(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び飛行体
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04537 20160101AFI20240521BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240521BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240521BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20240521BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240521BHJP
H01M 8/00 20160101ALN20240521BHJP
【FI】
H01M8/04537
H01M8/04746
H01M8/04313
B64D27/24
H01M8/10 101
H01M8/00 Z
(21)【出願番号】P 2021073154
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】岡部 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】品川 知広
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 禎宏
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2008/146928(JP,A1)
【文献】特開2018-156743(JP,A)
【文献】特開2003-346849(JP,A)
【文献】特開2010-287395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体用の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、
前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス系と、
電位センサと、
制御部を有し、
前記燃料ガス系は燃料ガス供給部を有し、
前記制御部は、前記燃料電池の電位を監視し、且つ、前記燃料電池の電位が逆電位の状態の積算時間を記録し、
前記制御部は、前記電位センサが計測した前記燃料電池の電位が逆電位であるか否か判定し、
前記制御部は、前記燃料電池の電位が逆電位であると判定したとき、
前記積算時間が所定の時間未満であるか否か判定し、
前記制御部は、前記積算時間が所定の時間未満であると判定したとき、前記燃料ガス供給部からの前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を増大させ
、
前記燃料電池の電位は、アノードを基準とするカソード電位であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の燃料電池システムを備える飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システム及び飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、1つの単セル(以下、セルと記載する場合がある)又は複数の単セルを積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)で構成され、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化剤ガスとの電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、実際に燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは、酸化・還元に寄与しないガスとの混合物である場合が多い。特に酸化剤ガスは酸素を含む空気である場合が多い。
なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。また、単セル、及び、単セルを積層した燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
【0003】
燃料電池に関して種々の研究がなされている。
例えば特許文献1では、燃料電池が搭載された飛行体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飛行体に搭載した燃料電池システムの自己診断機能(オンボードダイアグ(OBD))について検討されている。
燃料電池は、燃料ガスの供給量が不足すると触媒が反応し、燃料電池の電位が逆電位になる場合がある。
飛行体の飛行中に燃料電池への燃料ガスの供給量不足等により燃料電池の電位が逆電位になった場合、燃料電池の出力を制限する必要等が生じ、飛行体の飛行が不安定になる。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、飛行体の飛行中に燃料電池の発電に異常が生じた場合であっても、燃料電池の出力を所定の時間安定化させることができ、飛行体が安定に飛行することができる時間を延ばすことができる燃料電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の燃料電池システムは、飛行体用の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、
前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス系と、
電位センサと、
制御部を有し、
前記燃料ガス系は燃料ガス供給部を有し、
前記制御部は、前記電位センサが計測した前記燃料電池の電位が逆電位であるか否か判定し、
前記制御部は、前記燃料電池の電位が逆電位であると判定したとき、前記燃料ガス供給部からの前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を増大させることを特徴とする。
【0008】
本開示の燃料電池システムにおいては、前記制御部は、前記燃料電池の電位を監視し、且つ、前記燃料電池の電位が逆電位の状態の積算時間を記録し、
前記制御部は、前記燃料電池の電位が逆電位であると判定したとき、前記積算時間が所定の時間未満であるか否か判定し、
前記制御部は、前記積算時間が所定の時間未満であると判定したとき、前記燃料ガス供給部からの前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を増大させてもよい。
【0009】
本開示の飛行体は、前記燃料電池システムを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の燃料電池システムによれば、飛行体の飛行中に燃料電池の発電に異常が生じた場合であっても、燃料電池の出力を所定の時間安定化させることができ、飛行体が安定に飛行することができる時間を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の燃料電池システムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の燃料電池システムの制御の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本開示の燃料電池システムの制御の別の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の燃料電池システムは、飛行体用の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、
前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス系と、
電位センサと、
制御部を有し、
前記燃料ガス系は燃料ガス供給部を有し、
前記制御部は、前記電位センサが計測した前記燃料電池の電位が逆電位であるか否か判定し、
前記制御部は、前記燃料電池の電位が逆電位であると判定したとき、前記燃料ガス供給部からの前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を増大させることを特徴とする。
【0013】
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、水素であってもよい。酸化剤ガスは酸素、空気、乾燥空気等であってもよい。
【0014】
本開示の燃料電池システムは、飛行体に搭載されて用いられる。
また、本開示の燃料電池システムは、二次電池の電力でも飛行可能な飛行体に搭載されて用いられてもよい。
本開示の飛行体は、航空機であってもよい。航空機は、飛行機、垂直離着陸機等であってもよい。垂直離着陸機は、ヘリコプター、ドローン等であってもよい。
飛行体は、本開示の燃料電池システムを備えていてもよい。
【0015】
本開示の燃料電池システムは、燃料電池を備える。
燃料電池は、単セルを1つのみ有するものであってもよいし、単セルを複数個積層した積層体である燃料電池スタックであってもよい。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよく、2~600個であってもよい。
燃料電池スタックは、単セルの積層方向の両端にエンドプレートを備えていてもよい。
【0016】
燃料電池の単セルは、少なくとも膜電極ガス拡散層接合体を備える。
膜電極ガス拡散層接合体は、アノード側ガス拡散層及び、アノード触媒層及び、電解質膜及び、カソード触媒層及び、カソード側ガス拡散層をこの順に有する。
【0017】
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層及びカソード側ガス拡散層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層及びアノード側ガス拡散層を含む。
カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。また、アノード触媒およびカソード触媒としては、例えば、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)などが挙げられ、触媒を担持する母材および導電材としては、例えば、カーボンなどの炭素材料等が挙げられる。
【0018】
カソード側ガス拡散層及びアノード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層と称する。
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0019】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0020】
単セルは、必要に応じて膜電極ガス拡散層接合体の両面を挟持する2枚のセパレータを備えてもよい。2枚のセパレータは、一方がアノード側セパレータであり、もう一方がカソード側セパレータである。本開示では、アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータという。
セパレータは、反応ガス及び冷媒を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔を有していてもよい。冷媒としては、低温時の凍結を防止するために例えばエチレングリコールと水との混合溶液を用いることができる。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよい。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがアノード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、アノード側セパレータは、アノード側ガス拡散層に接する面に燃料ガス供給孔から燃料ガス排出孔に燃料ガスを流す燃料ガス流路を有していてもよく、アノード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがカソード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、カソード側セパレータは、カソード側ガス拡散層に接する面に酸化剤ガス供給孔から酸化剤ガス排出孔に酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路を有していてもよく、カソード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
【0021】
燃料電池は、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等のマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、アノード入口マニホールド、カソード入口マニホールド、及び、冷媒入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、アノード出口マニホールド、カソード出口マニホールド、及び、冷媒出口マニホールド等が挙げられる。
【0022】
燃料電池システムは、電位センサを備える。
電位センサは、燃料電池の電位を測定する。電位は、カソード電位であってもよいし、アノード電位であってもよい。
電位センサは、制御部と電気的に接続され、制御部は、電位センサによって測定された燃料電池の電位を検知する。
電位センサは、従来公知の電位計等を用いることができる。
【0023】
燃料電池システムは、燃料ガス系を備える。
燃料ガス系は、燃料電池に燃料ガスを供給する。
燃料ガス系は燃料ガス供給部を有する。
燃料ガス系は、さらに燃料ガス供給流路と、エジェクタと、循環流路と、気液分離器と、燃料オフガス排出流路と、排気排水弁と、を備えていてもよい。
【0024】
燃料ガス供給部は、燃料ガスを燃料電池のアノードに供給する。
燃料ガス供給部としては、例えば、燃料タンク等が挙げられ、具体的には、液体水素タンク、圧縮水素タンク等が挙げられる。
燃料ガス供給部は、制御部と電気的に接続される。燃料ガス供給部は、制御部からの制御信号に従って、燃料ガス供給部の主止弁の開閉が制御されることにより燃料ガスの燃料電池への供給のON/OFFが制御されてもよい。
【0025】
燃料ガス供給流路は、燃料ガス供給部と燃料電池の燃料ガス入口とを接続する。燃料ガス供給流路は、燃料ガスの燃料電池のアノードへの供給を可能にする。燃料ガス入口は、燃料ガス供給孔、アノード入口マニホールド等であってもよい。
【0026】
燃料ガス供給流路には、エジェクタが配置されていてもよい。
エジェクタは、例えば、燃料ガス供給流路上の循環流路との合流部に配置されていてもよい。エジェクタは、燃料ガスと循環ガスとを含む混合ガスを燃料電池のアノードに供給する。エジェクタとしては、従来公知のエジェクタを採用することができる。
【0027】
燃料ガス供給流路の燃料ガス供給部とエジェクタとの間の領域には、調圧弁及び中圧水素センサが配置されていてもよい。
調圧弁は、燃料ガス供給部からエジェクタに供給される燃料ガスの圧力を調節する。
調圧弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって調圧弁の開閉及び開度等を制御されることにより、エジェクタに供給される燃料ガスの圧力を調整してもよい。
中圧水素センサは、制御部と電気的に接続され、制御部は、中圧水素センサによって測定された燃料ガスの圧力を検知し、検知した圧力から調圧弁の開閉及び開度等を制御することにより、エジェクタに供給される燃料ガスの圧力を調整してもよい。
【0028】
燃料オフガス排出流路は、燃料電池の燃料ガス出口と燃料電池システムの外部とを接続する。
燃料オフガス排出流路には、燃料ガス出口と燃料電池システムの外部との間の領域に気液分離器が配置されていてもよい。
燃料オフガス排出流路は、循環流路から気液分離器を介して分岐していてもよい。
燃料オフガス排出流路は、燃料電池の燃料ガス出口から排出される燃料オフガスを燃料電池システムの外部に排出する。燃料ガス出口は、燃料ガス排出孔、アノード出口マニホールド等であってもよい。
【0029】
排気排水弁(燃料オフガス排出弁)は、燃料オフガス排出流路に配置されていてもよい。排気排水弁は、燃料オフガス排出流路の気液分離器よりも下流に配置される。
排気排水弁は、燃料オフガス及び水分等を外部(系外)へ排出することを可能にする。なお、外部とは、燃料電池システムの外部であってもよく、飛行体の外部であってもよい。
排気排水弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって排気排水弁の開閉を制御されることにより、燃料オフガスの外部への排出流量及び水分(液水)の排水流量を調整してもよい。また、排気排水弁の開度を調整することにより、燃料電池のアノードに供給される燃料ガス圧力(アノード圧力)を調整してもよい。
燃料オフガスは、アノードにおいて未反応のまま通過した燃料ガス及び、カソードで生成した生成水がアノードに到達した水分等を含んでいてもよい。燃料オフガスは、触媒層及び電解質膜等で生成した腐食物質及び、掃気時にアノードに供給されてもよい酸化剤ガス等を含む場合がある。
【0030】
循環流路は、燃料電池の燃料ガス出口とエジェクタとを接続してもよい。
循環流路は、燃料オフガス排出流路から分岐し、燃料ガス供給流路に配置されるエジェクタと接続することにより燃料ガス供給流路と合流してもよい。
循環流路は、燃料オフガス排出流路から気液分離器を介して分岐し、燃料ガス供給流路に配置されるエジェクタと接続することにより燃料ガス供給流路と合流してもよい。
循環流路は、燃料電池の燃料ガス出口から排出された燃料ガスである燃料オフガスを回収し、循環ガスとして燃料電池に供給することを可能にする。
【0031】
循環流路には、ガス循環ポンプが配置されていてもよい。ガス循環ポンプは、燃料オフガスを循環ガスとして循環させる。ガス循環ポンプは、制御部と電気的に接続され、制御部によってガス循環ポンプの駆動のオン・オフ及び回転数等を制御されることにより、循環ガスの流量を調整してもよい。
【0032】
循環流路には、気液分離器(アノード気液分離器)が配置されていてもよい。
気液分離器は、燃料オフガス排出流路と循環流路との分岐点に配置されていてもよい。したがって、燃料ガス出口から気液分離器までの流路は、燃料オフガス排出流路であってもよく、循環流路であってもよい。
気液分離器は、燃料オフガス排出流路の排気排水弁よりも上流に配置される。
気液分離器は、燃料ガス出口から排出される燃料ガスである燃料オフガスと水分(液水)を分離する。これにより、燃料オフガスを循環ガスとして循環流路に戻してもよいし、不要なガス及び水分等を燃料オフガス排出流路の排気排水弁を開弁して外部に排出してもよい。また、気液分離器により、余分な水分が循環流路に流れることを抑制することができるため、当該水分による循環ポンプ等の凍結の発生を抑制することができる。
【0033】
燃料電池システムは、酸化剤ガス系を備えていてもよい。
酸化剤ガス系は、酸化剤ガス供給部、酸化剤ガス供給流路、酸化剤オフガス排出流路、酸化剤ガスバイパス流路、バイパス弁、酸化剤ガス流量センサ等を備えていてもよい。
酸化剤ガス供給部は、燃料電池に酸化剤ガスを供給する。具体的には、酸化剤ガス供給部は、燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する。
酸化剤ガス供給部としては、例えば、エアコンプレッサー等を用いることができる。
酸化剤ガス供給部は、制御部と電気的に接続される。酸化剤ガス供給部は、制御部からの制御信号に従って駆動される。酸化剤ガス供給部は、制御部によって酸化剤ガス供給部からカソードに供給される酸化剤ガスの流量及び圧力からなる群より選ばれる少なくとも1つを制御されてもよい。
酸化剤ガス供給流路は、酸化剤ガス供給部と燃料電池の酸化剤ガス入口とを接続する。酸化剤ガス供給流路は、酸化剤ガス供給部から燃料電池のカソードへの酸化剤ガスの供給を可能にする。酸化剤ガス入口は、酸化剤ガス供給孔、カソード入口マニホールド等であってもよい。
酸化剤オフガス排出流路は、燃料電池の酸化剤ガス出口と接続する。酸化剤オフガス排出流路は、燃料電池のカソードから排出される酸化剤ガスである酸化剤オフガスの外部への排出を可能にする。酸化剤ガス出口は、酸化剤ガス排出孔、カソード出口マニホールド等であってもよい。
酸化剤オフガス排出流路には、酸化剤ガス圧力調整弁が設けられていてもよい。
酸化剤ガス圧力調整弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって酸化剤ガス圧力調整弁が開弁されることにより、反応済みの酸化剤ガスである酸化剤オフガスを酸化剤オフガス排出流路から外部へ排出する。また、酸化剤ガス圧力調整弁の開度を調整することにより、カソードに供給される酸化剤ガス圧力(カソード圧力)を調整してもよい。
酸化剤ガスバイパス流路は、酸化剤ガス供給流路から分岐し、燃料電池を迂回し、酸化剤ガス供給流路の分岐部と酸化剤オフガス排出流路の合流部とを接続する。
酸化剤ガスバイパス流路には、バイパス弁が配置される。
バイパス弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によってバイパス弁が開弁されることにより、燃料電池への酸化剤ガスの供給が不要な場合に燃料電池を迂回して酸化剤ガスを酸化剤オフガス排出流路から外部へ排出することができる。
酸化剤ガス流量センサは、酸化剤ガス供給流路に配置される。
酸化剤ガス流量センサは、酸化剤ガス系内の酸化剤ガスの流量を検出する。酸化剤ガス流量センサは、制御部と電気的に接続される。制御部は、酸化剤ガス流量センサで検出した酸化剤ガスの流量からエアコンプレッサーの回転数を推定してもよい。酸化剤ガス流量センサは、酸化剤ガス供給流路の酸化剤ガス供給部よりも上流に配置されていてもよい。
酸化剤ガス流量センサは、従来公知の流量計等を採用することができる。
【0034】
燃料電池システムは、燃料電池の冷却系を備えていてもよい。
冷却系は、冷媒供給部を備えていてもよく、冷媒循環流路を備えていてもよい。
冷媒循環流路は、燃料電池に設けられる冷媒供給孔及び冷媒排出孔に連通し、冷媒供給部から供給される冷媒を燃料電池内外で循環させることを可能にする。
冷媒供給部は、制御部と電気的に接続される。冷媒供給部は、制御部からの制御信号に従って駆動される。冷媒供給部は、制御部によって冷媒供給部から燃料電池に供給される冷媒の流量を制御される。これにより燃料電池の温度が制御されてもよい。
冷媒供給部は、例えば、冷却水ポンプ等が挙げられる。
冷媒循環流路には、冷却水の熱を放熱するラジエータが設けられていてもよい。
冷媒循環流路には、冷媒を蓄えるリザーブタンクが設けられていてもよい。
【0035】
燃料電池システムは、二次電池を備えていてもよい。
二次電池(バッテリ)は、充放電可能なものであればよく、例えば、ニッケル水素二次電池、及び、リチウムイオン二次電池等の従来公知の二次電池が挙げられる。また、二次電池は、電気二重層コンデンサ等の蓄電素子を含むものであってもよい。二次電池は、複数個を直列に接続した構成であってもよい。二次電池は、電動機及びエアコンプレッサー等に電力を供給する。二次電池は、例えば、飛行体の外部の電源から充電可能になっていてもよい。二次電池は、燃料電池の出力により充電されてもよい。二次電池の充放電は、制御部によって制御されてもよい。
【0036】
制御部は、物理的には、例えば、CPU(中央演算処理装置)等の演算処理装置と、CPUで処理される制御プログラム及び制御データ等を記憶するROM(リードオンリーメモリー)、並びに、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAM(ランダムアクセスメモリー)等の記憶装置と、入出力インターフェースとを有するものである。また、制御部は、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)等の制御装置であってもよい。
制御部は、車両に搭載されていてもよいイグニッションスイッチと電気的に接続されていてもよい。制御部はイグニッションスイッチが切られていても外部電源により動作可能であってもよい。
【0037】
制御部は、電位センサが計測した燃料電池の電位が逆電位であるか否か判定する。
制御部は、燃料電池の電位が逆電位であると判定したとき、燃料ガス供給部からの燃料電池への燃料ガスの供給量を増大させる。
増大させる燃料ガスの供給量は、判定時の供給量又は現時点の供給量よりも大きければ特に限定されず、燃料電池の電位が正電位になる量に適宜設定してもよい。
本開示においては、燃料電池の電位が逆電位になった場合であっても、すぐに燃料電池の出力制限を行わず、燃料ガス系において、燃料ガスの供給量を増大させる制御を行う。当該制御によっても燃料電池の電位が正電位に戻らない場合は、燃料電池の出力を制限するか、又は、燃料電池システムを停止する。
【0038】
制御部は、燃料電池の電位を監視し、且つ、燃料電池の電位が逆電位の状態の積算時間を記録してもよい。
制御部は、燃料電池の電位が逆電位であると判定したとき、積算時間が所定の時間未満であるか否か判定してもよい。
制御部は、積算時間が所定の時間未満であると判定したとき、燃料ガス供給部からの燃料電池への燃料ガスの供給量を増大させてもよい。
積算時間の所定の時間は、例えば、その時間以上過ぎている場合は燃料電池の電位が逆電位から正電位に戻る可能性が低いことが想定される時間を適宜設定してもよい。そして積算時間を記録しておくことによって、燃料電池の電位が逆電位の状態になって、その後正電位の状態に戻って、再度逆電位の状態になった場合等に、当該逆電位の状態が正電位に戻る見込みがある状態かどうかを判定することができる。
本開示においては、燃料電池の電位をモニターし、逆電位の状態の積算時間を記録し、積算時間が所定時間以上の場合は、燃料電池の電位が逆電位になったら燃料ガスの供給量を増大させる制御を行わずに、すぐに燃料電池の出力を制限する制御を行う。
【0039】
図1は、本開示の燃料電池システムの一例を示す概略構成図である。
図1に示す燃料電池システム100は、燃料電池10と、燃料ガス供給部20と、燃料ガス供給流路21と、燃料オフガス排出流路22と、排気排水弁23と、気液分離器24と、循環流路25と、エジェクタ26と、制御部50と、電位センサ60と、を備える。なお、
図1では、燃料ガス系のみ図示し、その他の、酸化剤ガス系、冷却系等の図示は省略する。
【0040】
図2は、本開示の燃料電池システムの制御の一例を示すフローチャートである。
まず、制御部は、電位センサが測定した電位をモニタリング(監視)する。
そして、制御部は、電位センサが計測した電位が逆電位か否か判定する。
制御部は、電位センサが計測した電位が逆電位であると判定したとき、燃料ガス供給部からの燃料電池への燃料ガスの供給量を現時点よりも増大させ、制御を終了する。その後制御部は、電位センサが計測した電位が逆電位から正電位になったことを検知した場合は、燃料電池の電位が逆電位の状態から正電位になるまでの時間を記録してもよい。
一方、制御部は、電位センサが計測した電位が逆電位ではないと判定したときは、制御を終了してもよいし、燃料ガス供給部からの燃料電池への現時点での燃料ガスの供給量を維持してモニタリングを継続してもよい。
【0041】
図3は、本開示の燃料電池システムの制御の別の一例を示すフローチャートである。
まず、制御部は、電位センサが測定した電位をモニタリング(監視)する。制御部は、併せて燃料電池の電位が逆電位の状態の積算時間を記録してもよい。
そして、制御部は、電位センサが計測した電位が逆電位か否か判定する。
制御部は、電位センサが計測した電位が逆電位ではないと判定したときは、制御を終了してもよいし、燃料ガス供給部からの燃料電池への現時点での燃料ガスの供給量を維持してモニタリングを継続してもよい。
一方、制御部は、燃料電池の電位が逆電位であると判定したとき、燃料電池の電位が逆電位の状態の積算時間が所定の時間未満であるか否か判定する。
制御部は、積算時間が所定の時間以上であると判定した場合は、燃料電池の出力を制限するか又は燃料電池システムを停止して制御を終了する。
一方、制御部は、積算時間が所定の時間未満であると判定したとき、燃料ガス供給部からの燃料電池への燃料ガスの供給量を増大させる。制御部は、併せて燃料電池の電位が逆電位の状態の時間を記録する。そして、制御部は、積算時間が所定の時間以上であるか否か判定する。制御部は、積算時間が所定の時間未満であると判定した場合は、燃料電池の電位が逆電位の状態の時間の記録を継続する。一方、制御部は、積算時間が所定の時間以上であると判定した場合は、燃料電池の出力を制限するか又は燃料電池システムを停止して制御を終了する。
【符号の説明】
【0042】
10 燃料電池
20 燃料ガス供給部
21 燃料ガス供給流路
22 燃料オフガス排出流路
23 排気排水弁
24 気液分離器
25 循環流路
26 エジェクタ
50 制御部
60 電位センサ
100 燃料電池システム