(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】インテークマニホールド
(51)【国際特許分類】
F02M 35/104 20060101AFI20240521BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F02M35/104 R
F02M35/10 101F
F02M35/10 301P
(21)【出願番号】P 2021018561
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 将人
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-115842(JP,U)
【文献】特開2020-026774(JP,A)
【文献】特開2018-091310(JP,A)
【文献】特開昭61-187519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0203682(US,A1)
【文献】特表平08-501852(JP,A)
【文献】特開2020-026772(JP,A)
【文献】特開平08-144732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/104
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サージタンクと、
前記サージタンクの内外を連通する筒状をなすとともに、一端が前記サージタンクの内壁面から突出する突出部を構成する態様で前記サージタンクに
固定されて、同サージタンクの内部に空気を導入するコネクタと、
前記サージタンクの内外を連通する筒状をなすとともに、前記サージタンクにおける前記コネクタからの空気の導入方向に沿って延びる壁部に接続されて、前記サージタンク内の空気を導出する導出管と、を備えるインテークマニホールドにおいて、
前記突出部の前記サージタンクの内部における突端は、前記導出管の前記サージタンクの内部における開口部分よりも、前記内壁面から突出する方向の手前側に位置しており、
前記内壁面における前記コネクタの開口部分と前記導出管の前記サージタンクの内部における開口部分とを直線状に繋いだ領域を仮想領域とした場合に、前記突出部における前記仮想領域に含まれる部分には、前記突出部の周壁の少なくとも一部が途切れた形状をなす欠け部が設けられている
ことを特徴とするインテークマニホールド。
【請求項2】
前記欠け部は、前記突出部の突出方向の全長にわたって同突出部の周壁が途切れた形状をなしている
請求項1に記載のインテークマニホールド。
【請求項3】
前記導出管を複数有しており、
複数の前記導出管は、同導出管の前記サージタンクの内部における開口部分が前記導入方向において並ぶ態様で前記壁部に各別に接続されている
請求項1または2に記載のインテークマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のインテークマニホールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には吸気系の一部をなすインテークマニホールドが設けられている。インテークマニホールドは、サージタンクと、同サージタンクに連通された筒状のコネクタと、サージタンクの内壁における上記コネクタからの空気の導入方向に沿って延びる壁部に連通された導出管とを有している。インテークマニホールドを取り付ける際には、コネクタが吸気通路に接続されるとともに、導出管が内燃機関の吸気ポートに接続される。こうしたインテークマニホールドにより、吸気通路に吸入される空気が内燃機関の気筒に供給される。
【0003】
インテークマニホールドとしては、コネクタの吸気流れ方向下流側の端部がサージタンクの内部において突き出る態様で同コネクタがサージタンクに接続された構造のものが提案されている(例えば特許文献1)。こうした構造を採用することにより、内燃機関の吸気系についての振動および騒音を抑制する性能(いわゆるNV性能)の向上が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインテークマニホールドのように、筒状のコネクタの端部がサージタンクの内部に突き出ていると、その突き出た部分が上記コネクタから導出管に向かう空気の流れを遮る壁部になるおそれがある。この場合には、インテークマニホールドの吸気抵抗が大きくなるため、機関システムの吸気損失が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのインテークマニホールドは、サージタンクと、前記サージタンクの内外を連通する筒状をなすとともに、一端が前記サージタンクの内壁面から突出する突出部を構成する態様で前記サージタンクに設けられて、同サージタンクの内部に空気を導入するコネクタと、前記サージタンクの内外を連通する筒状をなすとともに、前記サージタンクにおける前記コネクタからの空気の導入方向に沿って延びる壁部に接続されて、前記サージタンク内の空気を導出する導出管と、を備えるインテークマニホールドにおいて、前記内壁面における前記コネクタの開口部分と前記導出管の前記サージタンクの内部における開口部分とを直線状に繋いだ領域を仮想領域とした場合に、前記突出部における前記仮想領域に含まれる部分には、前記突出部の周壁の少なくとも一部が途切れた形状をなす欠け部が設けられている。
【0007】
上記構成によれば、筒状のコネクタにおけるサージタンクの内部に突出する部分である突出部によって、NV性能の向上を図ることができる。
しかも、コネクタを介してサージタンク内に導入される空気の一部を、同コネクタ(詳しくは、上記突出部)の周壁が途切れた部分である欠け部を介して同突出部の外部に漏らすことができる。これにより、コネクタを通じてサージタンク内に導入される空気の一部を、導出管に向かう態様で流すことができる。このように上記構成によれば、サージタンクの内部に上記突出部が設けられるとはいえ、コネクタから導出管に向かう空気の流れが同突出部によって邪魔され難い構造にすることができる。これにより、インテークマニホールドの吸気抵抗の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインテークマニホールドによれば、NV性能の向上と吸気抵抗の低減との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態のインテークマニホールドの側面図。
【
図3】インテークマニホールドの
図2における3-3線に沿った断面図。
【
図4】サージタンクの内部における突出部およびその周辺の構造を示す断面図。
【
図6】他の実施形態のインテークマニホールドの突出部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、インテークマニホールドの一実施形態について説明する。
図1~
図3に示すように、インテークマニホールド10は、サージタンク11と、コネクタ12と、複数(本実施形態では、4本)の導出管13と、取付フランジ14とを有している。なお、インテークマニホールド10は、一方向に分割された合成樹脂製の4つの分割体によって構成されている。インテークマニホールド10は、それら分割体が一方向において重ねられた状態で振動溶着によって互いに固定された構造になっている。本実施形態では、
図1の上下方向をインテークマニホールド10の上下方向として説明する。
【0011】
サージタンク11は、上方側の壁部を構成する頂壁11Aと、頂壁11Aの周縁から下方に向けて立設された環状の側周壁11Bと、側周壁11Bの下部を塞いで下方側の壁部を構成する底壁11Cとを有している。サージタンク11は、一時的に空気を貯めておく容積部として機能する。
【0012】
コネクタ12は筒状をなしている。コネクタ12は、サージタンク11の内外を連通する態様で、サージタンク11の側周壁11Bに設けられている。本実施形態のインテークマニホールド10では、このコネクタ12を介して、サージタンク11の内部に空気が導入される。コネクタ12の一端はサージタンク(詳しくは、その側周壁11B)の内壁面から突出する突出部20を構成している。この突出部20は、サージタンク11の頂壁11Aおよび底壁11Cに沿う方向(
図3に矢印Xで示す方向)において延びている。コネクタ12における上記サージタンク11の外方側の部分12Aは、サージタンク11の側周壁11Bの外面から突出する形状をなしている。コネクタ12の外方側の部分12Aは、インテークマニホールド10の取り付けに際して、内燃機関の吸気管に接続される。
【0013】
複数の導出管13は筒状をなしている。複数の導出管13は、サージタンク11の内外を連通する態様で、同サージタンク11における上記コネクタ12からの空気の導入方向に沿って延びる壁部、詳しくは底壁11Cに接続されている。各導出管13の一端は、サージタンク11の内部(具体的には、底壁11Cの内面)で開口している。本実施形態では、上記サージタンク11の内部において各導出管13の開口部分が空気の導入方向(
図3に矢印Xで示す方向)に並ぶ態様で、複数の導出管13が配置されている。各導出管13はサージタンク11の外面に沿って略C字状で延びている。各導出管13の他端は、取付フランジ14の接続面14Aで各別に開口している。
【0014】
取付フランジ14は、各導出管13が並ぶ方向(
図2の左右方向)に延びる板状をなしている。この取付フランジ14を内燃機関(図示略)の外壁に固定することにより、インテークマニホールド10の各導出管13が内燃機関の各吸気ポートに接続されるようになっている。
【0015】
本実施形態のインテークマニホールド10では、吸気通路に吸入された空気がコネクタ12を介してサージタンク11内に導入される。そして、サージタンク11内に導入された空気は、各導出管13を介して導出されることによって内燃機関の各吸気ポートに分配供給される。
【0016】
本実施形態では、インテークマニホールド10の吸気抵抗を低減するために、コネクタ12の突出部20に、同突出部20の周壁が途切れた形状をなす部分である欠け部21が設けられている。以下、欠け部21を有する突出部20について詳しく説明する。
【0017】
図3~
図5に示すように、突出部20は最も下方側の部分が途切れた形状の断面C字状をなしている。そして、突出部20における最も下方側の部分、すなわち突出部20が途切れた部分が欠け部21になっている。この欠け部21は、突出方向(
図3中に矢印Xで示す方向)の全長にわたって突出部20の周壁が途切れた形状をなしている。
【0018】
ここで、
図3および
図4に示すように、側周壁11Bの内壁面におけるコネクタ12の開口部分OP1と、導出管13のサージタンク11内における開口部分OP2とを直線状に繋いだ領域を「仮想領域VR」とする。本実施形態では、上記欠け部21は、突出部20における上記仮想領域VRに含まれる部分に設けられている。
【0019】
なお
図3および
図4には、4つの導出管13のうち、最もコネクタ12側(
図3における左側)に設けられた導出管13についての仮想領域VRを示している。本実施形態では、上述した「突出部20における仮想領域VRに含まれる部分に欠け部21が設けられる」といった仮想領域VRと欠け部21との位置関係が、4本の導出管13に対応する4つの仮想領域VRの全てについて満たされている。
【0020】
以下、本実施形態のインテークマニホールド10による作用効果について説明する。
インテークマニホールド10は、サージタンク11の内部に、コネクタ12の一端が側周壁11Bの内壁面から突出した部分である突出部20を有している。そのためインテークマニホールド10では、突出部20が設けられない比較例のインテークマニホールドと比較して、上記突出部20が設けられる分だけサージタンク11の内面の表面積が大きくなっている。これにより、本実施形態のインテークマニホールド10は、サージタンク11の内部において吸気脈動が減衰され易い構造になっている。そのため、インテークマニホールド10についての振動および騒音を抑制する性能(いわゆるNV性能)を高くすることができる。そして、こうしたインテークマニホールド10を採用することにより、同インテークマニホールド10を含む内燃機関の吸気系についての振動および騒音を抑制する性能(いわゆるNV性能)を高くすることができる。
【0021】
ここで、コネクタ12の突出部20は、サージタンク11の頂壁11Aおよび底壁11Cに沿う方向(
図3中に矢印Xで示す方向)において延びている。そのため、
図3中に矢印F1で示すように、上記突出部20を含むコネクタ12を介してサージタンク11の内部に導入される空気(詳しくは、その主流)は、同サージタンク11の底壁11Cに沿う方向に流れるようになる。こうしたインテークマニホールド10では、上記突出部20の周壁が、コネクタ12から各導出管13に向かう空気の流れを遮る壁部になるおそれがある。
【0022】
この点をふまえて、本実施形態のインテークマニホールド10では、突出部20における最も下方側の部分、すなわち前記導出管13が開口している底壁11C側に配置される部分に、同突出部20の周壁が途切れた部分である欠け部21が設けられている。そのため、
図3および
図4中に矢印F2で示すように、コネクタ12を通じてサージタンク11内に導入される空気の一部を、同コネクタ12の突出部20における欠け部21を介して、同突出部20の外部に漏らすことができる。そして、欠け部21から突出部20の外部に漏れる空気は下方に向けて、詳しくは各導出管13が開口している底壁11Cに向けて流れるようになる。このように本実施形態のインテークマニホールド10によれば、サージタンク11の内部に上記突出部20が設けられるとはいえ、突出部20を含むコネクタ12から各導出管13に向かう空気の流れが同突出部20によって邪魔され難い構造にすることができる。
【0023】
そして、本実施形態のインテークマニホールド10によれば、突出部20を含むコネクタ12を介してサージタンク11内に導入される空気の一部を、同突出部20に設けられた欠け部21を通じて各導出管13に向かう態様で流すことができる。これにより、インテークマニホールド10の吸気抵抗を低減することができる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)インテークマニホールド10についてのNV性能の向上と吸気抵抗の低減との両立を図ることができる。
【0025】
(2)欠け部21を、突出部20の突出方向の全長にわたって同突出部20の周壁が途切れた形状にした。これにより、突出部20の周方向における欠け部21が設けられた部分においては、コネクタ12から導出管13に向かう空気の流れが同突出部20によって邪魔されなくなる。したがって、インテークマニホールド10の吸気抵抗を好適に低減することができる。
【0026】
(3)インテークマニホールド10では、複数の導出管13の上記サージタンク11の内部における開口部分がコネクタ12からの空気の導入方向において並ぶ態様で、各導出管13が底壁11Cに各別に接続されている。一般に、多気筒の内燃機関を中心に構成される機関システムは、単気筒の内燃機関を中心に構成される機関システムと比較して、NV性能についての要求レベルが高い。本実施形態によれば、複数の導出管13を有するインテークマニホールド10、すなわち多気筒内燃機関に適用されるインテークマニホールド10において、突出部20を設けることによってNV性能を向上させることができる。しかも、そうした突出部20に欠け部21を設けることにより、欠け部21が設けられていないものと比較して、インテークマニホールド10の吸気抵抗を低減することができる。
【0027】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0028】
・
図6に一例を示すように、突出部30の突出方向における一部のみを、同突出部30の周壁が途切れた形状の欠け部31にしてもよい。
図6に示す例では、突出部30の突出方向における突端側の部分のみが、同突出部30の周壁が途切れた形状の欠け部31になっている。同構成によれば、突出部30の周方向における欠け部31が設けられた部分においては、同突出部30を含むコネクタから各導出管13に向かう空気の流れが同突出部30によって邪魔され難くすることができる。
【0029】
・突出部20の周壁が途切れた形状をなす欠け部として、同突出部20に一つまたは複数の貫通孔を設けるようにしてもよい。同構成において、欠け部21を構成する貫通孔の形状としては、例えば断面円形状や断面矩形状、スリット状など、任意の形状を採用することができる。
【0030】
・上記実施形態にかかるインテークマニホールドは、2本の導出管を有するインテークマニホールドや、3本の導出管を有するインテークマニホールド、5本以上の導出管を有するインテークマニホールドにも適用することができる。
【0031】
・上記実施形態にかかるインテークマニホールドは、複数の導出管を有するインテークマニホールドに限らず、導出管を1本のみ有するインテークマニホールド、すなわち単気筒の内燃機関に適用されるインテークマニホールドにも適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10…インテークマニホールド
11…サージタンク
11A…頂壁
11B…側周壁
11C…底壁
12…コネクタ
13…導出管
14…取付フランジ
20,30…突出部
21,31…欠け部