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特許7491245ホイルトラップ及びこれを備えた光源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ホイルトラップ及びこれを備えた光源装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240521BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20240521BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
H05H1/24
G03F7/20 521
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021038849
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022138771
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】藪田 泰伸
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-154271(JP,A)
【文献】特開2015-053365(JP,A)
【文献】特表2013-505573(JP,A)
【文献】特開2015-122260(JP,A)
【文献】特開2014-192112(JP,A)
【文献】特開2015-149186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H05H 1/00
H05H 1/24
H05G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマから放散されるデブリを捕捉するホイルトラップであって、
周面部と、前記プラズマに対向する正面部と、冷却機構を有する回転軸の先端部に固定されるハブ構造体と、
前記ハブ構造体を中心に放射状に配置され、前記周面部にろう付けにより支持される複数のホイルと、
前記正面部に配置され、前記周面部を前記プラズマから遮蔽する周縁部を有し、前記ハブ構造体との間に、前記ハブ構造体と前記回転軸との間の熱伝導よりも低い熱伝導特性を有する熱抵抗部を形成するシールド部材と
を具備するホイルトラップ。
【請求項2】
請求項1に記載のホイルトラップであって、
前記熱抵抗部は、前記シールド部材と前記ハブ構造体との間の接触層である
ホイルトラップ。
【請求項3】
請求項に記載のホイルトラップであって、
前記ハブ構造体は、前記回転軸と嵌合する嵌合部を有する背面部をさらに有し、
前記ハブ構造体と前記回転軸の先端部との接触面積は、前記ハブ構造体と前記シールド部材との接触面積よりも大きい
ホイルトラップ。
【請求項4】
請求項に記載のホイルトラップであって、
前記ハブ構造体は、前記周面部を構成するハブ本体と、前記背面部を構成する軸受容体との連結体であり、
前記ハブ本体と前記軸受容体との接触面積は、前記ハブ本体と前記シールド部材との接触面積よりも大きい
ホイルトラップ。
【請求項5】
請求項に記載のホイルトラップであって、
前記ハブ本体は、前記周面部を構成する円筒部と、前記円筒部の内部を軸方向に分割する仕切壁部とを有し、
前記シールド部材は、前記仕切壁部に当接する底面部を含む筒状の第1の凸部を有する
ホイルトラップ。
【請求項6】
請求項に記載のホイルトラップであって、
前記軸受容体は、前記嵌合部を構成し前記仕切壁部に対向する頂部を含む筒状の第2の凸部と、前記背面部を構成し前記円筒部の端部に当接するフランジ部とを有する
ホイルトラップ。
【請求項7】
請求項に記載のホイルトラップであって、
前記底面部と前記仕切壁部とを貫通し前記回転軸の先端部に螺合する締結部材をさらに具備する
ホイルトラップ。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のホイルトラップであって、
前記シールド部材の前記プラズマに対向する面である対向面に固定され、前記対向面の面積よりも大きな面積の表面部を有する拡張シールド部材をさらに具備する
ホイルトラップ。
【請求項9】
請求項に記載のホイルトラップであって、
前記拡張シールド部材の周縁部は、前記複数のホイルに向かって屈曲する環状の屈曲部を有する
ホイルトラップ。
【請求項10】
プラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室で生成されたプラズマから放射される光を取り出す光取出し部と、
前記プラズマ生成室と前記光取出し部との間に配置され、前記プラズマから放散されるデブリを捕捉するホイルトラップと
を具備し、
前記ホイルトラップは、
冷却機構を有する回転軸と、
周面部と、前記プラズマに対向する正面部とを有し、前記回転軸の先端部に固定されるハブ構造体と、
前記ハブ構造体を中心に放射状に配置され、前記周面部にろう付けにより支持される複数のホイルと、
前記正面部に配置され、前記周面部を前記プラズマから遮蔽する周縁部を有し、前記ハブ構造体との間に、前記ハブ構造体と前記回転軸との間の熱伝導よりも低い熱伝導特性を有する熱抵抗部を形成するシールド部材と
を有する
光源装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光源装置であって、
前記プラズマ生成室と前記ホイルトラップとの間に配置され、前記プラズマから放射される光の一部を取り出す開口部を有するアパーチャ部材をさらに具備する
光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外光源である高温プラズマから放出されるデブリを捕捉するホイルトラップ及びこれを備えた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化および高集積化につれて、露光用光源の短波長化が進められている。次世代の半導体露光用光源としては、特に、波長13.5nmの極端紫外光(以下、「EUV(Extreme Ultra Violet)光」とも言う)を放射する極端紫外光光源装置(以下、「EUV光源装置」とも言う)の開発が進められている。
【0003】
EUV光源装置において、EUV光(EUV放射)を発生させる方法はいくつか知られている。それらの方法のうちの一つに極端紫外光放射種(以下、EUV放射種とも言う)を加熱して励起することによりプラズマを発生させ、プラズマからEUV光を取り出す方法がある。このような方法を採用するEUV光源装置は、プラズマの生成方式により、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)方式と、DPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式とに分けられる。
【0004】
DPP方式のEUV光源装置は、EUV放射種(気相のプラズマ原料)を含む放電ガスが供給された電極間に高電圧を印加して、放電により高密度プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用する。DPP方式としては、例えば、特許文献1に記載されているように、放電を発生させる電極表面にEUV放射種を含む液体状のプラズマ原料(例えば、スズ(Sn)またはリチウム(Li)等)を供給し、当該原料に対してレーザビーム等のエネルギービームを照射して当該原料を気化し、その後、放電によってプラズマを生成する方法が提案されている。このような方式は、LDP(Laser Assisted Gas Discharge Produced Plasma)方式と称されることもある。
一方、LPP方式のEUV光源装置は、レーザ光をターゲット材料に照射し、当該ターゲット材料を励起させてプラズマを生成する。
【0005】
EUV光源装置は、半導体デバイス製造における半導体露光装置(リソグラフィ装置)の光源装置として使用される。あるいは、EUV光源装置は、リソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用される。すなわち、EUV光源装置は、EUV光を利用する他の光学系装置(利用装置)の光源装置として使用される。EUV光は大気中では著しく減衰するので、プラズマから利用装置までのEUV光が通過する空間領域は、EUV光の減衰を抑制するために減圧雰囲気、つまり真空環境におかれている。
【0006】
一方、EUV光源装置においては、プラズマからはデブリが高速で放散される。デブリは、プラズマ原料の粒子(プラズマ原料がスズの場合は、スズ粒子)を含む。また、DPP方式またはLDP方式でプラズマが生成される場合、デブリは、プラズマの発生に伴いスパッタリングされる放電電極の材料粒子も含むことがある。デブリは、利用装置に到達すると、利用装置内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ、その性能を低下させることがある。そのため、デブリが利用装置に侵入しないように、放散されたデブリを捕捉するデブリ低減装置(DMT(Debris Mitigation Tool)とも言う)が提案されている。
【0007】
デブリ低減装置としては、回転軸に接続された中心支柱(ハブ)と、この中心支柱に放射状に配置された複数のホイル(薄膜や薄い平板)を備え、上記回転軸を中心に複数のホイルを回転させることで、プラズマからのデブリを捕捉する回転式ホイルトラップが知られている(例えば、特許文献1参照)。回転式ホイルトラップは、高温プラズマに対向して配置され、プラズマから照射される光を通過させつつ、プラズマから放散されるデブリを回転する複数のホイルトラップに衝突させることで利用装置側へのデブリの侵入を阻止する。
【0008】
高温プラズマに対向して配置された回転式ホイルトラップは、EUV光源装置の稼動中に受ける熱負荷が大きく、プラズマへの入力エネルギーによっては、500~700℃以上に加熱される。特に、発光点であるプラズマまでの距離が非常に短く、常にプラズマからの高速で移動するデブリに晒されるため、このデブリの衝突による磨耗(エロージョン)が発生する。
【0009】
また、複数のホイルは、中心支柱にろう付け等で固定されており、ろう付けに使用する硬ろうとしては、比較的耐熱性の高い金ろうやパラジウムろうを使用する。しかしながら、高温プラズマ原料であるすず(Sn)に起因するデブリがこのろう付け部分に付着した場合、ろう材(金ろうやパラジウムろう等)とすず(Sn)との間で化学反応がおこり、ろう材が劣化する。この劣化したろう材は、本来のろう材よりも機械的強度が低下する。このため、回転式ホイルトラップが回転している場合、ホイルに加わる遠心力によりろう付け部分が外れて回転式ホイルトラップが破損するという不具合が発生する可能性が高い。
【0010】
そこで、特許文献1には、中心支柱のデブリと対向する側に、交換可能なシールド部材を取り付けたホイルトラップが開示されている。上記シールド部材は、高温プラズマから飛来するすず(Sn)からなるデブリに対して、ホイルと中心支柱のろう付け部分が遮蔽されるような構造・配置とすることにより、上記デブリが上記ろう付け部分に付着することが抑制される。このため、ろう材の劣化が抑制され、回転式ホイルトラップにおいて、ろう付け部分での接合が壊れるといった不具合が抑えられる。また、シールド部材は交換可能に構成されているので、シールド部材に高速で移動するデブリによる磨耗(エロージョン)が発生しても、シールド部材を交換すればホイルトラップ自体の交換をしなくても済むようになる。
【0011】
さらに特許文献1には、上記シールド部材と中心支柱との間に、熱伝導可能であって、上記シールド部材を構成する材料および上記中心支柱を構成する材料の双方より柔らかい材料からなる中間部材を設けることが開示されている。シールド部材と中間支柱との間に上記中間部材を設けることにより、シールド部材から中心支柱への熱伝導が良好になるため、中心支柱の冷却機構によるシールド部材の冷却効果が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第6075096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
露光装置用の光源装置においては、プラズマから放射されるEUV光ができるだけ効率よく露光に用いられることが期待される。このため、回転式ホイルトラップは、できるだけEUV光の利用効率を下げないように、遮蔽するEUV光の量が最低限となるように構成されるのが好ましい。
【0014】
これに対して、検査装置用の光源装置においては、露光用の光源装置と比較すると、高温プラズマから放出されるEUV光の利用率は小さくてよい。すなわち、プラズマから放出されるEUV光からその一部が取り出される割合がより小さい。そのため、高温プラズマと検査装置との間には、EUV光の一部を取り出すための開口部が設けられたアパーチャ部材が設けられる。このアパーチャ部材は、高温プラズマから回転式ホイルトラップへの熱放射を低減し、回転式ホイルトラップの過熱を防止する遮熱板としても機能する。
【0015】
ここで、特許文献1に記載のようなシールド部材の冷却効果を高めたホイルトラップが検査装置用の光源装置に適用されると、アパーチャ部材による遮熱効果によってプラズマから受けるシールド部材の熱負荷が露光装置用の光源装置と比べて小さくなるため、中心支柱の冷却機構により、デブリの融点より低い温度にまでシールド部材の温度が下がり過ぎてしまう(以下、この現象あるいは状態を「冷却過多」ともいう)場合がある。この場合、複数のホイルで捕捉された溶融状態のデブリ(Sn)がシールド部材に付着すると、シールド部材に当該デブリが堆積してしまう。その際、堆積したデブリによりホイルの板厚が増加するため、ホイルトラップの光透過率が低下するという問題が起こる。また、堆積したデブリによりホイルトラップの質量も増加するため、回転式ホイルトラップを駆動させるモータの負荷が増え故障の原因となったり、制御パラメータを調整しなければ回転速度を安定させることができなくなることもある。したがって、シールド部材の温度は、デブリの融点以上の温度に維持される必要がある。
【0016】
一方、検査装置用の光源装置に適用される回転式ホイルトラップについては、中心支柱を冷却する冷媒の循環量を、露光装置用の光源装置に適用される場合よりも少なくすることで、シールド部材の冷却過多を回避できる。しかしながら、この場合はシールド部材だけでなく中心支柱および各ホイルの冷却効果も低下するため、プラズマから受ける熱負荷がシールド部材よりも大きい各ホイルの温度を、それらのろう付け部の温度がろう材の融点以上に達するような不具合が発生しない程度の温度に維持することが困難になるという問題がある。
【0017】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、シールド部材の冷却過多を防ぎつつ、ホイルのろう付け部分に不具合が発生しない温度に維持できるホイルトラップ及びこれを備えた光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一形態に係るホイルトラップは、プラズマから放散されるデブリを捕捉するホイルトラップであって、ハブ構造体と、複数のホイルと、シールド部材とを具備する。
上記ハブ構造体は、周面部と、上記プラズマに対向する正面部とを有する。
上記複数のホイルは、上記ハブ構造体を中心に放射状に配置され、上記周面部にろう付けにより支持される。
上記シールド部材は、上記正面部に配置され、上記周面部を上記プラズマから遮蔽する周縁部を有し、上記ハブ構造体との間に熱抵抗部を形成する。
【0019】
上記構成のホイルトラップは、ハブ構造体とシールド部材との間に形成された熱抵抗部を有するため、シールド部材とのハブ構造体との間の熱伝導性を低下させることができる。これにより、ハブ構造体の冷却作用によるシールド部材の冷却過多を防止できるとともに、ハブ構造体と複数のホイルとのろう付け部分に不具合が発生しない温度に維持することができる。
【0020】
上記熱抵抗部は、典型的には、上記シールド部材と上記ハブ構造体との間の接触層である。ここでいう接触層とは、シールド部材とハブ構造体との間の接触界面を意味する。当該接触界面は通常、完全な面接触ではないため、これらの間に伝熱性の高い中間層が存在しない限り両者間に所定の熱抵抗を生じさせることができる。なお、上記接触層は、上記接触界面に介在する断熱性の任意の材料層を含んでもよい。
【0021】
上記ハブ構造体は、典型的には、冷却機構を有する回転軸の先端部に固定される。この場合、上記ハブ構造体は、上記回転軸と嵌合する嵌合部を有する背面部をさらに有し、上記ハブ構造体と上記回転軸の先端部との接触面積を、上記ハブ構造体と上記シールド部材との接触面積よりも大きくしてもよい。このように、ハブ構造体に対するシールド部材および回転軸の接触面積に差を設けることで、シールド部材の冷却過多を防止しつつ、回転軸の冷却機構によるハブ構造体の冷却効率を安定に確保することができる。
【0022】
上記ハブ構造体は、上記周面部を構成するハブ本体と、上記背面部を構成する軸受容体との連結体であってもよい。この場合、上記ハブ本体と上記軸受容体との接触面積は、上記ハブ本体と上記シールド部材との接触面積よりも大きい。
ハブ構造体をハブ本体と軸受容体との分割構造にすることにより、その分割領域が熱抵抗部として機能し、ハブ本体と軸受容体との間の伝熱性を低下させることができる。これにより、冷却機構によるハブ構造体の冷却温度を調節することなく、各ホイルがデブリの融点より低い温度にまで低下することを防ぐことができる。
【0023】
上記ハブ本体は、上記周面部を構成する円筒部と、上記円筒部の内部を軸方向に分割する仕切壁部とを有し、上記シールド部材は、上記仕切壁部に当接する底面部を含む筒状の第1の凸部を有してもよい。
【0024】
上記軸受容体は、上記嵌合部を構成し上記仕切壁部に対向する頂部を含む筒状の第2の凸部と、上記背面部を構成し上記円筒部の端部に当接するフランジ部とを有してもよい。
【0025】
上記ホイルトラップは、上記底面部と上記仕切壁部とを貫通し上記回転軸の先端部に螺合する締結部材をさらに具備してもよい。
【0026】
上記ホイルトラップは、上記シールド部材の上記プラズマに対向する面である対向面に固定され、上記対向面の面積よりも大きな面積の表面部を有する拡張シールド部材をさらに具備してもよい。
【0027】
上記拡張シールド部材の周縁部は、上記複数のホイルに向かって屈曲する環状の屈曲部を有してもよい。
【0028】
本発明の一形態に係る光源装置は、プラズマ生成室と、上記プラズマ生成室で生成されたプラズマから放射される光を取り出す光取出し部と、上記プラズマ生成室と上記光取出し部との間に配置され、上記プラズマから放散されるデブリを捕捉するホイルトラップとを具備する。
上記ホイルトラップは、回転軸と、ハブ構造体と、複数のホイルと、シールド部材とを有する。
上記回転軸は、冷却機構を有する。
上記ハブ構造体は、周面部と、上記プラズマに対向する正面部とを有し、上記回転軸の先端部に固定される。
上記複数のホイルは、上記ハブ構造体を中心に放射状に配置され、上記周面部にろう付けにより支持される。
上記シールド部材は、上記正面部に配置され、上記周面部を上記プラズマから遮蔽する周縁部を有し、上記ハブ構造体との間に熱抵抗部を形成する。
【0029】
上記光源装置は、アパーチャ部材をさらに具備してもよい。上記アパーチャ部材は、上記プラズマ生成室と上記ホイルトラップとの間に配置され、上記プラズマから放射される光の一部を取り出す開口部を有する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、シールド部材の冷却過多を防ぎつつ、ホイルのろう付け部分に不具合が発生しない温度に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施形態に係るホイルトラップを備えた光源装置の構成を示す概略断面図である。
図2】上記光源装置におけるデブリ捕捉部の詳細を示す側断面図である。
図3】回転式ホイルトラップの構成例を示す正面図である。
図4】固定式ホイルトラップの構成例を示す上面図である。
図5】上記固定式ホイルトラップの断面図である。
図6】本実施形態のホイルトラップの側断面図である。
図7図6における要部の分解側断面図である。
図8】比較例に係る回転式ホイルトラップの側面図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係るホイルトラップの側断面図である。
図10図9に示すホイルトラップの要部の側断面図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係るホイルトラップの側断面図である。
図12図11に示すホイルトラップの要部の側断面図である。
図13】本発明の第4の実施形態に係るホイルトラップの側断面図である。
図14】第1の実施形態に係るホイルトラップの構成の変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0033】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るホイルトラップを備えたEUV光源装置1の構成を示す概略断面図である。本実施形態では、EUV光源装置1として、検査装置用のLDP方式の極端紫外光光源装置(EUV光源装置)を例に挙げて説明する。
【0034】
なお図においてX軸、Y軸およびZ軸は相互に直交する3軸方向を示しており、Z軸は鉛直方向(重力方向)に相当する。したがって、図1は、EUV光源装置1を水平方向に切断したときの断面図である。
【0035】
[全体構成]
図1において、EUV光源装置1は、極端紫外光(EUV光)を放出する。この極端紫外光の波長は、例えば、13.5nmである。
具体的には、EUV光源装置1は、放電を発生させる一対の放電電極EA,EBの表面にそれぞれ供給された液相のプラズマ原料SA,SBにレーザビームLB等のエネルギービームを照射して当該プラズマ原料SA,SBを気化させる。その後、放電電極EA,EB間の放電領域Dの放電によってプラズマPを発生させる。プラズマPからはEUV光が放出される。
【0036】
EUV光源装置1は、例えば、リソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用可能である。この場合、プラズマPから放出されるEUV光の一部が窓部27(光取出し部)から取り出され、マスク検査装置に導光される。マスク検査装置は、EUV光源装置1の窓部27から放出されるEUV光を検査光として、マスクのブランクス検査またはパターン検査を行う。ここで、EUV光を用いることにより、5nm~7nmプロセスに対応することができる。
【0037】
EUV光源装置1は、光源部2と、デブリ捕捉部3と、デブリ収容部4(図2参照)とを有する。図2は、デブリ捕捉部3の詳細を示す側断面図である。光源部2は、LDP方式に基づいてEUV光を発生させる。デブリ捕捉部3は、光源部2から放射されるEUV光とともに飛散するデブリを捕捉するデブリ低減装置である。デブリ収容部4は、光源部2で発生したデブリおよびデブリ捕捉部3で捕捉されたデブリなどを収容する。
【0038】
(光源部)
光源部2は、内部で生成されるプラズマPを外部と隔離するチャンバ11を備える。チャンバ11は、プラズマPを生成する光源部2を収容するプラズマ生成室を形成する。チャンバ11は、剛体、例えば、金属製の真空筐体であり、その内部は、プラズマ原料SA,SBを加熱励起するための放電を良好に発生させ、EUV光の減衰を抑制するために、図示しない真空ポンプにより所定圧力以下の減圧雰囲気に維持される。
【0039】
光源部2は、一対の放電電極EA,EBを備える。放電電極EA,EBは、同形同大の円板状部材であり、例えば、放電電極EAがカソードとして使用され、放電電極EBがアノードとして使用される。放電電極EA,EBは、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)またはタンタル(Ta)などの高融点金属から形成される。放電電極EA,EBは、互いに離隔した位置に配置され、放電電極EA,EBの周縁部が近接している。このとき、プラズマPが生成される放電領域Dは、放電電極EA,EBの周縁部が互いに最も接近した放電電極EA,EB間の間隙に位置する。
【0040】
チャンバ11の内部には、液相のプラズマ原料SAが貯留されるコンテナCAと、液相のプラズマ原料SBが貯留されるコンテナCBとが配置される。各コンテナCA,CBには、加熱された液相のプラズマ原料SA,SBが供給される。液相のプラズマ原料SA,SBは、例えば、スズ(Sn)であるが、リチウム(Li)であってもよい。
【0041】
コンテナCAは、放電電極EAの下部が液相のプラズマ原料SAに浸されるようにプラズマ原料SAを収容する。コンテナCBは、放電電極EBの下部が液相のプラズマ原料SBに浸されるようにプラズマ原料SBを収容する。従って、放電電極EA,EBの下部には、液相のプラズマ原料SA,SBが付着する。放電電極EA,EBの下部に付着した液相のプラズマ原料SA,SBは、放電電極EA,EBの回転に伴って、プラズマPが生成される放電領域Dに輸送される。
【0042】
放電電極EAは、モータMAの回転軸JAに連結され、放電電極EAの軸線周りに回転する。放電電極EBは、モータMBの回転軸JBに連結され、放電電極EBの軸線周りに回転する。モータMA,MBは、チャンバ11の外部に配置され、各モータMA,MBの回転軸JA,JBは、チャンバ11の外部から内部に延びる。回転軸JAとチャンバ11の壁の間の隙間は、シール部材PAで封止され、回転軸JBとチャンバ11の壁の間の隙間は、シール部材PBで封止される。シール部材PA,PBは、例えば、メカニカルシールである。各シール部材PA,PBは、チャンバ11内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸JA,JBを回転自在に支持する。
【0043】
EUV光源装置1は、制御部12と、パルス電力供給部13と、レーザ源(エネルギービーム照射装置)14と、可動ミラー16をさらに備える。制御部12、パルス電力供給部13、レーザ源14および可動ミラー16は、チャンバ11の外部に設置される。制御部12は、後述するように、EUV光源装置1の各部の動作を制御する。例えば、制御部12は、モータMA,MBの回転駆動を制御し、放電電極EA,EBを所定の回転数で回転させる。また、制御部12は、パルス電力供給部13の動作、レーザ源14からのレーザビームLBの照射タイミングなどを制御する。
【0044】
パルス電力供給部13から延びる2つの給電線QA,QBは、フィードスルーFA,FBを通過して、チャンバ11の内部に配置されたコンテナCA,CBにそれぞれ接続される。フィードスルーFA,FBは、チャンバ11の壁に埋設されてチャンバ11内の減圧雰囲気を維持するシール部材である。コンテナCA,CBは、導電性材料から形成され、各コンテナCA,CBの内部に収容されるプラズマ原料SA,SBもスズなどの導電性材料である。各コンテナCA,CBの内部に収容されているプラズマ原料SA,SBには、放電電極EA,EBの下部がそれぞれ浸されている。従って、パルス電力供給部13からパルス電力がコンテナCA,CBに供給されると、そのパルス電力は、プラズマ原料SA,SBをそれぞれ介して放電電極EA,EBに供給される。
【0045】
パルス電力供給部13は、放電電極EA,EBへパルス電力を供給することにより、放電領域Dで放電を発生させる。そして、各放電電極EA,EBの回転に基づいて放電領域Dに輸送されたプラズマ原料SA,SBが放電時に放電電極EA,EB間に流れる電流により加熱励起されることで、EUV光を放出するプラズマPが生成される。
【0046】
レーザ源14は、放電領域Dに輸送された放電電極EAに付着したプラズマ原料SAにエネルギービームを照射して、当該プラズマ原料SAを気化させる。レーザ源14は、例えば、Nd:YVO(Neodymium-doped Yttrium Orthovanadate)レーザ装置である。このとき、レーザ源14は、波長1064nmの赤外領域のレーザビームLBを発する。ただし、エネルギービーム照射装置は、プラズマ原料SAの気化が可能であれば、レーザビームLB以外のエネルギービームを発する装置であってもよい。
【0047】
レーザ源14から放出されたレーザビームLBは、例えば、集光レンズ15を含む集光手段を介して可動ミラー16に導かれる。集光手段は、放電電極EAのレーザビーム照射位置におけるレーザビームLBのスポット径を調整する。集光レンズ15および可動ミラー16は、チャンバ11の外部に配置される。
【0048】
集光レンズ15で集光されたレーザビームLBは、可動ミラー16により反射され、チャンバ11の側壁11aに設けられた透明窓20を通過して、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部に照射される。可動ミラー16の姿勢を調整することにより、放電電極EAにおけるレーザビームLBの照射位置が調整される。なお、可動ミラー16の姿勢の調整は、作業員が手動で実施してもよいし、後述する監視装置43からのEUV光の強度情報に基づき、制御部12が可動ミラー16の姿勢制御を行ってもよい。この場合、可動ミラー16は、図示を省略した可動ミラー駆動部により駆動される。
【0049】
放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にするため、放電電極EA,EBの軸線は平行ではない。回転軸JA,JBの間隔は、モータMA,MB側が狭く、放電電極EA,EB側が広くなっている。これにより、放電電極EA,EBの対向面側を接近させつつ、放電電極EA,EBの対向面側とは反対側をレーザビームLBの照射経路から退避させることができ、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にすることができる。
【0050】
放電電極EBは、放電電極EAと可動ミラー16との間に配置される。可動ミラー16で反射されたレーザビームLBは、放電電極EBの外周面付近を通過した後、放電電極EAの外周面に到達する。このとき、レーザビームLBが放電電極EBで遮光されないように、放電電極EBは、放電電極EAよりも、モータMB側の方向(図1の左側)に退避される。放電領域D付近の放電電極EAの外周面に付着された液相のプラズマ原料SAは、レーザビームLBの照射により気化され、気相のプラズマ原料SAとして放電領域Dに供給される。
【0051】
放電領域DでプラズマPを発生させるため(気相のプラズマ原料SAをプラズマ化するため)、パルス電力供給部13は、放電電極EA,EBに電力を供給する。そして、レーザビームLBの照射により放電領域Dに気相のプラズマ原料SAが供給されると、放電領域Dにおける放電電極EA,EB間で放電が生じる。放電電極EA、EB間で放電が発生すると、放電領域Dにおける気相のプラズマ材料SAが電流により加熱励起されて、プラズマPが発生する。生成されたプラズマPから放射されるEUV光は、チャンバ11の側壁11bに設けられた貫通孔である第1窓部17を通ってデブリ捕捉部3へ入射する。
【0052】
(デブリ捕捉部)
デブリ捕捉部3は、チャンバ11の側壁1bに配置された接続チャンバ21を有する。接続チャンバ21は、剛体、例えば、金属製の真空筐体であり、その内部は、チャンバ11と同様、EUV光の減衰を抑制するために所定圧力以下の減圧雰囲気に維持される。接続チャンバ21は、チャンバ11と利用装置42(図2参照)との間に接続される。
【0053】
接続チャンバ21の内部空間は、第1窓部17を介してチャンバ11と連通する。接続チャンバ21は、第1窓部17から入射したEUV光を利用装置42(例えばマスク検査装置)へ導入する光取出し部としての第2窓部27を有する。第2窓部27は、接続チャンバ21の側壁21aに形成された所定形状の貫通孔である。
【0054】
一方、プラズマPからはEUV光とともにデブリDB(図2参照)が高速で様々な方向に放散される。デブリDBは、プラズマ原料SA、SBであるスズ粒子およびプラズマPの発生に伴いスパッタリングされる放電電極EA、EBの材料粒子を含む。これらのデブリDBは、プラズマPの収縮および膨張過程を経て、大きな運動エネルギーを得る。すなわち、プラズマPから発生するデブリDBは、高速で移動するイオン、中性粒子および電子を含む。このようなデブリDBは、利用装置42に到達すると、利用装置42内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ、性能を低下させることがある。
【0055】
そこで、デブリ捕捉部3は、デブリDBが利用装置42に侵入しないようにするため、回転式ホイルトラップ22(本実施形態のホイルトラップに相当)と、固定式ホイルトラップ24とを有する。回転式ホイルトラップ22および固定式ホイルトラップ24は、接続チャンバ21の内部に配置される。固定式ホイルトラップ24は、接続チャンバ21から利用装置42へと進行するEUV光の光路上において、回転式ホイルトラップ22と利用装置24と間に設けられる。なお、一つのデブリ捕捉部3においては、回転式ホイルトラップ22と固定式ホイルトラップ24の双方を設けてもよいし、いずれか一方を設けてもよい。
【0056】
図3は、図2の回転式ホイルトラップ22の構成例を示す正面図である。
【0057】
図3において、回転式ホイルトラップ22は、複数のホイル(ブレード)51と、外側リング52と、中心支柱53と、を備える。外側リング52は中心支柱53に同心であり、各ホイル51は、外側リング52と中心支柱53との間に配置されている。ここで、各ホイル51は、薄膜または薄い平板である。各ホイル51は、ほぼ等しい角間隔をおいて放射状に配置される。各ホイル51は、中心支柱53の中心軸線JM(図2参照)を含む平面上にある。回転式ホイルトラップ22の材料は、例えば、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)などの高融点金属である。
【0058】
回転式ホイルトラップ22の複数のホイル51は、プラズマP(発光点)から第2窓部27に向かって進むEUV光を遮らないように、第2窓部27に向かって進むEUV光の光線方向に平行に配置される。
すなわち、図2に示すように、各ホイル51が中心支柱53の中心軸線JMを含む平面上に配置された回転式ホイルトラップ22は、中心支柱53の中心軸線JMの延長線上にプラズマP(発光点)が存在するように配置される。これにより、中心支柱53および外側リング52を除けば、EUV光は各ホイル51の厚みの分のみ遮光され、回転式ホイルトラップ22を通過するEUV光の割合(透過率ともいう)を最大にすることが可能となる。
【0059】
中心支柱53は、図2に示すようにモータ(回転駆動装置)MCの回転軸JCに連結され、中心支柱53の中心軸線JMは、回転軸JCの中心軸線に合致する。このとき、モータMCの回転軸JCは、回転式ホイルトラップ22の回転軸とみなすことができる。回転式ホイルトラップ22は、モータMCに駆動されて回転し、回転するホイル51は、プラズマPから到来するデブリDBに衝突してデブリDBを捕捉し、当該デブリDBが利用装置42に侵入するのを阻止する。なお、中心支柱53の詳細については後述する。
【0060】
回転式ホイルトラップ22は、接続チャンバ21内に配置されるのに対して、モータMCは、接続チャンバ21の外に配置される。接続チャンバ21の側壁21aには、回転軸JCが通過する貫通孔が形成されている。回転軸JCと接続チャンバ21の側壁21aの間の隙間は、例えば、メカニカルシールからなるシール部材PCで封止される。シール部材PCは、接続チャンバ21内の減圧雰囲気を維持しつつ、モータMCの回転軸JCを回転自在に支持する。
【0061】
回転式ホイルトラップ22は、プラズマPからの放射により高温となる。このため、回転式ホイルトラップ22の過熱を防止するために、回転軸JCには冷却機構が備えられる。冷却機構としては、例えば、回転軸JCを中空にして冷却水等の冷媒の循環通路が形成される。この循環通路に冷媒を流通させることで、回転軸JCに接続される回転式ホイルトラップ22を冷却することができる。また、回転時のモータMC自体も発熱するため、モータMCの周囲に水冷配管41を巻き付けて除熱してもよい。水冷配管41には冷却水が供給され、熱交換によりモータMCを冷却する。
【0062】
また、プラズマPから回転式ホイルトラップ22への放射を低減し、回転式ホイルトラップ22の過熱を防止するため、接続チャンバ21内には、第1窓部17と回転式ホイルトラップ22との間に遮熱板23が配置される。遮熱板23は、プラズマPから放出されるEUV光の一部を取り出すための任意の形状(例えば、円形)の開口部KAを備えるアパーチャ部材に相当する。遮熱板23は、プラズマPの近傍に配置されるため、例えば、モリブデンまたはタングステンなどの高融点材料から構成される。
【0063】
開口部KAは、回転式ホイルトラップ22の回転軸JMから偏心した位置に設けられる。このとき、プラズマPから放出されるEUV光の一部は、開口部KAを介し、回転式ホイルトラップ22の回転軸方向(図2における左右方向)に対して傾斜角度をもって所定の立体角で遮熱板23から取り出される。回転式ホイルトラップ22は、遮熱板23の開口部KAを通過したEUV光の光線束(以下、EUV取出光とも言う。)の主光線UL上にホイル51が位置するように配置されている。遮熱板23の開口部KAから取り出されたEUV光は、デブリ捕捉部3を通過して、第2窓部27を介して利用装置(マスク検査装置装置)42に導入される。
【0064】
回転式ホイルトラップ22は、プラズマPから放散されるデブリDBのうち比較的低速のデブリDBを捕捉する。一方、固定式ホイルトラップ24は、プラズマPから放散されるデブリDBのうち、回転式ホイルトラップ22で捕捉できなかった高速で進行するデブリDBを捕捉する。図2に示すように、固定式ホイルトラップ24は、EUV取出光の主光線UL上に配置される。固定式ホイルトラップ24は、遮熱板23の開口部KAにより進行方向が制限されたEUV光であるEUV取出光が通過する領域に対応させた形状を備える。
【0065】
図4は、図2の固定式ホイルトラップ24の構成例を示す上面図、図5は、その断面図である。
【0066】
図4および図5において、固定式ホイルトラップ24は、複数のホイル61と、ホイル61を支持する固定枠(固定部材)60とを備える。ホイル61は、図5に示すように、EUV取出光の主光線UL方向に直交する断面において、それぞれ等間隔に配置される。また、固定枠60は、例えば、正面から見て矩形状となっている。なお、固定枠60の外形は、任意の形状であってよい。さらに、複数のホイル61は、図4に示すように、主光線UL方向に直交する方向から見ると、EUV取出光の光線方向に伸びるように放射状に配置される。
【0067】
固定式ホイルトラップ24の複数のホイル61は、固定式ホイルトラップ24が配置された空間を細かく分割することにより、その部分のコンダクタンスを下げて圧力を局所的に上げる働きをする。また、固定式ホイルトラップ24にガスを適宜供給することにより、固定式ホイルトラップ24における圧力を上げるようにする。言い換えると、接続チャンバ21内において、固定式ホイルトラップ24内にガスを局在化させて圧力が比較的高い部分を設定する。ここで、固定式ホイルトラップ24に供給するガスは、EUV光に対して透過率の高いガスが望ましく、例えば、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)などの希ガスまたは水素(H)などが用いられる。
【0068】
回転式ホイルトラップ22で捕捉できなかった高速のデブリDBは、固定式ホイルトラップ24における圧力が上がった領域でガスとの衝突確率が上がるために速度が低下する。また、ガスとの衝突によりデブリDBの進行方向も変わる。固定式ホイルトラップ24は、このようにして速度が低下して進行方向が変わったデブリDBを、ホイル61または固定枠60により捕捉する。
【0069】
また、図2に示すように、接続チャンバ21内には、カバー部材25が配置される。カバー部材25は、回転式ホイルトラップ22を包囲し、回転式ホイルトラップ22により捕捉されたデブリDBが接続チャンバ21の内部に飛散するのを防止するホイルトラップカバー装置を構成する。カバー部材25は、入射側開口部KIおよび出射側開口部KOA,KOBを備える。入射側開口部KIは、回転式ホイルトラップ22に入射するEUV光が遮光されない位置に設けられる。出射側開口部KOAは、入射側開口部KIおよび回転式ホイルトラップ22を通過して固定式ホイルトラップ24に入射するEUV光が遮光されない位置に設けられる。出射側開口部KOBは、入射側開口部KIおよび回転式ホイルトラップ22を通過して監視装置43に入射するEUV光が遮光されない位置に設けられる。
【0070】
回転式ホイルトラップ22により捕捉されたデブリDBの少なくとも一部は、遠心力により回転式ホイルトラップ22のホイル51上を径方向に移動し、ホイル51の端部から離脱して、カバー部材25の内面に付着する。カバー部材25は、図1および図2では図示を省略した加熱手段(カバー加熱部)またはEUV放射を受ける遮熱板23からの二次輻射によって加熱され、当該加熱によりカバー部材25の内面に付着したデブリDBは固化せず、液相状態を保持する。カバー部材25の内面に付着したデブリDBは、重力によりカバー部材25の下部に集まり、カバー部材25の下部から排出管26を介してカバー部材25の外に排出されて廃原料となり、デブリ収容部4に収容される。これにより、カバー部材25は、回転式ホイルトラップ22のブレード51の端部から離脱したデブリDBが接続チャンバ21の内部に飛散するのを防止することができる。
【0071】
さらに、接続チャンバ21の外部には、EUV光を監視する監視装置43が配置される。監視装置43は、EUV光を検出する検出器またはEUV光の強度を測定する測定器である。接続チャンバ21の壁には、EUV光が通過する貫通孔であるEUV光案内孔28が形成され、EUV光案内孔28と監視装置43と間には、EUV光が接続チャンバ21の外に漏れずに通過する案内管29が設けられている。
【0072】
遮熱板23には、開口部KAとは別の位置に、プラズマPから放出されるEUV光の一部を取り出すための任意の形状(例えば、円形)の開口部KBが設けられる。プラズマPと開口部KBの中心部を結ぶ直線の延長線上には、監視装置43、EUV光案内孔28および案内管29が配置されている。従って、プラズマPから放出されるEUV光の一部は、チャンバ11の第1窓部17、遮熱板23の開口部KB、カバー部材25の入射側開口部KI、回転式ホイルトラップ22の複数のブレード51の隙間、カバー部材25の出射側開口部KOB、接続チャンバ21の壁のEUV光案内孔28および案内管29の内腔を順次通過して、監視装置43に到達する。このようにして、EUV光を監視装置43によって監視することができる。
【0073】
[回転式ホイルトラップの詳細]
続いて、本実施形態における回転式ホイルトラップ22における中心支柱53の詳細について説明する。図6は回転式ホイルトラップ22の側断面図、図7は中心支柱53の分解側断面図である。
【0074】
回転式ホイルトラップ22は、上述のように、複数のホイル51と、外側リング52と、中心支柱53と、を備える。中心支柱53は、回転対称な形状を有し、ハブ構造体70と、シールド部材71とを有する。以下、中心支柱の各部の詳細について説明する。
【0075】
(ハブ構造体)
ハブ構造体70は、回転軸JCの先端に回転軸JCと同軸状(中心軸線JM上)に接続される。ハブ構造体70は、複数のホイルを支持する周面部70aと、プラズマPに対向する正面部70bと、正面部70bとは反対側の背面部70cとを有する。
【0076】
周面部70aは、中心軸線JMに同心的な円筒面である。周面部70aは、複数のホイル51の中心支柱53側の各端部をろう付けによって支持する。
使用されるろう材は特に限定されないが、例えば、比較的融点の高い金ろうが用いられる。ろう付け部位は特に限定されないが、各ホイル51の中心支柱53側の端部の前後方向の全域にわたってろう付け部分BRが形成されるようにすることで、周面部70aに対する各ホイル51の目的とする接合強度を確保することができる。
【0077】
正面部70bは、シールド部材71によりプラズマPから被覆される。
背面部70cは、回転軸JCと嵌合する嵌合部70dを有する。回転軸JCの先端部は、段部JC1を介して縮径された先端軸部JC2を有する。嵌合部70dは、先端軸部JC2が嵌合する円形の嵌合孔70d1と、嵌合孔70d1の周縁部に設けられ回転軸JCの段部JC1と軸方向に当接する当接面70d2とを有する。当接面70d2は、図6に示すように、背面部70cと同一平面上に形成されるが、勿論これに限られず、背面部70cから図示しないモータ側に突出する環状の凸面部であってもよいし、背面部70cに凹設された環状の凹面部であってもよい。
【0078】
本実施形態において、ハブ構造体70は、ハブ本体72と、軸受容体73の連結体で構成される。ハブ本体72は、タングステンまたはモリブデンなどの高融点金属材料で構成される。
【0079】
(ハブ本体)
ハブ本体72は、図7に示すように、周面部70aを構成する円筒部721と、円筒部721の内部を軸方向に分割する仕切壁部722とを有する。仕切壁部722により、ハブ本体72の内部には、シールド部材71側に第1凹部R1が形成され、軸受容体73側に第2凹部R2が形成される。
【0080】
(軸受容体)
軸受容体73は、図7に示すように、嵌合孔70d1を形成する円筒部731と、背面部70cを形成する円盤状のフランジ部732とを有する。軸受容体73は、タングステンまたはモリブデンなどの高融点金属材料で構成される。
【0081】
円筒部731は、ハブ本体72の円筒部721の内径よりも小さい外径を有し、ハブ本体72の内部に嵌合可能である。円筒部731は、嵌合部70dを構成しハブ本体72の仕切壁部722に対向する頂部731tを含む筒状の凸部(第2の凸部)として形成される。
【0082】
フランジ部732からハブ本体72へ突出する円筒部731の長さは、第2凹部R2の深さとほぼ同一の大きさに設定されてもよい。この場合、ハブ本体72への軸受容体73の連結時、円筒部731の頂部731tが仕切壁部722に当接し、かつ、フランジ部73がハブ本体72の軸受容体73側の端部723に当接する(図6参照)。これにより、ハブ本体72と軸受容体73との間の接触面積が大きくなるため、回転軸JCの内部を流れる冷媒(冷却水)によるハブ本体72の冷却効果を高めることができる。
【0083】
(シールド部材)
シールド部材71は、ハブ構造体70の正面部70bに配置される。シールド部材71は、ハブ構造体70の正面部70bを被覆する円盤部711と、円盤部の中心からハブ本体72側に突出する円筒部712とを有する。シールド部材71は、タングステンまたはモリブデンなどの高融点金属材料で構成される。
【0084】
円盤部711は、ハブ本体72の外径よりも大きな外径を有する周縁部711aを有する。周縁部711aは、プラズマPからハブ構造体70の周面部70aを遮蔽することができる大きさであれば、その外径は特に限定されない。これにより、遮熱板23からの熱輻射からハブ本体72の周面部70aのろう付け部分BRを保護することができる。また、遮熱板23を備えない露光装置用の光源装置にも、この回転式ホイルトラップ22を適用することが可能になる。
【0085】
円筒部712は、ハブ本体72の円筒部721の内径よりも小さい外径を有し、ハブ本体72の内部に嵌合可能である。円筒部712は、ハブ本体72の仕切壁部722に当接可能な底面部712tを有する筒状の凸部(第1の凸部)として形成される。
【0086】
円盤部711からハブ本体72へ突出する円筒部712の長さは、第1凹部R1の深さとほぼ同一の大きさに設定されてもよいが、第1凹部R1の深さよりも大きく設定されてもよい。円筒部712の上記長さを第1凹部R1の深さよりも大きく設定することで、シールド部材71とハブ本体72との連結時、円筒部712の先端部712tを仕切壁部722に当接させ、かつ、円盤部711をハブ本体72の軸受容体73側の端部(正面部70b)から軸方向に離隔させることができる(図6参照)。
【0087】
この場合、円盤部711がハブ本体72(正面部70b)に接触する場合と比較して、シールド部材71とハブ本体72との間の接触面積が小さくなるため、シールド部材71とハブ本体72との間の熱伝導を低下させることができる。
また、シールド部材71とハブ本体72との間の接触面積を、ハブ本体72と軸受容体73との間の接触面積よりも小さくすることができるので、これらの間の熱伝導に差をもたせることができる。
さらに、シールド部材71とハブ本体72との間の接触面積は、軸受容体73と回転軸JCとの間の接触面積よりも小さく設定される。これにより、シールド部材71とハブ本体72との間の熱伝導を、軸受容体72(ハブ本体72)と回転軸JCとの間の熱伝導よりも低下させることができる。
【0088】
(締結部材)
中心支柱53は、ハブ構造体70(ハブ本体72および軸受容体73)およびシールド部材71を回転軸JCの先端部に固定する締結部材80をさらに備える。
締結部材80は、図6に示すように、シールド部材71側からハブ構造体70の内部に挿通されたネジ部材などの締結具で構成される。締結部材80は、シールド部材71の底面部の中心に形成された挿通孔712h(図7参照)と、ハブ本体72の仕切壁部722の中心に形成された挿通孔722h(図7参照)とを貫通し、回転軸JCの先端部に螺合することで、ハブ構造体70およびシールド部材71を回転軸JCへ一体的に固定する。
【0089】
[比較例]
図8は、比較例に係る回転式ホイルトラップ122の側面図である。この回転式ホイルトラップ122は、複数のホイル51を支持する中心支柱153を備える。中心支柱153は、ハブ154と、ハブ154の正面に配置されたシールド部155と、ハブ154とシールド部材155との間を接合する中間部材156とを有する。
【0090】
このような構造の回転式ホイルトラップ122においては、ハブ154およびシールド部材155は、タングステンまたはモリブデンなどの高融点金属材料で構成される。一方、中間部材156は、ハブ154およびシールド部材155を構成する材料より柔らかい材料で構成される。ハブ154とシールド部材155との間に中間部材156を設けることにより、シールド部材155からハブ154への熱伝導が良好になるため、冷却機構を備える回転軸JCによるシールド部材の冷却効果が高められる。
【0091】
このようにシールド部材155の冷却効果を高めたホイルトラップ122は、遮熱板23を備えていない露光装置用の光源装置に適用される場合、プラズマから熱負荷を受けるシールド部材155を効果的に冷却することができる点で有利ではある。
しかしながら、本実施形態のような検査装置用の光源装置に適用された場合、遮熱板23による遮熱効果によってプラズマから受けるシールド部材の熱負荷が露光装置用の光源装置と比べて小さくなるため、ハブ154の冷却機構により、デブリの融点より低い温度にまでシールド部材155の温度が下がり過ぎてしまう場合がある。この場合、複数のホイル51で捕捉された溶融状態のデブリ(Sn)がシールド部材155に付着すると、シールド部材155に当該デブリが堆積してしまう。その際、堆積したデブリによりホイルトラップの質量も増加するため、回転式ホイルトラップを駆動させるモータの負荷が増え故障の原因となったり、制御パラメータを調整しなければ回転速度を安定させることができなくなることもある。したがって、シールド部材155の温度は、デブリの融点以上の温度に維持される必要がある。
【0092】
一方、上記問題を解消するため、ハブ154を冷却する冷媒の循環量を、露光装置用の光源装置に適用される場合よりも少なくすることで、シールド部材155の冷却過多を回避することは可能である。しかしながら、この場合はシールド部材155だけでなくハブ154および各ホイル51の冷却効果も低下するため、プラズマから受ける熱負荷がシールド部材155よりも大きい各ホイル51の温度を、それらのろう付け部の温度がろう材の融点以上に達するような不具合が発生しない程度の温度に維持することが困難になるという別の問題が発生する。
【0093】
[本実施形態の作用]
これに対して、本実施形態の回転式ホイルトラップ22においては、シールド部材71がハブ本体72に対して、比較例における中間部材156のような柔らかい材料を介することなく直接的に接触させているため、シールド部材71とハブ本体72との間に熱抵抗部TR1(図6参照)を形成することができる。この熱抵抗部TR1は、具体的には、シールド部材71の底面部712tとハブ本体72の仕切壁部722との間の接触層であり、この接触層は、これら底面部712tと仕切壁部722との間の接触界面に相当する。
【0094】
上記接触界面における熱伝導特性は、界面を構成する各面の表面性状によって大きく左右され、例えば表面粗さが大きいほど、界面における接触面積は小さくなるため熱抵抗は大きくなり、したがって熱伝導性は低下しやすい。比較例における中間部材156は、このような接触界面の表面性状の影響を受けないようにしてシールド部材とハブとの間の密着性を高めるものである。このような部材を備えていない本実施形態の回転式ホイルトラップ22においては、シールド部材71とハブ本体72との間に、これらの接触界面を形成する表面性状に応じた熱抵抗層が形成されることになる。
【0095】
したがって本実施形態によれば、熱抵抗部TR1によってシールド部材71とハブ本体72との間の熱伝導が悪くなるため、ハブ本体72(ハブ構造体70)の冷却作用によりシールド部材71が冷却されにくくなり、シールド部材71が冷却過多になることを防止することができる。これにより、シールド部材71の温度をデブリDBの融点以上の温度に維持することが可能となるため、シールド部材71におけるデブリDBの堆積を防止することができる。
【0096】
また、本実施形態によれば、ハブ本体72の冷却作用によるシールド部材71の冷却過多を防止できるため、ハブ本体72(ハブ構造体70)の冷却特性の調整が不要となる。これにより、ハブ本体72を本来必要とされる冷却温度に維持することができるため、冷却不足を原因とするろう付け部分BRの温度上昇を防ぎ、ろう付け部分BRがその融点以上の温度に達するなどの不具合が発生しない温度にハブ本体72を維持することができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、ハブ構造体70(軸受容体73)と回転軸MCの先端部との接触面積が、ハブ構造体70(ハブ本体72)とシールド部材71との接触面積よりも大きいため、シールド部材71とハブ本体72との間の熱伝導を、軸受容体73(ハブ本体72)と回転軸JCとの間の熱伝導よりも低下させることができる。これにより、シールド部材61からハブ構造体70への入熱作用よりも、ハブ構造体70から回転軸MCへの放熱作用が高い状態に安定に維持できるため、シールド部材71の冷却過多を防ぎつつ、ハブ本体70の安定した冷却作用を確保することができる。
例えば、上記シールド部材71とハブ本体72との間の接触面積は、シールド部材71の円筒部712の直径、円盤部711とハブ本体72との間の隙間の大きさなどにより容易に調整が可能である。
【0098】
さらに本実施形態によれば、ハブ構造体70がハブ本体72と軸受容体73の分割構造を有するため、以下の効果を得ることができる。
【0099】
第1に、ハブ本体72と軸受容体73との間に熱抵抗部TR2(図6参照)を形成することができる。熱抵抗部TR2は、ハブ本体72の仕切壁部722と軸受容体73の円筒部731の頂部731tとの接触層(接触界面)、および、ハブ本体72の軸受容体73側の端部723と軸受容体73のフランジ部732との接触層(接触界面)にそれぞれ形成される。このように、ハブ本体72と軸受容体73との間に熱抵抗層TR2が形成されることにより、回転軸JCの冷却機構によりハブ本体72に支持される各ホイル51がデブリの融点以下の温度にまで冷却され過ぎることを防ぐことができる。
【0100】
第2に、回転軸JCに対する中心支柱53の組付けを容易に行うことができる。本実施形態のように、ハブ構造体70がハブ本体72と軸受容体73の分割構造の場合、軸受容体73を回転軸JCの先端部に嵌合させた後、シールド部材71およびハブ本体72の連結体が軸受容体73に連結される。この際、回転軸JCに対するシールド部材71、ハブ本体72および軸受容体73の各部材の軸心を容易に揃えることができるため、締結部材80による各部材の回転軸JCへの固定作業が行い易くなる。
【0101】
<第2の実施形態>
図9は、本発明の第2の実施形態に係るホイルトラップ222の側断面図、図10は、ホイルトラップ222における要部の側断面図である。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0102】
本実施形態のホイルトラップ222は、第1の実施形態と同様、回転式ホイルトラップとして構成される。本実施形態では、中心支柱53は、シールド部材71、ハブ本体72および軸受容体73に加えて、拡張シールド部材74をさらに備える点で第1の実施形態と異なる。
【0103】
露光用EUV光源装置に用いられる回転式ホイルトラップに対して、高温プラズマから放出されるEUV光のうち、中心支柱(ハブ)に入射する部分を除き回転式ホイルトラップに入射するEUV光をできるだけ効率よく露光に用いることが期待されている。
そのため、高温プラズマから飛来するデブリや高温プラズマからの輻射から中心支柱(ハブ)とホイルとのろう付け部分を遮蔽するシールド部材は、できるだけEUV光の利用効率を下げないように、遮蔽するEUV光の量が最低限となるように設定される。
【0104】
一方、図1に示すようにEUV光源装置が検査用装置用光源として使用される場合、EUV取出し光は、図2に示すように、中心軸線JMから離れた主光線ULを進行する。よって、シールド部材71の遮熱板23に対向する面は、主光線UL方向に進行するEUV光を遮蔽しない程度に領域を拡大することが可能となる。
そこで、本実施形態の回転式ホイルトラップ222においては、図9に示すように、シールド部材71の遮熱板23に対向する面(対向面)に、当該面の占める領域より大きい面積を有する拡張シールド部材74が設けられる。
【0105】
図9および図10に示すように、拡張シールド部材74は、シールド部材71のプラズマ(本実施形態では遮蔽板23)に対向する対向面に複数の締結具81を用いて固定される。対向面とは、シールド部材71の円盤部711におけるハブ本体72側とは反対側の面(前面)をいう。拡張シールド部材74は、上記対向面の面積よりも大きな面積の表面部74aを有する。
【0106】
拡張シールド部材74は、シールド部材71と同様にタングステン、モリブデンなどの高融点材料で構成される。拡張シールド部材74は、円盤形状であり、その中心部に貫通孔74hを有する。これにより、締結部材80を拡張シールド部材74側から挿通しやすくなるため、拡張シールド部材74をシールド部材71に固定した状態で、ハブ本体72とともに回転軸MCへ固定することができる。
【0107】
以上のように構成される本実施形態においては、ハブ構造体70を構成するハブ本体72とホイル51とのろう付け部分BRへ入射する遮熱板23からの熱輻射をより広範囲に遮蔽することが可能となる。
また、中心支柱53としては、構成要素が1つ増えるので拡張シールド部材74とハブ本体72との間の熱抵抗が大きくなり、シールド部材71側からハブ本体72や回転軸受容73体への熱の伝導をより小さくすることが可能となる。
【0108】
<第3の実施形態>
図11は、本発明の第3の実施形態に係るホイルトラップ322の側断面図、図12は、ホイルトラップ322における要部の側断面図である。
以下、第2の実施形態と異なる構成について主に説明し、第2の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0109】
本実施形態では、シールド部材71の前面に拡張シールド部材74が設けられる点で第2の実施形態と共通するが、拡張シールド部材74がその端部をホイル51に向かって屈曲させた屈曲部741を有する点で、第2の実施形態と相違する。
【0110】
高温プラズマから放散されるデブリ(スズ)は、まず遮熱板23の表面に到達し堆積するが、上記放散されるデブリ(スズ)の一部は、開口部KA,KB(図2参照)を通過して回転式ホイルトラップに到達する。その一部がハブ構造体70のハブ本体72とホイル51とのろう付け部分BRに到達すると、スズとろう付け部分とが反応しろう付け部分BRが劣化する。ここで、拡張シールド部材74に屈曲部741を設けることにより、拡張シールド部材74とホイル51の端面との間の隙間が小さくなる。これにより、ろう付け部分に到達するスズ(デブリ)の量を少なくすることができるため、ろう付け部分BRの劣化を抑制することが可能となる。
【0111】
屈曲部741は、拡張シールド部材74の周縁部の全域にわたって環状に形成されてもよいし、拡張シールド部材74の周縁部の一部の領域にのみ形成されてもよいし、拡張シールド部材74の周縁部の複数個所に設けられてもよい。
【0112】
<第4の実施形態>
図13は、本発明の第4の実施形態に係るホイルトラップ422の側断面図である。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0113】
本実施形態では、ハブ構造体75が、周面部70aと、正面部70bと、背面部70cとを有する単一のハブ部材で構成される点で、第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態におけるハブ本体72と軸受容体73とが一体化した形状を有する。
【0114】
本実施形態のように、ハブ構造体75を単一の部材で構成することにより、第1の実施形態のような熱抵抗部TR2(図6参照)が存在しないため、シールド部材71の冷却過多を防止しつつ、ハブ構造体75の周面部70aの冷却効率を高めることができる。また、回転軸MCの冷却機構の冷却能力が比較的低い場合でも、周面部70aにおけるホイル51とのろう付け部分BRを十分に冷却することができる。このような構成は、冷却機構に高性能なスペックが要求されない使用環境において、適用可能である。
【0115】
なお、本実施形態においても上述の第2、第3の実施形態で説明した拡張シールド部材74が同様に適用されてもよい。
【0116】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0117】
例えば以上の各実施形態では、検査装置用の光源装置に本発明を適用した例について説明したが、これに限られず、露光装置用の光源装置にも本発明は適用可能である。
この場合、例えば、第2の実施形態および第3の実施形態の構成を採用することで、プラズマPからハブ本体72に伝達する熱負荷をより低減することができる。
【0118】
また、以上の各実施形態では、熱抵抗部TR1をシールド部材71とハブ本体72との間の接触界面のみで形成したが、これに限られず、例えば、これらの間に断熱性を有する例えばセラミック板などの任意の部材を介在させてもよい。これにより熱抵抗部の大きさを容易に調整することができる。
【0119】
さらに、以上の各実施形態では、熱抵抗部TR1をシールド部材71の円筒部712とハブ本体72の仕切壁部722との間に形成したが、これに限られない。例えば図14に示すように、シールド部材71の円盤部711にハブ本体72の端部に当接可能な複数の突出部713を設け、これら複数の突出部713とハブ本体72の端部との間に熱抵抗部を形成するようにしてもよい。このような構成でも、シールド部材71をハブ本体72へ安定に固定しつつ、シールド部材71からハブ本体72への熱伝導を低下させることができる。
【符号の説明】
【0120】
1…光源装置
2…光源部
3…デブリ捕捉部
22,222,322,422…ホイルトラップ
23…遮熱板
41…モータ
51…ホイル
53…中心支柱
70…ハブ構造体
70a…周面部
70b…正面部
70c…背面部
71…シールド部材
72…ハブ本体
73…軸受容体
74…拡張シールド部材
80…締結部材
BR…ろう付け部分
DB…デブリ
JC…回転軸
P…プラズマ
TR1,TR2…熱抵抗部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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