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  • 特許-プリプレグ、積層体および成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】プリプレグ、積層体および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20240521BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20240521BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20240521BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
B29C70/16
B32B5/28
B29K105:08
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020544543
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2020019468
(87)【国際公開番号】W WO2020235486
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019097032
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】篠原 響子
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅登
(72)【発明者】
【氏名】三角 潤
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-170952(JP,A)
【文献】特開平05-170953(JP,A)
【文献】特開2007-016121(JP,A)
【文献】特開2006-183173(JP,A)
【文献】特開2015-067910(JP,A)
【文献】特開2006-49878(JP,A)
【文献】特開平7-100943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/24
B29C 70/16
B29K 105/08
B32B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成要素[A]、[B]および[C]を含むプリプレグであって、
[B]は、平均シアネート当量が220以下であるシアネートエステル樹脂、平均マレイミド当量が210以下であるビスマレイミド樹脂、および平均オキサジン当量が300以下であるベンゾオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、
プリプレグの表面に[C]が存在しており、
[B]を含む樹脂領域と[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる[A]の強化繊維が存在し
前記[B]を含む樹脂領域と前記[C]を含む樹脂領域とがそれぞれ層状をなして隣接することにより前記境界面を形成していることを特徴とする、プリプレグ。
[A]強化繊維
[B]熱硬化性樹脂
[C]熱可塑性樹脂
【請求項2】
前記プリプレグの平面視において、前記両樹脂領域に含まれる任意の[A]の繊維方向に対し45度異なる角度の方向から、前記[A]を含むプリプレグ平面に垂直な断面を得た場合に、
前記断面において、両樹脂領域の密着する境界面が形成する断面曲線の、JIS B0601(2001)で定義される粗さ平均長さRSmが100μm以下であり、粗さ平均高さRcが3.5μm以上である、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
構成要素[B]は、平均シアネート当量が130から220であるシアネートエステル樹脂を含む、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
構成要素[B]は、平均マレイミド当量が120から210であるビスマレイミド樹脂を含む、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項5】
構成要素[B]は、平均オキサジン当量が210から300であるベンゾオキサジン樹脂を含む、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項6】
構成要素[A]は、平均面粗さRaが10nm以下である、請求項1~のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項7】
構成要素[A]は、熱伝導率が15W/(m・K)以下の炭素繊維である、請求項1~のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項8】
構成要素[B]が、熱硬化性樹脂に可溶な熱可塑性樹脂成分を溶解した状態で含む、請求項1~のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項9】
前記粗さ平均高さRcが10μm以上である、請求項2~のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項10】
構成要素[C]は、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドまたはポリエーテルイミドから選ばれる1種または2種以上である、請求項1~のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のプリプレグが硬化物の状態で少なくとも一部の層を構成する、積層体。
【請求項12】
表面に構成要素[C]が存在する、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
層間に構成要素[C]を含む材料が存在する、請求項11または12に記載の積層体。
【請求項14】
次の構成要素[A]、[C]および[D]を含む層が含まれる積層体であって、
[D]は、平均シアネート当量が220以下であるシアネートエステル樹脂、平均マレイミド当量が210以下であるビスマレイミド樹脂および平均オキサジン当量が300以下であるベンゾオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化性樹脂が硬化度90%以上で硬化したものであり、
[C]を含む樹脂領域と[D]を含む樹脂領域との境界をまたいで両樹脂領域に含まれる[A]の強化繊維が存在し
前記[D]を含む樹脂領域と前記[C]を含む樹脂領域とがそれぞれ層状をなして隣接することにより前記境界面を形成していることを特徴とする、積層体。
[A]強化繊維
[C]熱可塑性樹脂
[D]熱硬化性樹脂硬化物
【請求項15】
前記積層体の平面視において、前記両樹脂領域に含まれる任意の[A]の繊維方向に対し45度異なる角度の方向から、前記[A]を含む積層体の平面に垂直な断面を得た場合に、
前記断面において、両樹脂領域の密着する境界面が形成する断面曲線の、JIS B0601(2001)で定義される粗さ平均長さRSmが100μm以下であり、粗さ平均高さRcが3.5μm以上である、請求項14に記載の積層体。
【請求項16】
表面に構成要素[C]が存在する、請求項14または15に記載の積層体。
【請求項17】
層間に構成要素[C]が存在する、請求項1416のいずれかに記載の積層体。
【請求項18】
構成要素[D]は、平均シアネート当量が130から220であるシアネートエステル樹脂を含む、請求項1417のいずれかに記載の積層体。
【請求項19】
構成要素[D]は、平均マレイミド当量が120から210であるビスマレイミド樹脂を含む、請求項1417のいずれかに記載の積層体。
【請求項20】
構成要素[D]は、平均オキサジン当量が210から300であるベンゾオキサジン樹脂を含む、請求項1417のいずれかに記載の積層体。
【請求項21】
構成要素[A]は、平均面粗さRaが10nm以下である、請求項1420のいずれかに記載の積層体。
【請求項22】
構成要素[A]は、熱伝導率は、15W/(m・K)以下の炭素繊維である、請求項1421のいずれかに記載の積層体。
【請求項23】
構成要素[D]は、熱硬化性樹脂に可溶な熱可塑性樹脂成分を溶解した状態で含む、請求項1422のいずれかに記載の積層体。
【請求項24】
前記粗さ平均高さRcが10μm以上である、請求項1523のいずれかに記載の積層体。
【請求項25】
構成要素[C]は、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドまたはポリエーテルイミドから選ばれる1種または2種以上である、請求項1424のいずれかに記載の積層体。
【請求項26】
別の部材が、構成要素[C]の面に接合することにより、請求項1125のいずれかに記載の積層体と一体化されてなる、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂が強化繊維に含浸されてなるプリプレグ、および熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂および強化繊維を含む積層体または一体化成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂をマトリックスとして用い、炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維と組み合わせた繊維強化複合材料は、軽量でありながら、強度や剛性などの力学特性や耐熱性、また耐食性に優れているため、航空・宇宙、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築およびスポーツ用品などの数多くの分野に応用されてきた。しかしながら、これらの繊維強化複合材料は、複雑な形状を有する部品や構造体を単一の成形工程で製造するには不向きであり、上記用途においては、繊維強化複合材料からなる部材を作製し、次いで、同種または異種の部材と一体化することが必要である。強化繊維と熱硬化性樹脂からなる繊維強化複合材料と同種または異種の部材を一体化する手法として、ボルト、リベット、ビスなどの機械的接合方法や、接着剤を使用する接合方法が用いられている。機械的接合方法では、穴あけなど接合部分をあらかじめ加工する工程を必要とするため、製造工程の長時間化および製造コストの増加につながり、また、穴をあけるため、材料強度が低下するという問題があった。接着剤を使用する接合方法では、接着剤の準備や接着剤の塗布作業を含む接着工程および硬化工程を必要とするため、製造工程の長時間化につながり、接着強度においても、信頼性に十分な満足が得られないという課題があった。
【0003】
熱可塑性樹脂をマトリックスに用いた繊維強化複合材料は、上記の機械的接合方法および接着剤を用いた接合に加え、溶着により部材間を接合する方法を適用することができるため、部材間の接合に要する時間を短縮できる可能性がある。一方で、航空機用構造部材のように、高温での力学特性や優れた薬品への耐性が求められる場合は、熱硬化性樹脂と強化繊維からなる繊維強化複合材料に比べて、耐熱性、耐薬品性が十分ではないという課題があった。
【0004】
ここで、特許文献1には、熱硬化性樹脂と強化繊維からなる繊維強化複合材料を、接着剤を介して接合する方法が示されている。
【0005】
特許文献2には、熱可塑性樹脂で形成される部材と、熱硬化性樹脂からなる繊維強化複合材料で形成される部材を一体化する手法が示されている。すなわち、強化繊維と熱硬化性樹脂からなるプリプレグシートの表面に熱可塑性樹脂フィルムを積層し、加熱・加圧により、繊維強化複合材料を得る。その後、得られた繊維強化複合材料を金型に入れ、熱可塑性樹脂を射出成形し、射出成形により形成された熱可塑性樹脂部材と繊維強化複合材料を接合させる。
【0006】
また、特許文献3には、熱硬化性樹脂と強化繊維からなる複合材料の表面に、熱可塑性樹脂接着層を形成した積層体の製造方法が示されており、熱可塑性樹脂を介して他の部材との接着効果を示すことが述べられている。
【0007】
特許文献4には、強化繊維とマレイミド樹脂やシアネートエステル樹脂といった耐燃焼性の高い熱硬化性樹脂からなるプリプレグの表層に、熱可塑性樹脂からなる繊維が配置されてなるプリプレグおよびその繊維強化複合材料が示されている。そしてこの熱可塑性樹脂からなる繊維を有することで、高耐燃焼性を維持したまま層間破壊靭性値が向上することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-161801号公報
【文献】特開平10-138354号公報
【文献】特許第3906319号公報
【文献】特開平4-292635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に示される手法は、強化繊維と熱硬化性樹脂よりなる繊維強化複合材料を接着剤により互いに接合する方法であり、熱硬化性樹脂がマトリックス樹脂であるため、そのままでは繊維強化複合材料間の接合の方法として溶着は適用できない。接着剤の硬化に時間を要するため、接合工程に時間を要するという課題があり、さらに、発現する接合強度は十分ではなかった。
【0010】
特許文献2に記載の方法では、繊維強化複合材料中の熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂フィルムとの接合部における接合強度が十分でなかった。
【0011】
特許文献3に係る繊維強化複合材料は、熱可塑性樹脂を通じて溶着による一体化を行うことができ、室温では優れた接合強度を示すが、高温での接合強度は十分ではなかった。
【0012】
特許文献4に記載の方法では、繊維強化複合材料中の熱効果性樹脂と熱可塑性樹脂との境界部における接合強度が十分ではなかった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、同種または異種の部材と溶着により接合が可能、かつ、高温環境下で優れた接合強度および疲労接合強度を発現し、更に耐燃焼性、圧縮強度および層間破壊靱性値にも優れ、構造材料として好適な積層体を与えるプリプレグ、積層体および一体化成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち本発明は、次の構成要素[A]、[B]および[C]を含むプリプレグであって、[B]は平均シアネート当量が220以下であるシアネートエステル樹脂、平均マレイミド当量が210以下であるビスマレイミド樹脂、および平均オキサジン当量が300以下であるベンゾオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、プリプレグの表面に[C]が存在しており、[B]を含む樹脂領域と[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる[A]の強化繊維が存在していることを特徴とするプリプレグである。
[A]強化繊維
[B]熱硬化性樹脂
[C]熱可塑性樹脂
また本発明は、本発明のプリプレグが硬化物の状態で少なくとも一部の層を構成する、積層体である。
【0015】
また本発明は、次の構成要素[A]強化繊維、[C]熱可塑性樹脂及び[D]熱硬化性樹脂硬化物を含む層が含まれる積層体であって、[D]は平均シアネート当量が220以下であるシアネートエステル樹脂、平均マレイミド当量が210以下であるビスマレイミド樹脂、および平均オキサジン当量が300以下であるベンゾオキサジン樹脂から選ばれる少なく1種を含む熱硬化性樹脂が硬化度90%以上で硬化したものであり、[C]を含む樹脂領域と[D]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる[A]の強化繊維が存在していることを特徴とする積層体である。
[A]強化繊維
[C]熱可塑性樹脂
[D]熱硬化性樹脂硬化物。
【0016】
また本発明は、別の部材が、構成要素[C]の面に接合することにより、本発明の積層体と一体化されてなる、成形品である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のプリプレグおよび積層体は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を用いており、両者が強固に接合されている上、同種または異種の部材との良好な溶着が可能であるため、従来の熱硬化性樹脂と強化繊維からなる繊維強化複合材料に対し、接合工程に要する時間を短縮でき、構造部材の成形を高速化することが可能となる。さらに、特定の熱硬化性樹脂を用いることで、優れた耐燃焼性ならびに圧縮強度および接合強度または層間靭性を発現し、構造材料として優れた積層体が得られ、航空機構造部材、風車の羽根、自動車構造部材およびICトレイやノートパソコンの筐体などのコンピューター用途等へ適用することで、構造体としての優れた性能を示す上で、上記用途に係る製品の成形時間および成形コストを大きく低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明に係るプリプレグまたは積層体の模式図であり、図2に係るプリプレグ平面または積層体平面に垂直な断面を示すものである。
図2図2は、本発明における、プリプレグ平面または積層体平面に垂直な断面の模式図であり、粗さ平均長さRSmおよび粗さ平均高さRcの測定方法の説明を助けるものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のプリプレグは、次の構成要素[A]、[B]および[C]を含む。
[A]強化繊維
[B]熱硬化性樹脂
[C]熱可塑性樹脂。
【0020】
<構成要素[A]強化繊維>
本発明で用いる構成要素[A]の強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、玄武岩繊維などがある。これらは、単独で用いてもよいし、適宜2種以上併用して用いてもよい。これらの強化繊維は、表面処理が施されているものであっても良い。表面処理としては、金属の被着処理、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、添加剤の付着処理などがある。これらの強化繊維の中には、導電性を有する強化繊維も含まれている。強化繊維としては、炭素繊維が、比重が小さく、高強度、高弾性率であることから、好ましく使用される。
【0021】
炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G-24K、“トレカ(登録商標)”T800S-24K、“トレカ(登録商標)”T700G-24K、“トレカ(登録商標)”T700S-24K、“トレカ(登録商標)”T300-3K、および“トレカ(登録商標)”T1100G-24K(以上、東レ(株)製)などが挙げられる。
【0022】
強化繊維の形態や配列については、強化繊維が一方向に配列されているか、一方向に配列されたものの積層物か、または織物の形態等から適宜選択できる。軽量で耐久性がより高い水準にある積層体を得るためには、各プリプレグにおいて、強化繊維が、一方向に配列された長繊維(繊維束)や織物等連続繊維の形態であることが好ましい。
【0023】
強化繊維束は、同一の形態の複数本の繊維から構成されていても、あるいは、異なる形態の複数本の繊維から構成されていても良い。一つの強化繊維束を構成する強化繊維数は、通常、300~60,000であるが、基材の製造を考慮すると、好ましくは、300~48,000であり、より好ましくは、1,000~24,000である。上記の上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせによる範囲であってもよい。
【0024】
構成要素[A]の強化繊維について、JIS R7608(2007)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠して測定したストランド引張強度が5.5GPa以上であると、引張強度に加え、優れた接合強度を有する積層体が得られるため、好ましい。当該ストランド引張強度が5.8GPaであると、さらに好ましい。ここで言う接合強度とは、ISO4587(1995)(JIS K6850(1994))に準拠して求められる、引張せん断接合強度を指す。
【0025】
構成要素[A]の強化繊維について、平均面粗さRaが10nm以下であると耐燃焼性の観点から好ましく、2nm以下であるとより好ましい。これは、積層体に熱が与えられた際に、強化繊維の平均面粗さRaが10nm以下であると強化繊維の比表面積が小さく、構成要素[B]の熱硬化性樹脂と接している面積も小さくなるため、熱硬化性樹脂の燃焼が起こりにくくなるからである。構成要素[A]の平均面粗さRaについて、下限は特に限定されないが、通常の強化繊維では0.01nmが下限である。
【0026】
構成要素[A]の強化繊維の熱伝導率が、15W/(m・K)以下である場合も、耐燃焼性の観点から好ましい。さらに、上記熱伝導率を有する強化繊維が炭素繊維であることがより好ましい。これは、積層体に熱が与えられた際に、強化繊維の熱伝導率が低いほど、構成要素[B]の熱硬化性樹脂に伝わる熱量が抑制され、熱硬化性樹脂の燃焼が起こりにくくなるからである。構成要素[A]の熱伝導率について、下限は特に限定されないが、通常の強化繊維では0.1W/(m・K)が下限である。
【0027】
本発明のプリプレグは、単位面積あたりの強化繊維量が30~2,000g/mであることが好ましい。かかる強化繊維量が30g/m以上であると、積層体成形の際に所定の厚みを得るための積層枚数を少なくすることができ、作業が簡便となりやすい。一方で、強化繊維量が2,000g/m以下であると、プリプレグのドレープ性が向上しやすくなる。
【0028】
本発明のプリプレグおよび本発明の積層体の強化繊維質量含有率は、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは35~85質量%であり、更に好ましくは40~80質量%である。上記の上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせによる範囲であってもよい。強化繊維質量含有率が30質量%以上であると、樹脂の量が繊維対比多くなりすぎず、比強度と比弾性率に優れる積層体の利点が得られやすくなり、また、プリプレグから積層体に成形する際、硬化時の発熱量が高くなりすぎにくい。また、強化繊維質量含有率が90質量%以下であると、樹脂の含浸不良が生じにくく、得られる積層体のボイドが少なくなりやすい。
【0029】
<構成要素[B]熱硬化性樹脂>
本発明で用いる構成要素[B]熱硬化性樹脂は、平均シアネート当量が220以下であるシアネートエステル樹脂、平均マレイミド当量が210以下であるビスマレイミド樹脂、および平均オキサジン当量が300以下であるベンゾオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む。ここで、平均シアネート当量とは、シアネートエステル樹脂の平均分子量を、平均シアネート基数で割った値のことを指す。具体的には、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS法)により、化学構造およびその割合を同定し、求めたシアネートエステル樹脂の平均分子量と平均シアネート基数より、平均シアネート当量を算出する。ここで、本発明で言う平均分子量とは、数平均分子量のことを意味する。
【0030】
平均マレイミド当量および平均オキサジン当量も、平均シアネート当量と同様に、ビスマレイミド樹脂の平均分子量を平均マレイミド基数で割った値、またはベンゾオキサジン樹脂の平均分子量を平均ベンゾオキサジン環数で割った値である。具体的には、液体クロマトグラフィー質量分析法により、化学構造およびその割合を同定し、求めたビスマレイミド樹脂の平均分子量と平均マレイミド基数、またはベンゾオキサジン樹脂の平均分子量と平均ベンゾオキサジン環数より、平均マレイミド当量または平均オキサジン当量をそれぞれ算出する。ここで、本発明でいう平均シアネート基数、平均マレイミド基数、平均ベンゾオキサジン環数の各々は、官能基、環を分子数により平均したものである。
【0031】
構成要素[B]は、平均シアネート当量が220以下、または平均マレイミド当量が210以下、または平均オキサジン当量が300以下であると、架橋密度が高いため、燃焼時には分子鎖における切断される箇所が多くなる。つまり、燃焼により多くのエネルギーが必要になるため、得られた積層体は燃焼に対して高い耐性を示す。また構成要素[B]のそれぞれが上記の当量に関する要件を満たすと、積層体の圧縮強度も高くなる。構成要素[B]の平均シアネート当量が220より大きい場合、または平均マレイミド当量が210より大きい場合、または平均オキサジン当量が300より大きい場合であると、耐燃焼性が十分に得られず、また圧縮強度は低くなる。一般には、構成要素[B]の平均シアネート当量または平均マレイミド当量または平均オキサジン当量が低いと、樹脂靭性が向上し、構成要素[B]の熱硬化性樹脂内でのクラック進展が抑制され、積層体と部材を接合して一体化した際の疲労接合強度が高くなる。耐燃焼性、圧縮強度、疲労接合強度の観点から、構成要素[B]が、平均シアネート当量が220以下であるシアネートエステル樹脂、平均マレイミド当量が210以下であるビスマレイミド樹脂、および平均オキサジン当量が300以下であるベンゾオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種、さらには平均シアネート当量が130から220であるシアネートエステル樹脂、平均マレイミド当量が120から210であるビスマレイミド樹脂、および平均オキサジン当量が210から300であるベンゾオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。一方で、平均シアネート当量が130未満、または平均マレイミド当量が120未満、または平均オキサジン当量が210未満であると、疲労接合強度が若干低下する傾向がある。
【0032】
構成要素[B]に使用されるシアネートエステル樹脂としては、例えばビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールP型シアネートエステル樹脂、ビフェニル骨格を有するシアネートエステル樹脂、ナフタレン骨格を有するシアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するシアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、フェノールフェニルアラルキル型シアネートエステル樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールフェニルアラルキル型シアネートエステル樹脂などを挙げることができる。これらのシアネートエステル樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0033】
構成要素[B]に使用されるビスマレイミド樹脂としては、N,N’-フェニレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-メチレン-ジ-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-オキシ-ジ-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ベンゾフェノンビスマレイミド、N,N’-ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’-(3,3’-ジメチル) -メチレン-ジ-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N’-m(又はp)-キシリレン-ビスマレイミド、N,N’-(3,3’-ジエチル)-メチレン-ジ-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-メタトリレン-ジ-マレイミドやビス(アミノフェノキシ)ベンゼンのビスマレイミドを始め、アニリンとホルマリンの反応生成物である混合ポリアミンと無水マレイン酸との反応生成物があげられるが、本発明はこれに限定されない。これらのビスマレイミド樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0034】
構成要素[B]に使用されるベンゾオキサジン樹脂としては、例えばビスフェノールA型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、チオジフェノール型ベンゾオキサジン樹脂、フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂、ビフェニル骨格を有するベンゾオキサジン樹脂、ナフタレン骨格を有するベンゾオキサジン樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するベンゾオキサジン樹脂、フェノールノボラック型ベンゾオキサジン樹脂、クレゾールノボラック型ベンゾオキサジン樹脂などを挙げることができる。これらのベンゾオキサジン樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0035】
構成要素[B]を含む組成物は、特性改質のために、エポキシ樹脂やアミン化合物等と組み合わせてもよい。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの臭素化エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどを挙げることができる。アミン化合物としては、3,3’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルケトン、3,3’-ジ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルケトン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、3,3’-ジアミノジフェニルケトン、3,3’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミンなどが挙げられる。
【0036】
<構成要素[E]熱可塑性樹脂成分>
構成要素[B]を含む樹脂領域には、構成要素[B]の熱硬化性樹脂に可溶な熱可塑性樹脂成分が、溶解した状態で含まれることが好ましい。かかる熱可塑性樹脂成分は、構成要素[B]を含む樹脂領域に含まれるという点で、構成要素[C]とは区別される。かかる構成要素[E]を含むことで、構成要素[C]の熱可塑性樹脂との親和性が向上し、積層体と部材を、構成要素[C]を通して接合した際の、接合強度が向上する。ここで「熱硬化性樹脂に可溶」とは、熱可塑性樹脂成分を熱硬化性樹脂に混合したものを加熱、または加熱撹拌することによって、均一相をなす温度領域が存在することを指す。ここで、「均一相をなす」とは、目視で分離のない状態が得られることを指す。ここで、「溶解した状態」とは、熱可塑性樹脂成分を含む熱硬化性樹脂を、ある温度領域にし、均一相をなした状態を指す。一旦ある温度領域で均一相をなせば、その温度領域以外、例えば室温で分離が起こっても構わない。
【0037】
構成要素[E]の熱可塑性樹脂成分としては、一般に、主鎖に炭素-炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれる結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、この熱可塑性樹脂成分は、部分的に架橋構造を有していても差し支えなく、結晶性を有していても非晶性であってもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダゾールからなる群から選ばれる少なくとも一つの樹脂が好適である。良好な耐熱性を得るためには、成形体として用いたときに熱変形を起こしにくいという観点から、150℃以上のガラス転移温度が好ましく、より好ましくは170℃以上であり、ポリエーテルイミドやポリエーテルスルホン等が好適な例として挙げられる。
【0038】
また、接合強度向上の観点から、構成要素[B]100質量部に対して、構成要素[E]が3質量部以上30質量部以下含まれることが好ましい。
【0039】
<構成要素[C]熱可塑性樹脂>
構成要素[C]を構成する熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート 、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステル等のポリエステル系樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂の他や、ポリオキシメチレン、ポリアミド6やポリアミド66等のポリアミド、半芳香族ポリアミド、脂環式ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、変性ポリスルホン 、ポリエーテルスルホンや、ポリケトン、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等のポリアリーレンエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。また、これら熱可塑性樹脂は、上述の樹脂の共重合体や変性体、および/または2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。これらの中でも、耐熱性の観点から、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、およびポリエーテルイミドの1種または2種以上が、構成要素[C]の熱可塑性樹脂中に60重量%以上含まれることが好ましい。耐衝撃性向上のために、エラストマーもしくはゴム成分が添加されていても良い。さらに、用途等に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜、他の充填材や添加剤を含有しても良い。例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
【0040】
本発明のプリプレグにおける、構成要素[C]の熱可塑性樹脂の目付は、10g/m以上であると好ましい。10g/m以上であると、優れた接合強度を発現するための十分な厚みが得られ、好ましい。より好ましくは20g/mである。上限値は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の量が強化繊維対比多くなりすぎず、比強度と比弾性率に優れる積層体が得られるため、好ましくは500g/m以下である。ここで目付とは、プリプレグ1mあたりに含まれる構成要素[C]の質量(g)を指す。具体的には、プリプレグをクロロホルムやメタノールなどの溶剤に逐次浸漬、抽出し、それぞれの可溶物と不溶物を赤外分光法(IR)、プロトン核磁気共鳴分光法(H NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分取、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により、含有する分子の化学構造およびその割合を同定することで求めることができる。
【0041】
<構成要素[D]熱硬化性樹脂硬化物>
構成要素[D]は平均シアネート当量が220以下であるシアネートエステル樹脂、平均マレイミド当量が210以下であるビスマレイミド樹脂、および平均オキサジン当量が300以下であるベンゾオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化性樹脂が硬化度90%以上とされたものである。
【0042】
構成要素[D]の熱硬化性樹脂硬化物は、構成要素[B]の熱硬化性樹脂を含む組成物を、硬化度が90%以上となる硬化条件で加熱硬化することにより得ることができる。かかる硬化条件は、熱硬化性樹脂種および硬化剤や促進剤の種類や量に応じて適宜設定することができ、例えば、熱硬化性樹脂としてシアネートエステル樹脂やビスマレイミド樹脂を用いる場合には、180℃4時間ののち230℃4時間で後硬化する硬化条件が好適に使用でき、ベンゾオキサジン樹脂とエポキシ樹脂を用いる場合には、180℃2時間ののち200℃4時間で後硬化する硬化条件が好適に使用できる。
【0043】
積層体に含まれる構成要素[D]の硬化の判定について、積層体を不活性ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分にて示差走査熱量分析を行った際に発熱反応として現れるピークの面積(残存発熱)が、50J/g以下であれば、実質的に硬化物であると判定することができる。もしくは、硬化前の熱硬化性樹脂組成物を特定できる場合は、以下の式により硬化度を求めて、90%以上であれば硬化物としてよい。
硬化度(%)=((熱硬化性樹脂を含む組成物の硬化前の発熱量)-(熱硬化性樹脂の硬化物の発熱量))/(熱硬化性樹脂を含む組成物の硬化前の発熱量)×100
上式において各発熱量は、構成要素[D]の熱硬化性樹脂および硬化剤として特定された硬化前の熱硬化性樹脂組成物、およびかかる熱硬化性樹脂の硬化物の、不活性ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分にて示差走査熱量分析を行った際に発熱反応として現れるそれぞれのピークの面積としてそれぞれ算出した値である。積層体に含まれる構成要素[D]とは別に、熱硬化性樹脂および硬化剤として特定されたものと同一構造の樹脂を準備して、測定に供することもできる。ここで、硬化剤を特定できない場合は、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンを上記組成物における硬化剤として用いてよい。その他、上記組成物を構成し得る要素として硬化触媒、粘度調整剤など実施例に後述する化合物を好ましく用いることができるが、測定結果に影響しなければ、これらは特に限定されることはない。
【0044】
<プリプレグ>
本発明のプリプレグは、[B]を含む樹脂領域と[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる[A]の強化繊維が存在している。両樹脂領域の境界面をまたいで両樹脂領域に含まれるということについて、図2を用いて示す。図2の観察画像9において、構成要素[C]を含む樹脂領域7は構成要素[B]を含む樹脂領域8と密着しており、観察画像9において境界面10として図示されている。また、境界面10上には複数の構成要素[A]6が存在している。このように強化繊維の周囲に構成要素[C]および構成要素[B]が接している状態は、強化繊維が「境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる」状態といえる。かかる[A]の強化繊維が存在することで、構成要素[C]を含む樹脂領域の強度が向上し、接合強度が向上する。境界面上に存在する構成要素[A]が構成要素[B]および構成要素[C]と化学的または/および物理的に結合することにより、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との密着力が向上する。境界面上に存在する構成要素[A]の本数は1本以上あれば良く、上限本数は、特に限定されないが、後述の観察範囲においては200本である。
【0045】
本発明のプリプレグは、プリプレグの平面視において、前記両樹脂領域に含まれる任意の[A]の繊維方向に対し時計回りか反時計回りかを問わず45度異なる角度の方向から、前記[A]の繊維を含むプリプレグ平面に垂直な断面、すなわち、プリプレグ平面方向に対し垂直にカットするなどして得られる断面において、境界面における樹脂領域の密着の態様を観察することで、繊維軸方向およびこれと直交する方向の密着力を同時に評価することが出来る。
【0046】
本発明のプリプレグは、両樹脂領域の密着する境界面が形成する断面曲線の、JIS B0601(2001)で定義される粗さ平均長さRSmが100μm以下であり、粗さ平均高さRcが3.5μm以上であることが好ましい。
【0047】
かかる断面観察において、当該境界面が形成する断面曲線の、JIS B0601(2001)で定義される粗さ平均長さRSmが100μm以下であると、化学的または/および物理的な結合力のみならず、交絡(interpenetration)という機械的な結合力も加わり、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域とが剥離しにくくなる。下限値は、特に限定されないが、応力集中による機械的な結合力の低下を忌避するという観点から、好ましくは15μm以上である。
【0048】
また、断面曲線の粗さ平均高さRcが3.5μm以上であることにより、交絡による機械的な結合力の発現のみならず、境界面上に存在する構成要素[A]が構成要素[B]および構成要素[C]と化学的または/および物理的に結合し、構成要素[B]を含む樹脂領域と構成要素[C]を含む樹脂領域との密着力が向上する。またRcが上記範囲を満足していると、[B]を含む樹脂領域と[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる[A]の強化繊維を得やすい。
【0049】
断面曲線の粗さ平均高さRcの好ましい範囲としては、構成要素[A]が各樹脂領域に含まれやすくなり密着力がより向上する10μm以上であり、特に好ましくは20μmである。上限値は、特に限定されないが、応力集中による機械的な結合力の低下を忌避するという観点から、好ましくは100μm以下である。
【0050】
ここで、断面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmの測定方法としては、公知の手法を用いることが出来る。例えば、構成要素[B]を硬化させた後、X線CTを用いて取得した断面画像から測定する方法、エネルギー分散型X線分光器(EDS)による元素分析マッピング画像から測定する方法、あるいは光学顕微鏡あるいは走査電子顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像から測定する方法が挙げられる。観察において、構成要素[B]および/または構成要素[C]はコントラストを調整するために、染色されても良い。上記のいずれかの手法により得られる画像において、500μm×500μmの範囲において、断面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmを測定する。
【0051】
断面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmの測定方法の一例を、図2を用いて示す。図2に示される観察画像9おいて、構成要素[C]を含む樹脂領域7は構成要素[B]を含む樹脂領域8と密着しており、観察画像9において境界面10として図示されている。また、境界面10上には複数の構成要素[A]6が存在している。
【0052】
断面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmの測定方法の一例(断面曲線要素の測定方法1)を示す。長方形型の観察画像9の構成要素[B]を含む樹脂領域側の端部11を基準線として、構成要素[B]を含む樹脂領域8から構成要素[C]を含む樹脂領域7に向かって5μm間隔で垂基線12を描く。基準線から描かれる垂基線が初めて構成要素[C]と交わる点をプロットし、プロットされた点を結んだ線を断面曲線13とする。得られた断面曲線13につき、JIS B0601(2001)に基づくフィルタリング処理を行い、断面曲線13の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmを算出する。
【0053】
また本発明のプリプレグは、[B]を含む樹脂領域と[C]を含む樹脂領域とがそれぞれ層状をなして隣接することにより前記境界面を形成していることが、優れた力学特性を発現する点から好ましい。
【0054】
<積層体>
<積層体(その1)>
本発明の積層体(その1)は、本発明のプリプレグが硬化物の状態で少なくとも一部の層を構成する。そして、表面もしくは層間に構成要素[C]の熱可塑性樹脂が存在することが好ましい。積層体の表面に構成要素[C]の熱可塑性樹脂が存在することで、本発明の積層体は、構成要素[C]を通じて同種または異種の部材との接合を溶着で行うことができる。一方、積層体の層間に構成要素[C]の熱可塑性樹脂を含む材料が存在すると、優れた層間破壊靱性値(GIIC)が得られる。表面および層間の両方に構成要素[C]が存在すると、より好ましい。
【0055】
本発明の積層体(その1)は、上述した本発明のプリプレグを、単独で、または他のプリプレグと共に積層し、少なくとも一部の層を構成するものとして、加圧・加熱して硬化させる方法により製造することができる。ここで、熱および圧力を付与する方法には、例えば、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等が採用される。
【0056】
<積層体(その2)>
本発明の積層体(その2)は、次の構成要素[A]、[C]および[D]を含む層が含まれる。
[A]強化繊維
[C]熱可塑性樹脂
[D]熱硬化性樹脂硬化物。
【0057】
本発明の積層体(その2)は、[C]を含む樹脂領域と[D]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれる[A]の強化繊維が存在している。その詳細な説明は、構成要素[B]を構成要素[D]にかえた以外は本発明のプリプレグにおけるものと共通する。
【0058】
本発明の積層体(その2)は、積層体の平面視において、前記両樹脂領域に含まれる任意の[A]の繊維方向に対し時計回りか反時計回りかを問わず45度異なる角度の方向から、前記[A]を含む積層体の平面に垂直な断面、すなわち、積層体平面方向に対し垂直にカットするなどして得られる断面において、両樹脂領域の密着する境界面が形成する断面曲線の、JIS B0601(2001)で定義される粗さ平均長さRSmが100μm以下であり、粗さ平均高さRcが3.5μm以上である。粗さ平均高さRcは10μm以上であることが好ましい。その詳細な説明は、構成要素[B]を構成要素[D]にかえた以外は本発明のプリプレグにおけるものと共通する。
【0059】
また本発明の積層体(その2)は、前記[D]を含む樹脂領域と前記[C]を含む樹脂領域とがそれぞれ層状をなして隣接することにより前記境界面を形成していることが、優れた力学特性を発現する点から好ましい。
【0060】
本発明の積層体(その2)において、表面もしくは層間に構成要素[C]の熱可塑性樹脂が存在することが好ましい。積層体の表面に構成要素[C]の熱可塑性樹脂が存在することで、本発明の積層体は、構成要素[C]を通じて同種または異種の部材との接合を溶着で行うことができる。一方、積層体の層間に構成要素[C]の熱可塑性樹脂を含む材料が存在すると、優れた層間破壊靱性値(GIIC)が得られる。表面および層間の両方に構成要素[C]が存在すると、より好ましい。
【0061】
本発明の積層体(その2)は、例えばプレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法、ハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法、レジン・トランスファー・モールディング法などの成形法によって作製することができる。
【0062】
本発明の積層体は、ISO5660-1(2002)に準拠したコーンカロリーメーターによる燃焼試験により、耐燃焼性を評価でき、20分間での総発熱量が6.0MW/m未満であると好ましく、より好ましくは5.0MW/mである。コーンカロリーメーターによる燃焼試験の20分間での総発熱量について、下限は特に限定されないが、通常の繊維強化複合材料では0.01MW/mが下限である。
【0063】
<成形品>
本発明の積層体は、なんらかの加熱手段によって、別の部材、すなわち積層体を構成する部材と同種および/または異種の部材(被着材)を、積層体の表面に存在する構成要素[C]に接合させて、構成要素[C]を通じて積層体と一体化(溶着)することができる。異種の部材(被着材)として、熱可塑性樹脂からなる部材、金属材料からなる部材が挙げられる。熱可塑性樹脂からなる部材は、強化繊維やフィラー等が含まれていても良い。一体化手法は特に制限はなく、例えば、熱溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着、抵抗溶着、誘導溶着、インサート射出成形、アウトサート射出成形などを挙げることができる。
【0064】
一体化した部材の接合部の強度は、ISO4587(1995)に基づいて評価できる。ISO4587(1995)に基づき測定した引張せん断接合強度が、試験環境温度が80℃のとき、13MPa以上の接合強度を示すことが好ましく、より好ましくは16MPa以上である。一般的な接着剤の、試験環境温度が23℃のときの引張せん断接合強度(10MPa程度)と比べても高い強度である。引張せん断接合強度は高いほど好ましく、上限については特に限定されないが、通常の積層体の一体化成形品では、80℃の試験環境温度での引張せん断接合強度は、200MPaが上限である。
【0065】
さらに、一体化した接合部材の接合部の疲労接合強度は、試験環境温度が23℃のとき、11MPa以上であれば好ましく、より好ましくは13MPa以上である。ここで、疲労接合強度とは、ISO4587(1995)に基づいて作製された試験片を用いて、JASO M353(1998)を参考に、チャック間距離100mm、正弦波応力波形、応力比R=0.1、周波数10Hzにて試験を実施し、10回で破断する応力波形の最大応力のことを指す。疲労接合強度は高いほど好ましく、上限については特に限定されないが、通常の積層体の一体化成形品では、23℃の試験環境温度での疲労接合強度は、150MPaが上限である。
【0066】
本発明の積層体および一体化成形品は、航空機構造部材、風車羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体などのコンピューター用途さらにはゴルフシャフトやテニスラケットなどスポーツ用途に好ましく用いられる。
【実施例
【0067】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、組成比の単位「部」は、特に注釈のない限り質量部を意味する。また、各種特性の測定は、特に注釈のない限り温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
【0068】
<評価・測定方法>
(1)強化繊維のストランド引張強度
強化繊維束のストランド引張強度は、JIS R7608(2007)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めた。樹脂処方としては、“セロキサイド”(登録商標)2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、温度125℃、時間30分を用いた。強化繊維束の樹脂含浸ストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度とした。
【0069】
(2)強化繊維の平均面粗さRa
評価すべき炭素繊維単繊維を10本試料台にのせ、エポキシ樹脂で試料台に固定したものをサンプルとし、原子間力顕微鏡(本発明の実施例においては、ブルカーAXS製、NanoScopeV Dimension Icon)を用いた。また、本発明の実施例においては、下記条件にて3次元表面形状像を得た。
探針:シリコンカンチレバー(オリンパス製、OMCL-AC160TS-W2)
測定モード:タッピングモード
走査速度:1.0Hz
走査範囲:600nm×600nm
分解能:512ピクセル×512ピクセル
測定環境:室温、大気中。
【0070】
単繊維1本に対して、上記条件で3次元表面形状像を測定し、得られた測定画像について、繊維断面の曲率を考慮し、付属のソフトウェア(NanoScope Analysis)により、装置起因のデータのうねりを除去する「フラット処理」、3×3のマトリックスにおいてZデータの中央値からマトリックス中央の値を置き換えるフィルタ処理である「メディアン8処理」、全画像データから最小二乗法により3次曲面を求めてフィッティングし、面内の傾きを補正する「三次元傾き補正」による画像処理、を行ったのち、付属のソフトウェアにより表面粗さ解析を行い、平均面粗さを算出した。ここで、平均面粗さ(Ra)とは、JIS B0601(2001)で定義されている中心線粗さRaを測定面に対し適用できるよう三次元に拡張したもので、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値と定義される。測定は、異なる単繊維10本をランダムにサンプリングし、単繊維1本につき各1回ずつ、計10回行い、その平均値とした。
【0071】
(3)強化繊維の熱伝導率
熱伝導率は、以下に示す繊維束の熱拡散率、密度、比熱より、式(1)により算出したものである。
λ=α×ρ×Cp (1)
・λ :熱伝導率(W/(m・K))
・α :熱拡散率(m/s)
ここで、熱拡散率は、以下の文献に示される光交流法に従い算出した。
T.Yamane,S.Katayama,M,Todoki and I.Hatta:J.Appl.Phys.,80 (1996)4385.
・ρ :密度(kg/m
密度は、被測定物の空気中での重さW1(kg)、および、当該被測定物を密度ρLの液体に沈めた際の液中での重さW2(kg)に基づき、次に示す式(2)により算出した。
ρ=W1×ρL/(W1-W2) (2)
・Cp:比熱(J/(kg・K))
比熱は、JIS R1672(2006)を参考に、DSC(示差走査熱量計)で測定温度を25℃として測定した値である。
【0072】
(4)熱可塑性樹脂の融点の測定方法
熱可塑性樹脂の融点は、JIS K7121(2012)に基づいて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。混合物などで融点が複数観測される場合は、最も高い融点をその組成物の融点として採用した。
【0073】
(5)積層体のコーンカロリーメーターによる燃焼試験
後述するプリプレグ[I]および[II]を所定の大きさにカットし、プリプレグ[I]を2枚とプリプレグ[II]を3枚得た。強化繊維の軸方向を0°とし、軸直交方向を90°と定義して、[0°/90°/0°/90°/0°]で積層し、プリフォームを作製した。このとき最外層の2枚はプリプレグ[I]となるように積層し、プリフォームの表層が、構成要素[C]を含む熱可塑性樹脂層となるように配置した。このプリフォームを表2および3に記載の成形条件で成形することで、積層体を得た。この積層体は、本発明の積層体の実施態様またはその比較品にも該当しうるが、燃焼試験の評価用積層体であるとも言える。
【0074】
得られた積層体を、100mm角にカットし、ISO5660-1(2002)に準拠してコーンカロリーメーターによる燃焼試験を行った。ヒーター輻射量は50MW/m、ヒーター温度は750℃であった。試験時間は20分とし、炎が消えた後も測定を続けて、総発熱量を算出した。総発熱量の算出結果に基づいて以下のように評価した。
5.0MW/m未満:A
5.0MW/m以上6.0MW/m未満:B
6.0MW/m以上7.0MW/m未満:C
7.0MW/m以上:D(不合格)。
【0075】
(6)積層体の圧縮強度
後述するプリプレグ[I]および[II]を所定の大きさにカットし、プリプレグ[I]を2枚とプリプレグ[II]を4枚得た。両面それぞれの最外層の2枚はプリプレグ[I]として、間にプリプレグ[II]を挟んで、全て同一の強化繊維方向となるよう、計6枚積層し、プリフォームを作製した。このとき、プリフォームの両の表層が構成要素[C]を含む熱可塑性樹脂層となるように配置した。このプリフォームをプレス成形金型にセットし、必要に応じ、治具やスペーサーを使用して、この形状を維持させたまま、表2および3に記載の成形条件で加圧・加温することで、積層体を得た。この積層体は、本発明の積層体の実施態様またはその比較品にも該当しうるが、圧縮強度の評価用積層体であるとも言える。
【0076】
得られた積層体に、SACMA-SRM 1R-94に準拠してタブを接着した後、強化繊維軸方向を試験片の長さ方向として、長さ80mm、幅15mmの矩形試験片を切り出した。得られた試験片を、60℃の真空オーブン中で24時間乾燥させ、SACMA-SRM 1R-94に準拠し、材料万能試験機(インストロン・ジャパン(株)製、“インストロン”(登録商標)5565型P8564)を用いて、23℃環境下において圧縮強度を測定し、測定結果に基づいて以下のように評価した。
1.6GPa以上:A
1.4GPa以上1.6GPa未満:B
1.2GPa以上1.4GPa未満:C
1.2GPa未満:D(不合格)。
【0077】
(7)積層体の引張せん断接合強度
上記で作製したプリプレグ[I]および[II]を所定の大きさにカットし、プリプレグ[I]を2枚とプリプレグ[II]を6枚得た。強化繊維の軸方向を0°とし、軸直交方向を90°と定義して、[0°/90°]2s(記号sは、鏡面対称を示す)で積層し、プリフォームを作製した。このとき両面それぞれの最外層の2枚はプリプレグ[I]となるように積層し、プリフォームの両の表層が、構成要素[C]を含む熱可塑性樹脂層となるように配置した。このプリフォームを表2および3に記載の成形条件で加圧、加温することで、積層体を得た。この積層体は、本発明の積層体の実施態様またはその比較品にも該当しうるが、引張せん断接合強度の評価用積層体であるとも言える。
【0078】
得られた積層体を、0°方向を試験片の長さ方向として、幅250mm、長さ92.5mmの形状に2枚カットし、真空オーブン中で24時間乾燥させた。その後、幅250mm、長さ92.5mmの形状にカットした2枚のパネルを、0°方向を長さ方向として、幅25mm×長さ12.5mmとして重ね合わせ、用いた構成要素[C]の熱可塑性樹脂の融点よりも20℃高い温度にて、3MPaの圧力をかけて、1分間保持することで、重ね合わせた面を溶着し、一体化成形品を得た。得られた一体化成形品に、ISO4587(1995)に準拠してタブを接着し、幅25mmでカットすることで、目的の試験片を得た。
【0079】
得られた試験片を、真空オーブン中で24時間乾燥させ、ISO4587(1995)に基づき、環境温度80℃で引張せん断接合強度を測定し、測定結果に基づいて以下のように評価した。
16MPa以上:A
13MPa以上16MPa未満:B
10MPa以上13MPa未満:C
10MPa未満:D(不合格)。
【0080】
(8)積層体の疲労接合強度
上記(7)と同様の手順で試験片を作製し、疲労試験機によって試験を行った。JASO M353(1998)を参考に、チャック間距離100mm、正弦波応力波形、応力比R=0.1、周波数10Hzにて試験を実施した。10回で破断する応力波形の最大応力を、疲労接合強度とした。評価は23℃の温度にて行った。測定結果は以下のように評価した。
13MPa以上:A
11MPa以上13MPa未満:B
9MPa以上11MPa未満:C。
【0081】
(9)層間破壊靱性値(GIIC)の測定方法
後述するプリプレグ[I]を所定の大きさにカットし、同一の強化繊維方向となるよう、計20枚積層した。このとき、中央の10枚目と11枚目の間の位置に予備亀裂導入のための離型フィルムを挟み込み、プリフォームを作製した。このプリフォームを表2および3に記載の成形条件で加圧、加温することで、積層体を得た。この積層体は、本発明の積層体の実施態様またはその比較品にも該当しうるが、予備亀裂導入のための離型フィルムを挟み込んでいるという点においては、層間破壊靱性値の評価用積層体であるとも言える。
【0082】
得られた積層体より、強化繊維軸を試験片の長さ方向として、長さ150mm、幅20mmの矩形試験片を切り出し、60℃の真空オーブン中で24時間乾燥させた。得られた試験片を、JIS K7086(1993)に従い、23℃環境下において、層間破壊靱性値(GIIC) を評価した。
【0083】
(10)プリプレグまたは積層体における粗さ平均長さRSmおよび粗さ平均高さRcの測定
後述するプリプレグ[I]または積層体を用い、前記両樹脂領域に含まれる[A]の任意の繊維方向に対し、プリプレグの平面視における45度の角度にてプリプレグ平面方向に対し垂直にカットした断面において、光学顕微鏡を用いて、1000倍の画像を撮影した。得られた画像中の任意の500μm×500μmの観察範囲において、前記断面曲線要素の測定方法1により得られる断面曲線要素JIS B0601(2001)で定義される、粗さ平均長さRSmおよび粗さ平均高さRcを測定した。
【0084】
<実施例および比較例で用いた材料>
(1)構成要素[A]
表2および3に記載の各具体例の強化繊維A-1~A-4を、特開2014-139360号公報を参照して作製した。
・A-1:炭素繊維(ストランド引張強度5.9GPa、平均面粗さRa5.0nm、熱伝導率30.5W/(m・K))
・A-2:炭素繊維(ストランド引張強度5.9GPa、平均面粗さRa12.0nm、熱伝導率30.1W/(m・K))
・A-3:炭素繊維(ストランド引張強度5.9GPa、平均面粗さRa1.3nm、熱伝導率30.8W/(m・K))
・A-4:炭素繊維(ストランド引張強度5.9GPa、平均面粗さRa1.3nm、熱伝導率14.7W/(m・K))
(2)構成要素[B]を含む熱硬化性樹脂組成物
表1~3に記載の各具体例の熱硬化性樹脂組成物を、以下の化合物を用いて調製した。
【0085】
(2-1)シアネートエステル樹脂
・ビフェニル型シアネートエステル:ビフェノール(東京化成工業(株)製)およびトリメチルアミンをテトラヒドロフランに溶解させ、塩化シアンの塩化メチレン溶液とテトラヒドロフランの混合液に滴下した。その後反応液を濃縮、洗浄、乾燥し、ビフェニル型シアネートエステル(シアネート当量:118)を得た。
・ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂(“サイテスタ(CYTESTER)”(登録商標)TA、三菱ガス化学(株)製、シアネート当量:139)
・ビスフェノールM型シアネートエステル樹脂(AroCyXU366(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、シアネート当量:198)
・1-ナフトールアラルキル型シアネートエステル:α-ナフトールアラルキル樹脂(SN495V(新日鐵化学(株)製))およびトリメチルアミンをジクロロメタンに溶解させ、塩化シアンの塩化メチレン溶液とジクロロメタンの混合液に滴下した。その後反応液を濃縮、洗浄、乾燥し、1-ナフトールアラルキル型シアネートエステル(シアネート当量:256)を得た。
【0086】
(2-2)ビスマレイミド樹脂
・N,N’-エチレンビスマレイミド(東京化成工業(株)製、マレイミド当量:110)
・N,N’-エチレンビスマレイミド(東京化成工業(株)製、マレイミド当量:110)
・N,N’-フェニレンビスマレイミド(BMI-3000(大和化成工業(株)製)、マレイミド当量:134)
・ビスフェノールF型ビスマレイミド(BMI-1000(大和化成工業(株)製)、マレイミド当量:179)
・ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド(BMI-4000(大和化成工業(株)製)、マレイミド当量:285)。
【0087】
(2-3)ベンゾオキサジン樹脂
・ナフタレン型ベンゾオキサジン:2,6-ヒドロキシナフタレン(東京化成工業(株)製)とアニリンとホルムアルデヒドを混合、加熱した。その後反応液をクロロホルムに溶解させ、洗浄、乾燥することにより、ナフタレン型ベンゾオキサジン(オキサジン当量:193)を得た。
・ビスフェノールF型ベンゾオキサジン(BF-BXZ(小西化学(株)製)、オキサジン当量:217)
・ジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン(”アラルダイト”(登録商標)MT36000(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、オキサジン当量:277)
・フェノールノボラック型ベンゾオキサジン:ビフェニルフェノールノボラック樹脂(GPH-65(日本化薬(株)製)とアニリンとホルムアルデヒドを混合、加熱した。その後反応液をクロロホルムに溶解させ、洗浄、乾燥することにより、フェノールノボラック型ベンゾオキサジン(オキサジン当量:318)を得た。
【0088】
(2-4)エポキシ樹脂
・テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(“アラルダイト”(登録商標)MY721、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、エポキシ当量:113)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“jER”(登録商標)825、三菱ケミカル(株)製)、エポキシ当量:175)。
【0089】
(2-5)アミン化合物
・4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(“セイカキュア”S、和歌山精化工業(株)製)
・4,4’-ジアミノジフェニルメタン(東京化成工業(株)(株)製)。
【0090】
(2-6)[E]熱硬化性樹脂に可溶な熱可塑性樹脂
・ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”(登録商標)PES5003P、住友化学(株)製)。
【0091】
(2-7)熱硬化性樹脂組成物の調製
表1に示すCE-1~4は次の方法により調整を行った。混練装置中に、表1に記載のシアネートエステル樹脂およびテトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート(“TPP-MK”(登録商標)北興化学工業(株)製)を投入し、100℃以下の温度で加熱混練を行い、熱硬化性樹脂組成物を得た。CE-5は、混練装置中に、表1に記載のシアネートエステル樹脂およびポリエーテルスルホンを投入し、加熱混練を行い、100℃以下の温度でTPP-MKを加えて攪拌し、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0092】
BMI-1~4は次の方法により調整を行った。混練装置中に、表1に記載のビスマレイミド樹脂を投入し、100℃以下の温度で表1に記載のアミン化合物およびジアルキルパーオキサイド(“パークミル”(登録商標)D、日油(株)製)を加えて撹拌し、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0093】
BOX-1~4は次の方法により調整を行った。混練装置中に、表1に記載のベンゾオキサジン樹脂を投入し、100℃以下の温度で表1に記載のエポキシ樹脂およびトルエンスルホン酸メチル(東京化成工業(株)製)を加えて攪拌し、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0094】
表1に示すEPは次の方法により調整を行った。混練装置中に、表1に記載のエポキシ樹脂およびポリエーテルスルホンを投入し、加熱混練を行い、ポリエーテルスルホンを溶解させた。次いで、混練を続けたまま100℃以下の温度まで降温させ、表1に記載のアミン化合物を加えて撹拌し、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0095】
(3)構成要素[C]で用いた材料および評価方法
表2、3に記載の熱可塑性樹脂は、以下のものを用いた。
・PA6:ポリアミド6(“アミラン”(登録商標)CM1007(東レ(株)製、融点225℃)からなる目付120g/mのフィルム)
・PPS:ポリフェニレンスルフィド(“トレリナ”(登録商標)A670T05(東レ(株)社製、融点278℃))からなる目付120g/mのフィルム)。
・PP:ポリプロピレン(“ユーメックス”(登録商標)1010(三洋化成(株)社製、融点142℃))からなる目付120g/mのフィルム)。
・PEs:ポリエステル(“ハイトレル”(登録商標)2551(東レデュポン(株)社製、融点164℃))からなる目付120g/mのフィルム)。
・PC:ポリカーボネート(“ユーピロン” (登録商標)(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製、軟化点230℃))からなる目付120g/mのフィルム)。
・PEKK:ポリエーテルケトンケトン(“KEPSTAN” (登録商標)7002(Arkema社製、融点337℃))からなる目付120g/mのフィルム)。
・PEEK:ポリエーテルエーテルケトン(PEEK 450G(Victrex社製、融点343℃))からなる目付120g/mのフィルム)。
【0096】
<プリプレグの作製方法>
プリプレグは、以下の2種の方法により作製した。各例で使用した構成要素は表2,3記載のそれぞれのとおりである。
【0097】
プリプレグ[I]
表2,3に記載の構成要素[A]の強化繊維(目付193g/m)を一方向に整列させた強化繊維シートを引き出し、一方向に走行させつつ、構成要素[C]からなる目付120g/mの樹脂シートを連続強化繊維シート上に配置して、IRヒーターで加熱して構成要素[C]を溶融し、連続強化繊維シート片面全面に付着させ、表面温度が構成要素[C]の融点以下に保たれたニップロールで加圧して、強化繊維シートに含浸したものを冷却させて繊維強化樹脂中間体を得た。表2,3記載のとおり選定した構成要素[B]に係る熱硬化性樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて樹脂目付100g/mで離型紙上にコーティングし、熱硬化性樹脂フィルムを作製した後、上記中間体における構成要素[C]を含浸させた反対の表面に上記熱硬化性樹脂フィルムを重ね、ヒートロールにより加熱加圧しながら熱硬化性樹脂組成物を中間体に含浸させ、プリプレグ[I]を得た。このプリプレグ[I]が、本発明のプリプレグの実施態様またはその比較品に該当しうる。
【0098】
プリプレグ[II]
プリプレグ[I]と組み合わせて積層体の前駆体とするプリプレグ[II]を、次のように作製した。表2,3記載のとおり選定した構成要素[B]に係る熱硬化性樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて樹脂目付50g/mで離型紙上にコーティングし、樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムを、一方向に引き揃えた構成要素[A]の強化繊維(目付193g/m)の両側に重ね合せてヒートロールを用い、加熱加圧しながら熱硬化性樹脂を炭素繊維に含浸させプリプレグ[II]を得た。
【0099】
<実施例1~3および比較例1>
実施例1~3では、表2に記載のとおり、構成要素[B]として平均シアネート当量の異なるシアネートエステル樹脂を用いた。平均シアネート当量が小さいほど、コーンカロリーメーターによる燃焼試験での総発熱量が減少し、耐燃焼性において好ましい傾向を示した。また、平均シアネート当量が小さいほど圧縮強度も高く、好ましい傾向であった。さらに、平均シアネート当量が小さいほど、疲労接合強度は低下したが、いずれも優れた特性を示した。一方、表4に記載の比較例1は、実施例1と比べ疲労接合強度が向上したが、コーンカロリーメーターによる燃焼試験での総発熱量は増加、圧縮強度は低下し、好ましくない結果であった。
【0100】
<実施例4~6および比較例2>
実施例4~6では、表2に記載のとおり、構成要素[B]として平均マレイミド当量の異なるビスマレイミド樹脂を用いた。平均マレイミド当量が小さいほど、コーンカロリーメーターによる燃焼試験での総発熱量が減少し、耐燃焼性において好ましい傾向を示した。また、平均マレイミド当量が小さいほど圧縮強度も高く、好ましい傾向であった。さらに、平均マレイミド当量が小さいほど、疲労接合強度は低下したが、いずれも優れた特性を示した。一方、表4に記載の比較例2は、実施例4と比べ疲労接合強度が向上したが、コーンカロリーメーターによる燃焼試験での総発熱量は増加、圧縮強度は低下し、好ましくない結果であった。
【0101】
<実施例7~9および比較例3>
実施例7~9では、表2に記載のとおり、構成要素[B]として平均オキサジン当量の異なるベンゾオキサジン樹脂を用いた。平均オキサジン当量が小さいほど、コーンカロリーメーターによる燃焼試験での総発熱量が減少し、耐燃焼性において好ましい傾向を示した。また、平均オキサジン当量が小さいほど圧縮強度も高く、好ましい傾向であった。さらに、平均オキサジン当量が小さいほど、疲労接合強度は低下したが、いずれも優れた特性を示した。一方、比較例3は、実施例7と比べ疲労接合強度が向上したが、コーンカロリーメーターによる燃焼試験での総発熱量は増加、圧縮強度は低下し、好ましくない結果であった。
【0102】
<実施例10、11>
表3に記載のとおり、実施例10、11では、構成要素[A]の平均面粗さRaが実施例2と異なる強化繊維を用いた。実施例2、10および11の間で比較してわかるとおり、構成要素[A]の平均面粗さRaが小さいほど、コーンカロリーメーターによる燃焼試験での総発熱量が減少し、好ましい傾向を示した。
【0103】
<実施例11および実施例12>
表3に記載のとおり、実施例12では、構成要素[A]の熱伝導率が実施例11と異なる強化繊維を用いた。実施例11および12の間で比較してわかるとおり、構成要素[A]の熱伝導率が低いほど、コーンカロリーメーターによる燃焼試験での総発熱量が減少し、好ましい傾向を示した。
【0104】
<実施例13>
表1、3に記載のとおり、実施例13では、構成要素[B]として、熱硬化性樹脂に可溶な熱可塑性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を用いた。その結果、実施例2よりも80℃における引張せん断接合強度が増加し、優れた特性を示した。
【0105】
<実施例14>
表3に記載のとおり、実施例14では、構成要素[C]としてポリフェニレンスルフィドを用いたところ、実施例2に比べ、80℃での引張せん断接合強度が向上し、好ましい特性を示した。一方、実施例2に比べ疲労接合強度が低下したが、構造材料としては十分な特性であった。
【0106】
<実施例15>
表3に記載のとおり、実施例15では、構成要素[C]としてポリプロピレンを用いたところ、実施例2に比べ、80℃での引張せん断接合強度が低下したが、構造材料としては十分な特性であった。
【0107】
<実施例16>
表3に記載のとおり、実施例16では、構成要素[C]としてポリエステルを用いたところ、いずれの項目に関しても実施例2と同等の好ましい特性を示した。
【0108】
<実施例17>
表3に記載のとおり、実施例17では、構成要素[C]としてポリカーボネートを用いた。実施例2に比べ、80℃での引張せん断接合強度が向上し、好ましい特性を示した。
【0109】
<実施例18、19>
表3に記載のとおり、実施例18および19では、構成要素[C]としてポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンを用いた。実施例2に比べ、80℃での引張せん断接合強度が向上し、好ましい特性を示した。
【0110】
<比較例4>
表4に記載のとおり、比較例4では構成要素[B]としてエポキシ樹脂を用いた。実施例2、5、8と比べ、コーンカロリーメーターによる燃焼試験での総発熱量が増加し、耐燃焼性において好ましくない特性であった。
【0111】
<比較例5>
一方向平面状に配列させた強化繊維シートの両面に、フィルム目付50g/mのポリアミド6(“アミラン”(登録商標)CM1007(東レ(株)製))のフィルムを貼り付け、250℃で加熱加圧して、強化炭素繊維目付193g/mのプリプレグを得た。得られたプリプレグを、所定のサイズにカットし、それぞれ、引張せん断接合強度評価用および圧縮強度評価用に、[0°/90°]2sとするか、または同一方向として、いずれも6枚積層した後、それぞれに対してプレス機で3MPaの圧力をかけ、250℃で10分間加温することで、それぞれ積層体を得た。得られた積層体より、実施例に記載の方法で引張せん断接合強度と疲労接合強度、圧縮強度の測定、およびコーンカロリーメーターによる燃焼を行った(比較例5)。表3に示すとおり、熱硬化性樹脂非含有の比較例5は、実施例2に比べて圧縮強度、80℃での引張せん断接合強度、および疲労接合強度が低く、構造材料として十分な特性を示さなかった。
【0112】
<実施例20および比較例6、7>
実施例20では、表3に記載の構成要素からなるプリプレグ[I]を所定の大きさにカットし、同一の強化繊維方向となるよう、計20枚積層し、中央の10枚目と11枚目の間の位置に予備亀裂導入のための離型フィルムを挟み込み、プリフォームを作製した。
比較例6では、構成要素[C]を用いず、プリプレグ[II]を所定の大きさにカットし、実施例20と同じ方法で積層し、離型フィルムを挟み込み、プリフォームを得た。
比較例7では、所定の大きさにカットしたプリプレグ[II]の片側表面に、ポリアミド粒子(SP-500、東レ(株)製)を、プリプレグ単位面積あたりの粒子量が7g/mとなるよう均一に散布したのち、実施例20と同じ方法で積層し、離型フィルムを挟み込み、プリフォームを得た。
これらのプリフォームを、前述の手順で加圧・加熱し、層間破壊靱性値の評価用積層体を得た。得られた評価用積層体について、前述の方法で、層間破壊靱性値(GIIC)を評価した。表3、4に記載の通り、構成要素[C]を積層体の内層部に含む実施例20は、構成要素[C]非含有の比較例6および熱可塑性樹脂を異なる形態として含む比較例7に比べ、優れた層間破壊靱性値を示した。
【0113】
なお、全ての実施例のプリプレグおよび積層体において、[A]の強化繊維が、[B]を含む樹脂領域と[C]を含む樹脂領域との境界面をまたいで両樹脂領域に含まれていること、または、[C]を含む樹脂領域と[D]を含む樹脂領域との境界線をまたいで両樹脂領域に含まれていること、を確認した。比較例7においては、[A]の強化繊維が[C]の樹脂領域に含まれていなかった。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【符号の説明】
【0118】
1:プリプレグまたは積層体
2:構成要素[A]
3:構成要素[C]および構成要素[B]または構成要素[D]
4:任意の繊維束の軸方向
5:観察断面
6:構成要素[A]
7:構成要素[C]を含む樹脂領域
8:構成要素[B]または構成要素[D]を含む樹脂領域
9:観察画像
10:境界面
11:基準線
12:垂基線
13:断面曲線
図1
図2