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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
H02K1/18 A
H02K1/18 C
H02K1/18 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021075760
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169978
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出口 順一
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144499(JP,A)
【文献】特開2006-211846(JP,A)
【文献】特開2019-068567(JP,A)
【文献】特開2019-068694(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107394910(CN,A)
【文献】特開2005-080432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/16
H02K 1/18- 1/26
H02K 1/28- 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のコアバックと、前記コアバックの内周側から突出して設けられるティースと、に分割されたステータコアと、
前記コアバック及び前記ティースを軸方向に締め付け押圧するエンドプレートと、
を備え
前記コアバックは、前記ティースよりも鉄損が大きく、
前記エンドプレートの前記コアバックを締め付け押圧する面は、前記エンドプレートの前記ティースを締め付け押圧する面よりも前記ステータコアに向かって突出している、
ステータ。
【請求項2】
請求項1に記載のステータであって、
前記コアバックは、前記ティースよりも鉄損が大きく、
前記エンドプレートによって締め付け押圧される前の前記コアバックの軸方向の長さは、前記エンドプレートによって締め付け押圧される前の前記ティースの軸方向の長さよりも長い、
ステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアバックとティースとに分割されたステータコアを備えるステータに関する。
【背景技術】
【0002】
ステータは、回転電機の固定部分であって、鋼板が積層されたステータコアと、ステータコアに巻かれるステータコイルとを備える。ステータコアは、環状のバックヨーク(コアバック)と、バックヨークの内周側から突出して設けられるティースとを有する。
【0003】
分割されたステータコア(分割コア)は、例えばバックヨークとティースとが分割されて構成される。特許文献1には、環状のバックヨークの内周に沿って複数の凹部を設け、ティースの基端部をバックヨークの凹部に嵌合した分割コアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-068657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステータコアは、焼き嵌め等の圧入によって回転電機のケースに固定される。このとき、ステータコアに圧入による径方向の加圧力が作用することによってステータコアに面内応力が発生し、ステータコアの鉄損が増加する。
【0006】
上述したコアバックとティースとに分割されたステータコアにおいては、圧入によってケースに固定された状態では、コアバック及びティースのそれぞれに面内応力が発生し、ステータコアの鉄損が増加する。
【0007】
そこで、本発明は、コアバックとティースとに分割されたステータコアにおいてコアバック及びティースのそれぞれの鉄損を抑制することができるステータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るステータは、環状のコアバックと、コアバックの内周側から突出して設けられるティースと、に分割されたステータコアと、コアバック及びティースを軸方向に締め付け押圧するエンドプレートと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るステータにおいて、コアバックは、ティースよりも鉄損が大きく、エンドプレートのコアバックを締め付け押圧する面は、エンドプレートのティースを締め付け押圧する面よりもステータコアに向かって突出していることが好ましい。
【0010】
本発明に係るステータにおいて、コアバックは、ティースよりも鉄損が大きく、エンドプレートによって締め付け押圧される前のコアバックの軸方向の長さは、エンドプレートによって締め付け押圧される前のティースの軸方向の長さよりも長いことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のステータによれば、コアバックとティースとに分割されたステータコアのコアバック及びティースのそれぞれに面外応力を発生させてコアバック及びティースのそれぞれの鉄損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る回転電機を示す模式図である。
図2】実施形態の一例であるステータを示す斜視図である。
図3】ステータコアの面内応力及び面外応力と鉄損との関係を示すグラフ図である。
図4】実施形態の他の一例であるステータを示す斜視図及びAA断面図である。
図5】実施形態の他の一例であるステータを示す斜視図及びBB断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0014】
図1及び図2を用いて、実施形態の一例であるステータ20を備える回転電機10について説明する。図1は、回転電機10を示す模式図である。図2は、ステータ20のステータコア21を示す斜視図である。以下では、回転電機10の回転軸11を軸方向とした周方向及び径方向に従って説明する。
【0015】
回転電機10は、本発明に係るステータ20を備える装置である。回転電機10は、ハイブリッド車両、電気自動車等の電動車両に搭載される。回転電機10は、力行時にはバッテリ(図示なし)から供給された電力によりモータとして機能して電動車両の車輪を駆動し、制動時には発電機として機能して回生エネルギーを回収してバッテリを充電する。
【0016】
回転電機10は、回転軸11と、回転軸11に固設された回転子としてのロータ12と、ロータ12と相互作用によって回転モーメントを発生させる固定子としてのステータ20と、回転軸11、ロータ12及びステータ20を収容するケース13と、後述するステータコア21をケース13に固定する複数のボルト14とを備える。
【0017】
ロータ12には、複数の永久磁石(図示なし)が配設されている。ロータ12は、後述するステータコイル23に駆動電流が供給されると、供給された駆動電流によってステータコイル23に発生した電磁力によってステータ20に対して回転する。
【0018】
ステータ20は、上述したようにロータ12と相互作用によって回転モーメントを発生させる。ステータ20では、詳細は後述するが、エンドプレート22によって後述するステータコア21のコアバック25及びティース26の軸方向両端部を締め付け押圧することによってステータコア21の鉄損を抑制することができる。
【0019】
ステータ20は、鋼板が積層されて構成されたステータコア21と、ステータコア21の軸方向の少なくとも一端側(本例では両端側)に設けられたエンドプレート22と、ステータコア21のスロット(後述するティース26間の周方向の隙間)に巻かれたステータコイル23とを有する。
【0020】
図2に示すように、ステータコア21は、上述したように薄い鋼板を積層して構成され、複数のスロットが内側に形成され、スロットにはステータコイル23が挿入される。ステータコア21は、環状に構成されるコアバック25と、コアバック25の内周側から突出して設けられるティース26とを有する。
【0021】
ステータコア21は、コアバック25とティース26とを分割することによって構成されている。より詳細には、ステータコア21では、コアバック25の内周に沿って複数の凹部25Aが形成され、ティース26の基端部が凹部25Aに嵌合されている。
【0022】
エンドプレート22は、非磁性体で構成される環状のプレートである。エンドプレート22は、ステータコア21の軸方向の両端側に設けられる。また、エンドプレート22は、径方向においてコアバック25及びティース26に亘ってそれぞれ設けられる。エンドプレート22は、後述するボルト14によってステータコア21と共にケース13に締結される。
【0023】
ステータコア21及びエンドプレート22がケース13に固定された状態では、ステータコア21がエンドプレート22によって締め付け押圧され、積層されたステータコア21に軸方向の加圧力が作用する。換言すれば、コアバック25及びティース26がエンドプレート22によって締め付け押圧され、コアバック25及びティース26に軸方向の加圧力が作用する。これにより、詳細は後述するが、コアバック25及びティース26に面外応力が発生して、ステータコア21の鉄損を抑制することができる。
【0024】
ボルト14は、ステータコア21の貫通孔及びエンドプレート22の貫通孔を貫通してケース13に螺合され、ステータコア21、エンドプレート22及びケース13を締結して、ステータコア21及びエンドプレート22をケース13に固定する。
【0025】
図3を用いて、ステータコア21の面内応力及び面外応力と鉄損との関係について説明する。
【0026】
図3(A)のグラフに示すように、ステータコア21をケース13に固定する前において、ステータコア21は、ステータコア21の材質に起因する鉄損を有している。
【0027】
ステータコア21をケース13に固定する際には、焼き嵌め等の圧入が行われる。このとき、ステータコア21には径方向に加圧力が作用するため面内応力が発生する。ここで、面内応力とは、鋼板の径方向に作用する加圧力による鋼板面内に発生する応力である。図3(B)のグラフに示すように、ステータコア21に面内応力が発生した場合には、ステータコア21の鉄損が増加する。
【0028】
しかし、図3(C)のグラフに示すように、ステータコア21に面外応力が発生した場合には、鉄損が抑制されることが確認されている。ここで、面外応力とは、鋼板の軸方向に作用する加圧力による鋼板面内に発生する応力である。そのため、ステータコア21に面内応力が発生している状態において、ステータコア21に軸方向に加圧力を作用させることによって面外応力を発生させて、ステータコア21の鉄損を抑制することができる。
【0029】
本例では、コアバック25とティース26とが分割されたステータコア21において、ステータコア21及びエンドプレート22がケース13に固定された状態では、コアバック25及びティース26がエンドプレート22によって締め付け押圧され、コアバック25及びティース26に軸方向の加圧力が作用する。これにより、コアバック25及びティース26に面外応力が発生して、コアバック25及びティース26のそれぞれの鉄損を抑制することができる。その結果、ステータコア21の鉄損を抑制することができる。
【0030】
以下では、ステータコア21において、コアバック25とティース26とが異なる材質で構成され、コアバック25とティース26との鉄損が異なる例について説明する。より詳細には、ステータコア21において、コアバック25の鉄損がティース26の鉄損よりも大きくなるように構成されている。本例では、コアバック25を構成する鋼板として電磁鋼板が好適に用いられる。また、ティース26を構成する鋼板としてアモルファス金属又はナノ結晶が好適に用いられる。
【0031】
そして、以下では、上述したコアバック25とティース26とが分割されたステータコア21において、上述したようにコアバック25の鉄損がティース26の鉄損よりも大きい場合に、コアバック25の鉄損抑制量をティース26の鉄損抑制量よりも大きくする例について説明する。
【0032】
図4を用いて、実施形態の他の一例であるステータについて詳細に説明する。図4は、ステータコア31を示す斜視図及びAA断面図である。
【0033】
ステータは、上述したように、鋼板が積層されて構成されたステータコア31と、ステータコア31の軸方向の両端側に設けられたエンドプレート32とを有する。また、上述したように、ステータコア31は、コアバック35とティース36とが分割されて構成されている。
【0034】
エンドプレート32は、エンドプレート32のステータコア31と対向する面がコアバック35を締め付け押圧する対向面32Aと、ティース26を締め付け押圧する対向面32Bとからなる段差を有して形成され、対向面32Aが対向面32Bよりもステータコア31に向かって突出している。
【0035】
上述のように構成することによって、ボルト14によってステータコア31、エンドプレート32及びケース13を締結して(図1参照)、エンドプレート32によってステータコア31の軸方向に締め付け加圧力が作用した際には、コアバック35の圧縮量がティース36の圧縮量よりも大きくなり、コアバック35に発生する面外応力がティース26に発生する面外応力よりも大きくなる。
【0036】
なお、図4では、エンドプレート32の対向面32Aと対向面32Bとの段差を極端に拡大して示しており、締め付け押圧されて形成されたコアバック35とティース36との段差も極端に拡大して示している。
【0037】
このとき、上述したように、コアバック35の鉄損がティース36の鉄損よりも大きいため、コアバック35にティース36よりも大きい面外応力を発生させることによって、鉄損の大きさに応じた面外応力を発生させて、鉄損の大きさに応じて鉄損を抑制することができる。
【0038】
このようにして、エンドプレート32のコアバック35を締め付け押圧する対向面32Aをエンドプレート32のティース36を締め付け押圧する対向面32Bよりもステータコア31に向かって突出して形成することによって、ティース36よりも鉄損の大きいコアバック35について、ティース36よりも鉄損を抑制することができる。
【0039】
図5を用いて、実施形態の他の一例であるステータについて詳細に説明する。図5は、ステータコア41を示す斜視図及びBB断面図である。
【0040】
ステータは、上述した実施形態と同様に、鋼板が積層されて構成されたステータコア41と、ステータコア41の軸方向の両端側に設けられたエンドプレート42(図示なし)とを有する。また、上述したように、ステータコア41は、コアバック45とティース46とを分割することによって構成されている。
【0041】
ステータコア41では、ケース13に固定される前、即ち、エンドプレート42によって締め付け押圧される前のコアバック45の軸方向の長さ(高さH1)は、エンドプレート42によって締め付け押圧される前のティース46の軸方向の長さ(高さH2)よりも長い。
【0042】
上述のように構成することによって、ボルト14によってステータコア41、エンドプレート42及びケース13を締結して(図1参照)、エンドプレート42によってステータコア41の軸方向に加圧力が作用した際には、コアバック45の圧縮量がティース46の圧縮量よりも大きくなり、コアバック45に発生する面外応力がティース46に発生する面外応力よりも大きくなる。
【0043】
このとき、上述したように、コアバック45の鉄損がティース46の鉄損よりも大きいため、コアバック45にティース46よりも大きい面外応力を発生させることによって、鉄損の大きさに応じた面外応力を発生させて、鉄損の大きさに応じて鉄損を抑制することができる。
【0044】
このようにして、エンドプレート42によって締め付け押圧される前のコアバック45の軸方向の長さをエンドプレート42によって締め付け押圧される前のティース46の軸方向の長さよりも長く構成することによって、ティース46よりも鉄損の大きいコアバック45について、ティース46よりも鉄損を抑制することができる。
【0045】
なお、図5では、締め付け押圧される前のコアバック45とティース46との高低差を極端に拡大して示している。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
10 回転電機、11 回転軸、12 ロータ、13 ケース、14 ボルト、20 ステータ、21 ステータコア、22 エンドプレート、23 ステータコイル、25 コアバック、25A 凹部、26 ティース、31 ステータコア、32 エンドプレート、32A 対向面、32B 対向面、35 コアバック、36 ティース41 ステータコア、42 エンドプレート、45 コアバック、46 ティース
図1
図2
図3
図4
図5