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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/86 20180101AFI20240521BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20240521BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240521BHJP
   F24F 140/12 20180101ALN20240521BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20240521BHJP
【FI】
F24F11/86
F24F11/74
F25B1/00 304H
F25B1/00 383
F25B1/00 396B
F25B1/00 321B
F25B1/00 303
F24F140:12
F24F140:20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022051834
(22)【出願日】2022-03-28
(65)【公開番号】P2023144715
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2023-02-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣崎 佑
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-147623(JP,A)
【文献】国際公開第2020/144738(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/86
F24F 11/74
F25B 1/00
F24F 140/12
F24F 140/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、減圧手段及び蒸発器を順次接続して、冷媒として非共沸混合冷媒を循環させる冷媒回路と、前記蒸発器に空気を送風する送風機と、前記減圧手段の開度と前記送風機の風量を制御する制御手段とを備え、冷房運転もしくは除湿運転が可能な空気調和機において、
冷房運転状態もしくは除湿運転状態で、前記蒸発器を通過した空気により露が発生するか否かを判定する露付判定手段を有し、
前記露付判定手段は、前記蒸発器の入口側冷媒の温度が露点温度未満であり、前記蒸発器の出口側冷媒の温度が露点温度以上の場合に、露が発生すると判定し、
前記露付判定手段が露が発生すると判定した場合は、前記制御手段は前記減圧手段の開度もしくは前記送風機の風量を制御することにより、
前記蒸発器の出口側におけるエンタルピーが低くなるように前記蒸発器の出口側冷媒の乾き度を制御することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
圧縮機、凝縮器、減圧手段及び蒸発器を順次接続して、冷媒として非共沸混合冷媒を循環させる冷媒回路と、前記蒸発器に空気を送風する送風機と、前記減圧手段の開度と前記送風機の風量を制御する制御手段とを備え、冷房運転もしくは除湿運転が可能な空気調和機において、
冷房運転状態もしくは除湿運転状態で、前記蒸発器を通過した空気により露が発生するか否かを判定する露付判定手段を有し、
前記露付判定手段は、冷房運転もしくは除湿運転を行うために前記圧縮機を起動させてから所定時間未満の場合は、露は発生すると判定し、
前記露付判定手段が露が発生すると判定した場合は、前記制御手段は前記減圧手段の開度もしくは前記送風機の風量を制御することにより、
前記蒸発器の出口側におけるエンタルピーが低くなるように前記蒸発器の出口側冷媒の乾き度を制御することを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
前記制御手段は前記減圧手段の開度もしくは前記送風機の風量を制御して、
前記蒸発器の出口側冷媒の乾き度を1未満に制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記蒸発器の出口から前記圧縮機に至る経路において冷媒を加熱するヒータを備え、
前記露付判定手段が、露が発生すると判定した場合は、前記制御手段は前記ヒータを動作させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記蒸発器の出口側冷媒の乾き度を、前記蒸発器の出口側冷媒の温度および前記蒸発器の出口側冷媒の圧力に基づいて算出することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
圧縮機、凝縮器、減圧手段及び蒸発器を接続して、冷媒として非共沸混合冷媒を循環させる冷凍回路を備えた冷凍サイクル装置と、前記蒸発器に空気を送風する送風機と、前記減圧手段の開度と前記送風機の風量を制御する制御手段とを備え、冷房運転もしくは除湿運転が可能な空気調和機において、
冷房運転状態もしくは除湿運転状態で、前記蒸発器を通過した空気により露が発生するか否かを判定する露付判定手段を有し、
前記露付判定手段が露は発生すると判定した場合は、前記制御手段は前記減圧手段の開度もしくは前記送風機の風量を制御して、前記蒸発器の出口側冷媒の温度を露点温度未満にすることを特徴とする空気調和機。
【請求項7】
前記露付判定手段は、冷房運転もしくは除湿運転を行うために前記圧縮機を起動させてから所定時間未満の場合は、露は発生すると判定することを特徴とする請求項6に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記露付判定手段は、前記蒸発器の入口側冷媒の温度が露点温度未満であり、前記蒸発器の出口側冷媒の温度が露点温度以上の場合に、露が発生すると判定することを特徴とする請求項6に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機であって、特に非共沸混合冷媒を用いた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題に鑑み、冷媒を用いた冷凍サイクル装置(空気調和機を含む)において、地球環境に悪影響を与えない冷媒を冷凍サイクル装置の作動流体として用いることが望まれている。当該冷媒の候補として非共沸混合冷媒が検討されている。非共沸混合冷媒を用いた冷凍サイクル装置を利用する空気調和機は、単一冷媒を用いた冷凍サイクル装置と同様に、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が順に接続された冷媒回路を備えている。この非共沸混合冷媒を用いた冷凍サイクル装置を利用する空気調和機が冷房運転を行う場合、利用側熱交換器が蒸発器として機能し、熱源側熱交換器は凝縮器として機能する。圧縮機から吐出された冷媒は、凝縮器として機能する熱源側熱交換器で室外空気と熱交換を行って凝縮し、膨張弁で減圧され、蒸発器として機能する利用側熱交換器で室内空気と熱交換を行って蒸発した後、圧縮機に吸入される。従来の単一冷媒を用いた冷凍サイクル装置を利用する空気調和機においては、冷媒の利用側熱交換器内での蒸発温度および熱源側熱交換器内での凝縮温度はそれぞれ一定となる。一方、非共沸混合冷媒の場合は、その性質から、利用側熱交換器内で冷媒が蒸発する際に、また、熱源側熱交換器内で冷媒が凝縮する際に、冷媒の温度が変化するという特性を有している。つまり、利用側熱交換器内および熱源側熱交換器内でそれぞれの冷媒温度が一定とはならず、温度勾配が生じる。
【0003】
そのため、空気調和機において冷房運転を行う場合、蒸発器として機能する利用側熱交換器の入口付近側を流れる冷媒は露点温度より低く、利用側熱交換器の出口側付近を流れる冷媒は露点温度より高くなり蒸発器内で温度差が生じる場合がある。その場合、露点温度より低い温度の冷媒と熱交換した空気は除湿されるが、露点温度以上の温度の冷媒と熱交換した空気は除湿されない。蒸発器の風下側で除湿された冷たい空気によって送風路内が冷やされた状態で、除湿されていない暖かい空気が送風路に流入すると、除湿されていない暖かい空気が送風路で冷やされ、暖かい空気が露点温度未満になって送風路の壁面等に露が発生するという問題がある。
【0004】
上記した問題に対応するために、特許文献1には、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器、および冷媒の流れを切り換えるための弁を備え、また、作動流体として非共沸混合冷媒を用いた冷暖房装置(空気調和機)において、蒸発器の中間に減圧手段を設けた発明が示されている。蒸発器の中間に減圧手段を設けることにより、蒸発器において減圧手段から下流側を流れる冷媒の圧力を下げ、蒸発器出口側の冷媒温度と蒸発器入口側の冷媒温度との温度差を小さくする。この結果、蒸発器の出口側を通過する空気の除湿が行われ、蒸発器の風下側での露の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-300390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された空気調和機では、蒸発器における冷媒流路に減圧手段を設けているため、利用側熱交換器が蒸発器となる冷房運転においては、利用側熱交換器の冷媒流路途中での減圧により冷媒音が発生してしまう。特に、起動時や負荷変動時など非定常運転時などはサイクルが安定しておらず、不快と感じやすい音である非連続音が発生しやすいという課題がある。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、非共沸混合冷媒を用いた冷媒回路を備える空気調和機において、蒸発器内に生じる温度差によって発生する露と、蒸発器を流れる冷媒によって発生する冷媒音を抑えることができる空気調和機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、凝縮器、減圧手段及び蒸発器を順次接続して、冷媒として非共沸混合冷媒を循環させる冷媒回路と、蒸発器に空気を送風する送風機と、減圧手段の開度と送風機の風量を制御する制御手段とを備え、冷房運転もしくは除湿運転が可能な空気調和機において、冷房運転状態もしくは除湿運転状態で、蒸発器を通過した空気により露が発生するか否かを判定する露付判定手段を有し、露付判定手段は、蒸発器の入口側冷媒の温度が露点温度未満であり、蒸発器の出口側冷媒の温度が露点温度以上の場合に、露が発生すると判定し、露付判定手段が露が発生すると判定した場合は、制御手段は減圧手段の開度もしくは送風機の風量を制御することにより、蒸発器の出口側におけるエンタルピーが低くなるように前記蒸発器の出口側冷媒の乾き度を制御する空気調和機である。また、圧縮機、凝縮器、減圧手段及び蒸発器を順次接続して、冷媒として非共沸混合冷媒を循環させる冷媒回路と、蒸発器に空気を送風する送風機と、減圧手段の開度と送風機の風量を制御する制御手段とを備え、冷房運転もしくは除湿運転が可能な空気調和機において、冷房運転状態もしくは除湿運転状態で、蒸発器を通過した空気により露が発生するか否かを判定する露付判定手段を有し、露付判定手段は、冷房運転もしくは除湿運転を行うために圧縮機を起動させてから所定時間未満の場合は、露は発生すると判定し、露付判定手段が露が発生すると判定した場合は、制御手段は減圧手段の開度もしくは送風機の風量を制御することにより、蒸発器の出口側におけるエンタルピーが低くなるように蒸発器の出口側冷媒の乾き度を制御する空気調和機である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非共沸混合冷媒を用いた冷媒回路を備える空気調和機において、蒸発器内に生じる温度差によって発生する露の抑制と、蒸発器を流れる冷媒によって発生する冷媒音を抑えることができる空気調和機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る空気調和機の冷媒回路図である。
図2】本実施形態に係る空気調和機の冷媒回路において、冷房運転状態におけるモリエル線図である。
図3】本実施形態に係る空気調和機の制御フロー図である。
図4】本実施形態に係る空気調和機の冷媒回路において、冷房運転状態における室内熱交換器の出口側冷媒の乾き度を制御した状態のモリエル線図である。
図5】他の実施形態に係る空気調和機の冷媒回路図である。
図6】他の実施形態に係る空気調和機の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る空気調和機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、本実施形態の空気調和機1の冷凍回路図である。図2は、本実施形態の空気調和機の冷凍回路において、蒸発器を通過した空気に露が発生する状態を示すモリエル線図である。図3は、本発明の実施形態に係る空気調和機の制御フロー図である。
【実施例
【0013】
図1を参照して、本実施形態である空気調和機1について説明する。図1は本実施形態における空気調和機1の冷媒回路図を示す。空気調和機1は、冷媒回路2と制御部3を備え、冷房運転と暖房運転が可能である。冷媒回路2は、冷媒として非共沸混合冷媒が循環する。非共沸混合冷媒は、例えば、R32とR1234yfの混合冷媒である。空気調和機1は暖房運転および冷房運転が可能であり、室内に配置される室内機5と屋外に設置される室外機11とが冷媒配管を介して接続されている冷媒回路2を備えている。室外機11は、室外熱交換器13、室外熱交換器13に外気を送風するための室外送風機16、アキュムレータ17、圧縮機12、四方弁15、室外機側膨張弁14とを備えている。冷媒回路2において、四方弁15は圧縮機12の吐出側に配置され、アキュムレータ17は圧縮機12の吸入側に配置されている。室外送風機16はファンモータによって駆動する。室内機5は筐体6を有し、筐体6の内部には、室内熱交換器7、室内機側膨張弁8、室内熱交換器7に室内の空気を送風するための送風機9が配置されている。後述する冷房運転時における室内熱交換器7の入口側には、入口冷媒の温度を検出する入口温度センサ25が設けられている。後述する冷房運転時における室内熱交換器7の出口側には、出口冷媒の圧力を検出する出口圧力センサ26および出口冷媒の温度を検出する出口温度センサ27が設けられている。また、室内機5の内部には、室内機5に吸込まれた室内の空気であって、室内熱交換器7を通過する前の空気の湿度を検出する湿度センサ28および温度を検出する室内温度センサ29が設けられている。尚、アキュムレータ17は、冷房運転時に蒸発器として機能する室内熱交換器7において蒸発しなかった液冷媒が圧縮機12に吸入されて液圧縮しないように、室内熱交換器7から流出した冷媒を気相と液相に分離させて圧縮機12に気相冷媒だけを吸い込ませるためのものである。
【0014】
図1において、実線で示す矢印は冷房運転の場合の冷媒の流れを示し、破線で示す矢印は暖房運転の場合の冷媒の流れを示す。圧縮機12で圧縮されて高温高圧になった気相冷媒は室外熱交換器13を流れる。室外熱交換器13を流れる高温高圧の気相冷媒は、室外送風機16によって送風された外気と熱交換することによって放熱され凝縮して高温高圧の液相冷媒になる。室外熱交換器13を通過して放熱された高温高圧の液相冷媒は室外機側膨張弁14を通過し、減圧手段としての室内機側膨張弁8によって減圧され低温低圧の気液二相冷媒になって室内熱交換器7を流れる。この場合、室外機側膨張弁14の開度は全開となっている。室内熱交換器7を流れる低温低圧の気液二相冷媒は、送風機9によって送風された室内の空気と熱交換し吸熱して蒸発して低温低圧の気相冷媒になる。室内熱交換器7を流れる冷媒によって吸熱された室内の空気は冷却される。低温低圧の気相冷媒はアキュムレータ17を介して圧縮機12に戻り、再び高温高圧に圧縮される。すなわち、冷房運転においては、冷媒回路2は、圧縮機12、凝縮器として機能する室外熱交換器13、減圧手段としての室内機側膨張弁8及び蒸発器として機能する室内熱交換器7が順次接続している。
【0015】
暖房運転の場合は、冷媒は四方弁15によって冷房運転と逆の流れをする。暖房運転時において、圧縮機12で圧縮されて高温高圧になった冷媒は室内熱交換器7を流れる。室内熱交換器7を流れる高温高圧の気相冷媒は、送風機9によって送風された室内の空気と熱交換することによって放熱され凝縮して高温高圧の液相冷媒になる。室内熱交換器7を流れる高温高圧の液相冷媒と熱交換をした室内の空気は暖められる。室内熱交換器7を通過して放熱された高温高圧の液相冷媒は室内機側膨張弁8を通過し、減圧手段としての室外機側膨張弁14によって減圧されて低温低圧の気液二相冷媒になって室外熱交換器13を流れる。この場合、室内機側膨張弁8の開度は全開となっている。室外熱交換器13を流れる低温低圧の気液二相冷媒は、室外送風機16によって送風された外気と熱交換し吸熱して蒸発して低温低圧の気相冷媒になる。低温低圧の気相冷媒はアキュムレータ17を介して圧縮機12に戻り、再び、高温高圧に圧縮される。
【0016】
次に図2のモリエル線図を参照して、冷媒回路2における冷媒の状態を説明する。図2のモリエル線図は冷房運転時のモリエル線図である。図2に示したイ~ニの記号は、次の状態を示す。イは、室内熱交換器7を通過した直後の冷媒(出口側冷媒)の状態である。ロは圧縮機12によって圧縮され室外熱交換器13に流入する冷媒の状態である。ハは、室外熱交換器13を通過して凝縮して室内機側膨張弁8を通過する前の冷媒の状態である。ニは、室内機側膨張弁8によって減圧され室内熱交換器7に流入する前の冷媒(入口側冷媒)の状態である。破線は等温線であり、下側の破線は露点温度である24℃を示し、上側の破線は室温である30℃を示す。
【0017】
本実施形態の空気調和機1の用いられる冷媒回路2は、冷媒として非共沸混合冷媒が循環する。そのため、単一冷媒では飽和域内において、圧力が一定であれば温度も一定となるが、非共沸混合冷媒では飽和域内においても、図2の破線で示されるような等温線となり、飽和域内で圧力が一定であっても温度は変化する。冷房運転を開始すると、図2に示すように、室内機側膨張弁8を通過して室内熱交換器7の入口側冷媒の温度は露点温度である24℃よりも低い状態となっている。また、室内熱交換器7の出口側冷媒の温度は露点温度24℃よりも高い温度である。
【0018】
この状態で冷房運転を続けると、室内熱交換器7の冷媒入口付近(モリエル線図における二)を通過した室内の空気と室内熱交換器7の冷媒出口付近(モリエル線図におけるイ)を通過した室内の空気とで温度差が生じる。室内熱交換器7の冷媒入口付近を通過した空気は、露点温度未満であるため除湿されている。一方、室内熱交換器7の冷媒出口付近を通過した空気は、露点温度以上の温度であるため除湿されていない。そのため、室内熱交換器7の風下側で除湿された冷たい空気によって室内機5の送風路内が冷やされた状態となり、除湿されていない暖かい空気が送風路に流入すると、除湿されていない暖かい空気が送風路で冷やされ、暖かい空気が露点温度未満になって送風路の壁面等に露が発生するという問題がある。送風路の壁面等に露が付着すると、室内機5の図示しない吹出口から居室空間へ空気と共に露が吹出され、使用者の快適性を悪化させる。そこで、本実施形態では、室内機5の送風路の壁面等に露が発生することを抑制するために、制御部3が次に示す制御を行う。
【0019】
制御部3は、冷房運転状態もしくは除湿運転状態で、室内熱交換器7を通過した空気により露が発生するか否かを判定する露付判定手段20を有している。すなわち、露付判定手段20は、冷房運転状態もしくは除湿運転状態で、室内熱交換器7を通過した空気により露が発生する可能性が有るか否かを判定している。
【0020】
図3は、本実施形態の制御フロー図である。制御部3は、冷房運転もしくは除湿運転が開始してから所定時間経過したかどうかを判定する(ST1)。すなわち、圧縮機12を起動させてから所定時間経過したかどうかを判断する。尚、本実施形態では所定時間は15分とする。これは、圧縮機12が起動した当初は、まだ、空気調和機1の運転が定常状態となっていないため、室内熱交換器7や室内機5の通風路内の温度が安定していないためである。
【0021】
冷房運転もしくは除湿運転が開始してから所定時間経過した場合(ST1のYes)、露付判定手段20が、室内機5の通風路内で露が発生するか否かを判定(露付判定)する(ST2)。露付判定は、室内熱交換器7の入口側冷媒の温度が露点温度未満であり、且つ、室内熱交換器7の出口側冷媒の温度が露点温度以上の場合に、露が発生すると判定する。入口側冷媒の温度は入口温度センサ25に基づき検出する。出口側冷媒の温度は出口温度センサ27に基づき検出する。露点温度は、湿度センサ28により検出した空気の湿度と、室内温度センサ29により検出した空気の温度に基づいて算出される。
【0022】
露付判定手段20が、露が発生すると判断した場合(ST2のYes)は、制御部3は、室内機側膨張弁8を制御して、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度が1未満である所定値となるようにする(ST3)。本実施形態では、所定値は圧縮機12の信頼性に影響が出ない最小値であり、例えば0.7である。すなわち、室内熱交換器7の出口側におけるエンタルピーが低くなるように室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度を制御する。具体的には、室内機側膨張弁8の開度を開く方向に制御か、若しくは、送風機9の風量を大きくする。室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度は、出口圧力センサ26により検出した冷媒の圧力と、出口温度センサ27により検出した冷媒の温度に基づいて算出する。
【0023】
図4は、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度が0.7となった状態のモリエル線図である。図4に示すように、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度を制御して室内熱交換器7の出口側におけるエンタルピーが低くなる方向に向かい、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度が0.7となると、室内熱交換器7の出口側冷媒の温度が露点温度の24℃未満となる。従って、室内熱交換器7の入口側冷媒の温度と出口側冷媒の温度は共に露点温度である24℃未満となっている。そのため、室内熱交換器7を通過する空気は全て除湿されるため、室内機5の送風路の壁面等に露が発生することを抑制することができる。尚、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度が0.7となると、室内熱交換器7を通過した後の冷媒は湿り状態であることから、液相冷媒を含んでいるが、アキュムレータ17によって、気相冷媒だけが圧縮機12に吸入されるので、圧縮機12で液圧縮が発生する問題はない。また、本実施形態の空気調和機1は、従来技術のように、利用側熱交換器である室内熱交換器7の冷媒流路途中で冷媒を減圧していないので、冷媒流路途中での減圧による冷媒音の発生を抑制できる。
【0024】
本実施形態では、室内機側膨張弁8の開度を開く方向に制御して、室内熱交換器7の出口側におけるエンタルピーが低くなる方向に向かうように制御し、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度を所定値の0.7となるようにしたが、必ずしもこれに限定されない。室内機側膨張弁8の開度を制御するのではなく、送風機9の風量を制御して、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度を所定値の0.7となるようにしてもよい。具体的には、送風機9の風量を弱めることにより、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度を0.7となるようにする。また、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度は所定値として0.7としたが、圧縮機12の信頼性に影響が出ない値であれば1.0以下であれば他の数値でも構わない。
【0025】
本実施形態では、露付判定手段20が、露付判定をする(ST2)場合に、室内熱交換器7の入口側冷媒の温度が露点温度未満であり、室内熱交換器7の出口側冷媒の温度が露点温度以上の場合に、露が発生すると判定したが、必ずしもこれに限定されない。この露点温度に基づいて露付判定を行うのではなく、起動時間だけで判定しても構わない。すなわち、図3における、ST1の圧縮機12を起動させてから所定時間経過したかどうかに基づいて、露付判定を行っても構わない。圧縮機12を起動させてから所定時間経過すると、空気調和機1の運転が定常状態となっているため、室内熱交換器7や室内機5の通風路内の温度が安定し、室内機5の通風路内も十分に冷やされており露が発生する可能性が高いからである。なお、ST3の制御は、室内の空気が十分に除湿される時間(例えば30分)を経過したら終了するようにしても良い。
【0026】
次に、図5を用いて、他の実施形態である空気調和機40について説明する。最初の実施形態の空気調和機1と他の実施形態の空気調和機40との相違は、アキュムレータ17を除き、ヒータ18を設けた点であり、他は共通する。共通する構成については同一の符号を使い、また、共通する構成の説明は省略する。
【0027】
他の実施形態における空気調和機40における冷媒回路2の特徴的な構成について説明する。冷房運転状態において、蒸発器として機能する室内熱交換器7の出口から圧縮機12の吸入側に接続する冷媒配管であって、四方弁15と圧縮機12との間の冷媒配管にヒータ18が設けられている。
【0028】
次に、他の実施形態における空気調和機40の制御について図6を用いて説明する。他の実施形態における空気調和機40の制御は、最初の実施形態における制御である図3に示す制御フローにST4が追加された点が相違しており、ST1~ST3までの制御フローは同じである。従って、ST1~ST3までの説明は簡略化し、ST4について説明する。
【0029】
制御部3は、ST2において露が発生すると判定(ST2のYes)すると、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度が1未満である所定値となるように制御する(ST3)。次に、制御部3は、ヒータ18を動作させる(ST4)。これは、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度を所定値の0.7となるように制御すると、室内熱交換器7を通過した後の冷媒は湿り状態であることから液冷媒を含んでいる。そのため、この状態で、液冷媒が圧縮機12に吸入されると液圧縮を起こし圧縮機12が故障するおそれがある。しかし、本実施形態では、圧縮機12の吸入側に設けたヒータ18を動作させるため、室内熱交換器7を通過した後の冷媒を過熱することにより液圧縮を抑制することができる。
【0030】
上記した実施形態では、露付判定手段20が露は発生すると判定した場合、制御部3は、室内機側膨張弁8を制御して、室内熱交換器7の出口側冷媒の乾き度が1未満である所定値となるよう制御したが、必ずしもこれに限定されない。例えば、室内機側膨張弁8の開度もしくは送風機9の風量を制御して、室内熱交換器7の出口側冷媒の温度を露点温度未満にするように制御しても構わない。露点温度は、湿度センサ28により検出した空気の湿度と、室内温度センサ29により検出した空気の温度に基づいて定める。
【0031】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0032】
1…空気調和機、2…冷媒回路、3…制御部、5…室内機、6…筐体、7…室内熱交換器、8…室内機側膨張弁、9…送風機、11…室外機、12…圧縮機、13…室外熱交換器、14…室外機側膨張弁、15…四方弁、16…室外送風機、17…アキュムレータ、18…ヒータ、20…露付判定手段、25…入口温度センサ、26…出口圧力センサ、27…出口温度センサ、28…湿度センサ、29…室内温度センサ、40…空気調和機
図1
図2
図3
図4
図5
図6