(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】補助ユニット
(51)【国際特許分類】
H01H 73/20 20060101AFI20240521BHJP
H01H 83/02 20060101ALI20240521BHJP
H01R 4/34 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01H73/20 B
H01H83/02 D
H01R4/34
(21)【出願番号】P 2021020165
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 高峰
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-177870(JP,A)
【文献】特開2000-299142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/20
H01H 83/02
H01R 4/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路遮断器に取り付けられる補助ユニットであって、
前記回路遮断器の端子板に接続される接続導体と、
前記接続導体に形成された挿通穴に挿通され、前記端子板に形成されたねじ穴に嵌め合わされる端子ねじと、
前記挿通穴に挿通された前記端子ねじの頭部側に配置され、前記端子ねじが前記挿通穴から脱落しようとしても、前記端子ねじが前記挿通穴から抜けきる前に、前記端子ねじの頭部又は座金に干渉して前記端子ねじの脱落を阻止するフレーム部材と、を備えることを特徴とする補助ユニット。
【請求項2】
回路遮断器に取り付けられる補助ユニットであって、
前記回路遮断器の端子板に接続される接続導体と、
前記接続導体に形成された挿通穴に挿通され、前記端子板に形成されたねじ穴に嵌め合わされる端子ねじと、
前記補助ユニットのケースに固定され、前記挿通穴に挿通された前記端子ねじの頭部側に配置され、前記端子ねじが前記挿通穴から脱落しようとしても、前記端子ねじが前記挿通穴から抜けきる前に、前記端子ねじの頭部又は座金に干渉して前記端子ねじの脱落を阻止するフレーム部材と、を備えることを特徴とする補助ユニット。
【請求項3】
回路遮断器に取り付けられる補助ユニットであって、
前記回路遮断器の端子板に接続される接続導体と、
前記接続導体に形成された挿通穴に挿通され、前記端子板に形成されたねじ穴に嵌め合わされる端子ねじと、
前記挿通穴に挿通された前記端子ねじの頭部側に配置され、前記端子ねじが前記挿通穴から脱落しようとしても、前記端子ねじが前記挿通穴から抜けきる前に、前記端子ねじの頭部又は座金に干渉して前記端子ねじの脱落を阻止するフレーム部材と、
前記回路遮断器に嵌め合わされ、前記端子板に前記接続導体が接続される位置まで前記ねじ穴の軸方向と平行に案内するスライド構造と、を備え、
前記スライド構造を介して前記回路遮断器に嵌め合わされた初期位置では、前記端子ねじの座面が前記接続導体に接触した状態で、前記端子ねじの先端が前記ねじ穴から離間していることを特徴とする補助ユニット。
【請求項4】
前記スライド構造を介して前記回路遮断器に嵌め合わされ、前記端子板に前記接続導体が接続される位置まで案内された締結開始位置では、前記頭部が遊動可能な状態で前記フレーム部材に保持されていることを特徴とする請求項
3に記載の補助ユニット。
【請求項5】
前記スライド構造は、前記回路遮断器に形成された案内凹部に対して嵌り合う案内凸部であることを特徴とする請求項
3又は4に記載の補助ユニット。
【請求項6】
前記フレーム部材は、前記挿通穴の軸方向に延び、前記端子ねじを締結するための工具を挿通可能な筒状に形成されていることを特徴とする請求項1~
5の何れか一項に記載の補助ユニット。
【請求項7】
前記頭部の外径は、前記フレーム部材の内径よりも小さく、
前記座金は、軸直角方向の最大寸法が前記フレーム部材の内径よりも大きいことを特徴とする請求項
6に記載の補助ユニット。
【請求項8】
前記頭部の外径は、前記フレーム部材の内径よりも大きく、
前記端子ねじは、先端側にねじ山のない円筒状の棒先部が形成されていることを特徴とする請求項
6に記載の補助ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、回路遮断器に対する外部付属装置として、電力計測等を行なう補助ユニットを接続するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路遮断器と補助ユニットとの接続を、端子ねじによって行なうものもあるが、配電盤内に取り付けられた回路遮断器に対して補助ユニットを接続しなければならない場合、端子ねじの脱落が生じる可能性がある。
本発明の目的は、回路遮断器に接続される補助ユニットにおいて、端子ねじの脱落を阻止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る補助ユニットは、回路遮断器に取り付けられる補助ユニットであって、回路遮断器の端子板に接続される接続導体と、接続導体に形成された挿通穴に挿通され、端子板に形成されたねじ穴に嵌め合わされる端子ねじと、挿通穴に挿通された端子ねじの頭部側に配置され、端子ねじが挿通穴から脱落しようとしても、端子ねじが挿通穴から抜けきる前に、端子ねじの頭部又は座金に干渉して端子ねじの脱落を阻止するフレーム部材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、端子ねじが挿通穴から脱落しようとしても、端子ねじが挿通穴から抜けきる前に、端子ねじの頭部又は座金に干渉するため、端子ねじの挿通穴からの脱落を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】接続導体、端子ねじ、フレーム部材の断面図である。
【
図7】補助ユニットの取り付け手順を示す図である。
【
図11】補助ユニットの斜視図である(第二実施形態)。
【
図12】接続導体、端子ねじ、フレーム部材の断面図である(第二実施形態)。
【
図13】接続手順を示す図である(第二実施形態)。
【
図14】端子ねじの脱落阻止を説明する図である(第二実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《第一実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
図1は、回路遮断器の斜視図である。
図2は、回路遮断器の正面図である。
回路遮断器11は、奥行方向の奥側を取り付ける面とし、図示しない配電盤などに取り付けられる。回路遮断器11は、例えば過負荷や短絡などの要因で二次側の回路に異常な過電流が流れたときに電路を開放し、一次側からの電源供給を遮断する。ここでは一例として三極品を示す。
【0010】
縦方向の一方側は一次側で、他方側は二次側であり、一次側も二次側も何れも端子ねじ12によって電路に接続されるが、二次側は後述する補助ユニット31を接続するため、端子ねじ12を取り外してある。端子ねじ12は、端子板13のねじ穴14に嵌め合わされる。端子板13は、幅方向に沿って三つ並んでいる。
回路遮断器11は、樹脂製のケース15を備えている。ケース15には、縦方向の端面において、端子板13同士の間に、奥行方向に沿って延びる案内凹部16が形成されている。案内凹部16は、縦方向の本体内側が幅方向の両側に拡張されており、奥行方向から見て略T字状に形成されている。ケース15には、縦方向の端面において、幅方向の両端に、奥行方向に沿って延びる案内凹部17が形成されている。案内凹部17は、縦方向の本体内側が幅方向の本体内側に拡張されており、奥行方向から見て略L字状に形成されている。ここでは説明を省略するが、一次側にも同様の案内凹部が形成されており、補助ユニット31を接続可能になっている。
【0011】
図3は、端子板の断面図である。
端子板13は、導電性を有する金属であり、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成されており、奥行方向の手前側が露出するように支持されている。端子板13は、縦方向の本体内側が略直角に奥行方向の奥側へと曲げられており、回路遮断器11の内部回路に接続されている。端子板13の裏面側には、絞り加工によって奥行方向の奥側に向かって凸となるボス21が形成されている。ボス21は、奥行方向に貫通しており、その内周面に端子ねじ12の雄ねじ部と嵌り合う雌ねじ部が形成されることでねじ穴14となる。ケース15には、端子板13の裏面側に、奥行方向の奥側に向かって凹となる丸穴22が形成されている。丸穴22は、ねじ穴14に端子ねじ12を嵌め合わせたときに、端子ねじ12の先端側が進入するスペースとなる。
【0012】
図4は、補助ユニットの斜視図である。
図中の(a)は、補助ユニット31を奥行方向の手前側から見た図であり、図中の(b)は、補助ユニット31を奥行方向の奥側から見た図である。縦方向の一方側は一次側で、他方側は二次側であり、一次側が回路遮断器11に接続され、二次側が電路に接続される。
補助ユニット31は、回路遮断器11に接続される外部付属装置であり、ここでは一例として電力計測を行なうモジュールとするが、他にも変流器、センサ、リレー等、回路遮断器11の端子部に接続可能であれば、任意の外部付属装置に適用できる。
補助ユニット31は、接続導体32と、端子ねじ33と、フレーム部材34と、を備えており、夫々が幅方向に沿って三つ並んでいる。
【0013】
図5は、補助ユニットの裏面図である。
補助ユニット31は、樹脂製のケース35を備えている。ケース35には、縦方向における接続側の端面において、接続導体32同士の間に、奥行方向に沿って延び案内凹部16に嵌り合う案内凸部36が形成されている。案内凸部36は、縦方向の本体外側が幅方向の両側に拡張されており、奥行方向から見て略T字状に形成されている。ケース35には、縦方向における接続側の端面において、幅方向の両端に、奥行方向に沿って延び案内凹部17に嵌り合う案内凸部37が形成されている。案内凸部37は、縦方向の本体外側が幅方向の本体内側に拡張されており、奥行方向から見て略L字状に形成されている。案内凹部16に嵌り合う案内凸部36、及び案内凹部17に嵌り合う案内凸部37が、「スライド構造」に対応する。ここでは説明を省略するが、二次側にも前述したような案内凹部が形成されており、他の補助ユニット31を接続可能になっている。
【0014】
図6は、接続導体、端子ねじ、フレーム部材の断面図である。
接続導体32は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成されており、縦方向の本体外側に突出した状態で支持されている。接続導体32は、補助ユニット31の内部を通過し、縦方向の他方側となる二次側が電路に接続される。接続導体32には、奥行方向に貫通した円形の挿通穴38が形成されている。
端子ねじ33は、導電性を有する金属であり、頭部41と、首下部42と、雄ねじ部43と、ばね座金44と、角座金45(座金)と、を備える。
【0015】
頭部41は、ここでは一例としてナベ形にしているが、形状は問わない。頭部41の頂面には、プラスドライバやマイナスドライバ等の工具で回すための溝や穴が形成されている。
首下部42には、ねじ山が形成されておらず、頭部41の側から順に、ばね座金44及び角座金45が組み込まれている。首下部42における軸方向の長さは、ばね座金44の自由高さ、及び角座金45の高さの加算値よりも大きく、且つばね座金44の厚さ、角座金45の高さ、及び接続導体32の厚さの加算値よりも小さい。ばね座金44の自由高さとは、非圧縮時の高さであり、ばね座金44の厚さの約2倍である。
【0016】
雄ねじ部43には、ねじ穴14に嵌り合うねじ山が形成されており、ここでは一例として外径(呼び径)を5mmにしてある。雄ねじ部43の外径は、接続導体32の挿通穴38よりも小さく、角座金45の内径よりも大きい。
ばね座金44は、切れ目のある略円環状に形成されており、軸方向の圧縮に対して反発することで、端子ねじ33を締結したときの緩みを抑制する。ばね座金44の外径は頭部41の外径よりも小さい。
角座金45は、四角形であり、端子ねじ33を締結したときに接続導体32を押さえ付ける。角座金45における縦方向の寸法及び幅方向の寸法は、何れも頭部41の外径よりも大きい。
【0017】
フレーム部材34は、ケース35に固定されており、挿通穴38に挿通された端子ねじ33の頭部41側に配置されている。フレーム部材34は、挿通穴38の軸方向に延び、端子ねじ33を締結するための工具を挿通可能な筒状に形成されている(
図4の(b)参照)。フレーム部材34の内径は、頭部41の外径よりも大きく、且つ角座金45における縦方向の寸法及び幅方向の寸法よりも小さい。したがって、頭部41はフレーム部材34の内側を通過できるが、角座金45はフレーム部材34と干渉し、フレーム部材34の内側を通過できない。フレーム部材34の内側には、プラスドライバやマイナスドライバ等、端子ねじ33を締結するための工具が差し込まれる。
【0018】
図7は、補助ユニットの取り付け手順を示す図である。
図中の(a)は、回路遮断器11の二次側に補助ユニット31の一次側を対向させた状態を示している。
図中の(b)は、回路遮断器11の二次側に補助ユニット31の一次側を取り付けるために、案内凹部16の上端に案内凸部36の下端を位置合わせし、且つ案内凹部17の上端に案内凸部37の下端を位置合わせした状態を示している。これは回路遮断器11に補助ユニット31を嵌め合わせるための初期位置となる。
【0019】
図中の(c)は、案内凹部16に案内凸部36が嵌り合い、且つ案内凹部17に案内凸部37が嵌り合っている状態で、補助ユニット31を奥行方向の奥側へ押し下げた状態を示している。図中の(b)から(c)へ移行するとき、案内凹部16と案内凸部36との嵌り合い、及び案内凹部17と案内凸部37との嵌り合いにより、補助ユニット31が奥行方向に沿ってスライドし、直動案内される。そして、回路遮断器11の端子板13に補助ユニット31の接続導体32が重なる位置まで案内され、補助ユニット31の取り付けが完了となる。
【0020】
図8は、接続手順を示す図である。
図中の(a)は、案内凹部16の上端に案内凸部36の下端を位置合わせし、且つ案内凹部17の上端に案内凸部37の下端を位置合わせした状態を示している(
図7の(b)参照)。この初期位置では、端子板13のねじ穴14と接続導体32の挿通穴38とが同軸上に配置されている。また、奥行方向の奥側が鉛直方向の下方であるとすると、端子ねじ33は奥行方向の奥側へと変位し、端子ねじ33の座面、つまり角座金45の座面が、接続導体32に接触する位置で止まる。このとき、角座金45の上面は、フレーム部材34の下端に対して十分な間隔をあけて離間しており、且つ雄ねじ部43の先端は、ねじ穴14に対して十分な間隔をあけて離間している。
【0021】
図中の(b)は、補助ユニット31を奥行方向の奥側へ押し下げた状態を示している(
図7の(c)参照)。図中の(a)から(b)へ移行するとき、雄ねじ部43の最初のねじ山がねじ穴14の最初のねじ山に当接すると、その位置からは補助ユニット31を奥行方向の奥側へと押し下げるほど、接続導体32に対して端子ねじ33が押し上げられてゆく。さらに、補助ユニット31を奥行方向の奥側へと押し下げると、回路遮断器11の端子板13に補助ユニット31の接続導体32が重なる。このように、雄ねじ部43の最初のねじ山がねじ穴14の最初のねじ山に乗り、且つ端子板13に接続導体32が乗ったときに、端子ねじ33の締結を開始できる締結開始位置となる。
【0022】
この締結開始位置では、頭部41が遊動可能な状態でフレーム部材34に保持されている。具体的には、雄ねじ部43の先端側が挿通穴38の内側に残った状態で、頭部41がフレーム部材34の内側に進入しており、径方向外側のフレーム部材34に対して遊び(隙間)が設けられている。したがって、端子ねじ33は軸周りに回転可能であるが、倒れそうになると頭部41がフレーム部材34の内周面にもたれ掛ることで、奥行方向と略平行な姿勢が維持される。また、端子板13と接続導体32とが接触する前に、角座金45とフレーム部材34とが接触すると、端子板13と接続導体32との接触に支障を来すことになる。したがって、締結開始位置では、角座金45とフレーム部材34との間にも、奥行方向に遊び(隙間)が設けられている。
【0023】
図中の(c)は、端子ねじ33を締結した状態を示す。図中の(b)から(c)へ移行するとき、フレーム部材34にプラスドライバやマイナスドライバ等の工具を差し込み、頭部41を時計回りに回してゆく。雄ねじ部43の最初のねじ山がねじ穴14の最初のねじ山に噛み合うと、頭部41を回すほど端子ねじ33が奥行方向の奥側へと変位し、端子板13と角座金45との距離が狭められてゆく。そして、頭部41がばね座金44及び角座金45を介して、接続導体32を端子板13に締め付けることにより、端子ねじ33が締結される。こうして、回路遮断器11に対する補助ユニット31の電気的な接続が完了となる。
【0024】
《作用》
次に、第一実施形態の主要な作用について説明する。
回路遮断器11に対する外部付属装置として、電力計測等を行なう補助ユニットを接続することがあるが、例えば配電盤内に取り付けられた回路遮断器11に対して接続しなければならない場合、端子ねじの脱落が生じる可能性がある。
そこで第一実施形態では、補助ユニット31に端子ねじ33の脱落を阻止するフレーム部材34を設けた。フレーム部材34は、挿通穴38に挿通された端子ねじ33の頭部41側に配置されている。そして、端子ねじ33が挿通穴38から脱落しようとすると、端子ねじ33が挿通穴38から抜けきる前に、フレーム部材34が端子ねじ33の頭部41又は角座金45に干渉して端子ねじ33の脱落を阻止することができる。
【0025】
図9は、端子ねじの脱落阻止を説明する図である。
端子ねじ33は、接続導体32の挿通穴38に挿通されている。補助ユニット31の姿勢によっては、端子ねじ33が挿通穴38とフレーム部材34との間から、縦方向や幅方向に脱落しそうになる。しかしながら、端子ねじ33の雄ねじ部43が挿通穴38から抜けきる前に、丸い破線で示すように、端子ねじ33の頭部41がフレーム部材34に干渉するため、端子ねじ33の脱落を阻止することができる。
また、補助ユニット31を逆さにした場合、頭部41はフレーム部材34の内側に進入するが、角座金45がフレーム部材34の下端に干渉するため、やはり端子ねじ33がフレーム部材34の内側を通って脱落することを阻止できる。
【0026】
また、補助ユニット31は、案内凸部36及び案内凸部37が、夫々、回路遮断器11の案内凹部16及び案内凹部17に嵌め合わされることで、端子板13に接続導体32が重なる位置までねじ穴14の軸方向と平行に案内される。このスライド構造を介して回路遮断器11に嵌め合わされた初期位置では、端子ねじ33の座面、つまり角座金45の座面が接続導体32に接触した状態で、端子ねじ33の先端がねじ穴14から離間している(
図8の(a)参照)。これにより、スライド機構を介して嵌め合わせる際に、端子ねじ33が端子板13に干渉することを避けられるため、双方をスムーズに嵌め合わせることが可能となる。
【0027】
また、補助ユニット31は、端子板13に接続導体32が重なる位置まで案内された締結開始位置では、頭部41が遊動可能な状態でフレーム部材34に保持されている(
図8の(b)参照)。これにより、端子ねじ33は軸周りに回転が許容され、プラスドライバやマイナスドライバ等の工具によって締結が可能となる。また、端子板13と接続導体32とが接触する前に、角座金45とフレーム部材34とが接触することがないので、端子板13と接続導体32との接触に支障を来すことがない。
また、回路遮断器11の案内凹部16及び案内凹部17に嵌り合う案内凸部36及び案内凸部37によって、スライド構造が構成される。これにより、簡易的な構造で補助ユニット31を容易に直動案内することができる。
【0028】
また、フレーム部材34は、挿通穴38の軸方向に延び、端子ねじ33を締結するための工具を挿通可能な筒状に形成されている。これにより、フレーム部材34の内側にプラスドライバやマイナスドライバ等の工具を差し込み、頭部41を介して端子ねじ33の締結を行なうことができる。
また、頭部41の外径がフレーム部材34の内径よりも小さい場合、角座金45は、縦方向の寸法及び幅方向の寸法がフレーム部材34の内径よりも大きい。これにより、補助ユニット31を逆さにしたとしても、角座金45がフレーム部材34の下端に干渉するため、端子ねじ33がフレーム部材34の内側を通って脱落することを阻止できる。
【0029】
ここで、比較例について説明する。
図10は、比較例を示す図である。
回路遮断器の端子板51には、挿通穴52が形成されており、端子板51の裏面には、ナット53が固定されている。補助ユニットの接続導体54には、挿通穴55が形成されており、挿通穴55には、端子ねじ56が組み込まれている。端子ねじ56は、頭部57と、首下部58と、雄ねじ部59と、を備える。首下部58には、ねじ山が形成されておらず、雄ねじ部59の外径よりも小径にしている。また、雄ねじ部59を挿通穴52よりも小径にし、且つ挿通穴55よりも大径にしている。これにより、端子ねじ56が接続導体54から脱落することを阻止できる。
【0030】
しかしながら、この比較例では次のような条件を満たす必要がある。まず、首下部58における軸方向の寸法L1を、接続導体54の板厚t1よりも大きくする。これは、接続導体54と雄ねじ部59との干渉を回避し、端子ねじ56の遊動(遊び)を許容するためである。また、端子板51の板厚t2を、雄ねじ部59における軸方向の寸法L2よりも大きくする。これは、回路遮断器に補助ユニットを組み合わせる際に、雄ねじ部59における最初のねじ山がナット53の最初のねじ山に乗っている状態で、端子板51に接続導体54を重ねることができるようにするためである。そのうえで、L1+L2を、t1+t2よりも大きくする。これは、ナット53に雄ねじ部59を嵌め合わせる端子ねじ56の締結量を確保するためである。このように、多くの条件を満たす必要があり、設計の自由度が制限されてしまう。第一実施形態では、より簡易的な構造で、端子ねじ33の脱落を阻止することができる。
【0031】
《変形例》
第一実施形態では、スライド機構として回路遮断器11側に案内凹部16及び案内凹部17を設け、補助ユニット31側に案内凸部36及び案内凸部37を設けたが、これに限定されるものではない。すなわち、スライド機構は補助ユニット31を奥行き方向に沿って案内できればよいので、回路遮断器11側に案内凸部を設け、これに嵌り合う案内凹部を補助ユニット31側に設けてもよい。
第一実施形態では、角座金45における縦方向の寸法及び幅方向の寸法を、フレーム部材34の内径よりも大きくしているが、これに限定されるものではない。すなわち、端子ねじ33の脱落を阻止できればよいので、軸直角方向の最大寸法がフレーム部材34の内径よりも大きければよい。また、形状も四角形である必要はなく、任意の形状にすることができる。
【0032】
《第二実施形態》
《構成》
第二実施形態は、端子ねじのサイズを大きくしたものであり、それ以外は前述した第一実施形態と同様であるため、共通する構成については同一符号を付し、説明を省略する。
図11は、第二実施形態における補助ユニットの斜視図である。
図中の(a)は、補助ユニット31を奥行方向の手前側から見た図であり、図中の(b)は、補助ユニット31を奥行方向の奥側から見た図である。縦方向の一方側は一次側で、他方側は二次側であり、一次側が回路遮断器11に接続され、二次側が電路に接続される。
【0033】
図12は、第二実施形態における接続導体、端子ねじ、フレーム部材の断面図である。
端子ねじ63は、導電性を有する金属であり、頭部71と、雄ねじ部72と、棒先部73と、ばね座金74と、座金75(座金)と、を備える。
頭部71は、ここでは一例としてナベ形にしているが、形状は問わない。頭部71の頂面には、プラスドライバやマイナスドライバ等の工具で回すための溝や穴が形成されている。頭部71の外径は、フレーム部材34の内径よりも大きい。したがって、頭部71はフレーム部材34の内側を通過できない。端子ねじ63の首下側には、頭部71の側から順に、ばね座金74及び座金75が組み込まれている。
【0034】
雄ねじ部72には、ねじ穴14に嵌り合うねじ山が形成されており、ここでは一例として外径(呼び径)を8mmにしてある。雄ねじ部72の外径は、接続導体32の挿通穴38よりも小さい。
棒先部73には、ねじ山が形成されておらず、ねじ穴14よりも小径となる円筒状に形成されている。
ばね座金74は、切れ目のある略円環状に形成されており、軸方向の圧縮に対して反発することで、端子ねじ63を締結したときの緩みを抑制する。ばね座金74の外径は頭部71の外径よりも小さい。
座金75は、円環状であり、端子ねじ63を締結したときに接続導体32を押さえ付ける。座金75の外径寸法は、頭部71の外径よりも大きい。
【0035】
図13は、第二実施形態における接続手順を示す図である。
図中の(a)は、案内凹部16の上端に案内凸部36の下端を位置合わせし、且つ案内凹部17の上端に案内凸部37の下端を位置合わせした状態を示している(
図7の(b)参照)。この初期位置では、端子板13のねじ穴14と接続導体32の挿通穴38とが同軸上に配置されている。また、奥行方向の奥側が鉛直方向の下方であるとすると、端子ねじ63は奥行方向の奥側へと変位し、端子ねじ63の座面、つまり座金75の座面が、接続導体32に接触する位置で止まる。このとき、頭部71の上面は、フレーム部材34の下端に対して十分な間隔をあけて離間しており、且つ雄ねじ部72の下端は、ねじ穴14に対して十分な間隔をあけて離間している。
【0036】
図中の(b)は、補助ユニット31を奥行方向の奥側へ押し下げた状態を示している(
図7の(c)参照)。図中の(a)から(b)へ移行するとき、まず棒先部73がねじ穴14の内側へと進入する。そして、雄ねじ部72の最初のねじ山がねじ穴14の最初のねじ山に当接すると、その位置からは補助ユニット31を奥行方向の奥側へと押し下げるほど、接続導体32に対して端子ねじ63が押し上げられてゆく。さらに、補助ユニット31を奥行方向の奥側へと押し下げると、回路遮断器11の端子板13に補助ユニット31の接続導体32が重なる。このように、雄ねじ部72の最初のねじ山がねじ穴14の最初のねじ山に乗り、且つ端子板13に接続導体32が乗ったときに、端子ねじ63の締結を開始できる締結開始位置となる。
【0037】
この締結開始位置では、頭部71が遊動可能な状態でねじ穴14に保持されている。具体的には、棒先部73がねじ穴14の内側に進入し、且つ雄ねじ部72の先端側が挿通穴38の内側に残った状態で、頭部71がフレーム部材34の下端に接近している。したがって、端子ねじ63は軸周りに回転可能であるが、棒先部73がねじ穴14に引っ掛かることで、奥行方向と略平行な姿勢が維持される。また、端子板13と接続導体32とが接触する前に、頭部71とフレーム部材34とが接触すると、端子板13と接続導体32との接触に支障を来すことになる。したがって、締結開始位置では、頭部71とフレーム部材34との間にも、奥行方向に遊び(隙間)が設けられている。
【0038】
図中の(c)は、端子ねじ63を締結した状態を示す。図中の(b)から(c)へ移行するとき、フレーム部材34にプラスドライバやマイナスドライバ等の工具を差し込み、頭部71を時計回りに回してゆく。雄ねじ部72の最初のねじ山がねじ穴14の最初のねじ山に噛み合うと、頭部71を回すほど端子ねじ63が奥行方向の奥側へと変位し、端子板13と座金75との距離が狭められてゆく。そして、頭部71がばね座金74及び座金75を介して、接続導体32を端子板13に締め付けることにより、端子ねじ63が締結される。こうして、回路遮断器11に対する補助ユニット31の電気的な接続が完了となる。
【0039】
《作用》
次に、第二実施形態の主要な作用効果について説明する。
頭部41の外径がフレーム部材34の内径よりも大きい場合、端子ねじ63は、先端側にねじ山のない棒先部73が形成されている。これにより、締結開始位置では、棒先部73が遊動可能な状態でねじ穴14に保持される。したがって、端子ねじ63は軸周りに回転可能であるが、棒先部73がねじ穴14に引っ掛かることで、奥行方向と略平行な姿勢を維持することができる。また、補助ユニット31の姿勢によっては、端子ねじ63が挿通穴38とフレーム部材34との間から、縦方向や幅方向に脱落しそうになるが、棒先部73が挿通穴38に引っ掛かるため、端子ねじ63の脱落を阻止することができる。
【0040】
図14は、第二実施形態における端子ねじの脱落阻止を説明する図である。
端子ねじ63は、接続導体32の挿通穴38に挿通されている。補助ユニット31の姿勢によっては、端子ねじ63が挿通穴38とフレーム部材34との間から、縦方向や幅方向に脱落しそうになる。しかしながら、端子ねじ63の雄ねじ部72が挿通穴38から抜けきる前に、棒先部73が挿通穴38に引っ掛かるか、又は端子ねじ63の頭部71がフレーム部材34に干渉するため、端子ねじ63の脱落を阻止することができる。
また、補助ユニット31を逆さにした場合、頭部71がフレーム部材34の下端に干渉するため、やはり端子ねじ63がフレーム部材34の内側を通って脱落することを阻止できる。
他の作用効果については、前述した第一実施形態と同様である。
【0041】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0042】
11…回路遮断器、12…端子ねじ、13…端子板、14…ねじ穴、15…ケース、16…案内凹部、17…案内凹部、21…ボス、22…丸穴、31…補助ユニット、32…接続導体、33…端子ねじ、34…フレーム部材、35…ケース、36…案内凸部、37…案内凸部、38…挿通穴、41…頭部、42…首下部、43…雄ねじ部、44…ばね座金、45…角座金、51…端子板、52…挿通穴、53…ナット、54…接続導体、55…挿通穴、56…端子ねじ、57…頭部、58…首下部、59…雄ねじ部、63…端子ねじ、71…頭部、72…雄ねじ部、73…棒先部、74…ばね座金、75…座金