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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】二次エア供給装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/30 20060101AFI20240521BHJP
   F01N 3/22 20060101ALI20240521BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20240521BHJP
   B62J 40/00 20200101ALI20240521BHJP
   B62J 35/00 20060101ALI20240521BHJP
   B62J 41/00 20200101ALI20240521BHJP
【FI】
F01N3/30 G ZAB
F01N3/22 301Z
F01N3/30 C
B62M7/02 F
B62M7/02 Z
B62J40/00
B62J35/00 C
B62J41/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020171821
(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公開番号】P2022063514
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】金子 誠
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-156358(JP,A)
【文献】国際公開第2009/030430(WO,A1)
【文献】特開2019-215007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/30
F01N 3/22
B62M 7/02
B62J 40/00
B62J 35/00
B62J 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ガスが通る排気通路に触媒が配置され、当該触媒よりも上流側でエアクリーナから前記排気通路に二次エアを供給する二次エア供給装置であって、
前記エアクリーナから前記排気通路に向けて二次エアを送り出すエアポンプと、
前記エアクリーナから取り込んだ二次エアを前記エアポンプに導く吸込管と、
前記エアポンプから吐き出された二次エアを前記排気通路に導く吐出管と、を備え、
前記エンジンにおいてクランクケースの前側にシリンダユニットが配置され、
車両前面視で、前記エアポンプの少なくとも一部が前記クランクケースに重なり、
車両側面視で、前記エアポンプの少なくとも一部が前記シリンダユニットに重なり、
前記エアポンプの上方に前記エアクリーナが配置されており、
車両上面視で、前記エアポンプの少なくとも一部が前記エアクリーナに重なっていることを特徴とする二次エア供給装置。
【請求項2】
エンジンの排気ガスが通る排気通路に触媒が配置され、当該触媒よりも上流側でエアクリーナから前記排気通路に二次エアを供給する二次エア供給装置であって、
前記エアクリーナから前記排気通路に向けて二次エアを送り出すエアポンプと、
前記エアクリーナから取り込んだ二次エアを前記エアポンプに導く吸込管と、
前記エアポンプから吐き出された二次エアを前記排気通路に導く吐出管と、を備え、
前記エンジンにおいてクランクケースの前側にシリンダユニットが配置され、
車両前面視で、前記エアポンプの少なくとも一部が前記クランクケースに重なり、
車両側面視で、前記エアポンプの少なくとも一部が前記シリンダユニットに重なり、
前記エンジンにおいて前記シリンダユニットの前面にリードバルブカバーが配置され、
前記吐出管によって前記エアポンプから前記リードバルブカバーを通じて前記排気通路に二次エアが導かれており、
前記エアポンプの上部が前記リードバルブカバーの下部と同じ高さに位置付けられていることを特徴とする二次エア供給装置。
【請求項3】
エンジンの排気ガスが通る排気通路に触媒が配置され、当該触媒よりも上流側でエアクリーナから前記排気通路に二次エアを供給する二次エア供給装置であって、
前記エアクリーナから前記排気通路に向けて二次エアを送り出すエアポンプと、
前記エアクリーナから取り込んだ二次エアを前記エアポンプに導く吸込管と、
前記エアポンプから吐き出された二次エアを前記排気通路に導く吐出管と、を備え、
前記エンジンにおいてクランクケースの前側にシリンダユニットが配置され、
車両前面視で、前記エアポンプの少なくとも一部が前記クランクケースに重なり、
車両側面視で、前記エアポンプの少なくとも一部が前記シリンダユニットに重なり、
前記シリンダユニットの前方には燃料タンクが配置され、当該燃料タンクの前方にはラジエータが配置されており、
車両前面視で、前記エアポンプの少なくとも一部が前記燃料タンクに重なっていることを特徴とする二次エア供給装置。
【請求項4】
前記エアポンプが車幅方向の一方側に寄せて配置され、前記ラジエータが車幅方向の他方側に寄せて配置されており、
車両前面視で、前記燃料タンクに対する前記ラジエータの車幅方向の一方側のはみ出し量が、前記燃料タンクに対する前記エアポンプの車幅方向の一方側のはみ出し量と同じ又は当該はみ出し量よりも少ないことを特徴とする請求項3に記載の二次エア供給装置。
【請求項5】
前記エアポンプの上部が前記ラジエータの上部よりも上方に位置付けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の二次エア供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次エア供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗型車両においては、排気ガスを浄化する触媒がエンジンの排気通路中に配置されている。排気通路中の排気ガスの排気熱によって触媒が活性温度まで暖機されることで、触媒によって排気ガスに含まれる大気汚染物質が浄化される。触媒の早期活性化を目的として、エアポンプによってエアクリーナから排気通路に二次エアを供給するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。二次エアによって排気通路中の排気ガス中の未燃焼ガスが再燃焼され、再燃焼の熱によって触媒が早期に活性化されて浄化性能が向上される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-118205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エアポンプの駆動中にはライダーにとって耳障りな作動音が生じる。また、特許文献1に記載のエアポンプはエンジンの上方に配置されており、エアポンプから排気通路までの配管が長くなって管路内の圧力損失によって吐出効率が低下する。エアクリーナやエンジンの周辺にはフレームが存在し、フレームの外側がカバーによって覆われているため、エアポンプの配置スペースを確保することが難しい。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、エアポンプの作動音による騒音を抑えると共に、二次エアポンプの吐出効率を向上させることができる二次エア供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の二次エア供給装置は、エンジンの排気ガスが通る排気通路に触媒が配置され、当該触媒よりも上流側でエアクリーナから前記排気通路に二次エアを供給する二次エア供給装置であって、前記エアクリーナから前記排気通路に向けて二次エアを送り出すエアポンプと、前記エアクリーナから取り込んだ二次エアを前記エアポンプに導く吸込管と、前記エアポンプから吐き出された二次エアを前記排気通路に導く吐出管と、を備え、前記エンジンにおいてクランクケースの前側にシリンダユニットが配置され、車両前面視で、前記エアポンプの少なくとも一部が前記クランクケースに重なり、車両側面視で、前記エアポンプの少なくとも一部が前記シリンダユニットに重なり、前記エアポンプの上方に前記エアクリーナが配置されており、車両上面視で、前記エアポンプの少なくとも一部が前記エアクリーナに重なっていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の二次エア供給装置によれば、エンジンの近くにエアポンプが配置されているため、エンジン音によってエアポンプの作動音が目立ち難くなる。よって、ライダーにとって耳障りなエアポンプの作動音による騒音を抑えることができる。また、エアポンプがエアクリーナと排気通路に近づけられるため、エアクリーナとエアポンプの間の吸込管が短くなり、エアポンプと排気通路の間の吐出管が短くなる。よって、吸込管及び吐出管の管路における二次エアの圧力損失が低下してエアポンプの吐出効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
図2】本実施例の鞍乗型車両の内部構造の斜視図である。
図3図2から車体フレームを取り除いた斜視図である。
図4】本実施例のエンジンの正面図である。
図5】本実施例の車両側面視におけるエアポンプの配置を示す図である。
図6】本実施例の車両上面視におけるエアポンプの配置を示す図である。
図7】本実施例の車両前面視におけるエアポンプの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の二次エア供給装置は、エンジンの排気ガスが通る排気通路に触媒が配置され、当該触媒よりも上流側でエアクリーナから排気通路に二次エアを供給している。エアポンプによってエアクリーナから排気通路に向けて二次エアが送り出されており、エアクリーナから取り込んだ二次エアが吸込管を通じてエアポンプに導かれ、エアポンプから吐き出された二次エアが吐出管を通じて排気通路に導かれている。エンジンのクランクケースの前側にシリンダユニットが配置されており、車両前面視でエアポンプの少なくとも一部がクランクケースに重なり、車両側面視でエアポンプの少なくとも一部がシリンダユニットに重なっている。エアポンプがエンジンの近くに配置されて、エンジン音によってエアポンプの作動音が目立ち難くなり、ライダーにとって耳障りなエアポンプの作動音による騒音が抑えられる。また、エアポンプがエアクリーナと排気通路に近づけられて、エアクリーナとエアポンプの間の吸込管が短くなり、エアポンプと排気通路の間の吐出管が短くなる。吸込管及び吐出管の管路における二次エアの圧力損失が低下してエアポンプの吐出効率が向上される。
【実施例
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例の二次エア供給装置を適用した鞍乗型車両について詳細に説明する。以下の説明では、鞍乗型車両としてスクータタイプの自動二輪車を例示して説明する。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
【0011】
図1に示すように、スクータタイプの鞍乗型車両1は、鋼製又はアルミ合金製の車体フレーム10(図2参照)に車体外装として各種カバーを装着して構成されている。車両前側にはフロントフレームカバー21が設けられており、フロントフレームカバー21の後側にはライダーの足回りを保護するレッグシールド22が設けられている。レッグシールド22の下端から後方に向かってステップボード23が延在しており、ステップボード23の後方にはリアフレームカバー24が設けられている。ステップボード23上には、レッグシールド22とリアフレームカバー24を連ねるセンターカバー25が設けられている。
【0012】
フロントフレームカバー21の上側にはハンドル31が設けられ、フロントフレームカバー21の下側には一対のフロントフォーク32を介して前輪33が回転可能に支持されている。リアフレームカバー24の上側にはライダーシート34とピリオンシート35が設けられ、リアフレームカバー24の下側にはCVT(Continuously Variable Transmission)カバー53が設けられている。CVTカバー53の後部に後輪36が回転可能に支持されている。CVTカバー53の内側にはベルト式の無段変速機(不図示)が収容されており、エンジン40側の駆動力がベルトを介して後輪36に伝達されている。
【0013】
センターカバー25及びリアフレームカバー24の内側には、車両前方から車両後方に向かって、ラジエータ37、燃料タンク38、エンジン40が配置されている。エンジン40は、クランクケース42の前側にシリンダユニット41を前傾させている。クランクケース42の車幅方向の左側には、車両前後方向に長いCVTカバー53が取り付けられている。シリンダユニット41の上方にはエアクリーナ60が配置され、エアクリーナ60からシリンダユニット41の上部に吸気管65(図2参照)が延びている。シリンダユニット41の下部から車両後方に向かって排気管66(図4参照)が延びており、排気管66の下流側にはマフラ67が取り付けられている。
【0014】
排気管66の途中には触媒68(図4参照)が設けられており、触媒68によって排気ガス中の大気汚染物質が浄化される。しかしながら、触媒68が活性温度になるまでは排気ガスの浄化性能が十分に得られない。このため、エンジン始動直後の冷機時には、エアクリーナ60から排気通路に二次エアが導入されることで、排気ガス中の未燃焼ガスが再燃焼されて、再燃焼の熱によって触媒68が早期に活性化される。また、エアクリーナ60から排気通路に二次エアが導入されることで、排気ガス中の大気汚染物質が二次エア中の酸素と反応することで大気汚染物質が浄化される。
【0015】
二次エアの導入にはエンジンの燃焼サイクルの排気脈動が利用されている。一般的なエンジンのシリンダユニットにはリードバルブが設けられており、排気脈動の負圧によってリードバルブが開くことで、エアクリーナから排気通路に二次エアが導入される。しかしながら、近年の排気ガス規制の強化によって触媒が大型化しており、排気脈動の負圧が弱くなって排気通路に二次エアが入り難くなっている。このため、エアポンプによってエアクリーナから二次エアを吸い込んで、排気通路に二次エアを吐き出して、エアクリーナから排気通路に向かう二次エアの流量を増加させている。
【0016】
エアポンプを配置する場合には、エアポンプの吐出効率や作動音、熱害を考慮する必要がある。例えば、シリンダユニットの上方にエアポンプが配置されると、エアクリーナ及びシリンダユニットのリードバルブにエアポンプが近づけられる。二次エアの送出経路が短くなり、圧力損失が低下してエアポンプの吐出効率は向上されるが、エアクリーナやラゲージボックスの形状変更が必要になる。また、ライダーシートに跨ったライダーにエアポンプが近づけられ、ライダーに届くエアポンプの作動音が大きくなって作動音が耳障りになる。
【0017】
シリンダユニットの下方にエアポンプが配置されると、シリンダユニットやエアクリーナによってエアポンプの作動音が遮られ、ライダーに届くエアポンプの作動音が抑えられる。しかし、エアクリーナ及びシリンダユニットのリードバルブからエアポンプが遠くなるため、二次エアの送出経路が長くなり、圧力損失が増加してエアポンプの吐出効率が低下する。また、エアポンプが排気管に近づけられて高温にさらされると共に、最低地上高の制約からエアポンプの配置が困難である。さらに、クランクケースの左右側方にはリアフレームカバーが存在するためエアポンプを配置できない。
【0018】
このように、鞍乗型車両の内側にエアポンプを配置するのに様々な制約があり、単にエンジン付近にエアポンプを配置すればいいわけではない。そこで、本実施例では、クランクケース42よりもシリンダユニット41の車幅方向の寸法が小さなことに着目して、シリンダユニット41の側方かつクランクケース42の前方にエアポンプ71の配置スペースが確保されている。これにより、上記したエアポンプ71の吐出効率、エアポンプ71の作動音、排気管66の排熱、リアフレームカバー24とエアポンプ71の干渉等を考慮したエンジン40付近の適切な位置にエアポンプ71が配置される。
【0019】
以下、図2及び図4を参照して、二次エア供給装置について説明する。図2は、本実施例の鞍乗型車両の内部構造の斜視図である。図3は、図2から車体フレームを取り除いた斜視図である。図4は、本実施例のエンジンの正面図である。
【0020】
図2に示すように、車体フレーム10は、いわゆるダブルクレードルフレームであり、車体フレーム10のヘッドパイプ11の上部から後斜め下方に支持フレーム12が延びている。支持フレーム12の下部から左右に分岐して一対の第1のフロントフレーム13が下方に延びており、ヘッドパイプ11の下部から左右に分岐して一対の第2のフロントフレーム14が下方に延びている。一対の第1、第2のフロントフレーム13、14の下部には一対のアッパフレーム15が接続されており、一対のアッパフレーム15は燃料タンク38の上方を通るようにして車両後方に延びている。
【0021】
一対のアッパフレーム15の前部には一対のロアフレーム16が接続されており、一対のロアフレーム16は燃料タンク38を下側から囲むように一対のアッパフレーム15の前部から後部まで延びている。一対のロアフレーム16の後部にはシートフレーム17が接続されており、シートフレーム17は一対のロアフレーム16の後部同士を接続するように円弧状に形成されている。また、一対のアッパフレーム15の中間部は第1のブリッジ18によって接続されており、シートフレーム17の一対の前側部分は第2のブリッジ19によって接続されている。第2のブリッジ19には一対のロアフレーム16の後部も接続されている。
【0022】
車体フレーム10は、一対のアッパフレーム15と一対のロアフレーム16によってクレードル部分20が形成されており、このクレードル部分20の前面側にラジエータ37が取り付けられている。クレードル部分20の内側には燃料タンク38が取り付けられ、ラジエータ37の後方に燃料タンク38が位置付けられている。クレードル部分20の後側にはエンジン40が取り付けられ、エンジン40のシリンダユニット41がクレードル部分20の内側に入り込んでいる。クレードル部分20の上部にはエアクリーナ60が取り付けられ、シリンダユニット41の上方にエアクリーナ60が位置付けられている。
【0023】
図3及び図4に示すように、エンジン40は、クランクケース42の前側にシリンダユニット41を配置している。シリンダユニット41は、クランクケース42から前方に延びるシリンダ43と、シリンダ43の前端に取り付けられたシリンダヘッド44と、シリンダヘッド44の前端に取り付けられたシリンダヘッドカバー45とを有している。シリンダヘッドカバー45の上部にはスロットルボディ46が設けられており、シリンダヘッド44の下部からは排気管66が延出している。排気管66はエンジン40の右側方をマフラ67に向かって延びており、排気管66の途中部分には触媒68が配置されている。
【0024】
クランクケース42は、左右割り構造であり、左側ケース51と右側ケース52を有している。左側ケース51は右側ケース52よりも後方に延びており、左側ケース51の左側面が開口している。左側ケース51の左側面にCVTカバー53が取り付けられて無段変速機の収容空間が形成されている。右側ケース52の右側面が開口しており、右側ケース52の右側面にクラッチカバー54が取り付けられてクラッチディスク(不図示)の収容空間が形成されている。左側ケース51と右側ケース52の合わせ面55を基準にして、クランクケース42の左側が右側よりも車幅方向の外側に膨らんでいる。
【0025】
エアクリーナ60は、上下割り構造であり、上側ケース61と下側ケース62を有している。上側ケース61と下側ケース62の境界にはフィルタ(不図示)が設けられ、上側ケース61と下側ケース62の内側がフィルタによってダーティサイドとクリーンサイドに分かれている。上側ケース61の前面には吸入管63が設けられており、下側ケース62の前面の左側には突出部64が形成されている。突出部64はシリンダヘッドカバー45の前端付近まで延び、突出部64の右隣にはスロットルボディ46が位置付けられている。突出部64の前端はU字状の吸気管65を介してスロットルボディ46に接続されている。
【0026】
エンジン40には、エアクリーナ60から触媒68よりも上流の排気ポート76に二次エアを供給する二次エア供給装置70が設けられている。二次エア供給装置70は、円柱状のエアポンプ71と、エアクリーナ60とエアポンプ71を接続する吸込管72と、エアポンプ71とシリンダユニット41を接続する吐出管73とを有している。エアポンプ71の上部には吸込管72が連なる吸込口74が形成され、エアポンプ71の下部には吐出管73が連なる吐出口75が形成されている。エアポンプ71の作動によってエアクリーナ60から排気ポート76に向けて二次エアが送り出される。
【0027】
吸込管72はエアクリーナ60の突出部64の下面からエアポンプ71の吸込口74まで延びており、吸込管72によってエアクリーナ60に取り込まれた二次エアがエアポンプ71に導かれている。吐出管73はエアポンプ71の吐出口75からシリンダヘッドカバー45の前面のリードバルブカバー77まで延びており、吐出管73によってエアポンプ71から吐き出された二次エアがリードバルブカバー77を通じて排気ポート76に二次エアが導かれている。シリンダヘッドカバー45の内部通路にはリードバルブ(不図示)が配置されており、リードバルブカバー77によってリードバルブが覆われている。
【0028】
このように、エアクリーナ60の突出部64から吸込管72を通じてエアポンプ71の吸込口74に二次エアが吸い込まれ、エアポンプ71の吐出口75から吐出管73を通じてリードバルブカバー77に二次エアが吐き出されている。リードバルブカバー77の内側のリードバルブを通じて二次エアがシリンダヘッドカバー45の内部通路に入り込み、この内部通路を通ってシリンダヘッド44の排気ポート76に二次エアが供給されている。排気ポート76に二次エアが供給されることで、排気ポート76から排出された排気ガス中の大気汚染物質の浄化性能が向上される。
【0029】
エアポンプ71はシリンダヘッド44の左側に配置されており、エアポンプ71がエンジン40とエアクリーナ60に近づけられてエアポンプ71の吐出効率が向上されている。エアポンプ71の作動音がエンジン音によって目立たなくなり、さらにエアポンプ71の作動音がエアクリーナ60によって遮られている。エアポンプ71はシリンダヘッド44を挟んで排気管66と逆側に配置されているため、排気管66の排熱にエアポンプ71がさらされることがない。さらに、エアポンプ71の前方に燃料タンク38が配置されており、ラジエータ37からの排風が燃料タンク38に遮られてエアポンプ71の熱害が抑えられる。
【0030】
図4から図7を参照して、エアポンプの配置について説明する。図5は、本実施例の車両側面視におけるエアポンプの配置を示す図である。図6は、本実施例の車両上面視におけるエアポンプの配置を示す図である。図7は、本実施例の車両前面視におけるエアポンプの配置を示す図である。
【0031】
図4に示すように、車両前面視で、エアポンプ71の一部がクランクケース42に重なっている。より詳細には、左側ケース51とCVTカバー53の合わせ面56にエアポンプ71が重なっており、エアポンプ71が車幅方向でリードバルブカバー77に近づけられている。エアポンプ71の右半部がエアクリーナ60の左側面よりも車幅方向の内側に位置付けられており、エアポンプ71が車幅方向でエアクリーナ60に近づけられている。この場合、エアポンプ71は、ブラケット(不図示)等を介してシリンダユニット41又はエアクリーナ60に取り付けられている。
【0032】
エアポンプ71の下部は排気管66よりも上方に位置付けられ、エアポンプ71の上部はリードバルブカバー77の下部と同じ高さに位置付けられている。このため、エアポンプ71が上下方向でリードバルブカバー77に近づけられている。エアポンプ71の上方にエアクリーナ60の突出部64が位置付けられ、エアポンプ71が上下方向でエアクリーナ60に近づけられている。このように、シリンダユニット41の左側方の空間にエアポンプ71が配置され、車幅方向及び上下方向において、エアポンプ71がリードバルブカバー77とエアクリーナ60に近づけられている。
【0033】
図5に示すように、車両側面視で、エアポンプ71の一部がシリンダヘッド44に重なっている。より詳細には、シリンダヘッド44及びシリンダヘッドカバー45の側面の投影面の内側にエアポンプ71が配置されている。エアポンプ71が傾けられており、エアポンプ71の上部の吸込口74が上下方向でエアクリーナ60の突出部64に近づけられ、エアポンプ71の下部の吐出口75が車両前後方向でリードバルブカバー77(図4参照)に近づけられている。本実施例では、ポンプ中心線L1がシリンダ中心線L2に直交するようにエアポンプ71が傾けられている。
【0034】
このように、エアポンプ71がシリンダヘッド44の側方かつクランクケース42の前方に配置されている。よって、エアクリーナ60の突出部64からエアポンプ71の吸込口74まで延びる吸込管72が短くなり、エアポンプ71の吐出口75からリードバルブカバー77まで延びる吐出管73が短くなる。吸込管72及び吐出管73が短くなることで、管路内で生じる圧力損失が低下してエアポンプ71の吐出効率が向上されている。また、吸込管72及び吐出管73がホース等の可撓性材料によって形成されている。
【0035】
図6に示すように、車両上面視で、エアポンプ71の一部がエアクリーナ60に重なっている。より詳細には、エアクリーナ60の突出部64によってエアポンプ71の右半部が覆われている。このため、エアポンプ71の作動音がエアクリーナ60によって遮られて、ライダーシート34(図1参照)に跨ったライダーに届くエアポンプ71の作動音が抑えられる。また、エアポンプ71の作動音がエンジン音に紛れて目立ち難くなっている。エアクリーナ60がシリンダユニット41の上方に位置付けられているため、ライダーシート34の下方に収容空間を広く確保できる。
【0036】
図7に示すように、シリンダユニット41(図5参照)の前方には燃料タンク38が配置され、当該燃料タンク38の前方にはラジエータ37が配置されている。車両前面視で、エアポンプ71の一部が燃料タンク38に重なり、燃料タンク38から露出したエアポンプ71の他の一部がラジエータ37に重なっている。より詳細には、燃料タンク38が車幅方向の中心に配置されており、エアポンプ71の右側が燃料タンク38に重なっている。エアポンプ71と燃料タンク38の上部が同じ高さに位置付けられており、エアポンプ71と燃料タンク38の上部がラジエータ37の上部よりも上方に位置付けられている。
【0037】
また、エアポンプ71が左側(車幅方向の一方側)に寄せて配置され、ラジエータ37が右側(車幅方向の他方側)に寄せて配置されている。このとき、燃料タンク38に対するラジエータ37の左側のはみ出し量が、燃料タンク38に対するエアポンプ71の左側のはみ出し量と同じになっている。このため、車両前面視で燃料タンク38からはみ出したエアポンプ71の前面部分のうち、エアポンプ71の左下側だけがラジエータ37に重なっている。ラジエータ37の背面には冷却ファン39が設けられており、車両前面視で冷却ファン39が燃料タンク38に重なっている。
【0038】
このように、ラジエータ37の排風の大部分が燃料タンク38によって遮られ、エアポンプ71に対してラジエータ37の排風が当たり難くなる。よって、ラジエータ37の排風によるエアポンプ71の熱害が抑えられて、熱が籠りやすい車体内側でもエアポンプ71を正常に作動させることができる。車両前面視で冷却ファン39が燃料タンク38に重なっているため、ラジエータ37からエアポンプ71に向かう排風が遮られて、ラジエータ37の排風がエアポンプ71に当たり難くなる。
【0039】
以上、本実施例によれば、エンジン40の近くにエアポンプ71が配置されているため、エンジン音にエアポンプ71の作動音が紛れて目立ち難くなる。よって、ライダーにとって耳障りなエアポンプ71の作動音による騒音が抑えられる。また、エアポンプ71がエアクリーナ60とリードバルブカバー77に近づけられるため、エアクリーナ60とエアポンプ71の間の吸込管72が短くなり、エアポンプ71とリードバルブカバー77の間の吐出管73が短くなる。よって、吸込管72及び吐出管73における二次エアの圧力損失が低下してエアポンプ71の吐出効率が向上される。
【0040】
なお、本実施例では、シリンダヘッドに形成された排気ポートを排気通路として、エアポンプが排気ポートに二次エアを供給する構成にしたが、排気通路は排気ポートに限定されない。排気通路は、エンジンの排気ガスが通る通路であればよく、例えば、排気管を排気通路として、エアポンプが排気管に二次エアを供給してもよい。
【0041】
また、本実施例では、吸込管によってエアクリーナの突出部の下面からエアポンプの吸込口に二次エアが導かれる構成にしたが、吸込管によってエアクリーナからエアポンプに二次エアが導かれる構成であればよい。すなわち、吸込管によってエアクリーナのクリーンサイドからエアポンプの吸込口に二次エアが導かれればよい。
【0042】
また、本実施例では、吐出管によってエアポンプの吐出口からリードバルブカバーに二次エアが導かれる構成にしたが、吐出管によってエアポンプから排気通路に二次エアが導かれる構成であればよい。例えば、吐出管によってエアポンプの吐出口から排気管に二次エアが導かれてもよい。
【0043】
また、本実施例では、車両側面視でエアポンプの一部がシリンダヘッドに重なる構成にしたが、エアポンプの少なくとも一部がシリンダユニットに重なる構成であればよい。例えば、エアポンプの全部がシリンダヘッドに重なってもよいし、エアポンプの少なくとも一部がシリンダヘッド又はシリンダに重なってもよい。
【0044】
また、本実施例では、車両前面視でエアポンプの一部がクランクケースに重なる構成にしたが、エアポンプの少なくとも一部がクランクケースに重なる構成であればよい。例えば、エアポンプの全部がクランクケースに重なってもよい。
【0045】
また、本実施例では、車両上面視でエアポンプの一部がエアクリーナに重なる構成にしたが、エアポンプの少なくとも一部がエアクリーナに重なる構成であればよい。例えば、エアポンプの全部がエアクリーナに重なってもよい。
【0046】
また、本実施例では、車両前面視でエアポンプの一部が燃料タンクに重なる構成にしたが、エアポンプの少なくとも一部が燃料タンクに重なる構成であればよい。例えば、エアポンプの全部が燃料タンクに重なってもよい。
【0047】
また、本実施例では、車両前面視で燃料タンクに対するラジエータの左側のはみ出し量が、燃料タンクに対するエアポンプの左側のはみ出し量と同じ構成にしたが、このラジエータの左側のはみ出し量がエアポンプの左側のはみ出し量よりも少なくてもよい。なお、はみ出し量が同じとは、はみ出し量が完全に一致する必要はなく、はみ出し量が一致すると見做せる程度の誤差を含んでいてもよい。
【0048】
また、本実施例では、エアポンプの上部がリードバルブカバーの下部と同じ高さにしたが、エアポンプの上部がリードバルブカバーの下部よりも高い位置に位置付けられていてもよい。なお、同じ高さとは完全に高さが一致する必要はなく、高さが一致すると見做せる程度の誤差を含んでいてもよい。
【0049】
また、本実施例では、エアポンプの前方に燃料タンクが配置され、燃料タンクの前方にラジエータが配置される構成にしたが、エアポンプの前方にはラジエータからの排風を遮る障害物が配置されていればよい。例えば、エアポンプの前方にはラゲージボックスやエアクリーナが配置されていてもよい。
【0050】
また、本実施例では、エアポンプがシリンダユニットの左側方に配置される構成にしたが、エアポンプがシリンダユニットの右側方に配置されてもよい。
【0051】
また、本実施例の二次エア供給装置は、図示の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0052】
以上の通り、本実施例の二次エア供給装置(70)は、エンジン(40)の排気ガスが通る排気通路(排気ポート76)に触媒(68)が配置され、当該触媒よりも上流側でエアクリーナ(60)から排気通路に二次エアを供給する二次エア供給装置であって、エアクリーナから排気通路に向けて二次エアを送り出すエアポンプ(71)と、エアクリーナから取り込んだ二次エアをエアポンプに導く吸込管(72)と、エアポンプから吐き出された二次エアを排気通路に導く吐出管(73)と、を備え、エンジンにおいてクランクケース(42)の前側にシリンダユニット(41)が配置され、車両前面視で、エアポンプの少なくとも一部がクランクケースに重なり、車両側面視で、エアポンプの少なくとも一部がシリンダユニットに重なっている。この構成によれば、エンジンの近くにエアポンプが配置されているため、エンジン音によってエアポンプの作動音が目立ち難くなる。よって、ライダーにとって耳障りなエアポンプの作動音による騒音を抑えることができる。また、エアポンプがエアクリーナと排気通路に近づけられるため、エアクリーナとエアポンプの間の吸込管が短くなり、エアポンプと排気通路の間の吐出管が短くなる。よって、吸込管及び吐出管の管路における二次エアの圧力損失が低下してエアポンプの吐出効率を向上することができる。
【0053】
本実施例の二次エア供給装置において、エアポンプの上方にエアクリーナが配置されており、車両上面視で、エアポンプの少なくとも一部がエアクリーナに重なっている。この構成によれば、エアポンプの作動音がエアクリーナによって遮られて、ライダーに届くエアポンプの作動音を抑えることができる。また、エアポンプがエアクリーナに近づけられるため、エアクリーナとエアポンプの間の吸込管が短くなって、吸込管における二次エアの圧力損失が低下してエアポンプの吐出効率を向上することができる。
【0054】
本実施例の二次エア供給装置において、エンジンにおいてシリンダユニットの前面にリードバルブカバー(77)が配置され、吐出管によってエアポンプからリードバルブカバーを通じて排気通路に二次エアが導かれており、エアポンプの上部がリードバルブカバーの下部と同じ高さに位置付けられている。この構成によれば、エアポンプがリードバルブカバーに近づけられるため、エアポンプとリードバルブカバーの間の吐出管が短くなって、吐出管の管路における二次エアの圧力損失が低下してエアポンプの吐出効率を向上することができる。
【0055】
本実施例の二次エア供給装置において、シリンダユニットの前方には燃料タンク(38)が配置され、当該燃料タンクの前方にはラジエータ(37)が配置されており、車両前面視で、エアポンプの少なくとも一部が燃料タンクに重なっている。この構成によれば、ラジエータの排風が燃料タンクに遮られるため、ラジエータの排風によるエアポンプに対する熱害が抑えられる。よって、熱が籠りやすい車体内側でもエアポンプを正常に作動させることができる。
【0056】
本実施例の二次エア供給装置において、エアポンプが車幅方向の一方側に寄せて配置され、ラジエータが車幅方向の他方側に寄せて配置されており、車両前面視で、燃料タンクに対するラジエータの車幅方向の一方側のはみ出し量が、燃料タンクに対するエアポンプの車幅方向の一方側のはみ出し量と同じ又は当該はみ出し量よりも少ない。この構成によれば、ラジエータの排風の大部分が燃料タンクに遮られて、エアポンプに対してラジエータの排風を当たり難くすることができる。
【0057】
本実施例の二次エア供給装置において、エアポンプの上部がラジエータの上部よりも上方に位置付けられている。この構成によれば、エアポンプに対してラジエータの排風を当たり難くすることができる。
【0058】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0059】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0060】
1 :鞍乗型車両
37 :ラジエータ
38 :燃料タンク
40 :エンジン
41 :シリンダユニット
42 :クランクケース
60 :エアクリーナ
68 :触媒
70 :二次エア供給装置
71 :エアポンプ
72 :吸込管
73 :吐出管
76 :排気ポート(排気通路)
77 :リードバルブカバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7