(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
H03K 17/955 20060101AFI20240521BHJP
H03K 3/354 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H03K17/955 U
H03K3/354 B
(21)【出願番号】P 2021152104
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 則一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 貴志
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 基弘
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0001548(US,A1)
【文献】特開2004-258018(JP,A)
【文献】特表2018-500555(JP,A)
【文献】特開2005-184528(JP,A)
【文献】特開2007-228546(JP,A)
【文献】特開2000-341100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0053097(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/74-17/98
H03K 3/00-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個(Nは2以上の自然数)のセンサ回路を備えるセンサアレイであって、
前段のセンサ回路の出力論理信号が次段のセンサ回路の入力論理信号として入力されるシリアル接続を有している、前記センサアレイと、
前記センサアレイの初段のセンサ回路に入力される前記入力論理信号が入力されているとともに、N個の前記センサ回路の各々から出力されるN個の前記出力論理信号が入力されており、シリアル出力信号を出力する出力回路と、
を備え、
N個の前記センサ回路の各々は、容量素子と、前記容量素子の充電経路と、前記容量素子の放電経路と、前記充電経路に配置されている抵抗素子と、を備えており、
K番目(Kは1以上N-1以下の自然数)の前記センサ回路は、
K-1番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が
第1レベルから第2レベルに反転することに応じて
前記充電経路を介して前記容量素子を充電することにより検出動作を開始し、
K番目の前記センサ回路の検出動作が開始されてから
K番目の前記センサ回路の検知量に比例した検知時間の経過後に
、K番目の前記センサ回路の前記出力論理信号を
前記第1レベルから前記第2レベルに反転させることで検出動作を終了する回路であり、
前記検知時間は、前記容量素子と前記充電経路に備えられている前記抵抗素子とによって構成されるRC回路の時定数に比例した時間であり、
前記出力回路は、
K-1番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転することに応じて、前記シリアル出力信号を反転させ、
K番目の前記センサ回路の検知量に比例した検知時間の経過後にK番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転することに応じて、前記シリアル出力信号を反転させ、
前記出力回路から出力される前記シリアル出力信号は、N個の前記センサ回路で検知されたN個の前記検知時間を示す信号を連続して出力する信号であり、
K番目の前記センサ回路は、K-1番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が前記第2レベルから前記第1レベルに反転することに応じて、前記放電経路を介して前記容量素子を放電することにより、K番目の前記センサ回路の前記出力論理信号を前記第2レベルから前記第1レベルに反転させることでリセット動作を実行する回路であり、
最終段の前記センサ回路の前記出力論理信号が、初段の前記センサ回路の前記入力論理信号として入力されており、
最終段の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転して最終段の前記センサ回路の検知動作が終了することに応じて、前記リセット動作が実行され、
前記容量素子と前記放電経路とによって構成されるRC回路の時定数は、前記容量素子と前記充電経路に備えられている前記抵抗素子とによって構成されるRC回路の時定数よりも小さい、
センサ。
【請求項2】
N個の前記センサ回路の各々は、pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタを備えており、
前記pMOSトランジスタのソース端子は、電源電圧部位に接続されており、
前記nMOSトランジスタのソース端子は、基準電圧部位に接続されており、
前記抵抗素子の一端は、pMOSトランジスタのドレイン端子に接続されており、
前記抵抗素子の他端は、接続ノードで、前記nMOSトランジスタのドレイン端子に接続されており、
前記接続ノードは、前記容量素子の一端に接続されている、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
N個(Nは2以上の自然数)のセンサ回路を備えるセンサアレイであって、前段のセンサ回路の出力論理信号が次段のセンサ回路の入力論理信号として入力されるシリアル接続を有している、前記センサアレイと、
前記センサアレイの初段のセンサ回路に入力される前記入力論理信号が入力されているとともに、N個の前記センサ回路の各々から出力されるN個の前記出力論理信号が入力されており、シリアル出力信号を出力する出力回路と、
を備え、
K番目(Kは1以上N-1以下の自然数)の前記センサ回路は、
K-1番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転することに応じて検出動作を開始し、
K番目の前記センサ回路の検出動作が開始されてから
K番目の前記センサ回路の検知量に比例した検知時間の経過後に
、K番目の前記センサ回路の前記出力論理信号を反転させることで検出動作を終了する回路であり、
N個の前記センサ回路の各々は、フォトダイオードを備えており、
前記検知量は、前記フォトダイオードの逆方向リーク電流値であり、
前記検知時間は、前記逆方向リーク電流値に逆比例した時間であり、
前記出力回路は、
K-1番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転することに応じて、前記シリアル出力信号を反転させ、
K番目の前記センサ回路の検知量に比例した検知時間の経過後にK番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転することに応じて、前記シリアル出力信号を反転させ、
前記出力回路から出力される前記シリアル出力信号は、N個の前記センサ回路で検知されたN個の前記検知時間を示す信号を連続して出力する信号である、
センサ。
【請求項4】
N個の前記センサ回路の各々は、論理素子と、前記
フォトダイオー
ドに接続されている容量素子と、を備えており、
前記
フォトダイオー
ドおよび前記容量素子で構成されるRC回路の時定数は、前記論理素子の遅延時間よりも大きい、請求項
3に記載のセンサ。
【請求項5】
N個(Nは2以上の自然数)のセンサ回路を備えるセンサアレイであって、前段のセンサ回路の出力論理信号が次段のセンサ回路の入力論理信号として入力されるシリアル接続を有している、前記センサアレイと、
前記センサアレイの初段のセンサ回路に入力される前記入力論理信号が入力されているとともに、N個の前記センサ回路の各々から出力されるN個の前記出力論理信号が入力されており、シリアル出力信号を出力する出力回路と、
を備え、
K番目(Kは1以上N-1以下の自然数)の前記センサ回路は、
K-1番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転することに応じて検出動作を開始し、
K番目の前記センサ回路の検出動作が開始されてから
K番目の前記センサ回路の検知量に比例した検知時間の経過後に
、K番目の前記センサ回路の前記出力論理信号を反転させることで検出動作を終了する回路であり、
前記出力回路は、
K-1番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転することに応じて、前記シリアル出力信号を反転させ、
K番目の前記センサ回路の検知量に比例した検知時間の経過後にK番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転することに応じて、前記シリアル出力信号を反転させ、
前記出力回路から出力される前記シリアル出力信号は、N個の前記センサ回路で検知されたN個の前記検知時間を示す信号を連続して出力する信号であり、
前記センサアレイは、N個の前記センサ回路の少なくとも1つにおいて、予め定められた一定の検知量に対応する基準検知時間を検出する基準センサ回路を備える、
センサ。
【請求項6】
N個(Nは2以上の自然数)のセンサ回路を備えるセンサアレイであって、前段のセンサ回路の出力論理信号が次段のセンサ回路の入力論理信号として入力されるシリアル接続を有している、前記センサアレイと、
前記センサアレイの初段のセンサ回路に入力される前記入力論理信号が入力されているとともに、N個の前記センサ回路の各々から出力されるN個の前記出力論理信号が入力されており、シリアル出力信号を出力する出力回路と、
を備え、
K番目(Kは1以上N-1以下の自然数)の前記センサ回路は、
K-1番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転することに応じて検出動作を開始し、
K番目の前記センサ回路の検出動作が開始されてから
K番目の前記センサ回路の検知量に比例した検知時間の経過後に
、K番目の前記センサ回路の前記出力論理信号を反転させることで検出動作を終了する回路であり、
最終段の前記センサ回路の前記出力論理信号が、初段の前記センサ回路の前記入力論理信号として入力されており、
最終段の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転して最終段の前記センサ回路の検知動作が終了することに応じて、初段の前記センサ回路の検出動作が開始され、
前記出力回路は、
K-1番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転することに応じて、前記シリアル出力信号を反転させ、
K番目の前記センサ回路の検知量に比例した検知時間の経過後にK番目の前記センサ回路の前記出力論理信号が反転することに応じて、前記シリアル出力信号を反転させ、
前記出力回路から出力される前記シリアル出力信号は、N個の前記センサ回路で検知されたN個の前記検知時間を示す信号を連続して出力する信号である、
センサ。
【請求項7】
N個の前記センサ回路の各々は、可変容量を備えており、
前記検知量は、前記可変容量の静電容量であり、
前記検知時間は、前記可変容量の静電容量に比例した時間である、請求項
1-6の何れか1項に記載のセンサ。
【請求項8】
N個の前記センサ回路の各々は、論理素子を備えており、
前記可変容量の充放電の時定数は、前記論理素子の遅延時間よりも大きい、請求項
7に記載のセンサ。
【請求項9】
N個の前記センサ回路の各々は、可変抵抗を備えており、
前記検知量は、前記可変抵抗の抵抗値であり、
前記検知時間は、前記可変抵抗の抵抗値に比例した時間である、請求項
1-6の何れか1項に記載のセンサ。
【請求項10】
N個の前記センサ回路の各々は、論理素子と、前記可変抵抗に接続されている容量素子と、を備えており、
前記可変抵抗および前記容量素子で構成されるRC回路の時定数は、前記論理素子の遅延時間よりも大きい、請求項
9に記載のセンサ。
【請求項11】
前記シリアル出力信号はプッシュプル出力信号であり、
前記出力回路は、CMOS論理回路で構成されている、請求項1~
10の何れか1項に記載のセンサ。
【請求項12】
前記シリアル出力信号はオープンドレイン出力信号である、請求項1~
10の何れか1項に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、回路規模の小型化かつ低消費電力化が可能なセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2次元アレイ状に配置された複数の可変容量と、X-Yデコーダと、を備えるセンサが示されている。X-Yデコーダによって選択された可変容量の静電容量が、検出可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のセンサでは、可変容量を選択するためのスキャン回路や制御回路が必要となるため、センサの回路規模が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示されるセンサは、N個(Nは2以上の自然数)のセンサ回路を備えるセンサアレイを備える。センサアレイは、前段のセンサ回路の出力論理信号が次段のセンサ回路の入力論理信号として入力されるシリアル接続を有している。センサは、センサアレイの初段のセンサ回路に入力される入力論理信号が入力されているとともに、N個のセンサ回路の各々から出力されるN個の出力論理信号が入力されており、シリアル出力信号を出力する出力回路を備える。センサ回路は、入力論理信号が反転することに応じて検出動作を開始し、入力論理信号が反転してからセンサ回路の検知量に比例した検知時間の経過後に出力論理信号を反転させることで検出動作を終了する回路である。K番目(Kは1以上N-1以下の自然数)のセンサ回路の出力論理信号が反転してK番目のセンサ回路の検知動作が終了することに応じて、K+1番目のセンサ回路の検出動作が開始される。出力回路から出力されるシリアル出力信号は、N個のセンサ回路で検知されたN個の検知時間を示す信号を連続して出力する信号である。
【0006】
当該センサでは、K番目のセンサ回路の検知動作が終了することに応じて、K+1番目のセンサ回路の検出動作が開始される。よって、シリアル接続されたセンサ回路の並び順で、自律的に検出動作を進行させることができる。X-Yデコーダなどのスキャン回路を備えることなく、N個のセンサ回路からN個のセンサ信号を読み出すことができるため、センサの回路規模を小型化かつ低消費電力化することが可能となる。
【0007】
シリアル出力信号は、K番目のセンサ回路の出力論理信号が反転することに応じて反転する信号であってもよい。
【0008】
N個のセンサ回路の各々は、可変容量を備えていてもよい。検知量は、可変容量の静電容量であってもよい。検知時間は、可変容量の静電容量に比例した時間であってもよい。
【0009】
N個のセンサ回路の各々は、論理素子を備えていてもよい。可変容量の充放電の時定数は、論理素子の遅延時間よりも大きくてもよい。
【0010】
N個のセンサ回路の各々は、可変抵抗を備えていてもよい。検知量は、可変抵抗の抵抗値であってもよい。検知時間は、可変抵抗の抵抗値に比例した時間であってもよい。
【0011】
N個のセンサ回路の各々は、論理素子と、可変抵抗に接続されている容量素子と、を備えていてもよい。可変抵抗および容量素子で構成されるRC回路の時定数は、論理素子の遅延時間よりも大きくてもよい。
【0012】
N個のセンサ回路の各々は、ダイオード素子を備えていてもよい。検知量は、ダイオード素子の逆方向リーク電流値であってもよい。検知時間は、逆方向リーク電流値に逆比例した時間であってもよい。
【0013】
N個のセンサ回路の各々は、論理素子と、ダイオード素子に接続されている容量素子と、を備えていてもよい。ダイオード素子および容量素子で構成されるRC回路の時定数は、論理素子の遅延時間よりも大きくてもよい。
【0014】
シリアル出力信号はプッシュプル出力信号であってもよい。出力回路は、CMOS論理回路で構成されていてもよい。
【0015】
シリアル出力信号はオープンドレイン出力信号であってもよい。
【0016】
センサアレイは、N個のセンサ回路の少なくとも1つにおいて、予め定められた一定の検知量に対応する基準検知時間を検出する基準センサ回路を備えていてもよい。
【0017】
最終段のセンサ回路の出力論理信号が、初段のセンサ回路の入力論理信号として入力されていてもよい。最終段のセンサ回路の出力論理信号が反転して最終段のセンサ回路の検知動作が終了することに応じて、初段のセンサ回路の検出動作が開始されてもよい。
【0018】
N個のセンサ回路の各々の間で用いられる論理素子は、シュミットトリガ入力の素子であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1のセンサ1の概略を示すブロック図である。
【
図3】センサ回路SC(K)の動作を説明する波形図である。
【
図4】センサ1の全体の動作を説明する波形図である。
【
図5】実施例2に係るセンサ1aの概略を示すブロック図である。
【
図6】センサ回路SCa(1)~SCa(N)の回路構成図である。
【
図7】センサ回路SCb(K)の回路構成図である。
【
図8】センサ回路SCc(K)の回路構成図である。
【
図9】センサ回路SCd(K)の回路構成図である。
【
図10】センサ回路SCe(K)の回路構成図である。
【
図11】センサ回路SCf(K)の回路構成図である。
【
図12】センサ回路SCf(K)の動作を説明する波形図である。
【
図13】実施例4のセンサ1fの概略を示すブロック図である。
【
図14】センサ1fの全体の動作を説明する波形図である。
【
図15】変形例の出力回路30bを備えるセンサ1bの概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
(センサ1の構成)
図1に、実施例1に係るセンサ1を示す。センサ1は、各種の物理量をデジタル値に変換するA/D変換回路の一例である。センサ1は、イネーブル回路10、センサアレイ20、出力回路30、を備えている。
【0021】
イネーブル回路10は、NAND論理回路である。イネーブル回路10には、不図示の制御回路から出力されるイネーブル信号EN、および、最終段のセンサ回路SC(N)から出力される出力信号OS(N)が入力される。イネーブル回路10から出力される開始信号STは、初段のセンサ回路SC(1)に入力される。すなわち、最終段のセンサ回路SC(N)の出力信号OS(N)が、初段のセンサ回路SC(1)の入力論理信号として入力されている。
【0022】
イネーブル回路10は、センサ1のオン/オフ制御を行う回路である。イネーブル信号ENがハイレベルの期間は、センサ1では検出動作が行われる。イネーブル信号ENがローレベルの期間は、センサ1は停止する。
【0023】
センサアレイ20は、N個(Nは2以上の自然数)のセンサ回路SC(1)~SC(N)を備える。初段のセンサ回路SC(1)には、開始信号STが入力される。センサ回路SC(1)から出力される出力信号OS(1)は、2段目のセンサ回路SC(2)に入力される。以下同様に、センサアレイ20は、前段のセンサ回路の出力信号が次段のセンサ回路の入力信号として入力されるシリアル接続を有している。
【0024】
出力回路30には、開始信号STおよび出力信号OS(1)~OS(N)が入力される。出力回路30からは、シリアル出力信号Soutが出力される。シリアル出力信号Soutは、下式(1)で示される論理信号である。
【数1】
そして出力回路30は、式(1)の論理演算を行うための論理回路を備えている。具体的には、NAND回路ND(1)~ND(M)、インバータINV(1)~INV(M)、AND回路AD、を備える。ここでMは、M=(N+1)/2を満たす自然数である。
【0025】
NAND回路ND(1)には、インバータINV(1)を介して開始信号STが入力されるとともに、出力信号OS(1)が入力される。NAND回路ND(1)からは、論理信号LS(1)が出力される。以下同様にして、NAND回路ND(M)には、インバータINV(M)を介して出力信号OS(N-1)が入力されるとともに、出力信号OS(N)が入力される。NAND回路ND(M)からは、論理信号LS(M)が出力される。AND回路ADには論理信号LS(1)~LS(M)が入力され、シリアル出力信号Soutが出力される。
【0026】
出力回路30はCMOS論理回路で構成されており、シリアル出力信号Soutはプッシュプル出力である。よって出力回路30により、高速および低消費電力での検出動作が可能となる。
【0027】
(センサ回路SC(K)の構成および動作)
図2を用いて、K番目のセンサ回路SC(K)の回路構成を説明する。ここでKは、1以上N-1以下の自然数である。センサ回路SC(K)はpMOSトランジスタTP、nMOSトランジスタTN、抵抗素子RN、可変容量素子CN(K)、シュミットトリガインバータSI、を備える。抵抗素子RNは、固定の抵抗値R0を備える。可変容量素子CN(K)は、検知対象の静電容量値CV(K)を備える。
【0028】
pMOSトランジスタTPおよびnMOSトランジスタTNのゲート端子には、前段のセンサ回路SC(K-1)から出力された出力信号OS(K-1)が入力される。pMOSトランジスタTPのソース端子およびバックゲート端子は、電源電圧部位VDDに接続されている。nMOSトランジスタTNのソース端子およびバックゲート端子は、基準電圧部位GNDに接続されている。抵抗素子RNの一端は、pMOSトランジスタTPのドレイン端子に接続されている。抵抗素子RNの他端は、接続ノードNNで、nMOSトランジスタTNのドレイン端子に接続されている。接続ノードNNは、可変容量素子CN(K)の一端およびシュミットトリガインバータSIの入力端子に接続されている。可変容量素子CN(K)の他端は、基準電圧部位GNDに接続されている。シュミットトリガインバータSIの入力端子には、電圧信号AN(K)が入力される。シュミットトリガインバータSIの正の電源端子は電源電圧部位VDDに接続され、負の電源端子は基準電圧部位GNDに接続されている。
【0029】
図3の波形図を用いて、センサ回路SC(K)の動作を説明する。時刻t(K-1)よりも前の時刻では、センサ回路SC(K)に入力される出力信号OS(K-1)はハイレベルであり、pMOSトランジスタTPはオフ状態、nMOSトランジスタTNはオン状態である。このとき電圧信号AN(K)は0[V]であり、シュミットトリガインバータSIから出力される出力信号OS(K)はハイレベルになっている。
【0030】
時刻t(K-1)で出力信号OS(K-1)がハイレベルからローレベルに切り替わると、pMOSトランジスタTPはオン、nMOSトランジスタTNはオフとなり、可変容量素子CN(K)の充電が開始されるため、電圧信号AN(K)が上昇を開始する。このときpMOSトランジスタTPのオン抵抗が、抵抗素子RNの抵抗値R0よりも十分小さく無視できると考えると、電圧信号AN(K)は「VDD/(R0×CV(K))」の傾きで上昇する(領域A1参照)。
【0031】
時刻t(K)で電圧信号AN(K)がシュミットトリガインバータSIの立上り論理しきい値電圧VT1に達すると、出力信号OS(K)はハイレベルからローレベルに反転する(矢印Y1参照)。時刻t(K-1)からt(K)までの検知時間DT(K)は、「R0×CV(K)」に比例した時間になる。よって検知時間DT(K)が、検知対象である静電容量値CV(K)に対応する出力となる。その後、電圧信号AN(K)は、電源電圧VDDに到達するまで上昇する。
【0032】
すなわちセンサ回路SC(K)は、入力論理信号である出力信号OS(K-1)が反転することに応じて検出動作を開始する回路である。そして入力論理信号が反転してから、検知量である静電容量値CV(K)に比例した検知時間DT(K)の経過後に、出力論理信号である出力信号OS(K)を反転させることで検出動作を終了する回路である。
【0033】
時刻t(K)以降において、出力信号OS(K-1)がローレベルを保持している間は、電圧信号AN(K)は電源電圧VDDを維持し、出力信号OS(K)はローレベルを維持する。そして時刻tresにおいて、出力信号OS(K-1)がローレベルからハイレベルに切り替わると、pMOSトランジスタTPはオフ、nMOSトランジスタTNはオンとなる。nMOSトランジスタTNのオン抵抗は十分小さいため、可変容量素子CN(K)に蓄積された電荷は瞬時に放電され、電圧信号AN(K)は0[V]に変化する(矢印Y2参照)。これを受けて、シュミットトリガインバータSIから出力される出力信号OS(K)は、ローレベルからハイレベルに反転する(矢印Y3参照)。
【0034】
なお、抵抗値R0および静電容量値CV(K)で定まる充放電の時定数が、pMOSトランジスタTPおよびnMOSトランジスタTNで構成される論理素子の遅延時間や、シュミットトリガインバータSIの遅延時間に比して大きくなるように、回路設計を行うことが好ましい。これにより、検知時間DT(K)によって、静電容量値CV(K)を正確に示すことが可能となる。
【0035】
また、センサ回路SC(1)~SC(N)内で使用される論理素子は、シュミットトリガ入力の論理素子に置き換えることができる。これにより、チャタリングの発生を回避することができ、正確に検知時間DT(K)を検出することが可能となる。
【0036】
(センサ1の動作)
図4の波形図を用いて、センサ1の全体の動作を説明する。
図4の時刻t(0)よりも前の時刻では、イネーブル信号ENはローレベルであり、センサ1はオフ状態である。センサ1のオフ状態では、開始信号STはハイレベルであり、初段のセンサ回路SC(1)の出力信号OS(1)はハイレベルである。
図1に示すように、各センサ回路の入力は前段のセンサ回路の出力であるため、すべてのセンサ回路の出力信号OS(1)~OS(N)もハイレベルである。また式(1)の論理式および
図1の出力回路30から分かるように、シリアル出力信号Soutもハイレベルとなる。
【0037】
時刻t(0)でイネーブル信号ENをハイレベルに切り替えると、開始信号STがハイレベルからローレベルに切り替えられ、センサ1での1周目の検出動作が開始される。開始信号STのローレベルへの遷移に応じて、初段のセンサ回路SC(1)内の可変容量素子CN(1)の充電が開始される。同時に、出力回路30のNAND回路ND(1)から出力される論理信号LS(1)がローレベルに切り替わるため、シリアル出力信号Soutはハイレベルからローレベルに反転する(矢印Y11)。
【0038】
時刻t(1)で初段のセンサ回路SC(1)の出力信号OS(1)がハイレベルからローレベルに切り替わると、NAND回路ND(1)から出力される論理信号LS(1)がハイレベルに切り替わるため、シリアル出力信号Soutはローレベルからハイレベルに反転する(矢印Y12)。シリアル出力信号Soutの両エッジ間の検知時間DT(1)は、初段のセンサ回路SC(1)の検知対象の静電容量値CV(1)に比例する時間となっている。また時刻t(1)で出力信号OS(1)がローレベルに切り替わることに応じて、2段目のセンサ回路SC(2)内の可変容量素子CN(2)の充電が開始される。
【0039】
同様にして、時刻t(2)で2段目のセンサ回路SC(2)の出力信号OS(2)がハイレベルからローレベルに切り替わると、シリアル出力信号Soutはハイレベルからローレベルに反転する(矢印Y13)。シリアル出力信号Soutの両エッジ間の検知時間DT(2)は、2段目のセンサ回路SC(2)の検知対象の静電容量値CV(2)に比例する時間となっている。また時刻t(2)において、3段目のセンサ回路SC(3)内の可変容量素子CN(3)の充電が開始される。
【0040】
以下同様にして、前段のセンサ回路SC(K)の出力信号OS(K)がハイレベルからローレベルに切り替わると、シリアル出力信号SoutにK回目の反転が発生し、同時に次段のセンサ回路SC(K+1)内の可変容量素子CN(K+1)の充電が開始される。このように、シリアル接続された順に検出動作が受け渡される。
【0041】
そして、時刻t(N)で最終段であるN段目のセンサ回路SC(N)の出力信号OS(N)がハイレベルからローレベルに切り替わると、シリアル出力信号Soutが反転する(矢印Y14)。これにより、N個のセンサ回路SC(1)~SC(N)の一通りの検出動作が終了する。そしてシリアル出力信号Soutは、N個のセンサ回路SC(1)~SC(N)で検知されたN個の検知時間DT(1)~DT(N)を示す信号を、連続して出力する信号となる。
【0042】
最終段のセンサ回路SC(N)の出力信号OS(N)が反転して最終段のセンサ回路SC(N)の検知動作が終了することに応じて、初段のセンサ回路SC(1)の検出動作が開始される。以下に説明する。出力信号OS(N)はイネーブル回路10に戻されている。また時刻t(N)においてイネーブル信号ENはハイレベルであり、センサ1がオン状態とされている。よって、出力信号OS(N)の立ち下がりエッジに応じて、開始信号STはハイレベルに切り替えられる(矢印Y15)。初段のセンサ回路SC(1)内の可変容量素子CN(1)が瞬時に放電され、出力信号OS(1)がローレベルからハイレベルに反転する(矢印Y16)。この変化は、短時間で最終段のセンサ回路SC(N)まで伝搬し(矢印Y17)、出力信号OS(1)~OS(N)の全てが初期状態のハイレベルになる。
【0043】
出力信号OS(N)の立ち上がりエッジに応じて、イネーブル回路10から出力される開始信号STがハイレベルからローレベルに切り替えられ、センサ1での2周目の検出動作が開始される(矢印Y18)。なお、2周目の検出動作の内容は、1周目の検出動作と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
その後、任意の時刻tdisにおいて、イネーブル信号ENをハイレベルからローレベルに切り替えると、開始信号STはローレベルに切り替えられる(矢印Y19)。従って、出力信号OS(1)~OS(N)の全てが初期状態のハイレベルにリセットされる(領域A2)。すなわち、イネーブル信号ENのローレベルへの遷移により、センサ1がオフ状態にされる。
【0045】
(効果)
本実施例のセンサ1では、K番目のセンサ回路の検知動作が終了することに応じて、K+1番目のセンサ回路の検出動作を開始させることができる。よって、シリアル接続されたセンサ回路SC(1)~SC(N)の並び順で、自律的に検出動作を進行させることができる。X-Yデコーダなどのスキャン回路を備えることなく、N個のセンサ回路からN個のセンサ信号を読み出すことができるため、センサ1の回路規模を小型化することが可能となる。
【0046】
K番目のセンサ回路SC(K)の検出動作時には、他のセンサ回路の動作を停止させることができる。無駄な電力消費が発生しないため、センサ1の省電力化が可能となる。
【0047】
センサ回路SC(1)~SC(N)の検出動作はシリアルに実行されるため、検知時間DT(1)~DT(N)は重複することがない。これにより出力回路30では、組み合わせ回路のみでシリアル出力信号Soutを生成することができる。
【0048】
以上から、本実施例のセンサ1は、小型化、低消費電力化が必要な用途への適用に向いており、エネルギーハーベスティングとの相性が良い。またセンサ1は、消費電力の大きいアナログ増幅回路も使用しておらず、発熱量も小さくできるため、皮膚張り付けやインプラント用途への応用も可能である。また、デジタル回路、容量素子、抵抗素子などの汎用技術のみでセンサ1を構成できるため、製造コストの低減が可能である。
【実施例2】
【0049】
図5に、実施例2に係るセンサ1aを示す。実施例1の出力回路30(
図1)は、プッシュプル出力の回路構成例であった。一方、実施例2の出力回路30a(
図5)は、オープンドレイン出力の回路構成例である。なお、出力回路30a以外の構成は実施例1の内容と同様である。実施例1と同一内容の部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。
【0050】
出力回路30aは、NAND回路ND(1)~ND(M)、インバータINV(1)~INV(M)、を備える。NAND回路ND(1)~ND(M)は、オープンドレイン出力NAND回路である。NAND回路ND(1)~ND(M)の各々は、直列接続された2つのnMOSトランジスタを備えている。NAND回路ND(1)の一方のnMOSトランジスタのゲートには、インバータINV(1)を介して開始信号STが入力される。また他方のnMOSトランジスタのゲートには、出力信号OS(1)が入力される。以下同様にして、NAND回路ND(M)の一方のnMOSトランジスタのゲートには、インバータINV(M)を介して出力信号OS(N-1)が入力される。また他方のnMOSトランジスタのゲートには、出力信号OS(N)が入力される。
【0051】
NAND回路ND(1)~ND(M)のドレイン側の端子は第1端子T1に共通接続されており、ソース側の端子は第2端子T2に共通接続されている。これによりNAND回路ND(1)~ND(M)は、ワイヤードAND接続されている。よって、実施例2の出力回路30aは、実施例1の出力回路30(
図1)と同様の論理回路構成となっている。
【0052】
第1端子T1は、検出回路31aの側で、プルアップ抵抗Rpuを介して電源電圧部位VDDに接続される。第2端子T2は、基準電圧部位GNDに接続されている。第1端子T1からはシリアル出力信号Soutが出力される。シリアル出力信号Soutは、検出回路31aで受信される。
【0053】
実施例2の出力回路30aの動作内容は、実施例1の出力回路30と同様であるため、説明を省略する。実施例2の出力回路30aでは、オープンドレイン出力とすることで、回路規模や配線数を抑制することができる。センサ1aを小型化することが可能となる。
【実施例3】
【0054】
実施例3では、
図6~
図10を用いて、センサ回路SCの第1~第5構成例を説明する。なお、
図2に示す実施例1のセンサ回路SC(K)と同一内容の部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。
【0055】
図6を用いて、第1構成例であるセンサ回路SCa(1)~SCa(N)を説明する。センサ回路SCa(1)~SCa(N)は、共通の定電流バイアス回路CCを備えている。定電流バイアス回路CCは、電源電圧部位VDDと基準電圧部位GNDとの間に直列接続されている、pMOSトランジスタTP0および基準抵抗素子RBを備えている。定電流バイアス回路CCのpMOSトランジスタTP0のゲート端子が、センサ回路SCa(1)~SCa(N)の各々が備えるpMOSトランジスタTPのゲート端子に共通接続されることで、カレントミラー回路が構成されている。これにより、
図2のセンサ回路SC(K)の抵抗素子RNを不要とすることができる。そして、センサ回路SCa(1)~SCa(N)の充電電流を同一にすることができるため、検知時間DT(1)~DT(N)をより正確に検出することが可能となる。
【0056】
図7を用いて、第2構成例であるセンサ回路SCb(K)を説明する。センサ回路SCb(K)は、実施例1のセンサ回路SC(K)(
図2参照)の抵抗素子RNをフォトダイオードPDに置換するとともに、可変容量素子CN(K)を固定容量素子CNbに置換した構造を備える。フォトダイオードPDを流れる逆方向リーク電流ISは、受光量に応じて変化するため、固定容量素子CNbの充電時間が変化する。これにより、検知時間DT(K)を、逆方向リーク電流ISに逆比例した時間(すなわち検知対象である受光量に対応した時間)とすることができる。なお、フォトダイオードPDおよび固定容量素子CNbで構成されるRC回路の時定数が、センサ回路SCb(K)に備えられる各種の論理素子の遅延時間に比して大きくなるように、回路設計を行うことが好ましい。これにより、検知時間DT(K)によって受光量を正確に示すことが可能となる。
【0057】
図8を用いて、第3構成例であるセンサ回路SCc(K)を説明する。センサ回路SCc(K)は、実施例1のセンサ回路SC(K)(
図2参照)のpMOSトランジスタTPおよびnMOSトランジスタTNをインバータINVcに置換した構造を備える。また、抵抗素子RNの配置を、電源電圧部位VDDとインバータINVcの正の電源端子との間に変更した構造を備える。これにより、個別のトランジスタではなく、論理素子を用いてセンサ回路を構成できるため、設計の自由度を高めることが可能となる。
【0058】
図9を用いて、第4構成例であるセンサ回路SCd(K)を説明する。センサ回路SCd(K)は、実施例1のセンサ回路SC(K)(
図2参照)のpMOSトランジスタTPをインバータINVdに置換した構造を備える。このように、論理素子を用いてセンサ回路を構成することも可能である。
【0059】
図10を用いて、第5構成例であるセンサ回路SCe(K)を説明する。センサ回路SCe(K)は、第4構成例のセンサ回路SCd(K)のnMOSトランジスタTNを、オープンドレイン出力論理のインバータODINVに置換した構造を備える。これにより、市販の論理素子を用いてセンサ回路を構成できるため、設計の自由度を高めることが可能となる。
【実施例4】
【0060】
実施例1~3では、可変容量素子CNの充電時間を検出する形態を説明した。実施例4では、可変容量素子CNの放電時間を検出する形態を説明する。実施例1~3と同一内容の部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。
【0061】
(センサ回路SCf(K)の構成および動作)
図11に、実施例4に係るセンサ回路SCf(K)を示す。センサ回路SCf(K)は、実施例1のセンサ回路SC(K)(
図2参照)の抵抗素子RNの配置を、接続ノードNNと可変容量素子CN(K)との間に変更した構造を備える。すなわち、可変容量素子CN(K)の充電経路および放電経路の両方に抵抗素子RNを配置した構造である。
【0062】
図12の波形図を用いて、センサ回路SCf(K)の動作を説明する。時刻t(K-1)から時刻tresまでの動作は、
図3で説明した実施例1のセンサ回路SC(K)の動作と同様であるため、説明を省略する。時刻tresにおいて、出力信号OS(K-1)がローレベルからハイレベルに切り替わると、pMOSトランジスタTPはオフ、nMOSトランジスタTNはオンとなる。可変容量素子CN(K)の放電が開始されるため、電圧信号AN(K)は、「-VDD/(R0×CV(K))」の傾きで下降する(領域A3参照)。
【0063】
時刻Ft(K)で電圧信号AN(K)がシュミットトリガインバータSIの立下り論理しきい値電圧VT2に達すると、出力信号OS(K)はローレベルからハイレベルに反転する(矢印Y4参照)。時刻tresからFt(K)までの検知時間FDT(K)は、「R0×CV(K)」に比例するため、検知対象である静電容量値CV(K)に対応する出力となる。その後、電圧信号AN(K)は、0[V]まで下降する。
【0064】
(センサ1fの構成)
図13に、実施例4のセンサ1fを示す。センサアレイ20fは、
図11で前述したセンサ回路SCf(1)~SCf(N)がシリアル接続された構造を備える。また出力回路30fは、X-NOR回路XN(1)~XN(M)を備える。X-NOR回路XN(1)には、開始信号STおよび出力信号OS(1)が入力される。以下同様にして、X-NOR回路XN(M)には、出力信号OS(N-1)および出力信号OS(N)が入力される。なお、実施例4のセンサ1fのその他の構成は、実施例1のセンサ1と同様である。実施例1と同一内容の部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。
【0065】
(センサ1fの動作)
図14の波形図を用いて、センサ1fの全体の動作を説明する。時刻t(0)から時刻t(N-1)までの動作は、
図4で説明した実施例1のセンサ1の動作と同様であるため、説明を省略する。時刻t(N)において、可変容量素子の充電時の検知時間DT(1)~DT(N)を示すシリアル出力信号Soutの出力が完了する。そして最終段の出力信号OS(N)の立ち下がりエッジに応じて、開始信号STはハイレベルに切り替えられる(矢印Y21)。よって、初段のセンサ回路SCf(1)内の可変容量素子CN(1)の放電が開始される。
【0066】
時刻Ft(1)でセンサ回路SCf(1)の出力信号OS(1)がローレベルからハイレベルに切り替わると、シリアル出力信号Soutはハイレベルからローレベルに反転する(矢印Y22)。シリアル出力信号Soutの両エッジ間の検知時間FDT(1)は、初段のセンサ回路SCf(1)の検知対象の静電容量値CV(1)に比例する時間となっている。また時刻ft(1)で出力信号OS(1)がハイレベルに切り替わることに応じて、2段目のセンサ回路SCf(2)内の可変容量素子CN(2)の放電が開始される。
【0067】
以下同様にして、時刻Ft(N)で最終段であるN段目のセンサ回路SCf(N)の出力信号OS(N)がローレベルからハイレベルに切り替わると、シリアル出力信号Soutが反転する(矢印Y23)。これにより、N個のセンサ回路SCf(1)~SCf(N)における、可変容量素子の放電時の検知時間FDT(1)~FDT(N)の検出動作が終了する。
【0068】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0069】
(変形例)
出力回路30は様々な論理回路で構成することができる。
図15に、変形例の出力回路30bを備えるセンサ1bを示す。実施例1と同一内容の部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。N個のセンサユニットSU(1)~SU(N)の各々は、センサ回路SC(1)~SC(N)およびNAND回路NDb(1)~NDb(N)を備えている。NAND回路NDb(1)~NDb(N)およびインバータINVbによって、出力回路30bが構成されている。NAND回路NDb(1)には、インバータINVbを介して開始信号STが入力されるとともに、出力信号OS(1)が入力される。NAND回路NDb(1)からは、論理信号LSb(1)が出力される。以下同様にして、NAND回路NDb(N)には、論理信号LSb(N-1)が入力されるとともに、出力信号OS(N)が入力される。NAND回路NDb(N)からは、シリアル出力信号Soutが出力される。すなわち出力回路30bは、下式(2)で示されるシリアル出力信号Soutを出力する論理回路である。
【数2】
効果を説明する。N個のセンサユニットSU(1)~SU(N)の各々では、センサ回路SC(1)~SC(N)の近傍にNAND回路NDb(1)~NDb(N)を配置することができる。よって、センサユニットSU(1)~SU(N)の間の配線数を最小化することができる。これにより変形例の出力回路30bでは、実施例1の出力回路30に比して、配線を簡略化することが可能となる。1次元センサストリング向きの出力回路を構成することが可能となる。
【0070】
図2、
図8~
図11のセンサ回路では、検知対象の物理量として、可変容量素子CNの静電容量を用いる場合を説明したが、この形態に限られず、様々な物理量を検知対象とすることが可能である。例えば可変抵抗素子の抵抗値を検知対象とする場合には、
図2、
図8~
図11のセンサ回路において、固定の抵抗値R0を有する抵抗素子RNを可変抵抗素子に置換すればよい。また、可変容量素子CN(K)を固定容量素子に置換すればよい。これにより、検知量である抵抗値に比例した検知時間DT(K)を検出することが可能になる。なお、可変抵抗素子および固定容量素子で構成されるRC回路の時定数が、センサ回路に備えられる各種の論理素子の遅延時間に比して大きくなるように、回路設計を行うことが好ましい。これにより、検知時間DT(K)によって抵抗値を正確に示すことが可能となる。
【0071】
センサアレイ20は、N個のセンサ回路SC(1)~SC(N)の少なくとも1つにおいて、基準センサ回路を備えていてもよい。基準センサ回路は、予め定められた一定の検知量(例:既知の静電容量値)を有する回路である。一定の検知量に対応する基準検知時間を検出することで、検出対象の物理量と検知時間との相関を知ることができる。よって、検知時間から検知対象の物理量への換算を正確に行うことが可能となる。
【0072】
本実施例では、センサ回路の各々が偶数段のインバータを備えることで、立ち上がりエッジが伝搬する(または立ち下がりエッジが伝搬する)形態を説明したが、この形態に限られない。センサ回路の各々が奇数段のインバータを備えることで、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジが交互に伝搬する形態であってもよい。この場合、センサ回路が充電時間または放電時間の一方のみを検出する構成を有すると、検知時間DTの検出は、シリアル接続されたセンサ回路の1個おきに行われることになる。
【0073】
本実施例では、最終段のセンサ回路SC(N)の出力信号OS(N)が、初段のセンサ回路SC(1)の入力論理信号として入力される場合を説明したが、この形態に限られない。出力信号OS(N)を初段のセンサ回路SC(1)に入力しない形態であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1:センサ 10:イネーブル回路 20:センサアレイ 30:出力回路 AN(K):電圧信号 CN(K):可変容量素子 DT(1)~(N):検知時間 OS(1)~OS(N):出力信号 RN:抵抗素子 SC(1)~SC(N):センサ回路 Sout:シリアル出力信号 TN:nMOSトランジスタ TP:pMOSトランジスタ