IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧

特許7491177乗物用内装材に対する照明装置の取付構造
<>
  • 特許-乗物用内装材に対する照明装置の取付構造 図1
  • 特許-乗物用内装材に対する照明装置の取付構造 図2
  • 特許-乗物用内装材に対する照明装置の取付構造 図3
  • 特許-乗物用内装材に対する照明装置の取付構造 図4
  • 特許-乗物用内装材に対する照明装置の取付構造 図5
  • 特許-乗物用内装材に対する照明装置の取付構造 図6
  • 特許-乗物用内装材に対する照明装置の取付構造 図7
  • 特許-乗物用内装材に対する照明装置の取付構造 図8
  • 特許-乗物用内装材に対する照明装置の取付構造 図9
  • 特許-乗物用内装材に対する照明装置の取付構造 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】乗物用内装材に対する照明装置の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/54 20170101AFI20240521BHJP
   B60Q 3/66 20170101ALI20240521BHJP
   B60Q 3/217 20170101ALI20240521BHJP
   B60Q 3/267 20170101ALI20240521BHJP
   B60Q 3/233 20170101ALI20240521BHJP
   B60Q 3/225 20170101ALI20240521BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20240521BHJP
   B60Q 3/78 20170101ALI20240521BHJP
   F21V 17/00 20060101ALI20240521BHJP
   F21W 106/00 20180101ALN20240521BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240521BHJP
【FI】
B60Q3/54
B60Q3/66
B60Q3/217
B60Q3/267
B60Q3/233
B60Q3/225
F21V8/00 200
B60Q3/78
F21V17/00 402
F21W106:00
F21Y115:10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020171999
(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公開番号】P2022063640
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 昭文
(72)【発明者】
【氏名】森島 愛
(72)【発明者】
【氏名】田原 宏泰
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-240811(JP,A)
【文献】特開2018-060719(JP,A)
【文献】特開2010-070116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/54
B60Q 3/66
B60Q 3/217
B60Q 3/267
B60Q 3/233
B60Q 3/225
F21V 8/00
B60Q 3/78
F21V 17/00
F21W 106/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用内装材に対する照明装置の取付構造であって、
前記照明装置は、光源と、前記光源から発生される光を導光可能な長尺の導光体と、を備え、
前記乗物用内装材は、板状をなし、表面と裏面とを連通する長尺の長孔と、前記長孔の脇において立ち上がる壁部と、を備えており、
前記導光体は、前記壁部に係止可能なクリップによって、前記長孔に沿って前記乗物用内装材の裏面側に取付けられることで、前記光源が発する光を前記長孔を通じて前記乗物用内装材の表面側に放出する構成とされており、
前記クリップは、
前記壁部に係合した状態で前記壁部から前記長孔の長手方向に交わる交差方向に延びる梁部と、
前記導光体に対して前記長孔とは反対側から被さる被覆部と、
前記梁部と前記被覆部とを連結する連結部と、を有し、
前記梁部および前記連結部は、前記被覆部が前記導光体を前記長孔の周縁に当接させるように前記乗物用内装材に対して前記被覆部を配する構成を備えるとともに、
前記クリップは、少なくとも前記梁部が弾性的に撓むことができる弾性材料によって構成されており、
前記梁部および前記連結部は、前記被覆部が前記導光体を前記長孔の周縁に押圧するように前記乗物用内装材に対して前記被覆部を配する構成を備えており、
前記連結部は、前記被覆部のうち、前記導光体を挟んで前記長孔とは反対側の位置から、前記長孔と前記導光体と前記被覆部との並び方向に沿って延び、
前記梁部は、前記連結部から、前記長孔と前記導光体と前記被覆部との並び方向と交わる方向に延びて、前記壁部に係止されている、乗物用内装材に対する照明装置の取付構造。
【請求項2】
前記被覆部と前記導光体との間には、弾性変形可能な弾性部材が介在され、
前記弾性部材は、前記導光体が前記長孔の周縁に当接した状態で、前記導光体を前記長孔とは反対側から覆いつつ、前記長孔および前記導光体を挟んだ両側において前記乗物用内装材に対向している、請求項1に記載の乗物用内装材に対する照明装置の取付構造。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記光源が発する光に対する遮光性を有する、請求項2に記載の乗物用内装材に対する照明装置の取付構造。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記長孔の長手方向の寸法よりも長い長尺状をなし、前記導光体を長手方向に沿って、かつ、周方向の一部において覆うとともに、
前記導光体は、前記弾性部材の外側から、2つ以上の前記クリップによって前記長手方向に沿って離間した位置において、前記乗物用内装材に固定されている、請求項2または3に記載の乗物用内装材に対する照明装置の取付構造。
【請求項5】
前記壁部は係合孔を備え、
前記梁部は、前記連結部とは反対側の端部に係合爪を備え、
前記クリップは、前記係合爪を前記係合孔に挿通させることで、前記壁部に係合される、請求項1~4のいずれか1項に記載の乗物用内装材に対する照明装置の取付構造。
【請求項6】
乗物用内装材に対する照明装置の取付構造であって、
前記照明装置は、光源と、前記光源から発生される光を導光可能な長尺の導光体と、を備え、
前記乗物用内装材は、板状をなし、表面と裏面とを連通する長尺の長孔と、前記長孔の脇において立ち上がる壁部と、を備えており、
前記導光体は、前記壁部に係止可能なクリップによって、前記長孔に沿って前記乗物用内装材の裏面側に取付けられることで、前記光源が発する光を前記長孔を通じて前記乗物用内装材の表面側に放出する構成とされており、
前記クリップは、
前記壁部に係合した状態で前記壁部から前記長孔の長手方向に交わる交差方向に延びる梁部と、
前記導光体に対して前記長孔とは反対側から被さる被覆部と、
前記梁部と前記被覆部とを連結する連結部と、を有し、
前記梁部および前記連結部は、前記被覆部が前記導光体を前記長孔の周縁に当接させるように前記乗物用内装材に対して前記被覆部を配する構成を備えており、
前記乗物用内装材は、前記裏面側において、互いに対向して立設されるとともにその先端側が互いの他方に向かって延びる一対の挟持部を備えており、
前記導光体は、その一部を遮光カバーによって覆われた状態で前記挟持部に挟持されることにより前記乗物用内装材に取付けられており、
前記遮光カバーは、
筒軸方向にスリットが施された筒状をなし、前記導光体を周方向で覆う本体部と、
前記スリットの両脇において前記スリットに沿って突出形成された一対のフランジ部と、を備え、
前記導光体の一部を前記本体部に収容した状態で、一対の前記挟持部の間に配されるとともに、一対の前記フランジ部が重ね合わされた状態で一対の前記挟持部の先端側によって挟まれるように構成されている、乗物用内装材に対する照明装置の取付構造。
【請求項7】
前記乗物用内装材は、前記長孔のほかに、表面と裏面とを連通して前記導光体の光を室内側に出射する連通孔を備えており、
前記導光体は、前記乗物用内装材の裏面側において前記長孔および前記連通孔を繋ぐように配策されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の乗物用内装材に対する照明装置の取付構造。
【請求項8】
前記乗物用内装材はドアトリムであって、少なくとも二つの板状部材を組み付けることによって構成されるとともに、ドアインサイドハンドルベゼルと、アームレストと、ドアポケットと、を備えており、
前記導光体は、前記ドアインサイドハンドルベゼルと、前記アームレストと、前記ドアポケットと、組み付けられた二つの上記板状部材の境界と、に配策される、請求項1~7のいずれか1項に記載の乗物用内装材に対する照明装置の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される技術は、乗物用内装材に対する照明装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物の内装材には、線状に発光する照明装置を取付けることがある。例えば、特許文献1には、光源と、光源から発せられる光を導光する線状の導光体とを備えた室内照明装置が開示されており、このような照明装置を照射窓を備える乗物用内装材の裏面側に取付け、照射窓から乗物室内側に向けて光を照射することで、乗物室内の夜間等における視認性や利便性を高めたり、乗物室の意匠性を高めたりすることができる。なお、特許文献1に開示される技術では、内装材に導光体を低コストに固定するために、固定手段を用いず、取付部を導光体に一体的に形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-181006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは、従来よりも長い長尺の導光体を備える照明装置を用い、一つの光源から発せられる光をこの長尺の導光体を利用して複数箇所に導光し、内装材の複数の箇所において乗物室内を照明することを検討している。この場合、内装材の裏面において導光体を湾曲させて配策することになるが、導光体の周面に取付部が形成されていると導光体の周面に方向性が生まれ、導光体の取り回しが困難になるという欠点があった。また、透明のレンズ部材を介することなく導光体を直接照射窓に取付けると、内装材から導光体が浮いた箇所において室内側に照射される光の量が少なくなり、室内側における照射ムラが起きやすいという課題があった。
【0005】
ここに開示される技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、長尺の導光体の浮きを抑制して乗物用内装材に簡便に取付けることが可能な乗物用内装材に対する照明装置の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される技術は、乗物用内装材に対する照明装置の取付構造であって、前記照明装置は、光源と、前記光源から発生される光を導光可能な長尺の導光体と、を備え、前記乗物用内装材は、板状をなし、表面と裏面とを連通する長尺の長孔と、前記長孔の脇において立ち上がる壁部と、を備えており、前記導光体は、前記壁部に係止可能なクリップによって、前記長孔に沿って前記乗物用内装材の裏面側に取付けられることで、前記光源が発する光を前記長孔を通じて前記乗物用内装材の表面側に放出する構成とされている。そして、前記クリップは、前記壁部に係合した状態で前記壁部から前記長孔の長手方向に交わる交差方向に延びる梁部と、前記導光体に対して前記長孔とは反対側から被さる被覆部と、前記梁部と前記被覆部とを連結する連結部と、を有し、前記梁部および前記連結部は、前記被覆部が前記導光体を前記長孔の周縁に当接させるように前記乗物用内装材に対して前記被覆部を配する構成を備えている。
【0007】
上記構成によると、照明装置の導光体は、クリップによって乗物用内装材の裏面側に取付けられるとともに、クリップの被覆部が導光体を長孔の周縁に当接させる構成とされている。これにより、例えば乗物用内装材の壁部にクリップを係止するという簡単な作業で、照明装置の導光体を長孔に対して適切な位置に位置決めするとともに、導光体を簡便に乗物用内装材に取付けることができる。また、乗物用内装材に対する導光体の浮きを抑えることが可能となり、照射ムラの発生を抑制することができる。
【0008】
ここに開示される取付構造の好適な一態様において、前記クリップは、少なくとも前記梁部が弾性的に撓むことができる弾性材料によって構成されており、前記梁部および前記連結部は、前記被覆部が前記導光体を前記長孔の周縁に押圧するように前記乗物用内装材に対して前記被覆部を配する構成を備えている。上記構成によると、クリップは梁部が弾性的に撓むことができるため、乗物用内装材への導光体の取付けが容易となり、取付作業性が向上される。また同時に、導光体に過剰な負荷をかけることなく、導光体を長孔の周縁に押し当てた状態で、乗物用内装材に取付けることができる。これにより、例えば走行に伴い乗物が振動した場合等であっても、長孔に対する導光体の変位を抑制することができる。その結果、乗物用内装材の表面側に放射される照明装置の光量を安定して保つことができる。
【0009】
ここに開示される取付構造の好適な一態様において、前記クリップは、合成樹脂の押出成形品である。上記構成によると、複雑な形状を有するクリップを容易かつ低コストに製造することができる。また、クリップは、合成樹脂により構成されるため、適度な撓み特性を備えるものとして提供し易い点においても好適である。
【0010】
ここに開示される取付構造の好適な一態様において、前記被覆部と前記導光体との間には、弾性変形可能な弾性部材が介在される。上記構成によると、クリップと導光体との間で弾性部材が弾性変形することで、クリップによって導光体を長孔の周縁に押し当てるかたちで、導光体を乗物用内装材の裏面側に取付けることができる。これにより、振動等に起因する長孔に対する導光体の変位を抑制することができる。また、クリップは、弾性変形可能な弾性部材を介して導光体を保持するため、クリップおよび導光体の寸法のバラつきや位置のバラつきを弾性部材によって吸収(解消)することができ、より安定的に導光体を乗物用内装材に取り付けることができる。
【0011】
ここに開示される取付構造の好適な一態様において、前記弾性部材は、前記光源が発する光に対する遮光性を有している。乗物用内装材は、複数の部材が組み合わされて一つのより大きな内装材を構成していることが多い。このような場合、部材同士の繋ぎ目(連結部分)にわずかな隙間が形成される場合があるが、通常、このような隙間は視認できない程度に設計されている。しかしながら、導光体の周面から全方位に光が発生されていると、乗物用内装材の意図しない繋ぎ目から光が表面側に漏れ出し、繋ぎ目が不良部位として目立ったり、乗物用内装材の全体としての光意匠性を損なったりすることとなる。これに対し、上記構成によると、導光体の周面から発生される光は、弾性部材によって長孔とは反対の側において遮られる。これにより、導光体に対して長孔とは反対側に光が漏れ出る事態を防止することができる。延いては、長孔等の意図した部位のみから光が放出される、高品質な乗物用内装材が実現される。
【0012】
ここに開示される取付構造の好適な一態様において、前記弾性部材は、前記長孔の長手方向の寸法よりも長い長尺状をなし、前記導光体を長手方向に沿って、かつ、周方向の一部において覆うとともに、前記導光体は、前記弾性部材の外側から、2つ以上の前記クリップによって前記長手方向に沿って離間した位置において、前記乗物用内装材に固定されている。上記構成によると、導光体は弾性部材によって意図しない方向への発光を防止した状態で乗物用内装材に取付けることができる。さらに、導光体は、クリップによって離間した位置において乗物用内装材に固定することができる。そのため、導光体を乗物用内装材に取り付ける際に、例えば、導光体および弾性部材を所定の取付位置に手で支持しながら、その両脇において導光体および弾性部材をクリップによって乗物用内装材に固定することができる。また、長尺の導光体を長孔に沿って配策する際に、導光体を長孔に沿って弛みを生じさせることなく容易に配策することができる。これにより、取付作業性の良好な乗物用内装材に対する照明装置の取付構造が実現される。
【0013】
ここに開示される取付構造の好適な一態様において、前記壁部は係合孔を備え、前記梁部は、前記連結部とは反対側の端部に係合爪を備えている。そして前記クリップは、前記係合爪を前記係合孔に挿通させることで、前記壁部に係合される。上記構成によると、壁部にクリップを簡単に係合させることができ、乗物用内装材に導光体を簡便に取付けることができる。
【0014】
ここに開示される取付構造の好適な一態様において、前記乗物用内装材は、前記裏面側において、互いに対向して立設されるとともにその先端側が互いの他方に向かって延びる一対の挟持部を備えており、前記導光体は、その一部を遮光カバーによって覆われた状態で前記挟持部に挟持されることにより前記乗物用内装材に取付けられている。そして、前記遮光カバーは、筒軸方向にスリットが施された筒状をなし、前記導光体を周方向で覆う本体部と、前記スリットの両脇において前記スリットに沿って突出形成された一対のフランジ部と、を備え、前記導光体の一部を前記本体部に収容した状態で、一対の前記挟持部の間に配されるとともに、一対の前記フランジ部が重ね合わされた状態で一対の前記挟持部の先端側によって挟まれるように構成されている。上記構成によると、導光体の一部を遮光カバーによって遮光した状態で乗物用内装材に対して容易に取り付けることができる。これにより、複数の部材からなる乗物用内装材における各部材の継ぎ目付近に導光体を配策する場合等に、その継ぎ目等の意図しない箇所から室内側に照明装置の光が漏れだす事態が防止される。また、導光体が遮光カバーによって覆われることで、導光体の側面発光が抑制され、光源からの光を導光体の先端側により多く伝播することが可能となる。
【0015】
ここに開示される取付構造の好適な一態様において、前記乗物用内装材は、前記長孔のほかに、表面と裏面とを連通して前記導光体の光を室内側に出射する連通孔を備えており、前記導光体は、前記乗物用内装材の裏面側において前記長孔および前記連通孔を繋ぐように配策されている。上記構成によると、光源および導光体の数を増やすことなく、一つの照明装置で乗物用内装材の複数箇所を発光させることができる。また、照明装置は、相対的に高価な光源を一つにし、相対的に安価な導光体を長尺とすることで、乗物用内装材の離れた箇所を低コストに照明することが可能とされる。また、長尺の導光体は、上記クリップの採用により、乗物用内装材の適切な位置に簡便かつズレなく取り付けることができるために、本技術において好ましく用いることができる。
【0016】
ここに開示される取付構造の好適な一態様において、前記乗物用内装材はドアトリムであって、少なくとも二つの板状部材を組み付けることによって構成されるとともに、ドアインサイドハンドルベゼルと、アームレストと、ドアポケットと、を備えており、前記導光体は、前記ドアインサイドハンドルベゼルと、前記アームレストと、前記ドアポケットと、組み付けられた二つの上記板状部材の境界と、に配策される。ここに開示される技術は、上記構成を備えるドアトリムに適用することで、その効果をいかんなく発揮することができる。このような構成によると、ドアトリムは、一つの光源と一つ導光体とを備える照明装置によって、ドアインサイドハンドルベゼルと、アームレストと、ドアポケットと、二つの板状部材の境界との複数箇所を好適に照明することができる。これにより、低コストで簡便な照明の取り付け構造が提供される。
【発明の効果】
【0017】
ここに開示される技術によれば、長尺の導光体の浮きを抑制して乗物用内装材に簡便に取付けることが可能な乗物用内装材に対する照明装置の取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る乗物用内装材に対する照明装置の取付構造を採用したドアトリムを車室内側から視た正面図
図2図1のドアトリムの背面図
図3】ドアトリムに配索された状態の照明装置の正面図
図4】ドアパネルのドアインサイドハンドルベゼル周辺を背面から視た要部斜視図
図5】一実施形態に係るドアトリムへの導光体の取付構造を示す断面図(図2のA-A線断面図)
図6図5の取付構造におけるクリップと、弾性部材と、導光体との分解斜視図
図7図5の取付構造におけるクリップと、弾性部材と、導光体との分解断面図
図8】一実施形態に係るドアトリムへの導光体の他の取付構造を示す斜視図
図9】ドアパネルのドアインサイドハンドルベゼル周辺を背面から視た他の要部斜視図
図10】一実施形態に係るドアトリムへの導光体の他の取付構造を示す断面図(図9のB-B線断面図)
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪実施形態≫
ここに開示される乗物用内装材に対する照明装置の取付構造について、図1図10を適宜参照しつつ説明する。なお、各図に示した符号F,Rr,U,D,IN,OUTはそれぞれ、乗物の一例としての車両の前後方向における前方,後方、鉛直方向の上方,下方、乗物室に対する内外方向における室内側,室外側を示している。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0020】
<ドアトリム>
図1は、車両の室内側から見たドアトリム1(乗物用内装材の一例)の構成を説明する概略図である。ドアトリム1は、概して板状をなすトリムボード2を主体として構成されており、図示されない金属製のドアインナパネルに対して室内側に、図示しないクリップ等の締結部材によって締結されることで、車室の意匠性と居住性とを高めている。トリムボード2は、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂(熱可塑性樹脂)等によって構成されたものや、その他、例えば、植物繊維(例えばケナフ)と合成樹脂とを混合した複合材料等により構成されたものであってよい。以下の説明では、トリムボード2について室内側を「表側」といい、反対に室外側を「裏側」という場合がある。
【0021】
<トリムボード>
ドアトリム1には、図1に示すように、ドアインサイドハンドルベゼル3や、アームレスト4、ドアポケット5、スピーカグリル8等の部品が備えられており、トリムボード2は、大まかには、これらの部品の搭載性や意匠性等を考慮して、複数のトリムボード部材が互いに組み付けられることで構成されている。本実施形態のトリムボード2は、主として、アッパーボード12、ロアボード13、アームレストボード14およびポケットボード15によって構成されている。トリムボード2は、表側の面(表面)が、天然皮革や合成皮革、布帛等からなる表皮材によって覆われていてもよい。
【0022】
アッパーボード12は、トリムボード2の上部を構成しており、丸みを帯びながらドアインナパネルに対して室内側に張り出すとともに、前後方向の略中央部分における下方よりには、ドアインサイドハンドル(図示せず)に対応する部分にハンドル開口部12Aが設けられている。ハンドル開口部12Aは、ドアインナパネルにトリムボード2を取り付ける際に、ドアインナパネルに取付けられているドアインサイドハンドルの取手部分が室内側に容易に挿通できるように大きく開口されている。そのため、アッパーボード12のハンドル開口部12Aには、ドアインサイドハンドルベゼル3を室内側から嵌めることで、ドアインナパネルが室内に露出されない構成となっている。ドアインサイドハンドルベゼル3は、本技術における乗物用内装材の一例である。アッパーボード12の下方には、ロアボード13が組付けられている。
【0023】
ロアボード13の表側の上方には、前後方向における略中央部分から後方にかけて、アームレストボード14が締結されている。このアームレストボード14は、車両の室内側に張り出す形状をなしており、乗員の肘掛けとして使用されるアームレスト4を構成する。アームレストボード14において、上方を向く上面14Aは、トリムボード2の表面(室内側を向く面。以下同様。)から室内に向けて略水平に延びており、この上面14Aの前方部分および後方部分には、開口が設けられている。前方部分および後方部分の開口にはそれぞれ、ドアウインドウの開閉を操作するためのスイッチ操作部(図示せず)と、小物を身近に収容することができるアームレストポケット部材(図示せず)とが装着されている。また、アームレストボード14は、全体として、前方部分は前方に向かうにつれて上昇(後傾)するとともに、後方部分は後方に向かうにつれて緩やかに上昇(前傾)しており、乗員がアームレスト4に腕を休めた状態から、スムーズにドアインサイドハンドルへと手を伸ばせるようにデザインされている。
【0024】
アームレスト4の前方の端部には、ドアグリップ7が設けられている。ドアグリップ7は、ドアの開閉時やアームレスト4への肘掛け時に乗員が把持するための部分であって、室内側に向けて略水平とされたアームレスト4の上面14Aに対し、上方ないし室内側に向けて丸く膨出するように曲面をなして形成されている。
【0025】
ロアボード13は、下方において室内側に膨出しており、膨出部の上方にポケット開口部5Aが設けられている。そしてこの膨出部の裏側(室外側)にはポケットボード15が締結されており、ロアボード13とポケットボード15との間には、上方に向けて開口するドアポケット5が構築されている。
【0026】
<照明装置>
このようなドアトリム1については、例えば、ドアインサイドハンドルベゼル3、アッパーボード12とロアボード13の境界ライン、アームレスト4の前方部分、および、ドアポケット5に照明を備えることで、室内にいる乗員に対してこれらの箇所の視認性を高めたり、車室の光装飾性を高めたりしたい場合がある。そこで本実施形態のドアトリム1は、トリムボード2における上記の複数箇所を照らすことができる照明装置30を一つ備えている。
【0027】
この照明装置30は、図3に示すように、光源としてのLED31と、LED31から出射された光を導光可能な導光体33と、を備えて構成されている。LED31は、LED基板に実装された状態でLED収容ケース32に収容されている。また、LED31は、図示しない制御装置を介して、車両に搭載されたバッテリ等の電源装置に接続されている。
【0028】
導光体33は、可撓性を有する断面略円形の長尺状(棒状)をなしており、上述のとおり、ドアインサイドハンドルベゼル3、アッパーボード12とロアボード13の境界、アームレスト4の前方部分、および、ドアポケット5を繋ぐように、トリムボード2の裏面(室外側の面。以下同様。)につづら折り状(ジグザグ状)に湾曲されて配策されている。導光体33の長手方向に沿う一端側の端面は、LED31の発光面と対向して配された状態で、LED収容ケース32に固定されている。本実施形態における導光体33は、光路となる光透過性の高いファイバ状のコアと、コアを周面において被覆するクラッド層とから構成され、クラッド層をコアに対して相対的に屈折率の低い材料によって構成することにより、コアに導入された光がクラッド層との界面において概ね全反射しつつ、長手方向に伝播される構成となっている。また、導光体33は、クラッド層が光透過性を有し、コアおよびクラッド層が拡散材料を含んでおり、このような構成によって、導光体33は周面から光が漏れる構成を備える、いわゆる側面発光型の導光体とされている。導光体33を構成する材料は特に制限されず、例えば、コアを構成する材料は、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、シリコーン系樹脂等であってよく、クラッド層を構成する材料はフッ素含有樹脂であってよい。
【0029】
<照明装置の取付け>
そしてトリムボード2には、裏面に配策された導光体33から発せられる光を、室内に向けて放射させる箇所において、トリムボード2の表面と裏面とを連通する照射窓が設けられている。本実施形態のトリムボード2においては、ドアインサイドハンドルベゼル3と、アッパーボード12とロアボード13の境界ライン、およびアームレスト4の前方部分に照射窓としての長尺のスリットS(例えば、図5参照)がそれぞれ独立して設けられ、ドアポケット5の上方に照射窓としての丸穴13A(連通孔の一例)が形成されている。以下、ドアインサイドハンドルベゼル3およびその周辺に導光体33を固定する場合を例にして、ドアトリム1への照明装置30(導光体33)の取付け構造について説明する。
【0030】
まず、ドアインサイドハンドルベゼル3およびその周辺の構造について説明する。ドアインサイドハンドルベゼル3は、乗員がドアインサイドハンドルの取手部分を握りやすいように、図4および図5に示すように、アッパーボード12の表面から室外側に向けて箱状に後退されている。すなわち、ドアインサイドハンドルベゼル3は、アッパーボード12の表面と概ね面一をなす正面部3Aと、正面部3Aに対して室外側に後退する奥壁3Cと、奥壁3Cの周縁部から立ち上がり正面部3Aに連続する立壁3Bと、を備えている。そしてドアインサイドハンドルベゼル3の上方に配される立壁3Bには、図5に示すように、前後方向に延びるスリットS(長孔の一例)が形成されている。また、ドアインサイドハンドルベゼル3の前方および後方に配される立壁3Bには、立壁3Bから前方および後方に向けてそれぞれ突出する係止爪(図示せず)が備えられている。そして下方に配される立壁3Bには、立壁3Bから下方に向けて突出する係止爪3E(図4参照)が備えられている。
【0031】
一方で、アッパーボード12のハンドル開口部12Aの周縁部においては、図5に示すように、室外側に向けて延びるリブ壁12Bがハンドル開口部12Aに沿って備えられている。本例のアッパーボード12において、ハンドル開口部12Aの上方では、開口端部とそのやや上方とにおいて、互いに対向する一対のリブ壁12Bが備えられている。そしてこれらのリブ壁12Bは、室外側において上下方向に配される連結壁12Cによって連結されており、全体として中空箱型の補強構造12Dをなしている。
【0032】
アッパーボード12のハンドル開口部12Aの下方においては、ドアインサイドハンドルベゼル3の係止爪3Eを受ける係止受部12Fが、リブ壁12Bから上方に立ち上がるように形成されている。これらのリブ壁12B,連結壁12C,および、係止受部12Fは、ハンドル開口部12Aの周縁部に合成樹脂によって一体形成されている。そして、このようなアッパーボード12のハンドル開口部12Aに対し、ドアインサイドハンドルベゼル3を室内側から嵌め込むことで、ドアインサイドハンドルベゼル3の係止爪(図示せず)および係止爪3Eが、アッパーボード12のリブ壁12Bおよび係止受部12Fにそれぞれ係止されて、ドアインサイドハンドルベゼル3がアッパーボード12に固定される。またこのことにより、ドアインサイドハンドルベゼル3の周縁部においては、スリットSの脇に、アッパーボード12の連結壁12Cが、スリットSに沿って、かつ、立壁3Bに対して立ち上がるように配されることとなる。すなわち、連結壁12Cは、本発明における壁部の一例である。連結壁12Cには、後述するクリップ40を係止するための係合孔12Eが、スリットSの前方および後方に対応する位置に1つずつ貫通形成されている。
【0033】
<照射窓近傍>
導光体33は、スリットSに沿って配される場合、図5図7に示すように、クリップ40と、弾性部材45とを用いて、ドアトリム1の裏面側に取付けられる。
【0034】
弾性部材45は、導光体33の周面の一部を長手方向に沿って覆う、略部分円筒形状をなす長尺の部材である。より詳細には、弾性部材45は、例えば、導光体33の周面に対応した曲率の円弧面部46を有するとともに、円弧面部46の周方向の両端において曲率半径方向外側に折れ曲がるように突出する折部47を備えている。弾性部材45の長手方向の寸法(円筒軸方向に沿う寸法)は、スリットSの長手方向の寸法よりも大きいものとされている。また、本例の弾性部材45において、円弧面部46の曲率は導光体33の周面の曲率よりもやや小さく、弾性部材45を導光体33に被せたときに、弾性部材45は円弧面部46の曲率を拡大させた状態で導光体33を円周方向に180度を超える範囲(例えば、225度程度)で覆うことができるように構成されている。弾性部材45は、合成樹脂(エラストマー、ゴムを含む)等の可撓性を有し弾性変形可能な材料によって構成され、例えば押出成形することにより形成されている。これに限定されるものではないが、弾性部材45は、LED31が発する光に対する遮光性(光反射性を含む。)の高い色を呈しているとよい。このような色としては、一例として、黒色や、白色、灰色、金属色等が挙げられる。この場合、弾性部材45は、導光体33の遮光カバーとして機能する。
【0035】
クリップ40は、導光体33をドアインサイドハンドルベゼル3の立壁3Bに形成されたスリットSに押し当てるための部材であり、被覆部41と、連結部42と、梁部43と、を有している。被覆部41は、スリットSとは反対側から導光体33に対して周方向で覆い被さる部分であり、本例の被覆部41は、上述の弾性部材45を介した状態で導光体33を覆うように形成されている。被覆部41は、導光体33に弾性部材45を被せた状態の弾性部材45の周面に対応した曲率の円弧面を有する略部分円筒形状をなしている。被覆部41の筒軸方向に沿う寸法は、スリットSの長手方向の寸法よりも十分に短いものとされている。連結部42は、被覆部41と梁部43とを連結する板片状の部分であり、板面が被覆部41の円筒軸に沿うように、かつ、被覆部41に対して曲率半径方向の外側に向けて立設されている。梁部43は、被覆部41の円筒軸に交わる交差方向に向けて連結部42から延びるように設けられている。本例の梁部43は、2枚の板片43A,43Bを含み、それぞれの板片43A,43Bは、連結部42の板面に対して垂直となるように、被覆部41の曲率半径方向において離間するように配設されている。一対の板片43A,43Bの延出方向の先端部には、互いの対向面とは反対側の面に、断面形状が略三角形の係合爪43a,43bがそれぞれ設けられている。このクリップ40は、少なくとも梁部43が弾性的に撓み変形可能に構成されており、例えば、合成樹脂(エラストマー、ゴムを含む。)を押出成形することにより形成されている。
【0036】
なお、クリップ40において、本例の被覆部41の曲率は、導光体33に弾性部材45を被せた状態の弾性部材45の周面の曲率よりもやや小さく、導光体33および弾性部材45に被覆部41を被せたときに、被覆部41はその曲率を拡大させた状態で導光体33および弾性部材45を円周方向に180度を超える範囲で覆うことができるように構成されている。また、被覆部41の周方向の寸法は、弾性部材45の円弧面部46の周方向の寸法と同じかやや小さくなるように設計されており、被覆部41を弾性部材45に被せるときに、弾性部材45の周方向の両端部の折部47の間に被覆部41が納まるようになっている。
【0037】
導光体33のドアインサイドハンドルベゼル3の裏面側への取付けに際しては、まず、導光体33に弾性部材45を被せ、導光体33の弾性部材45の折部47の間の露出部分を立壁3BのスリットSに(より詳細には、スリットSの両脇の周縁部に)当接させる。このとき、弾性部材45が長手方向においてスリットSを上方から覆うように、弾性部材45の長手方向の配置を調整する。そしてアッパーボード12の係合孔12Eの脇において、クリップ40の被覆部41を半径方向外側から弾性部材45に被せるとともに、クリップ40の梁部43の先端を係合孔12Eに挿通する。これにより、梁部43の先端の係合爪43a,43bが係合孔12Eの周縁部に係合し、クリップ40は導光体33を立壁3BのスリットSに当接させた状態でアッパーボード12に固定される。このことにより、照明装置30のLED31が発光すると、その光が導光体33の側面から発光されて、スリットSを通じて車室内に放射される。ここで、連結部42における被覆部41と梁部43の間の寸法は、クリップ40がアッパーボード12に固定された状態で、導光体33を立壁3Bに対して押圧するように設計されている。その結果、スリットS(立壁3B)に対する導光体33の浮きが抑えられ、車室からドアトリム1を見たときのスリットSからの照射ムラが抑制される。なお、本例のドアインサイドハンドルベゼル3に対し、導光体33は、2か所において2つのクリップ40で固定されている。
【0038】
<遮光部分>
一方で、一つの長尺の導光体33をドアトリム1の複数箇所に配策する場合、ドアトリム1の意図しない部分において、導光体33からの発光が室内側に漏れ出ることは望ましくない。そこで、導光体33からの発光が室内側に漏れ出る恐れがある箇所においては、導光体33は、図8に示すように、遮光カバー50に覆われた状態で、トリムボード2の裏面側に取付けられる。
【0039】
遮光カバー50は、可撓性を有する合成樹脂(エラストマー、ゴムを含む)等の材料によって構成されており、図10に示すように、本体部51と、一対のフランジ部52と、を備えている。本体部51は、円筒部材の筒軸方向に沿ってスリット51Aが施されたような略円筒状をなし、導光体33の長手方向の一部において、導光体33を周方向の全周に亘って覆うように構成されている。一対のフランジ部52は、本体部51の周方向の両端部において、換言すればスリット51Aの両脇において、スリット51Aに沿って半径方向外側に向けて突出形成されている。なお、本例の一対のフランジ部52は、本体部51の周方向においてやや離間して配されている。一方のフランジ部52は、本体部51の周方向の一端から所定の寸法tだけ離れた位置に配されており、他方のフランジ部52は、本体部51の周方向の一端に配されるとともに、その突出端において一方のフランジ部52に向けて延びる延出部53を備えている。この遮光カバー50は、可撓性を有する材料によって構成されていることから、スリット51A位置において一対のフランジ部52が離れる方向に開くことができるものの、自由状態においては本体部51が円筒形状に閉じるとともに、延出部53が一方のフランジ部52の先端側に突き当たるようになっている。これにより、円筒状の遮光カバー50に導光体33を挿通状態に容易に収容することができるとともに、スリット51Aからの光漏れを確実に防ぐことができる。このような遮光カバー50は、例えば押出成形することにより形成されており、長手方向の寸法は、導光体33を遮光したい寸法に合わせて適宜調整することができる。
【0040】
トリムボード2の裏面には、図9に示すように、遮光カバー50を間に収容して固定するための一対の挟持部18が備えられている。挟持部18は、互いに対向して立設される壁部18Aと、壁部18Aの先端側において互いの他方に向かって延びる鉤部18Bとを備えている。一対の壁部18Aは、トリムボード2(基端部)との接合部分において遮光カバー50の本体部51の直径よりも大きい寸法で離間しているものの、先端側に向かうにつれて離間距離が小さくなるように傾斜している。鉤部18Bは、壁部18Aとの為す角度が鋭角となるように配されている。このような挟持部18は、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂によって構成されており、射出成形などによってトリムボード2に対して一体的に形成されている。
【0041】
導光体33のトリムボード2の裏面側への取付けに際しては、まず、遮光カバー50をスリット51Aの位置で開いて本体部51に導光体33を収容する。その後、自由状態において本体部51が円筒状に閉じる(当接する)ことで、導光体33はその全周を遮光カバー50によって覆われる。また、一対のフランジ部52は、自由状態において本体部51よりも半径方向の外側において、延出部53が対向するフランジ部52の先端側に当接する。このことにより、スリット51Aの半径方向の外側は延出部53によって覆われ、導光体33からスリット51Aを通じて外部に光が漏れることが防止される。
【0042】
このように遮光カバー50で覆われた導光体33を、本体部51の側(フランジ部52とは反対側)から、一対の挟持部18の間に挟持部18の先端側から挿入する。そして本体部51が挟持部18の間に収容されることで、一対のフランジ部52が一対の挟持部18によって挟持される。このとき、鉤部18Bは、本体部51とフランジ部52との境界近傍に当接するようにその形状が設計されている。このことにより、遮光カバー50で覆われた導光体33が、トリムボード2の裏面から離れる方向に変位することが防止される。
【0043】
以上の実施形態のドアトリム1に対する照明装置30の取付構造において、照明装置30は、LED31と、LED31から発生される光を導光可能な長尺の導光体33と、を備えている。ドアトリム1(トリムボード2)は、板状をなし、ドアインサイドハンドルベゼル3の立壁3Bにおいて表面と裏面とを連通する長尺のスリットSと、スリットSの脇において立ち上がるアッパーボード12の連結壁12Cと、を備えている。導光体33は、連結壁12Cに係止可能なクリップ40によって、スリットSに沿って立壁3Bの裏面側に取付けられることで、LED31が発する光をスリットSを通じてドアトリム1の表面側に放出する構成とされている。そしてクリップ40は、連結壁12Cに係合した状態で連結壁12CからスリットSの長手方向に交わる交差方向に延びる梁部43と、導光体33に対してスリットSとは反対側から被さる被覆部41と、梁部43と被覆部41とを連結する連結部42と、を有し、梁部43および連結部42は、被覆部41が導光体33をスリットSの周縁に当接させるように立壁3Bに対して被覆部41を配する構成を備えている。
【0044】
上記構成によると、照明装置30の導光体33は、クリップ40によってドアトリム1の裏面側に取付けられるとともに、クリップ40の被覆部41が導光体33をスリットSの周縁に当接させる構成とされている。これにより、例えばアッパーボード12の連結壁12Cにクリップ40を係止するという簡単な操作によって、照明装置30の導光体33をスリットSに対して適切な位置に位置決めするとともに、導光体33を簡便にドアトリム1に取付けることができる。またこのとき、ドアトリム1に対する導光体33の浮きが抑えられるため、スリットSを通じて室内に放射される光の照射ムラの発生を抑制することができる。
【0045】
上記実施形態において、クリップ40は、少なくとも梁部43が弾性的に撓むことができる弾性材料によって構成されており、梁部43および連結部42は、被覆部41が導光体33をスリットSの周縁に押圧するように立壁3Bに対して被覆部41を配する構成を備えている。このような構成によると、クリップ40は梁部43が弾性的に撓むことができるため、導光体33の取り付けに際し、導光体33をスリットSの周縁に押し当てながら、立壁3Bの裏面側に導光体33を取付けることができる。これにより、走行に伴い車両が振動した場合等であっても、スリットSに対する導光体33の変位を抑制することができる。その結果、ドアトリム1の表面側に放射される照明装置30の光量を安定して保つことができる。また、梁部43が撓むことによって、ドアトリム1への導光体33の取付けが容易となり、取付作業性が向上される点においても有利となる。
【0046】
上記実施形態において、クリップ40は、合成樹脂の押出成形品である。このような構成によると、複雑な形状を有するクリップ40を容易かつ低コストに製造することができる。また、クリップ40は、合成樹脂により構成されるため、適度な撓み特性を備えるものとして提供し易い点においても好適である。
【0047】
上記実施形態において、被覆部41と導光体33との間には、弾性変形可能な弾性部材45が介在される。上記構成によると、クリップ40と導光体33との間で弾性部材45が弾性変形することで、クリップ40によって導光体33をスリットSの周縁に押し当てるかたちで、換言すれば、弾性反力を内在させた状態で、導光体33をドアトリム1の裏面側に取付けることができる。これにより、振動等に起因して、スリットSに対し導光体33が離れる方向に変位することを、好適に抑制することができる。また、クリップ40は、弾性変形可能な弾性部材45を介して導光体33を保持するため、クリップ40および導光体33の寸法のバラつきや位置のバラつきを弾性部材45の変形によって吸収(解消)することができる。これにより、より安定的に導光体33をドアトリム1に取り付けることができる。
【0048】
上記実施形態において、弾性部材45は、LED31が発する光に対する遮光性を有している。ドアトリム1においては、複数のトリムボードが組み合わされて一つのより大きなトリムボード2を構成することが多い。このような場合、部材同士の繋ぎ目(連結部分)や締結のための貫通孔等にわずかな隙間が生じる場合があるが、通常、このような隙間は視認できない程度に設計されている。しかしながら、トリムボード2の裏面側で導光体33の周面から全方位に光が発生されていると、トリムボード2の意図しない繋ぎ目から光が表面側に漏れ出し、繋ぎ目が不良部位として目立ったり、ドアトリム1の全体としての光意匠性を損なったりすることとなる。これに対し、上記構成によると、導光体33の周面から発生される光は、弾性部材45によってスリットSとは反対の側において遮られる。これにより、導光体33に対してスリットSとは反対側に光が漏れ出る事態を抑制することができる。延いては、スリットS等の意図した部位のみから表側に光が放出される、高品質なドアトリム1が実現される。
【0049】
上記実施形態において、弾性部材45は、スリットSの長手方向の寸法よりも長い長尺状をなし、導光体33を長手方向に沿って、かつ、周方向の一部において覆うとともに、導光体33は、弾性部材45の外側から、2つ以上のクリップ40によって長手方向に沿って離間した位置において、ドアトリム1に固定されている。上記構成によると、導光体33は、弾性部材45によって意図しない方向への発光が防止された状態でドアトリム1に取付けられる。さらに、導光体33は、クリップ40によって離間した位置においてドアトリム1に固定され得る。そのため、導光体33をドアトリム1に取り付ける際に、例えば、導光体33および弾性部材45を所定の取付位置に手で支持しながら、その両脇において導光体33および弾性部材45をクリップ40によってドアトリム1に固定することができる。また、長尺の導光体33をスリットSに沿って配策する際に、導光体33をスリットSに沿って弛みを生じさせることなく容易に配策することができる。これにより、取付作業性の良好な乗物用内装材に対する照明装置の取付構造が実現される。
【0050】
上記実施形態において、アッパーボード12の連結壁12C(壁部)は係合孔12Eを備え、梁部43は、連結部42とは反対側の端部に係合爪43a,43bを備え、クリップ40は、係合爪43a,43bを係合孔12Eに挿通させることで、連結壁12Cに係合される構成を備えている。上記構成によると、アッパーボード12の連結壁12Cにクリップ40を簡単に係合させることができ、ドアトリム1にに導光体33を簡便に取付けることができる。
【0051】
上記実施形態において、ドアトリム1は、裏面側において、互いに対向して立設されるとともにその先端側が互いの他方に向かって延びる一対の挟持部18を備えており、導光体33は、その一部を遮光カバー50によって覆われた状態で挟持部18に挟持されることによりドアトリム1に取付けられ、遮光カバー50は、筒軸方向にスリット51Aが施された筒状をなし、導光体33を周方向で覆う本体部51と、スリット51Aの両脇においてスリット51Aに沿って突出形成された一対のフランジ部52と、を備えている。そして、導光体33の一部を本体部51に収容した状態で、一対の挟持部18の間に配されるとともに、一対のフランジ部52が重ね合わされた状態で一対の挟持部18の先端側によって挟まれるように構成されている。上記構成によると、導光体33の一部を遮光カバー50によって遮光した状態でドアトリム1に対して容易に取り付けることができる。これにより、複数の部材からなるドアトリム1における各部材の継ぎ目付近に導光体33を配策する場合等に、その継ぎ目等の意図しない箇所から室内側に照明装置30の光が漏れ出す事態が抑制される。また、導光体33が遮光カバー50によって覆われることで、導光体33の側面発光が抑制され、LED31からの光を導光体33のより先端側により多く伝播することが可能となる。
【0052】
上記実施形態において、ドアトリム1は、スリットSのほかに、表面と裏面とを連通する丸穴13Aを備えており、照明装置30は、一つのLED31と一つの導光体33とを備え、一つの導光体33は、ドアトリム1の裏面側においてスリットSおよび丸穴13Aを繋ぐように配策されている。このような構成によると、LED31および導光体33の数を増やすことなく、一つの照明装置30でドアトリム1の複数箇所を発光させることができる。また、照明装置30は、相対的に高価なLED31を一つにし、相対的に安価な導光体33を長尺とすることで、ドアトリム1の離れた箇所を低コストに照明することが可能とされる。また、長尺の導光体33は、クリップ40の採用により、ドアトリム1の適切な位置に簡便かつズレなく取り付けることができるために、本技術において好ましく用いることができる。
【0053】
上記実施形態において、ドアトリム1は、少なくともアッパーボード12とロアボード13とを組み付けることによって構成されるとともに、ドアインサイドハンドルベゼル3と、アームレスト4と、ドアポケット5と、を備えており、1つの導光体33は、ドアインサイドハンドルベゼル3と、アームレスト4と、ドアポケット5と、組み付けられたアッパーボード12およびロアボード13の境界と、に配策されている。ここに開示される技術は、このような構成を備えるドアトリム1に適用することで、その効果をいかんなく発揮できる。このような構成によると、ドアトリム1は、一つのLED31と一つ導光体33とを備える照明装置30によって、上記の複数箇所を好適に照明することができる。これにより、低コストな照明の取り付け構造が提供される。
【0054】
<他の実施形態>
ここに開示される技術は、上記の実施形態に開示されたものに限定されるものではなく、例えば、以下の態様もここに開示される技術範囲に含まれる。また、ここに開示される技術は、その本質から逸脱しない範囲において種々変更された態様で実施することができる。
【0055】
(1)上記実施形態の照明装置において、導光体および光源の形状、配置、構成は適宜変更することができる。例えば、導光体の断面形状は円形に限定されず、多角形や楕円形などであってよく、導光体の導光メカニズムも異なる構成であってよい。また、導光体の配策形態も上記実施形態に限定されず、例えば、スピーカグリル8の周縁等の他の箇所に配策されていてもよい。
(2)上記実施形態では、アッパーボード12とロアボード13との境界に照射窓を備えることを例示したが、例えばアッパーボード12の下端付近に、ロアボード13との境界に沿って長尺のスリット状の照射窓を貫通形成してもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では、アッパーボード12が補強構造12Dを備え、この補強構造12Dにおける連結壁12Cが板状をなすとともに、この連結壁12C(壁部)が立壁3Bに対して立ち上がる構成を開示したが、トリムボード2に設けられる壁部の構成はこれに限定されない。例えば、本技術における壁部は、ドアインサイドハンドルベゼル3の上方に配される立壁3Bに直に立設されていてもよい。
(4)上記実施形態では、弾性部材45で覆った導光体33をスリットSに沿って配する手法について詳細には言及していない。ここで具体的には示さないが、例えば、ドアインサイドハンドルベゼル3の立壁3Bの裏面に、連結壁12C(壁部)の側に配される弾性部材45の折部47を挿入して固定するための固定片(図示せず)を、連結壁12C(壁部)とスリットSとの間に備えてもよい。これによると、導光体33および弾性部材45をクリップ留めする際の作業性がより一層簡便となる。
(5)上記実施形態においてクリップ40は、弾性部材45を介して導光体33に取り付けるようにしていたが、弾性部材45の使用は必須ではなく、クリップ40を導光体33に直接取り付けてもよい。この場合、クリップ40の被覆部41の曲率は、導光体33の周面に密着するように、導光体33の曲率と同程度かやや小さくなるように設計するとよい。
【0057】
(6)上記実施形態では、一つのドアトリム1に照明装置30が一つだけ備えられていたが、ドアトリム1に備えられた照明装置30が複数個所において照明機能を発揮する限り、ドアトリム1は、上記照明装置30とは別の、他の照明装置を備えていてもよい。
(7)上記実施形態では、乗物用内装材として車両のドアの内装材であるドアトリム1を例示したが、照明装置30が取付けられる内装材はこれに限定されない。例えば、乗物としては、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、自動運転車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などであってよい。また、内装材としては、ルーフライニングやサイドトリム、インストルメントパネル、ピラーガーニッシュ等のうちの1つまたは2つ以上であってよい。
【符号の説明】
【0058】
1:ドアトリム(乗物用内装材)、2…トリムボード、3…ドアインサイドハンドルベゼル、3B…立壁、12…アッパーボード、12A…ハンドル開口部、12B…リブ壁、12C…連結壁(壁部)、12E…係合孔、18…挟持部、18A…壁部、18B…鉤部、30…照明装置、31…LED(光源)、33…導光体、40…クリップ、41…被覆部、42…連結部、43…梁部、45…弾性部材、50…遮光カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10