(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240521BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/29 G
H01F27/29 120
(21)【出願番号】P 2021176448
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】孝山 康太
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-147158(JP,A)
【文献】再公表実用新案第2007/060961(JP,A1)
【文献】特開2020-102559(JP,A)
【文献】特開2008-198740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる巻芯部ならびに前記巻芯部の前記軸線方向での互いに逆の第1端、第2端にそれぞれ設けられた第1鍔部、第2鍔部を有する、コアと、
互いに逆方向に向く下方主面および上方主面を有する、天板と、
前記巻芯部に巻回された、少なくとも1本のワイヤと、
前記ワイヤの各端部がそれぞれ電気的に接続され、前記第1鍔部および前記第2鍔部にそれぞれ設けられた、第1端子電極および第2端子電極と、
を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向けられる底面と、前記底面の反対側の天面と、を有し、
前記天板は、前記下方主面が前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の前記天面に対向した状態で、前記コアに接着剤を介して固定され、
前記第1鍔部と前記第2鍔部との少なくとも一方の前記天面および前記下方主面のうち、一方を第1面、他方を第2面としたとき、前記第1面には突起が設けられ、前記第2面には前記突起を受け入れる凹部が設けられ、
前記突起および前記凹部は、それぞれ、前記第1面および前記第2面において、複数箇所にスポット状に点在しており、
前記突起の外表面および前記凹部を規定する壁面の少なくとも一方には、前記突起を前記凹部内へと導くことが可能な案内面が設けられ、
前記突起の外表面および前記凹部を規定する壁面は、それぞれ、前記凹部が前記突起を受け入れた状態において互いに当接する第1当接部および第2当接部を与え、
前記第1当接部と前記第2当接部との互いの当接は、前記第1面と前記第2面との間にギャップを形成した状態での、前記凹部への前記突起の挿入の終端を規定して前記挿入の方向での位置決めを達成するとともに、前記第1面および前記第2面に沿う方向における
全方向で前記コアに対する前記天板の位置合わせを可能とする、
コイル部品。
【請求項2】
前記突起は円錐の少なくとも一部を形成する外周面を有し、前記凹部は円錐状の内周面を有する、請求項
1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記突起は円錐台状である、請求項
2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記突起は四角錐状の外周面を有し、前記凹部は四角錐状の内周面を有する、請求項
1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記突起は四角錐台状である、請求項
4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記突起および前記凹部は、それぞれ複数組ずつ、前記下方主面と前記第1鍔部の前記天面とが対向する領域および前記下方主面と前記第2鍔部の前記天面とが対向する領域に存在している、請求項
1ないし
5のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項7】
前記巻芯部の中心軸線を含みかつ前記下方主面に直交する面に関して、複数組の前記突起および前記凹部が対称位置に配置されている、請求項
6に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記巻芯部の中心軸線に直交しかつ前記巻芯部の前記軸線方向での中点を通る面に関して、複数組の前記突起および前記凹部が対称位置に配置されている、請求項
6または
7に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に設けられる第2の突起をさらに備え、前記第2の突起は、前記第1面と前記第2面との間に前記ギャップを形成した状態で前記第1面または前記第2面に当接する、請求項1ないし8のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第1面は前記下方主面であり、前記第2面は前記第1鍔部および前記第2鍔部の少なくとも一方の前記天面である、請求項1ないし
9のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項11】
前記ワイヤの一方の端部と前記第1端子電極との接続部分および前記ワイヤの他方の端部と前記第2端子電極との接続部分は、前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の前記底面側に位置している、請求項1ないし
10のいずれかに記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤを巻回した巻芯部と、巻芯部の各端部に設けられた第1鍔部および第2鍔部と、を有するコア、ならびに第1鍔部および第2鍔部間に渡された状態でコアに固定された天板を備える、コイル部品に関するもので、特に、コアと天板との結合部分の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2011-96815号公報(特許文献1)には、ワイヤを巻回した巻芯部と、巻芯部の各端部に設けられた第1鍔部および第2鍔部と、を有するコア、ならびに第1鍔部および第2鍔部間に渡された状態でコアに接着固定された天板を備える、コイル部品が記載されている。
【0003】
第1鍔部および第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向けられる底面と、底面の反対側の天面と、底面および天面間を連結し巻芯部とは反対側に位置する外側端面とを有する。前述した天板は、その下方主面が第1鍔部および第2鍔部の各々の天面に対向した状態で、コアに接着剤を介して固定されている。
【0004】
第1鍔部および第2鍔部には、それぞれ、少なくとも1つの端子電極が設けられる。端子電極は、第1鍔部および第2鍔部の各々の底面から外側端面を経由して天面にまで一体に延びるように設けられている。
【0005】
巻芯部に巻回されたワイヤの各端部は、端子電極に接続されるが、ワイヤの端部と端子電極との接続部分は、第1鍔部および第2鍔部の各々の天面上に位置される。したがって、前述した天板は、第1鍔部および第2鍔部の各々の天面に対して所定距離を隔てて配置されるため、鍔部と天板との間に磁気ギャップを形成することができる。この磁気ギャップは、磁気飽和を発生しにくくし、直流重畳特性の改善に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、コイル部品において、大電流かつ高インダクタンス値の要求が高まっており、そのため、高いインダクタンス値を取得しつつ直流重畳特性をも改善することが必要となる。
【0008】
特許文献1には、天板とコアとの間にギャップを設けることで直流重畳特性を改善する構造が記載されている。
【0009】
一方、特許文献1に記載のように、天板とコアとを備えるコイル部品では、天板とコアとが所定の位置関係をもって対向することで、所望のインダクタンス値および直流重畳特性が得られている。言い換えると、所望の特性を得るためには、天板とコアとの位置関係が重要である。そのためには、コイル部品の製造段階において、天板とコアとを安定した位置関係をもって組み立てられることが必要である。しかしながら、特許文献1には、ギャップについての記載があるものの、ギャップ以外の点での天板とコアとの位置制御については記載がない。
【0010】
そこで、この発明の目的は、天板とコアとの間でギャップを形成しながら、安定した位置関係を達成できる、コイル部品の構造を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、軸線方向に延びる巻芯部ならびに巻芯部の軸線方向での互いに逆の第1端、第2端にそれぞれ設けられた第1鍔部、第2鍔部を有する、コアと、互いに逆方向に向く下方主面および上方主面を有する、天板と、巻芯部に巻回された、少なくとも1本のワイヤと、ワイヤの各端部がそれぞれ電気的に接続され、第1鍔部および第2鍔部にそれぞれ設けられた、第1端子電極および第2端子電極と、を備える、コイル部品に向けられる。
【0012】
第1鍔部および第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向けられる底面と、底面の反対側の天面と、を有する。天板は、その下方主面が第1鍔部および第2鍔部の各々の天面に対向した状態で、コアに接着剤を介して固定される。
【0013】
この発明は、上述した技術的課題を解決するため、以下のような構成を備えることを特徴としている。
【0014】
第1鍔部と第2鍔部との少なくとも一方の天面および下方主面のうち、一方を第1面、他方を第2面としたとき、第1面には突起が設けられ、第2面には突起を受け入れる凹部が設けられる。
【0015】
上記突起および上記凹部は、それぞれ、上記第1面および上記第2面において、複数箇所にスポット状に点在しており、上記突起の外表面および上記凹部を規定する壁面の少なくとも一方には、突起を凹部内へと導くことが可能な案内面が設けられる。
【0016】
上記突起の外表面および上記凹部を規定する壁面は、それぞれ、凹部が突起を受け入れた状態において互いに当接する第1当接部および第2当接部を与える。これら第1当接部と第2当接部との互いの当接は、第1面と第2面との間にギャップを形成した状態での、凹部への突起の挿入の終端を規定して前記挿入の方向での位置決めを達成するとともに、第1面および第2面に沿う方向における全方向でコアに対する天板の位置合わせを可能とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、上記案内面の存在により、突起が凹部内へと円滑に導かれ、その結果としてもたらされた、上記第1当接部と第2当接部との互いの当接により、天板とコアとの間でギャップを形成しながら、天板とコアとの間で第1面および第2面に沿う方向における全方向での位置決めが達成される。したがって、コイル部品の製造段階において、天板とコアとの間でギャップを形成しながら、安定した位置関係を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の第1の実施形態によるコイル部品1の外観を示すもので、(A)正面図、(B)は左側面図である。
【
図2】
図1に示したコイル部品1に備える天板14とコア2とを別々に示すもので、(A)は天板14の下面図、(B)はコア2の上面図である。
【
図3】
図2に示した天板14とコア2とを接着剤17を介して固定した状態を模式的に示す、
図2の線C-Cに沿う拡大断面図である。
【
図4】この発明の第2の実施形態を説明するためのもので、天板14とコア2とを接着剤17を介して固定した状態を模式的に示す、
図3に相当する図である。
【
図5】この発明の第3の実施形態を説明するためのもので、天板14とコア2とを接着剤17を介して固定した状態を模式的に示す、
図3に相当する図である。
【
図6】この発明の第4の実施形態を説明するためのもので、天板14とコア2とを接着剤17を介して固定した状態を模式的に示す、
図3に相当する図である。
【
図7】この発明の第5の実施形態を説明するためのもので、天板14とコア2とを接着剤17を介して固定した状態を模式的に示す、
図3に相当する図である。
【
図8】この発明の第6の実施形態を説明するためのもので、天板14とコア2とを接着剤17を介して固定した状態を模式的に示す、
図3に相当する図である。
【
図9】この発明の第7の実施形態を説明するためのもので、天板14とコア2とを接着剤17を介して固定した状態を模式的に示す、
図3に相当する図である。
【
図10】この発明の第8の実施形態を説明するためのもので、天板14とコア2とを別々に示す、
図2に相当する図である。
【
図11】この発明の第9の実施形態を説明するためのもので、天板14とコア2とを別々に示す、
図2に相当する図である。
【
図12】この発明
に関連する第1の参考例を説明するためのもので、天板14とコア2とを別々に示す、
図2に相当する図である。
【
図13】この発明
に関連する第2の参考例を説明するためのもので、天板14とコア2とを別々に示す、
図2に相当する図である。
【
図14】この発明
に関連する第3の参考例を説明するためのもので、天板14とコア2とを別々に示す、
図2に相当する図である。
【
図15】この発明
に関連する第4の参考例を説明するためのもので、天板14とコア2とを別々に示す、
図2に相当する図である。
【
図16】この発明
に関連する第5の参考例を説明するためのもので、天板14とコア2とを別々に示す、
図2に相当する図である。
【
図17】この発明の第
10の実施形態を説明するためのもので、天板14とコア2とを別々に示す、
図2に相当する図である。
【
図18】
図17に示した天板14とコア2とを接着剤17を介して固定した状態を模式的に示す、
図17の線D-Dに沿う拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、この発明の第1の実施形態によるコイル部品1の概要について説明する。
【0020】
図1に示すように、コイル部品1は、たとえばNi-Zn系フェライトのようなフェライト、アルミナ、または金属磁性粉を含有する樹脂などからなるコア2を備える。コア2は、軸線方向AXに延びる巻芯部3ならびに巻芯部3の軸線方向AXにおける互いに逆の第1端、第2端にそれぞれ設けられた第1鍔部5、第2鍔部6を有する。巻芯部3は、横断面形状がたとえば四角形状であるが、その他、六角形状などの多角形状、円形状、楕円形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。
【0021】
第1鍔部5および第2鍔部6は、それぞれ、実装時において実装基板(図示せず。)側に向けられる底面7および8と、底面7および8のそれぞれの反対側の天面9および10と、を有している。
【0022】
第1鍔部の底面7には、第1端子電極11が設けられ、第2鍔部6の底面8には、第2端子電極12が設けられる。端子電極11および12は、たとえば、Ag粉末等の導電性金属粉末を含む導電性ペーストを浸漬または印刷し、次いで、これを焼き付け、さらに、順に、Cuめっき、NiめっきおよびSnめっきを施すことによって形成される。あるいは、端子電極11および12は、導電性金属板からなる端子部材を第1および第2鍔部5および6に取り付けることによって設けられてもよい。
【0023】
巻芯部3には、少なくとも1本のワイヤ13が巻回される。ワイヤ13は、たとえば、銅、銀または金などの良導電性金属からなる中心線材と、中心線材を覆うポリアミドイミド、ポリウレタンまたはポリエステルイミドのような電気絶縁性樹脂からなる絶縁被膜と、を備える。中心線材は、たとえば60μm以上かつ160μm以下の径を有する。ワイヤ13の一方端は、第1鍔部5の底面7側において、第1端子電極11に接続され、同じく他方端は、第2鍔部6の底面8側において、第2端子電極12に接続される。端子電極11および12とワイヤ13との接続には、たとえば熱圧着や超音波溶着、レーザ溶着などが適用される。ワイヤ13の巻芯部3上でのターン数は、必要とする特性に応じて任意に選ばれる。ワイヤ13は、必要に応じて多層巻きとされてもよい。
【0024】
コイル部品1は、上記第1鍔部5および第2鍔部6間に渡された天板14を備える。天板14は、互いに逆方向に向く下方主面15および上方主面16を有する。天板14は、たとえばフェライト、アルミナ、または金属磁性粉を含有する樹脂などからなる。なお、コア2および天板14の双方が磁性材料からなるとき、天板14は、コア2と協働して、閉磁路を構成する。
【0025】
天板14は、その下方主面15が接着剤17を介して第1鍔部5の天面9および第2鍔部6の天面10に対向した状態で、コア2に固定される。接着剤17は、たとえば、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂を含む。接着剤17には、熱衝撃耐性向上のため、シリカフィラーのような無機フィラーが添加されてもよい。
【0026】
コイル部品1は、一例として、長さ方向(軸線方向AX)の寸法が2.0mm、幅方向(軸線方向AXに垂直かつ実装面に平行な方向)の寸法が1.2mm、高さ方向(軸線方向AXおよび幅方向に垂直な方向)の寸法が1.6mmである。長さ方向の寸法が1.6mm、幅方向の寸法が0.8mm、高さ方向の寸法が1.3mmというように、より小型化されたものも考えられる。この発明による効果は、組立設備の精度の関係で、コイル部品1がより小型であるほど、より発揮される。なお、天板14の平面寸法は、通常、コア2の平面寸法と同等であり、
図1および
図2においても、このように図示されているが、天板14の平面寸法がコア2の平面寸法より大きくてもよい。天板14の平面寸法がコア2の平面寸法より大きくされると、互いの位置がわずかにずれても、磁束が天板14内を確実に通過するようにできる。
【0027】
コイル部品1は、たとえば、以下のようにして製造されることが好ましい。
【0028】
まず、コア2および天板14をそれぞれ用意する。これらコア2および天板14をそれぞれ製造するため、たとえばフェライトの粉末を金型でプレス成形し、得られた成形体を焼成し、コア2および天板14となるべき焼結体を得る。その後、コア2および天板14となるべき焼結体にバレル研磨を実施することによって、バリを取り、コア2および天板14をそれぞれ得る。
図1では図示を省略するが、コア2および天板14の各々の稜線は、角が取れて小さいアール面取りが施されている。
【0029】
次いで、コア2に端子電極11および12を設けるため、第1鍔部5および第2鍔部6の底面7および8に、たとえば、Agを含む導電性ペーストを付与し、焼き付けた後、電解バレルめっき法を適用して、Cuめっき、NiめっきおよびSnめっきを順次施す。
【0030】
次に、たとえばノズルによって、ワイヤ13をコア2の巻芯部3に巻回し、ワイヤ13の一方端および他方端をそれぞれ第1端子電極11および第2端子電極12に接続する。ここで、ワイヤ13と端子電極11および12との接続には、たとえばヒーターチップによる熱圧着が適用される。端子電極11および12に接続されたワイヤ13の余分は、カット刃により切断され除去される。
【0031】
次に、天板14が、接着剤17を介して、コア2の上に配置され、天板14とコア2とが互いに固定される。
【0032】
以上のようにして、コイル部品1が完成される。
【0033】
コイル部品1は、以下のような特徴を有している。
図2および
図3を参照して説明する。
【0034】
天板14の下方主面15には突起21が設けられる。他方、コア2の第1鍔部5の第1天面9および第2鍔部6の第2天面10には、上記突起21を受け入れる凹部22が設けられる。
図2(A)には天板14が示され、
図2(B)にはコア2が示されているが、天板14とコア2とが組み合わされるとき、天板14の
図2(A)に現れている面とコア2の
図2(B)に現れている面とが互いに対向するように配置される。天板14とコア2との組み合わせ状態において、
図2(A)に示した天板14は、
図2において左右方向に延びる回転軸まわりに180度回転された姿勢で、
図2(B)に示したコア2の上に配置される。
【0035】
この実施形態では、突起21は、天板14の下方主面15において、複数箇所にスポット状に点在しており、凹部22は、第1鍔部5の第1天面9および第2鍔部6の第2天面10において、複数箇所にスポット状に点在している。より特定的は、コア2の第1鍔部5の第1天面9および第2鍔部6の第2天面10の各々において、2つの凹部22が幅方向に並んで設けられ、天板14の下方主面15における、第1鍔部5の第1天面9に対向する領域および第2鍔部6の第2天面10に対向する領域の各々に、2つの突起21が幅方向に並んで設けられている。
【0036】
突起21は円錐の少なくとも一部を形成する外周面を有し、凹部22は円錐状の内周面を有する。突起21は、好ましくは、その先端が面取りされ、円錐台状とされる。これによって、突起21の先端において、コイル部品1の製造途中で欠けを生じにくいようにすることができる。円錐台状の突起21は、たとえば、高さHが25μm以上かつ65μm以下である。
【0037】
突起21の外表面および凹部22を規定する壁面は、突起21を凹部22内へと導くことが可能な案内面として機能する。たとえば
図3に示した断面で見たとき、突起21は、天板14の下方主面15に沿って測定した寸法において、凹部22の開口より小さい先端部を有している。他方、凹部22は、鍔部5および6の天面9および10に沿って測定した寸法において、開口から底部に向かってより小さくなるように傾斜する内向き勾配面23を有している。この内向き勾配面23が前述した案内面を与える。また、たとえば
図3に示した断面で見たとき、突起21は、天板14の下方主面15に沿って測定した寸法において、その先端部から、下方主面15に接する部分である基部に向かってより大きくなるように傾斜する外向き勾配面24を有している。この外向き勾配面24が前述した案内面を与える。
【0038】
突起21の外表面および凹部22を規定する壁面は、それぞれ、凹部22が突起21を受け入れた状態において互いに当接する第1当接部25および第2当接部26を与える。より具体的には、突起21の先端部における面取りされた先端面と外周面とが交差する稜線部分が第1当接部25を与え、凹部22の内向き勾配面23の一部が第2当接部26を与える。
【0039】
図3に示した断面で見たとき、天板14の下方主面15の延びる方向に対する、突起21の外周面である外向き勾配面24の角度は、凹部22の内周面である内向き勾配面23の角度より大きい。この構成によれば、比較的広い範囲に凹部22の内周面(内向き勾配面23)を配置することが可能となり、突起21と凹部22の位置ずれが比較的大きくなっても、位置決め効果を発揮しやすくなる。
【0040】
これら第1当接部25と第2当接部26との互いの当接は、天板14の下方主面15とコア2に備える第1鍔部5および第2鍔部6の各々の天面9および10との間にギャップGPを形成した状態での、凹部22への突起21の挿入の終端を規定して上記挿入の方向での位置決めを達成するとともに、下方主面15ならびに天面9および10に沿う方向における少なくとも一方向でのコア2に対する天板14の位置合わせを可能とする。
【0041】
より具体的には、突起21と凹部22との対向位置がずれた場合であっても、突起21の外表面および凹部22を規定する壁面の少なくとも一方には、突起21を凹部22内へと導くことが可能な案内面が設けられているため、案内面による案内によって、突起21と凹部22との対向位置を合わせることが可能となる。
【0042】
位置決めまたは位置合わせを達成する方向は、上述したように、下方主面15ならびに天面9および10に沿う方向における少なくとも一方向であるが、好ましくは、コイル部品1の長さ方向(軸線方向AX)または幅方向(
図1(B)の左右方向)での位置決めが達成され、より好ましくは、長さ方向の位置決めが達成される。長さ方向は、コイル部品1における磁束の方向でもあるので、コア2と天板14とが長さ方向に位置ずれしていると、インダクタンス値が比較的大きく変動するからである。なお、図示した突起21および凹部22の場合には、下方主面15ならびに天面9および10に沿う方向における全方向でコア2に対する天板14の位置決めが達成される。
【0043】
上述したギャップGPの少なくとも一部、好ましくは全域に、接着剤17が付与され、それによって、天板14とコア2とが接着剤17を介して固定される。
【0044】
なお、
図3に示した構造では、突起21の先端と凹部22の内周面とによって第1当接部25と第2当接部26が与えられるため、突起21の先端部が凹部22の底面に接していない。すなわち、凹部22の内周面に対して、突起21の先端部の周縁の稜線部分が接しているにすぎないため、突起21と凹部22との間に、接着剤17となる樹脂を流し込むことができるため、コア2と天板14との接続強度を向上させることができる。
【0045】
突起21および凹部22が、以上説明したような形態とされることにより、要約すると、以下のような構成が実現される。
【0046】
突起21の外表面および凹部22を規定する壁面の少なくとも一方には、突起21を凹部22内へと導くことが可能な案内面が設けられる。突起21の外表面および凹部22を規定する壁面は、それぞれ、凹部22が突起21を受け入れた状態において互いに当接する第1当接部25および第2当接部26を与える。第1当接部25と第2当接部26との互いの当接は、天板14の下方主面15と鍔部5および6の天面9および10との間にギャップGPを形成した状態での、凹部22への突起21の挿入の終端を規定して当該挿入の方向での位置決めを達成するとともに、天板14の下方主面15と鍔部5および6の天面9および10とに沿う方向における全方向での位置合わせを可能とする。
【0047】
次に、
図4以降を参照して、この発明の他の実施形態について説明する。
図4以降の図面において、
図2または
図3に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。他の実施形態の説明は、
図2および
図3に示した実施形態と比較して実質的に異なる部分、あるいは特徴的な部分のみを対象とする。
【0048】
図4を参照して、第2の実施形態では、凹部22は円錐状の内周面を有するが、凹部22が形成するキャビティは円錐台状である。これによって、凹部22を成形する金型の欠けを生じにくいようにすることができる。
【0049】
図5に示した第3の実施形態では、
図4に示した構造と同様、凹部22が形成するキャビティは円錐台状である。他方、突起21は円錐台状であるが、その外周面の傾きが凹部22の内周面の傾きと等しくされる。この構成によれば、天板14とコア2との結合状態の安定性を高めることができる。
【0050】
図6に示した第4の実施形態では、凹部22が形成するキャビティが円錐台状である。他方、突起21は円柱部分27と円錐台部分28とを有し、円柱部分27を基部側に、円錐台部分28を先端部側に位置させている。突起21の円錐台部分28の外周面の傾きは凹部22の内周面の傾きと等しくされる。
【0051】
図7に示した第5の実施形態では、突起21が円錐台状である。他方、凹部22が形成するキャビティは円柱状である。位置決めを達成する方向の断面の1つである、たとえば
図7に沿う断面で見たとき、突起21は、天板14の下方主面15に沿って測定した寸法において、先端部から基部に向かってより大きくなるように傾斜する外向き勾配面24を有している。この外向き勾配面24は、突起21を凹部22内へと導くことが可能な案内面を与える。また、凹部22が突起21を受け入れた状態において互いに当接する第1当接部25および第2当接部26のうち、第1当接部25は突起21の外向き勾配面24によって与えられ、第2当接部26は凹部22の開口を規定する縁部によって与えられる。
【0052】
図7に示した構造によれば、突起21とコア2との間の空間を広くすることができるため、接着剤17を十分に付与することができ、コア2と天板14との結合を強固にすることができる。
【0053】
なお、
図7に示した第5の実施形態の変形例として、突起21を円錐状とし、突起21の先端が凹部22の底部に接触しないように、凹部22をより深くしてもよい。
【0054】
図8に示した第6の実施形態は、
図7に示した構造と比較して、凹部22の形状が異なる。
図8では、凹部22の開口を規定する縁部が面取りされ、内向き勾配面23が形成される。内向き勾配面23は、突起21の外周面が与える外向き勾配面24とともに、突起21を凹部22内へと導くことが可能な案内面を与える。また、凹部22が突起21を受け入れた状態において互いに当接する第1当接部25および第2当接部26のうち、第1当接部25は突起21の外向き勾配面24によって与えられ、第2当接部26は、凹部22の開口を規定する縁部に沿う内向き勾配面23によって与えられる。この場合、第1当接部25と第2当接部26とは比較的広い面積で互いに接触する。
【0055】
図9に示した第7の実施形態では、位置決めを達成する方向の断面の1つである、たとえば
図9に沿う断面で見たとき、凹部22は凹状の底面29を有し、突起21は、先端部においてのみ凹状の底面29に当接している。凹部22が突起21を受け入れた状態において互いに当接する第1当接部25および第2当接部26のうち、第1当接部25は突起21の先端部によって与えられ、第2当接部26は凹状の底面29によって与えられる。また、突起21の外表面および凹部22を規定する壁面は、突起21を凹部22内へと導くことが可能な案内面を与える。
【0056】
図9に示した構造において、コア2と天板14との接触により磁路が形成され、このことが直流重畳特性に影響を与える。したがって、
図9に示した第7の実施形態によれば、凹状の底面29の形状を変えることにより、コア2と天板14との接触面積を調整することが可能であるため、直流重畳特性への影響を容易に調整可能である。
【0057】
図10は、第8の実施形態において採用される天板14とコア2とを別々に示す、
図2に相当する図である。
【0058】
図10に示した第8の実施形態では、天板14の下方主面15に設けられた突起21が四角錐状の外周面を有し、鍔部5および6の天面9および10に設けられ、突起21を受け入れる凹部22が四角錐状の内周面を有している。突起21は、好ましくは、その先端が面取りされ、四角錐台状とされる。これによって、突起21の先端において、コイル部品1の製造途中で欠けを生じにくいようにすることができる。
【0059】
図10に示した第8の実施形態は、スポット状に点在する突起21および凹部22の平面形状は種々に変形され得ることを示す意義がある。
【0060】
図11は、第9の実施形態において採用される天板14とコア2とを別々に示す、
図2に相当する図である。
【0061】
図11に示した第9の実施形態では、突起21がコア2に備える鍔部5および6の天面9および10に設けられ、凹部22が天板14の下方主面15に設けられている。
図11に示した構造は、突起21と凹部22との位置関係が逆であってもよいことを示している。
【0062】
なお、コア2および天板14の各々の製造の容易さ、より特定的には、成形の容易さおよび金型形状の簡素化の点で、より単純な形状の天板14側に突起21が設けられることが好ましい。しかしながら、
図11に示すように、天板14側に凹部22を設けると、天板14とコア2とを結合した際に、凹部22のある天板14側でより接着剤を保持することができるため、接着剤がコア2を伝ってワイヤに付着しにくくすることができる。
【0063】
図11に示した第9の実施形態の変形例として、複数の突起21のうちのいくつかを天板14側に、残りをコア2側に設け、これら突起21に対応するように、凹部22をコア2側と天板14側とに分けて設けることも可能である。
【0064】
図12に示した
第1の参考例では、突起21が天板14の下方主面15において直線状に延び、突起21を受け入れる凹部22がコア2に備える鍔部5および6の天面9および10において直線状に延びている。突起21および凹部22は、コイル部品の幅方向に延びている。突起21および凹部22の断面形状は図示されないが、前述の
図3ないし
図9にそれぞれ示した断面形状と同様の断面形状を採用することができる。
【0065】
図13に示した
第2の参考例では、
図12に示した
参考例の場合と同様、突起21が天板14の下方主面15において直線状に延び、突起21を受け入れる凹部22がコアに備える鍔部5および6の天面9および10において直線状に延びているが、突起21および凹部22は、コイル部品の長さ方向に延びている。
図13においても、突起21および凹部22の断面形状は図示されないが、前述の
図3ないし
図9にそれぞれ示した断面形状と同様の断面形状を採用することができる。
【0066】
図14に示した
第3の参考例では、
図12に示した
参考例と
図13に示した
参考例とが組み合わされている。すなわち、天板14の下方主面15において、コイル部品の幅方向に直線状に延びる突起21aとコイル部品の長さ方向に直線状に延びる突起21bとが設けられ、これら突起21aおよび21bにそれぞれ対応するように、コア2に備える鍔部5および6の天面9および10において、コイル部品の幅方向に直線状に延びる凹部22aとコイル部品の長さ方向に直線状に延びる凹部22bとが設けられている。
図14においても、突起21および凹部22の断面形状は図示されないが、前述の
図3ないし
図9にそれぞれ示した断面形状と同様の断面形状を採用することができる。
【0067】
図15に示した
第4の参考例では、天板14側は、
図2(A)に示した天板14側の形態が採用され、コア2側は、
図12(B)に示したコア2側の形態が採用される。この
参考例は、位置決めの機能を実現するため、より具体的には、案内面と第1および第2当接部とを与えるため、スポット状の突起21と直線状の凹部22との組み合わせが採用されてもよいことを示す意義がある。
【0068】
図16に示した
第5の参考例は、
図12に示した
参考例において遭遇し得る課題を解決することができる。すなわち、
図12に示した
参考例のように、突起21が天板14の下方主面15の周縁にまで達し、凹部22が鍔部5および6の天面9および10の各々の周縁まで達していると、接着剤17(
図3等参照)が充填される空間がコイル部品の外表面において比較的大きく開口する。このため、比較的多量の接着剤17のはみ出しを招くことがある。
【0069】
上述の課題を解決するため、
図16に示した
第5の参考例では、突起21が天板14の下方主面15の周縁にまで達しないように位置し、凹部22が鍔部5および6の天面9および10の各々の周縁まで達しないように位置している。
【0070】
図1ないし
図11を参照して説明した第1ないし第9の実施形態では、突起21および凹部22は、それぞれ複数組ずつ、より具体的には2組ずつ、天板14の下方主面15と第1鍔部5の天面9とが対向する領域および天板14の下方主面15と第2鍔部6の天面10とが対向する領域に存在している。そして、複数組の突起21および凹部22は、巻芯部3の中心軸線を含みかつ天板14の下方主面15に直交する面に関して、対称位置に配置されている。しかも、複数組の突起21および凹部22は、巻芯部3の中心軸線に直交しかつ巻芯部3の軸線方向AXでの中点を通る面に関して、対称位置に配置されている。
【0071】
上述した構成によれば、コア2に対する天板14の姿勢を安定に保つことができるという利点が奏されるが、この発明において、突起21および凹部22の数および配置を選択するにあたっては、このような利点が奏されることを条件にすべきではない。
【0072】
また、コア2に対する天板14の姿勢を安定に保つため、
図17および
図18に示した
第10の実施形態のように、突起21および凹部22の組以外の構成を突起21および凹部22の組の構成に組み合わせて採用することもできる。
【0073】
図17および
図18に示した第
10の実施形態では、突起21および凹部22の組の構成に加えて、鍔部5および6の天面9および10における凹部が設けられていない部分に対向する第2の突起31が設けられている。第2の突起31は、天板14の下方主面15と鍔部5および6の天面9および10との間にギャップGPを形成した状態で鍔部5および6の天面9および10に当接する。
【0074】
上述の実施形態では、突起21および凹部22の組によって、天板14の下方主面15と鍔部5および6の天面9および10とに沿う方向でのコア2に対する天板14の位置決めを達成するとともに、突起21および凹部22の組ならびに第2の突起31によって、天板14の下方主面15と鍔部5および6の天面9および10との間にギャップを形成した状態とすることができる。
【0075】
以上説明した実施形態では、
図1に示しかつ前述したように、ワイヤ13の一方端は、第1鍔部5の底面7側において、第1端子電極11に接続され、同じく他方端は、第2鍔部6の底面8側において、第2端子電極12に接続されている。このような構成によれば、コア2と天板14との結合部分にワイヤ13の端部を位置させる必要がないので、突起21および凹部22の位置を自由に選ぶことができる。
【0076】
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の変形例が可能である。
【0077】
たとえば、この発明が向けられるコイル部品は、図示された実施形態のように、単一のコイルを構成するもの以外に、コモンモードチョークコイルを構成するもの、トランスやバランなどを構成するものであってもよい。したがって、ワイヤの数についても、コイル部品の機能に応じて変更され、それに応じて、各鍔部に設けられる端子電極の数も変更され得る。
【0078】
また、この発明に係るコイル部品を構成するにあたり、この明細書に記載された異なる実施形態および参考例間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 コイル部品
2 コア
3 巻芯部
5,6 鍔部
7,8 底面
9,10 天面
11,12 端子電極
13 ワイヤ
14 天板
15 下方主面
16 上方主面
17 接着剤
21 突起
22 凹部
23 内向き勾配面
24 外向き勾配面
25 第1当接部
26 第2当接部
31 第2の突起
AX 軸線方向
GP ギャップ