(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】障害物検知システム
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240521BHJP
B66F 9/12 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B66F9/24 L
B66F9/12 D
(21)【出願番号】P 2021023225
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】岸田 匡弘
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-502861(JP,A)
【文献】特開2006-076727(JP,A)
【文献】特開2016-013887(JP,A)
【文献】特開2002-179396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0287405(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B66F 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両の周囲に存在する障害物を検知する障害物検知システムにおいて、
前記産業車両の作業支援に使用されるオプションユニットが前記産業車両に取り付けられたかどうかを判定するオプション有無判定部と、
前記オプション有無判定部により前記オプションユニットが前記産業車両に取り付けられたと判定されたときに、前記障害物として検知することを許可しない障害物検知マスク範囲を設定する検知マスク範囲設定部と、
前記検知マスク範囲設定部により設定された前記障害物検知マスク範囲に基づいて、前記障害物として検知することを許可する障害物検知エリアを決定する検知エリア決定部と、
前記検知エリア決定部により決定された前記障害物検知エリアにおいて前記障害物を検知する障害物検知部とを備え、
前記検知マスク範囲設定部は、前記オプションユニットを含む領域を前記障害物検知マスク範囲として設定する障害物検知システム。
【請求項2】
前記産業車両に対する前記オプションユニットの位置を検出するオプション位置検出部を更に備え、
前記検知マスク範囲設定部は、前記オプション位置検出部により検出された前記産業車両に対する前記オプションユニットの位置に応じて、前記障害物検知マスク範囲を変更する請求項1記載の障害物検知システム。
【請求項3】
前記オプションユニットには、検出信号を出力するセンサが固定されており、
前記オプション有無判定部は、前記センサの検出信号に基づいて、前記オプションユニットが前記産業車両に取り付けられたかどうかを判定する請求項1または2記載の障害物検知システム。
【請求項4】
前記オプション有無判定部による判定結果に応じた通知を行う通知部を更に備え、
前記通知部は、前記オプション有無判定部において前記センサの検出信号を取得しないときは、前記オプションユニットが前記産業車両に取り付けられていない旨の通知を行う請求項3記載の障害物検知システム。
【請求項5】
前記オプション有無判定部は、前記オプションユニットを使用する作業に関する情報に基づいて、前記オプションユニットが前記産業車両に取り付けられたかどうかを判定する請求項1~4の何れか一項記載の障害物検知システム。
【請求項6】
前記オプション有無判定部により前記オプションユニットが前記産業車両に取り付けられたと判定されると、前記オプションユニットの種類を識別するオプション識別部を更に備え、
前記検知マスク範囲設定部は、前記オプション識別部により識別された前記オプションユニットの種類に基づいて、前記オプションユニットを含む領域を前記障害物検知マスク範囲として設定する請求項1~5の何れか一項記載の障害物検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、環境マップを記憶する環境マップ記憶部と、環境マップに示された走行の妨げとなる障害物の中から時間の経過に伴って位置または有無が変化し得る一時障害物を抽出する一時障害物抽出部と、一時障害物に関するデータに基づいて、環境マップ記憶部に記憶された環境マップを更新する環境マップ更新部とを備えた無人作業システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自律走行用の産業車両においては、レーザセンサを用いて、産業車両の周囲に存在する障害物を検知することがある。しかし、産業車両の作業支援を行うためのオプションユニットが産業車両に取り付けられた状態では、オプションユニットにレーザセンサのレーザ点が当たると、オプションユニットが障害物であると検知される。例えばフォークリフトのフォークにオプションユニットの1つであるサヤフォークが装着された場合には、サヤフォークの高さによってはレーザセンサのレーザ点が当たるため、サヤフォークが障害物であると検知されてしまう。
【0005】
本発明の目的は、産業車両に取り付けられたオプションユニットを障害物として誤検知することを防止できる障害物検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、産業車両の周囲に存在する障害物を検知する障害物検知システムにおいて、産業車両の作業支援に使用されるオプションユニットが産業車両に取り付けられたかどうかを判定するオプション有無判定部と、オプション有無判定部によりオプションユニットが産業車両に取り付けられたと判定されたときに、障害物として検知することを許可しない障害物検知マスク範囲を設定する検知マスク範囲設定部と、検知マスク範囲設定部により設定された障害物検知マスク範囲に基づいて、障害物として検知することを許可する障害物検知エリアを決定する検知エリア決定部と、検知エリア決定部により決定された障害物検知エリアにおいて障害物を検知する障害物検知部とを備え、検知マスク範囲設定部は、オプションユニットを含む領域を障害物検知マスク範囲として設定する。
【0007】
このような障害物検知システムにおいては、オプションユニットが産業車両に取り付けられたと判定されると、障害物として検知することを許可しない障害物検知マスク範囲が設定される。そして、障害物検知マスク範囲に基づいて、障害物として検知することを許可する障害物検知エリアが決定され、その障害物検知エリアにおいて障害物の検知が行われる。ここで、オプションユニットを含む領域が障害物検知マスク範囲として設定される。これにより、産業車両に取り付けられたオプションユニットが障害物として誤検知されることが防止される。
【0008】
障害物検知システムは、産業車両に対するオプションユニットの位置を検出するオプション位置検出部を更に備え、検知マスク範囲設定部は、オプション位置検出部により検出された産業車両に対するオプションユニットの位置に応じて、障害物検知マスク範囲を変更してもよい。このような構成では、産業車両に対するオプションユニットの位置が変わると、そのオプションユニットの位置に応じて障害物検知マスク範囲が変更される。従って、現状のオプションユニットの位置に適した障害物検知マスク範囲が得られる。
【0009】
オプションユニットには、検出信号を出力するセンサが固定されており、オプション有無判定部は、センサの検出信号に基づいて、オプションユニットが産業車両に取り付けられたかどうかを判定してもよい。このような構成では、オプションユニットが産業車両に取り付けられた状態で、産業車両を始動させると、オプションユニットに固定されたセンサから検出信号が出力される。従って、センサの検出信号によって、オプションユニットが産業車両に取り付けられたか否かを容易に且つ確実に判定することができる。
【0010】
障害物検知システムは、オプション有無判定部による判定結果に応じた通知を行う通知部を更に備え、通知部は、オプション有無判定部においてセンサの検出信号を取得しないときは、オプションユニットが産業車両に取り付けられていない旨の通知を行ってもよい。このような構成では、産業車両を始動させても、センサの検出信号が取得されないときは、オプションユニットが産業車両に取り付けられていないと判定され、その旨の通知が行われる。従って、担当者は、オプションユニットの付け忘れを知ることができる。
【0011】
オプション有無判定部は、オプションユニットを使用する作業に関する情報に基づいて、オプションユニットが産業車両に取り付けられたかどうかを判定してもよい。このような構成では、産業車両が始動されると、オプションユニットを使用する作業に関する情報が産業車両に送られる。従って、オプションユニットに固定されたセンサが故障している場合、或いはオプションユニットにセンサが固定されていない場合でも、オプションユニットを使用する作業に関する情報によって、オプションユニットが産業車両に取り付けられたか否かを判定することができる。
【0012】
障害物検知システムは、オプション有無判定部によりオプションユニットが産業車両に取り付けられたと判定されると、オプションユニットの種類を識別するオプション識別部を更に備え、検知マスク範囲設定部は、オプション識別部により識別されたオプションユニットの種類に基づいて、オプションユニットを含む領域を障害物検知マスク範囲として設定してもよい。このような構成では、オプションユニットが産業車両に取り付けられると、オプションユニットの種類が識別され、オプションユニットの種類に応じた障害物検知マスク範囲が設定される。従って、オプションユニットの種類が複数あっても、オプションユニットの種類に適した障害物検知マスク範囲が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、産業車両に取り付けられたオプションユニットを障害物として誤検知することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る障害物検知システムの一部を具備したフォークリフトを示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る障害物検知システムを含む荷役制御システムを示す概略構成図である。
【
図3】
図1に示されたフォークリフトがトラックの荷台に対して入荷を行う様子を、障害物検知マスク範囲及び障害物検知エリアと共に示す平面図である。
【
図4】
図2に示されたコントローラにより実行されるオプション有無判定処理から障害物検知エリア決定処理までの手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示されたサヤフォークの高さ位置に応じて障害物検知マスク範囲が変わる様子を示す側面図である。
【
図6】
図4に示されたオプション有無判定処理から障害物検知エリア決定処理までの手順の変形例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る障害物検知システムを含む荷役制御システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る障害物検知システムの一部を具備したフォークリフトを示す側面図である。
図1において、本実施形態に係るフォークリフト1は、例えばバッテリー式の自律走行用フォークリフトである。フォークリフト1は、車体2と、この車体2の前側に配置された荷役装置3とを備えている。
【0017】
荷役装置3は、車体2の前部に傾動可能に支持されたアウターマスト4と、このアウターマスト4の車幅方向内側に配置されると共に、アウターマスト4に昇降可能に支持されたインナーマスト5と、このインナーマスト5に昇降可能に支持されたリフトブラケット6と、このリフトブラケット6に取り付けられた1対のL字型のフォーク7と、このフォーク7を昇降させるリフトシリンダ8と、フォーク7を傾動させるティルトシリンダ9とを備えている。
【0018】
1対のフォーク7は、フォークリフト1の左右方向に間隔を持って並んで配置されている。これらのフォーク7には、荷物(図示せず)が積載される。荷物は、パレット12(
図3参照)の上に置かれる。パレット12には、各フォーク7が差し込まれる2つのフォーク穴(図示せず)が設けられている。フォークリフト1は、各フォーク7によりパレット12を持ち上げた状態で、パレット12を運搬する。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態に係る障害物検知システムを含む荷役制御システムを示す概略構成図である。荷役制御システム10は、例えば
図3に示されるように、トラック11の荷台11aに対して荷役を実施するようにフォークリフト1を自動制御する装置である。具体的には、荷役制御システム10は、入荷時に荷物が置かれたパレット12をトラック11の荷台11aから降ろしたり、出荷時に荷物が置かれたパレット12をトラック11の荷台11aに積み込む。
【0020】
パレット12は、トラック11の荷台11aに2列で積まれる。フォークリフト1は、
図1及び
図3に示されるように、トラック11の荷台11aの手前側及び奥側に配置された2つのパレット12を同時に保持するための1対のサヤフォーク13を備えている。サヤフォーク13は、フォークリフト1に着脱可能に取り付けられるアタッチメントである。アタッチメントは、荷物及び作業内容等に合わせてフォークリフト1の作業支援を行うために使用されるオプションユニットの一つである。
【0021】
サヤフォーク13は、フォークリフト1の各フォーク7に装着される。サヤフォーク13は、フォーク7の前後長よりも長い。サヤフォーク13は、フォーク7の先端側部分に被せられた状態で固定される。1対のサヤフォーク13は、1対のフォーク7に対応して、フォークリフト1の左右方向に間隔を持って並んで配置されている。
【0022】
図2において、荷役制御システム10は、自律走行管理装置15と、送受信機16と、複数の超音波センサ17(
図1参照)と、揚高センサ18と、レーザセンサ19と、コントローラ20と、走行駆動部21と、荷役駆動部22とを備えている。送受信機16、超音波センサ17、揚高センサ18、レーザセンサ19、コントローラ20、走行駆動部21及び荷役駆動部22は、フォークリフト1に搭載されている。
【0023】
自律走行管理装置15は、例えば建屋内に設置されている。自律走行管理装置15は、フォークリフト1の自律走行に関する管理全般を行う。自律走行管理装置15は、特に図示はしないが、制御ユニット、入力器及び警報器等を備えている。
【0024】
入力器は、入荷スイッチ及び出荷スイッチ等を有している。入荷スイッチが操作されると、制御ユニットにおいて入荷作業モードが設定される。すると、制御ユニットによって、入荷作業に関する制御処理が実行されると共に、入荷作業モード情報がフォークリフト1に送信される。出荷スイッチが操作されると、制御ユニットにおいて出荷作業モードが設定される。すると、制御ユニットによって、出荷作業に関する制御処理が実行されると共に、出荷作業モード情報がフォークリフト1に送信される。
【0025】
入荷作業モード及び出荷作業モードは、フォークリフト1のフォーク7に装着されるオプションユニットであるサヤフォーク13を使用する作業モードである。このため、入荷作業モード情報及び出荷作業モード情報は、オプションユニットを使用する作業に関する情報に相当する。なお、入荷作業モード情報及び出荷作業モード情報を、総称して作業モード情報という。
【0026】
送受信機16は、自律走行管理装置15との間で無線通信による送受信を行う。超音波センサ17は、各サヤフォーク13に複数ずつ固定されている(
図1参照)。超音波センサ17は、サヤフォーク13からトラック11の荷台11aまでの距離を検出するセンサである。
【0027】
揚高センサ18は、フォークリフト1の車体2に対するフォーク7またはサヤフォーク13の高さ位置を検出するセンサである。揚高センサ18は、フォークリフト1に対するサヤフォーク13の位置を検出するオプション位置検出部を構成する。
【0028】
レーザセンサ19は、フォークリフト1の周囲にレーザを照射し、そのレーザの反射光を受光することで、フォークリフト1の周囲に存在する物体を検出する。フォークリフト1の周囲に存在する物体としては、例えば壁や柱等のように地図として登録される物体と、他車両等の移動体、荷物またはコンテナ等のように地図として登録されない物体とがある。レーザセンサ19としては、例えば2次元のレーザを照射する2Dタイプまたは3次元のレーザを照射する3Dタイプのレーザレンジファインダが用いられる。
【0029】
超音波センサ17、揚高センサ18及びレーザセンサ19は、フォークリフト1の電源が投入されることでフォークリフト1が始動されると、検出信号としての電気信号を出力する。
【0030】
コントローラ20は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ20は、オプション有無判定部31と、検知マスク範囲設定部32と、検知エリア決定部33と、通知部34と、障害物認識部35と、荷台姿勢算出部36と、走行制御部37と、荷役制御部38とを有している。
【0031】
ここで、自律走行管理装置15、送受信機16、超音波センサ17、揚高センサ18、レーザセンサ19、コントローラ20のオプション有無判定部31、検知マスク範囲設定部32、検知エリア決定部33、通知部34及び障害物認識部35は、本実施形態の障害物検知システム30を構成している。
【0032】
障害物検知システム30は、フォークリフト1により荷役を実施する際に、フォークリフト1の周囲に存在する障害物を検知する。フォークリフト1の周囲に存在する障害物は、他車両、荷物またはコンテナ等といった地図として登録されない物体(前述)である。そのような障害物は、位置及び有無が変化する。
【0033】
オプション有無判定部31は、自律走行管理装置15から送信された作業モード情報と超音波センサ17の検出信号とに基づいて、オプションユニットであるサヤフォーク13がフォークリフト1に取り付けられたかどうかを判定する。
【0034】
検知マスク範囲設定部32は、オプション有無判定部31によりサヤフォーク13がフォークリフト1に取り付けられたと判定されたときに、揚高センサ18により検出されたサヤフォーク13の高さ位置に基づいて、障害物として検知することを許可しない障害物検知マスク範囲を設定する。このとき、検知マスク範囲設定部32は、1対のサヤフォーク13を含む領域を障害物検知マスク範囲として設定する。また、検知マスク範囲設定部32は、サヤフォーク13の高さ位置に応じて、障害物検知マスク範囲を変更する。検知マスク範囲設定部32の機能については、後で詳述する。
【0035】
検知エリア決定部33は、検知マスク範囲設定部32により設定された検知マスク範囲に基づいて、障害物として検知することを許可する障害物検知エリアを決定する。検知エリア決定部33の機能については、後で詳述する。
【0036】
通知部34は、送受信機16と協働して、オプション有無判定部31による判定結果に応じた通知を自律走行管理装置15に対して行う。具体的には、通知部34は、オプション有無判定部31において超音波センサ17の検出信号を取得しないときは、サヤフォーク13がフォークリフト1に取り付けられていない旨の通知を自律走行管理装置15に対して行う。
【0037】
障害物認識部35は、レーザセンサ19の検出データに基づいて、検知エリア決定部33により決定された障害物検知エリアにおいて障害物を認識する。障害物認識部35は、レーザセンサ19と協働して、障害物検知エリアにおいて障害物を検知する障害物検知部を構成している。
【0038】
荷台姿勢算出部36は、サヤフォーク13をパレット12のフォーク穴(図示せず)に差し込む際に実行される。荷台姿勢算出部36は、複数の超音波センサ17の検出値に基づいて、トラック11の荷台11aの傾き(姿勢)を算出する。
【0039】
走行制御部37は、トラック11と荷物置き場(図示せず)との間でフォークリフト1を走行させるように走行駆動部21を制御する。走行駆動部21は、例えば走行モータ及び操舵モータを有している。走行制御部37は、障害物認識部35によりフォークリフト1が走行する経路上に障害物が存在することが検知されると、例えばフォークリフト1を緊急停止させるように走行駆動部21を制御してもよい。
【0040】
荷役制御部38は、荷役装置3により荷役を行うように荷役駆動部22を制御する。荷役駆動部22は、例えばリフトシリンダ8及びティルトシリンダ9を駆動する電磁コントロールバルブユニットである。荷役制御部38は、荷台姿勢算出部36により算出されたトラック11の荷台11aの傾きに基づいて、サヤフォーク13が荷台11aを擦らないように荷役駆動部22を制御する。また、荷役制御部38は、障害物認識部35によりサヤフォーク13が通過する箇所に障害物が存在することが検知されると、例えばサヤフォーク13を緊急停止させるように荷役駆動部22を制御してもよい。
【0041】
図4は、コントローラ20により実行されるオプション有無判定処理から障害物検知エリア決定処理までの手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、フォークリフト1の電源が投入されると、実行される。
【0042】
図4において、コントローラ20は、まず自律走行管理装置15から送信された作業モード情報を送受信機16を介して取得したかどうかを判断する(手順S101)。コントローラ20は、作業モード情報を取得したと判断したときは、超音波センサ17の検出信号を取得したかどうかを判断する(手順S102)。
【0043】
コントローラ20は、超音波センサ17の検出信号を取得したと判断したときは、フォークリフト1のフォーク7にサヤフォーク13が装着されていると認識する(手順S103)。このとき、コントローラ20は、超音波センサ17の出力電流値に基づいて、フォーク7にサヤフォーク13が装着されているかどうかを認識してもよいし、或いは超音波センサ17の出力信号に含まれるTopicまたはMac Address等に基づいて、フォーク7にサヤフォーク13が装着されているかどうかを認識してもよい。
【0044】
続いて、コントローラ20は、サヤフォーク13の規格データと揚高センサ18の検出値とに基づいて、障害物検知マスク範囲を設定する(手順S104)。サヤフォーク13の規格データは、サヤフォーク13の形状及び寸法等であり、予め分かっている。
【0045】
コントローラ20は、
図3及び
図5に示されるように、1対のサヤフォーク13を全体的に含む領域を障害物検知マスク範囲Bとして設定する。障害物検知マスク範囲Bは、例えば1対のサヤフォーク13を全体的に含むような仮想円柱形状を呈している。
【0046】
また、コントローラ20は、サヤフォーク13の可動域をマスク(除去)するように障害物検知マスク範囲を設定する。具体的には、コントローラ20は、サヤフォーク13の高さ位置に応じて、障害物検知マスク範囲Bを変更する。サヤフォーク13がフォークリフト1の低い位置にあるときは、
図5(a)に示されるように、障害物検知マスク範囲Bはフォークリフト1の低い位置に設定される。サヤフォーク13がフォークリフト1の高い位置にあるときは、
図5(b)に示されるように、障害物検知マスク範囲Bはフォークリフト1の高い位置に設定される。
【0047】
また、コントローラ20は、パレット12がサヤフォーク13に保持されている状態では、サヤフォーク13及びパレット12を含む領域を障害物検知マスク範囲Bとして設定してもよい。コントローラ20は、荷物(図示せず)が載置されたパレット12がサヤフォーク13に保持されている状態では、サヤフォーク13、パレット12及び荷物を含む領域を障害物検知マスク範囲Bとして設定してもよい。
【0048】
続いて、コントローラ20は、障害物検知マスク範囲Bに基づいて、障害物検知エリアAを決定する(手順S105)。
【0049】
コントローラ20は、
図3に示されるように、基準障害物検知エリアA0を予め設定している。基準障害物検知エリアA0は、サヤフォーク13等のオプションユニットを全く考慮しない場合の障害物検知エリアである。基準障害物検知エリアA0は、例えばフォークリフト1を全体的に含むような仮想円柱形状を呈している。コントローラ20は、基準障害物検知エリアA0から障害物検知マスク範囲Bを除外することで、障害物検知エリアAを決定する。
【0050】
コントローラ20は、手順S102で超音波センサ17の検出信号を取得していないと判断したときは、サヤフォーク13をフォーク7に付け忘れている旨の警報通知信号を送受信機16を介して自律走行管理装置15に送信する(手順S106)。
【0051】
ここで、手順S101~S103は、オプション有無判定部31により実行される。手順S104は、検知マスク範囲設定部32により実行される。手順S105は、検知エリア決定部33により実行される。手順S106は、通知部34により実行される。
【0052】
以上において、例えば入荷作業が実施される場合、担当者(作業者)は、まず入荷作業を行うということを意識して、フォークリフト1のフォーク7にサヤフォーク13を装着する。そして、担当者は、フォークリフト1の電源を投入する。すると、サヤフォーク13に設けられた各超音波センサ17の検出信号がコントローラ20に送られる。
【0053】
そして、担当者は、自律走行管理装置15の入力器の入荷スイッチ(図示せず)をONにすることで、フォークリフト1の作業モードが入荷作業モードに設定される。すると、自律走行管理装置15からフォークリフト1に入荷作業モード情報が送信される。入荷作業モード情報は、送受信機16を介してコントローラ20に送られる。
【0054】
従って、コントローラ20は、各超音波センサ17の検出信号と自律走行管理装置15からの入荷作業モード情報とを取得する。このため、フォークリフト1のフォーク7にサヤフォーク13が装着されていると認識され、サヤフォーク13の規格データ及び高さ位置とに基づいて障害物検知マスク範囲Bが設定される。そして、障害物検知マスク範囲Bに基づいて障害物検知エリアAが決定される。
【0055】
そして、フォークリフト1により入荷作業が開始される。このとき、障害物検知エリアAにおいて、レーザセンサ19の検出データに基づいて障害物が検知される。
【0056】
ただし、万が一担当者がフォーク7にサヤフォーク13を装着することを忘れた場合は、サヤフォーク13をフォーク7に付け忘れている旨の警報通知信号がコントローラ20から送受信機16を介して自律走行管理装置15に送信される。そして、自律走行管理装置15の警報器において、警報音や警報表示等による警報動作が行われる。従って、担当者は、サヤフォーク13をフォーク7に付け忘れていることが分かる。なお、警報通知信号は、フォークリフト1の運転席等にも送られてもよい。
【0057】
以上のように本実施形態にあっては、オプションユニットであるサヤフォーク13がフォークリフト1に取り付けられたと判定されると、障害物として検知することを許可しない障害物検知マスク範囲Bが設定される。そして、障害物検知マスク範囲Bに基づいて、障害物として検知することを許可する障害物検知エリアAが決定され、その障害物検知エリアAにおいて障害物の検知が行われる。ここで、サヤフォーク13を含む領域が障害物検知マスク範囲として設定される。これにより、フォークリフト1に取り付けられたサヤフォーク13が障害物として誤検知されることが防止される。その結果、サヤフォーク13を用いた荷役動作を確実に実施することができる。
【0058】
また、本実施形態では、フォークリフト1に対するサヤフォーク13の高さ位置が変わると、そのサヤフォーク13の高さ位置に応じて障害物検知マスク範囲Bが変更される。従って、現状のサヤフォーク13の高さ位置に適した障害物検知マスク範囲Bが得られる。
【0059】
また、本実施形態では、サヤフォーク13がフォークリフト1に取り付けられた状態で、フォークリフト1を始動させると、サヤフォーク13に固定された超音波センサ17から検出信号が出力される。従って、超音波センサ17の検出信号によって、サヤフォーク13がフォークリフト1に取り付けられたか否かを容易に且つ確実に判定することができる。
【0060】
また、本実施形態では、フォークリフト1を始動させても、超音波センサ17の検出信号が取得されないときは、サヤフォーク13がフォークリフト1に取り付けられていないと判定され、その旨の通知が行われる。従って、担当者は、サヤフォーク13の付け忘れを知ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、フォークリフト1が始動されると、作業モード情報がフォークリフト1に送られる。従って、サヤフォーク13に固定された超音波センサ17が故障している場合でも、作業モード情報によって、サヤフォーク13がフォークリフト1に取り付けられたか否かを判定することができる。
【0062】
図6は、
図4に示されたオプション有無判定処理から障害物検知エリア決定処理までの手順の変形例を示すフローチャートである。
図6において、コントローラ20は、上記の手順S102を、上記の手順S104の後に実行する。
【0063】
即ち、コントローラ20は、手順S101で作業モード情報を取得したと判断したときは、フォークリフト1のフォーク7にサヤフォーク13が装着されていると認識し(手順S103)、障害物検知マスク範囲Bを設定する(手順S104)。そして、コントローラ20は、超音波センサ17の検出信号を取得したかどうかを判断する(手順S102)。
【0064】
コントローラ20は、超音波センサ17の検出信号を取得したと判断したときは、障害物検知マスク範囲Bに基づいて、障害物検知エリアAを決定する(手順S105)。コントローラ20は、超音波センサ17の検出信号を取得していないと判断したときは、警報通知信号を自律走行管理装置15に送信する(手順S106)。
【0065】
このような本変形例では、超音波センサ17の検出信号によって、フォークリフト1にサヤフォーク13が取り付けられていることが明確になる。従って、決定された障害物検知エリアAが正しいことを確認できる。
【0066】
図7は、本発明の他の実施形態に係る障害物検知システムを含む荷役制御システムを示す概略構成図である。
図7において、本実施形態の障害物検知システム30は、上記の実施形態における構成に加え、コントローラ20の一部であるオプション識別部39を備えている。
【0067】
オプション識別部39は、オプション有無判定部31によりフォークリフト1にオプションが取り付けられたと判定されると、自律走行管理装置15から送信された作業モード情報に基づいて、オプションユニットの種類を識別する。
【0068】
フォークリフト1に取り付けられるオプションユニットの種類としては、上記のサヤフォーク13の他に、例えばロール紙を挟むロールクランプや、古紙等を挟むベールクランプ等のアタッチメントがある。ロールクランプ及びベールクランプを使用する場合は、サヤフォーク13を使用する場合とは、作業内容が異なる。このため、作業モード情報から、オプションユニットの種類が分かる。
【0069】
なお、各オプションユニットに何らかのセンサが固定されている場合には、オプション識別部39は、自律走行管理装置15から送信された作業モード情報とセンサの検出信号とに基づいて、オプションユニットの種類を識別してもよい。
【0070】
検知マスク範囲設定部32は、オプション有無判定部31によりフォークリフト1にオプションユニットが取り付けられたと判定されると、オプション識別部39により識別されたオプションユニットの種類に基づいて、オプションユニットを含む領域を障害物検知マスク範囲として設定する。このとき、検知マスク範囲設定部32は、オプションユニットの規格データ及び配置箇所等に応じた障害物検知マスク範囲を設定する。また、検知マスク範囲設定部32は、オプションユニットの種類がサヤフォーク13であるときは、上記の実施形態と同様に、サヤフォーク13の高さ位置に応じて障害物検知マスク範囲を変更する。
【0071】
このような本実施形態では、オプションユニットがフォークリフト1に取り付けられると、オプションユニットの種類が識別され、オプションユニットの種類に応じた障害物検知マスク範囲Bが設定される。従って、オプションユニットの種類が複数あっても、オプションユニットの種類に適した障害物検知マスク範囲Bが得られる。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、超音波センサ17によってサヤフォーク13からトラック11の荷台11aまでの距離を検出することで、トラック11の荷台11aの傾きが算出されているが、トラック11の荷台11aの傾きを算出するために使用されるセンサとしては、特に超音波センサ17には限られず、例えば近接センサ等であってもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、揚高センサ18により検出されたサヤフォーク13の高さ位置に基づいて、障害物検知マスク範囲Bが設定されているが、揚高センサ18に加えて、サヤフォーク13の傾動角(ティルト角)を検出する角度センサを備え、これらのセンサの検出値に基づいて、障害物検知マスク範囲Bを設定してもよい。この場合には、角度センサも、サヤフォーク13の位置を検出するオプション位置検出部を構成する。
【0074】
また、例えばフォークリフト1がフォーク7を左右方向に移動させるサイドシフタを具備している場合には、揚高センサ18に加えて、サヤフォーク13のサイドシフト量を検出する位置センサを備え、これらのセンサの検出値に基づいて、障害物検知マスク範囲Bを設定してもよい。この場合には、位置センサも、サヤフォーク13の位置を検出するオプション位置検出部を構成する。
【0075】
また、上記実施形態では、フォークリフト1の車体2に対するサヤフォーク13の高さ位置に応じて、障害物検知マスク範囲Bが変更されているが、特にその形態には限られず、サヤフォーク13の位置が変わっても、障害物検知マスク範囲Bを一定としてもよい。サヤフォーク13以外のオプションユニットについても同様である。
【0076】
また、上記実施形態では、自律走行管理装置15から送信された作業モード情報とオプションユニットに固定されたセンサの検出信号とに基づいて、オプションユニットがフォークリフト1に取り付けられたかどうかが判定されているが、特にそのような形態には限られない。
【0077】
自律走行管理装置15から送信された作業モード情報のみに基づいて、オプションユニットがフォークリフト1に取り付けられたかどうかを判定してもよい。この場合には、オプションユニットにセンサが固定されていなくても、作業モード情報によって、オプションユニットがフォークリフト1に取り付けられたか否かを判定することができる。
【0078】
また、オプションユニットに何らかのセンサが固定されている場合には、センサの検出信号のみに基づいて、オプションユニットがフォークリフト1に取り付けられたかどうかを判定してもよい。この場合には、コントローラ20による障害物検知処理の簡素化を図ることができる。
【0079】
また、上記実施形態では、1対のサヤフォーク13を含む領域が障害物検知マスク範囲Bとして設定されているが、そのような障害物検知マスク範囲Bは、常に設定しなくてもよい。例えば、2次元のレーザを照射するレーザセンサ19が使用される場合は、オプションユニットがレーザセンサ19から照射されたレーザが当たる高さ位置にあるときのみ、オプションユニットを含む領域を障害物検知マスク範囲Bとして設定してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、レーザセンサ19の検出データに基づいて、障害物が認識されているが、特にそれには限られず、例えばカメラの撮像画像等に基づいて、障害物を認識してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、フォークリフト1によって入荷作業または出荷作業を行う際に、フォークリフト1の周囲に存在する障害物が検知されているが、本発明は、特にフォークリフト1には限られず、オプションユニットが取り付けられる産業車両であれば、適用可能である。そのような産業車両としては、例えば牽引具が取り付けられるトーイング車等が挙げられる。
【符号の説明】
【0082】
1…フォークリフト(産業車両)、13…サヤフォーク(オプションユニット)、16…送受信機(通知部)、17…超音波センサ(センサ)、18…揚高センサ(オプション位置検出部)、19…レーザセンサ(障害物検知部)、30…障害物検知システム、31…オプション有無判定部、32…検知マスク範囲設定部、33…検知エリア決定部、34…通知部、35…障害物認識部(障害物検知部)、39…オプション識別部、A…障害物検知エリア、B…障害物検知マスク範囲。