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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】端子カバーおよびカバー付き端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/11 20060101AFI20240521BHJP
   H01R 4/70 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01R11/11 E
H01R4/70 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021043377
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143048
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木田 新二朗
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-054222(JP,U)
【文献】特開2000-168469(JP,A)
【文献】特開2012-089374(JP,A)
【文献】特開2006-324065(JP,A)
【文献】特開2018-41580(JP,A)
【文献】特開2001-160390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R4/58-4/72
H01R11/00-11/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側機器にボルト締結するための板状のボルト締結部と、前記ボルト締結部から当該ボルト締結部の板面に沿う方向に延設された回り止め部とを有する端子を収容する端子カバーであって、
収容した前記端子の前記回り止め部を、前記ボルト締結部の締め付け方向前方から支持する板面支持部と、前記回り止め部の板面に沿う方向から支持する側面支持部とを備え
前記板面支持部および前記側面支持部のうち少なくとも一方は、収容した前記端子の前記回り止め部の先端に位置する先端壁部を貫通する孔部の開口縁部により構成されており、
前記先端壁部は、当該端子カバーの内側に向けて段差状に張り出す張出部を含み、
前記孔部の一部は前記張出部に跨るように設けられており、
前記板面支持部および前記側面支持部の少なくとも一方は、前記張出部に設けられた前記孔部の開口縁部により構成されている端子カバー。
【請求項2】
前記板面支持部と前記側面支持部とは、収容した前記端子の前記回り止め部の延設方向において異なる位置に設けられている請求項1に記載の端子カバー。
【請求項3】
前記張出部は、収容した前記端子の前記ボルト締結部の締め付け方向前方に延びており、その延び方向の先端に前記相手側機器に対して係止可能な機器係止部を備えている請求項1または請求項2に記載の端子カバー。
【請求項4】
前記先端壁部の外面から突出して、前記孔部を、収容した前記端子の前記ボルト締結部の締め付け方向後方から覆う突出部が設けられている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の端子カバー。
【請求項5】
前記端子を収容可能な端子収容部と、
前記端子収容部にヒンジを介して連結され、前記ヒンジを支点として回動されることにより、前記端子収容部を開放する開放位置と前記端子収容部を閉塞する閉塞位置との間で移動可能な蓋部と、を備え、
前記蓋部に、当該蓋部が前記閉塞位置とされた状態において、収容した前記端子の前記ボルト締結部に連なる端子本体部に近接する押さえ部が設けられている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の端子カバー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の端子カバーと、
相手側機器に設けられた機器側接続部にボルト締結される板状のボルト締結部と、前記ボルト締結部から当該ボルト締結部の板面に沿う方向に延設され、ボルト締結の際に、前記相手側機器に設けられた係合部と係合することにより当該ボルト締結部が連れ回りすることを防止する回り止め部と、を有する端子と、
を備えるカバー付き端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、端子カバーおよびカバー付き端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両に搭載された機器に接続される端子として、下記特許文献1記載のものが知られている。この端子は、機器に設けられた機器側接続部に接続される板状のボルト締結部を有している。このボルト締結部に設けられたボルト挿通孔にボルトを挿通させてナットを締め込むことにより、ボルト締結部が機器側接続部にボルト締結されるようになっている。
【0003】
また、端子のボルト締結部には、機器に設けられた係合部に係合可能な回り止め部が設けられている。ボルト締結作業の際には、回り止め部が係合部に係合することで端子の連れ回りが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-168469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、機器側接続部にボルト締結された端子に対して他の部材が接触することを防ぐために、端子に合成樹脂製のカバーを組み付ける場合がある。図21を参照して従来の端子カバーの一例について説明する。従来の端子カバー1は、端子2を収容する箱型の端子収容部3と、端子収容部3の上部開口を塞ぐ蓋部4,5とを備えて構成されている。端子カバー1は、絶縁性を有する合成樹脂材料を用いて成形されている。
【0006】
端子収容部3は、端子2のボルト締結部6とともに、ボルト締結部6に延設された回り止め部7も内部に収容する。端子収容部3の底部には、ボルト締結部6の下面を露出させる底部開口8が設けられている。ボルト締結部6が底部開口8を通して機器側接続部に載置されると、機器に設けられた係合部が底部開口8から端子収容部3内に進入し、回り止め部7と係合する。これにより、ボルト締結時の端子2の連れ回りが防止される。
【0007】
しかしながら、上記の構成では、機器との接続前のボルト締結部6および回り止め部7と端子カバー1とが固定されていない。このため、搬送時の振動等により、ボルト締結部6および回り止め部7と端子カバー1とががたつき、異音が発生し易いという問題がある。
【0008】
本明細書によって開示される技術は上記事情に基づいて完成されたものであって、ボルト締結部および回り止め部と端子カバーとががたつき難く、搬送時の異音の発生を抑制することができる端子カバーおよびカバー付き端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書によって開示される端子カバーは、相手側機器にボルト締結するための板状のボルト締結部と、前記ボルト締結部から当該ボルト締結部の板面に沿う方向に延設された回り止め部とを有する端子を収容する端子カバーであって、収容した前記端子の前記回り止め部を、前記ボルト締結部の締め付け方向前方から支持する板面支持部と、前記回り止め部の板面に沿う方向から支持する側面支持部とを備える。
【0010】
また本明細書によって開示されるカバー付き端子は、上述した端子カバーと、相手側機器に設けられた機器側接続部にボルト締結される板状のボルト締結部と、前記ボルト締結部から当該ボルト締結部の板面に沿う方向に延設され、ボルト締結の際に、前記相手側機器に設けられた係合部と係合することにより当該ボルト締結部が連れ回りすることを防止する回り止め部と、を有する端子と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本明細書によって開示される端子カバーおよびカバー付き端子によれば、ボルト締結部および回り止め部と端子カバーとががたつき難く、搬送時の異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態の端子カバーを開いた状態のカバー付き端子の分解斜視図である。
図2図2は、実施形態の端子カバーを開いた状態のカバー付き端子の斜視図である。
図3図3は、実施形態の端子カバーを開いた状態のカバー付き端子の平面図である。
図4図4は、実施形態の端子カバーを開いた状態のカバー付き端子の図2の反対側から視た斜視図である。
図5図5は、実施形態の端子カバーを開いた状態のカバー付き端子の底面側の斜視図である。
図6図6は、実施形態の端子カバーを開いた状態のカバー付き端子の底面図である。
図7図7は、実施形態の端子カバーを開いた状態のカバー付き端子の図5の反対側から視た底面側の斜視図である。
図8図8は、図2の要部拡大斜視図である。
図9図9は、図8から端子を除いた状態の要部拡大斜視図である。
図10図10は、図3の要部拡大平面図である。
図11図11は、図10のII―II断面図である。
図12図12は、図11から端子を除いた状態の断面図である。
図13図13は、実施形態のカバー付き端子の平面図である。
図14図14は、実施形態のカバー付き端子の斜視図である。
図15図15は、実施形態のカバー付き端子の背面図である。
図16図16は、図3のI―I断面図である。
図17図17は、図16から第1蓋部を閉じた状態の断面図である。
図18図18は、他の実施形態の端子カバーの要部拡大斜視図である。
図19図19は、他の実施形態のカバー付き端子の要部拡大平面図である。
図20図20は、他の実施形態の端子カバーの要部拡大斜視図である。
図21図21は、従来のカバー付き端子のカバーを開いた状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本明細書に開示される技術の実施態様を列挙して説明する。
【0014】
(1)本明細書によって開示される端子カバーは、相手側機器にボルト締結するための板状のボルト締結部と、前記ボルト締結部から当該ボルト締結部の板面に沿う方向に延設された回り止め部とを有する端子を収容する端子カバーであって、収容した前記端子の前記回り止め部を、前記ボルト締結部の締め付け方向前方から支持する板面支持部と、前記回り止め部の板面に沿う方向から支持する側面支持部とを備える。
【0015】
上記構成によれば、端子の回り止め部は、その板面と側面との両方向から端子カバーによって支持される。従って、ボルト締結以前に、回り止め部およびボルト締結部と端子カバーとが振動によりがたつき難くなり、搬送時の異音の発生を抑制することができる。
【0016】
(2)上記(1)の端子カバーにおいて、前記板面支持部と前記側面支持部とは、収容した前記端子の前記回り止め部の延設方向において異なる位置に設けられていてもよい。
【0017】
上記構成によれば、板面支持部と側面支持部とが、回り止め部の延設方向において同位置に設けられる構成と比較して、回り止め部の広い範囲を支持可能となる。すなわち、回り止め部を端子カバーに対してより安定的に支持することが可能となり、異音の発生をより抑制することができる。
【0018】
(3)上記(1)または(2)の端子カバーにおいて、前記板面支持部および前記側面支持部のうち少なくとも一方は、収容した前記端子の前記回り止め部の先端に位置する先端壁部を貫通する孔部の開口縁部により構成されていてもよい。
【0019】
上記構成により、板面支持部および側面支持部を端子カバーに設ける一形態が実現可能である。また、先端壁部に孔部を設けるだけであるから、簡易な構成で板面支持部および側面支持部の少なくとも一方を設けることができる。さらに、従来、端子カバーの内部に収容していた回り止め部は、端子カバーに設けた孔部内に挿入されるから、端子カバーの小型化が可能となる。
【0020】
(4)上記(3)の端子カバーにおいて、前記先端壁部は、当該端子カバーの内側に向けて段差状に張り出す張出部を含み、前記孔部の一部は前記張出部に跨るように設けられており、前記板面支持部および前記側面支持部の少なくとも一方は前記張出部に設けられた前記孔部の開口縁部により構成されていてもよい。
【0021】
上記構成によれば、板面支持部と側面支持部とを回り止め部の延設方向において異なる位置に設けること可能であり、かつ、簡易な構成で小型化が可能な端子カバーが実現可能である。
【0022】
(5)上記(4)の端子カバーにおいて、前記張出部は、収容した前記端子の前記ボルト締結部の締め付け方向前方に延びており、その延び方向の先端に前記相手側機器に対して係止可能な機器係止部を備えていてもよい。
【0023】
上記構成によれば、簡易な構成で端子カバーを相手側機器に安定的に取り付けることができる。
【0024】
(6)上記(3)から(5)のいずれか一つの端子カバーにおいて、前記先端壁部の外面から突出して、前記孔部を、収容した前記端子の前記ボルト締結部の締め付け方向後方から覆う突出部が設けられていてもよい。
【0025】
上記構成によれば、端子カバーの孔部から露出する端子(回り止め部)に異物が接触することを抑制することができる。
【0026】
(7) 上記(1)から(6)のいずれか一つの端子カバーにおいて、前記端子を収容可能な端子収容部と、前記端子収容部にヒンジを介して連結され、前記ヒンジを支点として回動されることにより、前記端子収容部を開放する開放位置と前記端子収容部を閉塞する閉塞位置との間で移動可能な蓋部と、を備え、前記蓋部に、当該蓋部が前記閉塞位置とされた状態において、収容した前記端子の前記ボルト締結部に連なる端子本体部に近接する押さえ部が設けられていてもよい。
【0027】
上記構成によれば、回り止め片だけでなく、端子本体部のがたつきも抑制することができるから、異音の発生をより抑制することができる。
【0028】
(8)また、本明細書によって開示されるカバー付き端子は、上記(1)から(7)のいずれか一つに記載の端子カバーと、相手側機器に設けられた機器側接続部にボルト締結される板状のボルト締結部と、前記ボルト締結部から当該ボルト締結部の板面に沿う方向に延設され、ボルト締結の際に、前記相手側機器に設けられた係合部と係合することにより当該ボルト締結部が連れ回りすることを防止する回り止め部と、を有する端子と、を備える。
【0029】
上記構成によれば、端子の回り止め部は、その板面と側面との両方向から端子カバーによって支持される。従って、ボルト締結以前に、回り止め部およびボルト締結部と端子カバーとが振動によりがたつき難くなり、搬送時の異音の発生を抑制することができる。
【0030】
[実施形態の詳細]
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0031】
<実施形態>
一実施形態の端子カバー20およびカバー付き端子10を図1から図17の図面を参照しながら説明する。以下の説明においては、各図に示すZ方向を上方とし、その反対を下方とする。本実施形態における「上方」は、ボルト締結の「締め付け方向後方」に相当し、「下方」は、ボルト締結の「締め付け方向前方」に相当する。また、X方向を前方とし、その反対を後方とする。さらに、Y方向を右とし、その反対を左として説明する。また、便宜上、電線Wは破線で表すこととする。
【0032】
本実施形態のカバー付き端子10は、図2に示すように、端子カバー20内に、電線Wの端末に接続された状態の端子11を収容したものである。端子11は、ボルトを挿通させた状態で相手側機器に設けられた機器側接続部に締め込むことによって、相手側機器に接続される。ここでいう相手側機器としては、例えば車両のボディ、バッテリ、機器に設けられた端子台などが含まれる。
【0033】
[端子11]
端子11は、図1に示すように、相手側機器の機器側接続部(ナット)にボルト締結されるボルト締結部12と、ボルト締結部12に繋ぎ部(端子本体部の一例)14を介して設けられ電線Wの芯線に接続される芯線接続部(端子本体部の一例)15と、電線Wの被覆に接続される被覆接続部(端子本体部の一例)16とを備えて構成されている。
【0034】
ボルト締結部12は、略矩形の板状をなしており、ボルトを挿通させるボルト孔13を有している。ボルト締結部12は、ナットよりも一回り大きい寸法とされる。ボルトをナットに締め込むと、ボルトと相手側機器との間にボルト締結部12が挟持され、ボルト締結部12と相手側機器とが導通可能に接続される。
【0035】
ボルト締結部12のうち繋ぎ部14の反対側(前側)の端部には、右側の端部寄りに、短片状の回り止め片17(回り止め部の一例)が、当該ボルト締結部12の板面に沿って前方(X方向、延設方向)に突出するように延設されている。回り止め片17の板厚は、ボルト締結部12の板厚と同等とされている。また、端子11の下面は全体が面一とされている。
【0036】
[端子カバー20]
端子カバー20は、上方に開口する開口22を有し内部に端子11を収容する箱型の端子収容部21と、端子収容部21と第1ヒンジ60を介して連結された第1蓋部61と、端子収容部21と第2ヒンジ70を介して連結された第2蓋部71と、を備えて構成されている。
【0037】
[端子収容部21]
図1に示すように、端子収容部21は、端子11のボルト締結部12が収容される前方部分において、底部23が上下方向に開口している。これにより、端子11が端子収容部21に収容された際に、端子11のボルト締結部12の裏面を外部に露出可能とするとともに、ボルト締結部12を相手側機器(機器側接続部)に直接載置可能としている。以下、底部23の開口を、底部開口24とする。底部開口24は、端子11の繋ぎ部14の一部(前方部分)が露出可能な位置まで形成されている(図5および図6参照)。
【0038】
端子収容部21のうち前後方向に延びる右側壁25および左側壁26には、端子11の芯線接続部15が配される位置に対応して、内側に向けて突出する押さえ突部27が形成されている。押さえ突部27により、芯線接続部15のがたつきが抑制される。
【0039】
また、端子収容部21のうち後方に位置する後壁31には、端子11に接続された電線Wを外部に引き出すための電線挿通部32が上端から凹状に切り欠かれて設けられている。
【0040】
さらに、端子収容部21のうち前方に位置する前壁(先端壁部の一例)41には、上述した端子11の回り止め片17が配される位置に対応して、回り止め片17を挿通させるための位置決め孔(孔部の一例)42が設けられている。位置決め孔42の幅方向の寸法は、回り止め片17の幅寸法よりも僅かに大きい寸法に設定されている。位置決め孔42については、さらに詳しく後述する。
【0041】
[第1ヒンジ60および第1蓋部61]
第1蓋部61は、端子収容部21のうち、端子11の被覆接続部16が設置される後方領域を覆う略箱型の後方被覆部62と、後方被覆部62の前方に連なり、端子11の芯線接続部15および繋ぎ部14が設置される中間領域を覆う平板状の第1重畳部66とを備える。上述した第1ヒンジ60の一端は、後方被覆部62に連結されている。一方、第1ヒンジ60の他端は、端子収容部21の左側壁26の上端に連結されている。これにより、第1蓋部61は、第1ヒンジ60を中心として左右方向(端子カバー20の幅方向)に回動可能とされている。
【0042】
以下、第1蓋部61の後方被覆部62を構成する左右一対の側壁のうち第1ヒンジ60が連結されている側壁を第1連結壁63とし、第1ヒンジ60とは反対側に位置する側壁を第1反対壁64とする。
【0043】
第1反対壁64には、弾性係止片65が設けられている。弾性係止片65は略門形をなし、第1反対壁64に沿う方向に立ち上がっている。
【0044】
一方、端子収容部21の右側壁25には、弾性係止片65が係止する係止突起28が外側に突出して設けられている(図4図6図14参照)。第1蓋部61を第1ヒンジ60を中心として回動させ、弾性係止片65が係止突起28に係止すると、第1蓋部61が開口22の後方領域を閉塞した閉塞位置となって端子収容部21に対して保持される。
【0045】
第1蓋部61が閉塞位置とされた状態における第1重畳部66の外面(上面)には、前後方向に延びる一対の位置決めリブ67が設けられている(図5図7参照)。また、第1蓋部61が閉塞位置とされた状態における第1重畳部66の内面(下面)には、第1重畳部66の前端縁に沿って左右方向に延びる保持リブ(押さえ部の一例)68が設けられている(図1図4参照)。保持リブ68は、第1蓋部61が閉塞位置とされた状態において、その突出方向の先端(下端)が端子11の繋ぎ部14に近接する突出寸法とされている(図17参照)。なお、近接とは、互いに接触した状態と、間に若干の隙間を有する状態とを含む。
【0046】
[第2ヒンジ70および第2蓋部71]
第2蓋部71は、端子収容部21のうち、ボルト締結部12が設置される領域を覆う略箱型の前方被覆部72と、前方被覆部72に連なり、端子11の繋ぎ部14および芯線接続部が15設置される領域を覆う同じく略箱型の第2重畳部76とを備える。第2蓋部71が端子収容部21を閉塞する閉塞位置とされた状態において、第2重畳部76は、閉塞位置とされた第1重畳部66の外面に重ね合わされる(図17参照)。
【0047】
第2ヒンジ70は、端子収容部21の前壁41に3つ設けられている。具体的には、端子収容部21の前壁41には前方に向けて幅方向のほぼ全体に亘って直方体状に突出する収容部側突出部(突出部の一例)43が設けられており、収容部側突出部43の前面の幅方向における中央部下端に、第2中央ヒンジ70Aが連結されている(図14図15参照)。また、収容部側突出部43の幅方向において、第2中央ヒンジ70Aを挟んだ位置の上端に、一対の第2側部ヒンジ70Bが連結されている。第2蓋部71は、第2ヒンジ70を中心として前後方向(端子カバー20の長さ方向)に回動可能とされている。なお、収容部側突出部43は、後述する位置決め孔42の上方に設けられている。
【0048】
以下、第2蓋部71を構成する壁部のうち第2ヒンジ70が連結されている壁部を第2連結壁73とする(図3参照)。
【0049】
第2蓋部71が端子収容部21を閉塞する閉塞位置から前方に180度回動した開放位置とされた状態において、第2連結壁73のうち一対の第2側部ヒンジ70Bに対向する位置には、端子収容部21の前壁41に向けて(後方に向けて)突出する一対の直方体状の蓋部側突出部(突出部の一例)74が設けられている。一対の第2側部ヒンジ70Bは、これら一対の蓋部側突出部74の突出端面の上端に連結されている。また、第2中央ヒンジ70Aは、一対の蓋部側突出部74の間に露出した第2連結壁73の前面に連結されている。これらの3つのヒンジ70B,70A,70Bにより、第2蓋部71は、端子収容部21に対して前後方向に回動可能とされている。
【0050】
なお、第2蓋部71が閉塞位置とされた状態において、一対の蓋部側突出部74は、収容部側突出部43の上面に重ね合わされる寸法とされている(図13図14参照)。
【0051】
第2蓋部71の右側壁77および左側壁78には、図4に示すように、それぞれ弾性係止片75が設けられている。弾性係止片75は、第2重畳部76に設けられている。弾性係止片75は弾性変形可能な片状をなし、その先端に外側に向けて突出する係止爪75Aを備えている。
【0052】
一方、端子収容部21における右側壁25および左側壁26には、それぞれ、弾性係止片75が係止する被係止部29が設けられている。被係止部29は、端子収容部21の右側壁25および左側壁26から外側に向けて張り出して上下方向に貫通する門型をなしている。第2蓋部71を第2ヒンジ70を中心として回動させ、弾性係止片75を被係止部29の内側に挿入すると、弾性係止片75の係止爪75Aが被係止部29の下端に係止する。これにより、第2蓋部71が開口22の前方領域を閉塞した状態となって端子収容部21に対して保持される。
【0053】
第2蓋部71が閉塞位置とされた状態における第2重畳部76の内面(下面)には、幅方向に延びる一対の受けリブ79が設けられている。一対の受けリブ79には、第1蓋部61の位置決めリブ67を嵌め入れるための一対の受け凹部79Aがそれぞれ設けられている(図17参照)。
【0054】
[張出部45]
さて、本実施形態の端子カバー20の端子収容部21の前壁(先端壁部の一例)41には、端子収容部21の内側に向けて段差状に張り出す張出部45が設けられている。張出部45は、図9および図12に示すように、前壁41の上方部分であり底部23に対して交差する方向に延在する第1立壁部46の下端から、内側に向けて底部23と平行に延びる平行部47と、平行部47の後端から下方に向けて延びる第2立壁部48とから構成されている。平行部47の上面の高さは、底部23の上面の高さよりやや高い位置に設定されている。張出部45は、端子収容部21の幅方向(左右方向)の全体に亘って設けられている。
【0055】
[位置決め孔42]
上述した位置決め孔42は、第1立壁部46から平行部47を介して第2立壁部48まで跨るように形成されている。図9および図12に示すように、位置決め孔42の右側および左側の開口縁部(横側縁部420とする、側面支持部の一例)は、第1立壁部46に形成された一対の第1縁部421と、平行部47に形成された一対の第2縁部422と、第2立壁部48に形成された一対の第3縁部423とがそれぞれ連なった形態とされている。位置決め孔42の上側の開口縁部(上側縁部424とする)は、第1立壁部46に形成されている。また、位置決め孔42の下側の開口縁部(下側縁部425、板面支持部の一例とする)は、第2立壁部48に形成されている。
【0056】
上述したように、位置決め孔42の幅寸法は、端子11の回り止め片17の幅寸法より僅かに大きい寸法とされている(図8および図10参照)。また、端子収容部21における位置決め孔42の下側縁部425の高さ位置は、底部23の上面の高さ位置と同等とされている。これにより、端子収容部21内に収容された端子11の下面は、回り止め片17が位置決め孔42の下側縁部425により下方から当接され支持される(板面支持部の一例)とともに、繋ぎ部14から被覆接続部16にかけては底部23により下方から支持された状態とされる(図11および図16参照)。
【0057】
なお、本実施形態では、端子11が端子収容部21に収容された状態において、端子収容部21の平行部47の上面は、端子11の回り止め片17の上面よりもやや下方に位置するように設定されている(図11参照)。また、端子収容部21の前後方向の長さ寸法は、端子11が端子収容部21内の正規の位置に設置された状態において、回り止め片17の先端が前壁41(第1立壁部46)の前面から突出しない寸法に設定されている(図11参照)。
【0058】
このように、端子11が位置決め孔42の下側縁部425と底部23とにより下方から支持された状態において、回り止め片17は、位置決め孔42の一対の第1縁部421の間、一対の第2縁部422の間、および、一対の第3縁部423の間に位置している。第2縁部422は回り止め片17の延び方向(前後方向、X方向)に沿って延びている。つまり、回り止め片17は、下側縁部245により下方から当接され支持されるとともに、第1縁部421、第2縁部422、および第3縁部423(横側縁部420、側面支持部の一例)により延び方向(前後方向、延設方向の一例)に沿って左右両側(側方)から支持されている。
【0059】
端子11が端子収容部21内に収容され、回り止め片17が下方から下側縁部245により支持され、側方が横側縁部420により支持された状態において、回り止め片17の先端面は位置決め孔42から外部に露出している。しかし、本実施形態では、上述した収容部側突出部43が、位置決め孔42の上側縁部424の上方から前方に向けて突出して設けられている(図5および図11参照)。これにより、露出した回り止め片17の先端面は、収容部側突出部43により上方から覆われ、異物と接触し難い構成とされている。
【0060】
なお、位置決め孔42を第1立壁部46に跨らない構成(回り止め片17の先端面を露出させない構成)としてもよいが、上述したように、位置決め孔42を第1立壁部46に跨るように設けることにより、端子収容部21の長さを短くすることができる。
【0061】
また、端子11が位置決め孔42の下側縁部425と底部23とにより下方から支持された状態において、前壁41の第2立壁部48と端子11のボルト締結部12の前端との間には、隙間Sが形成されている。この隙間Sには、図10に示すように、相手側機器に設けられた一対の位置決め突部80(係合部の一例)が下方から挿入される。一対の位置決め突部80は、回り止め片17を左右方向から挟持して、ボルト締結時の端子11の連れ回り、ひいては、端子カバー20のずれを抑制する。
【0062】
上述した前壁41および底部23の前端は、下方に向けて延びており、前方下垂部51および後方下垂部53とされている(図5図7参照)。これらの下垂部51,53には、下端から切り出す形で弾性係止片52,54(機器係止部の一例)が形成されている。弾性係止片52,54の下端部には、互いに対向するように爪部52A,54Aが突出して形成されている。これらの弾性係止片52,54により、端子カバー20は相手側機器に形成された被係止部(図示せず)に対して固定されるようになっている。
【0063】
[本実施形態の作用効果]
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態の端子カバー20は、相手側機器にボルト締結するための板状のボルト締結部12と、ボルト締結部12から当該ボルト締結部12の板面に沿う方向に延設された回り止め片17とを有する端子11を収容する端子カバー20であって、収容した端子11の回り止め片17を、ボルト締結部12の締め付け方向前方(下方)から当接して支持する下側縁部425と、回り止め片17の板面に沿う方向(側方)から支持する第1縁部421、第2縁部422,および第3縁部423(横側縁部420)とを備えている。
【0064】
上記構成によれば、回り止め片17は、その下面と側面との両方向から端子カバー20によって支持される。従って、ボルト締結以前に、回り止め片17およびボルト締結部12と端子カバー20とが振動によりがたつき難くなり、搬送時の異音の発生を抑制することができる。
【0065】
また、位置決め孔42の下側縁部425と横側縁部420とは、回り止め片17の延設方向(前後方向)において異なる位置に配されている。
【0066】
上記構成によれば、下側縁部425と横側縁部420とが、回り止め片17の延設方向において同位置に設けられる構成と比較して、回り止め片17の広い範囲を支持可能となる。すなわち、回り止め片17を端子カバー20に対してより安定的に支持することが可能となり、異音の発生をより抑制することができる。
【0067】
下側縁部425および横側縁部420は、端子カバー20のうち回り止め片17の先端に位置する前壁41を貫通する位置決め孔42の開口縁部である。
【0068】
このような構成によれば、前壁41に位置決め孔42を設けるだけで回り止め片17の下面および側面を支持可能であるから、構成が簡易である。また、従来、カバーの内部に収容していた回り止め片17は、端子カバー20に設けた位置決め孔42内に挿入されるから、端子カバー20の小型化が可能となる。
【0069】
前壁41は、端子カバー20の内側に向けて段差状に張り出す張出部45を含み、位置決め孔42の一部は張出部45に跨るように設けられており、下側縁部425および横側縁部420の一部(第2縁部422および第3縁部423)は、張出部45に設けられた位置決め孔42の開口縁部である。
【0070】
上記構成によれば、下側縁部425と横側縁部420の一部とを回り止め片17の延設方向(前後方向)において異なる位置に設けることが可能である。また、簡易な構成で小型化が可能な端子カバー20およびカバー付き端子10が実現可能である。
【0071】
張出部45はボルト締結部12の締め付け方向前方(下方)に延びており、その延び方向の先端(下端)に相手側機器に対して係止可能な弾性係止片52,54を備えている。
【0072】
上記構成によれば、簡易な構成でカバー付き端子10を相手側機器に安定的に取り付けることができる。
【0073】
端子カバー20に、前壁41の外面から突出して位置決め孔42をボルト締結部12の締め付け方向後方(上方)から覆う収容部側突出部43が設けられている。
【0074】
上記構成によれば、端子カバー20の位置決め孔42から露出する端子11(回り止め片17)に異物が接触することを抑制することができる。
【0075】
端子カバー20は、端子11を収容可能な端子収容部21と、端子収容部21に第1ヒンジ60を介して連結され、第1ヒンジ60を支点として回動されることにより、端子収容部21を開放する開放位置と端子収容部21を閉塞する閉塞位置との間で移動可能な第1蓋部61と、を備え、端子11は、ボルト締結部12と連なる繋ぎ部14を有しており、第1蓋部61に、当該第1蓋部61が閉塞位置とされた状態において、繋ぎ部14に近接する保持リブ68が設けられている。
【0076】
上記構成によれば、回り止め片17だけでなく、繋ぎ部14のがたつきも抑制することができるから、異音の発生をより抑制することができる。
【0077】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0078】
(1)上記実施形態では、板面支持部(下側縁部425)および側面支持部(横側縁部420)を位置決め孔42の開口縁部により構成する形態を示したが、板面支持部および側面支持部は、位置決め孔42の開口縁部以外で構成してもよい。図18および図19に一例を示す。なお、図18および図19において、上記実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。この実施形態では、前壁141に孔部を設けず、張出部145を構成する平行部147の上面で板面支持部を構成し、平行部147から立ち上がるように設けた一対の支持リブ149により側面支持を構成したものである。このような形態によっても、回り止め片17およびボルト締結部12と端子カバー20とが振動によりがたつき難くなり、搬送時の異音の発生を抑制することができる。
【0079】
(2)また上記実施形態では、位置決め孔42を、第1立壁部46と張出部45(平行部47および第2立壁部48)とに跨って形成する構成を示したが、例えば図20に示すように、位置決め孔242を第1立壁部246の下端だけに設ける構成とすることもできる。この場合、位置決め孔242の下側縁部2425および平面部247の上面により板面支持部が構成され、位置決め孔242の横側縁部2420によって側面支持部が構成される。
【0080】
(3)あるいは、前壁(先端壁部)を上下方向に二分割して平行部が設けられない状態の第1立壁部と第2立壁部とにより構成し、第2立壁部の上面により板面支持部を構成することもできる。
【0081】
(4)機器係止部(弾性係止片52,54)、突出部43、74、および押さえ部(保持リブ68)は、省略することもできる。
【0082】
(5)収容部側突出部43の形態は上記実施形態に限るものでなく、例えば、ヒンジ自体を孔部に隣接して配することにより、位置決め孔42から露出した端子11を覆う形態としてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1: 端子カバー
2: 端子
3: 端子収容部
4,5: 蓋部
6: ボルト締結部
7: 回り止め部
8: 底部開口
10: カバー付き端子
11: 端子
12: ボルト締結部
13: ボルト孔
14: 繋ぎ部(端子本体部)
15: 芯線接続部
16: 被覆接続部
17: 回り止め片
20: 端子カバー
21: 端子収容部
22: 開口
23: 底部
24: 底部開口
25: 右側壁
26: 左側壁
27: 押さえ突部
28: 係止突起
29: 被係止部
31: 後壁
32: 電線挿通部
41、141、241: 前壁(先端壁部)
42、242: 位置決め孔(孔部)
43: 収容部側突出部(突出部)
45、145、245: 張出部
46、146、246: 第1立壁部
47、147、247: 平行部
48、148、248: 第2立壁部
51: 前方下垂部
52,54: 弾性係止片(機器係止部)
52A,54A: 爪部
53: 後方下垂部
60: 第1ヒンジ
61: 第1蓋部
62: 後方被覆部
63: 第1連結壁
64: 第1反対壁
65: 弾性係止片
66: 第1重畳部
67: 位置決めリブ
68: 保持リブ(押さえ部)
70: 第2ヒンジ
70A: 第2中央ヒンジ
70B: 第2側部ヒンジ
71: 第2蓋部
72: 前方被覆部
73: 第2連結壁
74: 蓋部側突出部
75: 弾性係止片
75A: 係止爪
76: 第2重畳部
77: 右側壁
78: 左側壁
79: 受けリブ
79A: 受け凹部
80: 位置決め突部(係合部)
149: 支持リブ(側面支持部)
420、2420: 横側縁部(側面支持部)
421: 第1縁部
422: 第2縁部
423: 第3縁部
424: 上側縁部
425、2425: 下側縁部(板面支持部)
S: 隙間
W: 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21