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特許7491210カッターマシン及びこれを用いた建造物の解体方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】カッターマシン及びこれを用いた建造物の解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20240521BHJP
   B23K 7/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
E04G23/08 H
B23K7/00 501A
B23K7/00 501F
B23K7/00 508Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020213618
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099679
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 善伸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆典
(72)【発明者】
【氏名】山下 康一
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-146571(JP,A)
【文献】特開平08-066767(JP,A)
【文献】特開2019-209336(JP,A)
【文献】特開2018-184811(JP,A)
【文献】特開2018-178450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G23/00-23/08
B23K 7/00- 7/10
B26F 3/06- 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物を構成している構造物を切り取るためのカッターマシンであって、
前記構造物に沿ってその一端側から他端側に、火炎を噴出するトーチを移動させながら当該構造物を切断する熱切断装置と、
前記熱切断装置と一体に構成されていて、前記構造物に着脱可能に取り付けられる固定装置と、
を備え、
前記固定装置は、互い平行に延びた外側枠部および内側枠部を有し、
前記内側枠部に、切断方向を前記内側枠部が延びる方向に向けた状態で、前記熱切断装置が設置され、前記外側枠部に、前記火炎を受け止める火炎受止器が前記熱切断装置に対向して設置されているカッターマシン。
【請求項2】
請求項1に記載のカッターマシンにおいて、
前記火炎受止器は、
前記外側枠部の内側に設置された箱状の火炎ダクトと、
前記火炎ダクトに開口して前記火炎を受け入れる火炎受入口と、
を有し、
前記火炎受止器に、前記火炎受入口に水膜を形成する散水ノズルが設けられているカッターマシン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカッターマシンにおいて、
前記固定装置とワイヤを介して連結された吊り下げ可能な連結具を更に備え、
前記固定装置は、伸縮可能に構成された可動枠部を更に有し、
前記外側枠部および前記内側枠部は、前記可動枠部の両端部の各々から延び、
クレーンで吊り下げ可能なカッターマシン。
【請求項4】
請求項3に記載のカッターマシンにおいて、
前記外側枠部の外側面に、作業機械によって把持可能な把手が設けられ、
前記把手を把持した前記作業機械によって移動可能なカッターマシン。
【請求項5】
請求項4に記載のカッターマシンにおいて、
前記熱切断装置に燃料を供給するホースを含むライン群を更に備え、
前記連結具に、前記ライン群を中継する中継器が設けられていて、
前記ライン群が、前記熱切断装置と前記中継器とを接続する上側ライン群と、前記連結具から吊り下げられて燃料供給装置を含む外部の装置と接続される下側ライン群と、で構成されているカッターマシン。
【請求項6】
建造物の解体方法であって、
請求項3に記載されている前記カッターマシンをクレーンで吊す吊るし工程と、
前記クレーンで前記カッターマシンを移動させ、前記建造物を構成している梁状構造物の切断箇所の上部に前記可動枠部を載せ置く載置工程と、
前記可動枠部を縮ませることにより、前記外側枠部および前記内側枠部が前記梁状構造物の両側部に接するまで挟み込む挟持工程と、
前記熱切断装置を作動させる切断工程と、
を含む、解体方法。
【請求項7】
請求項6に記載の建造物の解体方法において、
前記梁状構造物の切断箇所の近傍の所定部位を作業機械で支持する支持工程を更に含み、
前記所定部位に対して前記切断箇所の反対側に位置する第2切断箇所で、前記載置工程、前記挟持工程、および前記切断工程を実行し、前記作業機械で、前記切断箇所および前記第2切断箇所の間の前記梁状構造物を切り取る切取工程を含む、解体方法。
【請求項8】
建造物の解体方法であって、
請求項4に記載されている前記カッターマシンの把手を前記作業機械で把持する把持工程と、前記建造物を構成している柱状構造物の切断箇所の両側に前記外側枠部および前記内側枠部が位置するように前記カッターマシンを移動させ、前記可動枠部および前記外側枠部の各々が前記柱状構造物に接するように押し付ける押付工程と、
前記可動枠部を縮ませることにより、前記内側枠部が前記柱状構造物の側部に接するまで引き付ける引付工程と、
前記熱切断装置を作動させる切断工程と、
を含む、解体方法。
【請求項9】
請求項8に記載の建造物の解体方法において、
前記カッターマシンをクレーンで吊す吊るし工程と、前記クレーンで前記カッターマシンを移動させ、前記建造物を構成している梁状構造物の上部に前記可動枠部を載せ置く載置工程とを、前記把持工程の前に更に含むとともに、前記作業機械で前記カッターマシンを移動させ、前記梁状構造物の上部に前記可動枠部を載せ置く第2載置工程と、前記作業機械で前記柱状構造物を切り取る切取工程とを、前記切断工程の後に更に含む、解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物を解体する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルディングなどの建造物を解体する際、鉄骨、鉄筋コンクリートなどの構造物を切断する作業が行われる。小さい構造物であれば、油圧カッターを用いて剪断できる。しかし、大きな構造物は、油圧カッターでは剪断できないので、ガス切断機、レーザ切断機、プラズマ切断機、ウォータージェット切断機などを用いて切断している。
【0003】
高層ビルなどのように建造物が大きいと、高位置で構造物を切断しなければならない場合がある。その場合、大型の作業機械やクレーンの長い支柱の先に切断装置を取り付けて、遠隔操作によって切断する作業が行われる。
【0004】
例えば、特許文献1には、クレーンのワイヤで吊り下げる鉄骨切断装置が開示されている。その鉄骨切断装置には、開閉する一対の鉄骨クランプが設けられている。これら鉄骨クランプで、断面がH形状の鉄骨(いわゆるH形鋼)の上側のフランジを挟み込む。そうすることにより、鉄骨に鉄骨切断装置を固定して切断している。
【0005】
また、特許文献2には、作業機械に組み付けて使用する切断装置が開示されている。その作業機械は、屈曲可能な長い支柱の先端に、破砕装置(いわゆるニブラー)を備えている。その支柱の先端部分に、ガス切断を行う切断装置を先端に備えたアームが、枝分かれするように組付けられている。
【0006】
その切断装置は、上下に対向してスライド開閉する一対の把持部を有している。これら把持部で鉄骨の上下の面を挟み込む。その状態で、火炎を噴射するトーチを上下方向に移動させることによって鉄骨を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-146571号公報
【文献】特開2018-178450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
切断装置がガス切断機である場合、強力な高温の火炎で鉄骨を切断するので、火花やノロ(溶融時に発生するスラグ)が、多量に発生して、周囲に飛散する。そのため、特許文献1、2の装置では、切断箇所の周囲に防火幕を設置するなど、事前の対策が必要になる。
【0009】
そして、切断箇所が高い場所にある場合、地上近くの離れた位置で切断装置を遠隔操作することによって切断作業を行う。それに対し、特許文献1の鉄骨切断装置であれば、ワイヤで吊した鉄骨切断装置を移動させ、切断箇所で鉄骨の上側のフランジを挟み込むように操作しなければならない。特許文献2の切断装置であれば、支柱やアームの傾きを操作して、切断箇所で鉄骨の上下面を挟み込むように操作しなければならない。
【0010】
ワイヤで吊された鉄骨切断装置は揺れ動く。また、長い支柱やアームの先端に設置された切断装置は、支柱やアームを僅かに動かすだけで、大きく動く。従って、切断に適した箇所にこれら切断装置を取り付けることは、非常に難しい。熟練を要する作業であり、誰もができるものではない。
【0011】
更には、特許文献1、特許文献2では触れられていないが、作業時には、電力や圧油、切断に用いる燃料などを、これら切断装置に供給する必要がある。そのため、これら切断装置をクレーンに吊したり支柱に取り付けたりするだけでなく、多数のケーブルやホースなどを、別場所に設置された電源等の装置とこれら切断装置との間で接続する必要がある。
【0012】
これらケーブル等は多数あるので、その接続作業は煩わしい。また、これらケーブル等が作業の邪魔にならないようにしなければならないので、その対策も必要になる。
【0013】
開示する技術は、これら課題に対するものである。その主たる目的は、遠隔操作でも適切な解体作業が容易に行えるカッターマシンおよび解体方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
開示する技術は、建造物を構成している構造物を切り取るためのカッターマシンに関する。
【0015】
前記カッターマシンは、前記構造物に沿ってその一端側から他端側に、火炎を噴出するトーチを移動させながら当該構造物を切断する熱切断装置と、前記熱切断装置と一体に構成されていて、前記構造物に着脱可能に取り付けられる固定装置と、を備える。
【0016】
前記固定装置は、互い平行に延びた外側枠部および内側枠部を有している。前記内側枠部に、切断方向を前記内側枠部が延びる方向に向けた状態で、前記熱切断装置が設置され、前記外側枠部に、前記火炎を受け止める火炎受止器が前記熱切断装置に対向して設置されている。
【0017】
すなわち、このカッターマシンによれば、内側枠部に設置された熱切断装置に対向して、外側枠部に火炎受止器が設置されているので、カッターマシンを構造物に取り付けるだけで、火炎やノロの飛散を抑制できる。
【0018】
前記火炎受止器は、前記外側枠部の内側に設置された箱状の火炎ダクトと、前記火炎ダクトに開口して前記火炎を受け入れる火炎受入口と、を有し、前記火炎受止器に、前記火炎受入口に水膜を形成する散水ノズルが設けられている、としてもよい。
【0019】
そうすれば、高温の火炎やノロの温度を大幅に低下させることができるので、よりいっそう安全かつ適切に解体作業が行える。カッターマシンの耐久性も向上する。
【0020】
前記カッターマシンはまた、前記固定装置とワイヤを介して連結された吊り下げ可能な連結具を更に備え、前記固定装置は、伸縮可能に構成された可動枠部を更に有し、前記外側枠部および前記内側枠部は、前記可動枠部の両端部の各々から延び、クレーンで吊り下げ可能とするのが好ましい。
【0021】
すなわち、固定装置が、伸縮可能な可動枠部と、その両端部の各々から平行に延びた外側枠部および内側枠部とで門型に形成されているので、クレーンで吊り下げて、可動枠部が伸びた状態で、鉄骨などの構造物の上に跨がるように載せ置き、可動枠部を縮ませれば、簡単な操作で構造物にカッターマシンを取り付けることができる。
【0022】
前記カッターマシンはまた、前記外側枠部の外側面に、作業機械によって把持可能な把手が設けられ、前記把手を把持した前記作業機械によって移動可能、としてもよい。
【0023】
そうすれば、クレーンによらずに、複雑な作業に適した作業機械でカッターマシンを移動させることができる。従って、カッターマシンを載せ置くことができる構造物に限らず、柱状の構造物でも解体できる。
【0024】
前記カッターマシンはまた、前記熱切断装置に燃料を供給するホースを含むライン群を更に備え、前記連結具に、前記ライン群を中継する中継器が設けられていて、前記ライン群が、前記熱切断装置と前記中継器とを接続する上側ライン群と、前記連結具から吊り下げられて燃料供給装置を含む外部の装置と接続される下側ライン群と、で構成されている、としてもよい。
【0025】
そうすれば、解体現場で多数のケーブルやホースを接続する煩わしい接続作業を省略できるので、作業性に優れる。ライン群が、固定装置や熱切断装置から離れた連結具に設けられた中継器を介して接続されているので、解体作業の邪魔になり難い。従って、作業性に優れる。
【0026】
このようなカッターマシンを用いた建造物の解体方法としては、例えば、前記カッターマシンをクレーンで吊す吊るし工程と、前記クレーンで前記カッターマシンを移動させ、前記建造物を構成している梁状構造物の切断箇所の上部に前記可動枠部を載せ置く載置工程と、前記可動枠部を縮ませることにより、前記外側枠部および前記内側枠部が前記梁状構造物の両側部に接するまで挟み込む挟持工程と、前記熱切断装置を作動させる切断工程と、を含むようにしてもよい。
【0027】
また、前記梁状構造物の切断箇所の近傍の所定部位を作業機械で支持する支持工程を更に含み、前記所定部位に対して前記切断箇所の反対側に位置する第2切断箇所で、前記載置工程、前記挟持工程、および前記切断工程を実行し、前記作業機械で、前記切断箇所および前記第2切断箇所の間の前記梁状構造物を切り取る切取工程を含む、としてもよい。
【0028】
更に、前記カッターマシンの把手を前記作業機械で把持する把持工程と、前記建造物を構成している柱状構造物の切断箇所の両側に前記外側枠部および前記内側枠部が位置するように前記カッターマシンを移動させ、前記可動枠部および前記外側枠部の各々が前記柱状構造物に接するように押し付ける押付工程と、前記可動枠部を縮ませることにより、前記内側枠部が前記柱状構造物の側部に接するまで引き付ける引付工程と、前記熱切断装置を作動させる切断工程と、を含むようにしてもよい。
【0029】
そして、前記カッターマシンをクレーンで吊す吊るし工程と、前記クレーンで前記カッターマシンを移動させ、前記建造物を構成している梁状構造物の上部に前記可動枠部を載せ置く載置工程とを、前記把持工程の前に更に含むとともに、前記作業機械で前記カッターマシンを移動させ、前記梁状構造物の上部に前記可動枠部を載せ置く第2載置工程と、前記作業機械で前記柱状構造物を切り取る切取工程とを、前記切断工程の後に更に含むようにしてもよい。
【0030】
このような解体方法によれば、遠隔操作でも適切な解体作業が容易に行えるようになる。
【発明の効果】
【0031】
開示する技術を適用したカッターマシンによれば、遠隔操作でも適切な解体作業が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】カッターマシンを用いた解体現場を示す概略図である。
図2】カッターマシンの全体を示す概略斜視図である。
図3】カッターマシンの要部を示す概略斜視図である。
図4】カッターマシンの要部を左側から見た概略側面図である。
図5】カッターマシンの要部の概略縦断面図である。
図6図5における矢印X-X線での概略断面図である。
図7】鉄骨を切断する際の過程を説明するための図である。
図8】カッターマシンを用いた解体例を説明するための図である。
図9】カッターマシンを用いた解体例を説明するための図である。
図10】カッターマシンを用いた解体例を説明するための図である。
図11】カッターマシンを用いた解体例を説明するための図である。
図12】カッターマシンを用いた解体例を説明するための図である。
図13】カッターマシンを用いた解体例を説明するための図である。
図14】カッターマシンを用いた解体例を説明するための図である。
図15】カッターマシンを用いた解体例を説明するための図である。
図16】カッターマシンを用いた解体例を説明するための図である。
図17】カッターマシンを用いた解体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。なお、説明で用いる上下、前後、および左右の方向は、各図に示す方向を基準とする。
【0034】
図1に、高層ビル100(建造物の一例)を解体している現場を例示する。高層ビル100は、主に、外面や各階層を仕切るコンクリート壁101と、これらコンクリート壁101の内部に埋設された鉄骨102を組み付けた構造物(鉄骨構造物)とで構成されている。鉄骨構造物は、一般に、鉛直方向に延びる複数の鉄骨柱102a(柱状構造物の一例)と、水平方向に延びる複数の鉄骨梁102b(梁状構造物の一例)とを、格子状に組み合わることによって構成されている。
【0035】
鉄骨柱102aとしては、例えば、中空角柱状の角形鋼管や断面H形のH形鋼が多く用いられている。鉄骨梁102bとしては、例えば、断面H形のH形鋼が多く用いられている。これら鉄骨柱102aおよび鉄骨梁102bを溶接して組み付けることで鉄骨構造物が構成されている。
【0036】
解体時には、コンクリート壁101を崩して取り除いた後、これら鉄骨柱102aおよび鉄骨梁102bを少しずつ切り取って行く。そうすることによって、鉄骨構造物を解体する。以下、切り取り対象である構造物として、これら鉄骨柱102aおよび鉄骨梁102bを例に説明する。
【0037】
開示する技術に基づく解体方法では、その鉄骨構造物の解体作業に、少なくとも1台のクレーン1と、少なくとも1台の解体機2(作業機械の一例)とが使用される。クレーン1は、開示する技術を適用したカッターマシン10を移動させるために使用される。解体機2は、カッターマシン10を用いた鉄骨構造物の解体処理をサポートするために使用される。
【0038】
<解体機2>
例示の解体機2は、クローラ式の下部走行体2aと、この下部走行体2aに旋回可能に搭載された上部旋回体2bとを備える。上部旋回体2bの前部に、長尺で屈曲可能な支柱2cが起伏可能に装着されている。そして、その支柱2cの先端部に破砕装置2d(いわゆるニブラー)が着脱可能に装着されている。
【0039】
破砕装置2dは、油圧で開閉する一対の破砕爪2e,2eを備えている。これら破砕爪2e,2eで、鉄骨102を挟み持ったり鉄骨102をねじ切ったりできる。破砕爪2eの操作は、上部旋回体2bに設けられた運転室で行われる。なお、解体機2は一例である。解体機2のサイズや形態は、解体対象に応じて選択される。破砕装置2dも一例である。少なくとも重量物を把持できる装置であれば、破砕装置2dの代わりに利用できる。
【0040】
<クレーン1>
例示のクレーン1は、ホイール式の下部走行体1aと、この下部走行体1aに旋回可能に搭載された上部旋回体1bとを備える。クレーン1も一例である。クレーン1のサイズや形態も、解体対象に応じて選択される。
【0041】
下部走行体1aは、所定位置にアウトリガーで固定して使用される。固定されたクレーン1の周辺には、カッターマシン10に電力を供給するとともにカッターマシン10の動作を制御するメイン装置3と、カッターマシン10に燃料ガス、酸素、および散水用の水を供給するサブ装置4(燃料供給装置の一例)とが設置される。
【0042】
上部旋回体1bの前部には、テレスコピック構造のブーム1cが、起伏可能に装着されている。すなわち、ブーム1cは、断面サイズが異なる複数の中空支柱で入れ子状に構成されていて、これら複数の中空支柱が伸び縮みする。図示のブーム1cは縮んだ状態を表しており、使用時にはブーム1cは伸ばされる。
【0043】
ブーム1cの先端には、長さ調節が可能なワイヤ1dが設けられている。そして、そのワイヤ1dの下端にシープを介してフック1eが設けられている。そのフック1eに、開示する技術を適用したカッターマシン10が吊り下げられている。
【0044】
<カッターマシン10>
図2に、そのカッターマシン10を示す。カッターマシン10は、建造物を構成している構造物を切り取るために工夫された専用装置である。
【0045】
カッターマシン10は、連結具13、固定装置14、熱切断装置15などで構成されている。カッターマシン10は、クレーン1で吊り下げ可能に構成されていて、クレーン1の操作が行える一般的なオペレータであれば、特に熟練を要しなくても、適切に扱えるように工夫されている。
【0046】
熱切断装置15は、固定装置14と一体に構成されている。固定装置14は、支持ワイヤ11を介して吊り下げ可能な連結具13に連結されている。
【0047】
(連結具13)
連結具13は、連結器21、フレーム22、中継器23などで構成されている。連結器21の上部には、一対の支持片によって両端部が支持されていて、フック1eが掛け止め可能な掛止軸21aが設けられている。連結器21の下部は、油圧で駆動する旋回モータ24を介して、フレーム22と連結されている。
【0048】
フレーム22は、上面視が矩形の枠部材からなる。フレーム22の下側には、油圧ポンプ、作動油タンクなどで構成された油圧発生機構25が設置されている。旋回モータ24は、油圧発生機構25で発生する油圧で駆動する。旋回モータ24の駆動により、フレーム22は、連結器21に対して、鉛直方向に延びる旋回軸Jを中心に旋回する。
【0049】
フレーム22の四隅の各々に、同じ長さの4本の支持ワイヤ11の上端が接続されている。これら支持ワイヤ11の下端が固定装置14の四隅の各々に接続されている。それにより、旋回軸Jは、固定装置14の上面の略中心を通り、旋回モータ24の駆動に伴って、フレーム22に吊された固定装置14は、フレーム22とともに旋回軸Jを中心に旋回する。
【0050】
中継器23は、フレーム22の上側に設置されている。中継器23は、熱切断装置15で消費される燃料ガスや酸素を供給する複数のホース、熱切断装置15および固定装置14の駆動や制御に必要な電力を供給する複数のケーブルなど(これらをライン群12ともいう)を中継するために設置されている。
【0051】
具体的には、ライン群12は、熱切断装置15と中継器23とを接続する上流側ライン群12aと、連結具13から吊り下げられて、メイン装置3およびサブ装置4と接続される下側ライン群12と、で構成されている。上流側ライン群12aは、支持ワイヤ11よりも僅かに長く設定されている。上流側ライン群12aおよび下流側ライン群12bの各々は、所定の間隔でクランプ部材によって束ねられている。
【0052】
下流側ライン群12bは、メイン装置3およびサブ装置4と接続するのに必要かつ十分な長さに設定されている。下流側ライン群12bは、固定装置14の移動や解体処理の邪魔にならないように、後述する外側枠部40の両端に設けられたラインガイド43を通じて固定装置14の下方に配索されている。固定装置14には、散水用の水を供給するホースも接続されているが、そのホースもまた、下流側ライン群12bに途中から合流している。
【0053】
中継器23と固定装置14との間には、固定装置14の駆動に必要な油圧を循環供給する複数のホースも接続されている。これらホースもまた、上流側ライン群12aと同様に、中継器23と固定装置14との間に設けられている。固定装置14は、油圧発生機構25で発生する油圧で駆動する。なお、固定装置14の油圧による駆動は必須でない。電力で固定装置14を駆動するようにしてもよい。
【0054】
(固定装置14)
固定装置14は、鉄骨102を切り取るために、鉄骨102に着脱可能に取り付けられる。簡単なクレーン操作で鉄骨102の適切な箇所に取り付けられるよう、固定装置14の構造が工夫されている。図3図4図5、および、図6に、固定装置14の構造を示す。固定装置14は、可動枠部30、外側枠部40、および内側枠部50を有し、外観が門(アーチ)形状に形成されている。
【0055】
可動枠部30は、伸縮可能に構成されていて、その可動枠部30の両端部の各々から外側枠部40および内側枠部50の各々が平行に延びている。内側枠部50には、熱切断装置15が設置されていて、外側枠部40には、火炎受止器16が熱切断装置15に対向して設置されている。外側枠部40および内側枠部50の各々は、縦長な箱形状を有し、互いに間隔を隔てて対向している。
【0056】
外側枠部40は、図3図6に示すように、その両サイドに、逆L形状をした一対の外側支持部材41,41を有している。各外側支持部材41は、角筒形状を有する部材からなり、縦枠41aと、その上端から直交して延びる横枠41bとで構成されている。一対の縦枠41a,41aの間を覆うように、これらの外側端面に外側カバープレート42が取り付けられている。
【0057】
図3図6に示すように、各縦枠41aにおける外側端面の内側には、縦枠41aが延びる方向に貫通する空間(ラインガイド43)が設けられている。上述したように、これらラインガイド43を通じて、下流側ライン群12bが配索されている。
【0058】
それにより、下流側ライン群12bが、固定装置14から離れて揺れ動くことがないので、固定装置14の移動や解体処理の邪魔になるのを防止できる。外側カバープレート42の外面、つまり外側枠部40の外側面には、把手80が設けられている(把手80については、後述)。
【0059】
外側カバープレート42の内面側における一対の縦枠41a,41aの間に、火炎受止器16が設置されている。両横枠41b,41bの上面には、図3図4に示すように、平行して延びる一対のスライドガイド31,31が設けられている。これらスライドガイド31,31に、板状のスライドプレート32がスライド可能な状態で取り付けられている。
【0060】
図5に示すように、スライドプレート32は、内側枠部50に組み付けられていて、これらは一体に構成されている。それにより、内側枠部50は、スライドプレート32と共に、一対のスライドガイド31,31に沿ってスライドする。可動枠部30は、これら一対の横枠41b,41b、一対のスライドガイド31,31、スライドプレート32などによって構成されている。
【0061】
図3図6に示すように、内側枠部50は、その両サイドに、I形状をした一対の内側支持部材51,51を有している。各内側支持部材51は、角筒形状を有する部材からなる。各内側支持部材51の上端部分には、図5に示すように、外側枠部40の側に張り出すプレート受部51aが設けられている。これらプレート受部51a,51aにスライドプレート32が固定されている。
【0062】
スライドプレート32および内側枠部50と、外側枠部40との間には、一対の油圧シリンダ33,33が設置されている。各油圧シリンダ33は、各横枠41bの上側に配置されている、各油圧シリンダ33のピストンロッド33aの先端は、外側枠部40の上端部に取り付けられている。各油圧シリンダ33のシリンダチューブ33bは、スライドプレート32に取り付けられている。
【0063】
各油圧シリンダ33と油圧発生機構25とが複数のホースで接続されている。油圧発生機構25から圧油が各油圧シリンダ33に循環供給されることで、各油圧シリンダ33は伸縮する。それにより、スライドプレート32および内側枠部50が、両スライドガイド31,31に沿ってスライドし、外側枠部40と内側枠部50との間の距離が大小に変化する。
【0064】
図4図5に示すように、外側枠部40と内側枠部50との間に鉄骨102を入れ込んだ状態で、可動枠部30を縮ませる。そうすることにより、鉄骨102は、その両側面および一方の端面の3方向から挟み込まれた状態になり、固定装置14を鉄骨102に取り付けることができる。
【0065】
各縦枠41aの内側端面は、鉄骨102の一方の側面に接する支持面を構成し、各内側支持部材51の内側端面は、鉄骨102の他方の側面に接する支持面を構成する。そして、各横枠41bの内側端面は、鉄骨102の端面に接する支持面を構成する。
【0066】
鉄骨梁102bの場合、その上に跨がるように、クレーン1で固定装置14を配置して、可動枠部30を縮ませればよいので、カッターマシン10を鉄骨梁102bに簡単に取り付けることができる。クレーン操作に熟練を要しなくても、カッターマシン10を適切に扱える。
【0067】
図5図6に示すように、熱切断装置15は、トーチ61が一対の内側支持部材51,51の間に突出するように、内側枠部50に設置されている。熱切断装置15は、強力な火炎で切断する公知の装置である。このカッターマシン10では、その熱切断装置15が内側枠部50と一体に設けられている。熱切断装置15は、トーチ61、スライダー62などで構成されている。
【0068】
図3図5に示すように、一対の内側支持部材51,51の間を覆うように、これらの外側端面に内側カバープレート52が取り付けられている。内側カバープレート52の中央には、トーチ61を突出させるために、その上端部から下端部に至るまで、内側支持部材51と平行に延びる長孔52aが形成されている。
【0069】
内側カバープレート52の外面に、長孔52aに沿って延びるガイドレールおよびボールネジを含むスライダー62が設置されている。これらガイドレールおよびボールネジに、ガイドブロック62cが組みつけられている。内側枠部50の上部には、ボールネジを回転させるスライドモータ62dが設置されている。スライドモータ62dの駆動により、ガイドブロック62cは、ガイドレールに沿って制御された速度でスライドする。
【0070】
トーチ61は、長孔52aを通じてその先端側を一対の内側支持部材51,51の間に突出させた状態で、ガイドブロック62cに取り付けられている。図6に示すように、火炎を噴射するトーチ61の先端と、両内側支持部材51の内側端面との間の距離Lは、切断に最適な長さに設定されている。
【0071】
トーチ61の基端部には、燃料ガスや酸素を供給するホースが接続されていて、トーチ61の先端からこれら燃料ガスおよび酸素が高速で噴射されるように、トーチ61は構成されている。トーチ61にはまた、図示しないが、自動着火装置が付設されている。トーチ61の先端から噴射される燃料ガスおよび酸素に着火することにより、トーチ61は強力な火炎を噴射する。
【0072】
火炎を噴射したトーチ61が、長孔52aの一端から他端まで移動すると、その火炎は、内側枠部50と外側枠部40との間を横切って、これらの下端部と上端部との間を移動する。その結果、内側枠部50と外側枠部40との間に配置された鉄骨102は、火炎により、内側枠部50および外側枠部40が延びる方向に切断されていく。
【0073】
火炎は、鉄骨102を貫通し、その後方に拡散する。鉄骨102を切断した際に多量に発生するスラグ(ノロ)も、火炎とともに拡散する。これら火炎およびノロは、高温なため、周囲への飛散を防止する必要がある。そこで、このカッターマシン10では、火炎を受け止める火炎受止器16が外側枠部40に設置されている。
【0074】
図3図6に示すように、火炎受止器16は、一方の側面が開放されている箱状の火炎ダクト71を有し、この火炎ダクト71が、一対の縦枠41aの間に設置されている。具体的には、火炎ダクト71は、一対の縦枠41a,41aの内側に拡がる一対の対向壁71a,71aと、これら対向壁71a,71aの外側の縁に連なるように、外側カバープレート42の内側に拡がる側壁71bとで、断面コ形状に形成されている。火炎ダクト71の各端部は、図3図5に示すように、端壁71cによって覆われている。
【0075】
そして、本実施形態の火炎受止器16は、図5図6に示すように、その内部に、火炎分散壁72と、一対の火炎返し壁73,73とを有している。これら火炎分散壁72および一対の火炎返し壁73,73は、火炎受止器それ自体には必須でない。しかし、この火炎受止器16では、これら火炎分散壁72および一対の火炎返し壁73,73を有することにより、火炎をより効果的に受け止められるようになっている。
【0076】
各火炎返し壁73は、火炎ダクト71の各対向壁71aの内側の縁に、側壁71bに向かって下り傾斜した状態で取り付けられている。そして、これら火炎返し壁73,73の突端の間に、長孔52aと対向して延びる細長い火炎受入口74が形成されている。火炎受入口74の横幅は、鉄骨102を貫通して拡散する火炎を受け入れる大きさに設定されている。
【0077】
火炎分散壁72は、火炎受入口74に沿って延びるように、側壁71bの幅方向の中央に設置されている。火炎分散壁72は、断面三角形状に形成されていて、その頂部が火炎受入口74の幅方向中心と略一致するように配置されている。
【0078】
図3図5図6に示すように、火炎ダクト71の各対向壁71aの内側の縁にはまた、火炎受入口74に水膜を形成する散水ノズル75が設けられている。具体的には、火炎ダクト71の各対向壁71aの内側の縁に沿って、一対の配管76,76が設置されている。これら配管76,76には、ライン群12から分岐した、水供給用のホースが接続されている。
【0079】
これら配管76,76にはまた、扇状に水を噴射する複数の散水ノズル75が間隔を隔てて取り付けられている。そして、一方の配管76の散水ノズル75から噴射される水と、他方の配管76の散水ノズル75から噴射される水とが、火炎受入口74の手前で衝突することで、火炎受入口74に水膜を形成するように設定されている。
【0080】
これら散水ノズル75もまた、火炎分散壁72および一対の火炎返し壁73,73と同様に、火炎受止器それ自体には必須でない。しかし、この火炎受止器16では、散水ノズル75を取り付けることにより、火炎をより効果的に受け止められるようになっている。
【0081】
図7に、鉄骨102を切断する際の過程を例示する。左図は、上方から見た横断面図であり、右図は、左方から見た縦断面図である。いずれも簡略化して表してある。まず、各配管76に水が供給されて、各散水ノズル75から水が噴射される。それにより、火炎受入口74に水膜Wが形成される。水膜Wを形成した後の残水は、火炎受止器16の下端部から流下する。
【0082】
そうした状態で、トーチ61に燃料ガスおよび酸素が供給され、これらに着火することにより、トーチ61は火炎を噴射するようになる。火炎を噴射するトーチ61がスライドすることで、鉄骨102は切断されていく。このとき、鉄骨102を貫通した火炎や、火炎と共に吹き飛ぶスラグは、矢印Fで示すように、火炎受入口74に向かうように設定されている。火炎受入口74の手前には、水膜Wが形成されているので、火炎およびスラグの温度は、水膜Wを通過することによって急激に低下する。
【0083】
温度が低下した火炎およびスラグは、火炎分散壁72に衝突し、その両側に分散される。分散された火炎およびスラグは、各火炎返し壁73に衝突して跳ね返される。その結果、その勢いが弱められ、火炎の拡散が防止される。冷却されたスラグは、散水後の残水と共に、火炎受止器16の下端部から流下する。
【0084】
従って、このカッターマシン10によれば、防火幕の設置などの事前の対策は不要である。カッターマシン10は、利便性に優れている。
【0085】
(把手80)
外側枠部40の外側面に、解体機2によって把持可能な把手80が設けられている。具体的には、解体機2の破砕装置2dで把持した状態でカッターマシン10を移動できる把手80が設けられている。
【0086】
図2図4に示すように、把手80は、支持ベース81、一対の支持プレート82,82、一対の把持軸83,83などで構成されている。支持ベース81、各支持プレート82は、矩形の金属板部材である。一対の支持プレート82,82は、対向した状態で支持ベース81に強固に固定されている。そして、これら支持プレート82,82の間に、一対の把持軸83,83が平行に架設されている。両把持軸83,83の間に補強ブロック84を挟み込むことにより、これら把持軸83,83の強度が強化されている。
【0087】
それにより、一対の把持軸83,83と一対の支持プレート82,82との間に、破砕爪2eの先端部分を差し込んで、破砕装置2dで把手80が把持できるように構成されている。このような構造の把手80が、金属の厚板からなる補強プレート85を介して外側枠部40の外側面に固定されている。
【0088】
<カッターマシンを用いた解体方法の具体例>
(鉄骨梁の解体例1)
まず、図8を参照しながら、基本となる、カッターマシン10を用いて鉄骨梁102bを切断する解体方法について説明する。
【0089】
その解体方法は、カッターマシン10をクレーン1で吊す工程(吊るし工程)、クレーン1でカッターマシン10を移動させ、鉄骨梁102bの切断箇所の上部に可動枠部30を載せ置く工程(載置工程)、可動枠部30を縮ませることにより、外側枠部40および内側枠部50が鉄骨梁102bの両側部に接するまで挟み込む工程(挟持工程)、および、熱切断装置15を作動させる工程(切断工程)を含む。
【0090】
図1に示したように、解体現場において、クレーン1を所定位置に固定した後、カッターマシン10に接続されている下流側ライン群12bを、メイン装置3およびサブ装置4に接続する。その後、クレーン1のフック1eに連結具13を引っかけることにより、カッターマシン10をクレーン1で吊す。そうして、鉄骨梁102bの切断箇所の上方に、カッターマシン10を吊り上げて移動させる。鉄骨梁102bの切断箇所の上方にカッターマシン10を吊り上げて移動させるだけなので、通常のクレーン操作で行える。
【0091】
そして、鉄骨梁102bの切断箇所の上方に配置したカッターマシン10を、旋回モータ24を制御して旋回させることにより、図8の(a)に示すように、可動枠部30と鉄骨梁102bとが直交して、外側枠部40と内側枠部50との間のスペースと鉄骨梁102bとが対向するように、カッターマシン10の向きを調整する。
【0092】
カッターマシン10の向きを調整した後、クレーン1を操作して、図8の(b)に示すように、カッターマシン10を降下させ、可動枠部30を鉄骨梁102bの上に載せ置く。図8の(c)に示すように、支持ワイヤ11が弛む状態になるまで降下させる。そうすれば、カッターマシン10は鉄骨梁102bに支持される。クレーン1を降下させるだけなので、通常のクレーン操作で行える。
【0093】
そうして、図8の(c)に示すように、油圧シリンダ33を制御して可動枠部30を縮ませることにより、外側枠部40および内側枠部50が鉄骨梁102bの両側部に接するまで挟み込む。カッターマシン10の荷重は鉄骨梁102bによって支えられているので、強い力を加えなくても、外側枠部40および内側枠部50で鉄骨梁102bの両側部を簡単に挟み込むことができ、鉄骨梁102bの両側部に密着させることができる。カッターマシン10を安定的かつ適切に鉄骨梁102bに取り付けることができる。
【0094】
後は、図7に示したように、熱切断装置15を作動させて、鉄骨梁102bを切断する。このとき、内側枠部50が鉄骨梁102bの側部に密着しているので、トーチ61は切断に最適な位置に位置決めされる。従って、効果的に鉄骨梁102bを切断できる。
【0095】
切断が終われば、図8の(d)に示すように、油圧シリンダ33を制御して可動枠部30を伸ばすことにより、外側枠部40および内側枠部50を、鉄骨梁102bの両側部から離れさせる。そして、クレーン1を操作して、図8の(e)に示すように、カッターマシン10を吊り上げる。クレーン1を吊り上げるだけなので、通常のクレーン操作で行える。
【0096】
(鉄骨梁の解体例2)
次に、図9図10図11を参照しながら、カッターマシン10を用いて鉄骨梁102bを部分的に切り取る解体方法について説明する。
【0097】
その解体方法は、上述した解体例1の解体方法に加え、鉄骨梁102bの切断箇所の近傍の所定部位を解体機2で支持する工程(支持工程)を含む。そして、所定部位に対して切断箇所の反対側に位置する切断箇所(第2切断箇所)で、上述した載置工程、挟持工程、および切断工程を実行し、解体機2で、切断箇所および第2切断箇所の間の鉄骨梁102bを切り取る工程(切取工程)を含む。
【0098】
図9の(a)に、上述した解体例1の解体方法により、鉄骨梁102bの端部を切断または略切断した後の状態を示す。この解体例では、更に、鉄骨梁102bを部分的に切り取る処理が行われる。
【0099】
なお、この解体例2では、鉄骨梁102bを切り離さずに、一部だけ切り残し箇所を設けるのが好ましい(略切断)。鉄骨梁102bを切り離してしまうと、鉄骨梁102bがずれ動いて作業が難しくなるおそれがあるが、略切断であれば、そのような不具合を防止できる(便宜上、切断の用語を略切断も含むものとして扱う)。
【0100】
図1に示したように、解体現場において、準備されている解体機2を操作する。そして、図9の(b)に示すように、破砕装置2dで、鉄骨梁102bの切断箇所の近傍の部位を挟んで支持する。
【0101】
そうした状態で、クレーン1を操作し、図10の(c)に示すように、破砕装置2dで支持した部位に対して切断箇所の反対側に位置する箇所(第2切断箇所)に、上述した解体例1の方法と同様にして、カッターマシン10を取り付けて鉄骨梁102bの切断を行う。
【0102】
そして、鉄骨梁102bの切断が終了すると、図10の(d)に示すように、クレーン1を操作し、カッターマシン10を吊り上げて鉄骨梁102bから離れた位置に移動させる。その後、図11の(e)、(f)に示すように、解体機2を操作して、鉄骨梁102bを捻って切り残し箇所を分離させる。そうすれば、切断箇所および第2切断箇所の間の鉄骨梁102bを部分的に切り取ることができる。
【0103】
(鉄骨柱の解体例3)
次に、図12図18を参照しながら、カッターマシン10を用いて鉄骨柱102a、つまり鉛直方向に延びる鉄骨102を切り取る解体方法について説明する。
【0104】
その解体方法は、カッターマシン10の把手80を解体機2で把持する工程(把持工程)、鉄骨柱102aの切断箇所の両側に外側枠部40および内側枠部50が位置するようにカッターマシン10を移動させ、可動枠部30および外側枠部40の各々が鉄骨柱102aに接するように押し付ける工程(押付工程)、可動枠部30を縮ませることにより、内側枠部50が鉄骨柱102aの側部に接するまで引き付ける工程(引付工程)、および、熱切断装置15を作動させる工程(切断工程)を含む。
【0105】
更に、上述した把持工程の前に、カッターマシン10をクレーン1で吊す工程(吊るし工程)と、クレーン1でカッターマシン10を移動させ、鉄骨梁102bの上部に可動枠部30を載せ置く工程(載置工程)と、を含む。更にまた、上述した切断工程の後に、解体機2でカッターマシン10を移動させ、鉄骨梁102bの上部に可動枠部30を載せ置く工程(第2載置工程)と、解体機2で鉄骨柱102aを切り取る工程(切取工程)と、を含む。
【0106】
水平方向(斜め水平方向であってもよい)に延びる鉄骨梁102bであれば、カッターマシン10を載せ置くことで、鉄骨梁102bにカッターマシン10を安定して取り付けることができる。しかしながら、鉛直方向に延びる鉄骨柱102aには、カッターマシン10を載せ置くことができない。従って、そのままではカッターマシン10を鉄骨柱102aに取り付けることができない。そこで、このカッターマシン10では、解体機2を利用して、鉄骨柱102aの解体ができるように工夫されている。
【0107】
上述した解体例1の解体方法と同様に、カッターマシン10をクレーン1で吊す。そうして、図12の(a)に示すように、切断する鉄骨柱102aの近傍に位置する鉄骨梁102bの上方に、カッターマシン10を吊り上げて移動させる。そして、カッターマシン10を旋回させることにより、可動枠部30と鉄骨梁102bとが直交して、外側枠部40と内側枠部50との間のスペースと鉄骨梁102bとが対向するように、カッターマシン10の向きを調整する。
【0108】
このとき、外側枠部40が鉄骨梁102bの外側に位置し、内側枠部50が鉄骨梁102bの内側に位置するように配置する。
【0109】
そして、カッターマシン10の向きを調整した後、クレーン1を操作して、支持ワイヤ11が弛む状態になるまでカッターマシン10を降下させ、図12の(b)に示すように、可動枠部30を鉄骨梁102bの上に載せ置く。
【0110】
そうした状態で、解体機2を操作し、図13の(c)に示すように、破砕装置2dで把手80を把持する。このとき、把手80は手前に位置しているので、把手80を容易に把持することができる。カッターマシン10は鉄骨梁102bに跨がるように支持されているので、把持操作を誤ってもカッターマシン10が落下するおそれはない。従って、安心して操作できる。
【0111】
その後、図13の(d)に示すように、解体機2を操作して、横向きになるようにカッターマシン10を回動させ、鉄骨柱102aの下部(切断箇所)の両側に外側枠部40および内側枠部50が位置するようにカッターマシン10を移動させる。そして、図14の(e)に示すように、可動枠部30および外側枠部40の各々が鉄骨柱102aに接するように押し付ける。
【0112】
そうした状態で、図14の(f)に示すように、可動枠部30を縮ませることにより、内側枠部50が鉄骨柱102aの側部に接するまで引き付ける。その結果、カッターマシン10を適切に鉄骨柱102aに取り付けることができる。そして、熱切断装置15を作動させ、鉄骨柱102aを切断する。このとき、内側枠部50が鉄骨柱102aの側部に密着しているので、トーチ61は切断に最適な位置に位置決めされる。従って、効果的に鉄骨柱102aを切断できる。
【0113】
なお、図例の鉄骨柱102aは角形鋼管であるため、鉄骨柱102aの手前側(外側)の側面に切り残しが発生する。H形鋼であれば、切り残し箇所を設ければよい。それにより、切断作業後に、鉄骨柱102aが勝手に落下するのを防止でき、解体作業が難しくなるのを防止できる。
【0114】
切断が終われば、可動枠部30を伸ばすことにより、内側枠部50を鉄骨柱102aの側部から離れさせる。その後、図15の(g)に示すように、解体機2を操作して、鉄骨柱102aから離れるようにカッターマシン10を移動させる。そして、図15の(h)に示すように、解体機2を操作して、下向きになるようにカッターマシン10を回動させ、再度、鉄骨梁102bの上部に可動枠部30を載せ置く。
【0115】
それにより、簡単かつ僅かな操作で、カッターマシン10を、鉄骨梁102bに安定して支持させることができる。その結果、解体機2は自由に作業が行えるようになる。従って、図16の(i)に示すように、解体機2を操作して、破砕装置2dを把手80から離れさせ、図16の(j)に示すように、破砕装置2dで鉄骨柱102aの上部を掴む。
【0116】
そうして、図17の(k)に示すように、解体機2を操作して、鉄骨柱102aを捻って切り残し箇所を分離させる。切り残し箇所が手前にあるので、引き寄せたり押し込んだりすればよく、簡単に操作できる。その結果、図17の(l)に示すように、鉄骨柱102aを切り取ることができる。
【0117】
このように、このカッターマシン10によれば、操作性に優れるので、遠隔操作でも適切な解体作業が容易に行える。
【0118】
なお、開示する技術にかかるカッターマシン等は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、実施形態では、構造物として鉄骨を例示したが、鉄筋コンクリートやコンクリート壁でもよい。すなわち、熱切断装置で切断可能なものであればよい。
【符号の説明】
【0119】
1 クレーン
1e フック
2 解体機(作業機械の一例)
2d 破砕装置
3 メイン装置
4 サブ装置(燃料供給装置の一例)
10 カッターマシン
11 支持ワイヤ
12 ライン群
12a 上流側ライン群
12b 下流側ライン群
13 連結具
14 固定装置
15 熱切断装置
16 火炎受止器
30 可動枠部
40 外側枠部
50 内側枠部
61 トーチ
71 火炎ダクト
75 散水ノズル
80 把手
100 高層ビル(建造物の一例)
102 鉄骨
102a 鉄骨柱(柱状構造物の一例)
102b 鉄骨梁(梁状構造物の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17