(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】三次元造形装置および三次元造形システム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240521BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240521BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240521BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240521BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/106
B33Y30/00
B33Y50/00
(21)【出願番号】P 2020195608
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石倉 圭吾
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507250(JP,A)
【文献】特開2004-106524(JP,A)
【文献】特開2020-124828(JP,A)
【文献】特開2018-171778(JP,A)
【文献】特開2018-118385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の少なくとも一部を可塑化する可塑化機構を有し、可塑化した前記材料をステージの造形領域に向かって吐出する吐出部と、
前記造形領域を撮影可能なカメラと、
三次元造形物を造形するための造形用データに基づいて前記吐出部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記三次元造形物の造形を開始する前、前記三次元造形物の造形中、または、前記三次元造形物の造形後の少なくともいずれかの期間において、前記カメラの画像または動画を外部の表示部に表示させるか否かを設定するための設定情報を取得した場合、前記設定情報に基づいて、前記造形用データ毎に、
前記画像または前記動画を前記表示部に送信する、または、送信しない第1処理と、
前記カメラを起動または停止する第2処理と、
前記表示部に前記画像または前記動画を表示させるか否かを指示する出力指示情報を前記表示部に送信する第3処理と、
のいずれかの処理を実行する、
三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記造形用データを前記三次元造形装置に出力したユーザーによって入力される前記設定情報を取得する、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の三次元造形装置であって、
前記造形用データ毎に、1または複数のユーザーが対応付けられており、
前記制御部は、前記造形用データに対応付けられたユーザーによって入力される前記設定情報を取得する、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記第1処理において、前記画像を予め定められた間隔毎に前記表示部に送信する、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記表示部に即時の前記画像または前記動画を表示させる、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記表示部に、前記画像または前記動画の格納場所を示すアドレスを含む情報を送信する、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、複数の造形用データに基づいて、複数の三次元造形物を並行して造形する場合、前記カメラの前記画像または前記動画のうち、前記複数の三次元造形物のうちの少なくとも1の三次元造形物が撮影された領域を難読化する難読化処理を実行するか、または、前記領域に対して難読化処理を実行させる指示を前記表示部に送信する、三次元造形装置。
【請求項8】
請求項7に記載の三次元造形装置であって、
前記難読化処理は、非表示処理、前記三次元造形物と無関係の像への変換処理、塗りつぶし処理、モザイク処理の少なくともいずれかの処理を含む、三次元造形装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記三次元造形物の造形中にエラーが発生した場合、エラー情報を前記表示部に送信し、かつ、前記エラーが発生するよりも予め定められた期間、前に撮影された画像または動画を前記表示部に表示または保存させる、三次元造形装置。
【請求項10】
三次元造形装置、及び、表示装置を有する三次元造形システムであって、
前記三次元造形装置は、
材料の少なくとも一部を可塑化する可塑化機構を有し、可塑化した前記材料をステージの造形領域に向かって吐出する吐出部と、
前記造形領域を撮影可能なカメラと、
三次元造形物を造形するための造形用データに基づいて前記吐出部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記三次元造形物の造形を開始する前、前記三次元造形物の造形中、または、前記三次元造形物の造形後の少なくともいずれかの期間において、前記カメラの画像または動画を前記表示装置に表示させるか否かを示す設定情報を取得した場合、前記設定情報に基づいて、前記造形用データ毎に、
前記画像または前記動画を前記表示装置に送信する、または、送信しない第1処理と、
前記カメラを起動または停止する第2処理と、
前記表示装置に前記画像または前記動画を表示させるか否かを指示する出力指示情報を前記表示装置に送信する第3処理と、
のいずれかの処理を実行する、
三次元造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置および三次元造形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ビデオカメラを備える三次元造形装置が開示されている。この三次元造形装置は、ビデオカメラによって、造形中の造形物の映像を撮影し、離れた場所にその映像を送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元造形装置を複数のユーザーで共用する場合、上記のように、ビデオカメラによって撮影した造形物の映像を離れた場所に送信すると、他のユーザーに、現在のユーザーの造形物が視認可能な状態になり得る。そのため、複数人で三次元造形装置を共用する場合、機密の造形物を造形することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、材料の少なくとも一部を可塑化する可塑化機構を有し、可塑化した前記材料をステージの造形領域に向かって吐出する吐出部と、前記造形領域を撮影可能なカメラと、三次元造形物を造形するための造形用データに基づいて前記吐出部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記三次元造形物の造形を開始する前、前記三次元造形物の造形中、または、前記三次元造形物の造形後の少なくともいずれかの期間において、前記カメラの画像または動画を外部の表示部に表示させるか否かを設定するための設定情報を取得した場合、前記設定情報に基づいて、前記造形用データ毎に、前記画像または前記動画を前記表示部に送信する、または、送信しない第1処理と、前記カメラを起動もしくは停止する第2処理と、前記表示部に前記画像または前記動画を表示させるか否かを指示する出力指示情報を前記表示部に送信する第3処理と、のいずれかの処理を実行する。
【0007】
本開示の第2の形態によれば、三次元造形装置、及び、表示装置を有する三次元造形システムが提供される。この三次元造形システムにおいて、前記三次元造形装置は、材料の少なくとも一部を可塑化する可塑化機構を有し、可塑化した前記材料をステージの造形領域に向かって吐出する吐出部と、前記造形領域を撮影可能なカメラと、三次元造形物を造形するための造形用データに基づいて前記吐出部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記三次元造形物の造形を開始する前、前記三次元造形物の造形中、または、前記三次元造形物の造形後の少なくともいずれかの期間において、前記カメラの画像または動画を前記表示装置に表示させるか否かを示す設定情報を取得した場合、前記設定情報に基づいて、前記造形用データ毎に、前記画像または前記動画を前記表示装置に送信する、または、送信しない第1処理と、前記カメラを起動または停止する第2処理と、前記表示装置に前記画像または前記動画を表示させるか否かを指示する出力指示情報を前記表示装置に送信する第3処理と、のいずれかの処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】三次元造形システムの概略構成を示す図である。
【
図6】第1ユーザー情報データベースのデータ構造を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態において実行される画像出力処理のフローチャートである。
【
図8】第2ユーザー情報データベースのデータ構造を示す説明図である。
【
図9】第3実施形態における画像出力処理のフローチャートである。
【
図10】複数の三次元造形物を配置した例を示す説明図である。
【
図11】第4実施形態における画像の第1の表示例を示す説明図である。
【
図12】第4実施形態における画像の第1の表示例を示す説明図である。
【
図13】第4実施形態における画像の第2の表示例を示す説明図である。
【
図14】第4実施形態における画像の第3の表示例を示す説明図である。
【
図15】第5実施形態におけるエラー通知処理のフローチャートである。
【
図16】第6実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す図である。
【
図17】第6実施形態における吐出部の概略構成を示す図である。
【
図18】参考例としての三次元造形装置の概略構成を示す図である。
【
図19】参考例における画像出力処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置5を備える三次元造形システム6の概略構成を示す図である。三次元造形システム6は、三次元造形装置5と表示装置400とを備える。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向とを、両方含む。X軸及びY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。
図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。
【0010】
本実施形態の三次元造形装置5は、吐出部100と、材料収容部20と、チャンバー110と、移動機構部210と、ステージ220と、制御部300とを備える。
【0011】
吐出部100は、材料収容部20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化する可塑化機構を有している。吐出部100は、可塑化した材料をステージ220の造形領域に向かって吐出する。造形領域は、ステージ220の上面の領域である。
【0012】
チャンバー110は、内部に造形空間111を有し、三次元造形装置5の一部を収容する筐体である。本実施形態では、造形空間111には、材料収容部20と、吐出部100と、移動機構部210と、ステージ220とが収容されている。チャンバー110には、例えば、造形空間と外部とを連通させる開口部や、開口部を開閉する扉等が設けられていてもよい。この場合、ユーザーは、扉を開いて開口部を開状態とすることで、チャンバー110内の造形物を開口部から取り出すことができる。
【0013】
チャンバー加熱部115は、チャンバー110内に設けられている。チャンバー加熱部115はチャンバー110内の造形空間111を加熱する。チャンバー加熱部115は、例えば、チャンバー110内を加熱するヒーターによって構成されていてもよいし、加熱された空気をチャンバー110の外から取り入れつつチャンバー110の内外で空気を循環させる循環装置によって構成されていてもよい。本実施形態のチャンバー加熱部115は、制御部300によって制御される。制御部300は、例えば、図示しない温度センサーによって取得された温度を参照しつつ、チャンバー加熱部115の出力を調整することによって、チャンバー110内の温度を調整する。なお、他の実施形態では、三次元造形装置5にチャンバー110およびチャンバー加熱部115は設けられていなくてもよい。
【0014】
移動機構部210は、吐出部100とステージ220との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構部210は、吐出部100に対して、ステージ220を移動させる。なお、ステージ220に対する吐出部100の相対的な位置の変化を、単に、吐出部100の移動と呼ぶこともある。本実施形態における移動機構部210は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ220をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。各モーターは、制御部300の制御下にて駆動する。なお、他の実施形態では、移動機構部210は、ステージ220を移動させる構成ではなく、例えば、ステージ220を移動させずに吐出部100を移動させる構成であってもよい。また、移動機構部210は、ステージ220と吐出部100との両方を移動させる構成であってもよい。
【0015】
制御部300は、1以上のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部300は、メモリーに読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、三次元造形物を造形するための造形用データに基づいて、吐出部100を制御して三次元造形処理を実行する。なお、制御部300は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0016】
本実施形態の三次元造形装置5は、更に、カメラ8を備えている。カメラ8は、ステージ220上の造形領域を撮影可能である。カメラ8は、制御部300によって制御される。制御部300は、カメラ8を制御することで、造形領域の画像または動画を撮影することができる。以下では、画像と動画とをまとめて「画像」という。本実施形態では、三次元造形装置5が起動されている間、カメラ8は常時起動している。つまり、カメラ8は、三次元造形装置5が起動されている間、常時、画像の撮影を行う。
【0017】
制御部300には、外部の表示装置400が接続されている。表示装置400は、コンピューター410と表示部420とによって構成される。表示部420としては、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイが用いられる。コンピューター410と表示部420とは、別体であってもよいし、一体化されていてもよい。本実施形態において、制御部300とコンピューター410とは、ネットワークによって接続されている。ネットワークは、LAN、WAN、インターネットのいずれであってもよい。コンピューター410は、三次元造形物を造形するための造形用データを三次元造形装置5に送信する機能を有する。三次元造形装置5の制御部300は、コンピューター410から造形用データを受信して、受信した造形用データに基づいて三次元造形を行う。制御部300が、1の造形用データに従って三次元造形物を造形することを、「印刷ジョブ」という。なお、表示装置400は、コンピューター410と表示部420の組み合わせに限らず、ノート型コンピューター、携帯端末、タブレット装置でもよい。
図1には、1の表示装置400を示しているが、複数の表示装置400がネットワークを介して三次元造形装置5に接続されてもよい。
【0018】
コンピューター410は、三次元造形装置5に備えられたカメラ8の画像を、表示装置400に表示させるか否かを示す設定情報をユーザーから取得する。ユーザーは、例えば、表示部420に表示される所定のグラフィカルユーザーインターフェイスを用いることで、設定情報を入力することができる。三次元造形装置5の制御部300は、コンピューター410から、設定情報を取得する。例えば、制御部300は、造形用データを三次元造形装置5に出力したユーザーによって入力される設定情報を、コンピューター410から取得する。そして、その設定情報に基づいて、造形用データ毎に、表示装置400に対する画像の表示処理を行う。本実施形態において、制御部300は、三次元造形物の造形を開始する前、三次元造形物の造形中、または、三次元造形物の造形後の少なくともいずれかの期間において、カメラ8の画像を外部の表示装置400に表示させるか否かを設定することが可能である。
【0019】
図2は、本実施形態の吐出部100の概略構成を示す図である。吐出部100は、可塑化機構30と、ノズルチップ60とを備えている。可塑化機構30は、材料搬送機構40と、加熱ブロック90とを有している。吐出部100には、材料収容部20に収容されている材料が供給される。吐出部100は、制御部300の制御下で、材料収容部20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化機構30によって可塑化して可塑化材料を生成し、生成した可塑化材料をノズルチップ60からステージ220上に吐出して積層させる。なお、ステージ220に積層された材料のことを、積層材料と呼ぶこともある。また、材料をノズルから吐出し、吐出した材料を積層させることによって三次元造形物を造形する三次元造形の方式を、材料押出法(ME:Material Extrusion)と呼ぶこともある。
【0020】
本実施形態において、「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0021】
本実施形態の材料収容部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。本実施形態において、材料収容部20に収容されている材料は、ペレット状の樹脂である。本実施形態の材料収容部20は、ホッパーによって構成されている。材料収容部20に収容された材料は、材料収容部20と吐出部100とを接続するように材料収容部20の下方に設けられた供給路22を介して、吐出部100の可塑化機構30の材料搬送機構40に供給される。
【0022】
加熱ブロック90は、ヒーター58を有している。また、加熱ブロック90には、貫通孔80が設けられている。貫通孔80は、ノズルチップ60を着脱可能に構成されている。材料搬送機構40は、加熱ブロック90の貫通孔80に取り付けられたノズルチップ60のノズル流路61に向けて、材料を搬送する。可塑化機構30は、材料収容部20から材料搬送機構40に供給された材料を、材料搬送機構40によってノズルチップ60のノズル流路61に向かって搬送し、加熱ブロック90の熱によって加熱して可塑化する。
【0023】
本実施形態の材料搬送機構40は、スクリューケース31と、スクリューケース31内に収容されたスクリュー41と、スクリュー41を駆動させる駆動モーター32とを備えている。本実施形態の加熱ブロック90は、開口部94を有するケース部91と、ケース部91内に配置されたバレル50とを備えている。バレル50には連通孔56が設けられている。本実施形態の貫通孔80は、開口部94と連通孔56とが連通することによって形成されている。また、上述したヒーター58は、具体的には、バレル50に内蔵されている。なお、本実施形態のスクリュー41は、いわゆるフラットスクリューであり、「スクロール」と呼ばれることもある。
【0024】
スクリュー41は、その中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。スクリュー41は、バレル50に対向する面に、スクリュー溝45が形成された溝形成面42を有している。溝形成面42は、具体的には、後述するバレル50のスクリュー対向面52と対向する。なお、本実施形態の中心軸RXは、スクリュー41の回転軸と一致する。スクリュー41の溝形成面42側の構成の詳細については後述する。
【0025】
駆動モーター32は、スクリュー41の溝形成面42とは反対側の面に接続されている。駆動モーター32は、制御部300の制御下で駆動される。スクリュー41は、駆動モーター32の回転で生じるトルクによって、中心軸RXを中心に回転する。なお、駆動モーター32は、直接、スクリュー41と接続されていなくてもよく、例えば、減速機を介して接続されていてもよい。
【0026】
バレル50は、スクリュー41の溝形成面42に対向するスクリュー対向面52を有している。ケース部91は、バレル50のスクリュー対向面52と反対側の面、すなわち、バレル50の下面を覆うように配置されている。上述した連通孔56および開口部94は、スクリュー41の中心軸RXと重なる位置に設けられている。すなわち、貫通孔80は、中心軸RXと重なる位置に位置している。
【0027】
ノズルチップ60は、上述したように、加熱ブロック90の貫通孔80に着脱可能に取り付けられる。ノズルチップ60には、上述したノズル流路61が設けられている。ノズル流路61は、ノズルチップ60の先端にノズル開口63を有し、ノズルチップ60の後端に流入口65を有している。なお、本実施形態では、ノズル開口63は、流入口65の-Z方向の位置に位置している。本実施形態のノズルチップ60は、貫通孔80と流入口65とを介してノズル流路61に流入した材料を、ノズル開口63から、ステージ220に向けて吐出する。
【0028】
図3は、スクリュー41の溝形成面42側の構成を示す概略斜視図である。
図3には、スクリュー41の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。上述したように、溝形成面42には、スクリュー溝45が設けられている。スクリュー41の溝形成面42の中央部であるスクリュー中央部47は、スクリュー溝45の一端が接続されている窪みとして構成されている。スクリュー中央部47は、
図1に示されているバレル50の連通孔56に対向する。スクリュー中央部47は、中心軸RXと交差する。
【0029】
スクリュー41のスクリュー溝45は、いわゆるスクロール溝を構成する。スクリュー溝45は、スクリュー中央部47から、スクリュー41の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。スクリュー溝45は、インボリュート曲線状や、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面42には、スクリュー溝45の側壁部を構成し、各スクリュー溝45に沿って延びている凸条部46が設けられている。スクリュー溝45は、スクリュー41の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、材料収容部20の供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0030】
図3には、3つのスクリュー溝45と、3つの凸条部46と、を有するスクリュー41の例が示されている。スクリュー41に設けられるスクリュー溝45や凸条部46の数は、3つには限定されず、1つのスクリュー溝45のみが設けられていてもよいし、2以上の複数のスクリュー溝45が設けられていてもよい。また、
図3には、材料導入口44が3箇所に形成されているスクリュー41の例が図示されている。スクリュー41に設けられる材料導入口44の数は、3箇所に限定されず、1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0031】
図4は、バレル50のスクリュー対向面52側の構成を示す上面図である。上述したとおり、スクリュー対向面52の中央には、連通孔56が形成されている。スクリュー対向面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、一端が連通孔56に接続され、連通孔56からスクリュー対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、案内溝54の一端は連通孔56に接続されていなくてもよい。また、バレル50には案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0032】
図5は、画像出力処理のフローチャートである。この画像出力処理は、三次元造形装置5の造形領域の画像を表示装置400に表示させるための処理であり、表示装置400のコンピューター410において、画像表示プログラムが起動された場合に実行される処理である。
【0033】
コンピューター410は、まず、ステップS100において、三次元造形装置5との接続を確立する。
【0034】
続いて、ステップS110において、コンピューター410は、ユーザーから、カメラ8の画像を表示部420に表示させるための設定情報の入力を受け付ける。カメラ8の画像を表示部420に表示させるか否かは、設定情報において、造形データ毎に設定が可能である。コンピューター410は、設定情報を、三次元造形物の造形を開始する前、三次元造形物の造形中、または、三次元造形物の造形後の少なくともいずれかの期間においてユーザーから取得可能である。本実施形態では、ステップS120において、コンピューター410は、更に、ユーザーからユーザー情報の入力を受け付ける。ユーザー情報には、例えば、ユーザーIDとパスワードとが含まれる。
【0035】
ステップS130において、コンピューター410は、コンピューター410に備えられた記憶装置に記憶されている第1ユーザー情報データベースを参照して、現在造形中の造形データに関連付けられているユーザーIDおよびパスワードと、ステップS120においてユーザーから入力されたユーザーIDおよびパスワードとが、一致するか否かを判断する認証処理を実行する。
【0036】
図6は、第1ユーザー情報データベースDB1のデータ構造を示す説明図である。
図6に示すように、ユーザー情報データベースには、各造形データに対して、1または複数のユーザーのユーザー情報が対応付けられて記録されている。ユーザー情報は、例えば、ユーザーが、各種ソフトウェアを用いて造形データを作成し、その造形データを三次元造形装置5に送信するまでの間に登録する。造形データを作成したユーザーは、その造形データに対して他のユーザーのユーザー情報を登録することも可能である。
【0037】
ステップS130における認証処理の結果、認証に失敗した場合、コンピューター410は、ステップS140において、認証が失敗した旨を表す認証失敗通知を表示部420に表示させ、処理をステップS110に戻し、再度、設定情報の入力の受付を行う。なお、コンピューター410は、認証不可通知を表示部420に表示させた後、当該画像出力処理を終了させてもよい。
【0038】
ステップS130における認証処理の結果、認証に成功した場合、コンピューター410は、ステップS150において、カメラ8の画像を表示部420に表示させる表示処理を実行する。第1実施形態における表示処理のことを、「第1処理」という。第1処理において、コンピューター410は、ステップS110で入力された設定情報を三次元造形装置5の制御部300に送信する。三次元造形装置5の制御部300は、設定情報を取得すると、その設定情報に基づいて、表示装置400に画像を送信する処理、または、送信しない処理を行う。つまり、設定情報において、画像を表示することが指示された場合、制御部300は、第1処理において、カメラ8によって撮影された画像を、コンピューター410に送信する。こうすることで、コンピューター410は、三次元造形装置5から受信したカメラ8の画像を表示部420に表示させることができる。本実施形態では、第1処理において、制御部300は、予め定められた間隔毎に画像を表示装置400に送信する。予め定められた間隔とは、例えば、5秒~60秒である。この画像は、即時、すなわち、リアルタイムに撮影された画像である。なお、「即時」には、画像処理に要する時間や通信の遅延が含まれてもよい。そのため、カメラ8による画像の撮影から、表示装置400における表示までに、数秒程度の遅れが生じてもよい。
【0039】
以上で説明した第1実施形態の三次元造形装置5によれば、造形用データ毎に、設定情報に基づいて、カメラ8で撮影された造形領域の画像または動画を外部の表示装置400に表示するか否かを指定することができる。そのため、他のユーザーに、現在のユーザーの造形物が閲覧される可能性を低減できる。この結果、複数人で三次元造形装置を共用するような場合において、機密の部品を造形することが容易になる。
【0040】
また、本実施形態では、設定情報と共に、ユーザーIDやパスワードからなるユーザー情報の入力をユーザーから受け付け、そのユーザー情報に基づき造形用データとユーザーとの対応関係を認証する。そのため、他のユーザーに造形物が閲覧される可能性をより効果的に低減できる。なお、他の実施形態においては、こうした認証処理を省略することも可能である。
【0041】
また、本実施形態において、三次元造形装置5の制御部300は、造形用データを三次元造形装置5に出力したコンピューター410のユーザーによって入力された設定情報をコンピューター410から取得できる。そのため、造形用データを三次元造形装置5に出力したユーザーがカメラの画像または動画を表示するか否かを設定できる。更に、本実施形態では、造形用データ毎に、1または複数のユーザーが対応付けられており、三次元造形装置5の制御部300は、造形用データに対応付けられたユーザーによって入力される設定情報を取得できる。そのため、制御部300は、現在造形中のユーザーだけではなく、正当な権限を有する他のユーザーに対しても画像を提示できる。
【0042】
また、本実施形態では、第1処理において、画像を予め定められた間隔毎に表示装置400に送信する。そのため、三次元造形装置5と表示装置400との間の通信量を削減できる。なお、他の実施形態では、予め定められた間隔ではなく、画像を表示装置400に連続的に送信してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、即時の画像を表示装置400に表示させるので、ユーザーは、造形中の三次元造形物の様子をリアルタイムで閲覧できる。従って、造形不良等が発生した場合に、迅速に三次元造形装置5を停止させることができる。なお、他の実施形態では、即時の画像ではなく、現時点よりも所定期間前の画像を保存しておき、その画像を順次、表示装置400に送信して表示させてもよい。
【0044】
なお、本実施形態では、上述した第1処理において、制御部300は、常時起動しているカメラ8の画像の、表示装置400への送信と非送信とを切り替えることで、表示装置400への画像の表示の切り替えを行っている。これに対して、カメラ8を常時起動させるのではなく、制御部300は、設定情報に基づいて、カメラ8を起動もしくは停止する第2処理を、第1処理に代えて実行してもよい。つまり、設定情報において、画像を表示することが指示された場合、制御部300は、第2処理において、停止状態のカメラ8を起動させることにより、カメラ8で撮影した画像を表示装置400に送信する。このような第2処理によっても、表示装置400に対するカメラ8の画像の表示の切り替えを行うことができる。
【0045】
また、第1処理や第2処理に代えて、例えば、制御部300は、常時起動状態のカメラ8によって撮影した画像を常時、表示装置400に送信することとし、制御部300は、設定情報に基づいて、画像を表示させるか否かを指示する出力指示情報を表示装置400に送信する第3処理を実行してもよい。このような第3処理によれば、表示装置400は、出力指示情報に基づいて、常時受信しているカメラ8の画像を表示させるか否かを切り替えることができる。
【0046】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態において実行される画像出力処理のフローチャートである。上述した第1実施形態では、表示装置400と三次元造形装置5との接続の確立に特に制限を設けていないのに対して、第2実施形態では、以下に説明するように、ユーザー認証を行った上で、表示装置400と三次元造形装置5との接続の確立を行う。なお、三次元造形装置5の構成は第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0047】
コンピューター410は、まず、ステップS200において、ユーザーからユーザー情報の入力を受け付ける。ユーザー情報には、例えば、ユーザーIDとパスワードとが含まれる。
【0048】
ステップS210において、コンピューター410は、コンピューター410に備えられた記憶装置に記憶されている第2ユーザー情報データベースを参照して、三次元造形装置5に関連付けられているユーザーIDおよびパスワードと、ステップS200においてユーザーから入力されたユーザーIDおよびパスワードとが、一致するか否かを判断する第1認証処理を実行する。
【0049】
図8は、コンピューター410に備えられた記憶装置に記憶されている第2ユーザー情報データベースDB2のデータ構造を示す説明図である。
図6に示すように、第2ユーザー情報データベースDB2には、第1ユーザー情報データベースDB1とは異なり、造形データに対してではなく、三次元造形装置5に対して、1または複数のユーザーのユーザー情報が対応付けられて記録されている。第2ユーザー情報データベースDB2へのユーザー情報の登録は、任意のタイミングで行うことが可能である。
【0050】
ステップS210における第1認証処理の結果、認証に失敗した場合、コンピューター410は、ステップS220において、認証が失敗した旨を表す認証失敗通知を表示部420に表示させ、処理をステップS200に戻し、再度、ユーザー情報の入力の受付を行う。なお、コンピューター410は、認証不可通知を表示部420に表示させた後、当該画像出力処理を終了させてもよい。
【0051】
ステップS210における第1認証処理の結果、認証に成功した場合、コンピューター410は、ステップS230において、三次元造形装置5との接続を確立する。
【0052】
続いて、ステップS240において、コンピューター410は、ユーザーから、カメラ8の画像を表示部420に表示させるための設定情報の入力を受け付ける。カメラ8の画像を表示部420に表示させるか否かは、設定情報において、造形データ毎に設定が可能である。コンピューター410は、設定情報を、三次元造形物の造形を開始する前、三次元造形物の造形中、または、三次元造形物の造形後の少なくともいずれかの期間においてユーザーから取得可能である。
【0053】
設定情報の入力の受け付けを完了すると、ステップ250において、コンピューター410は、
図6に示した第1ユーザー情報データベースDB1を参照して、現在造形中の造形データに関連付けられているユーザーIDおよびパスワードと、ステップS200においてユーザーから入力されたユーザーIDおよびパスワードとが、一致するか否かを判断する第2認証処理を実行する。この第2認証処理では、第1認証処理で用いたユーザー情報をそのまま使用する。三次元造形装置5と造形データとには、同じユーザー情報が対応付けられていてもよいからである。
【0054】
ステップS250における第2認証処理の結果、認証に失敗した場合、コンピューター410は、ステップS260において、認証が失敗した旨を表す認証失敗通知を表示部420に表示させ、カメラ8の画像を表示装置400に表示させることなく、当該画像出力処理を終了させる。なお、コンピューター410は、
図5に示した第1実施形態の画像出力処理のように、造形データに対応するユーザー情報の入力をユーザーから受け付け、再度、第2認証処理を実行してもよい。
【0055】
ステップS250における第2認証処理の結果、認証に成功した場合、コンピューター410は、ステップS250において、カメラ8の画像を表示部420に表示させる表示処理を実行する。この表示処理は、第1実施形態において説明した、第1処理、第2処理、第3処理のいずれの処理でもよい。
【0056】
以上で説明した第2実施形態によれば、表示装置400から三次元造形装置5への接続の確立時において、ユーザー情報を用いた認証処理を実行する。そのため、現在のユーザーではない他のユーザーに、現在のユーザーの造形物が閲覧される可能性をより一層、低減することができる。
【0057】
C.第3実施形態:
上記第1実施形態および第2実施形態では、予めユーザー情報を三次元造形装置5に登録することによって、認証処理が実行可能になる。これに対して、第3実施形態では、ユーザー情報の登録を行うことなく、カメラ8の画像を外部の表示装置400に表示させることを可能とする。三次元造形装置5および表示装置400の構成は、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0058】
図9は、第3実施形態における画像出力処理のフローチャートである。
図9の左側には、三次元造形装置5の処理内容を示し、
図9の右側には、表示装置400の処理内容を示す。なお、表示装置400は、2台以上であってもよく、それぞれの表示装置400において、
図9の右側に示した処理が実行可能である。
【0059】
ステップS300において、三次元造形装置5の制御部300は、ユーザーから共有アドレスを用いた画像出力の指定を受け付ける。共有アドレスを用いた画像出力の指定は、三次元造形装置5に備えられた操作部から受け付けてもよいし、第2実施形態における第1認証処理または第2認証処理に相当する認証処理が成功した表示装置400から受け付けてもよい。
【0060】
ステップS310において、制御部300は、画像の共有を要求する表示装置400に対して、画像の格納場所のアドレスを、共有アドレスとして通知する。画像の格納場所は、三次元造形装置5に備えられた記憶装置でもよいし、三次元造形装置5にネットワークを介して接続された記憶装置でもよい。制御部300は、画像の共有を要求したユーザーに対して、その記憶装置のアドレスを、共有アドレスとして、例えば、電子メールやSMS(ショートメッセージサービス)によって通知する。
【0061】
ステップS400において、表示装置400は、三次元造形装置5から共有アドレスの通知を受信する。ステップS410において、表示装置400は、受信した共有アドレスにアクセスすることで、ステップS420において、カメラ8の画像を表示する。
【0062】
以上で説明した第3実施形態によれば、予めユーザー情報を登録する必要がないため、少ない手順で、画像の閲覧が許容されたユーザーのみに画像を提示することができる。なお、共有アドレスは、限られた時間あるいは回数しかアクセスを受け付けないワンタイムURL(Uniform Resource Locator)であることが好ましい。
【0063】
D.第4実施形態:
図10は、1つの造形領域に、複数の三次元造形物を配置した例を示す説明図である。
図10に示すように、上記実施形態における三次元造形装置5は、平面方向における三次元造形物の造形位置が異なれば、1回の印刷ジョブにおいて、複数個の三次元造形物を並行して同時に造形することができる。
図10には、第1ユーザーによって造形される第1造形物M1と、第2ユーザーによって造形される第2造形物M2とを示している。
【0064】
本実施形態において、制御部300は、複数のユーザーから、造形データを複数受信した場合、それらの造形データによって表される複数の造形物が、1つの造形領域に収まる大きさであれば、それら造形データを合成して、1つの造形データを生成する。そして、制御部300は、合成された造形データに基づき三次元造形物を造形することにより、1回の印刷ジョブで、複数ユーザーの三次元造形物を同時に造形する。制御部300は、造形データの合成時に、内部のメモリーに、各三次元造形物の造形位置と、ユーザー情報とを対応付けて記憶する。なお、第4実施形態における三次元造形装置5の構成は、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0065】
図11および
図12は、第4実施形態における画像の第1の表示例を示す説明図である。本実施形態における制御部300は、上述のように複数の造形用データに基づいて、複数の三次元造形物を同時に造形する場合、カメラ8の画像のうち、複数の三次元造形物のうちの少なくとも1の三次元造形物が撮影された領域を難読化する難読化処理を実行する機能を備える。
図11には、難読化処理の例として、画像の出力要求があった第1ユーザー以外のユーザーに対応する造形領域上の三次元造形物を消去し、第1ユーザーの第1造形物M1のみを表示する画像処理を施した例を示している。このような画像処理のことを非表示処理という。また、
図12には、画像の出力要求があった第2ユーザー以外のユーザーに対応する造形領域上の三次元造形物を消去し、第2ユーザーの第2造形物M2のみを表示する非表示処理を施した例を示している。制御部300は、画像中の難読化処理を施す領域を、ユーザー情報と、そのユーザー情報に対応する三次元造形物の位置と、カメラの撮像方向とに基づき算出する。
【0066】
図13は、第4実施形態における画像の第2の表示例を示す説明図である。
図13には、難読化処理の例として、画像の出力要求があった第1ユーザー以外のユーザーに対応する造形領域上の三次元造形物の画像を、その造形物と無関係な像へ変換する変換処理を施した例を示している。
図13には、難読化前の円柱状の第2造形物M2を破線で示しており、難読化によって第2造形物M2の形状が、直方体状の形状に変換された例を示している。
【0067】
図14は、第4実施形態における画像の第3の表示例を示す説明図である。
図14には、難読化処理の例として、画像の出力要求があった第1ユーザー以外のユーザーに対応する造形領域上の三次元造形物を、単色で塗りつぶす画像処理を施した例を示している。なお、
図14には、造形物を単色で塗りつぶした例を示しているが、グラデーションによって塗りつぶしてもよいし、モザイク処理を施してもよい。
【0068】
以上で説明した第4実施形態によれば、複数ユーザーの三次元造形物を同時に造形する場合において、他のユーザーの三次元造形物の画像を難読化できるので、他のユーザーに、自身の三次元造形物が閲覧されることを抑制できる。そのため、複数ユーザーの三次元造形物を同時造形する場合であっても、機密の部品を造形することが容易になる。
【0069】
なお、第4実施形態では、三次元造形装置5の制御部300が難読化処理を実行するものとしている。これに対して、難読化処理は、表示装置400において実行されてもよい。この場合、制御部300は、カメラ8の画像をそのまま表示装置400に送信し、複数の三次元造形物のうちの少なくとも1の三次元造形物、より具体的には、表示装置400を現在使用しているユーザー以外のユーザーの三次元造形物が撮影された領域に対して難読化処理を実行させる指示を表示装置400に送信する。このように、表示装置400で難読化処理を行えば、三次元造形装置5において、ユーザー毎に難読化処理を行う必要がないので、三次元造形装置5の処理負担を軽減することができる。
【0070】
E.第5実施形態:
図15は、第5実施形態において実行されるエラー通知処理のフローチャートである。このエラー通知処理は、三次元造形装置5の制御部300が、三次元造形物の造形中に繰り返し実行する処理である。本実施形態において、制御部300は、造形中に撮影した造形領域の画像を、三次元造形装置5に備えられた記憶装置に、予め定められた期間分、常に記憶しておき、古くなった画像を順次消去していく処理を行う。予め定められた期間とは、例えば、1分~10分である。なお、第5実施形態における三次元造形装置5の構成は第1実施形態と同じであるため説明は省略する。
【0071】
ステップS500において、制御部300は、造形中にエラーを検出したか否かを判定する。造形中のエラーとしては、例えば、駆動モーター32の回転不良、ヒーター58の加熱不良、材料収容部20からの材料供給不良、移動機構部210によるステージ220の移動不良などのエラーがある。
【0072】
ステップS500において、エラーが検出されなかった場合、制御部300は、当該エラー通知処理を終了する。ステップS500において、エラーが検出された場合、制御部300は、ステップS510において、記憶装置に保存されている画像を取得する。この画像は、上記のとおり、エラー検出時よりも予め定められた期間分の前の画像である。
【0073】
ステップS520において、制御部300は、記憶装置から取得した画像とともに、エラーの種別を表すエラー情報を表示装置400に送信する。表示装置400は、エラー情報と画像を三次元造形装置5から取得すると、それらのエラー情報および画像を表示する。
【0074】
以上で説明した第5実施形態によれば、ユーザーは、エラー発生時よりも前の画像を確認することができるので、エラー発生の原因や状況を容易に確認できる。なお、本実施形態では、三次元造形装置5が、所定期間分の画像を記憶しているものとしたが、三次元造形装置5の制御部300は、表示装置400に、所定期間分の画像を保存させてもよい。
【0075】
F.第6実施形態:
図16は、第6実施形態における三次元造形装置5Fの概略構成を示す図である。本実施形態の三次元造形装置5Fは、第1実施形態と同様に、材料押出法の三次元造形装置であるが、各部の構成が第1実施形態とは異なる。なお、本実施形態の三次元造形装置5Fの構成のうち、第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0076】
本実施形態の三次元造形装置5Fは、第1実施形態と同様に、吐出部100F、材料収容部20Fと、チャンバー110と、移動機構部210と、ステージ220と、制御部300と、カメラ8とを備える。三次元造形装置5Fは、ブロアー16を更に備える。ブロアー16は、マニホールド17を介して吐出部100Fに向けて送風を行う送風機として構成されている。本実施形態では、チャンバー110内の造形空間111には、マニホールド17の一部と、吐出部100Fと、移動機構部210と、ステージ220とが収容されている。
【0077】
本実施形態の材料収容部20Fは、フィラメント状の材料MFを収容するホルダーとして構成されている。材料収容部20Fは、出口部21を備えている。材料収容部20Fは、内部に収容された材料MFを、出口部21を介して材料収容部20Fの外部へと巻き出し可能に構成されている。
【0078】
図17は、本実施形態の吐出部100Fの概略構成を示す図である。吐出部100Fは、ヒーターを有し、貫通孔80が設けられた加熱ブロック90Fと、貫通孔80に着脱可能に取り付けられるノズルチップ60Fと、加熱ブロック90Fに取り付けられたノズルチップ60Fのノズル流路61Fに向けて材料を搬送する材料搬送機構40Fとを備えている。また、吐出部100Fは、Z方向において、材料搬送機構40Fと加熱ブロック90Fとの間に配置され、加熱ブロック90Fから材料搬送機構40Fへの伝熱を抑制する熱シールド92を更に備えている。本実施形態の材料搬送機構40Fは、第1実施形態と異なり、スクリューケース31やスクリュー41を備えることなく、2つのホイール49によって構成されている。加熱ブロック90Fは、第1実施形態と異なり、バレル50やケース部91を備えていない。
【0079】
本実施形態のノズルチップ60Fは、-Z方向から、貫通孔80と、熱シールド92に設けられたシールド開口93とに挿通されることによって、加熱ブロック90Fに取り付けられる。すなわち、本実施形態では、ノズルチップ60FのZ方向に沿った寸法、および、ノズル流路61FのZ方向に沿った寸法は、貫通孔80のZ方向に沿った寸法よりも長い。従って、本実施形態では、ノズルチップ60Fの後端に設けられた流入口65Fは、加熱ブロック90Fの+Z方向、より具体的には、熱シールド92の+Z方向に位置している。
【0080】
材料搬送機構40Fを構成する2つのホイール49は、その回転によって、材料収容部20F内の材料MFを外部へと引き出して2つのホイール49の間へ導くとともに、加熱ブロック90Fの貫通孔80に取り付けられたノズルチップ60Fのノズル流路61Fに向けて搬送する。加熱ブロック90Fは、加熱ブロック90Fに内蔵された図示しないヒーターの熱によって、ノズルチップ60Fのノズル流路61F内へと搬送された材料MFを可塑化する。
【0081】
本実施形態の材料MFは、ノズルチップ60Fの流入口65F付近において、上述したブロアー16からマニホールド17を介して送られる空気によって冷却される。これによって、材料MFの流入口65F付近における可塑化が抑制され、材料MFが流入口65F内へと効率的に搬送される。なお、マニホールド17の出口端18は、熱シールド92の+Z方向に位置している。これによって、マニホールド17から送出される空気が、熱シールド92によって流入口65F付近へと導かれやすくなるため、流入口65F付近の材料MFが効率的に冷却される。
【0082】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置5Fによっても、第1実施形態の三次元造形装置5と同様に三次元造形物を造形することができる。
【0083】
G.参考例:
図18は、参考例としての三次元造形装置5Gの概略構成を示す図である。この参考例における三次元造形装置5Gは、表示装置400Gを備えている点が第1実施形態の三次元造形装置5と異なる。本実施形態の表示装置400Gは、タッチパネルを備えた表示装置によって構成されている。表示装置400Gは、制御部300によって制御される。表示装置400Gには、第1実施形態の表示装置400に表示される表示内容と同じ内容を表示させることができる。三次元造形装置5Gの他の構成は第1実施形態の三次元造形装置5と同じである。
【0084】
図19は、三次元造形装置5Gが実行する画像出力処理のフローチャートである。
図19示した画像出力処理は、三次元造形装置5Gの制御部300によって実行される。
【0085】
制御部300は、ステップS600において、ユーザーから、カメラ8の画像を表示装置400Gに表示させるための設定情報の入力を、タッチパネルを介して受け付ける。制御部300は、ステップS610において、更に、ユーザーからユーザー情報の入力を受け付ける。
【0086】
ステップS620において、制御部300は、制御部300に備えられた記憶装置に記憶されている第1ユーザー情報データベースDB1を参照して、現在造形中の造形データに関連付けられているユーザーIDおよびパスワードと、ステップS610においてユーザーから入力されたユーザーIDおよびパスワードとが、一致するか否かを判断する認証処理を実行する。
【0087】
ステップS620における認証処理の結果、認証に失敗した場合、制御部300は、ステップS630において、認証が失敗した旨を表す認証失敗通知を表示装置400Gに表示させ、処理をステップS600に戻し、再度、設定情報の入力の受付を行う。なお、制御部300は、認証不可通知を表示装置400Gに表示させた後、当該画像出力処理を終了させてもよい。
【0088】
ステップS620における認証処理の結果、認証に成功した場合、制御部300は、ステップS640において、カメラ8の画像を表示装置400Gに表示させる表示処理を実行する。
【0089】
以上で説明した参考例の三次元造形装置5Gによれば、ユーザーから取得された設定情報に基づいて、カメラ8で撮影した造形領域の画像を表示装置400Gに表示するか否かを切り替えることができる。そのため、現在のユーザーではない他のユーザーに、現在のユーザーの造形物が閲覧される可能性を低減でき、例えば、複数人で三次元造形装置を共用するような場合において、機密の部品を造形することが容易になる。特に本実施形態では、設定情報と共に、ユーザーIDやパスワードからなるユーザー情報の入力をユーザーから受け付け、そのユーザー情報に基づき認証処理を行うため、他のユーザーに造形物が閲覧される可能性をより効果的に低減できる。
【0090】
H.他の実施形態:
(H-1)上記実施形態において、ユーザーは、設定情報において、カメラ8のオン、カメラ8のオフ、造形物を認識できないが造形の進捗を確認できる中間モードのいずれかを選択可能であってもよい。中間モードが選択された場合、三次元造形装置5の制御部300は、例えば、造形中の造形物の画像に対してぼかし処理を施したり、造形中の造形物とは関係のない物体の画像に変換したりして、それらを表示装置400に表示させることによって、造形の進捗を確認可能とする。造形中の造形物と関係のない物体の画像とは、例えば、プログレスバーや砂時計などの画像である。中間モードの画像は、造形データに対応付けられたユーザー以外のユーザーの表示装置400に表示されてもよい。
【0091】
(H-2)上記実施形態において、三次元造形装置5は、造形中の様子を外部から視認できないように、不透明な壁によって囲われていてもよい。こうすることによって、現在造形中の造形物が他のユーザーに閲覧されることをより確実に抑制できる。
【0092】
(H-3)上記実施形態において、三次元造形装置5は、ステージ220上の造形領域を撮影可能なカメラ8を、複数台備えていてもよい。この場合、各々のカメラ8は、ステージ220上の異なる造形領域を撮影可能に配置されており、各々のカメラ8が撮影する画像を、表示装置400に表示させるか否かの設定は、画像ごとに権限を有するユーザーが設定できる構成となっていてもよい。こうすることによって、複数のユーザーの三次元造形物を同時に造形する場合、各ユーザーは、自身の三次元造形物を撮影するカメラ8の画像を、表示部400に表示させるか否かを設定することができ、他のユーザーに閲覧されることを抑制することができる。さらに、上記実施形態のように、1の三次元造形物が撮影された領域を、難読化するという複雑な処理を省略することができる。
【0093】
I.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0094】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、材料の少なくとも一部を可塑化する可塑化機構を有し、可塑化した前記材料をステージの造形領域に向かって吐出する吐出部と、前記造形領域を撮影可能なカメラと、三次元造形物を造形するための造形用データに基づいて前記吐出部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記三次元造形物の造形を開始する前、前記三次元造形物の造形中、または、前記三次元造形物の造形後の少なくともいずれかの期間において、前記カメラの画像または動画を外部の表示部に表示させるか否かを設定するための設定情報を取得した場合、前記設定情報に基づいて、前記造形用データ毎に、前記画像または前記動画を前記表示部に送信する、または、送信しない第1処理と、前記カメラを起動もしくは停止する第2処理と、前記表示部に前記画像または前記動画を表示させるか否かを指示する出力指示情報を前記表示部に送信する第3処理と、のいずれかの処理を実行する。
このような形態によれば、造形用データ毎に、設定情報に基づいて、カメラで撮影された造形領域の画像または動画を外部の表示部に表示するか否かを指定することができる。そのため、他のユーザーに、現在のユーザーの造形物が視認される可能性を低減できる。この結果、複数人で三次元造形装置を共用するような場合において、機密の部品を造形することが容易になる。
【0095】
(2)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記造形用データを前記三次元造形装置に出力したユーザーによって入力される前記設定情報を取得してもよい。このような形態によれば、造形用データを三次元造形装置に出力したユーザーがカメラの画像または動画を表示するか否かを設定できる。
【0096】
(3)上記形態の三次元造形装置において、前記造形用データ毎に、1または複数のユーザーが対応付けられており、前記制御部は、前記造形用データに対応付けられたユーザーによって入力される前記設定情報を取得してもよい。このような形態によれば、現在造形中のユーザーだけではなく、造形用データに対応付けられた正当な権限を有するユーザーに対しても画像または動画を提示できる。
【0097】
(4)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記第1処理において、前記画像を予め定められた間隔毎に前記表示部に送信してもよい。このような形態によれば、三次元造形装置から表示部への画像送信にかかわる通信量を削減できる。
【0098】
(5)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記表示部に即時の前記画像または前記動画を表示させてもよい。このような形態によれば、ユーザーは、造形中の三次元造形物の様子をリアルタイムで閲覧できる。従って、造形不良等が発生した場合に、迅速に三次元造形装置を停止させることができる。
【0099】
(6)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記表示部に、前記画像または前記動画の格納場所を示すアドレスを含む情報を送信してもよい。このような形態によれば、三次元造形装置5に予めユーザー情報を登録することなく、少ない手順で、画像または動画の閲覧が許容されたユーザーに画像を提示することができる。
【0100】
(7)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、複数の造形用データに基づいて、複数の三次元造形物を同時に造形する場合、前記カメラの前記画像または前記動画のうち、前記複数の三次元造形物のうちの少なくとも1の三次元造形物が撮影された領域を難読化する難読化処理を実行するか、または、前記領域に対して難読化処理を実行させる指示を前記表示部に送信してもよい。このような形態によれば、複数のユーザーの三次元造形物を同時に造形する場合において、他のユーザーに、自身の三次元造形物が視認されることを抑制できる。
【0101】
(8)上記形態の三次元造形装置において、前記難読化処理は、非表示処理、前記三次元造形物と無関係の像への変換処理、塗りつぶし処理、モザイク処理の少なくともいずれかの処理を含んでもよい。
【0102】
(9)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記三次元造形物の造形中にエラーが発生した場合、エラー情報を前記表示部に送信し、かつ、前記エラーが発生するよりも予め定められた期間、前に撮影された画像または動画を前記表示部に表示または保存させてもよい。このような形態によれば、ユーザーは、エラー発生時よりも前の画像または動画を確認することができるので、エラー発生の原因や状況を容易に確認できる。
【0103】
(10)本開示の第2の形態によれば、三次元造形装置、及び、表示装置を有する三次元造形システムが提供される。この三次元造形システムにおいて、前記三次元造形装置は、材料の少なくとも一部を可塑化する可塑化機構を有し、可塑化した前記材料をステージの造形領域に向かって吐出する吐出部と、前記造形領域を撮影可能なカメラと、三次元造形物を造形するための造形用データに基づいて前記吐出部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記三次元造形物の造形を開始する前、前記三次元造形物の造形中、または、前記三次元造形物の造形後の少なくともいずれかの期間において、前記カメラの画像または動画を前記表示装置に表示させるか否かを示す設定情報を取得した場合、前記設定情報に基づいて、前記造形用データ毎に、前記画像または前記動画を前記表示装置に送信する、または、送信しない第1処理と、前記カメラを起動または停止する第2処理と、前記表示装置に前記画像または前記動画を表示させるか否かを指示する出力指示情報を前記表示装置に送信する第3処理と、のいずれかの処理を実行する。
【符号の説明】
【0104】
5…三次元造形装置、6…三次元造形システム、8…カメラ、16…ブロアー、17…マニホールド、18…出口端、20…材料収容部、21…出口部、22…供給路、30…可塑化機構、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…材料搬送機構、41…スクリュー、42…溝形成面、43…側面、44…材料導入口、45…スクリュー溝、46…凸条部、47…スクリュー中央部、49…ホイール、50…バレル、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、60…ノズルチップ、61…ノズル流路、63…ノズル開口、65…流入口、80…貫通孔、90…加熱ブロック、91…ケース部、92…熱シールド、93…シールド開口、94…開口部、100…吐出部、110…チャンバー、111…造形空間、115…チャンバー加熱部、210…移動機構部、220…ステージ、300…制御部、400…表示装置、410…コンピューター、420…表示部