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特許7491252バスバー樹脂成形品の製造方法及びバスバー樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】バスバー樹脂成形品の製造方法及びバスバー樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20240521BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20240521BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H02K15/12 E
H02K3/50 A
B29C33/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021056236
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022153148
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】安田 裕佑
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-134727(JP,A)
【文献】国際公開第2018/164120(WO,A1)
【文献】特開2017-153261(JP,A)
【文献】特開2010-141953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/12
H02K 3/50
B29C 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に突出する端子を有する複数の円弧状のバスバーと、前記複数のバスバーのそれぞれ少なくとも一部を収容可能な複数の凹部を有する保持部とが樹脂によって封止されたバスバー樹脂成形品の製造方法であって、
前記保持部の複数の凹部内に前記複数のバスバーを収容するバスバー収容工程と、
樹脂成形用金型の固定型によって、前記複数の凹部内に前記複数のバスバーが収容された前記保持部の底部を支持する保持部配置工程と、
前記固定型に対して前記樹脂成形用金型の可動型を型締めして、前記固定型及び前記可動型によって、前記複数のバスバーのうち少なくとも一つのバスバーの径方向に突出する前記端子を保持し、且つ、前記可動型と前記保持部における凹部の開口側及び前記凹部内に収容された前記複数のバスバーとの間にそれぞれ隙間を有するキャビティを形成する型締め工程と、
前記凹部の開口側から前記キャビティ内に樹脂を射出する樹脂射出工程と、
を有する、
バスバー樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバスバー樹脂成形品の製造方法において、
前記保持部配置工程では、前記保持部の底部の少なくとも一部を前記固定型に接触させることにより、前記固定型によって前記保持部の底部を支持する、バスバー樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバスバー樹脂成形品の製造方法において、
前記固定型は、バスバー樹脂成形品に他の部分よりも厚肉である厚肉部を形成する厚肉形成部を有する、 バスバー樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のバスバー樹脂成形品の製造方法において、
前記保持部の底部は、少なくとも一つの開口部を有し、
前記厚肉形成部は、前記固定型において、前記固定型によって前記保持部の底部を支持した状態で前記保持部の開口部が位置する部分に位置する、バスバー樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のバスバー樹脂成形品の製造方法において、 前記樹脂射出工程では、前記キャビティ内に樹脂を射出する際に、前記開口部に向かって樹脂を射出する、 バスバー樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
径方向に突出する端子を有する複数の円弧状のバスバーと、前記複数のバスバーのそれぞれ少なくとも一部を収容可能な複数の凹部を有する保持部とが樹脂によって封止された円環状のバスバー樹脂成形品であって、
前記複数のバスバー及び前記保持部の凹部は、前記樹脂によって覆われ、
前記保持部の底部の少なくとも一部は、露出していて、
前記保持部の底部とは軸線方向の反対側の面且つ、前記保持部の凹部の開口側に、ゲート痕を有する、バスバー樹脂成形品。
【請求項7】
請求項6に記載のバスバー樹脂成形品において、
前記保持部の底部を含む面から前記軸線方向に突出する厚肉部を有し、
前記保持部の底部は、少なくとも一つの開口部を有し、
前記厚肉部と、前記保持部の底部における前記少なくとも一つの開口部を覆う樹脂とは、単一の部材である、バスバー樹脂成形品。
【請求項8】
請求項7に記載のバスバー樹脂成形品において、
前記ゲート痕は、前記保持部における前記少なくとも一つの開口部とは前記軸線方向の反対側で、且つ、バスバー樹脂成形品を前記軸線方向に見て、前記少なくとも一つの開口部と重なる位置に位置する、バスバー樹脂成形品。
【請求項9】
請求項7または8に記載のバスバー樹脂成形品において、
前記保持部の底部は、前記開口部を複数有し、
前記複数のバスバーのうち一部のバスバーは、前記軸線方向に延びて前記複数の開口部のうち一部の開口部を貫通する外部接続端子を有する、バスバー樹脂成形品。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一つに記載のバスバー樹脂成形品において、
前記複数のバスバーは、それぞれ、単一の部材である、バスバー樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー樹脂成形品の製造方法及びバスバー樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
バスバーを樹脂によって封止することによりバスバー樹脂成形品を形成する方法が知られている。このようなバスバー樹脂成形品として、例えば特許文献1に開示されるように、複数のバスバーと、前記複数のバスバーをそれぞれ収容可能な複数の保持溝を有する絶縁ホルダとが樹脂によって封止された車両用薄型ブラシレスモータの集中配電部材が知られている。
【0003】
前記特許文献1に開示されている集中配電部材では、前記複数の保持溝は、それぞれ平行な間隔をおいて、絶縁ホルダの径方向に併設されている。各保持溝には、それぞれ各相に対応するバスバーが個別に挿入されている。前記絶縁ホルダ及び前記各バスバーは、全体的に絶縁樹脂層によって被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-134727号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、絶縁ホルダなどの保持部を、保持溝である凹部内にバスバーを収容した状態で樹脂によって封止する場合、一般的には、樹脂成形用金型を用いる。前記樹脂成形用金型を用いて複数のバスバー及び保持部の全体を樹脂封止する場合には、保持部の凹部開口側が固定型に面する状態で、樹脂封止を行うのが一般的である。しかしながら、この場合には、保持部の凹部開口側にも樹脂が周り込むように、前記凹部開口側と前記固定型との間に隙間が形成された状態で樹脂を射出する必要がある。
【0006】
上述のように前記保持部の凹部開口側と前記固定型との間に隙間が形成された状態で、樹脂を射出すると、樹脂の射出圧力によって、バスバーが前記凹部の内部から外へ移動して前記固定型と接触する可能性がある。そうすると、前記バスバーの一部が樹脂によって覆われない可能性がある。
【0007】
また、一般的に、バスバーは、径方向に突出してコイルに接続される端子を有する。上述のように前記樹脂成形用金型を用いて複数のバスバー及び保持部の全体を樹脂封止する場合には、前記端子に対する樹脂の付着を防止するために、前記端子を樹脂成形用金型によって保持する必要がある。この場合にも、前記保持部の凹部開口側と前記固定型との間に隙間が形成された状態で樹脂を射出すると、樹脂の射出圧力によって、前記端子が変形する可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、バスバーが樹脂封止されたバスバー樹脂成形品の製造方法において、前記バスバーが樹脂から露出することを防止するとともに、前記バスバーを樹脂封止する際の樹脂の射出圧力によって前記バスバーの端子が変形することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係るバスバー樹脂成形品の製造方法は、径方向に突出する端子を有する複数の円弧状のバスバーと、前記複数のバスバーのそれぞれ少なくとも一部を収容可能な複数の凹部を有する保持部とが樹脂によって封止されたバスバー樹脂成形品の製造方法である。この製造方法は、前記保持部の複数の凹部内に前記複数のバスバーを収容するバスバー収容工程と、樹脂成形用金型の固定型によって、前記複数の凹部内に前記複数のバスバーが収容された前記保持部を支持する保持部配置工程と、前記固定型に対して前記樹脂成形用金型の可動型を型締めして、前記固定型及び前記可動型によって、前記複数のバスバーのうち少なくとも一つのバスバーの径方向に突出する前記端子を保持し、且つ、前記可動型と前記保持部における凹部の開口側及び前記凹部内に収容された前記複数のバスバーとの間にそれぞれ隙間を有するキャビティを形成する型締め工程と、前記キャビティ内に樹脂を射出する樹脂射出工程と、を有する。
【0010】
本発明の一実施形態に係るバスバー樹脂成形品は、径方向に突出する端子を有する複数の円弧状のバスバーと、前記複数のバスバーのそれぞれ少なくとも一部を収容可能な複数の凹部を有する保持部とが樹脂によって封止された円環状のバスバー樹脂成形品である。前記複数のバスバー及び前記保持部の凹部は、前記樹脂によって覆われている。前記保持部の底部の少なくとも一部は、露出している。前記バスバー樹脂成形品は、前記保持部の底部とは軸線方向の反対側の面に、ゲート痕を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるバスバー樹脂成形品の製造方法によれば、バスバーが樹脂から露出することを防止するとともに、前記バスバーを樹脂封止する際の樹脂の射出圧力によって前記バスバーの端子が変形することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るモータの断面図である。
図2図2は、バスバー樹脂成形品を、外部接続端子側から見た斜視図である。
図3図3は、図2におけるIII-III線断面図である。
図4図4は、図2におけるIV-IV線断面図である。
図5図5は、バスバーが保持部の凹部内に収容された状態を、外部接続端子側から見た斜視図である。
図6図6は、バスバーが保持部の凹部内に収容された状態を、外部接続端子とは反対側から見た斜視図である。
図7図7は、保持部の概略構成示す斜視図である。
図8図8は、バスバーが複数の凹部内に収容された保持部を、固定型内に配置した状態を模式的に示す断面図である。
図9図9は、固定型に対して可動型を型締めした状態を模式的に示す図である。
図10図10は、バスバー樹脂成形品の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0014】
なお、以下の説明では、ロータ2の中心軸Pと平行な方向を「軸方向」、中心軸Pに直交する方向を「径方向」、中心軸Pを中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、この方向の定義により、本発明に係るモータ1の使用時の向きを限定する意図はない。
【0015】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”及び“取り付ける”等(以下、固定等)の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0016】
(モータの構成)
図1は、本発明の例示的な実施形態に係るモータ1の概略構成である。モータ1は、ロータ2と、ステータ3と、モータケース4と、バスバー樹脂成形品5とを備える。ロータ2は、ステータ3に対して、中心軸Pを中心として回転する。本実施形態では、モータ1は、筒状のステータ3内に、ロータ2が中心軸Pを中心として回転可能に位置する、いわゆるインナーロータ型のモータである。
【0017】
ロータ2は、ステータ3の径方向内方に位置し、ステータ3に対して回転可能である。ロータ2の構成は、従来の構成と同様である。よって、ロータ2の構成に関する説明は、省略する。
【0018】
ステータ3は、筒状である。ステータ3は、ロータ2に対して径方向に対向して位置する。ステータ3は、ステータコア31と、複数のステータコイル32とを備える。複数のステータコイル32は、複数相のステータコイル32を含む。各ステータコア31は、軸方向に延びる円筒状である。各ステータコイル32は、ステータコア31に巻線されている。本実施形態では、複数のステータコイル32は、U相、V相及びW相のステータコイル32を含む。
【0019】
モータケース4は、軸方向に延びる円筒状の樹脂製部材である。モータケース4は、円筒状のステータ3の外周を射出成形によって樹脂でモールドすることにより構成されている。モータケース4は、ステータ3に対して軸方向一側で、バスバー樹脂成形品5を保持している。
【0020】
図2は、バスバー樹脂成形品5を、外部接続端子53側から見た斜視図である。図3は、図2におけるIII-III線断面図である。図4は、図2におけるIV-IV線断面図である。図5は、バスバー50が保持部60の凹部61内に収容された状態を、外部接続端子53側から見た斜視図である。図6は、バスバー50が保持部60の凹部61内に収容された状態を、外部接続端子53とは反対側から見た斜視図である。図7は、保持部60の概略構成示す斜視図である。図2から図4に示すように、バスバー樹脂成形品5は、複数のバスバー50と、保持部60と、樹脂被覆部70とを有する。
【0021】
複数のバスバー50は、複数相のバスバー50を含む。本実施形態では、複数のバスバー50は、U相、V相、W相及びニュートラルのバスバー50を含む。図5及び図6に示すように、各バスバー50は、円弧状のバスバー本体51と、バスバー本体51から径方向外方に延びてステータコイル32に電気的に接続されるコイル接続端子52とを有する。よって、各バスバー50は、コイル接続端子52を介して、ステータコイル32に電気的に接続されている。コイル接続端子52が、端子に相当する。
【0022】
複数のバスバー50のうち各相を構成するバスバー50は、バスバー本体51に対して軸方向に延びて外部の機器と電気的に接続される外部接続端子53を有する。
【0023】
各バスバー50は、曲げ加工によって形成された単一の部材である。すなわち、バスバー本体51、コイル接続端子52及び外部接続端子53は、単一の部材である。
【0024】
図7に示すように、保持部60は、環状の樹脂製部材である。保持部60は、軸方向に開口する複数の凹部61を有する。複数の凹部61は、保持部60を前記軸方向に見て、それぞれ円弧状である。複数の凹部61は、保持部60を前記軸方向に見て、径方向に並んで位置する。複数の凹部61は、それぞれ、円弧状のバスバー本体51の少なくとも一部を収容可能な形状を有する。複数の凹部61における前記軸方向の深さは、それぞれ、円弧状のバスバー本体51における前記軸方向の長さよりも小さい。よって、複数の凹部61内に収容されたバスバー本体51は、保持部60に対して前記軸方向に突出している。本実施形態では、保持部60は、U相、V相、W相及びニュートラルのバスバー50をそれぞれ収容する4つの凹部61を有する。
【0025】
図5及び図6に示すように、コイル接続端子52は、保持部60の複数の凹部61内にバスバー本体51が収容された状態で、保持部60の凹部開口側で、保持部60に対して径方向外方に延びている。なお、本実施形態では、コイル接続端子52は、保持部60を軸方向に見て、径方向に折り返された折り返し部52aを有する。特に図示しないが、ステータコイル32は、コイル接続端子52の折り返し部52aに電気的に接続されている。
【0026】
図5に示すように、保持部60は、その底部60aに、軸方向に開口する複数の開口部63を有する。複数の開口部63は、貫通孔を含んでいてもよいし、切り欠き部を含んでいてもよい。複数の開口部63のうち一部の開口部63には、各相のバスバー50の外部接続端子53が貫通している。
【0027】
図2から図4に示すように、樹脂被覆部70は、保持部60の少なくとも一部と、保持部60の複数の凹部61内に収容された複数のバスバー50とを覆っている。本実施形態では、樹脂被覆部70は、保持部60における複数の凹部61の開口側を、複数のバスバー50とともに覆っている。保持部60の底部60aの少なくとも一部は、樹脂被覆部70に対して露出している。保持部60の底部60aの少なくとも一部が露出とは、保持部60の底部60aの少なくとも一部が、樹脂被覆部70によって覆われておらず、表面に現れている状態を意味する。
【0028】
樹脂被覆部70は、保持部60の開口部63内にも位置している。樹脂被覆部70は、バスバー樹脂成形品5を軸方向に見て開口部63と重なる位置で、保持部60の底部60a側から軸方向に突出する厚肉部71を有する。樹脂被覆部70において、厚肉部71と、保持部60の底部60aにおける開口部63を覆う樹脂とは、単一の部材である。厚肉部71は、所定の範囲内で厚みが大きい部分だけでなく、軸方向に突出する突起部も含む。
【0029】
バスバー樹脂成形品5は、保持部60の底部60aとは軸方向の反対側の面に、ゲート痕72を有する。すなわち、樹脂被覆部70は、保持部60の底部60aとは軸方向の反対側に、ゲート痕72を有する。ゲート痕72は、保持部60における前記少なくとも一つの開口部63とは前記軸線方向の反対側で、且つ、バスバー樹脂成形品5を前記軸線方向に見て、前記少なくとも一つの開口部63と重なる位置に位置する。
【0030】
(バスバー樹脂成形品の製造方法)
次に、上述の構成を有するバスバー樹脂成形品5の製造方法について説明する。図8は、バスバー50が複数の凹部61内に収容された保持部60を、固定型X内に配置した状態を模式的に示す断面図である。図9は、固定型Xに対して可動型Yを型締めした状態を模式的に示す図である。図8及び図9において、符号Zは、樹脂成形用金型である。樹脂成形用金型Zは、固定型Xと、可動型Yとを有する。図10は、バスバー樹脂成形品5の製造方法を示すフローチャートである。
【0031】
まず、複数の凹部61を有する保持部60を樹脂によって成形した後、図10のステップS1に示すように、保持部60の複数の凹部61内に、曲げ加工によって形成されたバスバー50を収容する。保持部60の複数の凹部61内にバスバー50を収容するステップS1が、バスバー収容工程である。この状態で、図5及び図6に示すように、バスバー50のコイル接続端子52は、保持部60に対して径方向外方に延びている。また、バスバー50の外部接続端子53は、保持部60の開口部63を軸方向に貫通している。
【0032】
次に、図10のステップS2に示すように、複数のバスバー50が収容された保持部60を、固定型X上に載置する。このとき、図8に示すように、保持部60の底部60aの少なくとも一部は、固定型Xに接触している。このように固定型Xによって、複数の凹部61内に複数のバスバー50が収容された保持部60を支持するステップS2が支持部配置工程である。
【0033】
図10のステップS3に示すように、固定型Xに対して可動型Yを型締めする。図9に示すように、可動型Yは、固定型Xに対して可動型Yが型締めされた状態で、保持部60における複数の凹部61の開口側に対して離隔した位置に位置する。これにより、可動型Yと保持部60における複数の凹部61の開口側との間に、後述する溶融した樹脂が流入する隙間Saが形成される。
【0034】
固定型Xは、バスバー樹脂成形品5に厚肉部71を形成する厚肉形成部Xaを有する。厚肉形成部Xaは、固定型Xの底面に対して凹んだ凹部である。保持部60の開口部63は、固定型Xによって保持部60の底部60aが支持された状態で、保持部60及び固定型Xを軸方向に見て、厚肉形成部Xaと重なる位置に位置する。これにより、後述するようにキャビティS内に樹脂を射出した際に、開口部63を通過した樹脂が、厚肉形成部Xa内に入り込みやすい。
【0035】
上述のように固定型Xに対して可動型Yを型締めした際に、固定型Xと可動型Yとによって、バスバー50の径方向外方に延びるコイル接続端子52を挟み込むことにより、複数のバスバー50を保持する。このように、固定型Xと可動型Yとによってコイル接続端子52を挟み込むことにより、後述するようにバスバー50を樹脂封止した際に、コイル接続端子52に樹脂が付着するのを防止できる。
【0036】
固定型Xと可動型Yとを型締めすることにより、固定型Xと可動型Yとの間にキャビティSが形成される。キャビティS内には、保持部60及び複数のバスバー50が位置する。キャビティSは、可動型Yと保持部60における凹部61の開口側との間に隙間Saを有する。キャビティSは、バスバー樹脂成形品5の樹脂被覆部70と同じ形状を有する。
【0037】
なお、バスバー50の外部接続端子53は、保持部60の開口部63を貫通して、固定型Xの図示しない凹部内に収容されている。外部接続端子53が前記凹部内に収容されることにより、外部接続端子53に樹脂が付着するのを防止できる。
【0038】
上述のように、固定型Xに対して樹脂成形用金型の可動型Yを型締めして、固定型X及び可動型Yによって、複数のバスバー50のうち少なくとも一つのバスバー50の径方向に突出するコイル接続端子52を保持し、且つ、可動型Yと固定型Xとの間に、複数のバスバー50及び保持部60が収容されるキャビティSを形成するステップS1が、型締め工程である。
【0039】
図10のステップS4に示すように、上述のキャビティS内に溶融した樹脂を射出する。これにより、保持部60の一部及び複数のバスバー50を覆う樹脂被覆部70が形成される。キャビティS内に樹脂を射出する際には、図9に実線矢印で示すように、可動型Y側から、固定型Xの厚肉形成部Xaに向けて射出する。これにより、厚肉形成部Xa内に樹脂を効率良く充填することができる。キャビティS内に樹脂を射出する工程が樹脂射出工程である。
【0040】
本実施形態のバスバー樹脂成形品5の製造方法は、径方向に突出するコイル接続端子52を有する複数の円弧状のバスバー50と、複数のバスバー50のそれぞれ少なくとも一部を収容可能な複数の凹部61を有する保持部60とが樹脂によって封止されたバスバー樹脂成形品5の製造方法である。前記製造方法は、保持部60の複数の凹部61内に複数のバスバー50を収容するバスバー収容工程S1と、樹脂成形用金型の固定型Xによって、複数の凹部61内に複数のバスバー50が収容された保持部60の底部60aを支持する保持部配置工程S2と、固定型Xに対して樹脂成形用金型の可動型Yを型締めして、固定型X及び可動型Yによって、複数のバスバー50のうち少なくとも一つのバスバー50の径方向に突出するコイル接続端子52を保持し、且つ、可動型Yと保持部60における凹部61の開口側及び凹部61内に収容された複数のバスバー50との間にそれぞれ隙間Saを有するキャビティSを形成する型締め工程S3と、キャビティS内に樹脂を射出する樹脂射出工程S4と、を有する。
【0041】
複数のバスバーを樹脂封止する場合、前記複数のバスバーを保持部の複数の凹部内に収容した状態で樹脂封止する方法がある。この方法では、前記複数のバスバー及び前記保持部の全体を樹脂封止するために、前記保持部における凹部の開口側が固定型に面する状態で、樹脂封止を行うのが一般的である。しかしながら、この場合には、前記保持部における凹部の開口側にも樹脂が周り込むように、前記保持部における凹部の開口側と前記固定型との間に隙間が形成された状態で樹脂を射出する必要がある。
【0042】
上述のように前記保持部における凹部の開口側と前記固定型との間に隙間が形成された状態で、樹脂を射出すると、樹脂の射出圧力によって、前記バスバーが前記凹部の内部から外に移動して前記固定型と接触する可能性がある。そうすると、前記バスバーの一部が樹脂によって覆われない可能性がある。
【0043】
また、前記バスバーが径方向に突出するコイル接続端子を有する場合、前記コイル接続端子に対する樹脂の付着を防止するために、前記コイル接続端子を樹脂成形用金型によって保持する必要がある。この場合にも、前記保持部における凹部の開口側と前記固定型との間に隙間が形成された状態で樹脂を射出すると、樹脂の射出圧力によって、前記コイル接続端子が変形する可能性がある。
【0044】
これに対し、本実施形態では、バスバー50が凹部61内に収容された保持部60の底部60aを固定型Xによって支持するとともに、可動型Yと保持部60における凹部61の開口側及び凹部61内に収容された複数のバスバー50との間にそれぞれ隙間Saを有するキャビティSを形成して、キャビティS内に樹脂を射出する。これにより、上述の従来の方法のように、固定型Xと保持部60における凹部61の開口側との間に隙間を形成する必要がない。よって、樹脂の射出圧力によってバスバー50が保持部60の凹部61の内部から外に移動して、樹脂によって覆われない部分が形成されるのを防止できるとともに、バスバー50の径方向に突出するコイル接続端子52が樹脂の射出圧力によって変形するのを防止できる。
【0045】
しかも、保持部60が固定型Xによって支持されるため、固定型Xに対して保持部60を精度良く位置決めできる。
【0046】
したがって、バスバー50及び保持部60が樹脂によって封止されたバスバー樹脂成形品5において、バスバー50の径方向に突出するコイル接続端子52の変形及びバスバー50の露出を防止できるとともに、寸法精度を向上できる。
【0047】
保持部配置工程S2では、保持部60の底部60aの少なくとも一部を固定型Xに接触させることにより、固定型Xによって保持部60の底部60aを支持する。
【0048】
これにより、保持部60の底部60aの少なくとも一部が固定型Xに接触しているため、固定型Xに対して保持部60をより確実に支持できるとともに精度良く位置決めできる。したがって、バスバー樹脂成形品5の寸法精度をより向上できる。
【0049】
固定型Xは、バスバー樹脂成形品5に他の部分よりも厚肉である厚肉部71を形成する厚肉形成部Xaを有する。これにより、バスバー樹脂成形品5に厚肉部71を形成することができる。
【0050】
保持部60の底部60aは、少なくとも一つの開口部63を有する。厚肉形成部Xaは、固定型Xにおいて、固定型Xによって保持部60の底部60aを支持した状態で保持部60の開口部63が位置する部分に位置する。これにより、バスバー樹脂成形品5に厚肉部71を形成する場合に、保持部60が厚肉部71を形成する位置に開口部63を有することにより、開口部63から固定型Xの厚肉形成部Xa内に樹脂が入り込みやすい。よって、バスバー樹脂成形品5に厚肉部71を容易に形成することができる。
【0051】
樹脂射出工程S4では、キャビティS内に樹脂を射出する際に、保持部60の開口部63に向かって樹脂を射出する。これにより、保持部60の開口部63内に樹脂が入り込みやすい。よって、開口部63を通過した樹脂を固定型Xの厚肉形成部Xaにより確実に充填することができる。したがって、バスバー樹脂成形品5の厚肉部71をより確実に且つ容易に形成することができる。
【0052】
上述の製造方法によって製造される本実施形態のバスバー樹脂成形品5は、径方向に突出するコイル接続端子52を有する複数の円弧状のバスバー50と、複数のバスバー50のそれぞれ少なくとも一部を収容可能な複数の凹部61を有する保持部60とが樹脂によって封止された円環状のバスバー樹脂成形品である。複数のバスバー50及び保持部60の凹部61は、樹脂によって覆われている。保持部60の底部60aの少なくとも一部は、露出している。バスバー樹脂成形品5は、保持部60の底部60aとは軸線方向の反対側の面に、ゲート痕72を有する。
【0053】
上述の構成を有するバスバー樹脂成形品5を製造するためには、保持部60の底部60aが固定型Xに接触した状態で、可動型Yと保持部60及び複数のバスバー50との間にそれぞれ隙間Saを有するキャビティS内に、樹脂が射出される。これにより、樹脂の射出圧力によって、保持部60の凹部61の内部から外にバスバー50が移動して固定型Xに接触したり、バスバー50の径方向に突出するコイル接続端子52が変形を生じたりするのを防止できる。
【0054】
しかも、保持部60の底部60aが固定型Xに接触しているため、固定型Xに対して保持部60を精度良く位置決めできる。
【0055】
よって、バスバー50の径方向に突出するコイル接続端子52の変形及びバスバー50の露出を防止できるとともに、寸法精度を向上可能なバスバー樹脂成形品5が得られる。
【0056】
バスバー樹脂成形品5は、保持部60の底部60aを含む面から前記軸線方向に突出する厚肉部71を有する。保持部60の底部60aは、少なくとも一つの開口部63を有する。厚肉部71と、保持部60の底部60aにおける前記少なくとも一つの開口部63を覆う樹脂とは、単一の部材である。
【0057】
このようなバスバー樹脂成形品5では、保持部60の底部60aが開口部63を有するため、開口部63を樹脂が通過して厚肉部71が容易に形成される。よって、厚肉部71を有するバスバー樹脂成形品5を容易に実現できる。
【0058】
ゲート痕72は、保持部60における前記少なくとも一つの開口部63とは前記軸線方向の反対側で、且つ、バスバー樹脂成形品5を前記軸線方向に見て、前記少なくとも一つの開口部63と重なる位置に位置する。
【0059】
このようなバスバー樹脂成形品5は、保持部60の底部60aが有する開口部63に対して軸線方向の反対側で、且つ、保持部60を前記軸線方向に見て開口部63と重なる位置から、樹脂が金型内に射出されることにより形成される。このように保持部60を前記軸線方向に見て開口部63と重なる位置から樹脂が金型内に射出される場合には、保持部60を前記軸線方向に見て開口部63と重ならない位置から樹脂が金型内に射出される場合に比べて、開口部63内に樹脂をより確実に流すことができ、厚肉部71をより容易に形成できる。したがって、厚肉部71を有するバスバー樹脂成形品5を容易に実現できる。
【0060】
保持部60の底部60aは、開口部63を複数有する。複数のバスバー50のうち一部のバスバー50は、前記軸線方向に延びて複数の開口部63のうち一部の開口部63を貫通する外部接続端子53を有する。
【0061】
これにより、複数のバスバー50のうち一部のバスバー50において軸線方向に延びる外部接続端子53も、複数のバスバー50及び保持部60とともに樹脂によって封止することができる。したがって、外部接続端子53を有するバスバー樹脂成形品5を容易に実現できる。
【0062】
複数のバスバー50は、それぞれ、単一の部材である。これにより、バスバー樹脂成形品5を製造する際に、バスバーに端子等を溶接する作業が不要になる。よって、端子等を有するバスバー50が樹脂によって封止されたバスバー樹脂成形品5を容易に実現できる。
【0063】
(その他の実施形態)
以上、本発明の例示的な実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0064】
前記実施形態では、保持部60は、底部60aに、複数の開口部63を有する。しかしながら、保持部は、底部に、1つの開口部を有していてもよい。
【0065】
前記実施形態では、保持部60の開口部63にバスバー50の外部接続端子53が貫通している。しかしながら、保持部の開口部に、バスバーの外部接続端子が貫通していなくてもよい。
【0066】
前記実施形態では、バスバー50は、単一の部材である。しかしながら、バスバーは、複数の部品によって構成されていてもよい。すなわち、バスバーは、バスバー本体、コイル接続端子及び外部接続端子の少なくとも一部が別の部品であってもよい。
【0067】
前記実施形態では、バスバー樹脂成形品5は、厚肉部71を有する。しかしながら、バスバー樹脂成形品は、厚肉部を有していなくてもよい。また、厚肉部は、バスバー樹脂成形品を軸方向に見て開口部と重なる位置に形成されていなくてもよい。厚肉部は、バスバー樹脂成形品において、保持部の底部側に形成されていてもよい。
【0068】
前記実施形態では、コイル接続端子52は、バスバー本体51から径方向外方に延びている。しかしながら、コイル接続端子は、バスバー本体から径方向内方に延びていてもよい。
【0069】
前記実施形態では、ゲート痕72は、保持部60における開口部63とは軸線方向の反対側で、且つ、バスバー樹脂成形品5を前記軸線方向に見て、開口部63と重なる位置に位置する。しかしながら、ゲート痕は、保持部における開口部側に位置していてもよい。また、ゲート痕は、バスバー樹脂成形品を軸線方向に見て、開口部と重ならない位置に位置していてもよい。
【0070】
前記実施形態では、モータ1は、インナーロータ型のモータである。しかしながら、モータは、アウターロータ型のモータであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、複数のバスバーが樹脂によって封止されたバスバー樹脂成形品に利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 モータ
2 ロータ
3 ステータ
4 モータケース
5 バスバー樹脂成形品
31 ステータコア
32 ステータコイル
50 バスバー
51 バスバー本体
52 コイル接続端子
52a 折り返し部
53 外部接続端子
60 保持部
60a 底部
61 凹部
63 開口部
70 樹脂被覆部
71 厚肉部
72 ゲート痕
X 固定型
Y 可動型
Z 樹脂成形用金型
S キャビティ
Sa 隙間
図1
図2
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