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特許7491243制御装置、車両、制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】制御装置、車両、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
H02M3/00 W
H02M3/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021037731
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137977
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 大輝
(72)【発明者】
【氏名】梅本 暁
(72)【発明者】
【氏名】北野 英司
(72)【発明者】
【氏名】大宮 裕司
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特許第5387651(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0358832(US,A1)
【文献】特開2008-104252(JP,A)
【文献】特開2010-148291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御装置であって、
前記第一DCDCコンバータの出力が最大となった場合、前記第一DCDCコンバータの出力を最大に固定すると共に、前記第二DCDCコンバータの出力が所定の条件を満たすようにフィードバック制御を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行うと共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値を前記第一DCDCコンバータの電圧指示値よりも所定値だけ低い値となるように制御し、
前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行う制御装置。
【請求項2】
機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御装置であって、
前記第一DCDCコンバータの出力が最大となった場合、前記第一DCDCコンバータの出力を最大に固定すると共に、前記第二DCDCコンバータの出力が所定の条件を満たすようにフィードバック制御を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行うと共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値を前記目標値よりも所定値だけ低い値となるようにフィードバック制御を行い、
前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行う制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合であって、前記機器における特定の負荷が生じた場合には、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行うと共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値を前記目標値よりも所定値だけ低い値となるようにフィードバック制御を行う請求項に記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定値は、DCDCコンバータの出力のばらつきを考慮した値に設定されている請求項1~3の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の制御装置と、
前記第一DCDCコンバータ及び前記第二DCDCコンバータの各々に対して電力を供給する高圧バッテリと、
前記機器に電力を供給すると共に、前記第一DCDCコンバータ及び前記第二DCDCコンバータの各々から電力の供給を受ける補機バッテリと、
を備える車両。
【請求項6】
機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御方法であって、
前記第一DCDCコンバータの出力が最大となった場合、前記第一DCDCコンバータの出力を最大に固定すると共に、前記第二DCDCコンバータの出力が所定の条件を満たすようにフィードバック制御を行い、
前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行うと共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値を前記第一DCDCコンバータの電圧指示値よりも所定値だけ低い値となるように制御し、
前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行う処理をコンピュータが実行する制御方法。
【請求項7】
機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御プログラムであって、
前記第一DCDCコンバータの出力が最大となった場合、前記第一DCDCコンバータの出力を最大に固定すると共に、前記第二DCDCコンバータの出力が所定の条件を満たすようにフィードバック制御を行い、
前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行うと共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値を前記第一DCDCコンバータの電圧指示値よりも所定値だけ低い値となるように制御し、
前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行う処理をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御装置、車両、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のDCDCコンバータを協調制御する電源システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5387651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電源システムにおいて、一方のDCDCコンバータに対して高めの電圧指示値を与え、他方のDCDCコンバータに対して低めの電圧指示値を与えることで、一方のDCDCコンバータを優先的に使用することができる。しかしこの場合、機器の負荷が増大すると、当該機器の電圧が低めの電圧指示値のDCDCコンバータ側に固定される虞がある。
【0005】
本発明は、複数のDCDCコンバータにより機器に電力を供給する場合において、機器の負荷に関わらず当該機器に対して要求される電圧を供給する制御装置、車両、制御方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の制御装置は、機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御装置であって、前記第一DCDCコンバータの出力が最大となった場合、前記第一DCDCコンバータの出力を最大に固定すると共に、前記第二DCDCコンバータの出力が所定の条件を満たすようにフィードバック制御を行う制御部を備えている。
【0007】
請求項1に記載の制御装置は、第一DCDCコンバータと、第二DCDCコンバータとを制御する。第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータは、各々同一の機器に対して電力を供給可能に構成されている。当該制御装置において、例えば、第二DCDCコンバータに優先して機器に電力供給を行っている第一DCDCコンバータの出力が最大になった場合、制御部は第二DCDCコンバータの出力が所定の条件を満たすようにフィードバック制御を行う。ここで、所定の条件を満たすこととは、機器の電圧が要求する目標値に達していること、機器に電力を供給するバッテリの基準電圧が目標値に達していることなどが挙げられる。当該制御装置によれば、第一DCDCコンバータの出力が最大になった場合、第二DCDCコンバータによるフィードバック制御により、機器の負荷に関わらず当該機器に対して要求される電圧を供給することができる。
【0008】
請求項2に記載の制御装置は、請求項1に記載の制御装置において、前記制御部は、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行うと共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値を前記第一DCDCコンバータの電圧指示値よりも所定値だけ低い値となるように制御し、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行う。
【0009】
請求項2に記載の制御装置では、第一DCDCコンバータの出力に余裕がある通常時は、第一DCDCコンバータの電力指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行い、第二DCDCコンバータの電力指示値が第一DCDCコンバータの電力指示値よりも所定値だけ低い値となるように制御を行うことで機器への電圧を維持する。一方、第一DCDCコンバータの出力が最大に達した過負荷時は、第一DCDCコンバータの電力指示値を最大としつつ、第二DCDCコンバータの電力指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行う。そのため、当該制御装置によれば、通常時においては機器の負荷に関わらず当該機器に対して要求される電圧を供給し、負荷が増加し始めてから過負荷時にかけては第二DCDCコンバータにより、速やかに機器の電圧を目標値にすることができる。
【0010】
請求項3に記載の制御装置は、請求項1に記載の制御装置において、前記制御部は、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行うと共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値を前記目標値よりも所定値だけ低い値となるようにフィードバック制御を行い、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に達した場合、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値となるように制御すると共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行う。
【0011】
請求項3に記載の制御装置では、第一DCDCコンバータの出力に余裕がある通常時は、第一DCDCコンバータの電力指示値が目標値となるようフィードバック制御を行い、第二DCDCコンバータの電力指示値が目標値よりも所定値だけ低い値でフィードバック制御を行うことで機器への電圧を維持する。一方、第一DCDCコンバータの出力が最大に達した過負荷時は、第一DCDCコンバータの電力指示値を最大としつつ、第二DCDCコンバータの電力指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行う。そのため、当該制御装置によれば、通常時においては機器の負荷に関わらず当該機器に対して要求される電圧を供給し、負荷が増加し始めた場合においては第二DCDCコンバータにより、負荷の増加に追従して速やかに電圧を上昇させることができる。
【0012】
請求項4に記載の制御装置は、請求項2に記載の制御装置において、前記制御部は、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が最大値に満たない場合であって、前記機器における特定の負荷が生じた場合には、前記第一DCDCコンバータの電圧指示値が目標値となるようにフィードバック制御を行うと共に、前記第二DCDCコンバータの電圧指示値を前記目標値よりも所定値だけ低い値となるようにフィードバック制御を行う。
【0013】
請求項4に記載の制御装置は、第一DCDCコンバータの出力に余裕がある通常時における第二DCDCコンバータの制御方法に特徴がある。当該制御装置では、第二DCDCコンバータの電力指示値が第一DCDCコンバータの電力指示値よりも所定値だけ低い値となるように制御を行うことで機器への電圧を維持する。ただし、機器における特定の負荷が生じた場合には、第二DCDCコンバータの電力指示値が目標値よりも所定値だけ低い値でフィードバック制御を行うことで機器への電圧を維持する。当該制御装置によれば、負荷の態様に応じて機器の電圧の追従特性を変えることができる。
【0014】
請求項5に記載の制御装置は、請求項2~4の何れか1項に記載の制御装置において、前記所定値は、DCDCコンバータの出力のばらつきを考慮した値に設定されている。
【0015】
所定値を大きくし過ぎると、機器の負荷が増大し第一DCDCコンバータの出力が不足した場合に第二DCDCコンバータの出力により支えられる電圧が低くなってしまう。また、所定値を小さくし過ぎると、2つのDCDCコンバータの出力のばらつき次第で出力の優劣が崩れ、第一DCDCコンバータによる優先出力が不可能となる。これに対し、請求項5に記載の制御装置によれば、第一DCDCコンバータの優先出力を確保しつつ、第二DCDCコンバータが補完する出力を確保することができる。
【0016】
請求項6に記載の車両は、請求項1~5の何れか1項に記載の制御装置と、前記第一DCDCコンバータ及び前記第二DCDCコンバータの各々に対して電力を供給する高圧バッテリと、前記機器に電力を供給すると共に、前記第一DCDCコンバータ及び前記第二DCDCコンバータの各々から電力の供給を受ける補機バッテリと、を備えている。
【0017】
請求項6に記載の車両によれば、第一DCDCコンバータの出力が最大になった場合、第二DCDCコンバータによるフィードバック制御により、機器の負荷に関わらず当該機器に対して要求される電圧を供給することができ、補機バッテリを規定の充電状態に保持することができる。
【0018】
請求項7に記載の制御方法は、機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御方法であって、前記第一DCDCコンバータの出力が最大となった場合、前記第一DCDCコンバータの出力を最大に固定すると共に、前記第二DCDCコンバータの出力が所定の条件を満たすようにフィードバック制御を行う、処理をコンピュータが実行する。
【0019】
請求項7に記載の制御方法は、第一DCDCコンバータと、第二DCDCコンバータとを制御する方法である。上述のように、第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータは、各々同一の機器に対して電力を供給可能に構成されている。当該制御方法においては、例えば、第二DCDCコンバータに優先して機器に電力供給を行っている第一DCDCコンバータの出力が最大になった場合、コンピュータは第二DCDCコンバータの出力が所定の条件を満たすようにフィードバック制御を行う。ここで、所定の条件を満たすこととは、上述のとおりである。当該制御方法によれば、第一DCDCコンバータの出力が最大になった場合、第二DCDCコンバータによるフィードバック制御により、機器の負荷に関わらず当該機器に対して要求される電圧を供給することができる。
【0020】
請求項8に記載の制御プログラムは、機器に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータを制御する制御プログラムであって、前記第一DCDCコンバータの出力が最大となった場合、前記第一DCDCコンバータの出力を最大に固定すると共に、前記第二DCDCコンバータの出力が所定の条件を満たすようにフィードバック制御を行う、処理をコンピュータに実行させる。
【0021】
請求項8に記載の制御プログラムは、コンピュータに第一DCDCコンバータと、第二DCDCコンバータとの制御を実行させる。上述のように、第一DCDCコンバータ及び第二DCDCコンバータは、各々同一の機器に対して電力を供給可能に構成されている。当該プログラムにおいては、例えば、第二DCDCコンバータに優先して機器に電力供給を行っている第一DCDCコンバータの出力が最大になった場合、コンピュータは第二DCDCコンバータの出力が所定の条件を満たすようにフィードバック制御を行う。ここで、所定の条件を満たすこととは、上述のとおりである。当該プログラムによれば、第一DCDCコンバータの出力が最大になった場合、第二DCDCコンバータによるフィードバック制御により、機器の負荷に関わらず当該機器に対して要求される電圧を供給することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数のDCDCコンバータにより機器に電力を供給する場合において、機器の負荷に関わらず当該機器に対して要求される電圧を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態に係る車両及び電力供給システムの概略構成図である。
図2】第1の実施形態のECUにおけるROMの構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態のECUにおけるCPUの機能構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態における第一DCDCコンバータの電圧指示値と第二DCDCコンバータの電圧指示値との関係を説明する図である。
図5】第1の実施形態における電力制御処理の流れを示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態の電力供給システムにおいて、補機類の負荷の増加に伴う各DCDCコンバータの電圧指示値及び補機類の電圧値を示す図である。
図7】第2の実施形態における電力制御処理の流れを示すフローチャートである。
図8】第2の実施形態の電力供給システムにおいて、補機類の負荷の増加に伴う各DCDCコンバータの電圧指示値及び補機類の電圧値を示す図である。
図9】第3の実施形態における電力制御処理の流れを示すフローチャートである。
図10】変形例1における第二DCDCコンバータの電圧指示値の設定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0025】
[第1の実施形態]
(構成)
図1に示されるように、第1の実施形態の電力供給システム10は、車両12に搭載されている。車両12は、EV(Electric Vehicle)又はHV(Hybrid Vehicle)が例示される。本実施形態の車両12は、電力供給システム10により電力が供給される。この車両12は、車両12の各部を動作させる機器である補機類32、及び補機類32を含む車両12の各部を制御するECU群34を含んでいる。
【0026】
電力供給システム10は、制御装置としてのECU20、高圧バッテリ22、DCDCコンバータ24及び補機バッテリ28を含んで構成されている。ECU20の詳細については後述する。また、本実施形態のDCDCコンバータ24は第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を含む。
【0027】
高圧バッテリ22は、車両12の駆動に関わる走行モータ等を動作させるための高電圧のバッテリであり、例えばリチウム電池やニッケル水素電池などの充放電可能な二次電池で構成されている。高圧バッテリ22は、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26に接続されている。
【0028】
第一DCDCコンバータ25は、高圧バッテリ22が出力する電力を、補機バッテリ28及び補機類32に供給する機能を有している。第一DCDCコンバータ25は、入力側に高圧バッテリ22が接続され、出力側に補機バッテリ28及び補機類32が接続されている。電力供給の際、第一DCDCコンバータ25は、入力電圧である高圧バッテリ22の出力電圧を、ECU20からの指示に基づく所定の電圧に降圧して、補機バッテリ28及び補機類32に向けて出力する。
【0029】
第二DCDCコンバータ26は第一DCDCコンバータ25と同様の機能を有している。すなわち、第二DCDCコンバータ26は、高圧バッテリ22が出力する電力を、補機バッテリ28及び補機類32に供給する機能を有している。第二DCDCコンバータ26は、入力側に高圧バッテリ22が接続され、出力側に補機バッテリ28及び補機類32が接続されている。電力供給の際、第二DCDCコンバータ26は、入力電圧である高圧バッテリ22の出力電圧を、ECU20からの指示に基づく所定の電圧に降圧して、補機バッテリ28及び補機類32に向けて出力する。
【0030】
なお、本実施形態の電力供給システム10では、後述するECU20により、第一DCDCコンバータ25が第二DCDCコンバータ26に優先して補機類32に電力を供給する制御が行われている。
【0031】
補機バッテリ28は、補機類32を動作させることができるバッテリであり、例えば鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池で構成されている。補機バッテリ28は、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26の双方に接続されており、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26の各々から電力の供給を受けることが可能である。また、補機バッテリ28は、車両12の補機類32に接続されており、補機類32に対して電力を供給する。
【0032】
ECU20は、例えばマイコンで構成され、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を制御する機能を有している。これにより、ECU20は、高圧バッテリ22の電力を、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を介して補機バッテリ28及び補機類32に給電する。
【0033】
ECU20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、入出力I/F(Inter Face)20D及び通信I/F20Eを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、入出力I/F20D及び通信I/F20Eは、内部バス20Fを介して相互に通信可能に接続されている。
【0034】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0035】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。図2に示されるように、本実施形態のROM20Bには、制御プログラム100及び設定データ110が記憶されている。
【0036】
制御プログラム100は、ECU20を制御するためのプログラムである。制御プログラムにより制御されるECU20が第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を制御する。
【0037】
設定データ110は、各DCDCコンバータにおけるフィードバック制御用の制御パラメータを記憶している。
【0038】
図1に示されるように、RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
入出力I/F20Dは、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26のそれぞれと通信するためのインタフェースである。
【0039】
通信I/F20Eは、ECU群34と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、例えば、CANプロトコルによる通信規格が用いられる。通信I/F20Eは、外部バス20Hに対して接続されている。これにより、ECU20は、通信I/F20Eを介して、車両12の各部の動作状況を取得することができる。
【0040】
なお、ECU20は、ROM20Bに加えて又はROM20Bに代えて記憶部としてのストレージを含んでいてもよい。このストレージは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成される。
【0041】
図3に示されるように本実施形態のECU20では、CPU20Aが、制御プログラム100を実行することで、取得部200及び制御部220として機能する。
【0042】
取得部200は、第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26のそれぞれの状態を取得する機能を有している。ここで、各DCDCコンバータ24から取得される状態は、各DCDCコンバータ24の出力電圧を含む。また、取得部200は補機バッテリ28の電圧を取得する。さらに、取得部200は、ECU群34から車両12における補機類32を含む各部の作動状態を取得することができる。
【0043】
制御部220は、各DCDCコンバータ24の出力を制御する電力制御処理を行う。本実施形態の制御部220は、各DCDCコンバータ24に対して電圧指示値を設定することにより出力する電力の調整を行っている。通常時における制御部220は、第二DCDCコンバータ26に対し、第一DCDCコンバータ25よりも所定値Vだけ低い電圧指示値を設定することにより、第一DCDCコンバータ25の出力が優先されるように制御している。
【0044】
ここで、Vの値を大きくし過ぎると、補機類32の負荷が増大し第一DCDCコンバータ25の出力が不足した場合に第二DCDCコンバータ26の出力により支えられる電圧が低くなってしまう。また、Vの値を小さくし過ぎると、2つのDCDCコンバータ24の出力のばらつき次第で出力の優劣が崩れ、当初想定する第一DCDCコンバータ25による優先出力が不可能となる。このため、本実施形態では、以下のように所定値Vを設定している。
【0045】
図4に示されるように、第一DCDCコンバータ25の電力指示値をV1、出力のばらつきに伴う電圧のばらつきを±d1とし、第二DCDCコンバータ26の電力指示値をV2、出力のばらつきに伴う電圧のばらつきを±d2とする。そして、第一DCDCコンバータ25と第二DCDCコンバータ26との間で最低限確保すべき電圧差をD1とする。すると、V2=V1-(d1+d2+D1)となる。つまり、所定値V=d1+d2+D1となるように設定すればよい。
【0046】
(制御の流れ)
本実施形態のECU20において実行される電力制御処理の流れについて、図5のフローチャートを用いて説明する。ECU20における処理は、CPU20Aが、上述した取得部200及び制御部220として機能することにより実現される。なお、各図においては、「DCDCコンバータ」を「DDC」、「フィードバック制御」を「FB制御」と略している。
【0047】
本実施形態の制御方法としての電力制御処理は、各DCDCコンバータ24の電圧指示値を設定することにより出力を制御している。
【0048】
図5のステップS100において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電力指示値を初期値に設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電力指示値を初期値に設定する。
【0049】
ステップS101において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上か否かの判定を行う。CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上と判定した場合(ステップS101でYESの場合)、ステップS103に進む。一方、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上ではない、すなわち、最大値未満であると判定した場合(ステップS101でNOの場合)、ステップS102に進む。
【0050】
ステップS102において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値に設定する。そして、ステップS100に戻る。
【0051】
ステップS103において、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さいか否かの判定を行う。CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さいと判定した場合(ステップS103でYESの場合)、ステップS102に進む。一方、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さくない、すなわち、第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値以上であると判定した場合(ステップS103でNOの場合)、ステップS104に進む。
【0052】
ステップS104において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を最大値に設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定する。そして、ステップS100に戻る。
【0053】
上記フローチャートによる電力制御処理の作用を図6の例を参照しつつ説明すると以下のとおりである。第一DCDCコンバータ25の出力に余裕がある通常時は、第一DCDCコンバータ25の電力指示値V1を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うことで補機類32への電圧Vb1を維持する(ステップS102参照)。
【0054】
ここで、時刻Xにおいて補機類32の負荷が増大すると、補機バッテリ28の電圧Vb1が急減する。これに伴い、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値V1を上げると共に、連動するように第二DCDCコンバータ26の電力指示値V2を上げて補機バッテリ28の電圧Vb1を増加させる。
【0055】
そして、時刻Yに第一DCDCコンバータ25の出力が最大に達した過負荷時になると、第一DCDCコンバータ25の電力指示値V1を最大としつつ、第二DCDCコンバータ26の電力指示値V2を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うことで補機類32への電圧Vb1を維持する(ステップS104参照)。
【0056】
図6の例では、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値V1を最大値に保持したまま、補機バッテリ28の電圧Vb1が当初の電圧値に回復するように第二DCDCコンバータ26の電力指示値V2がフィードバック制御される。そのため、電圧Vb1が回復し電圧値が落ち着くにつれて、電力指示値V2の増加も収まる。
【0057】
なお、その後に補機類32の負荷が低下すれば、補機類32の電圧Vb1は第一DCDCコンバータ25の電圧指示値V1(つまり、最大値)に近づく。これにより、フィードバック制御を行っている第二DCDCコンバータ26の電力指示値V2が低下し、通常時の制御に戻る(ステップS103参照)。
【0058】
(実施形態のまとめ)
本実施形態の電力供給システム10において、ECU20は、補機類32に対して電力を供給する第一DCDCコンバータ25及び第二DCDCコンバータ26を制御するように構成されている。本実施形態のECU20では、上述の電力制御処理により補機類32の負荷に関わらず当該補機類32に対して要求される電圧を供給することができる。特に、第一DCDCコンバータ25の出力に余裕がある通常時においては補機類32の負荷に関わらず当該補機類32に対して要求される電圧を供給し、負荷が増加し始めてから過負荷時にかけては第二DCDCコンバータに26より、速やかに補機類32の電圧を回復させることができる。
【0059】
また、本実施形態の車両12としては、補機類32の負荷に関わらず当該補機類32に対して要求される電圧を供給することができるため、補機バッテリ28を規定の充電状態に保持することができる。
【0060】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態と通常時における第二DCDCコンバータ26に対する電圧指示値の設定方法が異なる。なお、本実施形態の電力供給システム10の構成は第1の実施形態と同様であり、同一の符号は同一の構成を示しており、詳細な説明は割愛する。
【0061】
以下、図7を用いて本実施形態の電力制御処理について説明する。なお、第1の実施形態の電力制御処理と同一のステップには同一のステップ番号を付しており、説明を割愛する。
【0062】
図7のステップS101において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値未満であると判定した場合(ステップS101でNOの場合)、ステップS200において次の処理が実行される。また、ステップS103において、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さいと判定した場合(ステップS103でYESの場合)も同様にステップS200の処理が実行される。
【0063】
ステップS200において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値-Vとなる値でフィードバック制御を行うように設定する。なお、所定値としてのVは、第1の実施形態と同様の考え方に基づいて設定される。そして、ステップS100に戻る。
【0064】
本実施形態の電力制御処理の作用を図8の例を参照しつつ説明すると以下のとおりである。第一DCDCコンバータ25の出力に余裕がある通常時は、第一DCDCコンバータ25の電力指示値V1を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うことで補機類32への電圧Vb2を維持する(ステップS200参照)。
【0065】
ここで、時刻Xにおいて補機類32の負荷が増大すると、補機バッテリ28の電圧Vb2が急減する。これに伴い、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値V1を上げる。また、ステップS200におけるフィードバック制御に伴い、第二DCDCコンバータ26の電力指示値V2は急増し、連動して補機バッテリ28の電圧Vb2が急増する。
【0066】
そして、時刻Yに第一DCDCコンバータ25の出力が最大に達した過負荷時になると、第一DCDCコンバータ25の電力指示値V1を最大としつつ、第二DCDCコンバータ26の電力指示値V2を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うことで補機類32への電圧Vb2を維持する(ステップS104参照)。
【0067】
図8の例では、第一DCDCコンバータ25の電圧指示値V1が最大値に保持されると、フィードバック制御に伴い、第二DCDCコンバータ26の電力指示値V2は再度急増し、連動して補機バッテリ28の電圧Vb2が急増する。そして、電圧Vb2が回復し電圧値が落ち着くにつれて、電力指示値V2の増加も収まる。
【0068】
以上のように、本実施形態によれば、第一DCDCコンバータ25の出力に余裕がある通常時においては補機類32の負荷に関わらず当該補機類32に対して要求される電圧を供給する。そして、負荷が増加し始めた場合においては第二DCDCコンバータ26により、負荷の増加に追従して速やかに電圧を上昇させることができる。
【0069】
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせた電力制御処理が実行される。なお、本実施形態の電力供給システム10の構成は第1の実施形態と同様であり、同一の符号は同一の構成を示しており、詳細な説明は割愛する。
【0070】
以下、図9を用いて本実施形態の電力制御処理について説明する。
図9のステップS300において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電力指示値を初期値に設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電力指示値を初期値に設定する。
【0071】
ステップS301において、CPU20Aは特定の負荷がONになったか否かの判定を行う。本実施形態における特定の負荷とは、補機類32であるヘッドライト及び電動パワーステアリング等の作動が挙げられる。CPU20Aは特定の負荷がONになったと判定した場合(ステップS301でYESの場合)、ステップS306に進む。一方、CPU20Aは特定の負荷がONになっていないと判定した場合(ステップS301でNOの場合)、ステップS302に進む。
【0072】
ステップS302において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上か否かの判定を行う。CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上と判定した場合(ステップS302でYESの場合)、ステップS304に進む。一方、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上ではない、すなわち、最大値未満であると判定した場合(ステップS302でNOの場合)、ステップS303に進む。
【0073】
ステップS303において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値に設定する。そして、ステップS300に戻る。
【0074】
ステップS304において、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さいか否かの判定を行う。CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さいと判定した場合(ステップS304でYESの場合)、ステップS303に進む。一方、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さくない、すなわち、第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値以上であると判定した場合(ステップS304でNOの場合)、ステップS305に進む。
【0075】
ステップS305において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を最大値に設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定する。そして、ステップS300に戻る。
【0076】
ステップS306において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上か否かの判定を行う。CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上と判定した場合(ステップS306でYESの場合)、ステップS308に進む。一方、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値が最大値以上ではない、すなわち、最大値未満であると判定した場合(ステップS306でNOの場合)、ステップS307に進む。
【0077】
ステップS307において、CPU20Aは第一DCDCコンバータ25の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値でフィードバック制御を行うように設定すると共に、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値を補機バッテリ28の電圧の目標値-Vとなる値でフィードバック制御を行うように設定する。そして、ステップS300に戻る。
【0078】
ステップS308において、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さいか否かの判定を行う。CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さいと判定した場合(ステップS308でYESの場合)、ステップS307に進む。一方、CPU20Aは第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値より小さくない、すなわち、第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値以上であると判定した場合(ステップS308でNOの場合)、ステップS305に進む。
【0079】
以上のように、本実施形態は、第一DCDCコンバータ25の出力に余裕がある通常時における第二DCDCコンバータ26の制御方法に特徴がある。具体的に、本実施形態では、特定の負荷以外の場合は、第二DCDCコンバータ26の電力指示値が第一DCDCコンバータ25の電力指示値よりも所定値Vだけ低い値となるように制御を行うことで補機類32への電圧を維持する(制御A)。
【0080】
一方、補機類32であるヘッドライトや電動パワーステアリングユニットに代表される特定の負荷が生じた場合、第二DCDCコンバータ26の電力指示値が補機バッテリ28の電圧の目標値-所定値Vだけ低い値でフィードバック制御を行うことで補機類32への電圧を維持する(制御B)。
【0081】
図8に示されるように、制御B(Vb2参照)は制御A(Vb1参照)に比べて、瞬時的な電圧の落ち込みから回復する時間は早いが、負荷増大前の基の電圧値まで復帰するのには時間が掛かる。特定の負荷として例示したヘッドライトや電動パワーステアリングユニットは車両12の走行に影響がある補機類32であり、負荷に伴う電圧の急落を極力抑えることが好ましい。そのため、本実施形態では、車両12の走行に影響があるような特定の負荷に対しては制御Bを適用し、特定の負荷ではない場合は制御Aを適用するように構成した。本実施形態によれば、負荷の態様に応じて補機類32の電圧の追従特性を変えることができる。
【0082】
(変形例)
上記の実施形態では、第一DCDCコンバータ25の出力に余裕がある通常時において、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値が第一DCDCコンバータ25の電圧指示値-Vとなる値に設定されている。この所定値としてのVは、図4を用いて説明したように、各DCDCコンバータ24の出力のばらつきを考慮した値に設定されている。しかし、通常時における第二DCDCコンバータ26の電圧指示値の設定方法はこの限りではない。
【0083】
例えば、変形例1では、図10に示されるように、補機バッテリ28と第二DCDCコンバータ26との間で最低限確保すべき電圧差をD2とする。そして、第二DCDCコンバータ26の電力指示値をV2、出力のばらつきに伴う電圧のばらつきを±d2とする。すると、V2=Vb-D2-d2となる。すなわち、第二DCDCコンバータ26の電圧指示値V2をVb-D2-d2とすることで、第一DCDCコンバータ25は第二DCDCコンバータ26に優先して電力が出力される。
【0084】
また例えば、変形例2では、第二DCDCコンバータ26の出力端の電圧から一定値を減じた電圧を第二DCDCコンバータ26の電圧指示値とする。すなわち、第二DCDCコンバータ26と共に補機類32に接続されている第一DCDCコンバータ25の出力端の電圧よりも常に低い電圧値が第二DCDCコンバータ26の電圧指示値となる。これにより、第一DCDCコンバータ25は第二DCDCコンバータ26に優先して電力が出力される。
【0085】
[備考]
なお、上記実施形態でCPU20Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0086】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、ECU20における制御プログラム100は、ROM20Bに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0087】
上記実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
12 車両
20 ECU(制御装置)
22 高圧バッテリ
25 第一DCDCコンバータ
26 第二DCDCコンバータ
28 補機バッテリ
32 補機類(機器)
100 制御プログラム
220 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10