(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】インバータユニット、およびモータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 5/24 20060101AFI20240521BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20240521BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240521BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240521BHJP
【FI】
H02K5/24 A
H02K11/30
H02K7/116
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2021519421
(86)(22)【出願日】2020-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2020018750
(87)【国際公開番号】W WO2020230749
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2019091323
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】仁平 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】和田 直大
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/104491(WO,A1)
【文献】特開2015-054612(JP,A)
【文献】特開2016-059201(JP,A)
【文献】特開2003-199292(JP,A)
【文献】国際公開第2016/110519(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
H02K 11/30
H02K 7/116
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸を回転させるモータユニットに備えられるインバータユニットであって
、
インバータと
、
前記インバータを内部に収容するインバータケースと
、
を備え
、
前記インバータケースは
、
所定方向の一方側に開口するインバータケース本体と
、
前記インバータケース本体の開口を塞ぐ板状のカバーと
、
を有し
、
前記カバーは、前記所定方向に隆起する隆起部を有し
、
前記隆起部は
、
中空で前記所定方向に凸となる湾曲形状であ
り、さらに、
前記所定方向に沿って視て、前記カバーの中央部に位置する中央隆起部と、
前記所定方向に沿って視て、前記中央隆起部から外側に延びる複数の延伸隆起部と、
を有し、
前記延伸隆起部は、
前記所定方向と直交する第1方向に延びる第1延伸隆起部と、
前記所定方向および前記第1方向の両方と直交する第2方向に延びる第2延伸隆起部と、
を含む、インバータユニット。
【請求項2】
前記隆起部は、前記所定方向の一方側に隆起する、請求項1に記載のインバータユニット。
【請求項3】
前記隆起部は
、
前記所定方向の一方側に凸となる円弧状に湾曲する天壁部と
、
前記天壁部の外縁部と前記カバーのうち前記隆起部の周縁部とを繋ぐ周壁部と
、
を有し
、
前記周壁部は、前記カバーのうち前記隆起部の周縁部から前記所定方向の一方側に向かうに従って前記隆起部の内側に位置する向きに傾斜する、請求項2に記載のインバータユニット。
【請求項4】
前記周壁部のうち前記隆起部の周縁部に繋がる部分は、前記周壁部が延びる方向と直交する断面において円弧状に湾曲する第1湾曲部であり
、
前記周壁部のうち前記天壁部に繋がる部分は、前記周壁部が延びる方向と直交する断面において円弧状に湾曲する第2湾曲部である、請求項3に記載のインバータユニット。
【請求項5】
前記第1湾曲部のうち前記インバータケースの外部に面する外側面の曲率半径と前記第2湾曲部のうち前記インバータケースの内部に面する内側面の曲率半径とは、互いに同じである、請求項4に記載のインバータユニット。
【請求項6】
前記天壁部の曲率半径は、前記第1湾曲部の曲率半径および前記第2湾曲部の曲率半径よりも大きい、請求項4または5に記載のインバータユニット。
【請求項7】
前記天壁部の頂点は、前記所定方向に沿って視た際における前記カバーの中央部に位置する、請求項3から6のいずれか一項に記載のインバータユニット。
【請求項8】
前記隆起部において最も前記所定方向の一方側に位置する部分は、前記中央隆起部に設けられる、請求項
1から7のいずれか一項に記載のインバータユニット。
【請求項9】
前記所定方向に沿って視て、前記第1延伸隆起部の先端および前記第2延伸隆起部の先端は、丸みを帯びており
、
前記第2延伸隆起部の先端の曲率半径は、前記第1延伸隆起部の先端の曲率半径よりも大きい、請求項
1から8のいずれか一項に記載のインバータユニット。
【請求項10】
前記モータユニットは、モータを内部に収容するモータ収容部を備え
、
前記インバータケースは、前記第2方向の一方側の端部に前記モータ収容部と固定される固定部を有する、請求項
1から9のいずれか一項に記載のインバータユニット。
【請求項11】
前記第1延伸隆起部は
、
前記中央隆起部から前記第1方向の一方側に延びる第1延伸隆起部と
、
前記中央隆起部から前記第1方向の他方側に延びる第1延伸隆起部と
、
を含み
、
前記第2延伸隆起部は
、
前記中央隆起部から前記第2方向の一方側に延びる一対の第2延伸隆起部と
、
前記中央隆起部から前記第2方向の他方側に延びる一対の第2延伸隆起部と
、
を含む、請求項
1から10のいずれか一項に記載のインバータユニット。
【請求項12】
前記一対の第2延伸隆起部は、前記中央隆起部の前記第1方向の両端部からそれぞれ前記第2方向に延び
、
前記第2延伸隆起部の側壁部は、前記中央隆起部の側壁部と前記第1延伸隆起部の側壁部とを繋ぎ
、
前記所定方向と直交する断面において、前記第2延伸隆起部の側壁部と前記第1延伸隆起部の側壁部との接続部分である第1接続部、および前記第2延伸隆起部の側壁部と前記中央隆起部の側壁部との接続部分である第2接続部は、円弧状に湾曲し
、
前記第1接続部の曲率半径は、前記第2接続部の曲率半径よりも大きい、請求項
11に記載のインバータユニット。
【請求項13】
前記インバータケース本体の内部に収容される回路基板と
、
前記回路基板における前記所定方向の一方側の面に取り付けられる複数の電子部品と
、
をさらに備え
、
前記電子部品の少なくとも一部は、前記隆起部の内部に収容される、請求項1から
12のいずれか一項に記載のインバータユニット。
【請求項14】
前記カバーは、プレス加工品である、請求項1から
13のいずれか一項に記載のインバータユニット。
【請求項15】
車両の車軸を回転させるモータユニットであって
、
モータと
、
前記モータに接続される減速装置と
、
前記減速装置を介して前記モータに接続される差動装置と
、
前記モータを内部に収容するモータ収容部と前記減速装置および前記差動装置を内部に収容するギヤ収容部とを有するハウジングと
、
前記ハウジングに取り付けられる請求項1から
14のいずれか一項に記載のインバータユニットと
、
を備える、モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータユニット、およびモータユニットに関する。本願は、2019年5月14日に日本に出願された特願2019-091323に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
インバータケースがハウジングに固定されるモータ駆動ユニットが知られる。例えば、特許文献1には、インバータケースとハウジングとが締結ピンによって固定されるモータ駆動ユニットが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなインバータケースには、板状のカバーが設けられる場合がある。この場合、モータ駆動ユニットに設けられたモータ、減速装置、および差動装置において生じた振動がインバータケースに伝わり、カバーが膜振動しやすい問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、インバータケースのカバーに膜振動が生じることを抑制できる構造を有するインバータユニット、およびモータユニットを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインバータユニットの一つの態様は、車両の車軸を回転させるモータユニットに備えられるインバータユニットであって、インバータと、前記インバータを内部に収容するインバータケースと、を備える。前記インバータケースは、所定方向の一方側に開口するインバータケース本体と、前記インバータケース本体の開口を塞ぐ板状のカバーと、を有する。前記カバーは、前記所定方向に隆起する隆起部を有する。前記隆起部は、中空で前記所定方向に凸となる湾曲形状である。
【0007】
本発明のモータユニットの一つの態様は、車両の車軸を回転させるモータユニットであって、モータと、前記モータに接続される減速装置と、前記減速装置を介して前記モータに接続される差動装置と、前記モータを内部に収容するモータ収容部と前記減速装置および前記差動装置を内部に収容するギヤ収容部とを有するハウジングと、前記ハウジングに取り付けられる上記のインバータユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、インバータユニットおよびモータユニットにおいて、インバータケースのカバーに膜振動が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本実施形態のモータユニットを模式的に示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のモータユニットを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のモータユニットの一部を上側から視た図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のインバータユニットの一部を示す部分断面図であって、
図3におけるIV-IV断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のインバータカバーを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本実施形態のインバータカバーを示す断面図であって、
図3におけるVI-VI断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態のインバータカバーを示す断面図であって、
図4におけるVII-VII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、各図に示す実施形態のモータユニット1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であってモータユニットが搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0011】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。
【0012】
各図に適宜示すモータ軸J1は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0013】
本実施形態において鉛直方向は、所定方向に相当する。本実施形態において上側は、所定方向の一方側に相当し、下側は、所定方向の他方側に相当する。本実施形態において左右方向、すなわち軸方向は、第1方向に相当する。本実施形態において前後方向は、第2方向に相当する。本実施形態において前側は、第2方向の一方側に相当する。
【0014】
図1に示す本実施形態のモータユニット1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
図1に示すように、モータユニット1は、ハウジング6と、インバータユニット100と、モータ2と、伝達装置3と、を備える。伝達装置3は、減速装置4および差動装置5を含む。すなわち、モータユニット1は、減速装置4と、差動装置5と、を備える。
【0015】
ハウジング6は、モータ収容部81と、ギヤ収容部82と、隔壁61cと、を有する。すなわち、モータユニット1は、モータ収容部81と、ギヤ収容部82と、隔壁61cと、を備える。モータ収容部81は、内部に後述するロータ20およびステータ30を収容する部分である。ギヤ収容部82は、内部に伝達装置3を収容する部分である。ギヤ収容部82は、モータ収容部81の左側(+Y側)に位置する。モータ収容部81の底部81aは、ギヤ収容部82の底部82aより上側に位置する。隔壁61cは、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とを軸方向に区画する。隔壁61cには、隔壁開口68が設けられる。隔壁開口68は、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とを繋ぐ。
【0016】
モータ収容部81の内部およびギヤ収容部82の内部には、オイルOが収容される。ギヤ収容部82の内部における下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。オイル溜りPのオイルOは、後述する油路90によってモータ収容部81の内部に送られる。モータ収容部81の内部に送られたオイルOは、モータ収容部81の内部における下部領域に溜まる。モータ収容部81の内部に溜まったオイルOの少なくとも一部は、隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動し、オイル溜りPに戻る。
【0017】
なお、本明細書において「ある部分の内部にオイルが収容される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、ある部分の内部にオイルが位置していればよく、モータが停止している際には、ある部分の内部にオイルが位置していなくてもよい。例えば、本実施形態においてモータ収容部81の内部にオイルOが収容されるとは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、モータ収容部81の内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際においては、モータ収容部81の内部のオイルOがすべて隔壁開口68を通ってギヤ収容部82に移動してしまっていてもよい。なお、後述する油路90によってモータ収容部81の内部へと送られたオイルOの一部は、モータ2が停止した状態において、モータ収容部81の内部に残っていてもよい。
【0018】
オイルOは、後述する油路90内を循環する。オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOとしては、潤滑油および冷却油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0019】
ギヤ収容部82の底部82aは、モータ収容部81の底部81aよりも下側に位置する。そのため、ギヤ収容部82内からモータ収容部81内に送られたオイルOが隔壁開口68を介してギヤ収容部82内に流れやすい。
図2に示すように、ギヤ収容部82は、前後方向に延びる。ギヤ収容部82の前側(+X側)の端部は、モータ収容部81の左側(+Y側)の端部に繋がる。ギヤ収容部82の後側(-X側)の端部は、モータ収容部81よりも後側に突出する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態においてモータ2は、インナーロータ型のモータである。モータ2は、ロータ20と、ステータ30と、ベアリング26,27と、を有する。ロータ20は、鉛直方向と直交する水平方向に延びるモータ軸J1を中心として回転可能である。ロータ20のトルクは、伝達装置3に伝達される。ロータ20は、シャフト21と、ロータ本体24と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体24は、ロータコアと、ロータコアに固定されるロータマグネットと、を有する。
【0021】
シャフト21は、モータ軸J1を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸J1を中心として回転する。シャフト21は、内部に中空部22が設けられた中空シャフトである。シャフト21には、連通孔23が設けられる。連通孔23は、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを繋ぐ。
【0022】
シャフト21は、ハウジング6のモータ収容部81とギヤ収容部82とに跨って延びる。シャフト21の左側(+Y側)の端部は、ギヤ収容部82の内部に突出する。シャフト21の左側の端部には、伝達装置3の後述する第1のギヤ41が固定される。シャフト21は、ベアリング26,27により回転可能に支持される。
【0023】
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。より詳細には、ステータ30は、ロータ20の径方向外側に位置する。ステータ30は、ロータ20を囲む。ステータ30は、ステータコア32と、コイルアセンブリ33と、を有する。ステータコア32は、モータ収容部81の内周面に固定される。図示は省略するが、ステータコア32は、軸方向に延びる円筒状のコアバックと、コアバックから径方向内側に延びる複数のティースと、を有する。
【0024】
コイルアセンブリ33は、周方向に沿ってステータコア32に取り付けられる複数のコイル31を有する。複数のコイル31は、図示しないインシュレータを介してステータコア32の各ティースにそれぞれ装着される。複数のコイル31は、周方向に沿って配置される。より詳細には、複数のコイル31は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。図示は省略するが、本実施形態において複数のコイル31は、スター結線されて複数相の交流回路を構成する。複数のコイル31は、例えば3相の交流回路を構成する。
【0025】
コイルアセンブリ33は、ステータコア32から軸方向に突出するコイルエンド33a,33bを有する。コイルエンド33aは、ステータコア32から右側(-Y側)に突出する部分である。コイルエンド33bは、ステータコア32から左側(+Y側)に突出する部分である。コイルエンド33aは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも右側に突出する部分によって構成される。コイルエンド33bは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも左側に突出する部分によって構成される。本実施形態においてコイルエンド33a,33bは、モータ軸J1を中心とする円環状である。
【0026】
ベアリング26,27は、ロータ20を回転可能に支持する。ベアリング26,27は、例えば、ボールベアリングである。ベアリング26は、ロータ20のうちステータコア32よりも右側(-Y側)に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態に
おいてベアリング26は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも右側に位置する部分を支持する。ベアリング26は、モータ収容部81のうちロータ20およびステータ30の右側を覆う壁部に保持される。
【0027】
ベアリング27は、ロータ20のうちステータコア32よりも左側(+Y側)に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング27は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも左側に位置する部分を支持する。ベアリング27は、隔壁61cに保持される。
【0028】
伝達装置3は、ハウジング6のギヤ収容部82に収容される。伝達装置3は、モータ2に接続される。より詳細には、伝達装置3は、シャフト21の左側(+Y側)の端部に接続される。伝達装置3は、減速装置4と、差動装置5と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。
【0029】
減速装置4は、モータ2に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1のギヤ41と、第2のギヤ42と、第3のギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。
【0030】
第1のギヤ41は、シャフト21の左側(+Y側)の端部における外周面に固定される。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J1を中心に回転する。中間シャフト45は、モータ軸J1と平行な中間軸J2に沿って延びる。中間シャフト45は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に固定される。第2のギヤ42と第3のギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5の後述するリングギヤ51と噛み合う。
【0031】
モータ2から出力されるトルクは、シャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43をこの順に介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。本実施形態において減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0032】
差動装置5は、減速装置4を介しモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。差動装置5は、リングギヤ51と、図示しないギヤハウジングと、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。リングギヤ51は、モータ軸J1と平行な差動軸J3を中心として回転する。リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。
【0033】
リングギヤ51の下側の端部は、ギヤ収容部82内のオイル溜りPの油面Sgよりも下側に位置する。これにより、リングギヤ51の下側の端部は、ギヤ収容部82内のオイルOに浸漬される。本実施形態においてオイル溜りPの油面Sgは、差動軸J3および車軸55よりも下側に位置する。
【0034】
モータユニット1には、ハウジング6の内部においてオイルOが循環する油路90が設けられる。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給し、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とに跨って設けられる。
【0035】
なお、本明細書において「油路」とは、オイルの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルの流動を作る「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。オイルを一時的に滞留させる経路とは、例えば、オイルを貯留するリザーバ等を含む。
【0036】
油路90は、第1の油路91と、第2の油路92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギヤ収容部82内に設けられる。
【0037】
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギヤ51の回転によってオイル溜りPからオイルOをかき上げて、第1のリザーバ93でオイルOを受ける経路である。第1のリザーバ93は、上側に開口する。第1のリザーバ93は、リングギヤ51がかき上げたオイルOを受ける。また、モータ2の駆動直後などオイル溜りPの油面Sgが高い場合等には、第1のリザーバ93は、リングギヤ51に加えて第2のギヤ42および第3のギヤ43によってかき上げられたオイルOも受ける。
【0038】
シャフト供給経路91bは、第1のリザーバ93からシャフト21の中空部22にオイルOを誘導する。シャフト内経路91cは、シャフト21の中空部22内をオイルOが通過する経路である。ロータ内経路91dは、シャフト21の連通孔23からロータ本体24の内部を通過して、ステータ30に飛散する経路である。
【0039】
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20の内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。またオイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、第1のリザーバ93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
【0040】
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部81内の下部領域に溜る。モータ収容部81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動する。以上のようにして、第1の油路91は、オイルOをロータ20およびステータ30に供給する。
【0041】
第2の油路92においてオイルOは、オイル溜りPからステータ30の上側まで引き上げられてステータ30に供給される。すなわち、本実施形態においてモータユニット1は、ステータ30に上側からオイルOを供給する油路として第2の油路92を備える。第2の油路92には、オイルポンプ96と、クーラー97と、第2のリザーバ10と、が設けられる。第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、を有する。
【0042】
第1の流路92a、第2の流路92bおよび第3の流路92cは、ハウジング6の壁部に設けられる。第1の流路92aは、オイル溜りPとオイルポンプ96とを繋ぐ。第2の流路92bは、オイルポンプ96とクーラー97とを繋ぐ。第3の流路92cは、クーラー97から上側に延びる。第3の流路92cは、モータ収容部81の壁部に設けられる。第3の流路92cは、ステータ30の上側においてモータ収容部81の内部に開口する。
【0043】
オイルポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。オイルポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92cおよび第2のリザーバ10を介して、オイルOをモータ2に供給する。
【0044】
クーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。クーラー97には、第2の流路92bおよび第3の流路92cが接続される。第2の流路92bおよび第3の流路92cは、クーラー97の内部流路を介して繋がる。クーラー97には、図示しないラジエータで冷却された冷却水を通過させる冷却水用配管97jが接続される。クーラー97の内部を通過するオイルOは、冷却水用配管97jを通過する冷却水との間で熱交換されて冷却される。なお、冷却水用配管97jの経路中には、インバータユニット100が設けられる。冷却水用配管97jを通過する冷却水は、インバータユニット100を冷却する。
【0045】
本実施形態において第2のリザーバ10は、上側に開口する樋状である。第2のリザーバ10は、オイルOを貯留する。本実施形態において第2のリザーバ10は、第3の流路92cを介してモータ収容部81内に供給されたオイルOを貯留する。第2のリザーバ10は、コイルエンド33a,33bに上側からオイルOを供給する供給口を有する。これにより、第2のリザーバ10に貯留されたオイルOをステータ30に供給できる。
【0046】
第2のリザーバ10からステータ30に供給されたオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部81内の下部領域に溜る。モータ収容部81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動する。以上のようにして、第2の油路92は、オイルOをステータ30に供給する。
【0047】
図2および
図3に示すように、インバータユニット100は、ハウジング6に取り付けられる。本実施形態においてインバータユニット100は、モータ収容部81の後側(-X側)に位置し、モータ収容部81にネジで取り付けられる。インバータユニット100は、軸方向に長い略直方体状である。
図2に示すように、インバータユニット100の左側(+Y側)の端部は、ギヤ収容部82のうちモータ収容部81よりも後側に突出する部分の上側に位置する。
図4に示すように、インバータユニット100は、インバータケース110と、インバータ160と、回路基板170と、トランス171と、複数のコンデンサ172と、を備える。
【0048】
インバータケース110は、インバータ160、回路基板170、トランス171、及び複数のコンデンサ172を内部に収容する。
図2及び
図3に示すように、インバータケース110は、軸方向に長い略直方体の箱状である。インバータケース110は、モータ収容部81の後側(-X側)に例えばネジで取り付けられる。インバータケース110は、インバータケース本体120と、インバータカバー130と、配線部カバー140と、を有する。
【0049】
インバータケース本体120は、上側に開口する箱状である。インバータケース本体120は、インバータ160、回路基板170、トランス171、および複数のコンデンサ172を内部に収容する。インバータケース本体120は、インバータ収容部121と、配線収容部122と、仕切壁部123と、固定部124,125と、を有する。すなわち、インバータケース110は、インバータ収容部121と、配線収容部122と、仕切壁部123と、固定部124,125と、を有する。
【0050】
インバータ収容部121は、上側に開口し、内部にインバータ160を収容する部分である。インバータ収容部121は、モータ収容部81の後側(-X側)に位置する。配線収容部122は、上側に開口し、内部に図示しない配線部を収容する部分である。配線収容部122は、インバータ収容部121の左側(+Y側)に繋がる。配線収容部122は、ギヤ収容部82のうちモータ収容部81よりも後側に突出する部分の上側に位置する。配線収容部122の内部に収容される図示しない配線部は、インバータ160に電気的に接続されるバスバーを含む。
【0051】
仕切壁部123は、インバータ収容部121の内部と配線収容部122の内部とを軸方向に仕切る壁部である。図示は省略するが、仕切壁部123には、軸方向に貫通する貫通孔が設けられる。上述した図示しないバスバーは、仕切壁部123に設けられた貫通孔を介して、インバータ160から配線収容部122の内部に延びる。
【0052】
固定部124,125は、インバータ収容部121の上側の端部から前側(+X側)
に突出する。固定部124、125は、インバータケース110の前側の端部に設けられる。固定部124,125は、モータ収容部81と固定される部分である。本実施形態において固定部124,125は、ネジによってモータ収容部81と固定される。
図3に示すように、固定部124は、例えば、軸方向に沿って間隔を空けて3つ設けられる。固定部124をモータ収容部81に固定するネジは、鉛直方向に延びる。固定部125は、3つの固定部124を軸方向に挟んで一対設けられる。固定部125をモータ収容部81に固定するネジは、鉛直方向に対して前後方向に斜めに傾いた方向に延びる。固定部125をモータ収容部81に固定するネジは、上側から下側に向かうに従って前側に位置する。
【0053】
インバータカバー130は、インバータ収容部121の開口を塞ぐ板状の部材である。すなわち、本実施形態においてインバータカバー130は、インバータケース本体120の開口を塞ぐカバーに相当する。本実施形態においてインバータカバー130は、板部材にプレス加工を施して作られるプレス加工品である。本実施形態においてインバータカバー130は、インバータ収容部121の上側の縁部に複数のネジ126によって固定される。
図3から
図5に示すように、インバータカバー130は、インバータカバー本体131と、複数の爪部133と、を有する。
【0054】
インバータカバー本体131は、板面が鉛直方向を向く板状である。インバータカバー本体131の後側(-X側)の縁部からは、複数の爪部133が下側に突出する。インバータカバー本体131は、平板状の平板部132と、平板部132に対して上側に隆起する隆起部150と、を有する。すなわち、インバータカバー130は、平板部132と、鉛直方向に隆起する隆起部150と、を有する。本実施形態において隆起部150は、鉛直方向に沿って視て、インバータカバー本体131の中央部である。隆起部150の全周は、平板部132によって囲まれる。平板部132の外周縁部は、複数のネジ126によってインバータ収容部121の上側の縁部に固定される。
【0055】
隆起部150は、例えばインバータカバー本体131の全体が平板状であった場合に膜振動の腹となる部分を含んで配置される。
図4および
図5に示すように、隆起部150は、中空で鉛直方向に凸となる湾曲形状である。本実施形態において隆起部150は、下側に開口する中空であり、上側に凸となる湾曲形状である。隆起部150は、例えば、板状のインバータカバー本体131の一部がプレス加工によって上側に塑性変形させられて作られる。
図5に示すように、中空の隆起部150が設けられることで、インバータカバー130の下側の面には、上側に窪む凹部134が設けられる。
【0056】
このような鉛直方向に隆起する隆起部150を設けることで、隆起部150においてインバータカバー130の鉛直方向に対する曲げ剛性を大きくできる。これにより、モータ2等からインバータカバー130に振動が伝わった場合であっても、インバータカバー130に膜振動が生じることを抑制できる。特に、インバータカバー130に生じる膜振動のうち1次の膜振動を好適に抑制できる。また、隆起部150が中空で鉛直方向に凸となる湾曲形状であるため、隆起部150の形状が、アーチ形状およびドーム形状、またはアーチ形状およびドーム形状に近い形状となり、隆起部150の曲げ剛性をより大きくできる。したがって、インバータカバー130に膜振動が生じることをより好適に抑制できる。
【0057】
また、本実施形態によれば、隆起部150は、上側に隆起する。そのため、インバータケース110内の容積を大きくでき、インバータケース110内に各電子部品を収容しやすい。また、インバータカバー130の上側の面に窪みが設けられることを抑制でき、インバータカバー130の上側の面に水等の液体、埃等の異物が溜まることを抑制できる。
【0058】
また、本実施形態によれば、インバータカバー130は、プレス加工品である。そのため、プレス加工によって容易に隆起部150を作ることができる。また、ダイカスト等に比べてインバータカバー130の質量を小さくしやすく、インバータユニット100全体の質量を小さくしやすい。また、インバータカバー130の製造コストを低減できる。
【0059】
図3に示すように、本実施形態において隆起部150は、上側から視て、軸方向に延びる1本の縦棒と前後方向に延び縦棒と交差する2本の横棒とからなる略複十字状である。本実施形態において隆起部150は、天壁部150aと、周壁部150bと、を有する。天壁部150aは、板面が鉛直方向を向く板状である。
図4および
図6に示すように、天壁部150aは、上側に凸となる円弧状に湾曲する。天壁部150aの曲率中心は、インバータカバー130の下側に位置する。天壁部150aの曲率半径は、後述する第1湾曲部150gの曲率半径および第2湾曲部150hの曲率半径よりも大きい。そのため、天壁部150aの曲率半径を比較的大きくできる。これにより、天壁部150aの隆起高さを小さくしやすく、隆起部150の隆起高さを抑えつつ、インバータカバー130の曲げ剛性を大きくできる。したがって、インバータユニット100が鉛直方向に大型化することを抑制しつつ、インバータカバー130に膜振動が生じることを抑制できる。
【0060】
図3に示すように、天壁部150aの頂点150jは、鉛直方向に沿って視た際におけるインバータカバー130の中央部に位置する。そのため、インバータカバー130が膜振動する際に腹となりやすい部分に、隆起部150のうち最も上側に位置する部分、すなわち最も隆起高さが大きい部分を配置しやすい。これにより、インバータカバー130に膜振動が生じることをより抑制できる。本実施形態において頂点150jは、隆起部150のうち最も上側に位置する部分である。天壁部150aは、上側から視て、上述した略複十字状である。
【0061】
周壁部150bは、天壁部150aの外縁部とインバータカバー130のうち隆起部150の周縁部とを繋ぐ。インバータカバー130のうち隆起部150の周縁部は、平板部132の一部である。周壁部150bは、インバータカバー130のうち隆起部150の周縁部から上側に向かうに従って隆起部150の内側に位置する向きに傾斜する。即ち、隆起部150は、下側から上側に向かうに従って上側から視た外形が小さくなる形状である。このように周壁部150bを下側から上側に向かうに従って隆起部150の内側に位置する向きに傾斜させることで、インバータカバー130の曲げ剛性をより大きくでき、インバータカバー130に膜振動が生じることをより好適に抑制できる。本実施形態においては、天壁部150aと周壁部150bとによって、全体として上側に凸となる湾曲形状の隆起部150が構成される。
【0062】
図6に示すように、周壁部150bは、本体部150iと、第1湾曲部150gと、第2湾曲部150hと、を有する。第1湾曲部150gは、周壁部150bの下端部である。第2湾曲部150hは、周壁部150bの上端部である。本体部150iは、周壁部150bのうち第1湾曲部150gと第2湾曲部150hとを繋ぐ。
【0063】
本体部150iは、周壁部150bが延びる方向と直交する断面において、下側から上側に向かって隆起部150の内側に位置する向きに傾斜して直線状に延びる。本体部150iが水平方向に対して傾斜する角度は、例えば、30°以上、40°以下程度である。このように、周壁部150bの本体部150iにおける水平方向に対する傾斜角度を比較的小さくすることで、インバータカバー130の曲げ剛性を大きくしやすい。そのため、インバータカバー130に膜振動が生じることをより好適に抑制できる。
【0064】
第1湾曲部150gは、周壁部150bのうち隆起部150の周縁部、すなわち平板部132に繋がる部分である。第1湾曲部150gは、周壁部150bが延びる方向と直交する断面において円弧状に湾曲する。第1湾曲部150gは、下側斜め内側に凸となる向きに円弧状に湾曲する。第1湾曲部150gの曲率中心は、インバータカバー130よりも上側に位置する。
【0065】
第2湾曲部150hは、周壁部150bの上端部であり、周壁部150bのうち天壁部150aに繋がる部分である。第2湾曲部150hは、周壁部150bが延びる方向と直交する断面において円弧状に湾曲する。第2湾曲部150hは、上側斜め外側に凸となる向きに円弧状に湾曲する。第2湾曲部150hの曲率中心は、インバータカバー130よりも下側に位置する。
【0066】
このように、周壁部150bにおける平板部132と天壁部150aとの接続部分のそれぞれを湾曲させることで、インバータカバー130の曲げ剛性をより大きくしやすく、インバータカバー130に膜振動が生じることをより好適に抑制できる。
【0067】
本実施形態において第1湾曲部150gの曲率半径と第2湾曲部150hの曲率半径とは、互いに同じである。すなわち、第1湾曲部150gのうちインバータケース110の外部に面する外側面の曲率半径と第2湾曲部150hのうちインバータケース110の内部に面する内側面の曲率半径とは、互いに同じである。そのため、周壁部150bによって繋がれる平板部132と天壁部150aとにおける水平方向に対する角度を互いにほぼ同じにできる。これにより、天壁部150aの曲率半径を比較的大きくでき、隆起部150の隆起高さが大きくなることを抑制できる。したがって、インバータユニット100が鉛直方向に大型化することを抑制できる。
【0068】
図3に示すように、本実施形態において隆起部150は、中央隆起部157と、複数の延伸隆起部として2つの第1延伸隆起部151,154および4つの第2延伸隆起部152,153,155,156と、を有する。中央隆起部157は、鉛直方向に沿って視てインバータカバー130の中央部に位置する。中央隆起部157は、上側から視て、軸方向に長い略長方形状である。中央隆起部157は、天壁部150aの一部を構成する中央天壁部157aと、周壁部150bの一部を構成する側壁部157bと、を有する。
【0069】
本実施形態において中央天壁部157aは、天壁部150aの中央部分を構成する。中央天壁部157aにおける上側から視た中心は、中央天壁部157aの頂点150jである。すなわち、隆起部150において最も上側に位置する部分は、中央隆起部157に設けられる。本実施形態において側壁部157bは、中央天壁部157aの前後方向の両側にそれぞれ設けられる。
図6に示すように、側壁部157bのうち平板部132に繋がる部分は、湾曲部157cであり、第1湾曲部150gの一部である。側壁部157bのうち中央天壁部157aに繋がる部分は、湾曲部157dであり、第2湾曲部150hの一部である。
【0070】
第1延伸隆起部151,154および第2延伸隆起部152,153,155,156は、鉛直方向に沿って視て、中央隆起部157から外側に延びる。このように複数の延伸隆起部として第1延伸隆起部151,154および第2延伸隆起部152,153,155,156を設けることで、インバータ収容部121にネジで固定されるインバータカバー130の外周縁部から、膜振動の腹となりやすいインバータカバー130の中央部に向かって延びるリブを設けることができる。そのため、膜振動に対するインバータカバー130の曲げ剛性をより大きくすることができ、インバータカバー130に膜振動が生じることをより好適に抑制できる。
【0071】
また、本実施形態によれば、隆起部150において最も上側に位置する部分は、中央隆起部157に設けられる。そのため、インバータ収容部121にネジで固定されるインバータカバー130の外周縁部から、膜振動の腹となりやすいインバータカバー130の中央部に向けて、隆起部150の隆起高さを大きくしていきやすい。これにより、インバータカバー130の曲げ剛性をより大きくしやすく、インバー
タカバー130に膜振動が生じることをより好適に抑制できる。
【0072】
第1延伸隆起部151,154は、鉛直方向と直交する軸方向に延びる。第2延伸隆起部152,153,155,156は、鉛直方向および軸方向の両方と直交する前後方向に延びる。このように、互いに直交する方向に延びる延伸隆起部を設けることで、インバータカバー130の曲げ剛性をより大きくしやすく、インバータカバー130に膜振動が生じることをより好適に抑制できる。
【0073】
また、インバータケース110は、前側(+X側)の端部にモータ収容部81と固定される固定部124,125を有する。そのため、インバータケース110は、モータ収容部81の後側(-X側)に取り付けられる。これにより、モータ2の振動は、インバータケース110に対して、前側から前後方向に伝わる。これに対し、第2延伸隆起部152,153,155,156は、前後方向に延びる。そのため、第2延伸隆起部152,153,155,156によって、モータ収容部81を介して伝わるモータ2の振動に対するインバータカバー130の曲げ剛性をより大きくしやすい。これにより、インバータカバー130に膜振動が生じることをより好適に抑制できる。
【0074】
第1延伸隆起部151は、中央隆起部157から左側(+Y側)に延びる。第1延伸隆起部154は、中央隆起部157から右側(-Y側)に延びる。第1延伸隆起部151と第1延伸隆起部154とは、軸方向に延びる同一直線上に配置される。第1延伸隆起部151は、天壁部150aの一部を構成する延伸天壁部151aと、周壁部150bの一部を構成する側壁部151bと、を有する。第1延伸隆起部154は、天壁部150aの一部を構成する延伸天壁部154aと、周壁部150bの一部を構成する側壁部154bと、を有する。
【0075】
図4に示すように、側壁部151bのうち平板部132に繋がる部分は、湾曲部151cであり、第1湾曲部150gの一部である。側壁部151bのうち延伸天壁部151aに繋がる部分は、湾曲部151dであり、第2湾曲部150hの一部である。また、側壁部154bのうち平板部132に繋がる部分も、側壁部151bと同様に、第1湾曲部150gの一部である。側壁部154bのうち延伸天壁部154aに繋がる部分も、側壁部151bと同様に、第2湾曲部150hの一部である。
【0076】
図3に示すように、一対の第2延伸隆起部152,153は、中央隆起部157から前側(+X側)に延びる。第2延伸隆起部152と第2延伸隆起部153とは、軸方向に間隔を空けて並んで配置される。第2延伸隆起部152は、第2延伸隆起部153の左側(+Y側)に位置する。本実施形態において一対の第2延伸隆起部152,153は、中央隆起部157の軸方向の両端部からそれぞれ前後方向に延びる。
【0077】
一対の第2延伸隆起部155,156は、中央隆起部157から後側(-X側)に延びる。第2延伸隆起部155と第2延伸隆起部156とは、軸方向に間隔を空けて並んで配置される。第2延伸隆起部155は、第2延伸隆起部156の左側(+Y側)に位置する。本実施形態において一対の第2延伸隆起部155,156は、中央隆起部157の軸方向の両端部からそれぞれ前後方向に延びる。第2延伸隆起部152と第2延伸隆起部155とは、前後方向に延びる同一直線上に配置される。第2延伸隆起部153と第2延伸隆起部156とは、前後方向に延びる同一直線上に配置される。
【0078】
このように6つの延伸隆起部を配置することで、延伸隆起部の数を少なくしつつ、インバータカバー130の外周縁部のいずれの位置からインバータカバー130の中央部に向かうまでの間の部分においてもインバータカバー130の曲げ剛性を比較的均一に大きくしやすい。そのため、隆起部150を容易に作ることができ、かつ、インバータカバー130の膜振動を好適に抑制できる。
【0079】
第2延伸隆起部152は、天壁部150aの一部を構成する延伸天壁部152aと、周壁部150bの一部を構成する側壁部152bと、を有する。第2延伸隆起部153は、天壁部150aの一部を構成する延伸天壁部153aと、周壁部150bの一部を構成する側壁部153bと、を有する。第2延伸隆起部155は、天壁部150aの一部を構成する延伸天壁部155aと、周壁部150bの一部を構成する側壁部155bと、を有する。第2延伸隆起部156は、天壁部150aの一部を構成する延伸天壁部156aと、周壁部150bの一部を構成する側壁部156bと、を有する。
【0080】
本実施形態において天壁部150aは、中央天壁部157aと延伸天壁部151a,152a,153a,154a,155a,156aとによって構成される。延伸天壁部151a,154aは、中央天壁部157aから軸方向に延びる。延伸天壁部152a,153a,155a,156aは、中央天壁部157aから前後方向に延びる。
【0081】
本実施形態において周壁部150bは、側壁部151bと、側壁部152bと、側壁部157bのうち中央天壁部157aの前側(+X側)に位置する部分と、側壁部153bと、側壁部154bと、側壁部156bと、側壁部157bのうち中央天壁部157aの後側(-X側)に位置する部分と、側壁部155bと、がこの順に連結されて構成される。すなわち、第2延伸隆起部152の側壁部152bは、中央隆起部157の側壁部157bと第1延伸隆起部151の側壁部151bとを繋ぐ。
【0082】
図7に示すように、鉛直方向と直交する断面150kにおいて、第2延伸隆起部152の側壁部152bと第1延伸隆起部151の側壁部151bとの接続部分である第1接続部150e、および第2延伸隆起部152の側壁部152bと中央隆起部157の側壁部157bとの接続部分である第2接続部150fは、円弧状に湾曲する。断面150kは、周壁部150bの本体部150iを通る断面である。第1接続部150eの曲率半径は、第2接続部150fの曲率半径よりも大きい。そのため、第1接続部150eの曲率半径を比較的大きくでき、第1接続部150eの曲率半径が小さい場合に比べて、第1接続部150eを隆起部150の外側に向けて張り出させやすい。これにより、インバータカバー130の曲げ剛性をより大きくでき、インバータカバー130に膜振動が生じることをより抑制できる。
【0083】
なお、本明細書において「第1接続部150eおよび第2接続部150fが円弧状に湾曲する」とは、少なくとも、
図7に示すような周壁部150bの本体部150iを通り鉛直方向と直交する断面150kにおいて、第1接続部150eおよび第2接続部150fが円弧状に湾曲していればよい。また、本明細書において「第1接続部150eの曲率半径が第2接続部150fの曲率半径よりも大きい」とは、少なくとも、断面150kにおいて、第1接続部150eの曲率半径が第2接続部150fの曲率半径よりも大きければよい。
【0084】
第1延伸隆起部151,154の軸方向の寸法は、互いに同じである。第2延伸隆起部152,153,155,156の前後方向の寸法は、互いに同じである。第1延伸隆起部151,154の軸方向の寸法は、第2延伸隆起部152,153,155,156の前後方向の寸法よりも大きい。
【0085】
鉛直方向に沿って視て、第1延伸隆起部151,154の先端および第2延伸隆起部152,153,155,156の先端は、丸みを帯びている。第2延伸隆起部152,153,155,156の先端の曲率半径は、第1延伸隆起部151,154の先端の曲率半径よりも大きい。そのため、第2延伸隆起部152,153,155,156の軸方向の寸法を比較的大きくしやすい。これにより、前側(+X側)から伝わるモータ2の振動に対して、インバータカバー130の曲げ剛性をより大きくしやすい。したがって、インバータカバー130に膜振動が生じることをより抑制できる。
【0086】
なお、本明細書において「第2延伸隆起部152,153,155,156の先端の曲率半径が第1延伸隆起部151,154の先端の曲率半径よりも大きい」とは、少なくとも、周壁部150bの本体部150iを通り鉛直方向と直交する断面150kにおいて、第2延伸隆起部152,153,155,156の先端の曲率半径が第1延伸隆起部151,154の先端の曲率半径よりも大きければよい。本実施形態においては、第1延伸隆起部151,154および第2延伸隆起部152,153,155,156を通り鉛直方向と直交するいずれの面においても、第2延伸隆起部152,153,155,156の先端の曲率半径が第1延伸隆起部151,154の先端の曲率半径よりも大きい。
【0087】
配線部カバー140は、配線収容部122の開口を塞ぐ板状の部材である。すなわち、本実施形態において配線部カバー140は、インバータケース本体120の開口を塞ぐカバーに相当する。本実施形態において配線部カバー140は、板部材にプレス加工を施して作られるプレス加工品である。本実施形態において配線部カバー140は、配線収容部122の上側の縁部に複数のネジ127によって固定される。配線部カバー140は、鉛直方向に隆起する隆起部141を有する。本実施形態において隆起部141は、上側に隆起する。隆起部141は、上側から視て、長円形状である。図示は省略するが、隆起部141は、中空で下側に凸となる湾曲形状である。そのため、上述した隆起部150と同様に、隆起部141によって、配線部カバー140に膜振動が生じることを抑制できる。
【0088】
インバータ160は、モータ2に電力を供給する。図示は省略するが、インバータ160は、複数のトランジスタと、複数のコンデンサと、を有する。
図4に示すように、インバータ160は、図示しない複数のコンデンサを収容するコンデンサケース160aを有する。コンデンサケース160aは、直方体箱状である。図示しない複数のトランジスタは、コンデンサケース160aの下側に位置する。
【0089】
回路基板170は、板面が鉛直方向を向く板状である。本実施形態において回路基板170は、インバータ160を制御する制御基板である。回路基板170は、インバータ160の上側に位置する。回路基板170は、コンデンサケース160aの上面に設けられた支持部161を介して、コンデンサケース160aの上側に取り付けられる。トランス171および複数のコンデンサ172は、回路基板170の上側の面に取り付けられる複数の電子部品である。トランス171および複数のコンデンサ172の少なくとも一部は、隆起部150の内部に収容される。このように、隆起部150の内部を電子部品の収容空間として利用することで、インバータケース110全体の鉛直方向の寸法を抑えつつ、鉛直方向の寸法が比較的大きい電子部品をインバータケース110の内部に容易に収容できる。
【0090】
本実施形態においては、トランス171の上側の端部および複数のコンデンサ172の上側の端部が、隆起部150における中央隆起部157の内部に収容される。
図3に示すように、トランス171は、例えば、1つ設けられる。コンデンサ172は、例えば、5つ設けられる。1つのトランス171および5つのコンデンサ172は、鉛直方向に沿って視て、中央隆起部157の中央天壁部157aと重なる。
【0091】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。隆起部の形状は、中空で所定方向(鉛直方向)に凸となる湾曲形状であれば、特に限定されない。隆起部は、所定方向の他方側に隆起してもよい。即ち、例えば、上述した実施形態において隆起部150は、下側に隆起してもよい。この場合、隆起部150は、上側に開口する中空であり、インバータケース110の外部から視てインバータカバー130には、下側に窪む窪みが設けられる。このような場合であっても、インバータカバー130に膜振動が生じることを抑制できる。また、隆起部141が下側に隆起してもよい。
【0092】
延伸隆起部の数は、特に
限定されず、1つ以上、5つ以下であってもよいし、7つ以上であってもよい。延伸隆起部は、設けられなくてもよい。隆起部を所定方向に沿って視た外形は、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。隆起部の内部には、電子部品の一部が収容されなくてもよい。
【0093】
インバータケース本体の開口を塞ぐカバーは、上述した実施形態において、インバータカバー130と配線部カバー140との2つとしたが、これに限られない。インバータカバー130と配線部カバー140とが同一の単一部材であり、インバータケース本体の開口を塞ぐカバーが1つ設けられてもよい。また、例えば、上述した実施形態において、インバータカバー130と配線部カバー140とのうちいずれか一方に隆起部が設けられるならば、いずれか他方には隆起部が設けられなくてもよい。インバータケース本体の開口を塞ぐカバーは、ダイカスト等によって作られる鋳造品であってもよい。
【0094】
本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0095】
1…モータユニット、2…モータ、4…減速装置、5…差動装置、6…ハウジング、55…車軸、81…モータ収容部、82…ギヤ収容部、100…インバータユニット、110…インバータケース、120…インバータケース本体、124,125…固定部、130…インバータカバー(カバー)、140…配線部カバー(カバー)、141,150…隆起部、150a…天壁部、150b…周壁部、150e…第1接続部、150f…第2接続部、150g…第1湾曲部、150h…第2湾曲部、150j…頂点、151,154…第1延伸隆起部(延伸隆起部)、151b,152b,153b,154b,155b,156b,157b…側壁部、152,153,155,156…第2延伸隆起部(延伸隆起部)、157…中央隆起部、160…インバータ、170…回路基板、171…トランス(電子部品)、172…コンデンサ(電子部品)