(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】接合体、及び接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240521BHJP
B29C 65/44 20060101ALI20240521BHJP
E04C 2/26 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B32B15/08 M
B29C65/44
E04C2/26 V
(21)【出願番号】P 2021103061
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】西▲崎▼ 聖記
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 義久
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-051041(JP,A)
【文献】特開2016-141052(JP,A)
【文献】特開2016-147404(JP,A)
【文献】特開2014-091263(JP,A)
【文献】特開2013-107273(JP,A)
【文献】特開2018-094778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B29C 63/00-63/48;65/00-65/82
B29C 45/00-45/24;45/46-45/63;45/70-45/72;45/74-45/84
B23K 26/00-26/70
E04C 2/00-2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合面を有する金属部材と、
前記接合面に接合された樹脂部材と、を備え、
前記金属部材は、
前記金属部材の外部に向けて開口する凹部と、前記凹部を区画する面のうちの底面で開口する複数の孔と、
前記凹部を区画する面のうちの底面で開口するとともに隣り合う前記孔を繋ぐ溝と、を有し、
前記樹脂部材の一部は、複数の前記孔及び前記溝の内部に存在しており、
前記溝の開口の幅寸法は、前記溝の開口の幅寸法と同一方向での前記孔の開口の幅寸法の最大値よりも小さく、
前記溝の深さ寸法は、前記孔の深さ寸法よりも小さ
く、
前記凹部は、前記接合面に直交する方向で視たときに帯状に延びており、且つ、前記溝は、前記凹部が延びている軸線と平行に延びている
接合体。
【請求項2】
接合面を有する金属部材と、
前記接合面に接合された樹脂部材と、を備え、
前記金属部材は、
前記金属部材の外部に向けて開口する凹部と、前記凹部を区画する面のうちの底面で開口する複数の孔と、
前記凹部を区画する面のうちの底面で開口するとともに隣り合う前記孔を繋ぐ溝と、を有し、
前記樹脂部材の一部は、複数の前記孔及び前記溝の内部に存在しており、
前記溝の開口の幅寸法は、前記溝の開口の幅寸法と同一方向での前記孔の開口の幅寸法の最大値よりも小さく、
前記溝の深さ寸法は、前記孔の深さ寸法よりも小さ
く、且つ、前記孔の深さ寸法は、前記凹部の深さ寸法よりも大きい
接合体。
【請求項3】
前記溝の開口の幅寸法は、前記溝の開口の幅寸法と同一方向での前記孔の開口の幅寸法の最大値の半分未満である
請求項1又は請求項2に記載の接合体。
【請求項4】
前記溝の開口の幅寸法と同一方向での前記孔の開口の幅寸法の最大値は、10μm以下である
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項5】
前記孔の深さ寸法は、前記孔の開口の幅寸法の最大値よりも大きい
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項6】
前記溝によって互いに繋がっている複数の前記孔を孔グループとしたとき、
前記凹部を区画する面のうちの底面には、複数の孔グループが存在しており、
同一の前記孔グループにおいて前記孔の中心を結んだ仮想線が、複数の前記孔グループにおいて互いに平行である
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材と樹脂部材との接合体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属部材と樹脂部材との接合体が記載されている。金属部材は、樹脂部材に対する接合面を備えている。金属部材は、当該金属部材の外部に向けて開口する複数の孔を有している。樹脂部材の一部は、複数の孔の内部に入り込んでいる。各孔の内周面は、微細な凹凸形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の接合体においては、1つの孔における微細な凹凸形状が接合強度の向上に寄与している。しかしながら、孔の内周面の構造のみでは、接合強度の向上にも限界がある。したがって、孔の内周面における微細構造に拠らずとも、接続強度の向上を図ることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、接合面を有する金属部材と、前記接合面に接合された樹脂部材と、を備え、前記金属部材は、前記金属部材の外部に向けて開口する複数の孔と、前記金属部材の外部に向けて開口するとともに隣り合う前記孔を繋ぐ溝と、を有し、前記樹脂部材の一部は、複数の前記孔及び前記溝の内部に存在しており、前記溝の開口の幅寸法は、前記溝の開口の幅寸法と同一方向での前記孔の開口の幅寸法の最大値よりも小さく、前記溝の深さ寸法は、前記孔の深さ寸法よりも小さい接合体である。
【0006】
上記構成によれば、樹脂部材の一部は、複数の孔のみならず、溝の内部にも存在できる。よって、金属部材が孔のみを備えている場合に比較して、樹脂部材と金属部材との接触面積が増加する。したがって、金属部材と樹脂部材との接合強度が向上する。
【発明の効果】
【0007】
金属部材と樹脂部材との接合強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1実施形態の金属部材の接合面の一部拡大図。
【
図3】
図2における3-3線に沿う接合体の一部断面図。
【
図4】
図2における4-4線に沿う接合体の一部断面図。
【
図7】第2実施形態の金属部材の接合面の一部拡大図。
【
図8】
図7における8-8線に沿う接合体の一部拡大図。
【
図10】第2実施形態の複数の孔グループの顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、接合体の第1実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図面中のものと異なる場合がある。
【0010】
(全体構成について)
図1に示すように、接合体10は、金属部材20と、樹脂部材30と、を備えている。
金属部材20は、略板状である。金属部材20は、接合面21を有している。本実施形態では、金属部材20の外面のうち、最も大きな面である主面のうちの一方の面が接合面21となっている。金属部材20の材質は、金属である。具体的には、金属部材20の材質は、例えば、アルミニウム合金、及びステンレス鋼などの鉄鋼である。
【0011】
樹脂部材30は、略板状である。樹脂部材30は、金属部材20の接合面21に接合されている。樹脂部材30の外面のうち、最も大きな面である主面のうちの一方が、接合面21に接合されている。樹脂部材30の材質は、熱可塑性樹脂である。具体的には、樹脂部材30の材質は、例えば、ポリブチレンテレフタラート、ポリプロピレン、エポキシ系樹脂である。
【0012】
(金属部材について)
図2に示すように、金属部材20は、複数の凹部22と、複数の孔23と、複数の溝24と、を有している。なお、
図2では、1つの凹部22のみを図示している。複数の凹部22、複数の孔23、及び複数の溝24は、いずれも接合面21に対して窪んでいる。
【0013】
図3に示すように、凹部22は、金属部材20の外部に向けて開口している。
図2に示すように、凹部22は、接合面21に直交する方向で接合面21を視たときに、帯状に延びている。
図3に示すように、凹部22は、当該凹部22が延びている軸線に直交する断面視において、接合面21から、略V字状に窪んでいる。すなわち、上記断面視において、凹部22を区画する一対の側面の間隔は、接合面21に対して深い位置ほど小さくなっている。凹部22の深さ寸法D1は、凹部22が延びている軸線の全体に亘って略一定である。凹部22の深さ寸法D1は、約15μmである。なお、この実施形態において「凹部22の深さ寸法」とは、接合面21を含む仮想平面から凹部22の最深箇所までの、接合面21に直交する方向の距離のことである。
【0014】
凹部22の開口の幅寸法W1は、凹部22が延びている軸線の全体に亘って略一定である。凹部22の開口の幅寸法W1は、約15μmである。なお、この実施形態において「凹部22の幅寸法」とは、凹部22を区画する一方の側面の任意の点と、当該点と同じ深さ位置における他方の側面の当該点に対して最も近い点と、の距離である。そして「凹部22の開口の幅寸法」とは、接合面21を含む仮想平面上での幅寸法である。
【0015】
孔23は、1つの凹部22につき複数存在している。複数の孔23は、金属部材20のうち、凹部22を区画する面のうちの底面で開口している。つまり、複数の孔23は、凹部22の最深箇所で開口している。したがって、孔23は、金属部材20の外部に向けて開口している。
【0016】
図2に示すように、複数の孔23は、間隔をあけて、凹部22が延びている軸線に沿って並んでいる。隣り合う複数の孔23の間の距離は、いずれも略同じである。接合面21に直交する方向で接合面21を視たときに、孔23は、略円形状である。
図3に示すように、孔23の直径は、接合面21に直交する方向の全体に亘って略一定である。したがって、孔23は、略円柱状の空間である。また、孔23の開口の直径は、10μm以下、具体的には約2.5μmである。
【0017】
孔23の深さ寸法D2は、約20μmである。そのため、孔23の深さ寸法D2は、孔23の開口の直径よりも大きくなっている。なお、この実施形態において「孔23の深さ寸法D2」とは、凹部22との接続箇所から、孔23の最深箇所までの、接合面21に直交する方向の距離のことである。
【0018】
図2に示すように、溝24は、1つの凹部22につき複数存在している。複数の溝24は、金属部材20のうち、凹部22を区画する面のうちの底面で開口している。つまり、複数の溝24は、凹部22の最深箇所で開口している。したがって、溝24は、金属部材20の外部に向けて開口している。溝24は、隣り合う孔23の間に位置している。溝24は、凹部22が延びている軸線と平行に延びている。そして、1つの溝24は、隣り合う2つの孔23を繋いでいる。したがって、孔23と溝24とは、凹部22が延びている軸線に沿って、交互に並んでいる。
【0019】
図4に示すように、各溝24の開口の幅寸法W3は、凹部22が延びている軸線の全体に亘って略一定である。各溝24の開口の幅寸法W3は、約1μmである。なお、上述した凹部22の場合と同様に、この実施形態において「溝24の幅寸法」とは、溝24を区画する一方の側面の任意の点と、当該点と同じ深さ位置における他方の側面の当該点に対して最も近い点と、の距離である。本実施形態においては、溝24の幅寸法は、溝24の深さ位置に拘わらず一定である。そのため、溝24の開口の幅寸法W3は、溝24の幅寸法と一致する。そして「溝24の開口の幅寸法」とは、溝24の最深箇所に対して接合面21に直交する軸に沿う反対側の溝24の端を溝24の上端としたとき、溝24の上端を含む接合面21と平行な仮想平面上での幅寸法である。本実施形態においては、「溝24の開口の幅寸法」は、凹部22を区画する面のうち底面を含む仮想平面上での幅寸法である。
【0020】
ここで、
図3に示すように、溝24の開口の幅寸法W3と同一方向での、孔23の開口の寸法を幅寸法W2とする。上述したとおり、孔23の直径は、約2.5μmである。したがって、孔23の開口の幅寸法W2の最大値は、約2.5μmである。よって、溝24の開口の幅寸法W3は、孔23の開口の幅寸法W2の最大値よりも小さい。特に、溝24の開口の幅寸法W3は、孔23の開口の幅寸法W2の最大値の半分未満である。
【0021】
図4に示すように、各溝24の深さ寸法D3は、凹部22が延びている軸線の全体に亘って略一定である。各溝24の深さ寸法D3は、約3μmである。なお、上述した孔23の場合と同様に、この実施形態において「溝24の深さ寸法」とは、凹部22との接続箇所から、溝24の最深箇所までの、接合面21に直交する方向の距離のことである。溝24の深さ寸法D3は、
図3に示す孔23の深さ寸法D2よりも小さい。
【0022】
図3に示すように、樹脂部材30の一部は、凹部22及び孔23の内部に存在している。また、
図4に示すように、樹脂部材30の一部は、凹部22及び溝24の内部に存在している。凹部22、孔23及び溝24の内部空間の略全域は、樹脂部材30で満たされている。
【0023】
(製造方法について)
次に、接合体10の製造方法について説明する。
図5に示すように、接合体10の製造方法は、レーザ加工工程S11と、加熱工程S12と、圧着工程S13と、を備えている。
【0024】
先ず、レーザ加工工程S11では、接合面21にレーザ加工することで、凹部22と、孔23と、溝24と、を形成する。レーザ加工工程S11では、複数回のレーザ照射を繰り返すことにより、凹部22と、孔23と、溝24とを接合面21に対して窪ませる。
【0025】
1回のレーザ照射では、円状の照射範囲にレーザを照射する。そして、レーザ照射の照射範囲を少しずつずらして複数回のレーザ照射を繰り返す。具体的には、連続する2回のレーザ照射のオーバーラップ率を90%以上とする。なお、オーバーラップ率は、以下の式で求められる。
【0026】
オーバーラップ率=(R-LS)×100/R
ただし、Rは円状のレーザ照射範囲の直径、LSは連続する2回のレーザ照射の中心同士を結んだ線分の長さを示す。
【0027】
1回のレーザ照射での照射範囲の直径は、例えば12μmである。なお、照射範囲の直径を12μmとした場合、オーバーラップ率を90%以上とするためには、連続する2回のレーザ照射において、レーザ照射の中心の移動距離を1.2μm未満にする必要がある。
【0028】
レーザ加工工程S11において、レーザ照射の中心が、所望の仮想線を通るように、照射範囲を移動させる。このように、仮想線に沿ってレーザ照射を行った後、再度同じ仮想線に沿ってレーザ照射を行う。そして、この同一仮想線に対するレーザ照射を、10回以上繰り返す。すなわち、同一の仮想線に対するレーザ照射の走査回数は10回以上である。
【0029】
また、レーザ加工工程S11において、ピコ秒UVレーザで加工を行う。レーザの設定出力は、1Wである。周波数は、150kHzである。走査速度は、180mm/sである。これにより、接合面21に、凹部22と、複数の孔23と、複数の溝24と、を形成する。このようにして形成された凹部22が延びる軸線は、上記仮想線と一致する。また、形成された複数の孔23の中心同士を結ぶと、上記仮想線と同一の線となる。そして、溝24が延びる軸線は、上記仮想線と一致する。
【0030】
次に、加熱工程S12を行う。加熱工程S12では、プレス機を加熱する。具体的には、
図6に示すように、プレス機は、下型81及び上型82を備えている。加熱工程S12では、下型81及び上型82のうち、上型82のみを加熱する。上型82の加熱は、例えば、上型82に内蔵された電熱ヒータに電力を供給することにより行う。上型82の加熱温度は、樹脂部材30が軟化を開始する温度よりも高くなっている。
【0031】
次に、
図5に示すように、圧着工程S13を行う。圧着工程S13では、上型82を加熱した状態で、金属部材20の接合面21に樹脂部材30を圧着する。具体的には、下型81及び上型82の間に、金属部材20及び樹脂部材30を配置する。このとき、金属部材20が樹脂部材30から視て上型82側になるよう配置する。さらに、金属部材20の接合面21が樹脂部材30を向くように配置する。そして、金型の下型81と上型82とを互いに近づけて、一定期間プレスする。上述したとおり、上型82は加熱されているので、当該上型82に接触した金属部材20も加熱される。そして、金属部材20の熱が樹脂部材30に伝わることで、樹脂部材30のうち金属部材20に接触している部分が軟化する。これにより、樹脂部材30の一部は、凹部22、複数の孔23、及び複数の溝24の内部へ入り込む。なお、圧着工程S13終了後、樹脂部材30が冷却されることで、凹部22、複数の孔23、及び複数の溝24の内部へ入り込んだ樹脂部材30は硬化する。
【0032】
(第1実施形態の作用について)
上記第1実施形態では、圧着工程S13において、樹脂部材30が加熱されることで、樹脂部材30の接合面21側の面は、軟化する。軟化した樹脂部材30は、下型81及び上型82からの圧力を受けて、凹部22、複数の孔23、及び複数の溝24の内部を流動する。そして、これら凹部22、複数の孔23、及び複数の溝24の略全体へといきわたる。その後、樹脂部材30が冷却されると、樹脂部材30の一部は、凹部22と、複数の孔23と、溝24と、の内部に充填された状態で、硬化する。
【0033】
(第1実施形態の効果について)
(1-1)上記第1実施形態によれば、樹脂部材30の一部は、複数の孔23のみならず、溝24の内部にも存在できる。よって、金属部材20が孔23のみを備えている場合に比較して、樹脂部材30と金属部材20との接触面積を増加させることができる。したがって、金属部材20と樹脂部材30との接合強度が向上する。
【0034】
ところで、溝24が孔23に向けて開口している開口面積の分、孔23の内面の面積が小さくなる。上記実施形態では、溝24の開口の幅寸法W3は、孔23の開口の幅寸法W2の最大値よりも小さい。なお且つ、溝24の深さ寸法D3は、孔23の深さ寸法D2よりも小さい。つまり、溝24が孔23に向けて開口している開口面積は小さい。そのため、溝24を形成することにより、孔23の内周の面積が小さくなることは抑制できる。よって、溝24がない場合と比べて、樹脂部材30と金属部材20との接続強度の向上を図ることができる。
【0035】
(1-2)上記第1実施形態によれば、溝24の開口の幅寸法W3は、孔23の開口の幅寸法W2の最大値の半分未満である。このような幅寸法の関係であれば、レーザ加工工程S11において、特殊な条件を設定せずとも、溝24及び孔23を形成できる。
【0036】
(1-3)上記第1実施形態によれば、孔23の開口の幅寸法W2の最大値は、10μm以下である。孔23の開口の幅寸法W2の最大値が10μm以下となる場合、仮に溝24がないとすると、圧着工程S13において、樹脂部材30の一部が各孔23に入り込みにくくなる。一方、上記第1実施形態では溝24が存在するので、軟化した樹脂部材30が溝24を介して各孔23の間を流動可能で、各孔23に樹脂部材30の一部が入り込みやすい。このように、溝24を設けることは、孔23の開口の幅寸法W2の最大値が10μm以下の場合により好適である。
【0037】
(1-4)上記第1実施形態では、孔23の深さ寸法D2は、孔23の直径よりも大きい。すなわち、孔23の深さ寸法D2は、孔23の開口の幅寸法W2の最大値よりも大きい。つまり、孔23は、比較的に深さ寸法D2が大きい。このように孔23の深さが比較的に大きくて孔23の底にまで樹脂部材30の一部が至りにくくても、溝24を介して多くの樹脂部材30の一部を孔23へと案内できる。したがって、樹脂部材30が溝24を通って孔23の底まで入り込みやすくなる。すなわち、溝24を設けることは、孔23の深さ寸法D2が大きい場合に好適である。
【0038】
(1-5)上記第1実施形態によれば、金属部材20は、接合面21に開口する凹部22を有している。仮に凹部22がない場合と比べて、凹部22によって、樹脂部材30と金属部材20との接触面積をさらに増やすことができる。
【0039】
また、複数の孔23を加工した際に、接合面21における孔23の開口の周辺にバリ等が形成されることで、接合面21の一部が盛り上がってしまうことがある。上記第1実施形態によれば、金属部材20における凹部22を区画する面のうちの底面に孔23及び溝24を形成することで、このようなバリ等が形成されたとしても、バリ等が接合面21に対して盛り上がることを抑制できる。
【0040】
<第2実施形態>
以下、接合体の第2実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では、第1実施形態における接合体10と比べて異なる点を中心に説明し、同一の点については説明を簡略又は省略する。
【0041】
(孔グループについて)
以下では、溝24によって互いにつながっている複数の孔23を1つの孔グループ25とする。
図7に示すように、第2実施形態においては、上記第1実施形態と比べて、金属部材20が1つの凹部122につき複数の孔グループ25を有している点が主に異なる。
【0042】
第2実施形態において、金属部材20は、3つの孔グループ25を有している。3つの孔グループ25は、1つの凹部122を区画する面のうちの底面に存在している。
図8に示すように、凹部122の開口の幅寸法W4は、第1実施形態における凹部22の開口の幅寸法W2の最大値より大きく、第1実施形態における凹部22の開口の幅寸法W2の最大値の3倍よりも小さい。
【0043】
3つの孔グループ25を、それぞれ第1孔グループ25A、第2孔グループ25B、第3孔グループ25Cとしたとき、第1孔グループ25Aの孔23Aは、第2孔グループ25Bの孔23B及び第3孔グループ25Cの孔23Cとは繋がっていない。第2孔グループ25Bの孔23Bは、第3孔グループ25Cの孔23Cとは繋がっていない。
【0044】
接合面21に直交する方向で接合面21を視たときに、第1孔グループ25Aにおいて、孔23の中心を結んだ仮想直線を繋いだ線を、第1仮想線VL1とする。接合面21に直交する方向から視たときに、第2孔グループ25Bにおいて、孔23の中心を結んだ仮想直線を繋いだ線を第2仮想線VL2とする。接合面21に直交する方向から視たときに、第3孔グループ25Cにおいて、孔23の中心を結んだ仮想直線を繋いだ線を第3仮想線VL3とする。このとき、第1仮想線VL1~第3仮想線VL3は、いずれも直線である。そして、第1仮想線VL1~第3仮想線VL3は、互いに平行である。
【0045】
なお、
図9及び
図10に、金属部材20が複数の孔グループ25を有する場合の、金属部材20の表面の拡大写真を示す。
図9に示すように、1つの孔グループ25において各孔23は、凹部122の軸線と平行な方向に並んでいる。複数の孔グループ25、すなわち各孔グループ25の仮想線VLは、凹部122の軸線に直交する方向に互いに略等間隔で並んでいる。
【0046】
なお、第2実施形態では、
図10に示すように、接合面21に直交する方向で孔23を視たときに、孔23は、凹部122の軸線に沿う方向に長い楕円状である。このように、接合面21に直交する方向に孔23を視たとき、孔23の形状は、真円状でなくてもよい。この場合、孔23の開口の幅寸法W2の最大値は、楕円状の短径の寸法である。
【0047】
(製造方法について)
第1実施形態の接合体10の製造方法と比べて、レーザ加工工程S11におけるレーザ加工の走査経路が主に異なる。この点について説明する。
【0048】
レーザ加工工程S11において、先ず、第1実施形態におけるレーザ加工工程S11と同様に、所望の仮想線に沿ってレーザを照射することで、凹部22と、複数の孔23と、複数の溝24と、を形成する。第1実施形態と同様に、同一仮想線に対するレーザ照射を、10回以上繰り返す。
【0049】
次に、凹部22の延びる軸線と直交する方向にレーザの照射範囲の中心をずらして、再度同じ出力条件でレーザ照射を行う。このとき、2つの凹部22が繋がる程度に、照射範囲の円中心をずらす。そして、第1実施形態と同様に、同一仮想線に対するレーザ照射を、10回以上繰り返す。
【0050】
さらに同じ方向に照射範囲の円中心をずらして、再度同じ出力条件でレーザ照射を行う。そして、第1実施形態と同様に、同一仮想線に対するレーザ照射を、10回以上繰り返す。これにより、3つの凹部22が互いに繋がった1つの凹部122と、複数の孔グループ25が形成される。そして、凹部122の開口の幅寸法W4は、凹部22の開口の幅寸法W1よりも大きく、且つ凹部22の開口の幅寸法W1の3倍よりも小さくなる。
【0051】
(第2実施形態の効果について)
上記第2実施形態によれば、第1実施形態の(1-1)~(1-5)の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0052】
(2-1)上記第2実施形態によれば、1つの凹部122の底面に複数の孔グループ25が存在している。凹部122は比較的に寸法が大きいため、圧着工程S13において軟化した樹脂部材30が多く流入する。そして、凹部122に流入した樹脂部材30は、孔23及び溝24内に浸透していく。したがって、複数の孔グループ25が複数並列しているような微細な構造であっても、孔23及び溝24内に軟化した樹脂部材30が入り込みやすい。
【0053】
<その他の実施形態>
上記各実施形態は以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
【0054】
・樹脂部材30の材質は、上記実施形態の例に限られず、熱可塑性樹脂であればよい。熱可塑性樹脂として、例えば、樹脂部材30の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルであってもよい。また、樹脂部材30の材質は、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0055】
・金属部材20の材質は、上記実施形態の例に限られず、金属であればよい。ただし、金属部材20の材質の融点は、樹脂部材30が軟化を開始する温度よりも高い必要がある。例えば、金属部材20の材質は、マグネシウム合金であってもよい。
【0056】
・凹部22の形状は、上記実施形態の例に限られない。例えば、凹部22の形状は、断面視V字状でなくてもよい。また、凹部22の形状は接合面21に直交する方向に視たときに帯状である必要はない。例えば、接合面21に直交する方向に凹部22を視たときに、凹部22の形状は正方形状、又は円形状などであってもよい。
【0057】
・金属部材20は、凹部22を有していなくてもよい。例えば、上記第1実施形態の例のように、凹部22を形成した後に、金属部材20のうち接合面21側の一部分を削り取ることで、凹部22を有さない金属部材20が形成されてもよい。この場合、複数の孔23と複数の溝24とは、金属部材20の外部に向けて開口する。
【0058】
・孔23の深さ寸法D2は、上記実施形態の例に限られない。孔23の深さ寸法D2は、孔23の開口の幅寸法W2の最大値以下であってもよい。
・孔23の開口の幅寸法W2の最大値は、上記実施形態の例に限られない。孔23の開口の幅寸法W2の最大値は、10μmより大きくてもよい。
【0059】
・孔23の形状は、上記実施形態の例に限られない。接合面21に直交する方向に孔23を視たときに、例えば、四角形状、その他の多角形状であってもよい。また、孔23を区画する面が、微細な凹凸形状を有する微細構造となっていてもよい。
【0060】
・溝24の幅寸法W3は、孔23の幅寸法W2の最大値より小さければ、孔23の幅寸法W2の最大値の半分以上であってもよい。
・孔23及び溝24の数は、金属部材20と樹脂部材30との接合面積に併せて、適宜変更すればよい。孔23は、少なくとも2つ開口していればよい。この場合、溝24は、隣り合う孔23を繋ぐように少なくとも1つ開口していればよい。
【0061】
・上記第2実施形態において、複数の孔グループ25の仮想線VLは、湾曲していてもよいし、ジグザグに延びていてもよい。なお、孔グループ25の仮想線VLが直線でない場合でも、隣り合う仮想線VLの距離が、当該仮想線VLに沿って略一定であれば、両仮想線VLは平行である。
【0062】
複数の孔グループ25の仮想線VLが、同心円の円弧状であってもよい。この場合、同一仮想線に対するレーザ照射を10回以上繰り返すうえで、始点と終点とが繋がっているため、繰り返してレーザ照射をしやすい。
【0063】
・上記第2実施形態において、複数の孔グループ25の仮想線VL同士は、互いに平行でなくてもよい。複数の孔グループ25を設ける場合、複数の凹部22を有しており、第1実施形態のように、1つの凹部22に1つの孔グループ25が設けられてもよい。
【0064】
・金属部材20は、複数の接合面21を有していてもよい。例えば、金属部材20の主面の両面が接合面21となっており、両面にそれぞれ、凹部22と、複数の孔23と、複数の溝24とが、開口していてもよい。金属部材20の主面の両面に、それぞれ樹脂部材30が接合していてもよいし、1つの樹脂部材30が、両面に接合していてもよい。金属部材20の主面の両面に樹脂部材30を接合する場合、両樹脂部材30は同一の材質でなくてもよいし、同一の形状でなくてもよい。
【0065】
・上記各実施形態における製造方法において、走査回数は、10回未満であってもよい。レーザ照射の出力条件に併せて、適宜調整すればよい。
・上記第2実施形態における製造方法において、レーザ加工工程S11におけるレーザを照射する順序は、適宜変更してもよい。例えば、所望の仮想線に沿ったレーザ照射を1回行った後、異なる仮想線に沿ったレーザ照射を1回行って、その後、さらに異なる仮想線に沿ったレーザ照射を1回行う。そして、この工程を10回以上繰り返すことにより、合計して1つの仮想線に沿ったレーザ照射を10回以上行うことで、3つの凹部22が互いに繋がった1つの凹部122と、複数の孔グループ25を形成してもよい。
【0066】
・上記各実施形態における製造方法において、出力条件は、上記実施形態の例に限られない。金属部材20の材質や寸法に合わせて、適宜変更すればよい。この場合であっても、オーバーラップ率を90%以上とすることで、複数の孔23を繋げる溝24を形成しやすい。
【0067】
・上記各実施形態における製造方法において、オーバーラップ率を90%未満とすることもできる。オーバーラップ率に拘わらず、走査回数及びレーザの設定出力などを調整することで、凹部22と、複数の孔23と、複数の溝24と、を形成でき得る。
【0068】
・上記各実施形態における製造方法において、上型82を加熱するのに代えて、他の方法で樹脂部材30を軟化させてもよい。例えば、下型81及び上型82とは別に、加熱用の治具を用意する。この治具を加熱し、加熱した治具を樹脂部材30に押し当てることで、樹脂部材30の一部を軟化させてもよい。この場合、軟化した樹脂部材30が硬化する前に、下型81及び上型82でプレスすればよい。また例えば、樹脂部材30へ熱風を当てることで、樹脂部材30を軟化させてもよい。
【0069】
・上記各実施形態における製造方法において、摩擦圧接によって、樹脂部材30と金属部材20とを圧着してもよい。なお、摩擦圧接とは、異なる2つの部材を互いに押し当てつつ摩擦させることで一方の部材又は両方の部材の接合する面を軟化させて、両者を接合する方法である。
【符号の説明】
【0070】
10…接合体
20…金属部材
21…接合面
22,122…凹部
23…孔
24…溝
25…孔グループ
30…樹脂部材
81…上型
82…下型