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特許7491305線条体の巻取り装置および線条体の巻取り方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】線条体の巻取り装置および線条体の巻取り方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 65/00 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
B65H65/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021519417
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018737
(87)【国際公開番号】W WO2020230743
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2019090694
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 卓
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-151226(JP,A)
【文献】特開2018-070274(JP,A)
【文献】特開平08-319062(JP,A)
【文献】特開平05-294554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条体をボビンに巻き取る線条体の巻取り装置であって、
前記ボビンを軸支して回動させる複数のボビン回動機構と、
前記線条体を保持して水平方向に移動すると共に複数の前記ボビン回動機構の間で鉛直方向に移動する線条体保持機構と、
前記線条体保持機構を移動させる線条体移動機構と、を備え、
前記線条体移動機構が、口出し時に、前記線条体を保持可能な引取位置と前記線条体を前記ボビンに線掛け可能な線掛け位置との間で、前記線条体保持機構を自動で移動させる、線条体の巻取り装置。
【請求項2】
各々の前記ボビン回動機構は、前記ボビンの一端側に挿入されて前記ボビンを駆動する回転軸と、前記回転軸を回転させるモーターと、前記ボビンの他端側に挿入されて前記ボビンを支持する支持軸とを有する請求項1に記載の線条体の巻取り装置。
【請求項3】
前記ボビンは、前記線条体を係止する線条体係止部を有し、
前記線条体を巻き付ける前記ボビンを設定するボビン選択機構と、
前記ボビンに係止された前記線条体を切断する線条体切断機構と、
をさらに備えている請求項1または請求項2に記載の線条体の巻取り装置。
【請求項4】
前記線条体保持機構が、前記線条体を吸引する吸引ノズルまたは前記線条体を挟持するピンチローラーの少なくとも一方である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の線条体の巻取り装置。
【請求項5】
前記線条体保持機構の移動速度が、前記線条体の口出し線速より遅い請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の線条体の巻取り装置。
【請求項6】
線条体が巻き付けられるボビンを軸支して回動させる複数のボビン回動機構と、前記線条体を保持して水平方向に移動すると共に複数の前記ボビン回動機構の間で鉛直方向に移動する線条体保持機構と、前記線条体保持機構を移動させる線条体移動機構と、前記線条体を巻き付ける前記ボビンを設定するボビン選択機構と、前記線条体を切断する線条体切断機構と、を備えた線条体の巻取り装置による線条体の巻取り方法であって、
口出し時に、前記線条体保持機構が前記線条体を保持する工程と、
前記保持する工程の後、前記線条体保持機構が水平方向に移動かつ複数の前記ボビン回動機構の間で鉛直方向に自動で移動して前記ボビンに線掛け可能な線掛け位置に移動する工程と、
前記移動する工程の後、前記ボビン選択機構が前記線条体を巻き付ける前記ボビンを設定する工程と、
前記設定する工程の後、前記ボビンの線条体係止部が前記線条体を係止する工程と、
前記係止する工程の後、前記線条体切断機構が前記ボビンに係止された前記線条体を切断する工程と、を備える線条体の巻取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のボビン回動機構を有する線条体の巻取り装置および線条体の巻取り方法に関する。
【0002】
本出願は、2019年5月13日出願の日本出願第2019-090694号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、光ファイバ素線をボビンで巻き取る巻取機として、線条体引取り手段、線条体の係止手段、線条体の切断手段とを備えた巻取り装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-219855号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る線条体の巻取り装置は、線条体をボビンに巻き取る線条体の巻取り装置であって、前記ボビンを軸支して回動させる複数のボビン回動機構と、前記線条体を保持して水平方向に移動すると共に複数の前記ボビン回動機構の間で鉛直方向に移動する線条体保持機構と、前記線条体保持機構を移動させる線条体移動機構と、を備え、前記線条体移動機構が、口出し時に、前記線条体を保持可能な引取位置と前記線条体を前記ボビンに線掛け可能な線掛け位置との間で、前記線条体保持機構を自動で移動させる。
【0006】
また、本開示の一態様に係る線条体の巻取り方法は、線条体が巻き付けられるボビンを軸支して回動させる複数のボビン回動機構と、前記線条体を保持して水平方向に移動すると共に複数の前記ボビン回動機構の間で鉛直方向に移動する線条体保持機構と、前記線条体保持機構を移動させる線条体移動機構と、前記線条体を巻き付ける前記ボビンを設定するボビン選択機構と、前記線条体を切断する線条体切断機構と、を備えた線条体の巻取り装置による線条体の巻取り方法であって、口出し時に、前記線条体保持機構が前記線条体を保持する工程と、前記保持する工程の後、前記線条体保持機構が水平方向に移動かつ複数の前記ボビン回動機構の間で鉛直方向に自動で移動して前記ボビンに線掛け可能な線掛け位置に移動する工程と、前記移動する工程の後、前記ボビン選択機構が前記線条体を巻き付ける前記ボビンを設定する工程と、前記設定する工程の後、前記ボビンの線条体係止部が前記線条体を係止する工程と、前記係止する工程の後、前記線条体切断機構が前記ボビンに係止された前記線条体を切断する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本開示の第1実施形態である線条体の巻取り装置の平面断面図である。
図1B図1AのIB-IB断面図である。
図1C図1BのIC-IC要部断面図である。
図2A】線条体の巻取り方法を説明する巻取り装置の正面断面図であって、口出し開始時の状態を示す図である。
図2B】線条体の巻取り方法を説明する巻取り装置の正面断面図であって、線条体移動機構が2つの線寄せガイドの中間まで移動した状態を示す図である。
図2C】線条体の巻取り方法を説明する巻取り装置の正面断面図であって、線条体移動機構が下方に降りた状態を示す図である。
図2D】線条体の巻取り方法を説明する巻取り装置の正面断面図であって、ボビン選択機構を左に寄せた状態を示す図である。
図2E図2DのIIE-IIE断面図である。
図2F】線条体の巻取り方法を説明する巻取り装置の平面断面図であって、ボビン選択機構を鍔方向に寄せた状態を示す図である。
図2G】線条体の巻取り方法を説明する巻取り装置の正面断面図であって、ボビンに光ファイバが係止された状態を示す図である。
図2H】線条体の巻取り方法を説明する巻取り装置の正面断面図であって、光ファイバが切断された状態を示す図である。
図2I】線条体の巻取り方法を説明する巻取り装置の正面断面図であって、巻き取りボビンを切り替えようとする状態を示す図である。
図3A】本開示の第2実施形態である線条体の巻取り装置の正面断面図である。
図3B図3AのIIIB-IIIB要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
巻き取りボビンを切り替えて巻き始めるときは、上記特許文献1の巻取り装置を用いて巻き始めることができる。
しかし、最初(口出し開始時)に巻き始めるときは、作業者がボビンまで光ファイバを持ってきてボビンに巻き付ける必要がある。
この作業中にも光ファイバ母材側から素線が供給され続けるため、作業者には素早くボビンに光ファイバを巻き付けることが求められる。
【0009】
また、ボビンが大型化し、ボビンを両側から支持すると、作業者による作業スペースがなくなってしまうため、作業者によるボビン巻き付け作業が困難になってしまう。
【0010】
本開示は、このような実情に鑑みてなされたものであり、線条体のボビンへの線掛けを自動で簡便に行える、複数のボビン回動機構を有した線条体の巻取り装置およびこの巻取り装置による巻取り方法を提供することをその目的とする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示によれば、線条体のボビンへの線掛けを、自動で簡便に行うことができる。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様の内容を列記して説明する。
本開示の一態様に係る線条体の巻取り装置は、(1)線条体をボビンに巻き取る線条体の巻取り装置であって、前記ボビンを軸支して回動させる複数のボビン回動機構と、前記線条体を保持して水平方向に移動すると共に複数の前記ボビン回動機構の間で鉛直方向に移動する線条体保持機構と、前記線条体保持機構を移動させる線条体移動機構と、を備え、前記線条体移動機構が、口出し時に、前記線条体を保持可能な引取位置と前記線条体を前記ボビンに線掛け可能な線掛け位置との間で、前記線条体保持機構を自動で移動させる。
これにより、作業者は線条体保持機構に線条体を保持させるだけでボビンへの線掛けが可能となり、作業者が直接ボビンに線掛けをすることがなくなるため、ボビンへの線掛け作業を自動化および簡便化することができる。
【0013】
(2)上記の線条体の巻取り装置において、各々の前記ボビン回動機構は、前記ボビンの一端側に挿入されて前記ボビンを駆動する回転軸と、前記回転軸を回転させるモーターと、前記ボビンの他端側に挿入されて前記ボビンを支持する支持軸とを有する。
これにより、全てのボビンが両側支持となり、ボビンの支持強度が増すため、全てのボビンが大型化したとしても、ボビンを支持することができる。
また、ボビンを両側から支持(両持ち)した場合、作業者が直接ボビンに線条体を線掛けしようとしても、ボビンに手を掛けにくい。上記の線条体の巻取り装置においては、線条体保持機構が線条体を保持した場合に、線条体保持機構が線掛け位置まで自動で移動するため、ボビンが両持ちの構造であったとしても、線掛け作業を、自動で簡便に行うことができる。
【0014】
(3)上記の線条体の巻取り装置において、前記ボビンは、前記線条体を係止する線条体係止部を有し、前記線条体を巻き付ける前記ボビンを設定するボビン選択機構と、前記ボビンに係止された前記線条体を切断する線条体切断機構と、をさらに備えている。
これにより、線速を落とさずに別のボビンに線条体を巻き取ることができるので、ロス無く線条体を巻き取り続けることができる。
【0015】
(4)上記の線条体の巻取り装置において、前記線条体保持機構が、前記線条体を吸引する吸引ノズルまたは前記線条体を挟持するピンチローラーの少なくとも一方である。
これにより、確実に口出し時の光ファイバ素線を保持することが可能になる。
【0016】
(5)上記の線条体の巻取り装置において、前記線条体保持機構の移動速度が、前記線条体の口出し線速より遅い。
これにより、光ファイバ母材側から供給される光ファイバ素線が足りなくなることがないため、線条体保持機構を移動させている最中に線条体保持機構に強く引っ張られて線条体が断線したりするようなことがなく、効率よく線条体をボビンに巻き付けることができる。
【0017】
(6)また、本開示の一態様に係る線条体の巻取り方法では、線条体が巻き付けられるボビンを軸支して回動させる複数のボビン回動機構と、前記線条体を保持して水平方向に移動すると共に複数の前記ボビン回動機構の間で鉛直方向に移動する線条体保持機構と、前記線条体保持機構を移動させる線条体移動機構と、前記線条体を巻き付ける前記ボビンを設定するボビン選択機構と、前記線条体を切断する線条体切断機構と、を備えた線条体の巻取り装置による線条体の巻取り方法であって、口出し時に、前記線条体保持機構が前記線条体を保持する工程と、前記保持する工程の後、前記線条体保持機構が水平方向に移動かつ複数の前記ボビン回動機構の間で鉛直方向に自動で移動して前記ボビンに線掛け可能な線掛け位置に移動する工程と、前記移動する工程の後、前記ボビン選択機構が前記線条体を巻き付ける前記ボビンを設定する工程と、前記設定する工程の後、前記ボビンの線条体係止部が前記線条体を係止する工程と、前記係止する工程の後、前記線条体切断機構が前記ボビンに係止された前記線条体を切断する工程と、を備える。
これにより、作業者は線条体保持機構に線条体を保持させるだけでボビンへの線掛けが可能となり、作業者が直接ボビンに線掛けをすることがなくなるため、ボビンへの線掛け作業を自動化および簡便化することができる。
【0018】
[本開示の第1実施形態の詳細]
以下、本開示の第1実施形態に係る線条体の巻取り装置100の具体的な構造および巻取り装置100を用いた線条体の巻き取り方法を図1Aから図2Iを参照しつつ説明する。
図1Aは本開示の実施形態である線条体の巻取り装置の平面断面図であり、図1B図1AのIB-IB断面図であり、図1C図1BのIC-IC要部断面図であり、図2Aから図2Dは線条体の巻取り方法を説明する巻取り装置の正面断面図であり、図2E図2DのIIE-IIE断面図であり、図2Fは線条体の巻取り方法を説明する巻取り装置の平面断面図であり、図2Gから図2Iは線条体の巻取り方法を説明する巻取り装置の正面断面図である。
なお、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
また、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内ですべての変更が含まれることを意図する。
【0019】
[線条体の巻取り装置]
まず、巻取り装置100の具体的な構造について、図1Aから図1Cを参照しつつ説明する。
本開示の実施形態である巻取り装置100は、図1Aから図1Cに示すように線条体である光ファイバを2つのボビンB1、B2に巻き取るために用いられる装置である。
なお、本実施形態で用いられるボビンは、筒状の胴部の両端に鍔が設けられており、片側の鍔には、後述するケレーピン121bと係合する係合穴Hが形成されている。
【0020】
図1Aから図1Cに示すように、巻取り装置100は、ボビンB1、B2の両鍔面に対向するフレーム110と、ボビンB1、B2を軸支して回動させるボビン回動機構120と、フレーム110に取り付けられ光ファイバを巻取り装置100内に移動させる線条体移動機構130と、光ファイバを保持する線条体保持機構140とを備えている。
さらに、巻取り装置100は、光ファイバを巻き付けるボビンを設定するボビン選択機構150と、光ファイバを切断するカッター(線条体切断機構)160と、前後方向に可動自在であると共に光ファイバを抑える線寄せガイド170とを備えている。
【0021】
[フレーム]
フレーム110は、後述するモーター123などを収容する第1フレーム111と、この第1フレーム111と離間対向する第2フレーム112とから形成されている。
ボビンB1、B2は、この第1フレーム111と第2フレーム112との間に配置されている。
【0022】
第1フレーム111の前面111aには、左右方向に伸びる第1ガイドレール111bおよび第2ガイドレール111cが設けられている。
第1ガイドレール111bおよび第2ガイドレール111cの断面形状は、図1Cに示すように、例えば、円形となっている。
また、第1ガイドレール111bは、第2ガイドレール111cよりも上方に設けられている。
さらに、第1ガイドレール111bの左右方向の長さは、第2ガイドレール111cの左右方向の長さよりも短くなっている。
【0023】
[ボビン回動機構]
ボビン回動機構120は、ボビンB1を回動させる第1ボビン回動機構120Aと、ボビンB2を回動させる第2ボビン回動機構120Bとからなる。
第1ボビン回動機構120AによるボビンB1の回動方向は正面視において時計回りであり、第2ボビン回動機構120BによるボビンB2の回動方向は正面視において反時計回りである。
なお、第1ボビン回動機構120Aと第2ボビン回動機構120Bとは同じ構造であるため、以下、第1ボビン回動機構120Aのみを説明する。
【0024】
第1ボビン回動機構120Aは、一端がボビンB1の一端側に挿入されてボビンB1を駆動する回転軸121と、この回転軸121でボビンB1の荷重を支持するための軸受122と、回転軸121を回転させるモーター123と、回転軸121とモーター123とを連結してモーター123の回転を回転軸121に伝達する伝達ベルト124とを第1フレーム111内に有している。
さらに、第1ボビン回動機構120Aは、ボビンB1の他端側に挿入されてボビンB1を支持する支持軸125と、この支持軸125を覆うスリーブ126と、このスリーブ126(支持軸125)でボビンB1の荷重を支持するための軸受127とを第2フレーム112内に有している。
【0025】
回転軸121は、前端側がボビンB1に挿入され、後端側にはプーリー121aが圧入されている。
このプーリー121aには、伝達ベルト124が掛けられている。
また、回転軸121の前端側の側方には、回転軸121と同じ方向に伸びるケレーピン121bが設けられている。
ボビンB1に回転軸121が挿入される際、ケレーピン121bはボビンB1の係合穴Hに挿入される。
これにより、ボビンB1が回転軸121に対して空回りすることがなく、回転軸121と一体に回動可能となる。
【0026】
支持軸125は、スリーブ126に対して前後方向にスライド自在となっている。
これにより、支持軸125をスライドさせるだけで、ボビンB1、B2を巻取り装置100に装着したり、ボビンB1、B2を巻取り装置100から取り外したりすることができる。
【0027】
[線条体移動機構]
線条体移動機構130は、線条体保持機構140を上下左右に移動させる機構であり、図1Cに示すように、第1フレーム111の第1ガイドレール111b上を左右方向に移動自在な水平スライド部131と、鉛直方向に移動自在な鉛直スライド部132とを有している。
【0028】
水平スライド部131は、第1ガイドレール111bに挿通されて第1ガイドレール111b上を移動自在なスライド部材131aと、このスライド部材131aの前方側に後端が接続されて前方に向かって伸びるアーム131bと、このアーム131bの前端が接続されて鉛直スライド部132と連結される連結部材131cとを有している。
【0029】
鉛直スライド部132は、鉛直方向に伸びると共に連結部材131cに挿通されているガイド軸132aと、このガイド軸132aの下端に設けられた直方体状のガイド軸保持部材132bとを有している。
このガイド軸保持部材132bの後方側の面には、線条体保持機構140が保持されている。
【0030】
これら水平スライド部131および鉛直スライド部132により、線条体移動機構130および線条体保持機構140は、図1Bに示すような、口出し開始時に光ファイバを保持可能な引取位置P1と、ボビンB1、B2に線掛け可能な線掛け位置P2との間を移動自在になっている。
なお、ここでいう引取位置P1とは第1フレーム111の左端側であり、線掛け位置P2とは第1フレーム111のほぼ中央(すなわち、正面視において、2つの線寄せガイド170のほぼ中間)であり、かつ、線条体保持機構140が移動した際に、カッター160より下方に位置する位置である。
【0031】
[線条体保持機構]
線条体保持機構140は、口出し時に、光ファイバ母材から線引きされた光ファイバ素線を保持する機構であり、2つのローラーで光ファイバ素線を挟持して保持するピンチローラーであってもよいし、負圧によって光ファイバ素線を保持する吸引ノズルであってもよいし、ピンチローラーと吸引ノズルを併用してもよい。
【0032】
[ボビン選択機構]
ボビン選択機構150は、第2ガイドレール111c上を左右方向に移動自在なスライダー151と、このスライダー151から前方に伸びる軸152と、この軸152の前端に接続されたV溝を有するガイドローラー153とを有している。
このボビン選択機構150が左右方向に動くことにより、光ファイバが巻き付けられるボビンを選択することができる。
【0033】
[カッター]
カッター160は、第1フレーム111に取り付けられており、第1フレーム111と連結されるアーム161と、このアーム161の先端に取り付けられたカッター刃162とから構成されている。
【0034】
[線条体の巻取り方法]
次に、上述した巻取り装置100による光ファイバの巻取り方法について、図2Aから図2Hを参照しつつ説明する。
【0035】
図2Aに示すように、光ファイバ母材(図示せず)から口出しされた光ファイバFの先端の口出し部FLは、人手などにより搬送され、ダンサーローラーDによって張力が調整された状態で、引取位置P1にある線条体保持機構140に保持される。
【0036】
光ファイバFの口出し部FLが線条体保持機構140に保持されると、図2Bに示すように、線条体移動機構130が正面視において2つの線寄せガイド170の中間に位置するまで、第1ガイドレール111bに沿って移動する。
その後、図2Cに示すように、ガイド軸132aが下方に向かって下がることで、ガイド軸保持部材132bが線掛け位置P2まで鉛直下方に降りる。
すなわち、線条体保持機構140が光ファイバFの口出し部FLを保持し、引取位置P1から線掛け位置P2まで移動する。
これにより、光ファイバFがボビン選択機構150のガイドローラー153に巻き付けられる。
なお、このときの水平スライド部131および鉛直スライド部132の移動速度は、光ファイバ母材からの口出し速度(すなわち、光ファイバの口出し線速)よりも遅くなっている。
ただし、線条体保持機構140で余った光ファイバFは吸引されるので、ダンサーローラーDで蓄線しきれなかったり、パスライン上の光ファイバFが緩んでしまったりすることはない。
【0037】
次に、光ファイバFを巻き付けたいボビン側にボビン選択機構150を移動させる。
本実施形態では、ボビンB1に光ファイバFを巻き付けるため、図2Dに示すように、ボビン選択機構150を第2ガイドレール111cに沿って左側に移動させる。
このときの巻取り装置100の平面断面図が、図2Eである。
【0038】
次に、図2Fに示すように、線寄せガイド170を後方(第1フレーム111側)に移動させて、光ファイバFをボビンB1の鍔側に線寄せする。
このとき、光ファイバFは、ボビンB1の鍔に接するようになる。
【0039】
この状態で、ボビンB1を回転させる。
これにより、図2Gに示すように、光ファイバFが、光ファイバFをボビンB1に係止するための線条体係止部である爪Nに捕捉され、光ファイバFがボビンB1に係止される。
【0040】
ボビンB1をさらに回転させると、カッター160に光ファイバFが押し付けられ、図2Hに示すように、光ファイバFが切断される。
その後、ボビンB1への光ファイバFの巻き付けが開始される。
【0041】
以上、光ファイバFの口出し部FLをボビンB1へ最初に巻き付ける手順を説明した。
光ファイバFの口出し部FLをボビンB2へ最初に巻き付ける場合は、光ファイバFの口出し部FLを線条体保持機構140に保持させ、線掛け位置P2まで移動した後にボビン選択機構150をボビンB2側に寄せれば良い。
【0042】
[巻き取るボビンの切替]
次に、図2Hおよび図2Iを参照して光ファイバを巻き取るボビンの切替について説明する。
図2Hの状態からボビンB1への光ファイバFの巻き付けが開始され、ボビンB1への光ファイバFの巻き付けが完了すると、ボビン選択機構150は、ボビンB2に光ファイバFを巻き付けるため、図2Iに示すように、第2ガイドレール111cに沿って右側に移動する。
次に、線寄せガイド170を後方(第1フレーム111側)に移動させて、光ファイバFをボビンB2の鍔側に線寄せする。
そして、ボビンB2を回転させることで、光ファイバFが爪Nに捕捉され、光ファイバFがボビンB2に係止される。
ボビンB2をさらに回転させると、カッター160に光ファイバFが押し付けられ、光ファイバFが切断される。
その後、ボビンB2への光ファイバFの巻き付けが開始される。
【0043】
このようにして得られた本開示の第1形態である巻取り装置100は、口出し開始時に、線条体保持機構140が、線条体である光ファイバFを、保持可能な引取位置P1と光ファイバFをボビンB1、B2に線掛け可能な線掛け位置P2との間で移動自在である。
線条体保持機構140が光ファイバFを保持し、引取位置P1から線掛け位置P2まで移動することにより、作業者は線条体保持機構140に光ファイバFを保持させるだけでボビンB1、B2への線掛けが可能となり、ボビンB1、B2への線掛け作業を自動化および簡便化することができる。
【0044】
また、ボビン回動機構120は、複数設けられ、各々のボビン回動機構120は、ボビンB1、B2の一端側に挿入されてボビンB1、B2を駆動する回転軸121と、この回転軸121を回転させるモーター123と、ボビンB1、B2の他端側に挿入されてボビンB1、B2を支持する支持軸125とを有することにより、ボビンB1、B2を両側から支持することができ、ボビンB1、B2の支持強度が増すため、ボビンB1、B2が大型化したとしても、ボビンB1、B2の両方のボビンを支持することができる。
さらに、線条体保持機構140が光ファイバFを保持してから、線条体保持機構140が線掛け位置P2まで自動で移動するため、ボビンB1、B2が両持ちの構造であったとしても、線掛け作業を、自動で簡便に行うことができる。
【0045】
また、ボビンB1、B2は、光ファイバFを係止する線条体係止部である爪Nを有し、ボビン回動機構120が、光ファイバFを巻き付けるボビンB1、B2を設定するボビン選択機構150と、ボビンB1、B2に係止された光ファイバFを切断する線条体切断機構であるカッター160と、をさらに備えている。
なお、爪Nは、ボビンB1、B2に直接付いていなくても良く、例えば、ボビンの鍔を覆うカバーに付いていても良い。
これにより、設定したボビンB1、B2に光ファイバFの端部を係止し、巻き付けることができる。
また、ボビン選択機構150で巻き取るボビンを設定することにより、線速を落とさずに別のボビンに光ファイバFを巻き取ることができるので、ロス無く光ファイバFを巻き取り続けることができる。
【0046】
また、線条体保持機構140が、光ファイバFを吸引する吸引ノズルまたは前記線条体を挟持するピンチローラーの少なくとも一方であることにより、確実に口出し時の光ファイバ素線を保持することが可能になる。
【0047】
また、線条体保持機構140の移動速度が、光ファイバFの口出し線速より遅いことにより、光ファイバ母材側から供給される光ファイバ素線が足りなくなることがないため、線条体保持機構140を移動させている最中に線条体保持機構140に強く引っ張られて光ファイバFが断線したりすることがなく、効率よく光ファイバFをボビンB1、B2に巻き付けることができる。
【0048】
[本開示の第2実施形態の詳細]
次に、本開示の第2実施形態に係る線条体の巻取り装置200の具体的な構造を図3Aから図3Bを参照しつつ説明する。
図3Aは本開示の第2実施形態である線条体の巻取り装置の平面断面図であり、図3B図3AのIIIB-IIIB要部断面図である。
また、第2実施形態の巻取り装置200は、第1実施形態の巻取り装置100における第1ガイドレール111bの構成および線条体移動機構130の構造を変更したものであり、多くの要素について第1実施形態の巻取り装置100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を付すのみとする。
加えて、巻取り装置200を用いた線条体の巻き取り方法については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
巻取り装置200の第1フレーム211には、断面形状がC字状の第1ガイドレール211bが設けられている。
この第1ガイドレール211bは、左右方向に伸びる第2ガイドレール211cより下方に設けられている。
また第1ガイドレール211bは、水平方向に伸びる水平部211baと、鉛直方向に伸びる鉛直部211bbと、水平部211baと鉛直部211bbとを滑らかに繋ぐ屈曲部211bcとから形成されている。
【0050】
巻取り装置200の線条体移動機構230は、第1ガイドレール211b内を走行するローラー231と、このローラー231に連結されて前後方向に伸びるアーム232と、このアーム232の前端に連結される保持部材233とを有している。
保持部材233は、鉛直方向に伸びる部材であり、下端側がアーム232と連結され、上端側で線条体保持機構240を保持している。
【0051】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上記に限定されるものではない。
また、前述した実施形態が備える各要素は技術的に可能である限り組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本開示の特徴を含む限り本開示の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
100、200 ・・・巻取り装置
110 ・・・フレーム
111、211 ・・・第1フレーム
111a、211a ・・・前面
111b、211b ・・・第1ガイドレール
211ba・・・水平部
211bb・・・鉛直部
211bc・・・屈曲部
111c、211c ・・・第2ガイドレール
112 ・・・第2フレーム
120 ・・・ボビン回動機構
120A ・・・第1ボビン回動機構
120B ・・・第2ボビン回動機構
121、221 ・・・回転軸
121a ・・・プーリー
121b ・・・ケレーピン
122 ・・・軸受
123 ・・・モーター
124 ・・・伝達ベルト
125 ・・・支持軸
126 ・・・スリーブ
127 ・・・軸受
130、230 ・・・線条体移動機構
131 ・・・水平スライド部
231 ・・・ローラー
131a ・・・スライド部材
131b ・・・アーム
131c ・・・連結部材
132 ・・・鉛直スライド部
232 ・・・アーム
132a ・・・ガイド軸
132b ・・・ガイド軸保持部材
233 ・・・保持部材
140、240 ・・・線条体保持機構
150、250 ・・・ボビン選択機構
151、251 ・・・スライダー
152、252 ・・・軸
153、253 ・・・ガイドローラー
160、260 ・・・カッター
161 ・・・アーム
162 ・・・カッター刃
170、270 ・・・線寄せガイド
B1、B2 ・・・ボビン
H ・・・係合穴
N ・・・爪(線条体係止部)
P1 ・・・引取位置
P2 ・・・線掛け位置
F ・・・光ファイバ(線条体)
FL ・・・口出し部
D ・・・ダンサーローラー
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3A
図3B