IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7491208降車動作判定装置、車両、降車動作判定法及びプログラム
<>
  • 特許-降車動作判定装置、車両、降車動作判定法及びプログラム 図1
  • 特許-降車動作判定装置、車両、降車動作判定法及びプログラム 図2
  • 特許-降車動作判定装置、車両、降車動作判定法及びプログラム 図3
  • 特許-降車動作判定装置、車両、降車動作判定法及びプログラム 図4
  • 特許-降車動作判定装置、車両、降車動作判定法及びプログラム 図5
  • 特許-降車動作判定装置、車両、降車動作判定法及びプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】降車動作判定装置、車両、降車動作判定法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240521BHJP
   B60R 11/04 20060101ALI20240521BHJP
   B60N 5/00 20060101ALI20240521BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240521BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240521BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60R11/04
B60N5/00
A47C7/62 Z
B60N2/90
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020212505
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098864
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 新
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-206186(JP,A)
【文献】特開2019-200548(JP,A)
【文献】特開2017-165218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 11/04
B60N 5/00
A47C 7/62
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられた第1センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の上体を起こした第1状態を検知する上体移動検知部と、
前記第1センサ又は前記第1センサとは別の第2センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の手がドアインサイドハンドルに近接又は接触している第2状態を検知する手位置検知部と、
前記上体移動検知部により前記第1状態が検知され、かつ、前記手位置検知部により前記第2状態が検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する降車動作判定部と、
を有し、
乗員の視線方向を取得する視線方向取得部をさらに備え、
前記降車動作判定部は、前記第1状態及び前記第2状態が検知され、さらに前記視線方向取得部によって乗員の視線方向がドアインサイドハンドルへ向けられていることが検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する降車動作判定装置。
【請求項2】
前記上体移動検知部は、前記第1センサとして前記車両用シートに搭載されたシート荷重センサによる荷重分布に基づいて前記第1状態を検知する請求項1に記載の降車動作判定装置。
【請求項3】
前記上体移動検知部及び前記手位置検知部は、前記第1センサとして室内カメラが撮像した乗員の画像に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態を検知する請求項1又は2に記載の降車動作判定装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の降車動作判定装置を有する車両。
【請求項5】
車室内に設けられた第1センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の上体を起こした第1状態を検知し、
前記第1センサ又は前記第1センサとは別の第2センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の手がドアインサイドハンドルに近接又は接触している第2状態を検知し、
前記第1状態が検知され、かつ、前記第2状態が検知され、さらに乗員の視線方向がドアインサイドハンドルへ向けられていることが検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する、
降車動作判定方法。
【請求項6】
車室内に設けられた第1センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の上体を起こした第1状態を検知し、
前記第1センサ又は前記第1センサとは別の第2センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の手がドアインサイドハンドルに近接又は接触している第2状態を検知し、
前記第1状態が検知され、かつ、前記第2状態が検知され、さらに乗員の視線方向がドアインサイドハンドルへ向けられていることが検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する、
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降車動作判定装置、車両、降車動作判定法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搭乗者の降車時に、車内又は車外へ報知する降車時注意喚起装置が開示されている。具体的には、特許文献1の降車時注意喚起装置では、車両が駐車状態になった場合に、搭乗者へ音声メッセージを出力することで注意喚起を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-160135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の装置では、乗員が降車動作に移行したことは検知できない。このため、降車しない場合にも注意喚起が行われることとなり、煩わしい。
【0005】
本発明は、乗員の快適性を確保しつつ、降車時の注意を促すことができる降車動作判定装置、車両、降車動作判定法及びプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る降車動作判定装置は、車室内に設けられた第1センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の上体を起こした第1状態を検知する上体移動検知部と、前記第1センサ又は前記第1センサとは別の第2センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の手がドアインサイドハンドルに近接又は接触している第2状態を検知する手位置検知部と、前記上体移動検知部により前記第1状態が検知され、かつ、前記手位置検知部により前記第2状態が検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する降車動作判定部と、を有し、乗員の視線方向を取得する視線方向取得部をさらに備え、前記降車動作判定部は、前記第1状態及び前記第2状態が検知され、さらに前記視線方向取得部によって乗員の視線方向がドアインサイドハンドルへ向けられていることが検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する
【0007】
請求項1に係る降車動作判定装置では、上体移動検知部は、車室内に設けられた第1センサからの信号に基づいて乗員が上体を起こした第1状態を検知する。また、手位置検知部は、第1センサ又は第2センサからの信号に基づいて、乗員の手がドアインサイドハンドルに近接又は接触している第2状態を検知する。さらに、降車動作判定部は、第1状態及び第2状態が検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する。これにより、乗員がドアを開く前に乗員の降車動作を検知することができる。
【0008】
また、第1状態及び第2状態が検知されるまでは降車動作と判定しないため、停車時などの不必要なタイミングで注意喚起が行われるのを抑制することができる。さらに、乗員の視線方向がドアインサイドハンドルへ向けられている場合にのみ降車動作に移行したと判定することで、視線方向を検知しない構成と比較して、誤判定を低減することができる。なお、ここでいう「降車動作」とは、サイドドアを開く動作に限定されず、サイドドアを開く前の動作を広く含む概念である。すなわち、「降車動作」は、車両走行中の乗車姿勢からサイドドアを開く姿勢へ移行する移行中の動作を含む。
【0015】
請求項に係る降車動作判定装置は、請求項1において、前記上体移動検知部は、前記第1センサとして前記車両用シートに搭載されたシート荷重センサによる荷重分布に基づいて前記第1状態を検知する。
【0016】
請求項に係る降車動作判定装置では、シート荷重センサによる荷重分布に基づいて上体が起こされたことを検知する。これにより、例えば、安楽姿勢に対応する荷重分布から上体を起こした姿勢に対応する荷重分布へ変化した場合に、第1状態を検知することができる。
【0019】
請求項に係る降車動作判定装置は、請求項1又は2において、前記上体移動検知部及び前記手位置検知部は、前記第1センサとして室内カメラが撮像した乗員の画像に基づいて、前記第1状態及び前記第2状態を検知する。
【0020】
請求項に係る降車動作判定装置では、室内カメラが撮像した乗員の画像に基づいて第1状態及び第2状態を検知することにより、他のセンサ類を用いることなく乗員の降車動作を判定することができる。
【0021】
請求項に係る車両は、請求項1~の何れか1項に記載の降車動作判定装置を有する。
【0024】
請求項に係る降車動作判定方法は、車室内に設けられた第1センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の上体を起こした第1状態を検知し、前記第1センサ又は前記第1センサとは別の第2センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の手がドアインサイドハンドルに近接又は接触している第2状態を検知し、前記第1状態が検知され、かつ、前記第2状態が検知され、さらに乗員の視線方向がドアインサイドハンドルへ向けられていることが検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する。
【0025】
請求項に係るプログラムは、車室内に設けられた第1センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の上体を起こした第1状態を検知し、前記第1センサ又は前記第1センサとは別の第2センサからの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の手がドアインサイドハンドルに近接又は接触している第2状態を検知し、前記第1状態が検知され、かつ、前記第2状態が検知され、さらに乗員の視線方向がドアインサイドハンドルへ向けられていることが検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明に係る降車動作判定装置、車両、降車動作判定法及びプログラムによれば、乗員の快適性を確保しつつ、降車時の注意を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る降車動作判定装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態における降車動作判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】第2実施形態に係る降車動作判定装置の機能構成を示すブロック図である。
図6】第2実施形態における降車動作判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る降車動作判定装置10について、図面を参照して説明する。
【0029】
(車両12のハードウェア構成)
図1に示されるように、本実施形態の車両12は、降車動作判定装置10を備えている。降車動作判定装置10は、車両12の車室内の状態が降車動作に移行したか否かについて判定するための装置であり、例えば、車両12に搭載されたECU(Electronic Control Unit)である。
【0030】
降車動作判定装置10は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)14、ROM(Read Only Memory)16、RAM(Random Access Memory)18、ストレージ20及び入出力インターフェース22を含んで構成されている。各構成は、内部バス23を介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU14は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU14は、ROM16又はストレージ20からプログラムを読み出し、RAM18を作業領域としてプログラムを実行する。また、CPU14は、ROM16又はストレージ20に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0032】
ROM16は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM18は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ20は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する非一時的記録媒体である。本実施形態では、ROM16又はストレージ20には、降車動作判定処理を行うためのプログラム等が格納されている。
【0033】
ここで、入出力インターフェース22は、運転支援ECU40と電気的に接続されている。運転支援ECU40は、降車動作判定装置10と同様に、図示しないCPU、ROM、RAM、ストレージ及び入出力インターフェースなどを含んで構成されている。また、運転支援ECU40は、障害物検知部としての前側カメラ42、後側カメラ44、右側カメラ46、左側カメラ48、前側ミリ波レーダ50及び後側ミリ波レーダ52を備えている。
【0034】
前側カメラ42は、例えば車両12の前部に設けられて車両前方へ向けられており、車両前方を撮像する。後側カメラ44は、例えば車両12の後部に設けられて車両後方へ向けられており、車両後方を撮像する。
【0035】
右側カメラ46は、例えば右側のドアミラーに設けられて車両後方へ向けられており、車両右後方を撮像する。左側カメラ48は、例えば左側のドアミラーに設けられて車両後方へ向けられており、車両左後方を撮像する。
【0036】
前側ミリ波レーダ50は、例えば車両12の前部に設けられており、車両前方側の障害物を検知する。後側ミリ波レーダ52は、例えば車両12の後部に設けられており、車両後方側の障害物を検知する。
【0037】
降車動作判定装置10は、運転支援ECU40を構成する上記のセンサ類で検知された車両周辺の情報を取得する。
【0038】
また、降車動作判定装置10の入出力インターフェース22は、シート荷重センサ24、近接センサ26、室内カメラ28及び報知装置としてのスピーカ30と電気的に接続されている。
【0039】
シート荷重センサ24は、車両用シートを構成するシートクッションの内部に設けられており、乗員が車両用シートに着座した際に、シートクッションの荷重分布を出力するように構成されている。
【0040】
近接センサ26は、ドアインサイドハンドルの周辺に設けられている。ドアインサイドハンドルは、サイドドアの車室内側に設けられており、乗員が把持して内側へ引くなどの操作することで、サイドドアを開くことができるように構成されている。ここで、本実施形態の近接センサ26は一例として、静電容量の変化により物体の有無を検知する静電容量型の近接センサが用いられている。
【0041】
室内カメラ28は、車室内を撮像するカメラであり、本実施形態では一例として、車両の前席及び後席に着座した乗員を検知可能に構成されている。
【0042】
スピーカ30は、車室内に設けられており、車両用シートに着座した乗員へ向けて所定の音声を出力することで、乗員に種々の通知を行う。
【0043】
(降車動作判定装置10の機能構成)
降車動作判定装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。降車動作判定装置10が実現する機能構成について図2を参照して説明する。
【0044】
図2に示されるように、降車動作判定装置10は、機能構成として、上体移動検知部60、手位置検知部62、降車動作判定部64、周辺情報検知部66及び報知部68を含んで構成されている。各機能構成は、CPU14がプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0045】
上体移動検知部60は、車室内に設けられたシート荷重センサ24からの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の上体を起こした第1状態を検知する。具体的には、上体移動検知部60は、シート荷重センサ24から取得した荷重分布が通常の車両走行時の安楽姿勢に対応する荷重分布から、上体を起こした姿勢(第1状態)に対応する荷重分布へ変化したことを検知する。
【0046】
一例として、安楽姿勢では、シートバックに乗員の身体が支持された状態となっているため、シート荷重センサ24によって取得された荷重分布は、全体的に小さい荷重となっている。これに対して、乗員が上体を起こした第1状態では、乗員の身体がシートバックから離間することで、シートクッションに作用する荷重が増加するため、シート荷重センサ24によって取得された荷重分布は、全体的に安楽姿勢時よりも荷重が大きくなる。また、第1状態では、座骨の位置で特に荷重が大きくなるため、荷重分布に基づいて安楽姿勢であるか第1状態であるかを検知することができる。なお、荷重分布のデータと姿勢のデータを教師データとして学習を行った学習モデルを利用して第1状態を検知してもよい。
【0047】
手位置検知部62は、近接センサ26からの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の手がドアインサイドハンドルに近接又は接触している第2状態を検知する。具体的には、手位置検知部62は、乗員の手がドアインサイドハンドルに近接又は接触した際の近接センサ26の出力に応じて、乗員の手がドアインサイドハンドルに近接又は接触している第2状態を検知する。
【0048】
降車動作判定部64は、上体移動検知部60により第1状態が検知され、かつ、手位置検知部62により第2状態が検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する。特に、本実施形態の降車動作判定部64は一例として、上体移動検知部60により第1状態が検知された後、所定時間経過後に、手位置検知部62により第2状態が検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する。
【0049】
このため、例えば、乗員が安楽姿勢でドアインサイドハンドルの周辺に設けられたドアロックスイッチ及びサイドウインドウの開閉スイッチなどを操作した後、上体を起こして第1状態へ移行した場合、降車動作判定部64は、降車動作に移行したとは判定しない。
【0050】
報知部68は、降車動作判定部64によって乗員が降車動作に移行したと判定された場合で、かつ、運転支援ECU40からの信号によって車両周辺に障害物が検知された場合に、スピーカ30により乗員に注意喚起を行う。なお、報知部68は、スピーカ30から音声によって乗員へ通知を行う構成に代えて又は加えて、車室内に設けられたモニタに表示を行うことで注意喚起してもよい。
【0051】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0052】
(降車動作判定処理の一例)
図3は、降車動作判定装置10のCPU14による降車動作判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。この降車動作判定処理は、CPU14がプログラムを読み出して、RAM18などに展開して実行することによって実行される。また、本実施形態では一例として、車両12の車速がゼロになった場合に、降車動作判定処理が実行され、この降車動作判定処理は、所定の周期で繰り返し実行される。すなわち、車両12の走行中は、降車動作判定処理が行われない。
【0053】
図3に示されるように、CPU14は、ステップS102でシート荷重分布を取得する。具体的には、CPU14は、シート荷重センサ24が検知した車両用シートのシート荷重分布のデータを取得する。
【0054】
CPU14は、ステップS104で乗員が上体を起こした第1状態であるか否かについて判定する。具体的には、CPU14は、上体移動検知部60の機能により、荷重分布が第1状態に対応する荷重分布へ変化したことが検知された場合に、ステップS104が肯定されてステップS106の処理へ移行する。
【0055】
一方、CPU14は、ステップS104で第1状態が検知されなかった場合には、ステップS104が否定されて降車動作判定処理を終了する。
【0056】
CPU14は、ステップS106で所定時間が経過したか否かについて判定する。具体的には、CPU14は、第1状態が検知された時点でタイマをスタートさせ、このタイマに基づいて所定時間が経過したか否かについて判定する。ここでいう所定時間は、乗員が上体を起こした第1状態からドアインサイドハンドルに手が近接する第2状態までに要する時間に設定される。換言すれば、第1状態と第2状態とが同時でなければよいため、例えば、数ミリ秒から数秒程度の時間に設定される。
【0057】
CPU14は、ステップS106で所定時間が経過したと判定した場合、ステップS106が肯定されてステップS108の処理へ移行する。一方、CPU14は、ステップS106で所定時間が経過していないと判定した場合、ステップS106が否定されてステップS102の処理に戻る。
【0058】
CPU14は、ステップS108で乗員の手位置を取得する。具体的には、CPU14は、手位置検知部62の機能により、近接センサ26の信号を取得する。
【0059】
続いて、CPU14は、ステップS110で乗員の手がドアインサイドハンドルに近接しているか否かについて判定する。なお、CPU14は、乗員の手がドアインサイドハンドルに接触している場合も近接していると判定する。
【0060】
CPU14は、ステップS110で近接センサ26からの信号に基づいて乗員の手がドアインサイドハンドルに近接していると判定した場合、ステップS110が肯定されてステップS112の処理へ移行する。一方、CPU14は、ステップS110で乗員の手がドアインサイドハンドルに近接していると判定されなかった場合、ステップS110が否定されて降車動作判定処理を終了する。
【0061】
CPU14は、ステップS112で降車動作への移行と判定する。そして、CPU14は、降車動作判定処理を終了する。
【0062】
以上のように、本実施形態の降車動作判定装置10では、降車動作判定部64は、第1状態及び第2状態が検知された場合に、乗員が降車動作に移行したと判定する。これにより、乗員がドアを開く前に乗員の降車動作を検知することができる。
【0063】
また、降車動作判定部64は、第1状態及び第2状態が検知されるまでは降車動作と判定しないため、停車時などの不必要なタイミングで注意喚起が行われるのを抑制することができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、第1状態と第2状態とが同時に検知された場合には降車動作として判定されない。ここで、降車時には、上体を起こした後に、ドアインサイドハンドルに手を触れる乗員が多いことが分かっている。このため、図3に示すフローチャートによって降車動作への移行を判定することで、誤判定を低減することができる。
【0065】
さらにまた、本実施形態では、車速がゼロになった場合に、降車動作判定処理を行う。このように車速を考慮することで、より精度よく降車動作への移行を判定することができる。また、降車動作の判定を常時行う構成と比較して、CPU14の処理負担を低減することができる。
【0066】
また、本実施形態では、シート荷重センサ24による荷重分布に基づいて上体が起こされたことを検知する。これにより、例えば、安楽姿勢に対応する荷重分布から上体を起こした姿勢に対応する荷重分布へ変化した場合に、第1状態を検知することができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、ドアインサイドハンドルの周辺に設けた近接センサ26からの信号に基づいて第2状態を検知することで、ドアインサイドハンドルから離れた位置でセンシングする構成と比較して、精度良く第2状態を検知することができる。
【0068】
さらにまた、本実施形態では、乗員が降車動作に移行したと判定された場合、かつ、車両周辺に障害物が検知された場合に、スピーカ30により乗員に所定の通知を行うことで、ドアを開ける前の乗員に対して注意喚起を行うことができる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る降車動作判定装置70について、図面を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0070】
図4に示されるように、本実施形態の車両72は、降車動作判定装置70を備えている。また、降車動作判定装置70を構成する入出力インターフェース22は、視線検知センサ74、室内カメラ28及びスピーカ30と電気的に接続されている。ここで、本実施形態では、シート荷重センサ24及び近接センサ26に代えて視線検知センサ74が設けられている点で第1実施形態と異なる。
【0071】
視線検知センサ74は、乗員の視線方向を検知するセンサであり、例えば、運転席に着座した乗員の視線方向を検知する視線検知センサ74は、運転席の正面にインストルメントパネルなどに設けられる。そして、運転席に着座した乗員の瞳孔の位置などを検出することにより、視線方向を算出する。その他のハードウェア構成については、第1実施形態と同様である。
【0072】
(降車動作判定装置70の機能構成)
降車動作判定装置70は、図4のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。降車動作判定装置70が実現する機能構成について図5を参照して説明する。
【0073】
図5に示されるように、降車動作判定装置70は、機能構成として、上体移動検知部60、手位置検知部62、降車動作判定部64、周辺情報検知部66、報知部68及び視線方向取得部76を含んで構成されている。各機能構成は、CPU14がプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0074】
ここで、本実施形態における上体移動検知部60及び手位置検知部62は、第1実施形態と異なる機能とされている。また、本実施形態では、視線方向取得部76を備えている。
【0075】
上体移動検知部60は、車室内に設けられた室内カメラ28からの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の上体を起こした第1状態を検知する。具体的には、上体移動検知部60は、室内カメラ28で撮像された乗員の画像から上体の位置を算出し、上体の位置が車両前方へ所定の位置まで移動した場合に第1状態であると検知する。このため、本実施形態における室内カメラ28は、TOF(Time Of Flight)カメラなどの距離を容易に計測できるカメラを用いてもよい。
【0076】
手位置検知部62は、室内カメラ28からの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の手がドアインサイドハンドルに近接又は接触している第2状態を検知する。具体的には、手位置検知部62は、室内カメラ28で撮像された乗員の画像から手の部分を抽出し、手の位置とドアインサイドハンドルとの距離を算出する。そして、算出された乗員の手の位置とドアインサイドハンドルとが所定の距離以下であった場合に、第2状態であることが検知される。このように、本実施形態では、上体移動検知部60及び手位置検知部62の両方に対して、室内カメラ28で撮像された乗員の画像が用いられる。
【0077】
視線方向取得部76は、視線検知センサ74からの信号に基づいて乗員の視線方向を取得する。具体的には、視線方向取得部76は、乗員の視線を取得することで、視線の先にある部位、すなわち、乗員が見ている部位を特定する。
【0078】
また、本実施形態の降車動作判定部64は、上体移動検知部60及び手位置検知部62からの信号に加えて、視線方向取得部76で取得された乗員の視線方向を考慮して降車動作を判定する。
【0079】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0080】
(降車動作判定処理の一例)
図6は、降車動作判定装置70のCPU14による降車動作判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。この降車動作判定処理は、CPU14がプログラムを読み出して、RAM18などに展開して実行することによって実行される。また、本実施形態では一例として、車両12の車速がゼロになった場合に、降車動作判定処理が実行され、この降車動作判定処理は、所定の周期で繰り返し実行される。すなわち、車両12の走行中は、降車動作判定処理が行われない。
【0081】
図6に示されるように、CPU14は、ステップS202で乗員の上体の位置を取得する。具体的には、CPU14は、上体移動検知部60の機能により、室内カメラ28からの信号に基づいて乗員の上体位置を算出する。
【0082】
CPU14は、ステップS204で乗員が上体を起こしているか否かについて判定する。具体的には、CPU14は、上体移動検知部60の機能により、車室内に設けられた室内カメラ28からの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の上体を起こした第1状態を検知した場合、ステップS204が肯定されてステップS206の処理へ移行する。
【0083】
一方、CPU14は、ステップS204で第1状態が検知されなかった場合には、ステップS204が否定されて降車動作判定処理を終了する。
【0084】
CPU14は、ステップS206で所定時間が経過したか否かについて判定する。具体的には、CPU14は、第1状態が検知された時点でタイマをスタートさせ、このタイマに基づいて所定時間が経過したか否かについて判定する。
【0085】
CPU14は、ステップS206で所定時間が経過したと判定した場合、ステップS206が肯定されてステップS208の処理へ移行する。一方、CPU14は、ステップS206で所定時間が経過していないと判定した場合、ステップS206が否定されてステップS202の処理に戻る。
【0086】
CPU14は、ステップS208で乗員の手位置及び視線方向を取得する。具体的には、CPU14は、室内カメラ28が撮像した画像から乗員の手の部分を抽出する。また、CPU14は、視線方向取得部76の機能により、視線検知センサ74からの信号に基づいて乗員の視線方向を取得する。
【0087】
続いてCPU14は、ステップS210で乗員の視線方向がドアインサイドハンドルに向けられているか否かについて判定する。具体的には、CPU14は、視線方向取得部76によって取得された乗員の視線方向がドアインサイドハンドル又はドアインサイドハンドルの近傍へ向けられている場合、ステップS210が肯定されてステップS212の処理へ移行する。
【0088】
一方、CPU14は、ステップS210で乗員の視線方向がドアインサイドハンドルへ向いていないと判定した場合、ステップS210が否定されて降車動作判定処理を終了する。
【0089】
次に、CPU14は、ステップS212で乗員の手がドアインサイドハンドルに近接しているか否かについて判定する。具体的には、CPU14は、手位置検知部62に機能により、室内カメラ28で撮像された乗員の手の位置とドアインサイドハンドルとの距離が所定の距離以下であった場合、ステップS212が肯定されてステップS214の処理へ移行する。
【0090】
一方、CPU14は、ステップS212で乗員の手の位置とドアインサイドハンドルとの距離が所定の距離よりも離れていると判定した場合、ステップS212が否定されて降車動作判定処理を終了する。
【0091】
CPU14は、ステップS214で降車動作への移行と判定する。そして、CPU14は、降車動作判定処理を終了する。
【0092】
以上のように、本実施形態に係る降車動作判定装置70では、カメラが撮像した乗員の画像に基づいて第1状態及び第2状態を検知することにより、他のセンサ類を用いることなく乗員の降車動作を判定することができる。
【0093】
また、本実施形態では、乗員の視線方向がドアインサイドハンドルへ向けられている場合にのみ降車動作に移行したと判定することで、視線方向を検知しない構成と比較して、誤判定を低減することができる。その他の作用については第1実施形態と同様である。
【0094】
以上、第1実施形態及び第2状態形態に係る降車動作判定装置10、70について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、車両12の車速がゼロになった場合に、降車動作判定処理を実行する構成としたが、これに限定されず、車両12が始動された直後から周期的に降車動作判定処理を実行してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、第1状態が検知された後、所定時間の経過後に第2状態を検知する構成としたが、これに限定されない。例えば、第1状態及び第2状態が同時に検知された場合であっても降車動作への移行と判定してもよい。また、第2状態が検知された後に第1状態が検知された場合であっても降車動作への移行と判定してもよい。以上の判定方法によれば、イレギュラーな降車動作時を判定することができる。ただし、誤判定を抑制する観点で、第1状態が検知された後、所定時間の経過後に第2状態を検知するのが好ましい。
【0096】
さらに、上記第1実施形態では、上体移動検知部60は、車室内に設けられたシート荷重センサ24からの信号に基づいて、車両用シートに着座した乗員の上体を起こした第1状態を検知したが、これに限定されない。例えば、シートバックに赤外線センサなどの近接センサを設け、この近接センサの信号に基づいて第1状態を検知してもよい。この場合、上体移動検知部60は、近接センサによって乗員の身体(背中)とシートバックとの距離を検出し、乗員の身体がシートバックから所定距離以上離間した場合に、第1状態であると検知してもよい。また、シートバックに設けた近接センサとシート荷重センサ24の両方を用いて第1状態を検知してもよい。
【0097】
さらにまた、上記第2実施形態では、上体移動検知部60及び手位置検知部62の両方に対して、室内カメラ28で撮像された乗員の画像を用いたが、これに限定されない。すなわち、第1実施形態と同様にシート荷重センサ24及び近接センサ26を用いてもよい。
【0098】
また、上記第2実施形態では、降車動作判定部64は、乗員の視線方向がドアインサイドハンドルへ向いている場合に降車動作への移行と判定したが、これに限定されない。例えば、図6のステップS210において、視線方向取得部76によって乗員の視線方向が乗員の正面(車両前方)よりも車両幅方向外側へ向いている場合に、CPU14がステップS210を肯定判定してもよい。降車時には、乗員の視線方向は無意識に車両幅方向外側、すなわち、サイドドアの外側の景色へ向けられるため、乗員の視線方向が車両前方よりも車両幅方向外側へ向けられている場合に降車動作へ移行していると判定すれば、イレギュラーな降車動作を検知できる可能性が高くなる。
【0099】
さらに、上記実施形態では、降車動作判定部64によって乗員が降車動作に移行したと判定された場合で、かつ、運転支援ECU40からの信号によって車両周辺に障害物が検知された場合に、スピーカ30により乗員に注意喚起を行う構成としたが、これに加えて他の処理を実施してもよい。例えば、乗員がドアインサイドハンドルを操作した場合でもサイドドアと車体との係合状態が維持される構成としてもよい。すなわち、車両周辺に障害物が検知された場合に、自動的にドアロックを行う構成では、ドアがロックされている理由を乗員が理解しにくい。これに対して、上記実施形態では、乗員がドアを開く動作を行う前に注意喚起が行われるため、サイドドアが開かなかった場合でも乗員が理由を把握することができる。
【0100】
さらにまた、上記実施形態でCPU14及びCPUコア14がソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが例示される。また、降車動作判定処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせなど)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0101】
さらに、上記実施形態では、ROM16及びストレージ20を非一時的記録媒体であるメモリとしたが、これに限定されない。例えば、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリなどを非一時的記録媒体としてもよい。この場合、これらの記録媒体に各種プログラムを格納してもよい。
【符号の説明】
【0102】
10、70 降車動作判定装置
12 車両
24 シート荷重センサ(第1センサ)
26 近接センサ(第2センサ)
28 室内カメラ(第1センサ、第2センサ)
30 スピーカ(報知装置)
42 前側カメラ(障害物検知部)
44 後側カメラ(障害物検知部)
46 右側カメラ(障害物検知部)
48 左側カメラ(障害物検知部)
50 前側ミリ波レーダ(障害物検知部)
52 後側ミリ波レーダ(障害物検知部)
60 上体移動検知部
62 手位置検知部
64 降車動作判定部
76 視線方向取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6