分にはノズルネジ部67が形成され、貫通孔80のノズルチップ60と接続される部分には、ノズルネジ部67と螺合する貫通孔ネジ部81が設けられている。ノズルチップ60は、貫通孔80に挿入され、ノズルネジ部67と貫通孔ネジ部81とを螺合させることによって、加熱ブロック90へ取り付けられる。また、ノズルチップ60は、ノズルネジ部67と貫通孔ネジ部81との螺合を解除され、貫通孔80から引き抜かれることによって、加熱ブロック90から取り外される。本実施形態では、ノズルチップ60は、バレル50の下部に位置し、連通孔56とノズル流路61とが連通するように加熱ブロック90に取り付けられる。
【0031】
ノズルチップ60は、シールド68を有している。シールド68は、加熱ブロック90の熱が積層材料へ伝熱することを抑制する。具体的には、シールド68は、ノズル流路61に沿った方向であるZ方向における他の部分と比較して、X方向およびY方向に沿った断面の面積が大きい部分として形成されている。シールド68は、装着状態において、加熱ブロック90と積層材料との間に位置することによって、加熱ブロック90から積層材料への伝熱を抑制する。
【0032】
シールド68は、例えば、一般的に低い放射率を有するステンレス鋼等によって形成される。シールド68は、例えば、ステンレス鋼以外によって形成されてもよく、例えば、ステンレス鋼よりも低い放射率を有するアルミニウム等によって形成されることで、加熱ブロック90の熱放射による積層材料への伝熱の抑制効果がより高まる。また、例えば、シールド68が、一般的に低い熱伝導率を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等によって形成されることで、加熱ブロック90からシールド68への熱伝導がより抑制される。シールド68は、ノズルチップ60と一体に形成されてもよいし、別体として形成されてもよい。更に、シールド68は、複数の材料によって形成されてもよい。
【0033】
図2に示すように、本実施形態では、シールド68と加熱ブロック90との間には、隙間Gpが形成されている。隙間Gpは、加熱ブロック90からシールド68への熱伝導を抑制し、シールド68による加熱ブロック90から積層材料への伝熱の抑制効果をより高める。なお、他の実施形態では、シールド68と加熱ブロック90との間に隙間Gpが形成されていなくてもよく、すなわち、シールド68と加熱ブロック90とが直接、接していてもよい。
【0034】
図5に示すように、本実施形態のノズルチップ60は、記憶媒体としてのICチップで構成されたメモリー66を有している。メモリー66は、ノズルチップ60のノズル情報を記憶するノズル情報記憶部として機能する。ノズルチップ60のノズル情報とは、ノズルチップ60を識別する情報に関する情報であり、例えば、ノズルチップ60の個体番号である。なお、本実施形態のメモリー66は、加熱ブロック90にノズルチップ60が取り付けられることによって、図示しない配線と接続部とを介して、制御部300と電気的に接続される。
【0035】
メモリー66は、ノズル流路61に沿った方向であるZ方向において、ノズル開口63とシールド68との間に位置している。これによって、装着状態において、メモリー66と加熱ブロック90との間にシールド68が位置する。そのため、シールド68によって加熱ブロック90から積層材料への伝熱が抑制されるのと同様に、シールド68によって加熱ブロック90からメモリー66への伝熱が抑制される。
【0036】
本実施形態では、
図1に示した制御部300は、図示しない補助記憶装置を有している。制御部300は、上述した図示しない配線と接続部とを介してノズルチップ60のメモリー66に記憶されたノズル情報を取得し、取得したノズル情報と累積吐出量とを関連付けて、補助記憶装置に記録する。累積吐出量とは、ノズルチップ60から吐出された材料の量の累積値である。なお、累積吐出量の詳細や、ノズル情報と累積吐出量との関連付けの詳細については、後述する。
【0037】
図1に示した本実施形態の報知部400は、液晶モニターによって構成され、視覚情報を液晶モニターに表示することによって情報を報知する。報知部400は、情報として、ノズルチップ60の寿命に関する情報である寿命情報を報知する。
【0038】
また、本実施形態の報知部400は、情報として、上述したノズルチップ60の累積吐出量と、ノズルチップ60の最大吐出量とを報知する。最大吐出量は、ある材料をノズルチップ60から継続して吐出した場合にノズルチップ60から吐出可能な材料の量の最大量として、実験等によって定められる。ノズルチップ60の累積吐出量が最大吐出量に到達した場合、ノズル詰まり等によって、ノズルチップ60の吐出性能が低下する可能性が高まる。最大吐出量は、例えば、材料の種類ごとや、ノズルチップ60のノズル開口63の径ごとに定められ、制御部300の補助記憶装置にデータベースとして記録される。なお、累積吐出量や最大吐出量等の、ノズルチップ60からの材料の吐出に関する情報を吐出情報と呼ぶこともある。報知部400は、吐出情報として、累積吐出量や最大吐出量の他に、例えば、ノズルチップ60の最大吐出量に対する累積吐出量の割合を報知してもよい。また、報知部400は、例えば、寿命情報や吐出情報以外の、三次元造形装置5の制御状態等に関する情報を報知してもよい。
【0039】
図6は、本実施形態における三次元造形処理を示す工程図である。三次元造形処理とは、三次元造形物を造形するための処理を指す。制御部300は、例えば、図示しない入力部等を介してユーザーによる開始命令を受けた際に、三次元造形処理を開始する。本実施形態では、制御部300は、三次元造形処理において、後述する造形データに基づいて吐出部100と移動機構部210とを制御して、加熱ブロック90に取り付けられたノズルチップ60である造形用ノズルチップをステージ220に対して移動させ、造形用ノズルチップからステージ220に向けて可塑化した材料を吐出させることによって、ステージ220上に可塑化した材料を積層させる。より具体的には、制御部300は、ステージ220上に吐出させた可塑化した材料を固化させつつ、材料の層を形成することによって、三次元造形物を造形する。材料の固化とは、吐出された可塑化した材料が流動性を失うことを指す。本実施形態では、造形材料は、冷えることによって熱収縮するとともに可塑性を失って固化する。
【0040】
なお、本実施形態では、制御部300は、三次元造形処理において、1つのノズルチップ60から1種類の材料のみを吐出させる。すなわち、本実施形態では、制御部300は、三次元造形処理において、第1ノズルチップ60aから第1材料のみを吐出させ、第2ノズルチップ60bから第2材料のみを吐出させる。なお、制御部300は、例えば、ノズルチップ60から2種類以上の材料が吐出されることを抑制するための処理を実行してもよい。この場合、制御部300は、例えば、造形用ノズルチップのノズル情報と材料の種類とを関連付けて図示しない制御部300の補助記憶装置に記録し、造形用ノズルチップから、そのノズル情報と関連付けられていない材料が吐出されることが予想される場合に、警告を行ってもよい。
【0041】
ステップS100にて、制御部300は、造形データを取得する。制御部300は、ステップS100において、例えば、外部のコンピューター等から造形データを取得する。なお、制御部300が造形データを生成する機能を有する場合、制御部300は、自ら生成した造形データを読み込むことによって造形データを取得してもよい。造形データは、ノズルチップ60の移動経路を表す造形パスを複数含むパスデータと、造形パスにおいてノズルチップ60から吐出される材料の種類および吐出量を決定する材料データとを含んでいる。
【0042】
本実施形態では、造形パスは、移動経路の始点と終点とを示す座標データによって、造形用ノズルチップの移動経路を指定する。本実施形態の材料データは、各造形パスにおいて材料の種類を指定し、指定された材料を単位移動量あたりに吐出する体積を指定することによって、その造形パスにおいて吐出される材料の種類および吐出量を決定する。より具体的には、本実施形態の材料データは、各造形パスにおいて材料を吐出する吐出部100を指定することによって、その造形パスにおける材料の種類を決定する。従って、本実施形態では、材料収容部20に保持されている材料の種類と、材料収容部20から材料を供給される吐出部100とが予め紐付けられている。制御部300は、例えば、図示しない入力部等を介して入力された材料収容部20に収容されている材料の種類の情報に基づいて、材料の種類と吐出部100との紐付けを行うことができる。
【0043】
また、本実施形態の造形データは、パージ処理において吐出される材料の種類および吐出量を指定するパージデータを含んでいる。パージ処理とは、ノズル流路61を清掃するために、造形用ノズルチップから予め定められた種類および量の材料を吐出させる処理である。パージデータは、例えば、予め定められた本数の造形パスごとや、予め定められた材料の量ごとにパージ処理を実行するように構成される。本実施形態のパージデータは、材料データと同様に、パージ処理において吐出される材料の種類を指定し、パージ処理における材料の量として材料の体積を指定する。
【0044】
ステップS110にて、制御部300は、寿命到達判定を行う。寿命到達判定とは、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを判定するための処理である。制御部300は、ステップS110において、寿命到達判定処理を実行することによって、寿命到達判定を行う。
【0045】
図7は、本実施形態における寿命到達判定を示す工程図である。ステップS111にて、制御部300は、造形用ノズルチップに関連付けられた累積吐出量を取得する。本実施形態では、制御部300は、ステップS111において、造形用ノズルチップのノズル情報を取得し、取得したノズル情報に関連付けられている累積吐出量を、制御部300の補助記憶装置から読み込む。具体的には、制御部300は、ステップS111において、第1ノズルチップ60aのノズル情報に基づいて、第1ノズルチップ60aの累積吐出量を読み込み、第2ノズルチップ60bのノズル情報に基づいて、第2ノズルチップ60bの累積吐出量を読み込む。
【0046】
制御部300によってステップS111で取得される累積吐出量は、ステップS111の直前に実行された累積吐出量決定処理によって決定された累積吐出量である。より詳しくは、この累積吐出量は、ステップS111に先立って実行された別の三次元造形処理において、最後に実行された累積吐出量決定処理によって決定された累積吐出量である。累積吐出量決定処理とは、制御部300によって実行される、造形用ノズルチップの累積吐出量を決定する処理である。累積吐出量決定処理の詳細については後述する。なお、制御部300は、ステップS111において、造形用ノズルチップのノズル情報に累積吐出量が関連付けられていない場合、その造形用ノズルチップが一度も材料を吐出した実績がないと認識し、その造形用ノズルチップの累積吐出量が0であると認識する。
【0047】
ステップS112にて、制御部300は、ステップS111において取得した累積吐出量Sと、最大吐出量SLと、寿命判定値Aとの関係が、下記式(3)を満たすか否かを判定する。
S/SL>A … (3)
制御部300は、式(3)を満たす場合、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定する。本実施形態では、制御部300は、第1ノズルチップ60aと、第2ノズルチップ60bとについて、式(3)に基づいて判定を行う。例えば、第1ノズルチップ60aから吐出された第1材料の累積吐出量Sと、第1ノズルチップ60aから第1材料を吐出する場合の最大吐出量SLと、第1材料の寿命判定値Aとが式(3)の関係を満たす場合、第1ノズルチップ60aが寿命に到達したと判定する。
【0048】
図8は、寿命判定値Aを示す図である。
図8には、材料として、ABS、ナイロン12、ポリカーボネート(PC)、および、ポリフェニルスルホン(PPSF)の寿命判定値Aとが示されている。寿命判定値Aは、ノズルチップ60の温度を基準チップ温度T
ts[℃]に調整し、かつ、チャンバー110内の温度を基準チャンバー温度T
cs[℃]に調整して三次元造形物を造形する場合に、三次元造形物の造形中にノズルチップ60の吐出性能が低下する可能性を低減でき、かつ、ノズルチップ60をできるだけ長期間使用できる値として、見出された値である。すなわち、寿命判定値Aが小さいほど、累積吐出量Sが最大吐出量S
Lに達するまでに、より余裕がある状態でノズルチップ60が寿命に到達したと判定されるため、三次元造形物の造形中にノズルチップ60が経年使用によるノズル詰まりを起こす可能性がより小さくなる。一方で、寿命判定値Aが小さいほど、ノズルチップ60の使用可能期間が短くなる。
【0049】
図8に示すように、寿命判定値Aは、材料の種類ごとに定められる。また、
図8には、上述した基準チップ温度T
tsおよび基準チャンバー温度T
csが示されている。基準チップ温度T
tsおよび基準チャンバー温度T
csは、それぞれ、三次元造形物の造形精度を高く保持できる温度として、材料の種類ごとに定められた温度である。
【0050】
図7のステップS112において、式(3)を満たすと判定された場合、ステップS113にて、制御部300は、報知部400を制御して造形用ノズルチップの寿命情報を報知する。本実施形態では、制御部300は、ステップS113において、報知部400を構成する液晶モニターにダイアログを表示することによって、ノズルチップ60が寿命に到達したことを報知する。ユーザーは、報知された寿命情報に基づいて、例えば、造形用ノズルチップを、寿命に到達していない別のノズルチップ60に交換できる。なお、制御部300は、ステップS113において、例えば、ユーザーに対して造形用ノズルチップの交換を指示してもよい。また、制御部300は、ステップS113の後、造形用ノズルチップが交換されるまで三次元造形装置5を待機させてもよい。この場合、制御部300は、寿命情報を示すダイアログを液晶モニターに表示させたまま待機してもよい。更に、制御部300は、例えば、ステップS113において、予め定められた時間が経過しても造形用ノズルチップが交換されない場合、材料相違判定処理を終了させてもよい。
【0051】
制御部300は、ステップS113の後、ステップS111に処理を戻し、新たに加熱ブロック90に取り付けられたノズルチップ60に関連付けられた累積吐出量を、同様に取得する。その後、ステップS112にて、制御部300は、同様に、式(3)を満たすか否かを判定する。
【0052】
ステップS112において式(3)を満たさないと判定された場合、制御部300は、寿命到達判定処理を終了し、
図6のステップS115へ処理を進める。ステップS115にて、制御部300は、報知部400を制御して、吐出情報の表示を開始する。
【0053】
図9は、報知部400に表示される吐出情報の例を示す図である。本実施形態では、ステップS115以降、制御部300は、報知部400を制御することによって、報知部400に、
図9に示したような吐出情報を表示させた状態を保つ。
図9に示すように、制御部300は、加熱ブロック90に取り付けられたノズルチップ60ごとに、報知部400に吐出情報を表示させる。なお、報知部400に表示される吐出情報は、後述するステップS140や、ステップS180において、制御部300によって更新される。
【0054】
ステップS120において、制御部300は、ステップS100で取得した造形データに基づいて、造形データに含まれる造形パス1本分を造形する。
【0055】
ステップS130にて、制御部300は、造形用ノズルチップから吐出された材料の累積吐出量を決定する。制御部300は、ステップS130において、累積吐出量決定処理を実行することによって、累積吐出量を決定する。なお、本実施形態では、累積吐出量は、材料の体積として表される。また、本実施形態では、累積吐出量は、後述するように、制御部300によって算出されて決定される。
【0056】
図10は、本実施形態における累積吐出量決定処理を示す工程図である。ステップS131にて、制御部300は、直前に材料を吐出した造形用ノズルチップと関連付けられた累積吐出量を取得する。本実施形態では、制御部300は、ステップS131において、ステップS120において材料を吐出した造形用ノズルチップのメモリー66に記憶されているノズル情報に基づいて、
図7のステップS111と同様の方法によって、制御部300の補助記憶装置に記録されている累積吐出量を読み込む。例えば、ステップS120において第1ノズルチップ60aが第1材料を吐出した場合、制御部300は、ステップS131において、第1ノズルチップ60aのノズル情報に基づいて、第1ノズルチップ60aの累積吐出量を読み込む。
【0057】
ステップS132にて、制御部300は、直前に造形用ノズルチップから吐出された材料の吐出量を、ステップS131で読み込んだ累積吐出量へ加算することによって、新たな累積吐出量を算出する。本実施形態では、制御部300は、ステップS132において、新たな累積吐出量を、造形データの材料データに基づいて算出する。より具体的には、例えば、ステップS120において第1ノズルチップ60aが第1材料を吐出した場合、制御部300は、造形データによって指定されている、ステップS120の造形を行うための第1材料の体積を、ステップS120において第1ノズルチップ60aから吐出された第1材料の吐出量として取得する。そして、制御部300は、取得した吐出量を、ステップS131で読み込んだ第1ノズルチップ60aの累積吐出量へ加算することによって、第1ノズルチップ60aの新たな累積吐出量を算出して決定する。
【0058】
ステップS133にて、制御部300は、ステップS132において算出された新たな累積吐出量と、造形用ノズルチップとを再び関連付けることによって、累積吐出量を決定する。本実施形態では、制御部300は、ステップS133において、ステップS132で算出された新たな累積吐出量を、元々造形用ノズルチップのノズル情報と関連付けて補助記憶装置に記録されていた累積吐出量へと上書きすることによって、累積吐出量を決定する。
【0059】
ステップS140にて、制御部300は、ステップS130において決定された累積吐出量に基づいて、吐出情報の表示を更新する。例えば、ステップS130において、第1ノズルチップ60aの累積吐出量が決定された場合、制御部300は、ステップS140において、報知部400を制御して、
図9に示した第1ノズルチップ60aの累積吐出量として、ステップS130で決定された新たな累積吐出量の表示を開始する。
【0060】
図6のステップS150にて、制御部300は、パージ処理を行うか否かを判定する。本実施形態では、制御部300は、ステップS150において、上述したパージデータに基づいて、パージ処理を行うタイミングであるか否かを判定する。制御部300は、ステップS150においてパージ処理を行わないと判定した場合、ステップS190へと処理を進める。制御部300は、ステップS150においてパージ処理を行うと判定した場合、ステップS160にて、パージ処理を行う。本実施形態では、制御部300は、ステップS160において、パージデータによって指定された体積の材料を吐出する。
【0061】
ステップS170にて、制御部300は、ステップS130と同様に、
図10に示した累積吐出量の決定処理を実行することによって、累積吐出量を決定する。なお、制御部300は、ステップS170において実行される累積吐出量の決定処理では、
図10のステップS132において、
図6のステップS160のパージ処理で造形用ノズルチップから吐出された材料の吐出量を、ステップS131で読み込んだ累積吐出量に加算することによって、新たな累積吐出量を算出して決定する。ステップS180にて、制御部300は、ステップS140と同様に吐出情報の表示を更新する。
【0062】
ステップS190にて、制御部300は、三次元造形物が完成したか否かを判定する。本実施形態では、制御部300は、ステップS190において、造形データに含まれる全ての造形パスが造形された場合に、三次元造形物が完成したと判定する。制御部300は、ステップS190において三次元造形物が完成したと判定した場合、三次元造形処理を終了する。制御部300は、ステップS190において三次元造形物が完成していないと判定した場合、ステップS120に処理を戻し、次の造形パス1本分を造形する。このように、制御部300は、全ての造形パス分を造形するまでステップS120からステップS180までの処理を繰り返し実行することによって、三次元造形物を完成させる。なお、この三次元造形処理において最後に決定されたノズルチップ60の累積吐出量は、次回以降の同じノズルチップ60を使用する三次元造形処理において、ノズルチップ60の寿命到達判定に用いられる。
【0063】
なお、他の実施形態では、制御部300は、例えば、
図6に示したステップS130やステップS160において累積吐出量を決定した後、毎回、ステップS110に示した寿命到達判定と同様に、寿命到達判定を実行してもよい。この場合、造形用ノズルチップの累積吐出量が更新された後に、毎回、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かが判定される。従って、このタイミングで寿命に到達したと判定された造形用ノズルチップを他のノズルチップ60に交換することで、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を更に低減できる。
【0064】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置5によれば、ノズルチップ60は、加熱ブロック90からの熱が積層材料へ伝熱することを抑制するシールド68を有し、制御部300は、造形用ノズルチップから吐出された材料の累積吐出量を決定する。そのため、シールド68によって、加熱ブロック90の熱が積層材料へ伝熱することが抑制され、三次元造形物の変形が抑制される。また、決定された材料の累積吐出量に基づいて、三次元造形物の造形に先立って造形用ノズルチップの交換等を実行することによって、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。
【0065】
また、本実施形態では、制御部300は、造形データに基づいて算出される材料の吐出量に基づいて累積吐出量を決定する。そのため、三次元造形物を造形するための造形データに基づいて、簡易に累積吐出量を決定できる。
【0066】
また、本実施形態では、制御部300は、造形用ノズルチップと、決定された累積吐出量とを関連付けて記録する。そのため、例えば、加熱ブロック90からノズルチップ60を一旦取り外して加熱ブロック90に別のノズルチップ60を取り付ける場合や、加熱ブロック90に複数のノズルチップ60を取り付ける場合であっても、造形用ノズルチップの累積吐出量を記録できる。
【0067】
また、本実施形態では、制御部300は、造形用ノズルチップと関連付けられた累積吐出量を取得し、取得した累積吐出量に造形用ノズルチップが吐出した材料の量を加算して新たな累積吐出量を算出して決定し、新たな累積吐出量と造形用ノズルチップとを関連付けて記録する。そのため、加熱ブロック90からノズルチップ60を一旦取り外して加熱ブロック90に別のノズルチップ60を取り付ける場合や、加熱ブロック90に複数のノズルチップ60を取り付ける場合であっても、簡易な方法によって、造形用ノズルチップと関連付けられた累積吐出量を更新できる。
【0068】
また、本実施形態では、ノズルチップ60は、ノズル情報記憶部を有する。そのため、制御部300は、造形用ノズルチップのノズル情報と累積吐出量とを関連付けることによって、造形用ノズルチップと累積吐出量とを関連付けて記録できる。
【0069】
また、本実施形態では、ノズル情報記憶部は、Z方向において、ノズル開口63とシールド68との間に位置している。そのため、装着状態において、シールド68によって、加熱ブロック90からノズル情報記憶部への伝熱が抑制される。
【0070】
図11は、寿命判定値Bおよび寿命判定値Cを示す図である。他の実施形態では、例えば、制御部300は、
図7のステップS112において、上記式(3)以外の関係式に基づいてノズルチップ60の寿命を判定してもよい。例えば、制御部300は、三次元造形処理において、加熱ブロック90のヒーター58を制御して造形用ノズルチップの温度をチップ温度T
t[℃]に調整し、かつ、チャンバー加熱部115を制御して造形空間111の温度をチャンバー温度T
c[℃]に調整して、三次元造形物を造形する場合、
図7のステップS112において、累積吐出量Sと、最大吐出量S
Lと、チップ温度T
tと、チャンバー温度T
cと、
図11に示した寿命判定値Bとの関係が、下記式(4)を満たす場合に、ノズルチップ60が寿命に到達したと判定してもよい。
(S/S
L)×(T
t/T
c)>B …(4)
なお、チップ温度T
tは、チャンバー温度T
cよりも高い温度である。
【0071】
図11に示した寿命判定値Bは、下記式(5)で表される値である。
B=A×T
ts/T
cs …(5)
従って、式(4)は、寿命判定値Aを用いて、下記式(6)のように変形できる。
(S/S
L)×(T
t/T
c)>A×(T
ts/T
cs) …(6)
すなわち、式(4)に基づいて造形用ノズルチップの寿命到達判定が行われる場合、式(3)に基づいて寿命到達判定が行われる場合と比較して、T
t/T
cの値がT
ts/T
csの値よりも大きい場合に、累積吐出量Sが少ない段階であっても、ノズルチップ60が寿命に到達したと判定される可能性がある。T
t/T
cは、例えば、チャンバー温度T
cが同じ場合であっても、チップ温度T
tがより高ければ、より大きな値をとる。この場合、ノズルチップ60のノズル流路61内の材料が高温に曝されることによって変性しやすくなり、経年使用時のノズル詰まりが生じやすくなる。また、T
t/T
cが大きい状態とは、ノズル流路61の温度と造形空間111の温度との温度差が、より大きい状態を表す。従って、この状態では、特にノズル開口63付近で、ノズル流路61と造形空間111との温度差によって、材料の可塑性等の特性が温度変化によって変化しやすくなる。そのため、ノズル開口63付近に材料が固着しやすくなり、経年使用時のノズル詰まりがより生じやすくなる。制御部300は、式(4)に基づいて造形用ノズルチップの寿命到達判定を行うことで、造形時の温度条件を加味した条件で、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを判定できる。
【0072】
また、制御部300は、三次元造形処理において、同様に、加熱ブロック90のヒーター58を制御して造形用ノズルチップの温度をチップ温度T
t[℃]に調整し、かつ、チャンバー加熱部115を制御して造形空間111の温度をチャンバー温度T
c[℃]に調整して、三次元造形物を造形する場合、
図7のステップS112において、累積吐出量Sと、最大吐出量S
Lと、チップ温度T
tと、チャンバー温度T
cと、吐出時間t
vと、待機時間t
wと、
図11に示した寿命判定値Cとの関係が、下記式(7)を満たす場合に、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定してもよい。
(S/S
L)×(T
t/T
c)×(t
v/t
w)>C …(7)
【0073】
なお、吐出時間tvは、三次元造形装置5が起動状態となっている時間である起動時間のうち、造形用ノズルチップが材料を吐出している時間を指す。三次元造形装置5の起動状態とは、例えば、加熱ブロック90のヒーターと、チャンバー加熱部115との少なくともいずれかがオンにされ、造形用ノズルチップや造形空間111が加熱されている状態である。また、待機時間twとは、三次元造形装置5の起動時間のうち、造形用ノズルチップが材料を吐出せず待機している時間を指す。例えば、第1ノズルチップ60aの待機時間には、三次元造形装置5の起動時間のうち、第2ノズルチップ60bが第2材料を吐出し、第1ノズルチップ60aが第1材料を吐出していない時間や、第2ノズルチップ60bと第1ノズルチップ60aとが共に材料を吐出していない時間等が含まれる。すなわち、待機時間twは、三次元造形装置5の起動時間から、吐出時間tvを差し引いた時間であると言うこともできる。従って、制御部300は、例えば、三次元造形装置5の起動時間と、吐出時間tvとを計測し、三次元造形装置5の起動時間から吐出時間tvを差し引くことによって、待機時間twを算出できる。吐出時間tvや待機時間twは、例えば、累積吐出量情報と同様に、造形用ノズルチップと関連付けて記録される。
【0074】
図11に示した寿命判定値Cは、下記式(8)で表される値である。
C=0.42×A×(T
ts/T
cs) …(8)
従って、上記式(7)は、寿命判定値Aを用いて、下記式(9)のように変形できる。
(S/S
L)×(T
t/T
c)×(t
v/t
w)>0.42×A×T
ts/T
cs …(9)
すなわち、式(7)に基づいて造形用ノズルチップの寿命到達判定が行われる場合、式(3)に基づいて寿命到達判定が行われる場合と比較して、(T
t/T
c)×(t
v/t
w)の値が0.42×T
ts/T
csの値よりも大きい場合に、累積吐出量Sが少ない段階であっても造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定される可能性がある。
【0075】
式(9)において、tv/twの値が0.42である場合、式(4)に基づいて寿命判定が行われる場合と同様に、Tt/Tcの値がTts/Tcsの値よりも大きい場合に、累積吐出量Sが少ない段階であっても、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定される可能性がある。また、Tt/Tcの値とTts/Tcsとの値が等しい場合、tv/twの値が0.42よりも大きい場合に、累積吐出量Sが少ない段階であっても造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定される可能性がある。tv/twの値は、吐出時間tvが待機時間twに対して相対的に長いほど、より大きな値をとる。この場合、三次元造形物の造形中にノズルチップ60から材料が吐出されている時間が長くなるため、ノズル流路61内に材料が流通している時間が長くなる。そのため、ノズル流路61の流路壁に材料が固着等する可能性が高まり、経年使用時のノズル詰まりがより生じやすくなる。制御部300は、式(7)に基づいて造形用ノズルチップの寿命到達判定を行うことで、造形時の温度条件、および、造形用ノズルチップの吐出時間tvと待機時間twとのバランスを加味した条件で、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを判定できる。なお、式(8)における0.42という値は、一般的な三次元造形における造形用ノズルチップの待機時間に対する吐出時間の比として、定められた値である。また、tv/twの値が0.42である場合、造形用ノズルチップの吐出時間tvと待機時間twとの比は、約3対7となる。
【0076】
B.第2実施形態:
図12は、第2実施形態における三次元造形装置5Bの概略構成を示す図である。本実施形態では、制御部300は、第1実施形態と異なり、造形用ノズルチップからステージ220に向けて吐出された材料の量に基づいて、累積吐出量を決定する。なお、本実施形態の三次元造形装置5Bの構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0077】
本実施形態の移動機構部210Bは、吐出部100とステージ220とのそれぞれを移動させることによって、吐出部100とステージ220との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構部210Bは、ステージ220を移動させる第1移動機構部211と、吐出部100を移動させる第2移動機構部212とによって構成されている。第1移動機構部211は、ステージ220をZ方向に移動可能に構成されている。第2移動機構部212は、吐出部100をX方向とY方向との2軸方向に移動可能に構成されている。第1移動機構部211および第2移動機構部212は、それぞれを駆動する各モーターの駆動力によって移動する。各モーターは、制御部300の制御下で駆動する。
【0078】
三次元造形装置5Bは、造形用ノズルチップからステージ220に向けて吐出された材料の量を測定する測定部500を備える。本実施形態の測定部500は、造形用ノズルチップからステージ220に向けて吐出された材料の重量を測定する重量センサー510を備える重量計として構成されている。すなわち、本実施形態の測定部500は、材料の量として、材料の重量を測定する。
【0079】
本実施形態の測定部500は、上述した重量センサー510と、断熱部520と、支持部530とを備える。支持部530は、第1移動機構部211に接続されるとともに、重量センサー510を下方から支持する。重量センサー510は、ロードセル方式の重量センサーであり、ステージ220上に吐出された可塑化した材料の重量を測定する。断熱部520は、重量センサー510とステージ220とを接続する。断熱部520はステージ220を下方から支持するとともに、ステージ220から重量センサー510への伝熱を抑制する。制御部300は、図示しない配線を介して、重量センサー510によって測定された重量を取得する。他の実施形態では、重量センサー510はロードセル方式以外の重量センサーであってもよく、例えば、電磁力平衡式であってもよいし、金属音叉式であってもよい。
【0080】
本実施形態では、制御部300は、
図6に示した三次元造形処理と同様の処理を実行する。従って、制御部300は、
図6のステップS130およびステップS170において、
図10に示した累積吐出量決定処理と同様の処理を実行する。制御部300は、ステップS142において、新たな累積吐出量Sを、造形用ノズルチップからステージ220に吐出された材料の量に基づいて決定する。より具体的には、例えば、ステップS120において第1ノズルチップ60aが第1材料を吐出した場合、制御部300は、ステップS132において、測定部500によって測定された、ステージ220上に吐出された第1材料の重量を取得する。更に、制御部300は、取得した重量を第1材料の密度で除すことによって、ステージ220上に吐出された第1材料の吐出量として第1材料の体積を算出し、算出した吐出量をステップS131で読み込んだ第1ノズルチップ60aの累積吐出量へ加算することによって、第1ノズルチップ60aの新たな累積吐出量を算出して決定する。
【0081】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置5Bによっても、シールド68によって、加熱ブロック90から積層材料への伝熱が抑制され、三次元造形物の変形が抑制される。また、決定された材料の累積吐出量に基づいて、三次元造形物の造形に先立って造形用ノズルチップの交換等を実行することによって、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。特に、本実施形態では、制御部300は、ステージ220に吐出された可塑化した材料の量に基づいて累積吐出量を決定する。これによって、造形用ノズルチップから吐出された材料の吐出量に関する実測値に基づいて、累積吐出量を決定できる。そのため、例えば、造形用ノズルチップの寿命到達判定の精度を高めることができる。
【0082】
なお、他の実施形態では、測定部500は、例えば、重量計として構成されていなくてもよい。例えば、測定部500は、造形用ノズルチップからステージ220に向けて吐出された材料を撮影する1台または複数台のカメラとして構成されていてもよい。この場合、制御部300は、例えば、累積吐出量決定処理において、測定部500によって撮影された画像データを解析することによって、造形用ノズルチップからステージ220に向けて吐出された材料の体積を算出してもよい。この場合、制御部300は、例えば、算出した体積を、ステップS131で読み込んだ造形用ノズルチップの累積吐出量へ加算することによって、造形用ノズルチップの新たな累積吐出量を算出して決定できる。このような形態であっても、制御部300は、累積吐出量決定処理において、新たな累積吐出量を、造形用ノズルチップからステージ220に吐出された材料の量に基づいて決定できる。
【0083】
C.第3実施形態:
図13は、第3実施形態における寿命到達判定処理を示す工程図である。本実施形態では、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定される条件が、第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の三次元造形装置5の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。また、本実施形態では、制御部300は、
図6に示した三次元造形処理と同様の処理を実行する。
【0084】
制御部300は、
図6のステップS110において、
図13に示した寿命到達判定処理を実行する。ステップS211は、
図7のステップS111と同様である。
図13のステップS212にて、制御部300は、第1実施形態と異なり、ステップS211で取得した累積吐出量Sと、最大吐出量S
Lとの関係が、下記式(10)を満たすか否かを判定する。
S/S
L>0.50 …(10)
制御部300は、式(10)を満たす場合、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定する。式(10)に示すように、本実施形態では、制御部300は、第1実施形態と異なり、材料の種類によって異なる寿命判定値Aではなく、材料の種類によらず一定の寿命判定値に基づいて寿命到達判定を行う。すなわち、本実施形態における寿命判定値は、材料の種類によらず、0.50である。より具体的には、式(10)は、式(3)の寿命判定値Aの値を、材料の種類によらず0.50とした場合と同値である。
【0085】
図8に示すように、各材料の寿命判定値Aのうち、PPSFの寿命判定値Aが最も小さく、その値は0.50である。従って、制御部300は、式(10)を満たす場合にノズルチップ60が寿命に到達したと判定することによって、材料MFの種類ごとに寿命の判定基準を異ならせることなく、三次元造形物の造形中にノズル詰まりが生じることを簡易な方法で抑制できる。例えば、造形用ノズルチップが吐出する材料の種類がABSであったとしても、制御部300は、式(10)を満たす場合に造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定することによって、ノズルチップ60が経年使用によるノズル詰まりを起こすよりも前に、ノズルチップ60が寿命に到達したと判定できる可能性が高い。なお、ステップS213は、
図7のステップS113と同様である。
【0086】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置5によっても、シールド68によって、加熱ブロック90から積層材料への伝熱が抑制され、三次元造形物の変形が抑制される。また、決定された材料の累積吐出量に基づいて、三次元造形物の造形に先立って造形用ノズルチップの交換等を実行することによって、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。特に、本実施形態では、制御部300は、式(10)を満たす場合に、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定する。これによって、材料の種類ごとに判定基準を異ならせることなく、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを簡易に判定できる。そのため、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を簡易に低減できる。
【0087】
なお、他の実施形態において、上記第3実施形態と同様に、材料の種類によらず一定の寿命判定値に基づいて造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを判定する場合、寿命判定値は0.50以外の数値であってもよい。例えば、寿命判定値は、0.80であってもよい。この場合であっても、制御部300は、寿命到達判定処理において、造形用ノズルチップの累積吐出量Sが最大吐出量SLに到達する前に、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定できるため、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。なお、この場合、寿命判定値は、三次元造形中にノズル詰まりが生じることを抑制するために1.0未満の値であると好ましく、ノズルチップ60をできるだけ長期間使用するために0.50以上の値であると好ましい。
【0088】
また、この場合、例えば、造形用ノズルチップがメインチップである場合とサポート用チップである場合とで、寿命判定値を異ならせてもよい。例えば、メインチップの寿命判定値を0.80とし、サポート用チップの寿命判定値を、メインチップの寿命判定値より低い0.60としてもよい。このように、サポート用チップの寿命判定値をメインチップの寿命判定値より小さい値に定めることで、サポート用チップの寿命がメインチップの寿命と比較して短く判定されるため、三次元造形物の造形中に、予期せずサポート用チップのノズル詰まりが生じる可能性をより低減できる。
【0089】
D.第4実施形態:
図14は、第4実施形態における寿命到達判定処理を示す工程図である。本実施形態では、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定される条件が、第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の三次元造形装置5の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。また、本実施形態では、制御部300は、
図6に示した三次元造形処理と同様の処理を実行する。
【0090】
本実施形態では、制御部300は、三次元造形処理において、加熱ブロック90のヒーター58を制御して造形用ノズルチップの温度をチップ温度Tt[℃]に調整し、かつ、チャンバー加熱部115を制御して造形空間111の温度をチャンバー温度Tc[℃]に調整して、三次元造形物を造形する。
【0091】
制御部300は、
図6のステップS110において、
図14に示した寿命到達判定処理を実行する。ステップS311は、
図7のステップS111と同様である。
図14のステップS312にて、制御部300は、第1実施形態と異なり、ステップS311で取得した累積吐出量Sと、最大吐出量S
Lと、チップ温度T
tと、チャンバー温度T
cとの関係が、下記式(1)を満たすか否かを判定する。
(S/S
L)×(T
t/T
c)>0.92 …(1)
制御部300は、式(1)を満たす場合、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定する。すなわち、本実施形態では、制御部300は、第1実施形態と異なり、材料の種類によって異なる寿命判定値Aではなく、材料の種類によらず一定の寿命判定値に基づいて寿命到達判定を行う。すなわち、本実施形態における寿命判定値は、材料の種類によらず、0.92である。より具体的には、式(1)は、式(4)の寿命判定値Bの値を、材料の種類によらず0.92とした場合と同値である。
【0092】
図11に示すように、各材料の寿命判定値Bのうち、PPSFの寿命判定値Bが最も小さく、その値は0.92である。従って、制御部300は、式(1)を満たす場合に造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定することによって、材料の種類ごとに寿命の判定基準を異ならせることなく、三次元造形物の造形中にノズル詰まりが生じることを簡易な方法で抑制できる。また、制御部300は、式(4)に基づいて造形用ノズルチップの寿命到達判定を行う場合と同様に、造形時の温度条件を加味した条件で、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを判定できる。なお、ステップS313は、
図7のステップS113と同様である。
【0093】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置5によっても、シールド68によって、加熱ブロック90から積層材料への伝熱が抑制され、三次元造形物の変形が抑制される。また、決定された材料の累積吐出量に基づいて、三次元造形物の造形に先立って造形用ノズルチップの交換等を実行することによって、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。特に、本実施形態では、制御部300は、式(10)を満たす場合に、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定する。そのため、材料の種類ごとに判定基準を異ならせることなく、造形時の温度条件を加味した条件で、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを簡易に判定できる。そのため、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を簡易に低減できる。
【0094】
E.第5実施形態:
図15は、第5実施形態における寿命到達判定処理を示す工程図である。本実施形態では、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定される条件が、第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の三次元造形装置5の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。また、本実施形態では、制御部300は、
図6に示した三次元造形処理と同様の処理を実行する。
【0095】
本実施形態では、制御部300は、三次元造形処理において、第4実施形態と同様に、加熱ブロック90のヒーター58を制御して造形用ノズルチップの温度をチップ温度Tt[℃]に調整し、かつ、チャンバー加熱部115を制御して造形空間111の温度をチャンバー温度Tc[℃]に調整して、三次元造形物を造形する。
【0096】
制御部300は、
図6のステップS110において、
図15に示した寿命到達判定処理を実行する。ステップS411は、
図7のステップS111と同様である。
図15のステップS412にて、制御部300は、第1実施形態と異なり、ステップS411で取得した累積吐出量Sと、最大吐出量S
Lと、チップ温度T
tと、チャンバー温度T
cと、吐出時間t
vと、待機時間t
wとの関係が、下記式(2)を満たすか否かを判定する。
(S/S
L)×(T
t/T
c)×(t
v/t
w)>0.39 …(2)
制御部300は、式(2)を満たす場合、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定する。すなわち、本実施形態では、制御部300は、第1実施形態と異なり、材料の種類によって異なる寿命判定値Aではなく、材料の種類によらず一定の寿命判定値に基づいて、寿命到達判定を行う。すなわち、本実施形態における寿命判定値は、材料の種類によらず、0.39である。より具体的には、式(2)は、式(7)の寿命判定値Cの値を、材料の種類によらず0.39とした場合と同値である。
【0097】
図11に示すように、各材料の寿命判定値Cのうち、PPSFの寿命判定値Cが最も小さく、その値は0.39である。従って、制御部300は、寿命判定値を0.39とする式(2)を満たす場合に造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定することによって、材料の種類ごとに寿命の判定基準を異ならせることなく、三次元造形物の造形中にノズル詰まりが生じることを簡易な方法で抑制できる。また、制御部300は、式(7)に基づいて造形用ノズルチップの寿命到達判定を行う場合と同様に、造形時の温度条件、および、造形用ノズルチップの吐出時間t
vと待機時間t
wとのバランスを加味した条件で、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを判定できる。なお、ステップS413は、
図7のステップS113と同様である。
【0098】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置5によっても、シールド68によって、加熱ブロック90から積層材料への伝熱が抑制され、三次元造形物の変形が抑制される。また、決定された材料の累積吐出量に基づいて、三次元造形物の造形に先立って造形用ノズルチップの交換等を実行することによって、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。特に、本実施形態では、制御部300は、式(10)を満たす場合に、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定する。そのため、材料の種類ごとに判定基準を異ならせることなく、造形時の温度条件、および、造形用ノズルチップの吐出時間tvと待機時間twとのバランスを加味した条件で、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを簡易に判定できる。そのため、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を簡易に低減できる。
【0099】
F.第6実施形態:
図16は、第6実施形態における寿命到達判定処理を示す工程図である。本実施形態では、制御部300は、第1実施形態と異なり、1つのノズルチップ60から複数の種類の材料を吐出させる。また、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定される条件が、第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の三次元造形装置5の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。また、本実施形態では、制御部300は、
図6に示した三次元造形処理と同様の処理を実行する。
【0100】
上述したように、本実施形態では、制御部300は、1つのノズルチップ60から複数の種類の材料を吐出させる。本実施形態では、造形用ノズルチップの累積吐出量は、造形用ノズルチップから吐出された材料の種類ごとに関連付けられて、制御部300の補助記憶装置に記録される。例えば、造形用ノズルチップから吐出された1種類目の材料がABSであり、2種類目の材料がナイロン12である場合、制御部300は、造形用ノズルチップから吐出されたABSの吐出量の累積値と、ナイロン12の吐出量の累積値とを個別に、その造形用ノズルチップのノズル情報と関連付けて、補助記憶装置に記録する。なお、制御部300は、
図9に示すように、報知部400によって吐出情報を報知する場合、例えば、造形用ノズルチップから吐出された材料の種類ごとに累積吐出量を報知してもよい。
【0101】
制御部300は、
図6のステップS110において、
図16に示した寿命到達判定処理を実行する。ステップS511は、
図7のステップS111と同様である。本実施形態では、
図16のステップS512にて、制御部300は、第1実施形態と異なり、累積吐出割合S
Rを算出する。累積吐出割合S
Rは、例えば、造形用ノズルチップから吐出された実績のある材料の種類が2種類である場合、下記式(11)によって表される。
S
R=(S
1/S
L1)+(S
2/S
L2) …(11)
なお、S
1およびS
2は、それぞれ、造形用ノズルチップから吐出された実績のある1種類目の材料および2種類目の材料の累積吐出量である。また、S
L1およびS
L2は、それぞれ、1種類目の材料および2種類目の材料の最大吐出量である。なお、造形用ノズルチップから3種類以上の材料が吐出された実績がある場合も、上記式(11)にS
3/S
L3等の項を順に追加することによって、累積吐出割合S
Rを算出できる。
【0102】
ステップS513にて、制御部300は、ステップS512で算出した累積吐出割合SRが、1種類目の材料についての寿命判定値A1を超えるか否かを判定する。ステップS513において、累積吐出割合SRが寿命判定値A1を超えないと判定された場合、ステップS514にて、制御部300は、累積吐出割合SRが、2種類目の材料についての寿命判定値A2を超えるか否かを判定する。制御部300は、ステップS514において累積吐出割合SRが寿命判定値A2を超えないと判定した場合、寿命判定処理を終了させる。
【0103】
ステップS513において累積吐出割合S
Rが寿命判定値A1を超えると判定された場合、または、ステップS514において累積吐出割合S
Rが寿命判定値A2を超えると判定された場合、制御部300は、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定する。この場合、制御部300は、ステップS515において、造形用ノズルチップの寿命情報を、
図7のステップS113と同様の方法によって報知する。なお、造形用ノズルチップから3種類以上の材料が吐出された実績がある場合には、ステップS514において累積吐出割合S
Rが寿命判定値A2を超えないと判定された後、制御部300は、更に、累積吐出割合S
Rが3種類目の材料についての寿命判定値A3を超えるか否かを判定する。また、4種類目以降の材料についても同様である。すなわち、本実施形態では、制御部300は、寿命判定処理において、累積吐出割合S
Rと、造形用ノズルチップから吐出された実績のある全ての種類の材料の寿命判定値との比較を行い、累積吐出割合S
Rがいずれか1種類の材料の寿命判定値を超える場合、造形用ノズルチップが寿命に到達したと判定する。
【0104】
なお、造形用ノズルチップから吐出された実績のある材料の種類が1種類の場合であっても、制御部300は、ステップS512において、累積吐出割合SRを算出できる。この場合、累積吐出割合SRは、S/SL1となる。また、制御部300は、ステップS513において、このS/SL1の値が寿命判定値A1を超えるか否かを判定する。すなわち、この場合の寿命到達判定は、結果的に、式(3)に基づく寿命到達判定と同様となる。
【0105】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置5によっても、シールド68によって、加熱ブロック90から積層材料への伝熱が抑制され、三次元造形物の変形が抑制される。また、決定された材料の累積吐出量に基づいて、三次元造形物の造形に先立って造形用ノズルチップの交換等を実行することによって、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。特に、本実施形態では、制御部300は、累積吐出割合SRを算出し、累積吐出割合SRに基づいて寿命到達判定を行う。そのため、ノズルチップ60から複数の種類の材料が吐出される場合であっても、ノズルチップ60が寿命に到達したか否かを判定でき、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。
【0106】
なお、他の実施形態において、上記第6実施形態と同様に、三次元造形処理において1つのノズルチップ60から複数の種類の材料が吐出される場合、制御部300は、累積吐出割合に基づいて造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを判定しなくてもよい。例えば、制御部300は、式(1)や式(2)、式(10)を満たすか否かを判定することによって、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを判定してもよい。この場合、制御部300は、例えば、式(1)や式(2)、式(10)において、吐出した実績のある材料の最大吐出量のうち最も小さい値を最大吐出量SLとし、チャンバー温度のうち最も小さい値をチャンバー温度Tcとし、チップ温度のうち最も大きい値をチップ温度Ttとすることで、式(1)や式(2)、式(10)に基づいて、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを判定できる。更に、制御部300は、例えば、式(3)や式(4)、式(7)において、上記に加え、吐出した実績のある材料の寿命判定値のうち最も小さい値を寿命判定値Aや寿命判定値B、寿命判定値Cとすることで、式(3)や式(4)、式(7)に基づいて、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを判定できる。
【0107】
G.第7実施形態:
図17は、第7実施形態における三次元造形装置5Cの概略構成を示す図である。本実施形態の三次元造形装置5Cは、第1実施形態と同様に、ME方式の三次元造形装置であるが、各部の構成が第1実施形態とは異なる。なお、本実施形態の三次元造形装置5Cの構成のうち、第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0108】
本実施形態の三次元造形装置5Cは、第1実施形態と同様に、2つの吐出部100Cと、2つの材料収容部20Cと、チャンバー110と、移動機構部210と、ステージ220と、制御部300と、報知部400とを備える。三次元造形装置5Cは、具体的には、吐出部100Cとして、第1吐出部100cと第2吐出部100dとを備え、材料収容部20Cとして、第1材料収容部20cと第2材料収容部20dとを備える。なお、以下では、第1吐出部100cと第2吐出部100dとを特に区別することなく説明する場合、単に、吐出部100Cと呼ぶこともある。同様に、第1材料収容部20cと第2材料収容部20dとを特に区別することなく説明する場合、単に、材料収容部20Cと呼ぶこともある。また、第1吐出部100cに係る構成要素と第2吐出部100dに係る構成要素とを区別して説明する場合には、第1吐出部100cに係る構成要素には、符号の末尾に「c」を付し、第2吐出部100dに係る構成要素には、符号の末尾に「d」を付す。
【0109】
三次元造形装置5Cは、2つのブロアー16を更に備える。ブロアー16は、マニホールド17を介して吐出部100Cに向けて送風を行う送風機として構成されている。
【0110】
本実施形態では、チャンバー110内の造形空間111には、マニホールド17の一部と、吐出部100Cと、移動機構部210と、ステージ220とが収容されている。
【0111】
本実施形態の材料収容部20Cは、フィラメント状の材料MFを収容するホルダーとして構成されている。材料収容部20Cは、出口部21と、巻出量記憶部23とを備えている。材料収容部20Cは、内部に収容された材料MFを、出口部21を介して材料収容部20Cの外部へと巻き出し可能に構成されている。なお、本実施形態では、第1材料収容部20cには、第1材料MF1が収容され、第2材料収容部20dには、第2材料MF2が収容されている。
【0112】
巻出量記憶部23は、記憶媒体としてのICチップによって構成され、図示しない配線および接続部を介して制御部300と接続される。巻出量記憶部23には、制御部300によって、材料収容部20C内の材料の種類、および、材料収容部20Cから外部へと巻き出した材料MFの量が記録される。なお、本実施形態では、制御部300は、巻出量記憶部23に記録されている材料MFの種類の情報に基づいて、材料MFの種類と吐出部100Cとの紐付けを行う。
【0113】
巻出量記憶部23には、材料収容部20Cから巻き出した材料MFの量が、例えば、材料MFの線径と巻き出した材料MFの長さとの積によって算出される体積として記録される。この場合、巻き出した材料MFの長さは、例えば、材料収容部20C内に設けられた図示しない送り出しローラーの回転数に基づいて算出されてもよいし、後述する材料搬送機構40Cによる材料MFの送り出し量に基づいて算出されてもよい。また、巻出量記憶部23には、例えば、材料MFの残量が記録されてもよい。材料MFの残量は、例えば、制御部300によって、材料収容部20C内に収容される材料MFの初期充填量と材料収容部20Cから巻き出した材料MFの量とに基づいて算出される。
【0114】
図18は、本実施形態の吐出部100Cの概略構成を説明する図である。吐出部100Cは、第1実施形態と同様に、ヒーターを有し、貫通孔80Cが設けられた加熱ブロック90Cと、貫通孔80Cに着脱可能に取り付けられるノズルチップ60Cと、加熱ブロック90Cに取り付けられたノズルチップ60Cである造形用ノズルチップのノズル流路61Cに向けて材料を搬送する材料搬送機構40Cとを備えている。また、吐出部100Cは、Z方向において、材料搬送機構40Cと加熱ブロック90Cとの間に配置され、加熱ブロック90Cから材料搬送機構40Cへの伝熱を抑制する熱シールド92を更に備えている。本実施形態の材料搬送機構40Cは、第1実施形態と異なり、スクリューケース31やスクリュー41を備えることなく、2つのホイール49によって構成されている。加熱ブロック90Cは、第1実施形態と異なり、バレル50やケース部91を備えていない。
【0115】
本実施形態のノズルチップ60Cは、第1実施形態と異なり、-Z方向から、貫通孔80Cと、熱シールド92に設けられたシールド開口93とに挿通されることによって、加熱ブロック90Cに取り付けられる。すなわち、本実施形態では、ノズルチップ60CのZ方向に沿った寸法、および、ノズル流路61CのZ方向に沿った寸法は、貫通孔80CのZ方向に沿った寸法よりも長い。従って、本実施形態では、ノズルチップ60Cの後端に設けられた流入口65Cは、加熱ブロック90Cの+Z方向、より具体的には、熱シールド92の+Z方向に位置している。
【0116】
ノズルチップ60Cは、第1実施形態と同様に、シールド68Cを備えている。ノズルチップ60Cは、第1実施形態と同様に、メモリー66を備えている。メモリー66は、第1実施形態と同様に、ノズル情報記憶部として機能し、ノズル情報を記憶する。メモリー66は、第1実施形態と同様に、Z方向において、ノズル開口63Cとシールド68Cとの間に位置している。
【0117】
材料搬送機構40Cを構成する2つのホイール49は、その回転によって、材料収容部20C内の材料MFを外部へと引き出して2つのホイール49の間へ導くとともに、加熱ブロック90Cの貫通孔80Cに取り付けられたノズルチップ60Cのノズル流路61Cに向けて搬送する。加熱ブロック90Cは、加熱ブロック90Cに内蔵された図示しないヒーターの熱によって、ノズルチップ60Cのノズル流路61C内へと搬送された材料MFを可塑化する。
【0118】
本実施形態の材料MFは、ノズルチップ60Cの流入口65C付近において、上述したブロアー16からマニホールド17を介して送られる空気によって冷却される。これによって、材料MFの流入口65C付近における可塑化が抑制され、材料MFが流入口65C内へと効率的に搬送される。なお、マニホールド17の出口端18は、熱シールド92の+Z方向に位置している。これによって、マニホールド17から送出される空気が、熱シールド92によって流入口65C付近へと導かれやすくなるため、流入口65C付近の材料MFが効率的に冷却される。
【0119】
なお、本実施形態においても、制御部300は、例えば、第1実施形態と同様に、
図6に示した三次元造形処理を実行することによって、三次元造形物を造形できる。また、制御部300は、例えば、第3実施形態と同様に、式(10)に基づいて、造形用ノズルチップの寿命到達判定を行ってもよい。また、制御部300は、第4実施形態や第5実施形態と同様に、加熱ブロック90のヒーター58を制御して造形用ノズルチップの温度をチップ温度T
t[℃]に調整し、かつ、チャンバー加熱部115を制御して造形空間111の温度をチャンバー温度T
c[℃]に調整して、三次元造形物を造形する場合、式(1)や式(2)、式(4)、式(7)に基づいて、造形用ノズルチップの寿命到達判定を行ってもよい。
【0120】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置5Cによっても、シールド68Cによって、加熱ブロック90Cから積層材料への伝熱が抑制され、三次元造形物の変形が抑制される。また、決定された材料の累積吐出量に基づいて、三次元造形物の造形に先立って造形用ノズルチップの交換等を実行することによって、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。
【0121】
なお、他の実施形態では、制御部300は、例えば、材料搬送機構40Cによって搬送された材料MFの搬送量に基づいて、造形用ノズルチップの累積吐出量を決定してもよい。搬送量は、例えば、回転計によって測定されたホイール49の回転数に基づいて算出される。この場合、制御部300は、例えば、
図10のステップS132において、ステップS120やステップS160において材料搬送機構40Cによって搬送された材料MFの搬送量を取得する。この材料MFの搬送量は、
図6のステップS120やステップS160において、造形用ノズルチップから吐出された材料の吐出量に相当する。従って、制御部300は、この搬送量をステップS131で読み込んだ造形用ノズルチップの累積吐出量へ加算することによって、造形用ノズルチップの新たな累積吐出量を算出して決定できる。このような形態によれば、第2実施形態と同様に、造形用ノズルチップから吐出された材料の吐出量に関する実測値に基づいて累積吐出量を決定できるため、例えば、ノズルチップ60Cの寿命到達判定の精度を高めることができる。
【0122】
また、他の実施形態では、制御部300は、例えば、材料収容部20Cに収容されている材料MFの量である残量に基づいて、造形用ノズルチップの累積吐出量を決定してもよい。この場合、制御部300は、例えば、
図10のステップS132において、ステップS120やステップS160の前後における材料MFの残量を、巻出量記憶部23から取得する。そして、制御部300は、ステップS120やステップS160の前後における材料MFの残量の差異を算出する。この材料MFの残量の差異は、
図6のステップS120やステップS160において、造形用ノズルチップから吐出された材料の吐出量に相当する。従って、制御部300は、この搬送量をステップS131で読み込んだ造形用ノズルチップの累積吐出量へ加算することによって、造形用ノズルチップの新たな累積吐出量を算出して決定できる。このような形態によれば、第2実施形態と同様に、造形用ノズルチップから吐出された材料の吐出量に関する実測値に基づいて累積吐出量を決定できるため、例えば、ノズルチップ60Cの寿命到達判定の精度を高めることができる。なお、制御部300は、同様に、材料収容部20Cからの材料の巻出量に基づいて、造形用ノズルチップの累積吐出量を決定してもよい。
【0123】
H.第8実施形態:
図19は、第8実施形態としての三次元造形システム10の構成を示す概略ブロック図である。三次元造形システム10は、三次元造形装置5Dと、制御装置11とを備える。なお、本実施形態の三次元造形システム10は、3つの三次元造形装置5Dを備える。なお、他の実施形態では、三次元造形システム10における三次元造形装置5Dの数は、1つや2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、本実施形態の三次元造形装置5Dのうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。他の実施形態では、三次元造形装置5Dは、例えば、第5実施形態と同様に、フィラメント状の材料MFを可塑化して吐出する構成であってもよい。
【0124】
制御装置11は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。制御装置11は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。なお、制御装置11は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0125】
本実施形態の三次元造形装置5Dでは、第1実施形態と異なり、制御部300Dは、造形用ノズルチップのノズル情報と、累積吐出量とを関連付けて記録しない。更に、三次元造形装置5Dは、有線または無線によって制御装置11と通信可能に構成された通信部を備える。通信部は、造形用ノズルチップのノズル情報と、累積吐出量とを制御装置11に送信する。本実施形態では、制御部300Dが通信部として機能する。
【0126】
制御装置11は、システム通信部12と、データ処理部13と、システム記憶部14とを備える。システム通信部12は、通信部として機能する制御部300Dと通信し、制御部300Dから送信されたノズル情報と、累積吐出量とを受信する。データ処理部13は、ノズル情報と累積吐出量とを関連付け、システム記憶部14に記録する。
【0127】
また、本実施形態の制御部300Dは、制御装置11と通信することによって、システム記憶部14に記録されたノズル情報と関連付けられた累積吐出量を取得できる。この場合、制御部300Dは、例えば、制御装置11に、累積吐出量を取得したいノズルチップ60のノズル情報を送信する。制御装置11は、システム通信部12によって受信したノズル情報に基づいて、システム記憶部14に記録されているノズル情報と関連付けられた累積吐出量をデータ処理部13によって取得し、システム通信部12によって制御部300Dに送信する。
【0128】
本実施形態では、制御部300Dは、
図6に示した三次元造形処理と同様の処理を実行する。従って、制御部300Dは、
図6のステップS110において、
図7に示した寿命判定処理と同様の処理を実行する。
図6のステップS130およびステップS170において、
図10に示した累積吐出量決定処理と同様の処理を実行する。
【0129】
図7のステップS111にて、制御部300Dは、まず、造形用ノズルチップのメモリー66からノズル情報を取得する。更に、制御部300Dは、取得したノズル情報を制御装置11に送信し、送信したノズル情報と一致するノズル情報と関連付けられて制御装置11のシステム記憶部14に記録されている累積吐出量を取得する。なお、ステップS112およびステップS113は、第1実施形態と同様である。
【0130】
図10のステップS131にて、制御部300Dは、
図7のステップS111と同様の方法でノズル情報を取得し、ノズル情報と関連付けて記録されている累積吐出量を制御装置11から取得する。ステップS133にて、制御部300Dは、ノズル情報と新たな累積吐出量とを制御装置11に送信する。制御装置11は、送信されたノズル情報と、新たな累積吐出量とを関連付けて、システム記憶部14に記録する。なお、他の実施形態では、例えば、制御装置11が、制御部300Dから送信されたノズル情報と吐出量とに基づいて、累積吐出量を更新してもよい。この場合、制御装置11のデータ処理部13は、例えば、システム通信部12によって制御部300Dから受信したノズル情報に基づいて、システム記憶部14に記録されている累積吐出量を読み込み、読み込んだ累積吐出量に制御部300Dから受信した吐出量を加算して新たな累積吐出量を算出し、新たな累積吐出量をシステム記憶部14に記録する。
【0131】
以上で説明した本実施形態の三次元造形システム10によっても、シールド68によって、加熱ブロック90から積層材料への伝熱が抑制され、三次元造形物の変形が抑制される。また、決定された材料の累積吐出量に基づいて、三次元造形物の造形に先立って造形用ノズルチップの交換等を実行することによって、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。特に、本実施形態では、三次元造形装置5Dが造形用ノズルチップと累積吐出量とを関連付けて記録することなく、三次元造形システム10が造形用ノズルチップと累積吐出量とを関連付けて記録する場合であっても、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。
【0132】
I.他の実施形態:
(I-1)上記実施形態では、制御部300は、
図10に示した累積吐出量決定処理において、取得した累積吐出量に造形用ノズルチップが吐出した材料の吐出量を加算して新たな累積吐出量を算出して決定している。これに対して、制御部300は、累積吐出量決定処理において、取得した累積吐出量に吐出量を加算して新たな累積吐出量を算出して決定しなくてもよい。例えば、三次元造形装置5が1種類の材料のみを吐出する1つのノズルチップ60のみを備え、そのノズルチップ60を加熱ブロック90から取り外すことなく連続して複数の三次元造形処理を実行する場合、制御部300は、測定部500等によって測定された材料の量の累積値や、材料の搬送量の累積値を造形用ノズルチップの累積吐出量として決定してもよい。
【0133】
(I-2)上記実施形態では、制御部300は、
図6のステップS140において、報知部400を制御して吐出情報の表示を開始している。これに対して、制御部300は、このタイミングで吐出情報の表示を開始しなくてもよい。制御部300は、例えば、三次元造形処理の開始直後に吐出情報の表示を開始してもよいし、ステップS120の後に吐出情報の表示を開始してもよい。また、制御部300は、図示しない入力部等を介してユーザーから吐出情報の報知を要求されたタイミングで、吐出情報を表示してもよい。更に、制御部300は、報知部400によって吐出情報を報知しなくてもよい。
【0134】
(I-3)上記実施形態では、報知部400は、視覚情報を表示する液晶モニターとして構成されている。これに対して、報知部400は、液晶モニターとして構成されていなくてもよい。報知部400は、例えば、視覚情報を報知する他の機器によって構成されてもよいし、音声情報等の視覚情報以外の情報を報知する機器によって構成されていてもよい。
【0135】
(I-4)上記実施形態では、制御部300は、報知部400を制御して、造形用ノズルチップの寿命情報を報知している。これに対して、制御部300は、報知部400を制御して造形用ノズルチップの寿命情報を報知しなくてもよい。例えば、制御部300は、液晶パネル等の出力装置に、造形用ノズルチップの累積吐出量を表示するだけであってもよい。この場合、報知部400が設けられていなくてもよい。このような形態であっても、造形用ノズルチップの累積吐出量に基づいて、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。
【0136】
(I-5)上記実施形態では、ノズル情報記憶部は、ノズル流路61に沿ったZ方向において、ノズル開口63とシールド68との間に位置している。これに対して、ノズル情報記憶部は、Z方向において、ノズル開口63とシールド68との間に位置していなくてもよい。
【0137】
(I-6)上記実施形態では、ノズルチップ60のメモリー66は、ノズル情報記憶部として機能している。これに対して、メモリー66は、ノズル情報記憶部として機能しなくてもよい。この場合、制御部300は、例えば、ノズル情報を記憶していないノズルチップ60のメモリー66に累積吐出量を記録することによって、ノズルチップ60と累積吐出量とを関連付けて記録してもよい。また、制御部300は、図示しない入力装置等を介してユーザーによって入力されたノズル情報を取得し、取得したノズル情報と累積吐出量とを関連付けて、制御部300の補助記憶装置に記録してもよい。この場合、ノズルチップ60は、メモリー66を備えていなくてもよい。
【0138】
(I-7)上記実施形態では、材料データは、各造形パスにおいて材料を吐出する吐出部100を指定することによって、その造形パスにおける材料の種類を決定している。これに対して、材料データは、例えば、各造形パスにおける材料を直接指定してもよい。
【0139】
(I-8)上記実施形態では、制御部300は、パージデータに従ってパージ処理を実行している。これに対して、制御部300は、パージデータに従ってパージ処理を実行しなくてもよい。例えば、造形データにパージ処理に相当する材料の吐出を行うための造形パスや材料データが含まれている場合、制御部300は、別途パージ処理を実行することなく、造形データに従ってパージを行ってもよい。また、制御部300は、三次元造形処理においてパージを行わなくてもよい。
【0140】
(I-9)上記実施形態では、材料データは、単位移動量あたりに吐出する材料の体積を指定することによって、材料の吐出量を決定している。これに対して、材料データは、材料の体積を指定しなくてもよい。例えば、材料データは、単位移動量あたりに吐出する材料の重量を指定してもよいし、吐出される材料の線幅等を指定してもよい。
【0141】
(I-10)上記実施形態では、累積吐出量は、材料の体積として決定されている。これに対して、累積吐出量は、材料の体積として決定されなくてもよい。例えば、累積吐出量は、材料の重量として決定されてもよい。なお、同様に、最大吐出量が材料の重量として定められてもよい。
【0142】
(I-11)上記実施形態では、三次元造形装置5は、2つの吐出部100を備えている。これに対して、三次元造形装置5は、1つの吐出部100のみを備えていてもよいし、3つ以上の吐出部100を備えていてもよい。
【0143】
(I-12)上記実施形態では、三次元造形装置5は、チャンバー110を備えている。これに対して、チャンバー110が設けられていなくてもよい。
【0144】
(I-13)上記第7実施形態では、ノズルチップ60は、ノズル情報記憶部を有している。これに対して、ノズルチップ60は、ノズル情報記憶部を有していなくてもよい。この場合、例えば、通信部として機能する制御部300Dは、図示しない入力装置等を介してユーザーによって入力されたノズル情報を取得し、材料情報と取得したノズル情報とを制御装置11に送信し、制御装置11のデータ処理部13が、制御部300Dから送信されたノズル情報と材料情報とを関連付けて、システム記憶部14に記録してもよい。
【0145】
J.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0146】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、ヒーターを有し、貫通孔が設けられた加熱ブロックと、ノズル開口を有するノズル流路が設けられ、前記加熱ブロックの前記貫通孔に着脱可能に取り付けられるノズルチップと、前記加熱ブロックに取り付けられた前記ノズルチップである造形用ノズルチップの前記ノズル流路に向けて材料を搬送する材料搬送機構と、前記造形用ノズルチップの前記ノズル開口から、前記加熱ブロックの熱によって可塑化した前記材料が吐出されて積層されるステージと、前記造形用ノズルチップを前記ステージに対して移動させ、前記造形用ノズルチップから前記ステージに向けて前記材料を吐出させることによって、三次元造形物を造形する制御部と、を備える。前記ノズルチップは、前記加熱ブロックの熱が前記ステージに積層された前記材料へ伝熱することを抑制するシールドを有し、前記制御部は、前記造形用ノズルチップから吐出された前記材料の累積吐出量を決定する。
このような形態によれば、シールドによって、加熱ブロックの熱がステージに吐出された材料へ伝熱することが抑制され、三次元造形物の変形が抑制される。また、決定された材料の累積吐出量に基づいて、三次元造形物の造形に先立って、造形用ノズルチップの交換等を実行することによって、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を低減できる。
【0147】
(2)上記形態の三次元造形装置において、前記材料を収容する材料収容部を有し、前記材料搬送機構は、前記材料収容部に収容された前記材料を前記造形用ノズルチップの前記ノズル流路に向けて搬送し、前記制御部は、前記材料収容部に収容された前記材料の量に基づいて前記累積吐出量を決定してもよい。このような形態によれば、造形用ノズルチップから吐出された材料の吐出量に関する実測値である、材料収容部に収容された材料の量に基づいて、累積吐出量を決定できる。
【0148】
(3)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記材料搬送機構によって搬送された前記材料の搬送量に基づいて前記累積吐出量を決定してもよい。このような形態によれば、造形用ノズルチップから吐出された材料の吐出量に関する実測値である、材料の搬送量に基づいて、累積吐出量を決定できる。
【0149】
(4)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記造形用ノズルチップから前記ステージに向けて吐出された前記材料の量に基づいて前記累積吐出量を決定してもよい。このような形態によれば、このような形態によれば、造形用ノズルチップから吐出された材料の吐出量に関する実測値に基づいて、累積吐出量を決定できる。
【0150】
(5)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記造形用ノズルチップから吐出する前記材料の量に関する吐出量情報を含む造形データに従って前記三次元造形物を造形し、前記制御部は、前記造形データに基づいて前記累積吐出量を決定してもよい。このような形態によれば、このような形態によれば、三次元造形物を造形するための造形データに基づいて簡易に累積吐出量を決定できる。
【0151】
(6)上記形態の三次元造形装置において、造形空間を有するチャンバーと、前記造形空間を加熱するチャンバー加熱部と、報知部と、を備え、前記造形空間に、前記加熱ブロック、前記造形用ノズルチップ、及び、前記ステージが配置され、前記制御部は、前記ヒーターを制御して、前記造形用ノズルチップの温度をチップ温度Tt[℃]に調整し、かつ、前記チャンバー加熱部を制御して、前記造形空間の温度をチャンバー温度Tc[℃]に調整して、前記三次元造形物を造形し、前記制御部は、前記三次元造形物の造形に先立って、下記式(1)を満たす場合に、前記報知部を制御して、前記造形用ノズルチップの寿命に関する情報を報知してもよい。
(S/SL)×(Tt/Tc)>0.92 …(1)
(Sは前記累積吐出量を表し、SLは前記造形用ノズルチップが吐出可能な前記材料の最大量を表す。)
このような形態によれば、材料の種類ごと判定基準を異ならせることなく、造形時の温度条件を加味した条件で、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを簡易に判定できる。そのため、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を簡易に低減できる。
【0152】
(7)上記形態の三次元造形装置において、造形空間を有するチャンバーと、前記造形空間を加熱するチャンバー加熱部と、報知部と、を備え、前記造形空間に、前記加熱ブロック、前記造形用ノズルチップ、及び、前記ステージが配置され、前記制御部は、前記ヒーターを制御して、前記造形用ノズルチップの温度をチップ温度Tt[℃]に調整し、かつ、前記チャンバー加熱部を制御して、前記造形空間の温度をチャンバー温度Tc[℃]に調整して、前記三次元造形物を造形し、前記制御部は、前記三次元造形物の造形に先立って、下記式(2)を満たす場合に、前記報知部を制御して、前記造形用ノズルチップの寿命に関する情報を報知してもよい。
(S/SL)×(Tt/Tc)×(tv/tw)>0.39 …(2)
(Sは前記累積吐出量を表し、SLは前記造形用ノズルチップが吐出可能な前記材料の最大量を表し、tvは前記三次元造形装置の起動状態において前記造形用ノズルチップが前記材料を吐出した時間である吐出時間を表し、twは前記起動状態において前記造形用ノズルチップが前記材料を吐出せず待機した時間を表す。)
このような形態によれば、材料の種類ごとに判定基準を異ならせることなく、造形時の温度条件、および、造形用ノズルチップの吐出時間と待機時間とのバランスを加味した条件で、造形用ノズルチップが寿命に到達したか否かを簡易に判定できる。そのため、三次元造形物の造形中に予期せずノズル詰まりが生じる可能性を簡易に低減できる。
【0153】
(8)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記造形用ノズルチップと、決定された前記累積吐出量とを関連付けて記録してもよい。このような形態によれば、加熱ブロックからノズルチップを一旦取り外して加熱ブロックに別のノズルチップを取り付ける場合や、加熱ブロックに複数のノズルチップを取り付ける場合であっても、造形用ノズルチップの累積吐出量を記録できる。
【0154】
(9)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記造形用ノズルチップと関連付けられた前記累積吐出量を取得し、取得した前記累積吐出量に、前記造形用ノズルチップが吐出した前記材料の吐出量を加算して新たな前記累積吐出量を算出して決定し、新たな前記累積吐出量と前記造形用ノズルチップとを関連付けて記録してもよい。このような形態によれば、加熱ブロックからノズルチップを一旦取り外して加熱ブロックに別のノズルチップを取り付ける場合や、加熱ブロックに複数のノズルチップを取り付ける場合であっても、簡易な方法によって、造形用ノズルチップと関連付けられた累積吐出量を更新できる。
【0155】
(10)上記形態の三次元造形装置において、前記ノズルチップは、前記ノズルチップを識別する情報に関するノズル情報を記憶するノズル情報記憶部を有していてもよい。このような形態によれば、制御部は、ノズル情報と累積吐出量とを関連付けることによって、造形用ノズルチップと累積吐出量とを関連付けて記録できる。
【0156】
(11)上記形態の三次元造形装置において、前記ノズル情報記憶部は、前記ノズル流路に沿った方向において、前記ノズル開口と前記シールドとの間に位置していてもよい。このような形態によれば、加熱ブロックにノズルチップが取り付けられた状態において、シールドによって、加熱ブロックからノズル情報記憶部への伝熱が抑制される。
【0157】
本開示は、三次元造形装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、三次元造形システムや、三次元造形物の製造方法、三次元造形物を造形するためのプログラム等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0158】
5,5B,5C,5D…三次元造形装置、10…三次元造形システム、11…制御装置、12…システム通信部、13…データ処理部、14…システム記憶部、16…ブロアー、17…マニホールド、18…出口端、20,20C…材料収容部、20a,20c…第1材料収容部、20b,20d…第2材料収容部、21…出口部、22…供給路、23…巻出量記憶部、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…材料搬送機構、40C…材料搬送機構、40a…第1材料搬送機構、40b…第2材料搬送機構、41…スクリュー、42…溝形成面、43…側面、44…材料導入口、45…スクリュー溝、46…凸条部、47…スクリュー中央部、49…ホイール、50…バレル、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、60…ノズルチップ、60B…ノズルチップ、60C…ノズルチップ、60a,60c…第1ノズルチップ、60b,60d…第2ノズルチップ、61,61C…ノズル流路、63,63C…ノズル開口、65,65C…流入口、66…メモリー、66a…第1メモリー、67…ノズルネジ部、68,68C…シールド、80,80C…貫通孔、81…貫通孔ネジ部、90,90C…加熱ブロック、90a,90c…第1加熱ブロック、90b,90d…第2加熱ブロック、91…ケース部、92…熱シールド、93…シールド開口、94…開口部、100…吐出部、100C…吐出部、100a,100c…第1吐出部、100b,100d…第2吐出部、110…チャンバー、111…造形空間、115…チャンバー加熱部、210…移動機構部、210B,210B…移動機構部、211…第1移動機構部、212…第2移動機構部、220…ステージ、300,300D…制御部、400…報知部、500…測定部、510…重量センサー、520…断熱部、530…支持部